以下、図1〜図9を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、鍵盤装置1を備えている。この鍵盤装置1は、楽器ケース(図示せず)内に組み込まれるものである。この鍵盤装置1は、並列に配列された複数の鍵2と、これら複数の鍵2の押鍵操作に応じて各鍵2それぞれにアクション荷重を付与するアクション機構3と、を備えている。
複数の鍵2は、図1および図2に示すように、白鍵2aおよび黒鍵2bを有し、これら白鍵2aおよび黒鍵2bが例えば88個並列に配列されている。これら複数の鍵2は、その前後方向(図2では左右方向)におけるほぼ中間部がそれぞれバランスピン4a、4bによって上下方向に回転可能に支持され、この状態でベース板5上に並列に配列されている。すなわち、白鍵2aと黒鍵2bとは、その前後方向の長さが異なり、白鍵2aの長さが黒鍵2bの長さよりも長く形成されている。
これに伴って、ベース板5上には、図2に示すように、複数の鍵2の各前端部(図2では右端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接するクッション材6a、6bが鍵2の配列方向に沿って設けられている。また、このベース板5上には、複数の鍵2の各後端部(図2では左端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接するクッション材7が鍵2の配列方向に沿って設けられている。
これにより、複数の鍵2は、図2に示すように、前部側のクッション材6a、6bと後部側のクッション材7とによって、各鍵ストロークが設定されている。さらに、このベース板5上には、複数の鍵2がその配列方向に横振れするのを防ぐためのガイドピン8a、8bがそれぞれ起立して設けられている。
アクション機構3は、図1〜図3に示すように、複数の鍵2の押鍵操作に応じてそれぞれ上下方向に回転する複数の伝達部材10と、これら複数の伝達部材10の各回転動作に応じてそれぞれ上下方向に回転して複数の鍵2それぞれにアクション荷重を付与する複数のハンマー部材11と、を備えている。この場合、複数の鍵2は、複数の伝達部材10の各重量によって、バランスピン4a、4bを中心に反時計回りに回転し、各鍵2それぞれを初期位置に押し上げて、各鍵2に初期荷重が付与されるように構成されている。
また、このアクション機構3は、図2および図3に示すように、複数の伝達部材10をそれぞれ回転自在に保持する複数の伝達保持部材12と、複数のハンマー部材11をそれぞれ回転自在に保持する複数のハンマー保持部材13と、を備えている。複数の伝達保持部材12は、鍵2の配列方向に沿って配置された伝達支持レール14上に取り付けられている。また、複数のハンマー保持部材13は、鍵2の配列方向に沿って配置されたハンマー支持レール15上に取り付けられている。これら伝達支持レール14およびハンマー支持レール15は、複数の支持部材16に支持されて、複数の鍵2の上方に配置されている。
複数の支持部材16は、図1〜図3に示すように、鍵2の配列方向の全長における予め定められた複数個所にそれぞれ位置した状態で、ベース板5上に起立して取り付けられている。この場合、複数の鍵2は全体で例えば88個配列されている。これに応じて、複数の支持部材16は、複数の鍵2の配列方向における両端部と、例えば20個の鍵2ごとに位置する3箇所の各鍵2間と、の個所に配置されている。すなわち、この実施形態では、支持部材16が鍵2の配列方向の全長における5箇所に配置されている。
この支持部材16は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、ベース板5上に取り付けられる取付部16aと、この取付部16a上に一体に形成されたブリッジ部16bと、を有している。これにより、支持部材16は、取付部16aがベース板5上に取り付けられることにより、ブリッジ部16bが鍵2の上方に突出した状態で、複数の鍵2の後部間に配置されるように構成されている。
この場合、ブリッジ部16bの後端下部、つまり取付部16aの後側上部(図2では左側上部)には、図2および図3に示すように、伝達支持レール14を支持する後側レール支持部16cが設けられている。また、ブリッジ部16bの前側上部(図2では右側上部)には、ハンマー支持レール15を支持する前側レール支持部16dが設けられている。さらに、ブリッジ部16bの後側上部(図2では左側上部)には、ストッパレール支持部16eが設けられており、ブリッジ部16bの上部には、基板レール支持部16fが設けられている。
伝達支持レール14は、図2および図3に示すように、帯板の両側部をその長手方向に沿って下側に向けて折り曲げた形状に形成され、複数の鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。この伝達支持レール14は、鍵2の配列方向における所定箇所が複数の支持部材16の各後側レール支持部16c上に取り付けられるように構成されている。
この伝達支持レール14上には、図2および図3に示すように、複数の伝達保持部材12および複数のストッパ支持部17が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。この場合、複数のストッパ支持部17は、金属板からなり、複数の支持部材16に対応する伝達支持レール14上の5箇所に、複数の伝達保持部材12の上方に突出した状態で取り付けられている。
伝達保持部材12は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図4(a)および図4(b)に示すように、本体板12a上に複数の軸支持部18が例えば10個程度の各鍵2に対した状態で鍵2の配列方向に沿って一体に形成されている。この軸支持部18は、伝達部材10が回転自在に取り付けられて伝達部材10の横触れを防ぐように構成されている。
すなわち、軸支持部18は、図4(a)および図4(b)に示すように、一対のガイド壁20と、これら一対のガイド壁20間に形成された伝達保持軸21と、を有している。一対のガイド壁20は、伝達保持部材12の本体板12a上の後端部(図4(a)では左端部)に、複数の伝達部材10それぞれと対応して形成されている。
これら一対のガイド壁20は、図4(a)に示すように、伝達部材10の後述する伝達嵌合部23を両側から摺動可能に挟んだ状態で、伝達部材10の伝達嵌合部23を回転可能にガイドするガイド部を構成している。伝達保持軸21は、図4(b)に示すように、ほぼ丸棒状をなし、その外周面の両側が切り欠かれていることにより、断面形状が非円形状に形成されている。
また、この伝達保持部材12は、図2〜図4に示すように、梱包輸送時に伝達部材10の横触れを規制する規制部19を有している。この規制部19は、伝達保持部材12の本体板12aの前部(図4(a)では右側部)上に各伝達部材10と対応して形成された一対の規制壁である。この規制部19は、伝達部材10の後側下部を挟んだ状態で、伝達部材10を回転可能にガイドするほか、梱包輸送時に伝達部材10の横振れを規制するように構成されている。
伝達部材10は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2〜図5に示すように、鍵2の押鍵操作に応じて上下方向に回転してハンマー部材11を上下方向に回転させる伝達本体部22と、この伝達本体部22に一体に形成されて伝達保持部材12の伝達保持軸21に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部23と、を有している。
伝達本体部22は、図2、図3および図5に示すように、ほぼワッフル形状に形成されている。すなわち、この伝達本体部22は、図5に示すように、厚みの薄い縦板部22aと、この縦板部22aの外周部および両側面にほぼ格子状に形成された複数のリブ部22bと、を有し、これらがワッフル形状に形成されている。この場合、伝達本体部22は、縦板部22aの形状や厚みおよび複数のリブ部22bの形成密度によって、伝達部材10の重量が調整されるように構成されている。
例えば、複数のリブ部22bは、図5(a)および図5(b)に示すように、縦板部22aの両側面にほぼ格子状に設けられていると共に、これら格子状のうち、一部の格子内に更に升目の細かい複数のリブ部22cが設けられた構成になっている。すなわち、これら升目の細かい複数のリブ部22cは、縦板部22aの中心部の下側に位置する2つの格子内と、縦板部22aの中心部よりも前側に位置する前端部の格子内とに設けられている。
これにより、この伝達部材10は、図5(a)に示すように、伝達本体部22の縦板部22aの形状や厚みおよび複数のリブ部22b、22cの形成密度によって、重量が設定されている。また、この伝達部材10は、複数のリブ部22b、22cの形成状態、つまり複数のリブ部22bの一部に設けられた升目の細かい複数のリブ部22cの形成位置によって伝達部材10の重心位置Gが伝達本体部22の中心部からずれた位置に設定されている。
また、この伝達部材10は、その伝達本体部22の縦板部22aの厚みが薄く形成されていても、複数のリブ部22b、22cによって強度が確保されている共に、合成樹脂で成形する際に、複数のリブ部22b、22cによって縦板部22aにヒケが発生するのを防ぐように構成されている。
伝達嵌合部23は、図2、図3および図5に示すように、全体が逆C字形状に形成され、伝達本体部22の後端部に後方に突出して形成されている。すなわち、この伝達嵌合部23は、図4(a)に示すように、鍵2の配列方向の厚みが軸支持部18の一対のガイド壁20間の長さとほぼ同じ長さに形成されて、一対のガイド壁20間に摺動可能に挿入されるように構成されている。
また、この伝達嵌合部23は、図5(a)に示すように、その中心部に伝達保持部材12の伝達保持軸21が嵌合する嵌合孔23aが形成され、この嵌合孔23aの周囲における一部、つまり嵌合孔23aの周囲における後部に伝達保持軸21が挿脱可能に挿入される挿入口23bが形成され、この挿入口23bを通して伝達保持軸21が嵌合孔23aに挿入されることにより、伝達保持軸21に回転可能に取り付けられるように構成されている。
この場合、伝達嵌合部23は、図5(a)に示すように、挿入口23bを通して伝達保持軸21が嵌合孔23aに挿入される際に、伝達部材10を伝達保持軸21の上方に起立させて挿入口23bを伝達保持軸21の両側が切り欠かれた個所に対応させ、この状態で挿入口23bを伝達保持軸21に圧入する際に、挿入口23bが伝達保持軸21で少し押し広げられることにより、伝達保持軸21が嵌合孔23aに挿入されて嵌合するように構成されている。
ところで、伝達部材10の伝達本体部22における後側下部には、図2〜図5に示すように、伝達保持部材12の規制部19に規制される肉厚の薄い係合部24が設けられている。この係合部24は、図4および図5に示すように、伝達本体部22の後側下部の両側面が切り欠かれている。
このため、係合部24は、図4および図5に示すように、その厚みが規制部19の一対の規制壁間とほぼ同じ長さに形成されている。これにより、係合部24は、規制部19の一対の規制壁間に挿入されることにより、伝達部材10を回転可能にガイドするほか、梱包輸送時に伝達部材10の横振れを規制するように構成されている。
また、この伝達部材10の伝達本体部22は、図2〜図5に示すように、その下部が鍵2の上面に向けて突出して形成されている。この伝達本体部22の下端部には、伝達フェルト25が設けられている。この伝達フェルト25は、鍵2の後側上部に設けられたキャプスタン26が下側から当接するように構成されている。
これにより、伝達部材10は、図2および図3に示すように、鍵2が押鍵された際に、伝達フェルト25に下側から当接する鍵2のキャプスタン26によって押し上げられて、伝達保持軸21を中心に反時計回りに回転するように構成されている。また、伝達部材10の伝達本体部22は、その前端上部が後端上部よりも高く形成され、これにより上辺部が後部下がり(図2では左下がり)に傾斜するように形成されている。
この伝達本体部22の前端上部には、図2〜図5に示すように、支持部22dが上方に向けて突出して設けられている。すなわち、この支持部22dは、後述するハンマー部材11に当接することなく、ハンマー部材11の側面に沿って上下方向に移動するように構成されている。また、この支持部22dの側面には、後述する連動制御部27の連動突起部28が設けられている。
一方、ハンマー支持レール15は、図1〜図3に示すように、伝達支持レール14と同様、帯板の両側部をその長手方向に沿って下側に向けて折り曲げた形状に形成され、複数の鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。このハンマー支持レール15は、鍵2の配列方向における所定箇所が複数の支持部材16の各前側レール支持部16d上に取り付けられるように構成されている。このハンマー支持レール15上には、複数のハンマー保持部材13が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。
ハンマー保持部材13は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図6および図7に示すように、上方が開放されたレール状の本体板13aの後端部に軸支持部13bが例えば10個程度の各鍵2に対した状態で鍵2の配列方向に沿って一体に形成されている。この軸支持部13bは、ハンマー部材11が回転自在に取り付けられて、ハンマー部材11の横振れを防ぐように構成されている。
すなわち、この軸支持部13bは、図2、図3、図6および図7に示すように、一対のガイド壁30と、これら一対のガイド壁30間にそれぞれ形成されたハンマー保持軸31と、を有している。一対のガイド壁30は、本体板13aの後端部(図6(b)では左端部)に、複数のハンマー部材11それぞれと対応して形成されている。
これら一対のガイド壁30は、図6(a)および図6(b)に示すように、ハンマー部材11の後述するハンマー嵌合部34を両側から摺動可能に挟んだ状態で、ハンマー部材11のハンマー嵌合部34を回転可能にガイドするガイド部を構成している。ハンマー保持軸31は、図6(b)に示すように、ほぼ丸棒状をなし、伝達保持軸21と同様、その外周面の両側が切り欠かれていることにより、断面形状が非円形状に形成されている。
ハンマー部材11は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図6および図7に示すように、ハンマー部32とハンマーアーム33とを有し、これらが一体に形成された構成になっている。この場合、ハンマー部材11は、図7(a)〜図7(d)に示すように、鍵2における白鍵2aと黒鍵2bとで、その構成の一部、つまり後述する上限ストッパ37に当接するストッパ当接部43a、43bが異なるように構成されている。
ハンマー部32は、図6および図7に示すように、杓子形状の縦板部32aを有し、その外周部およびその両側面に複数のリブ部32bが形成された構成になっている。ハンマー部32は、杓子形状の縦板部32aの形状および複数のリブ部32bの形成密度によって、ハンマー部材11の重量が調整されるように構成されている。
ハンマーアーム33は、図6および図7に示すように、前後方向の長さが伝達部材10とほぼ同じ長さの横板部33aを有し、その外周部および両側面にリブ部33bが形成された構成になっている。このハンマーアーム33の前端部(図7では右端部)には、ハンマー保持部材13に回転自在に取り付けられるハンマー嵌合部34が形成されている。
このハンマー嵌合部34は、図7に示すように、伝達嵌合部23と同様、全体がC字形状に形成され、ハンマーアーム33の前端部に前方に突出して形成されている。すなわち、このハンマー嵌合部34は、図6(a)に示すように、鍵2の配列方向の厚みが一対のガイド壁30間とほぼ同じ長さに形成されて、一対のガイド壁30間に摺動可能に挿入されるように構成されている。
また、このハンマー嵌合部34は、図7に示すように、その中心にハンマー保持部材13のハンマー保持軸31が嵌合する嵌合孔34aが形成され、この嵌合孔34aの周囲における一部、つまり嵌合孔34aの周囲における前部にハンマー保持軸31が挿脱可能に挿入される挿入口34bが形成され、この挿入口34bを通してハンマー保持軸31が嵌合孔34aに挿入されることにより、ハンマー保持軸31に回転可能に取り付けられるように構成されている。
この場合、ハンマー嵌合部34は、図7に示すように、挿入口34bを通してハンマー保持軸31が嵌合孔34aに挿入される際に、ハンマー保持部材13をハンマー部材11の前方(図7では右側)に後部下りに傾けて、挿入口34bをハンマー保持軸31の両側が切り欠かれた個所に対応させ、この状態で挿入口34bがハンマー保持軸31に圧入される際に、挿入口34bがハンマー保持軸31で少し押し広げられることにより、ハンマー保持軸31が嵌合孔34aに挿入されて嵌合するように構成されている。
すなわち、ハンマー保持部材13は、図3に示すように、ハンマー部材11が取り付けられる前に、後述する連動制御部27によって伝達部材10に連結されていることにより、図7においてハンマー嵌合部34の挿入口34bをハンマー保持軸31に対応させるために、ハンマー保持部材13を後部下りに傾け、この状態でハンマー保持軸31を嵌合孔34aに挿入して嵌合させた後に、ハンマー支持レール15上に取り付けられるように構成されている。
また、ハンマーアーム33の前端下部には、図3および図8に示すように、取付部33cが下方に向けて突出して設けられている。すなわち、この取付部33cは、伝達部材10の支持部22dの側面に対面し、この状態で支持部22dの側面に沿って上下方向に移動するように構成されている。また、この取付部33cには、後述する連動制御部27の連動突起部28をガイドするガイド孔29が設けられている。
また、このハンマーアーム33は、図2および図3に示すように、その後端下部が下限ストッパ35に上方から当接することにより、初期位置である下限位置に規制されるように構成されている。すなわち、この下限ストッパ35は、伝達支持レール14上に設けられた複数のストッパ支持部17に支持された下限ストッパレール36上に取り付けられている。これにより、ハンマー部材11は、ハンマーアーム33の後端下部が下限ストッパ35に上方から当接することにより、後部下がりに傾斜した状態で、初期位置に位置規制されるように構成されている。
また、このハンマーアーム33は、図7および図9に示すように、鍵2が押鍵操作された際に、ハンマーアーム33の後端上部に設けられた鍵ストローク設定部43が上限ストッパ37に下方から当接することにより、上限位置が規制されるように構成されている。この場合、上限ストッパ37は、複数の支持部材16の各ストッパレール支持部16eに取り付けられた上限ストッパレール38の下面に取り付けられている。
これにより、ハンマー部材11は、図9に示すように、ハンマーアーム33がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に時計回りに回転した際に、ハンマーアーム33の後端上部に設けられた鍵ストローク設定部43が上限ストッパ37に下方から当接することにより、上限位置が規制されるように構成されている。
鍵ストローク設定部43は、図3および図9に示すように、ハンマーアーム33と上限ストッパ37との間の距離を設定することにより、鍵2の鍵ストロークを設定するように構成されている。この場合、白鍵2aと黒鍵2bとは、図2に示すように、その前後方向の長さが異なり、白鍵2aの長さが黒鍵2bの長さよりも長く形成されている。
このため、白鍵2aと黒鍵2bとの各鍵ストロークが前部側のクッション材6a、6bと後部側のクッション材7とによって調整されているが、白鍵2aが伝達部材10を押し上げる長さと、黒鍵2bが伝達部材10を押し上げる長さとが異なっている。すなわち、白鍵2aに対応するハンマー部材11は、ハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に回転する際、その回転量(つまり回転角)が、黒鍵2bに対応するハンマー部材11の回転量(つまり回転角)よりも小さい。
これに伴って、白鍵2aに対応するハンマー部材11の鍵ストローク設定部43は、図7(a)〜図7(d)に示すように、白鍵2aに対応するハンマー部材11に設けられた白鍵用のストッパ当接部43aと、黒鍵2bに対応するハンマー部材11に設けられた黒鍵用のストッパ当接部43bとを有し、これらによって白鍵2aに対応するハンマー部材11と黒鍵2bに対応するハンマー部材11とが同じ回転量(つまり同じ回転角)で上限ストッパ37に当接するように構成されている。
このため、白鍵用のストッパ当接部43aは、図7(a)に示すように、白鍵2aの鍵ストロークに応じて突出する高さ、例えばハンマーアーム33の上面とほぼ同じ高さで形成されている。また、黒鍵用のストッパ当接部43bは、図7(c)に示すように、黒鍵2bの鍵ストロークに応じて突出する高さ、例えばハンマーアーム33の上面から突出した高さで形成されている。
一方、ハンマーアーム33の前端上部には、図2および図9に示すように、スイッチ押圧部39が形成されている。このハンマーアーム33のスイッチ押圧部39に対応する上方には、スイッチ基板40が一対の基板支持レール41によって配置されている。これら一対の基板支持レール41は、それぞれ断面がL字形状に形成された長板であり、鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。
これら一対の基板支持レール41は、図1〜図3に示すように、その各水平部が複数の支持部材16の各基板レール支持部16f上に所定間隔離れた状態で取り付けられている。スイッチ基板40は、図1に示すように、複数に分割されている。すなわち、この実施形態では、スイッチ基板40が例えば4つに分割されて20個程度の各鍵2に対応する長さで、一対の基板支持レール41上に取り付けられている。
これらスイッチ基板40の下面には、図2および図9に示すように、ゴムスイッチ42がそれぞれ設けられている。このゴムスイッチ42は、鍵2の配列方向に長いゴムシートに逆ドーム状の膨出部42aが複数のハンマーアーム33にそれぞれ対応して形成された構成になっている。この膨出部42aの内部には、スイッチ基板40の下面に設けられた複数の固定接点(図示せず)に接離可能に接触する複数の可動接点42bがハンマーアーム33の前後方向に沿って設けられている。
これにより、ゴムスイッチ42は、図9に示すように、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に時計回りに回転して、ハンマーアーム33のスイッチ押圧部39によって下側から押圧された際に、逆ドーム状の膨出部42aが弾性変形して、複数の可動接点42bが時間を持って順次、複数の固定接点に接触することにより、鍵2の押鍵強さに応じたスイッチ信号を出力するように構成されている。そして、このスイッチ信号は、音源部40aに供給され、鍵2の押鍵強さに応じた楽音が生成される。
ところで、連動制御部27は、図2および図3に示すように、伝達部材10の支持部22dに設けられた連動突起部28と、ハンマー部材11の取付部33cに設けられて連動突起部28をガイドするガイド孔29とを有している。これにより、連動制御部27は、押鍵操作された鍵2に対応する伝達部材10の回転動作に伴うハンマー部材11の回転動作を、ガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な動作によって制御するように構成されている。
すなわち、連動制御部27の連動突起部28は、図5および図8に示すように、棒状の突起本体28aと、この突起本体28aの外周に設けられた円筒状の緩衝部28bと、を備えている。突起本体28aは、図8(a)〜図8(c)に示すように、丸棒状に形成されている。
この突起本体28aは、図3〜図5に示すように、伝達部材10の伝達本体部22に設けられた支持部22dの前端上部に、鍵2の配列方向に向けて突出した状態で、一体に形成され、ハンマー部材11の取付部33cに設けられたガイド孔29に移動可能に挿入するように構成されている。この突起本体28aは、その先端外周にフック部28cが環状に形成されている。
緩衝部28bは、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの弾力性を有する合成樹脂からなり、図8(a)〜図8(c)に示すように、ほぼ円筒状に形成されている。この緩衝部28bは、その内径が突起本体28aの外径とほぼ同じ大きさで、かつその軸方向の長さが突起本体28aの軸方向の長さ、つまり支持部22dとフック部28cとの間の長さと同じ長さに形成されている。
また、この緩衝部28bの一端部には、図8(a)〜図8(c)に示すように、支持部22dに当接する摺動突起28dが鍔状に形成されている。これにより、緩衝部28bは、突起本体28aの外周に装着された際に、鍔状の摺動突起28dが支持部22dに当接し、反対側に位置する端部が突起本体28aのフック部28cに当接することにより、支持部22dとフック部28cとの間に挟まれた状態で、突起本体28aに取り付けられるように構成されている。
一方、連動制御部27のガイド孔29は、図3、図8(a)および図9に示すように、連動突起部28が移動可能に挿入する長孔であり、ハンマー部材11のハンマーアーム33の前端下部に設けられた取付部33cに設けられている。このガイド孔29は、伝達部材10が伝達保持軸21を中心に回転動作し、かつハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に回転動作する際における、連動突起部28の相対的な動作軌跡(つまり移動軌跡)に沿って長く形成された長孔である。
すなわち、このガイド孔29は、図3、図8(a)および図9に示すように、その長手方向の中心線が、後下がり(図3では左下がり)に傾斜して設けられている。また、このガイド孔29は、その長手方向と直交する方向の長さ(孔幅)が、連動突起部28の外径つまり緩衝部28bの外径とほぼ同じ大きさで、その長手方向の長さが連動突起部28の外径の1.5倍〜2倍程度の長さに形成されている。
この場合、ガイド孔29は、図3、図8(a)および図9に示すように、その内部に連動突起部28が挿入された状態で移動する際に、ガイド孔29の内周面に連動突起部28の緩衝部28bが弾力的に接触して移動すると共に、ガイド孔29の側縁部つまりハンマー部材11の取付部33cの側面に緩衝部28bの摺動突起29dが弾力的に接触して摺動することにより、ハンマー部材11の取付部33cが伝達部材10の支持部22dに直接接触しないように構成されている。
これにより、連動制御部27は、図3および図9に示すように、押鍵操作された鍵2に対応する伝達部材10が回転動作し、この伝達部材10の回転動作に伴ってハンマー部材11を連動させて回転動作させる際に、そのハンマー部材11の回転動作を、ガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な動作によって制御するように構成されている。
すなわち、この連動制御部27は、図3に示すように、鍵2が押鍵操作されて伝達部材10が伝達保持軸21を中心に反時計回りに回転する際に、伝達部材10の回転に伴って連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接してガイド孔29の前端上部を押し上げることにより、ハンマー保持軸31を中心にハンマー部材11を時計回りに回転させるように構成されている。
また、この連動制御部27は、図9に示すように、ハンマー部材11が押し上げられる際に、連動突起部28がガイド孔29に沿って移動可能な状態になることにより、伝達部材10の回転速度とハンマー部材11の回転速度とが同じであっても、また異なっていても、伝達部材10とハンマー部材11とを連動させて回転動作させるように構成されている。
また、この連動制御部27は、図9に示すように、押鍵操作された鍵2が初期位置に戻る際に、連動突起部28がガイド孔29に対して相対的に移動可能な状態であることにより、伝達部材10がその自重によって伝達保持軸21を中心に時計回りに回転すると共に、ハンマー部材11がその自重によってハンマー保持軸31を中心に反時計回りに回転するように構成されている。
さらに、この連動制御部27は、図3に示すように、伝達部材10およびハンマー部材11が初期位置に戻った際に、連動突起部28がガイド孔29の前端上部に向けて移動することにより、連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接または接近するように構成されている。
次に、このような電子鍵盤楽器の鍵盤装置1の作用について説明する。
この鍵盤装置1では、鍵2が押鍵操作されていない初期状態のときに、伝達部材10がその自重で伝達保持部12の伝達保持軸21を中心に時計回りに回転して、伝達本体部22の下面に設けられた伝達フェルト25が鍵2のキャプスタン26に上方から当接する。
このときには、伝達部材10の重量、つまり伝達本体部22の縦板部22aの形状や厚みおよび複数のリブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量が鍵2のキャプスタン26に上方から加わる。これにより、鍵2が伝達部材10によって押されてバランスピン4a、4bを中心に反時計回りに回転し、鍵2の後端部がクッション材6a、6bに当接して、鍵2が初期位置に規制されると共に、伝達部材10も初期位置に規制されている。
また、このときには、ハンマー部材11がその自重でハンマー保持部13のハンマー保持軸31を中心に反時計回りに回転して、ハンマーアーム33が下限ストッパ36に当接して下限位置に位置規制されている。この状態では、ハンマー部材11のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40のゴムスイッチ42から下側に離れた位置に配置される。このため、ゴムスイッチ42は、その膨出部42aが膨張した自由状態になり、複数の可動接点42bが固定接点(図示せず)から離れることにより、オフ状態になっている。
次に、このような状態の鍵2を押鍵操作して演奏する場合について説明する。
この場合には、鍵2が押鍵操されると、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に図3において時計回りに回転し、鍵2のキャプスタン26が伝達部材10を押し上げる。このときには、伝達部材10の重量である伝達本体部22の縦板部22aの形状や厚みおよび複数のリブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量が、鍵2に初期荷重として付与される。
これにより、伝達部材10がその自重に抗して伝達保持部材12の伝達保持軸21を中心に図3において反時計回りに回転する。すると、伝達部材10の回転動作が連動制御部27によってハンマー部材11に伝達され、ハンマー部材11がその自重に抗して押上げられる。すなわち、伝達部材10が図3において反時計回りに回転すると、この伝達部材10の回転に伴って連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接してガイド孔29の前端上部を押し上げる。
これにより、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に図3において時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。すなわち、ハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に図3において時計回りに回転する際には、ハンマー部材11の慣性モーメントによって鍵2にアクション荷重が付与される。この場合、ハンマーアーム33は、図3および図9に示すように、鍵2の前後方向の長さが伝達部材10とほぼ同じ長さに形成され、このハンマーアーム33の後端部にハンマー部32が形成されている。
この状態で、ハンマーアーム33のハンマー嵌合部34がハンマー保持軸31に回転可能に取り付けられているので、ハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に時計回りに回転する際には、ハンマー部材11に慣性モーメントが発生する。この慣性モーメントによる負荷が連動制御部27および伝達部材10を介して鍵2にアクション荷重として付与される。これにより、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感が得られる。
このようにハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に時計回りに回転すると、図9に示すように、ハンマーアーム33のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42の逆ドーム状の膨出部42aを下側から押圧する。これにより、逆ドーム状の膨出部42aが弾性変形して、膨出部42a内の複数の可動接点42bが時間間隔を持って順次、複数の固定接点に接触する。
このときには、押鍵された鍵2に応じたスイッチ信号が音源部40aに供給され、この音源部40aで楽音データが生成され、この生成された楽音データに基づいて発音部としてのスピーカ(図示せず)から楽音を発生する。そして、ハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に更に時計回りに回転すると、ハンマーアーム33が上限ストッパ37に下側から当接して、ハンマー部材11の回転が規制されて停止する。
すなわち、ハンマーアーム33に設けられた鍵ストローク設定部43が上限ストッパ37に下側から当接することにより、ハンマーアーム33の回転量が規制されている。例えば、白鍵2aに対応するハンマー部材11が回転した際には、ハンマーアーム33の白鍵用のストッパ当接部43aが上限ストッパ37に下側から当接する。また、黒鍵2bに対応するハンマー部材11が回転した際には、ハンマーアーム33の黒鍵用のストッパ当接部43bが上限ストッパ37に下側から当接する。
この場合、白鍵用のストッパ当接部43aは、ハンマーアーム33の上面とほぼ同じ高さで形成されており、黒鍵用のストッパ当接部43bは、ハンマーアーム33の上面から突出した高さで形成されている。このため、白鍵2aと黒鍵2bとは、その前後方向の長さが異なり、白鍵2aの長さが黒鍵2bの長さよりも長く形成されている。これにより、白鍵2aの鍵ストロークと黒鍵2bの鍵ストロークとがこの長さの分だけ異なることになるが、白鍵用のストッパ当接部43aと黒鍵用のストッパ当接部43bとによって各鍵2の鍵ストロークが同じ長さ、もしくは通常のピアノの演奏感に合うように黒鍵の鍵ストロークの長さを白鍵よりやや短くするように設定されている。
すなわち、白鍵用のストッパ当接部43aは、ハンマーアーム33の上面とほぼ同じ高さで形成されていることにより、白鍵2aの鍵ストロークに応じてハンマーアーム33と上限ストッパ37との間の距離を設定している。また、黒鍵用のストッパ当接部43bは、ハンマーアーム33の上面から突出した高さで形成されていることにより、黒鍵2bの鍵ストロークに応じてハンマーアーム33と上限ストッパ37との間の距離を設定している。
これにより、押鍵操作された白鍵2aに対応するハンマー部材11が回転した際におけるハンマー部材11の回転量(回転角)と、押鍵操作された黒鍵2bに対応するハンマー部材11が回転した際におけるハンマー部材11の回転量(回転角)とが、同じもしくは黒鍵の方をやや小さくすることにより、白鍵2aに対応するハンマー部材11と黒鍵2bに対応するハンマー部材11とが同じ回転量(回転角)もしくは黒鍵の方がやや小さい回転量(回転角)で上限ストッパ37に当接する。このため、白鍵2aと黒鍵2bとが同じ、もしくは黒鍵のほうがやや短い鍵ストロークになる。
この後、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作(復帰動作)を開始する際には、連動突起部28がガイド孔29に対して相対的に移動可能な状態で、伝達部材10がその自重で時計回りに回転して初期位置に戻ると共に、ハンマー部材11がその自重で反時計回りに回転して初期位置に戻る。これにより、鍵2が初期位置に戻り、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接または接近した状態になる。
ところで、このような鍵盤装置1において、鍵2を軽い力(弱い力)で押鍵操作した場合には、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に時計回りにゆっくり回転し、鍵2のキャプスタン26が伝達部材10をゆっくり押し上げる。このときには、伝達部材10の重量である伝達本体部22の縦板部22aの形状や厚みおよび複数のリブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量が、静的荷重として鍵2に付与される。
これにより、伝達部材10がその自重に抗して伝達保持部材12の伝達保持軸21を中心に反時計回りにゆっくり回転し、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部をゆっくり押し上げる。これに伴って、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に時計回りにゆっくり回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。
そして、ハンマー部材11のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42を押圧してスイッチ動作させ、ハンマー部材11の後端上部が上限ストッパ37に下側から当接して、ハンマー部材11の回転が停止される。
このときには、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接した状態を維持する。この状態で、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作(復帰動作)を開始すると、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接または接近した状態で、伝達部材10がその自重で時計回りに回転して初期位置に戻ると共に、ハンマー部材11がその自重で反時計回りに回転して初期位置に戻り、鍵2を初期位置に戻す。
一方、このような鍵盤装置1において、鍵2を強い力で押鍵操作した場合には、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に時計回りに速い速度で回転し、鍵2のキャプスタン26が伝達部材10を速い速度で押し上げる。このときには、伝達部材10の伝達本体部22に加速度が生じる。
このため、伝達本体部22の縦板部22aの形状や厚みおよび複数のリブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量、および縦板部22aの形状や厚みおよび複数のリブ部22b、22cの形成位置によって設定されている重心位置Gに応じて、動的荷重が発生し、この動的荷重が鍵2に付与されると共に、ハンマー部材11にも付与される。
これにより、伝達部材10が伝達保持部材12の伝達保持軸21を中心に反時計回りに速い速度で回転する。このときには、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部を速い速度で急激に押し上げる。このため、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に時計回りに速い速度で急激に回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。このとき、ハンマー部材11の回転速度が伝達部材10の回転速度よりも速い場合には、連動制御部27のガイド孔29の前端上部が連動突起部28から離れ、連動突起部28がガイド孔29内をその後端下部に向けて相対的に移動する。
そして、ハンマー部材11のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42を急激に押圧してスイッチ動作させ、ハンマー部材11の後端上部、つまり白鍵用のストッパ当接部43aまたは黒鍵用のストッパ当接部43bが上限ストッパ37に下側から急激に当接する。このため、ハンマー部材11は、上限ストッパ37で撥ね返される。
このときには、図9に示すように、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部から相対的に離れているため、ハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に反時計回り方向に回転し、連動制御部27のガイド孔29の前端上部が連動突起部28に当接または接近する。このため、ハンマー部材11は、上限ストッパ37から離れた位置で停止するか、または伝達部材10を時計回り方向に僅かに回転させる。これにより、ハンマー部材11の撥ね返りが抑制される。
そして、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作(復帰動作)を開始すると、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29に沿って移動可能な状態でガイド孔29の前端上部に当接し、この状態で伝達部材10がその自重で時計回りに回転して初期位置に戻ると共に、ハンマー部材11がその自重で反時計回りに回転して初期位置に戻り、鍵2を初期位置に戻す。
また、この鍵盤装置1で1つの鍵2を続けて押鍵操作する所謂連打操作した場合には、一度、鍵2が押鍵操作され、ハンマー部材11が押し上げられて上限位置に到達し、ハンマー部材11、伝達部材10、および鍵2が初期位置に戻る途中で、同じ鍵2が再び押鍵操作される。
このときには、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29に沿って移動可能である。このため、ハンマー部材11の戻り方向への回転速度と、伝達部材10の戻り方向への回転速度とが、同じ速度であっても、また異なる速度であっても、ハンマー部材11および伝達部材10がそれぞれ自重によって初期位置に向けて戻り動作し、これに伴って鍵2も初期位置に向けて戻り動作する。この鍵2の戻り動作の途中で鍵2が再び押鍵操作されると、初期位置への戻り途中の伝達部材10が鍵2のキャプスタン26によって再び押し上げられる。
すると、戻り途中の伝達部材10が伝達保持軸12を中心に再び反時計回りに回転する。このときには、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29に沿って移動してガイド孔29の前端上部を押し上げる。これにより、初期位置への戻り途中のハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に再び時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与して、ゴムスイッチ42を押圧してスイッチ動作させる。
このため、1つの鍵2を連打操作する際に、連動制御部27のガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な移動によって、ハンマー部材11の戻り動作および伝達部材10の戻り動作を制御する。これにより、1つの鍵2を続けて押鍵する連打操作が良好にでき、連打性能の向上が図れる。
このように、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1によれば、複数の鍵2と、これら複数の鍵2それぞれに対応して設けられ、複数の鍵2それぞれの押鍵操作に応じて回転動作することにより、押鍵操作されている鍵2に対してアクション荷重を付与する複数のハンマー部材11と、これら複数のハンマー部材11それぞれに設けられ、複数の鍵2それぞれの鍵ストロークを設定する複数の鍵ストローク設定部43と、を備えていることにより、簡単な構造で、容易に鍵ストロークを設定することができる。
すなわち、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1では、複数のハンマー部材11それぞれに複数の鍵ストローク設定部43を設けるだけで良いので、構造が簡単であり、かつ複数の鍵ストローク設定部43によって複数の鍵2それぞれの鍵ストロークを確実にかつ精度良く設定することができ、このため簡単な構造で、容易に鍵ストロークを設定することができる。
また、この鍵盤装置1では、複数の鍵2それぞれに対応して設けられ、これら複数の鍵2それぞれの押鍵操作に応じて変位することにより、複数のハンマー部材11それぞれを回転動作させる複数の伝達部材10を備えていることにより、複数の鍵2それぞれが押鍵された際に、その押鍵された鍵2によって伝達部材10が押し上げられ、この押し上げられた伝達部材10によって押鍵された鍵2に対応するハンマー部材11を確実にかつ良好に回転させることができる。
この場合、複数の鍵ストローク設定部43それぞれは、複数のハンマー部材11それぞれの上限位置を規制する上限ストッパ37に、複数の鍵2それぞれの押鍵操作に応じて当接することにより、複数の鍵2それぞれの鍵ストロークを設定することにより、ハンマー部材11と上限ストッパ37との間の距離を鍵ストローク設定部43によって各鍵2の鍵ストロークに応じて設定することができ、これにより複数の鍵2の各鍵ストロークを均一に設定することができる。
また、この鍵盤装置1では、複数の鍵2が複数の白鍵2aと複数の黒鍵2bとを有し、複数の白鍵2aそれぞれに対応するハンマー部材11の回転量と、複数の黒鍵2bそれぞれに対応するハンマー部材11の回転量とが、複数の鍵ストローク設定部43によって設定されていることにより、白鍵2aを押鍵した際のハンマー部材11の回転量と黒鍵2bを押鍵した際のハンマー部材11の回転量とに大きな差が生じても、鍵ストローク設定部43によって白鍵2aに対応するハンマー部材11と黒鍵2bに対応するハンマー部材11との各回転量を同じ回転量、もしくは黒鍵2bの方がやや小さい回転量にすることができる。
すなわち、この鍵盤装置1では、白鍵2aの長さが黒鍵2bの長さよりも長く形成されていることにより、白鍵2aに対応するハンマー部材11の回転量が黒鍵2bに対応するハンマー部材11の回転量よりも小さくなり、これにより白鍵2aに対応するハンマー部材11の回転量と黒鍵2bに対応するハンマー部材11の回転量とに大きな差が生じるが、鍵ストローク設定部43によって白鍵2aに対応するハンマー部材11と黒鍵2bに対応するハンマー部材11との各回転量を同じ回転量、もしくは黒鍵2bの方がやや小さい回転量とすることができる。
この場合、鍵ストローク設定部43は、白鍵2aに対応するハンマー部材11に設けられた白鍵用のストッパ当接部43aと、黒鍵2bに対応するハンマー部材11に設けられた黒鍵用のストッパ当接部43bとを有し、白鍵用のストッパ当接部43aによって白鍵2aの鍵ストロークに応じて上限ストッパ37に対する距離を設定し、黒鍵用のストッパ当接部43bによって黒鍵2bの鍵ストロークに応じて上限ストッパ37に対する距離を設定していることにより、白鍵2aと黒鍵2bとの各鍵ストロークを同じ長さ、もしくは黒鍵2bの方がやや短いストロークに設定することができる。
すなわち、鍵ストローク設定部43は、白鍵用のストッパ当接部43aによって設定された上限ストッパ37に対する距離と、黒鍵用のストッパ当接部43bによって設定された上限ストッパ37に対する距離とを、白鍵2aに対応するハンマー部材11の回転量と黒鍵2bに対応するハンマー部材11の回転量との差に応じて設定することができ、これにより白鍵2aに対応するハンマー部材11と黒鍵2bに対応するハンマー部材11との各回転量を同じ、もしくは黒鍵2bの方がやや小さい回転量とすることができるので、白鍵2aと黒鍵2bとの各鍵ストロークを同じ長さ、もしくは黒鍵2bの方がやや短いストロークに設定することができる。
この場合、白鍵用のストッパ当接部43aは、白鍵2aの鍵ストロークに応じた突出高さ、例えばハンマーアーム33の上面とほぼ同じ高さのリブで形成されており、また黒鍵用のストッパ当接部43bは、黒鍵2bの鍵ストロークに応じた突出高さ、例えばハンマーアーム33の上面から突出した高さで形成され、その上限ストッパ37が当接する面には十字状のリブが設けられている。
これにより、白鍵2aそれぞれに対応するハンマー部材11の回転量それぞれを均一にすると共に、黒鍵2bそれぞれに対応するハンマー部材11の回転量それぞれを均一にすることができる。この結果、白鍵2a同士の鍵ストロークを均一にすることができると共に、黒鍵2b同士の鍵ストロークを均一にすることができる。
また、白鍵用のストッパ当接部43aは、白鍵2aに対応するハンマー部材11のハンマーアーム33に一体に形成されており、黒鍵用のストッパ当接部43bは、黒鍵2bに対応するハンマー部材11のハンマーアーム33に一体に形成されていることにより、白鍵用のストッパ当接部43aと黒鍵用のストッパ当接部43bとを精度よく製作することができ、このため各白鍵2aに対応するハンマー部材11の回転量のばらつきを抑えることができると共に、各黒鍵2bに対応するハンマー部材11との回転量のばらつきを抑えることができる。これにより、白鍵2a同士の鍵ストロークを均一にすることができると共に、黒鍵2b同士の鍵ストロークを均一にすることができる。
なお、上述した実施形態では、連動制御部27の連動突起部28を伝達部材10に設け、ガイド孔29をハンマー部材11に設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば連動突起部28をハンマー部材11の取付部33cに設け、ガイド孔29を伝達部材10の支持部22dに設けた構成であっても良い。
この場合には、鍵2が弱い力で押鍵された際に、伝達部材10のガイド孔29の後端下部にハンマー部材11の連動突起部28が当接した状態でハンマー部材11をゆっくり押し上げて回転させることができ、また鍵2が初期位置に戻る際にも、連動突起部28がガイド孔29の後端下部に当接した状態で、伝達部材10およびハンマー部材11を初期位置に戻すことができる。
また、鍵2が強い力で押鍵された際には、伝達部材10のガイド孔29の後端下部がハンマー部材11の連動突起部28を勢いよく当接して押し上げて、ハンマー部材11を勢いよく回転させることができる。このときには、ハンマー部材11が上限ストッパ37に勢いよく当接して撥ね返されると、連動突起部28をガイド孔29に沿って移動させることができる。
このため、この連動制御部27においても、ハンマー部材11が伝達部材10よりも早く初期位置に向けて回転する際に、ハンマー部材11の連動突起部28を伝達部材10のガイド孔29の後端下部に向けて移動させることができるので、ハンマー部材11の回転動作をガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な動作によって制御することができる。これにより、上述した実施形態と同様、ハンマー部材11の不自然で不必要な動作を抑制することができるので、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
さらに、1つの鍵2を連続して押鍵操作する連打操作の際にも、連動制御部27のガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な動作によって、ハンマー部材11の戻り動作および伝達部材10の戻り動作を制御することができ、これにより1つの鍵2を続けて押鍵する連打操作を確実にかつ良好に行うことができるので、連打性能を向上させることができる。
なおまた、上述した実施形態では、連動制御部27の連動突起部28をガイドするガイド部が、ガイド孔29である場合について述べたが、必ずしもガイド孔29である必要はなく、ガイド壁を有するガイド溝部であっても良い。この場合にも、ガイド溝部は、連動突起部28の相対的な動作軌跡に沿って長く形成されていれば良い。
また、上述した実施形態およびその変形例では、連動制御部27の連動突起部28が伝達部材10の支持部22dまたはハンマー部材11の取付部33cに片持ち梁状に設けられている場合について述べたが、これに限らず、例えば両端支持梁状に設けられていても良い。
さらに、上述した実施形態では、伝達部材が回転動作する構成である場合について述べたが、これに限らず、例えば押鍵に伴って上下方向に変位する(移動する)ことにより、押鍵の力をハンマー部材11に伝達する構造であっても良い。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、複数の鍵と、前記複数の鍵それぞれに対応して設けられたアクション機構と、を備え、前記アクション機構は、前記鍵の押鍵操作に応じて回動することにより、前記押鍵操作されている鍵に対してアクション荷重を付与するハンマー部材と、前記ハンマー部材に設けられ、前記鍵が押鍵操作された際の鍵ストロークを設定する鍵ストローク設定部と、を有していることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤装置において、前記ハンマー部材の上限位置を規制する上限ストッパをさらに有し、前記鍵ストローク設定部は、前記上限ストッパに、前記鍵の押鍵操作に応じて当接することにより、前記鍵の鍵ストロークを設定することを特徴とする鍵盤装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置において、前記複数の鍵は、複数の白鍵と複数の黒鍵とを有し、前記白鍵に対応する前記ハンマー部材の回動量と、前記黒鍵に対応する前記ハンマー部材の回動量とが、前記鍵ストローク設定部によって設定されていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鍵盤装置において、前記白鍵に対応する前記ハンマー部材の回動量を、前記黒鍵に対応する前記ハンマー部材の回動量より大きく設定されていることを特徴とする鍵盤楽器である。
請求項5に記載の発明は、請求項3または請求項4に記載の鍵盤装置において、前記鍵ストローク設定部は、前記白鍵に対応する前記ハンマー部材に設けられた白鍵用のストッパ当接部と、前記黒鍵に対応する前記ハンマー部材に設けられた黒鍵用のストッパ当接部とを有し、前記白鍵用のストッパ当接部によって前記白鍵の鍵ストロークに応じて前記上限ストッパに対する距離を設定し、前記黒鍵用のストッパ当接部によって前記黒鍵の鍵ストロークに応じて前記上限ストッパに対する距離を設定していることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記アクション機構はさらに、前記鍵の押鍵操作に応じて変位することにより、前記ハンマー部材を回動させる伝達部材を備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載された鍵盤装置と、
前記鍵盤装置の前記鍵の操作に応じて楽音を発生する発音部と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。