JP5296584B2 - 鍵盤楽器の鍵盤装置 - Google Patents

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Description

本発明は、木製の鍵盤材を用いた鍵を備える鍵盤楽器の鍵盤装置において、加工工程の簡略化による製造コストの低減および品質の安定化を図る技術に関する。
従来より、押鍵された鍵と連動するハンマーの回動動作を演奏情報として検出可能な電子鍵盤楽器の鍵盤装置が知られている。より具体的には、この種の鍵盤楽器の鍵盤装置では、木製の鍵盤材を用いた鍵がシャーシに固定された筬中に立設されるバランスピンを介して前後方向に回動可能に支持され、押鍵時に上方に回動する鍵の後端部がハンマーを回動動作させ、センサがハンマーの回動動作を演奏情報として検出している。
そして、鍵を支持するバランスピンについては、白鍵を支持する白鍵用のバランスピンと黒鍵を支持する黒鍵用のバランスピンとを横一列となるように筬中に立設させている。
しかし、このような鍵盤楽器の鍵盤装置においては、バランスピンによる支持点から後端部までの寸法が白鍵と黒鍵とで異なるため、白鍵によって動作されるハンマーと黒鍵によって動作されるハンマーの動作角度を合わせるように両者を区別して設計する必要があった。
これに対して、バランスピンによる支持点を白鍵よりも黒鍵の方を後方にずらすことで、白鍵によって動作されるハンマーと黒鍵によって動作されるハンマーとで区別せずに設計し、両者の動作角度を均一とする鍵盤楽器の鍵盤装置が存在する。具体的には、この種の鍵盤楽器の鍵盤装置では、黒鍵を支持する黒鍵用バランスピンを筬中に立設させる位置を、白鍵を支持する白鍵用バランスピンを筬中に立設させる位置よりも後方に設定している。
しかし、このような鍵盤楽器の鍵盤装置においては、黒鍵用バランスピンを筬中に立設させる位置を後方にずらすことで、押鍵時の黒鍵の下部が筬中の前部上面に当接するという問題がった。なお、筬中による鍵の支持高さを上下方向に調整可能とした鍵盤楽器の鍵盤装置も知られているが(例えば、特許文献1参照。)、鍵の支持高さを個々の鍵ごとに調整する必要があった。
そこで、黒鍵下部の筬中と対向する部分をカッターなどの適当な手段で削ることで、押鍵時の黒鍵の下部が筬中の前部上面に当接するのを防ぐ手法が実施されている。
特開平07−219520号公報(第4頁、図3)
しかし、上述のように木製の黒鍵下部の筬中と対向する部分を削った場合には、吸湿時に反りや変形が発生するおそれがあり、鍵盤装置の品質が不安定になるという問題があった。また、木製の黒鍵の下部を削る分だけ加工工程が増加し、製造コストも増加するという問題があった。
また、このような問題が生じるのは電子ピアノなどの電子鍵盤楽器に搭載される鍵盤装置に限られず、例えば、アコースティックピアノなど、木製の鍵盤材を用いた鍵がシャーシに固定された筬中に立設されるバランスピンを介して前後方向に回動可能に支持され、押鍵時に上方に回動する鍵の後端部がハンマーを回動動作させる鍵盤装置を備える鍵盤楽器においては同様に生じ得る。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、木製の鍵盤材を用いた鍵を備える鍵盤楽器の鍵盤装置において、加工工程の簡略化による製造コストの低減および品質の安定化を図ることにある。
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る鍵盤楽器の鍵盤装置(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、演奏者に対向して左右方向に並ぶ木製の鍵盤材を用いた鍵(3)がシャーシ(2a)に固定された筬中(15)に立設されるバランスピン(12)を介して前後方向に回動可能に支持され、押鍵時に上方に回動する前記鍵の後端部(3g)がハンマー(40)を回動動作させる鍵盤楽器の鍵盤装置において、前記筬中は、成形品であり、当該筬中の前後方向の前方縁部よりも後方に前記バランスピンが立設されることで当該筬中に前記バランスピン前方の部分(15b)が形成され、当該筬中の前記バランスピン前方の部分が押鍵時の白鍵(3a)の下面と当接せずに対向するとともに、黒鍵(3b)を支持する黒鍵用のバランスピン(12b)が立設する位置が、白鍵を支持する白鍵用のバランスピン(12a)が立設する位置よりも後方となるように設定されており、さらに、前記筬中の前記黒鍵用バランスピン前方には、左右方向の幅寸法が黒鍵の幅寸法よりも大きく設定されるとともに押鍵時の黒鍵の下面と当接せずに対向する対向面(15g)を有することで、押鍵時の黒鍵の下部をその内部に内包可能な凹部(15f)が形成されていることを特徴とする。
このように構成された本発明の鍵盤楽器の鍵盤装置によれば、筬中のうちの黒鍵用のバランスピン前方に形成される凹部が、左右方向の幅寸法が黒鍵の幅寸法よりも大きく設定されるとともに、押鍵時の黒鍵の下面と当接せずに対向する対向面を有することで、押鍵時の黒鍵の下部を内包可能である。このことにより、押鍵時に黒鍵が筬中に当接しなくなるので従来のように黒鍵を削らなくても済み、黒鍵を削った場合に発生する吸湿時の反りや変形が発生せずに品質が安定する。また、黒鍵を削った場合に発生する加工工程を簡略化でき、製造コストを低減することができる。また、筬中は合成樹脂の射出成形品であるので、精度よく製造することでき、品質が安定する。
また、本発明の鍵盤楽器の鍵盤装置によれば、上述のように筬中が合成樹脂の射出成形品であるために精度よく製造することできるとともに品質が安定するために各黒鍵に対向する各対向面も精度よく形成されるため、黒鍵を支持する黒鍵用バランスピンが立設する位置と白鍵を支持する白鍵用バランスピンが立設する位置との前後差を(白鍵と黒鍵の支点位置の前後差)を適切な寸法にすることにより、白鍵用のハンマーの作用点位置と黒鍵用のハンマーの作用点位置とを共通にすることができ、当該鍵盤楽器の鍵盤装置の他の構成に白鍵用と黒鍵用とで共通の部品を使用できる。したがって、部品構成をシンプルにできるとともに、部品共通化により組立てやすくすることができる。なおこのことは品質の安定化にも寄与する。
したがって、本発明の鍵盤楽器の鍵盤装置によれば、加工工程の簡略化による製造コストの低減および品質の安定化を図ることができる。
また、請求項2に係る鍵盤楽器の鍵盤装置は、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置において、前記対向面は、押鍵時の黒鍵の下面と略平行に形成されていることを特徴とする(図2参照)。
また、請求項3に係る鍵盤楽器の鍵盤装置は、請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置において、前記筬中の前記バランスピン周囲には、前記バランスピンに回動可能に支持された前記鍵が載置されてその鍵盤高さを保持する保持面(115d,115e)が形成されていることを特徴とする(図3参照)。
また、請求項4に係る鍵盤楽器の鍵盤装置は、演奏者に対向して左右方向に並ぶ木製の鍵盤材を用いた鍵がシャーシに固定された筬中に立設されるバランスピンを介して前後方向に回動可能に支持され、押鍵時に上方に回動する前記鍵の後端部がハンマーを回動動作させる鍵盤楽器の鍵盤装置において、前記筬中は、成形品であり、当該筬中の前後方向の前方縁部よりも後方に前記バランスピンが立設されることで当該筬中に前記バランスピン前方の部分が形成され、当該筬中の前記バランスピン前方の部分が押鍵時の白鍵の下面と当接せずに対向するとともに、黒鍵を支持する黒鍵用のバランスピンが立設する位置が、白鍵を支持する白鍵用のバランスピンが立設する位置よりも後方となるように設定されており、さらに、前記筬中の黒鍵用のバランスピン周囲には、黒鍵が載置されてその高さを保持しながら回動可能とする保持面が形成され、前記保持面は、押鍵時に当該保持面によってその高さを保持されながら回動する黒鍵の下面が、前記筬中の前側の上面よりも上方に位置するように設定されていることを特徴とする。
このように構成された本発明の鍵盤楽器の鍵盤装置によれば、筬中の黒鍵用のバランスピン周囲に、黒鍵が載置されてその高さを保持しながら回動可能とする保持面が形成され、この保持面は、押鍵時に当該保持面によってその高さを保持されながら回動する黒鍵の下面が、筬中の前側の上面よりも上方に位置するように設定されている。このことにより、押鍵時に黒鍵が筬中に当接しなくなるので従来のように黒鍵を削らなくても済み、黒鍵を削った場合に発生する吸湿時の反りや変形が発生せずに品質が安定する。また、黒鍵を削った場合に発生する加工工程を簡略化でき、製造コストを低減することができる。また、筬中は合成樹脂の射出成形品であるので、精度よく製造することでき、品質が安定する。
また、本発明の鍵盤楽器の鍵盤装置によれば、上述のように筬中が成形品であるために精度よく製造することできるとともに品質が安定するために各鍵が載置されてその高さを保持しながら回動可能とする保持面を精度よく形成できるので、離鍵時の鍵(白鍵および黒鍵)の前部上面の高さを均一にそろえることができる。したがって、部品構成をシンプルにできるとともに、部品共通化により組立てやすくすることができる。なおこのことは品質の安定化にも寄与する。また、離鍵時の鍵(白鍵および黒鍵)の前部上面の高さを均一にそろえることにより、当該鍵盤装置の外観を整えるとともに演奏をスムーズに行うことができる。
鍵盤装置1の概略構成図であり、黒鍵が復帰されている状態を示す。 鍵盤装置1の筬中15の概略構成図であり、(a)は筬中15の側面図であり、(b)は筬中15の正面図である。 他の実施形態の筬中115の概略構成を示す斜視図である。
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[1.鍵盤装置1の構成の説明]
図1に示す本実施形態の電子ピアノの鍵盤装置1は、左右方向に並んだ多数の鍵3(白鍵3aおよび黒鍵3bを各1つのみ図示)と、これらの鍵3を支持する下シャーシ2aと、この下シャーシ2aの後端部に取り付けられた後シャーシ2bと、各鍵3の押鍵に伴って調整ネジ14を介して回動する多数のハンマー40(1つのみ図示)を備えている。次に、下シャーシ2a、鍵3、ハンマー40、および後シャーシ2bの順に説明する。
[1.1.下シャーシ2aの構成の説明]
下シャーシ2aは、プレスにより打抜き及び折り曲げ加工された金属製の板材からなり、多数の鍵3を支持するように構成されている。下シャーシ2aの前後方向の中央部には、下シャーシ2aの上方にネジ2hで固定した複数個の筬中15上に多数のバランスピン12が左右方向に2列に並んで立設されており(各1つのみ図示)、各鍵3は、その中央部がバランスピン12に回動可能に支持されている。
なお、下シャーシ2aの上部には、複数個の筬中15が左右方向に並べて取り付けられており、これら複数個の筬中15が、鍵盤装置1が備えるすべての88個の鍵を支持するように構成されている。また、筬中15に2列に並んで立設されたバランスピン12のうち前方に配置されるバランスピン12は、白鍵3aを回動可能に支持する白鍵用バランスピン12aであり、後方に配置されるバランスピン12は、黒鍵3bを回動可能に支持する黒鍵用バランスピン12bである。
また、下シャーシ2aの前部には、押鍵時の鍵3を案内するためのフロントピン16が左右方向に2列に並んで立設されている(各1つのみ図示)。なお、2列に並んで立設されたフロントピン16のうち前方に配置されるフロントピン16は、押鍵時の白鍵3aを案内するための白鍵用フロントピン16aであり、後方に配置されるフロントピン16は、押鍵時の黒鍵3bを案内するための黒鍵用フロントピン16bである。
また、下シャーシ2aの前部には、押鍵時の鍵3を規制するための鍵下限ストッパ18が左右方向に2列に並んで設置されている(各1つのみ図示)。なお、2列に並んで設置された鍵下限ストッパ18のうち前方に配置される鍵下限ストッパ18は、押鍵時の白鍵3aを規制するための白鍵用の鍵下限ストッパ18aであり、後方に配置される鍵下限ストッパ18は、押鍵時の黒鍵3bを規制するための黒鍵用の鍵下限ストッパ18bである。
また、下シャーシ2aの後部には、離鍵時の鍵3を規制するための鍵上限ストッパ20が左右方向に1列に並んで設置されている(各1つのみ図示)。
なお、筬中15およびバランスピン12の詳細な構成については後述する。
[1.2.鍵3の構成の説明]
各鍵3は、断面矩形の木製の鍵本体(鍵盤材)3cと、その上面前部に接着された合成樹脂製の鍵カバー3dで構成されている。鍵本体3cの中央部にはバランスピン孔3eが形成されている。鍵3は、そのバランスピン孔3eにバランスピン12が挿入されることにより、バランスピン12に回動可能に支持される。そして、鍵本体3cの上面後端部には、鍵本体3cの上面前部の面より下方へ鍵本体3cの上面前部の面に略平行な段差面3gが形成されている。そして、この段差面3gには、平坦部3fが貼着されている。この平坦部3fは、この段差の上面に貼着される発砲ウレタンと、このウレタンの上面に貼着された摺動しやすいテープとから構成されている。
[1.3.ハンマー40の構成の説明]
ハンマー40は、鍵3ごとに設けられ、屈曲した棒状の合成樹脂製のハンマー本体42と、その両側面の前部に取り付けられたおもり板46(1つのみ図示)を備えている。ハンマー本体42の後端部には、後方に開放する円弧状の軸孔48が形成されており、ハンマー40は、この軸孔48に後述の後シャーシ2bの支点軸部2cが係合されることによって、後シャーシ2bに回動可能に支持されている。そのため、ハンマー本体42は、その軸孔48の内径寸法が、支点軸部2cの外径寸法よりも大きく形成されている。また、ハンマー本体42には、その下面の軸孔48付近の位置に調整ネジ14が進退可能に取り付けられている。
[1.4.後シャーシ2bの構成の説明]
後シャーシ2b(シャーシ)は、中空のアルミニウムの1つの押出成形品で構成され、すべてのハンマー40を支持可能なように左右方向に延びていて、ネジ13により下シャーシ2aに連結されているとともに、ネジ(図示せず)で棚板(図示せず)に固定されている。また、後シャーシ2bの後部には、補強板10がネジ11によって取り付けられている。後シャーシ2bは、上下方向に延びるとともに、その上端から前側上方に斜めに延びる基板取付部2eを有し、この基板取付部2eの先端部には、ハンマー40の上方への回動を規制するためのストッパ9が設けられている。このストッパ9もすべてのハンマー40にわたるように左右方向に延びている。さらに、ハンマー40の上方には、各鍵3の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ5が設けられている。
上述の鍵スイッチ5は、基板6と、基板6に鍵3ごとに取り付けられたスイッチ本体7で構成されている。
このうちの基板6は、後端部を後シャーシ2bの中間部に形成された係合凹部2dに差し込んだ状態で、スペーサ8cを介し、第1ネジ8aおよび第2ネジ8bにより基板取付部2eに取り付けられている。
一方、スイッチ本体7は、基板6を介して、電子ピアノの発音を制御する制御装置(図示せず)に接続されている。また、スイッチ本体7は、鍵3が所定の第1の深さまで押下された際にオンとなる第1接点と、鍵3が上記第1の深さよりも深い所定の第2の深さまで押下された際にオンとなる第2接点とを備える。そして、鍵3が押下された際に、第1接点がオンとなる時刻から第2接点がオンとなる時刻までの時間が計測され、これにより鍵3の押鍵速度に応じたベロシティ(音量)が得られる。
[1.5.筬中15の構成の説明]
次に、筬中15の構成について説明する。
筬中15は合成樹脂の射出成形品であり、略直方体の筬中本体15aの前後方向の前方縁部よりも後方にバランスピン12aが立設される構成を有している。より具体的には、図2(a)に示すように、筬中本体15aの前後方向の前方縁部よりも後方には白鍵用のバランスピン12aが左右方向に一列に並んで立設されており、筬中本体15aの白鍵用のバランスピン12aが立設される位置よりも後方には、黒鍵用のバランスピン12bが左右方向に一列に並んで立設されている。このことにより、筬中本体15aには、バランスピン12前方の部分(上面)15bおよびバランスピン12後方の部分(上面)15cが形成されている。なお、筬中本体15aの上下方向の厚み寸法は、筬中15が下シャーシ2aに取り付けられた際に、筬中本体15aの上面15bのバランスピン12前方の部分が押鍵時の白鍵3aの下面と当接せずに対向するように設定されている。
なお、各白鍵用のバランスピン12aには、白鍵3aの中央部に形成されたバランスピン孔3eが外挿され、白鍵3aが、その中央部が白鍵用のバランスピン12aに回動可能に支持される。また、各黒鍵用のバランスピン12bには、黒鍵3bの中央部に形成されたバランスピン孔3eが外挿され、黒鍵3bが、その中央部が黒鍵用のバランスピン12bに回動可能に支持される。
また、筬中本体15aのバランスピン12周囲には、鍵3が載置されてその高さを保持しながら回動可能とするリング状のバランスパンチングクロス15d,15eが取り付けられている。より具体的には、筬中本体15aの白鍵用のバランスピン12a周囲には、白鍵3aが載置されてその高さを保持しながら回動可能とする白鍵用のバランスパンチングクロス15dが取り付けられており、筬中本体15aの黒鍵用のバランスピン12b周囲には、黒鍵3bが載置されてその高さを保持しながら回動可能とする黒鍵用のバランスパンチングクロス15eが取り付けられている。なお、白鍵用のバランスパンチングクロス15dの上面(保持面)は、筬中本体15aの前側の上面15bよりも若干高くなっている。また、黒鍵用のバランスパンチングクロス15eの上面(保持面)は、筬中本体15aの後側の上面15cよりも若干高くなっている。
また、筬中本体15aの黒鍵用バランスピン12b前方には凹部15fが形成されている。この凹部15fは、押鍵時に黒鍵3bが黒鍵用の鍵下限ストッパ18bに当接するまで前方向に回動した際に、押鍵時の黒鍵3bの下面(図中に一点鎖線で図示)と当接せずに対向するよう設定された面(対向面)15gを有する。なお、対向面15gは、筬中15が下シャーシ2aに取り付けられた際に、押鍵時の黒鍵3bの下面と略平行となるように設定されている。また、凹部15fは、図2(b)に示すように、左右の壁面15h,15iの間の幅寸法が黒鍵3bの幅寸法よりも若干大きく設定されている。このことにより、この凹部15fは、押鍵時の黒鍵3bの下部を内包可能である。
なお、鍵盤装置1のその他の構成については、公知技術に従っているのでここではその詳細な説明は省略する。
[2.鍵盤装置1の動作の説明]
次に、本実施形態の鍵盤装置1の動作を説明する。具体的には、黒鍵3bを押鍵および離鍵した際の動作について説明する。なお、白鍵3aを押鍵および離鍵した際の動作については、公知技術に従っているのでここではその詳細な説明は省略する。
まず、図1に示す鍵盤装置1の黒鍵3bが押鍵される(つまり黒鍵3bの前部が押し下げられる)と、この黒鍵3bは、黒鍵用のフロントピン16bにより左右方向に振れないように案内されながら、下シャーシ2aに取り付けられている筬中15に立設されている黒鍵用のバランスピン12bを介してその前部が下方に移動する方向へ回動する。
引き続き黒鍵3bが回動すると、黒鍵3bの平坦部3fがハンマー本体42に取り付けられている調整ネジ14を押し上げ、ハンマー40が、後シャーシ2bに設けられている支点軸部2cによって支持されたハンマー本体42の後端部に形成された軸孔48を中心にしてハンマー本体42に取り付けたおもり板46が上方へ移動する方向に回動する。この方向へハンマー40が回動する間、おもり板46の重量は、ハンマー本体42の回動を抑止するように作用する。
そして、黒鍵3bの回動は、回動する黒鍵3bの下面が下シャーシ2aに取り付けられている黒鍵用の鍵下限ストッパ18bに当接することによって規制される。また、ハンマー40の回動は、回動するハンマー40の上面先端部が後シャーシ2bに取り付けられているストッパ9に当接することによって規制される。この際、押鍵されてその前部が下方に押し下げられた黒鍵3bの下部が、筬中15とは当接せずに筬中15の凹部15fに内包された状態となる(図2(a)参照)。
そして、このハンマー40の回動に伴い、軸孔48より前方の上面後端部が鍵スイッチ5のスイッチ本体7を押下し、オン動作させることによって、黒鍵3bの押鍵情報が検出され、その検出結果に応じて、図示しない制御装置により電子ピアノの発音が制御される。
一方、この状態から黒鍵3bが離鍵されると、おもり板46の重量によってハンマー本体42が下方へ移動する方向へ回動する。すると、ハンマー本体42に取り付けられた調整ネジ14を介して黒鍵3bは、上述の黒鍵3bの押鍵時とは逆の方向へ回動し、押鍵初期の位置へ復帰する。なお、このときの黒鍵3bの回動は、回動する黒鍵3bの下面が下シャーシ2aに取り付けられている鍵上限ストッパ20に当接することによって規制される(図1の状態)。また、ハンマー40の回動は、ハンマー本体42に取り付けられている調整ネジ14が黒鍵3bの平坦部3fに当接することによって規制される。
[3.実施形態の効果]
(1)このように本実施形態の鍵盤装置1によれば、筬中本体15aの黒鍵用バランスピン12b前方には凹部15fが形成されており、この凹部15fは、押鍵時に黒鍵3bが黒鍵用の鍵下限ストッパ18bに当接するまで前方向に回動した際に、押鍵時の黒鍵3bの下面(図中に一点鎖線で図示)と当接せずに対向するよう設定された面(対向面)15gを有する。なお、対向面15gは、筬中15が下シャーシ2aに取り付けられた際に、押鍵時の黒鍵3bの下面と略平行となるように設定されている。また、凹部15fは、図2(b)に示すように、左右の壁面15h,15iの間の幅寸法が黒鍵3bの幅寸法よりも若干大きく設定されている。よって、この凹部15fは、押鍵時の黒鍵3bの下部を内包可能である。
このことにより、押鍵時に黒鍵3bが筬中15に当接しなくなるので従来のように黒鍵3bを削らなくても済み、黒鍵3bを削った場合に発生する吸湿時の反りや変形が発生せずに品質が安定する。また、黒鍵3bを削った場合に発生する加工工程を簡略化でき、製造コストを低減することができる。また、筬中15は合成樹脂の射出成形品であるので、精度よく製造することでき、品質が安定する。
また、本実施形態の鍵盤装置1によれば、上述のように筬中15が合成樹脂の射出成形品であるために精度よく製造することできるとともに品質が安定するために各黒鍵3bに対向する各対向面15gも精度よく形成されるため、黒鍵3bを支持する黒鍵用バランスピン12bが立設する位置と白鍵3aを支持する白鍵用バランスピン12aが立設する位置との前後差を(白鍵3aと黒鍵3bの支点位置の前後差)を適切な寸法にすることにより、白鍵用のハンマー40の作用点位置と黒鍵用のハンマー40の作用点位置とを共通にすることができ、当該鍵盤装置1の他の構成に白鍵用と黒鍵用とで共通の部品を使用できる。したがって、部品構成をシンプルにできるとともに、部品共通化により組立てやすくすることができる。なおこのことは品質の安定化にも寄与する。
したがって、本実施形態の鍵盤装置1によれば、加工工程の簡略化による製造コストの低減および品質の安定化を図ることができる。
(2)また、本実施形態の鍵盤装置1によれば、対向面15gが、筬中15が下シャーシ2aに取り付けられた際に、押鍵時の黒鍵3bの下面と略平行となるように設定されている。このことにより、押鍵時に黒鍵3bが筬中15の対向面15gにより確実に当接しなくなる。
(3)また、本実施形態の鍵盤装置1によれば、筬中本体15aの白鍵用のバランスピン12a周囲には、白鍵3aが載置されてその高さを保持しながら回動可能とする白鍵用のバランスパンチングクロス15dが取り付けられるとともに、筬中本体15aの黒鍵用のバランスピン12b周囲には、黒鍵3bが載置されてその高さを保持しながら回動可能とする黒鍵用のバランスパンチングクロス15eが取り付けられており、白鍵用のバランスパンチングクロス15dの上面(保持面)が筬中本体15aの前側の上面15bよりも若干高くなっているとともに、黒鍵用のバランスパンチングクロス15eの上面(保持面)が筬中本体15aの後側の上面15cよりも若干高くなっている。このことにより、離鍵時の鍵3(白鍵3aおよび黒鍵3b)の前部上面の高さを均一にそろえることができる。したがって、部品構成をシンプルにできるとともに、部品共通化により組立てやすくすることができる。なおこのことは品質の安定化にも寄与する。また、離鍵時の鍵3(白鍵3aおよび黒鍵3b)の前部上面の高さを均一にそろえることにより、当該鍵盤装置1の外観を整えるとともに演奏をスムーズに行うことができる。
[4.他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
(1)上記実施形態では、電子ピアノが備える鍵盤装置1に本発明を適用したが、これには限られず、木製の鍵盤材を用いた鍵3が下シャーシ2aに固定された筬中15に立設されるバランスピン12を介して前後方向に回動可能に支持され、押鍵時に上方に回動する鍵3の段差面(後端部)3gがハンマー40を回動動作させる鍵盤装置にも本発明を適用できる。このような鍵盤装置を備える鍵盤楽器としては、電子オルガンなどの電子鍵盤楽器や、アコースティックピアノなどが挙げられる。
(2)上記実施形態では、押鍵時に黒鍵3bが筬中15に当接しなくなるようにするため、筬中本体15aの黒鍵用バランスピン12b前方に凹部15fが形成されているが、これには限られず、筬中本体115aの黒鍵用バランスピン12b周囲に、黒鍵3bが載置されてその高さを保持しながら回動可能とする保持面115eを形成することで、押鍵時に黒鍵3bが筬中115に当接しなくなるようにしてもよい。
以下に、本実施形態の筬中115の構成について説明する。
筬中115は合成樹脂の射出成形品であり、略直方体の筬中本体115aの前後方向の前方縁部よりも後方にバランスピン12aが立設される構成を有している。より具体的には、図3に示すように、筬中本体115aの前後方向の前方縁部よりも後方には白鍵用のバランスピン12aが左右方向に一列に並んで立設されており、筬中本体115aの白鍵用のバランスピン12aが立設される位置よりも後方には、黒鍵用のバランスピン12bが左右方向に一列に並んで立設されている。このことにより、筬中本体115aには、バランスピン12前方の部分(上面)115bおよびバランスピン12後方の部分(上面)115cが形成されている。なお、筬中本体115aの上下方向の厚み寸法は、筬中115が下シャーシ2aに取り付けられた際に、筬中本体115aの上面15bのバランスピン12前方の部分が押鍵時の白鍵3aの下面と当接せずに対向するように設定されている。
なお、各白鍵用のバランスピン12aには、白鍵3aの中央部に形成されたバランスピン孔3eが外挿され、白鍵3aが、その中央部が白鍵用のバランスピン12aに回動可能に支持される。また、各黒鍵用のバランスピン12bには、黒鍵3bの中央部に形成されたバランスピン孔3eが外挿され、黒鍵3bが、その中央部が黒鍵用のバランスピン12bに回動可能に支持される。
また、筬中本体115aの白鍵用のバランスピン12a周囲には、白鍵3aが載置されてその高さを保持しながら回動可能とする白鍵用の保持面115dが形成されている。なお、白鍵用の保持面115dは、筬中本体115aの前側の上面115bよりも若干高くなっている。
また、筬中本体115aの黒鍵用バランスピン12b周囲には、黒鍵3bが載置されてその高さを保持しながら回動可能とする保持面115eが形成されている。なお、黒鍵用の保持面115eは、筬中本体115aの後側の上面115cよりも若干高くなっているとともに、筬中本体115aの前側の上面115bよりも所定寸法高くなっている。なお、この所定寸法については、押鍵時に保持面115eにその高さを保持されながら回動する黒鍵3bの下面が、筬中本体115aの前側の上面115bに当接せずに上面115bよりも上方に位置するよう設定されている。
このことにより、押鍵時に黒鍵3bが筬中115に当接しなくなるので従来のように黒鍵3bを削らなくても済み、黒鍵3bを削った場合に発生する吸湿時の反りや変形が発生せずに品質が安定する。また、黒鍵3bを削った場合に発生する加工工程を簡略化でき、製造コストを低減することができる。また、筬中115は合成樹脂の射出成形品であるので、精度よく製造することでき、品質が安定する。
また、筬中115が成形品であるために精度よく製造することできるとともに品質が安定するために各鍵3が載置されてその高さを保持しながら回動可能とする保持面115d,115eを精度よく形成できるので、離鍵時の鍵3(白鍵3aおよび黒鍵3b)の前部上面の高さを均一にそろえることができる。したがって、部品構成をシンプルにできるとともに、部品共通化により組立てやすくすることができる。なおこのことは品質の安定化にも寄与する。また、離鍵時の鍵3(白鍵3aおよび黒鍵3b)の前部上面の高さを均一にそろえることにより、当該鍵盤装置1の外観を整えるとともに演奏をスムーズに行うことができる。
1…鍵盤装置、2a…下シャーシ、2b…後シャーシ、2c…支点軸部、2d…係合凹部、2e…基板取付部、2h…ネジ、3…鍵、3a…白鍵、3b…黒鍵、3c…鍵本体(鍵盤材)、3d…鍵カバー、3e…バランスピン孔、3f…平坦部、3g…段差面、5…鍵スイッチ、6…基板、7…スイッチ本体、8a…第1ネジ、8b…第2ネジ、8c…スペーサ、9…ストッパ、10…補強板、11…ネジ、12…バランスピン、12a…白鍵用バランスピン、12b…黒鍵用バランスピン、13…ネジ、14…調整ネジ、15…筬中、15a…筬中本体、15b…筬中本体の前側の上面、15c…筬中本体の後側の上面、15d…白鍵用のバランスパンチングクロス、15e…黒鍵用のバランスパンチングクロス、15f…凹部、15g…対向面、15h,15i…壁面、16…フロントピン、16a…白鍵用フロントピン、16b…黒鍵用フロントピン、18…鍵下限ストッパ、18a…鍵下限ストッパ、18b…鍵下限ストッパ、20…鍵上限ストッパ、40…ハンマー、42…ハンマー本体、46…おもり板、48…軸孔、115…筬中、115a…筬中本体、115b…筬中本体の前側の上面、115c…筬中本体の後側の上面、115d,115e…保持面

Claims (4)

  1. 演奏者に対向して左右方向に並ぶ木製の鍵盤材を用いた鍵がシャーシに固定された筬中に立設されるバランスピンを介して前後方向に回動可能に支持され、押鍵時に上方に回動する前記鍵の後端部がハンマーを回動動作させる鍵盤楽器の鍵盤装置において、
    前記筬中は、成形品であり、当該筬中の前後方向の前方縁部よりも後方に前記バランスピンが立設されることで当該筬中に前記バランスピン前方の部分が形成され、当該筬中の前記バランスピン前方の部分が押鍵時の白鍵の下面と当接せずに対向するとともに、黒鍵を支持する黒鍵用のバランスピンが立設する位置が、白鍵を支持する白鍵用のバランスピンが立設する位置よりも後方となるように設定されており、
    さらに、前記筬中の前記黒鍵用バランスピン前方には、左右方向の幅寸法が黒鍵の幅寸法よりも若干大きく設定されるとともに押鍵時の黒鍵の下面と当接せずに対向する対向面を有することで、押鍵時の黒鍵の下部をその内部に内包可能な凹部が形成されていること
    を特徴とする鍵盤楽器の鍵盤装置。
  2. 請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置において、
    前記対向面は、押鍵時の黒鍵の下面と略平行に形成されていることを特徴とする鍵盤楽器の鍵盤装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置において、
    前記筬中の前記バランスピン周囲には、前記バランスピンに回動可能に支持された前記鍵が載置されてその鍵盤高さを保持する保持面が形成されていることを特徴とする鍵盤楽器の鍵盤装置。
  4. 演奏者に対向して左右方向に並ぶ木製の鍵盤材を用いた鍵がシャーシに固定された筬中に立設されるバランスピンを介して前後方向に回動可能に支持され、押鍵時に上方に回動する前記鍵の後端部がハンマーを回動動作させる鍵盤楽器の鍵盤装置において、
    前記筬中は、成形品であり、当該筬中の前後方向の前方縁部よりも後方に前記バランスピンが立設されることで当該筬中に前記バランスピン前方の部分が形成され、当該筬中の前記バランスピン前方の部分が押鍵時の白鍵の下面と当接せずに対向するとともに、黒鍵を支持する黒鍵用のバランスピンが立設する位置が、白鍵を支持する白鍵用のバランスピンが立設する位置よりも後方となるように設定されており、
    さらに、前記筬中の黒鍵用のバランスピン周囲には、黒鍵が載置されてその高さを保持しながら回動可能とする保持面が形成され、前記保持面は、押鍵時に当該保持面によってその高さを保持されながら回動する黒鍵の下面が、前記筬中の前側の上面よりも上方に位置するように設定されていること
    を特徴とする鍵盤楽器の鍵盤装置。
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