JP5296506B2 - 防錆塗料用エマルション - Google Patents

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Description

本発明は、防錆塗料用エマルションに関する。より詳しくは、錆の発生を防ぐ必要のある各種構造体に使用される防錆塗料の原料として有用な防錆塗料用エマルションに関する。
防錆塗料は、鋼材料の機械、建築材料に塗布され、錆の発生を防いで各種構造体の劣化を防止するものであり、それによって、形成される塗膜による保護作用、錆の発生を防ぐ作用を発揮するものである。このような防錆塗料は、船舶、鉄道車両、自動車や建築構造物等、屋外の腐食環境下で使用されるものの他、水道管や工場の製造プラントの配管等にも使用されており、これらの金属部品の錆を防止して耐久性を高めるうえで重要な役割を担っている。このような防錆塗料としては、高い防錆性だけでなく、塗料としての外観にも優れたものが求められるところである。
良好な仕上がり外観を有する塗膜を得ることを目的として、2種類のカチオン性エマルションを含み、これら2種類のエマルションに含まれる樹脂成分の溶解度パラメータの差、及び、硬化開始温度の差が特定されたカチオン電着塗料組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この組成物から得られる塗膜は、鏡面光沢度が低く、落ち着いた視覚的印象を与えるものであるとされているが、防錆性については、検討されておらず、塗膜の高外観と防錆性の両方に優れる塗膜を与える塗料について検討する余地があった。
また、アルミニウム合金等の非鉄金属に対する防食のために使用される金属腐食防止剤として、ポリエーテル化合物に対して、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分として含有するモノエチレン性不飽和単量体をグラフト重合してなる水溶性グラフト重合体を含む金属腐食防止剤が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、防錆塗料用エマルション樹脂組成物として、重量平均分子量、ガラス転移温度、並びに、体積平均粒径が特定された樹脂粒子(A)、分子量、比重、沸点、並びに、引火点が特定された有機溶剤(B)、亜硝酸塩(C)及び水(D)を特定の重量比率で含む防錆塗料用エマルション樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。これらはいずれも金属の腐食を防止することを目的として使用されるものであるが、更に高い防錆性を発揮するとともに、高硬度で光沢のある外観を有する塗膜を形成する塗料とするための工夫の余地があった。
特開2006−2001号公報(第1−2頁) 特開平11−264085号公報(第1−2頁) 特開2006−52247号公報(第1−2頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、優れた防錆性を発揮するとともに、高硬度で光沢のある外観を有し、防錆性と高外観とを両立することができる塗料の原料となる防錆塗料用エマルションを提供することを目的とするものである。
本発明者は、防錆性と塗膜の外観の両方に優れる塗料の原料となるエマルションについて検討し、塗料として用いた場合に高硬度と高光沢とを発揮するものとするためには、エマルションに高硬度と高い成膜性が必要となり、また、優れた防錆性を発揮するためには、塗布面をひずみなく覆う塗膜を形成することができるための高い成膜性とともに、エマルションの疎水性が必要であることを見出した。そして、これらを両立するエマルションについて種々検討したところ、2段以上の多段重合によって多層が形成される、いわゆるコア・シェルエマルションであって、いわゆるコア部分(多層のうち内側にある層)を形成する単量体成分として、SP値(溶解度パラメータ)が比較的低く、疎水性を高くするとともに、ガラス転移温度が比較的高くなるようにし、いわゆるシェル部分(多層のうち外側にある層)を形成する単量体成分として、ガラス転移温度が比較的低く、これら2つの層を形成する単量体成分のSP値の差が開いているものとすると、防錆性と塗膜外観の両方に優れる塗料の原料となるエマルションとなり、これら2つの層を構成する重合体が有する、相反する特性を両方とも高めることができるという従来にはない、際立って優れた効果を奏することに想到した。すなわち、(n−1)段目を形成する単量体成分として疎水性が高く、硬いエマルションを形成するような単量体成分を用い、n段目を形成する単量体成分として、軟らかく成膜性の高い重合体であって、(n−1)段目の重合体とSP値に差のある重合体を形成するような単量体成分を用いると、(n−1)段目とn段目との間の組成差が大きいことにより、(n−1)段目の重合体とn段目の重合体との間の界面が明確になり、(n−1)段目の重合体の物性に起因する塗膜の高硬度と疎水性、及び、n段目の重合体の物性に起因する高い成膜性の両方の性質を有する塗膜を形成することができるエマルションとなり、これにより高い防錆性と高硬度、高光沢とを両立する塗膜を形成するエマルションとなることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、少なくとも2段行う多段重合によって得られる防錆塗料用エマルションであって、上記エマルションは、重合段数をn段以上(nは2以上の整数)とすると、(n−1)段目を形成する単量体成分のSP値が9以下、ガラス転移温度が80℃以上であり、n段目を形成する単量体成分のガラス転移温度が10℃以下であり、(n−1)段目を形成する単量体成分とn段目を形成する単量体成分とのSP値の差が1.5以上であることを特徴とする防錆塗料用エマルションである。
以下に本発明を詳述する。
本発明の防錆塗料用エマルションは、少なくとも2段以上の多段重合によって得られるエマルションである。このような本発明のエマルションを形成するために用いられることになる多段重合とは、複数の単量体成分を順次重合し、いわゆるコア・シェルエマルションを調製する重合手法である。通常では、1つの段が1つの単量体成分によって重合され、単量体成分を変えて多段とすることになる。複数の単量体成分を順次重合するに際し、例えば、順次滴下重合する場合、1つの単量体成分の滴下が終了した後に次の単量体成分を滴下してもよく、滴下の一部が重複していてもよい。なお、1つの単量体成分を重合条件(開始剤の量や種類、乳化剤の種類や量、重合温度や時間等)を変えて重合することによって、複数層を構成してもよいが、本発明においては、少なくとも2つの単量体成分によって2段以上のコア・シェルエマルションを調製することになる。
本発明の防錆塗料用エマルションの粒子は、多段重合によって形成される2層以上のコア・シェル構造を有するエマルション粒子である。コア・シェル構造には、コア部とシェル部とが完全に相溶し、これらを区別できない均質構造のものや、これらが完全には相溶せずに不均質に形成されるコア・シェル複合構造やミクロドメイン構造があるが、本発明の防錆塗料用エマルションの粒子は、(n−1)段目の重合体とn段目の重合体とが不均質に形成されるコア・シェル複合構造やミクロドメイン構造となっている限り、エマルション中のその他の部分に、均質構造の部分が存在していてもよい。
なお、上記コア・シェル複合構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
上記エマルションは、少なくとも2段以上の多段重合によって得られるものであり、そのうちの少なくとも1段の重合工程において、単量体成分としてSP値が9以下であって、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上であるものを用い、それに続く段の重合工程において、Tgが0℃以下であり、その直前の段の重合工程に用いた単量体成分とのSP値の差が1.5以上である単量体成分を用いて重合を行うことによって得られるものである。このような重合工程は、多段重合中のいずれの段にあってもよい。また、多段重合の中に、このような単量体成分を用いる連続する2つの重合工程を含む限り、その他の段の重合工程において使用される単量体成分や、多段重合における重合工程の段数は特に制限されない。
上記(n−1)段目において使用される単量体成分は、SP値が9以下、Tgが80℃以上のものである。このような単量体成分を用いると、得られる重合体は疎水性が高く、硬いものとなる。(n−1)段目において使用される単量体成分のSP値は、9以下であることが好ましい。より好ましくは、8.5以下であり、更に好ましくは、8以下である。また、7以上であることが好ましい。SP値が7より小さい単量体成分を用いると、得られる重合体がエマルションとならないおそれがある。
また、(n−1)段目において使用される単量体成分のTgは、80℃以上であることが好ましい。より好ましくは、90℃以上であり、更に好ましくは、100℃以上である。
上記n段目において使用される単量体成分は、Tgが0℃以下であり、(n−1)段目において使用される単量体成分とのSP値の差が1.5以上であるものである。このような単量体成分から得られる重合体は柔らかく成膜性に優れたものとなり、塗膜が光沢に優れたものとなる。また、(n−1)段目において使用される単量体成分との組成差が大きいことに起因して(n−1)段目の重合体との界面が明確になるため、塗膜が(n−1)段目の重合体由来の疎水性とn段目の重合体の由来の成膜性の両方の特性を発揮することになるため、優れた防錆性を発揮するものとなる。
n段目において使用される単量体成分のTgは、10℃以下であることが好ましい。より好ましくは、5℃以下であり、更に好ましくは、0℃以下である。
また、(n−1)段目の単量体成分とn段目の単量体成分とのSP値の差は、1.5以上であることが好ましい。より好ましくは、1.8以上である。また、3以下であることが好ましい。SP値の差が3を超えると、多段成分の各々の相溶性が全くなくなり、成膜性が低下する。より好ましくは、2.8以下である。
本発明において、単量体成分のSP値とは、単量体成分全体のSP値を意味し、例えば、以下のSmallの式により求めることができる。
Figure 0005296506
式中、δは、単量体成分のSP値である。Δeは、単量体成分を構成する各単量体の蒸発エネルギーの計算値(kcal/mol)であり、ΣΔeは、単量体成分を構成する各単量体の当該計算値の合計値である。ΔVは、単量体成分を構成する各単量体の分子容の計算値(ml/mol)であり、ΣΔVは、単量体成分を構成する各単量体の当該計算値の合計値である。xは、単量体成分を構成する各単量体のモル分布である。
また、本発明において、単量体成分のTgとは、単量体成分全体のTgを意味し、理論上は、以下の計算式より算出することができる。
Figure 0005296506
式中、Tg’は、単量体成分のTg(絶対温度)である。W’、W’、・・・W’は、単量体成分全体に対する各単量体の質量分率である。T、T、・・・Tは、各単量体からなるホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(絶対温度)である。
上記エマルションは、n段目を形成する単量体成分のSP値が(n−1)段目を形成する単量体成分のSP値よりも高いことが好ましい。n段目を形成する単量体成分から得られる重合体は、(n−1)段目を形成する単量体成分から得られる重合体の外側に位置することになるが、外側に位置する重合体のほうがSP値が高いと、エマルション粒子において、疎水性の高い重合体からなる部分の外側に成膜性の高い重合体からなる部分が位置することになるため、エマルションの成膜性が向上し、より優れた防錆性を発揮することになる。
また、この場合、本発明の防錆塗料用エマルションを環境に負荷をかけない完全水系のエマルションとすることが可能となる。
上記エマルションは、n段目が最も外側のシェル部となるものであることが好ましい。すなわち、単量体成分としてSP値が9以下であって、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上である単量体成分からなる重合体がエマルションを構成する層の外側から2番目に位置し、最も外側にTgが0℃以下であり、かつ外側から2番目の重合体を形成する単量体成分とのSP値の差が1.5以上である単量体成分からなる重合体が位置する構造であることが好ましい。防錆性や外観に影響する構造部分がエマルションの外側にあると、より防錆性や外観に優れた塗膜を形成することができる。最も外側のシェル部となるn段目を形成する単量体成分のSP値が、(n−1)段目を形成する単量体成分のSP値よりも大きいと、更に優れた防錆性や外観を有する塗膜を形成することができる。
上記エマルションは、全段を形成する単量体成分全量を100質量%とすると、SP値が13以上の単量体含有量が2質量%以下であることが好ましい。エマルションが低分子量親水性成分を含むと、その部分で水分が浸透しやすくなるため、SP値が13以上であるような、親水性の高い単量体の使用量を少なくすることで、塗膜への水分の浸透を抑制し、より防錆性に優れた塗膜とすることができる。より好ましくは、1.8質量%以下であり、更に好ましくは、1.5質量%以下である。また、SP値が13以上の単量体含有量は、0.5質量%以上であることが好ましい。SP値が13以上の単量体含有量が0.5質量%未満であると、エマルションの安定性が低下する。より好ましくは、1質量%以上である。
上記SP値が13以上の単量体としては、アクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
上記エマルションの重合段数nは、合成工程を簡便にする観点から小さいほうが好ましく、5以下であることが好ましい。より好ましくは、4以下であり、更に好ましくは、3以下であり、最も好ましくは、2である。nが2である場合、SP値が9以下でTgが80℃以上の単量体成分から得られる重合体がエマルションのコア部を形成し、Tgが0℃以下であり、コア部を形成する単量体成分とのSP値の差が1.5以上である単量体成分から形成される重合体がシェル部を形成することになる。エマルションがこのような構造であると、エマルションがSP値が9以下、ガラス転移温度が80℃以上の単量体成分から形成されるコア部と、ガラス転移温度が0℃以下であり、コア部を形成する単量体成分とのSP値の差が1.5以上である単量体成分から形成されるシェル部のみからなることになることから、エマルションから得られる塗膜が、より高い防錆性や高硬度、高光沢等の高外観を有するものとなる。また、このようなエマルションにおいて、更に、コア部を形成する単量体成分のSP値よりもシェル部を形成する単量体成分のSP値のほうが高いと、疎水性が高くTgの高いコア部を親水性が高くTgの低いシェル部が覆う構造となるので、より成膜性に優れ、防錆性に優れるエマルションとなる。
本発明の防錆塗料用エマルションが、重合段数nが2であるコア・シェルエマルションである場合、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子においては、コア部を形成する単量体成分とシェル部を形成する単量体成分との質量比が10/90〜70/30であることが好ましい。コア部を形成する単量体成分の質量比が10/90よりも小さい場合や、70/30よりも大きい場合には、成膜性と硬度のバランスがとれなくなる。より好ましくは、20/80〜50/50である。
上記エマルションのpHは、特に制限されないが、例えば、2〜10であることが好ましい。より好ましくは、3〜9である。エマルションのpHは、エマルションに、アンモニア水、水溶性アミン類、水酸化アルカリ水溶液等を添加することによって調整することができる。
pHは、pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)等により測定することができる。
上記エマルションの粘度は、特に制限されないが、例えば、10〜10000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは、50〜5000mPa・sである。
粘度は、B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定することができる。
本発明の防錆塗料用エマルションは、重量平均分子量が20000〜250000であることが好ましい。20000未満であると、得られる防錆用エマルションを塗料配合した状態での安定性が充分なものとはならないおそれがある。250000を超えると、塗料に配合した状態での低温における成膜性が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、30000〜220000であり、更に好ましくは、40000〜200000である。
なお、重量平均分子量は、例えば、以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
上記防錆塗料用エマルションが含むエマルション粒子は、平均粒子径が120〜400nmであることが好ましい。平均粒子径がこの範囲にあるエマルション粒子を用いることにより、エマルションが安定となり、成膜性が低下することがない。
エマルション粒子の平均粒子径は、より好ましくは、120〜400nmであり、更に好ましくは、150〜350nmである。
平均粒子径は、例えば、エマルションを蒸留水で希釈し充分に攪拌混合した後、ガラスセルに約10ml採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOM P Model 380」)で測定することにより求めることができる。
上記防錆塗料用エマルション中の不揮発分、すなわち、乳化剤を用いて単量体成分を乳化重合してなるエマルションの粒子の含有割合としては、防錆塗料用エマルションの総量100質量%に対し、30質量%以上、70質量%以下であることが好適である。70質量%を超えると、防錆塗料用エマルションの粘度が高くなり過ぎて充分な分散安定性を保持することができないおそれがあり、凝集するおそれがある。30質量%未満であると、充分な防錆性を発揮しないおそれがある。より好ましくは50質量%以上、65質量%以下である。
本発明の防錆塗料用エマルションの製造に用いることができる単量体としては、本発明の作用効果を発揮することができる限り特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸単量体を含んでなるものであることが好ましい。より好ましくは、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体とを含んでなるものである。不飽和カルボン酸単量体としては、分子中に不飽和結合とカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されるものではないが、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含むことが好ましい。
なお、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体は、エマルションの(n−1)段目を形成する単量体成分、n段目を形成する単量体成分のいずれに含まれていてもよく、これらの両方に用いられるものであってもよい。
上記エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノメチルマイエート、モノエチルマイエート等の不飽和カルボン酸類又はその誘導体等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
本発明においては、エマルション粒子を形成する単量体成分全体100質量%に対してエチレン系不飽和カルボン酸単量体の含有量が0.5〜1.5質量%であることが好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸単量体の含有量がこのような範囲にあると、エマルションの安定化と塗料化時の顔料混和性野向上に有効である。
本発明の防錆塗料用エマルションの製造に用いることができる単量体は、エチレン系不飽和カルボン酸単量体に加え、他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を含むことが好ましい。他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、上述した官能基を有する不飽和単量体や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種以上を用いることが好ましい。
また、スチレン等の芳香族不飽和単量体等の1種又は2種以上を用いることが好ましい。芳香族不飽和単量体の中でも、炭素数8〜20の芳香族不飽和単量体が好ましい。より好ましくは、炭素数8〜15の芳香族不飽和単量体である。
以下においては、本発明の防錆塗料用エマルションの好ましい実施形態である、重合段数nが2である2段重合によってエマルションを製造する場合の製造方法について述べる。
本発明におけるエマルションの製造方法としては、乳化剤の存在下で乳化重合法により単量体成分を重合することになるが、乳化重合を行う形態としては特に限定されず、例えば、水性媒体中に単量体成分、重合開始剤及び乳化剤を適宜加えて重合することにより行うことができる。また、分子量調節のために重合連鎖移動剤等を用いてもよい。
また、乳化剤及び/又は保護コロイドの存在下、水性媒体中で単量体成分を乳化重合させてコア部を形成した後、該コア部を含むエマルションに更に単量体成分を乳化重合させてシェル部を形成する多段重合により得ることが好ましい。
上記エマルションを製造する方法としては、水等の水性溶媒中にコア部を構成する単量体成分の一部を滴下してシード粒子を形成した後、残りの単量体成分を追加してコア部を形成し、その後、シェル部を構成する単量体成分を加えてシェル部を形成する方法が好ましい。エマルションの平均粒子径は、水性媒体中のシード粒子の数に影響されるため、シード粒子を形成するために水性媒体中に添加される単量体成分の量を適宜調整することにより、シード粒子の数を制御し、エマルションの平均粒子径を制御することができる。
シード粒子を形成させるため重合器に直接仕込む水・乳化剤・重合性単量体からなる単量体乳化物は、フィードするトータル量の0.5〜10質量%である。また、乳化剤水溶液のみを直接重合器に仕込む手法も好ましい手法の1つであり、トータルの重合性単量体に対し、乳化剤固形分に換算して0.1〜1.5質量%の量が好ましい。
上記水性媒体としては特に限定されず、例えば、水、水と混じり合うことができる溶媒の1種又は2種以上の混合溶媒、このような溶媒に水が主成分となるように混合した混合溶媒等が挙げられる。これらの中でも、水を用いることが好ましい。
2段重合では、1段目で投入した単量体成分の80%以上が重合した後に2段目の重合体のための新たな単量体成分を投入することが好ましい。単量体成分の重合が80%以上進行する前に新たな単量体を投入すると、1段目の単量体成分により製造される重合体の製造に、新たに投入した2段目の重合体のための単量体成分が使用されるおそれがある。より好ましくは、90%以上を重合させた後に投入することであり、更に好ましくは、95%以上を重合させた後に投入することである。
上記エマルションの製造に用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記アニオン系乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)スチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)ベンジルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルコハク酸ジ塩;及び、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記アニオン系乳化剤として特に好適な化合物としては、例えば、ラテムルWX、ラテムル118B、ペレックスSS−H、エマルゲン1118S、エマルゲンA−60、B−66(花王社製)、ニューコール707SF、ニューコール707SN、ニューコール714SF、ニューコール714SN(日本乳化剤社製)、ABEX−26S、ABEX−2010、2020、2030、RHODACAL DSB(ローディア日華社製)、ハイテノールLA−10、ハイテノールNF−08(第一工業製薬社製)等を挙げることができる。
また、これらのノニオンタイプに相当する乳化剤も使用することができる。
上記アニオン系乳化剤としてはまた、反応性乳化剤として、反応性アニオン系乳化剤、スルホコハク酸塩型反応性アニオン系乳化剤、アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系乳化剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
スルホコハク酸塩型反応性アニオン系乳化剤の市販品としては、ラテムルS−120、S−120A、S−180及びS−180A(いずれも商品名、花王社製)、エレミノールJS−2(商品名、三洋化成社製)、アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−30(ADEKA社製)等が挙げられる。
アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系乳化剤の市販品としては、ラテムルASK(商品名、花王社製)等が挙げられる。
更に、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製「エレミノールRS−30」、日本乳化剤社製「アントックスMS−60」等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルフォネー卜塩(例えば、第一工業製薬社製「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」等)等のアリル基を有する硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(例えば、花王社製「ラテムルPD−104」等)等も用いることができる。
上記ノニオン系乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪族モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物等が挙げられる。また、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、ADEKA社製「アデカリアソープER−20」等)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(例えば、花王社製「ラテムルPD−420」、「ラテムルPD−430」等)等の反応性を有するノニオン系乳化剤も用いることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記カチオン系乳化剤としては特に限定されず、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記両性乳化剤としては特に限定されず、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記高分子乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物;(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記乳化剤の使用量としては、用いる乳化剤の種類や単量体成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.3〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量部である。
上記保護コロイドとしては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;グアーガム等の天然多糖類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、保護コロイドは単独で使用されてもよいし、乳化剤と併用されてもよい。
上記保護コロイドの使用量としては、使用条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以下である。
本発明の防錆塗料用エマルションは、反応性乳化剤を乳化重合して得られるものであることが好ましい。乳化剤は、親水性の成分であるため、エマルション中に遊離した状態で存在すると、塗膜を形成した場合に、水分が浸透しやすくなる原因となる。反応性乳化剤を用いると、乳化剤が重合体の一部として取り込まれることになるため、乳化剤がエマルション中に遊離した状態で存在することを抑制することができ、より高い防錆性を発揮するエマルションとすることができる。
上記重合開始剤としては、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる物質であれば特に限定されないが、水溶性開始剤が好適に使用される。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜2重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.2〜1重量部である。
上記重合開始剤にはまた、乳化重合を促進させるため、必要に応じて還元剤を併用することができる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等の還元性有機化合物;例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記還元剤の使用量としては特に限定されず、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.05〜1重量部であることが好ましい。
上記重合連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトピロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル;メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル;オクタン酸2−メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステルや、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、アニソール、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を用いることが好ましい。重合連鎖移動剤の使用量としては、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、通常2.0重量部以下、好ましくは1.0重量部以下である。
上記乳化重合においては、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や無機塩等の存在下で行ってもよい。また、単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
上記製造方法における乳化重合条件に関し、重合温度としては特に限定されず、例えば、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは、40〜95℃である。また、重合時間も特に限定されず、例えば、1〜15時間とすることが好適で、より好ましくは、5〜10時間である。
また単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
上記製造方法においては、乳化重合によりエマルションを製造した後、中和剤によりエマルションを中和することが好ましい。これにより、エマルションが安定化されることになる。中和剤としては特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン;アンモニア水;水酸化ナトリウム等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の防錆塗料用エマルションを必須とする防錆塗料配合物の用途としては特に限定されず、優れた防錆性を有し、外観にも優れるため、自動車、鉄道車両、船舶、航空機等の他、電気機器、建築構造物、建設機器等にも好適に適用することができる。
本発明の防錆塗料用エマルションは、上述の構成よりなり、高い防錆性と高外観とを両立させた塗膜を形成することができるものであり、また、単量体成分の選択により環境に負荷をかけない完全水系のエマルションとすることができるものであることから、高い外観が要求されるとともに、耐久性の向上のために錆の発生を抑制が必要となる幅広い用途において、防錆塗料の原料として好適に用いることができるものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<SP値>
エマルションのSP値は、エマルションの製造に用いられた単量体成分全体に対する各単量体の割合(質量割合)に各単量体のSP値を掛けた値を算出し、それらの値の合計として求めることができる。エマルションの製造に用いた各単量体のSP値は以下のとおりである。
スチレン(St):7.31
シクロへキシルメタクリレート(CHMA):7.44
メチルメタクリレート(MMA):9.93
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHA):9.22
ブチルアクリレート(BA):9.77
エチルアクリレート(EA):10.20
メチルアクリレート(MA):10.56
アクリル酸(AA):14.04
メタクリル酸(MAA):12.54
ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):13.47
ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):14.48
アクリロニトリル(AN):14.39
アクリルアミド(AAm):19.19
<Tg>
各段で用いた単量体組成から、上述したFoxの式を用いて算出した。なお、全ての段で用いた単量体組成から算出したTgを「トータルTg」として記載した。
Foxの式により重合性単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示した。
スチレン(St):100
シクロヘキシルメタクリレート(CHMA):66
メチルメタクリレート(MMA):105
2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHA):−70
ブチルアクリレート(BA):−56
エチルアクリレート(EA):−22
メチルアクリレート(MA):9
アクリル酸(AA):95
メタクリル酸(MAA):230
ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):55
ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):−32
アクリロニトリル(AN):96
アクリルアミド(AAm):165
<実施例>
エマルション製造例
製造例1(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水540部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにスチレン268.6部、アクリル酸1.4部、アデカリアソープSR−10(商品名、ADEKA社製)6.0部及び脱イオン水110部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの17部、4%V−50(商品名、和光純薬社製)水溶液25部を添加し、初期重合を開始した。30分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を60分にわたって均一に滴下した。同時に3%V−50水溶液23部を60分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートに2−エチルヘキシルアクリレート315部、メチルメタクリレート308部、アクリル酸7部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、アデカリアソープSR−10を4.5部及び脱イオン水250部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に3%V−50水溶液46部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、アンモニア水を添加し、不揮発分45%、pH9.2、粘度61mPa・s、粒子径170nm、1段目のTg100℃、2段目のTg−10℃のエマルションを得た。
製造例2〜9(実施例2〜6、比較例1〜3)
製造例1と同様の操作で、表1に示す原料を用いて重合を行い、実施例および比較例エマルションを得た。
製造例10(比較例4)
撹拌機、還流冷却管、濃度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水180部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにスチレン268.6部、アクリル酸1.4部、アデカリアソープSR−10(商品名、ADEKA社製)6.0部及び脱イオン水110部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの17部、4%V−50(商品名、和光純薬社製)水溶液25部を添加し、初期重合を開始した。30分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を60分にわたって均一に滴下した。同時に3%V−50水溶液23部を60分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持した。得られた反応液を室温まで冷却後、アンモニア水を添加し、不揮発分45%、pH9.1、粘度68mPa・s、粒子径170nmの製造例1の1段目に相当するエマルションAを得た。
次に、撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水460部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートに2−エチルヘキシルアクリレート315部、メチルメタクリレート308部、アクリル酸7部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、アデカリアソープSR−10(商品名、ADEKA社製)4.5部及び脱イオン水250部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの34部、4%V−50(商品名、和光純薬社製)水溶液25部を添加し、初期重合を開始した。30分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。同時に3%V−50水溶液46部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持した。得られた反応液を室温まで冷却後、アンモニア水を添加し、不揮発分45%、pH9.3、粘度68mPa・s、粒子径160nmの製造例1の2段目に相当するエマルションBを得た。
以上のようにして得られたエマルションAとエマルションBを、質量比でA:B=30:70となるようにブレンドした。
<評価>
1.硬度評価
ガラス板上に、4milのアプリケータを用いエマルションを塗布した。室温で10分静置させた後、60℃で20分間乾燥させ、評価用塗膜とした。
ケーニッヒ硬度計(ERICHSEN製)を用い、塗膜硬度を測定した。各エマルションの評価結果を表1に示す。数値が高いほど硬度が高いことを示す。
2.防錆性評価
評価はJIS Z2371に準じて行った。冷間圧延鋼板(SPCC−SD、150×70×0.8mm)に、4milのアプリケータを用い、エマルションを塗布後、室温で10分間放置し、60℃で20分間乾燥したものを室温で1日養生した。塗膜部以外をOPPテープでラミネートし、塗膜をカッターナイフでクロスカットし、塩水噴霧機(35℃、5%塩化ナトリウム水溶液噴霧)中に設置した。所定時間経過後のクロスカット部の塗膜状態を目し評価した。評価結果を表1に示す。
評価基準:
◎:錆幅1mm以下、塗膜異常なし
○:錆幅2mm以下、塗膜異常なし
△:錆幅5mm以下、若干のブリスターあり
×:錆幅5mm以上、ブリスター多数
××:全面錆、塗膜ハガレ
Figure 0005296506
表1中、連鎖移動剤、乳化剤、及び、重合開始剤の記号は、それぞれ以下のものを表す。
TDM:t−ドデシルメルカプタン
SR−10:アデカリアソープSR−10(ADEKA社製)
KH−05:アクアロンKH−05(第一工業製薬社製)
MS−60:アントックスMS−60(日本乳化剤社製)
LA−10:ハイテノールLA−10(第一工業製薬社製)
APS:過硫酸アンモニウム
V−50:2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業社製)
ACVA:4,4’−アゾビス−4−シアノバレイックアシッド(大塚化学社製)
表1の結果から、1段目を形成する単量体成分と2段目を形成する単量体成分のSP値の差が1.5未満であったり、1段目を形成する単量体成分のTgが80℃以下であったりすると、防錆性や塗膜硬度等の塗膜物性に優れたものとならないことが確認された。また、同一の単量体組成を有するエマルションであっても、2種類のエマルションをブレンドしたものは、多段重合によって得られたコア・シェル構造のものと比べて塗膜物性に劣ることが確認された。したがって、エマルションを多段重合によって得られたものとし、かつ、単量体成分のTgや多段重合の連続する2つの段の単量体成分のSP値の差を特定のものとすることに技術的意義を有することが確認された。

Claims (4)

  1. 段重合によって得られる防錆塗料用エマルションであって、
    該エマルションを形成する単量体成分は、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、(メタ)アクリル酸エステル、及び、芳香族不飽和単量体を含み、
    1段目を形成する単量体成分と2段目を形成する単量体成分との質量比が、10/90〜70/30であり、
    全段を形成する単量体成分全量を100質量%とすると、エチレン系不飽和カルボン酸単量体の含有量が0.5〜1.5質量%であり、
    段目を形成する単量体成分のSP値が9以下、ガラス転移温度が80℃以上であり、
    段目を形成する単量体成分のガラス転移温度が10℃以下であり、
    段目を形成する単量体成分と段目を形成する単量体成分とのSP値の差が1.5以上である
    ことを特徴とする防錆塗料用エマルション。
  2. 前記エマルションは、段目を形成する単量体成分のSP値が段目を形成する単量体成分のSP値よりも高い
    ことを特徴とする請求項1に記載の防錆塗料用エマルション。
  3. 前記エマルションは、全段を形成する単量体成分全量を100質量%とすると、SP値が13以上の単量体含有量が2質量%以下である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の防錆塗料用エマルション。
  4. 前記エマルションは、反応性乳化剤を用いて乳化重合して得られるものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防錆塗料用エマルション。
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