JP5296072B2 - 焼きなまし炉においてまたは焼きなまし炉の直前にアルミニウム塩化物を用いて表面処理を行うガラス製造方法 - Google Patents

焼きなまし炉においてまたは焼きなまし炉の直前にアルミニウム塩化物を用いて表面処理を行うガラス製造方法 Download PDF

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Description

本願は、2006年7月25日に出願された米国特許出願シリアルナンバー11/492,204の一部継続出願(CIP)であり、その開示全体を参照によりここに含める。
本発明はソーダ石灰シリカをベースとするガラスを製造する方法に関する。本発明の一実施形態では、ガラス製造プロセスの間に、ガラスシートが形成されて融解された材料の上に浮くステージ(例えば、錫槽)に続いて、ガラスの主面が焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前にアルミニウム塩化物(例えば、AlCl)を用いて処理される。また、(フロートプロセスに対立する)パターンラインプロセスにおけるアルミニウム塩化物処理は焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前に実行されてよい。フロートガラス製造プロセスと製造プロセスのいずれも、焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前に行われるアルミニウム塩化物処理は、望ましいガラス温度でその処理を行うことを可能にし、効率的な方法でその処理の副生成物を除くために焼きなまし炉の中にまたはその近くに排気機能を付加できるという点で有利である。この方法で製造されたガラスは、例えば制限なしに、ガラス窓、太陽電池、家具のガラス、ディスプレイのガラスへの応用に有用である。
従来のフロートラインガラス製造プロセスでは、ガラス原料のかたまりはガラス溶解物を形成するために加熱炉または融解炉で加熱される。ガラス溶解物は錫のような融解された材料の槽(錫槽)に注がれる。そこで、ガラス溶解物はひも状のフロートガラスを形成するために連続的に冷却される。それから、ひも状のフロートガラスは次の処理のために焼きなまし炉に送られる。その後、フロートガラスシートのような固体ガラスを形成するために切断される。フロートガラス用にソーダ石灰シリカをベースとするフラットガラスを形成するために、ガラスのかたまりはしばしばソーダ、石灰、シリカを含む。
不幸にも、(コーティングされていてもコーティングされていなくても)従来のフロートガラスは、ガラスからその表面に向かって外側に拡散するナトリウム(Na)のようなアルカリによるダメージを受けやすく、場合によりガラス上のLow−Eコーティングのようなコーティングにもダメージを受ける。コーティングされていないガラスでは、表面に達したナトリウムは、水などと反応し、ガラスの表面に目に見える汚れを生じる。更に、ガラス上のコーティングの中へのナトリウムの拡散はコーティングにダメージを与え、IG(絶縁ガラス)窓ユニットや他のタイプの窓のような欠陥のあるコーティングされた製品を生じさせる。
大抵のフラットパネルディスプレイは、垂直に引き上げられた溶融ホウケイ酸ガラスや研磨されたホウケイ酸ガラスのような高価なガラス基板を用いて製造される。このタイプのガラスはナトリウム(NaとNaOの両方またはいずれか一方)の含有量が少ない。けれども、ホウケイ酸ガラスのための原材料のコストは従来のソーダ石灰シリカをベースとするフロートガラスよりもはるかに高い。しかし、従来のフロートガラスは、製造コストが低いが、より多くのナトリウムを含有している。ディスプレイパネルの製造に通常使われる高い温度(例えば、200℃−600℃)の処理の間に、およびディスプレイの寿命の間に、ナトリウムはフロートガラス基板から拡散し、ディスプレイの性能を劣化させる。例えば、TV、モニター、携帯電話等で使われるようなa−Si(アモルファスシリコン)TFTディスプレイでは、TFTとディスプレイ媒体材料の両方またはいずれか一方におけるナトリウムの移動は、TFTとディスプレイ媒体の両方またはいずれか一方の著しい劣化と、それによるディスプレイ特性の劣化を生じる。
従来のソーダ石灰シリカをベースとするフロートガラスの持つ他の問題は、熱膨張率(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)がホウケイ酸ガラスよりも高い(8.5 vs.3.7ppm/℃)ことである。ディスプレイ基板の上にフィルムを形成するために、低いCTEがしばしば望まれる。
多くのフラットパネルディスプレイは、2つのガラス基板、例えば、TFT基板とカラーフィルタ基板を使う。両者は通常同じタイプのガラスでなければならない。ある場合には、完成したディスプレイパネルのガラス基板のコストはパネル全体のコストの10%−20%の範囲にある。他方、従来のフロートガラスのコストは多くのフラットパネルディスプレイへの応用で使われるホウケイ酸ガラスのコストより1桁以上低い。ディスプレイへの応用における使用基準を満たしたガラス基板のコスト、従ってディスプレイ全体のコストを技術的に削減することが必要である。
アルミニウムのような材料でガラスの表面を処理することは公知である(例えば、特開昭60−176952公報と、発明者がヘッセンケンペルである国際公開第2004/096724号パンフレットを参照。これらの両文献を参照によりここに含める。)けれども、そのような処理はフロートプロセスに適した効率的な方法で行われていない。
上記観点において、より効率的にガラスの耐久性を増すガラス処理のための技術を含み、例えば、フロートプロセスとパターンラインプロセスのいずれかを用いてフラットガラスを製造する方法が技術的に必要であることは明白である。
本発明はソーダ石灰シリカをベースとするガラスを製造する方法に関する。本発明の別々の実施形態において、ガラスはフロートプロセスとパターンラインプロセスのいずれかを使って製造される。本発明の一実施形態では、ソーダ石灰シリカをベースとするガラスは、SiOを67−75重量%、NaOを10−20重量%、CaOを5−15重量%、Alを0−7重量%、MgOを0−7重量%、およびKOを0−7重量%含むベースガラス部分を有する。更に、ガラスは鉄、セレン、コバルト、エルビウムなどのような1つ以上の着色剤を含んでもよい。
本発明の一実施形態では、ソーダ石灰シリカをベースとするフロートガラス基板はディスプレイガラスに対する要求に合わせて修正される。ある場合には、ソーダ石灰シリカをベースとするフロートガラス基板の表面はディスプレイ構造とデバイスへのナトリウムの拡散を防ぐか、または大幅に削減するために処理される。
本発明の一実施形態では、ガラスの主面は焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前にアルミニウム塩化物(例えば、AlCl)を用いて処理される。フロートプロセスでは、焼きなまし炉は溶解槽(例えば、錫槽)の後に配置される。一方、パターンラインプロセスでは、焼きなまし炉はパターニングローラーの後に配置される(例えば、焼きなまし炉はガラスを形成するステージの直後に配置される)。アルミニウム塩化物はメタノールや他のアルコールなどのような溶剤で与えられるAlClを含む混合物の形で使われてよい。フロートガラス製造プロセスとパターンラインガラス製造プロセスのいずれでも、焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前に行われるアルミニウム塩化物処理は、望ましいガラス温度でその処理を行うことを可能にし、溶剤を燃やし尽くすために役立つ過剰な酸素が焼きなまし炉の中に存在し、効率的な方法でその処理の副生成物を除くために焼きなまし炉の中にまたはその近くに排気機能を付加できるという点で有利である。従って、焼きなまし炉に付随する加熱に対応したアルミニウム処理ステップの時に、ある非制限的状況において、焼きなまし炉に付随する付加的な排気ステップが避けられる。この方法で製造されたガラスは、例えば制限なしに、ガラス窓、太陽電池、家具のガラス、薄膜トランジスタ(TFT)を支えるためのガラス、ディスプレイのガラスへの応用に有用である。
一実施形態では、ガラスは、PDP、LCD、OLEDのようなフラットパネルディスプレイで使用するために設計される。ガラス基板からのナトリウム拡散はナトリウムをブロックする表面処理によって大きく削減される。従って、ディスプレイ特性の大幅な劣化を生じることなく、ガラス基板上にTFT(例えば、アモルファスシリコンTFT,ポリシリコンTFTなど)や他の電子デバイスを製造することを可能にする。本発明の一実施形態に係るガラスはディスプレイに応用される一方または両方の基板で使われてよい。
本発明の一実施形態では、ソーダ石灰シリカをベースとするガラスの製造方法が提供される。その方法は、ガラス溶解物を形成するために加熱炉にガラスの原材料を供給するステップと、ガラス溶解物から形成される細長いガラスをその細長いガラスが焼きなましされる焼きなまし炉に送るステップと、細長いガラスが約540℃から850度までの温度であるとき、焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前にアルミニウム塩化物を用いてその細長いガラスの少なくとも一方の主面を処理するステップとを備える。
本発明の他の実施形態では、ソーダ石灰シリカをベースとするガラスの製造装置が提供される。その装置は、ガラス溶解物を形成するためにガラスの原材料が導入される加熱炉と、ガラス溶解物から形成される細長いガラスが焼きなましされる焼きなまし炉と、細長いガラスが約580℃から850度までの温度であるとき、焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前にアルミニウム塩化物を用いてその細長いガラスの少なくとも一方の主面を処理する手段とを備える。
ここに記載されるガラスは、フロートラインで製造されるようなガラスの厚さに従って作られる。また、ディスプレイへの応用のために、フロートプロセスの後で、従ってアルミニウム塩化物処理の後で、ガラスはより薄く研磨されてもよい。例えば、ディスプレイへの応用のために、約1.6mmの厚さを持った基板が、約0.6mm−1.2mm(より望ましくは、約0.7mm−1.1mm)の厚さに研磨される。他の例として、1.1mmの厚さを持ったガラス基板が0.7mmの厚さに研磨される。ガラスの処理された表面に含まれるAlを乱さないように、後処理としての研磨はアルミニウム塩化物で処理された表面と反対側のガラス面で実行される。
本発明の実施形態に係るフロートプロセスを使うガラス製造方法を示す略図である。 本発明の一実施形態に従って製造されたソーダ石灰シリカをベースとするフロートガラス上に形成されたアモルファスシリコンTFTの特性を示すゲート−ソース電圧(V)対ドレイン−ソース電流(A)のグラフである。
本発明は、フロートプロセスとパターンラインプロセスの一方または両方を用いてソーダ石灰シリカをベースとするガラスを製造する方法に関する。本発明の一実施形態では、ガラスの主面は焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前にアルミニウム塩化物(例えば、AlCl)を用いて処理される。フロートプロセスでは、焼きなまし炉はガラスが浮く溶解槽(例えば、錫槽)の後に配置される。一方、パターンラインプロセスでは、焼きなまし炉はガラスの一方の主面または両方の主面にパターンを形成するパターニングローラーの後に配置される(例えば、焼きなまし炉はガラスを形成するステージの直後に配置される)。焼きなまし炉において、またはその直前に行われるアルミニウム塩化物処理は、望ましいガラス温度でその処理を行うことを可能にし、アルミニウム酸化物が混合される溶剤を燃やし尽くすために役立つ過剰な酸素が焼きなまし炉の中に存在し、効率的な方法でその処理の副生成物を除くために焼きなまし炉の中にまたはその近くに排気機能を付加できるという点で有利である。また、その処理は他のガス雰囲気(例えば、窒素をベースとするガス雰囲気)中で行われてもよい。従って、焼きなまし炉に付随する加熱に対応したアルミニウム処理ステップの時に、ある非制限的状況において、焼きなまし炉に付随する付加的な排気ステップが避けられる。
一実施形態では、ガラスは、PDP、LCD、OLEDのようなフラットパネルディスプレイで使用するために設計される。ガラス基板からのナトリウム拡散はナトリウムをブロックする表面処理によって大きく削減される。従って、ディスプレイ特性の大幅な劣化を生じることなく、ガラス基板上にTFTや他の電子デバイスを製造することが可能になる。
本発明の一実施形態に係るソーダ石灰シリカベースガラスの例は、重量パーセント基準で次の基本原料を含む。
Figure 0005296072
また、芒硝や結晶水などのようなさまざまな精製の補助物質を含む他の少量の原料がベースガラスに含まれていてもよい。一実施形態では、例えば、精製の作用物質として芒硝(SO)(またはもちろん上述したように酸化ホウ素でもよい。)を使用して原材料であるケイ砂、ソーダ灰、白雲石、石灰石からガラスが作られる。また、ある場合には作用物質を削減し、酸化させることが行われる。ある場合には、ソーダ石灰シリカベースガラスは約10−15重量%のNaOと約6−12重量%のCaOを含む。上述したベースガラスの原料に加えて、ガラスのかたまりと最終的なガラスの両方またはいずれか一方が、鉄、エルビウム、コバルト、セレンなどのような原料を含む着色剤部分を含んでもよい。本発明の一実施形態では、ガラスの中の鉄の合計量は約0.05%から1.2%まで、より望ましくは約0.3%から0.8%までであってよい。ある透明な高透過率ガラスの場合には、全体の鉄は約0.005%から0.025%までであってよい。ガラスの中、従ってその着色剤部分の中に存在する鉄の合計量は、標準的技法に従ってFeの項で表される。けれども、これは全ての鉄が実際にFeの形であることを意味しない。同様に、ガラスの中の全ての第一鉄の状態の鉄がFeOの形でなくても、第一鉄の状態の鉄の量はFeOとしてここに説明される。
ナトリウムの移動を妨げるか、または大幅に削減するための方法はAlClを用いた高温での表面処理を含む。例えば、次の化学反応を考える:
AlCl+Na+HO→Al+NaCl+HCl(例えば、非ストイキオメトリ)
Al(+)はガラスネットワークに溶け込み、アルバイト状の相→Na[AlSi]としてできる限りそれらを安定化させる。ムライト相、3Al×2SiOはもっと安定である。一実施形態では、アルバイト相とムライト相はガラス基板のガラスネットワークの中で共存してもよい。
一実施形態では、アルミニウム酸化物(例えば、Al)の層がガラス基板の表面に形成される。ある場合には、AlClを含むフロートガラスの反応が次のように実行される。AlCl蒸気がフロートラインの中の錫槽の出口に、またはその近くに供給される。またはAlClとエタノール(または、エタノールの代わりにメタノール若しくはエタノールに加えてメタノール)の混合物が錫槽の出口、またはその近くにある熱いひも状のガラスに直接噴霧される。若しくは、AlCl蒸気がフロートラインの中の錫槽の出口に、またはその近くに供給されるとともに、AlClとエタノール(または、エタノールの代わりにメタノール若しくはエタノールに加えてメタノール)の混合物が錫槽の出口、またはその近くにある熱いひも状のガラスに直接噴霧される。従って、その処理はフロートガラスの製造プロセスにおける焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前に実行される。
図1は、本発明の実施形態に係るフロートプロセスを使ってガラスを製造する方法の略図である。ガラスの原材料(例えば、ケイ砂、ソーダ灰、白雲石、石灰石等)のかたまりがガラス溶解物を形成するために加熱炉(または、溶解炉)1に供給され、その中で加熱される。ガラス溶解物は、ステージ3で錫のような融解された材料の槽(錫槽)に注がれる。そこで、ガラス溶解物はひも状のフロートガラスを形成するために連続的に冷却される。ひも状のフロートガラスはゆっくりと冷却されながら焼きなまし炉5の方へ進む。焼きなまし炉5に入る前に、任意的にガラスシートの外側縁部分を高温条件で削ってもよい。ガラスシートは典型的に少なくとも約540℃、より望ましくは少なくとも約580℃の温度で焼きなまし炉5の入口に達する。焼きなまし炉5の入口における可能な温度範囲は約540℃(または580℃)から800℃までである。焼きなましの間、細長いガラスシートの温度は焼きなまし点(例えば、約538℃−560℃)から約495℃−560℃の歪み点までゆっくりと冷却される。これは、焼きなまし範囲といわれる。焼きなましのためにこれらの温度範囲が好まれるが、ある場合には異なる温度が使われてもよい。本発明の別の実施形態では、焼きなましの間連続的なガラスシートはローラーとガスのいずれかによって支えられる。
焼きなまし炉5での焼きなましの後で、連続的なガラスシートは、切断、冷却、コーティングなどのうちの1つ以上の処理をガラス処理7でさらに行うために、移動させられる。一実施形態では、ディスプレイへの応用での使用に向けてガラスの厚さを削減するために、ガラスの第1の主面のアルミニウム塩化物処理10の後で、ガラスはその処理を受けた第1の主面の反対側にある第2の主面の研磨をガラス処理7の間に受ける。例えば、LCD、OLED、PDPなどのようなディスプレイへの応用のために、約1.3mmから1.8mmまで(例えば、約1.5mm−1.7mm、または約1.6mm)の厚さを持った表面処理されたガラス基板が、約0.6mm−1.2mm(より望ましくは、約0.7mm−1.1mm)のガラス厚さに研磨される。他の例として、1.1mmの厚さを持ったガラス基板が0.7mmの厚さに研磨される。ガラスの処理された表面に含まれるAlを乱さないように、後処理としての研磨はアルミニウム塩化物で処理された表面と反対側のガラス面で実行される。
本発明の一実施形態では、焼きなまし炉5において、または焼きなまし炉5の直前に、ガラスの主面(例えば、溶解槽の反対側にあるガラスの上側の表面)はアルミニウム酸化物(例えば、AlClまたは他のストイキオメトリ)で処理される。図1に示すように、フロートプロセスでは、焼きなまし炉5は溶解槽(例えば、錫槽)3の後に配置される。ここで、ガラスは溶解槽では浮いている。焼きなまし炉5において、または焼きなまし炉5の直前に行われるアルミニウム塩化物処理10は、望ましいガラス温度でその処理を行うことを可能にし、効率的な方法でその処理の副生成物を除くために焼きなまし炉5の中でまたはその近くで排気機能を可能にするという点で有利である。従って、焼きなまし炉5に付随する加熱に対応したアルミニウム処理ステップの時に、ある非制限的状況において、焼きなまし炉5に付随する付加的な排気ステップが避けられる。
アルミニウム塩化物処理10では、AlClはアルコールのような溶剤で供給される。一実施形態では、AlClはメタノールなどのような溶剤で供給される。メタノールの代わりに、またはメタノールに加えてエタノール、イソプロピル・アルコール、水などがアルミニウム塩化物を供給する溶剤として使われてよい。例えば、一例として、アルミニウム塩化物処理はAlCl×6HOなどで行うか、またはAlCl×6HOなどを含むもので行ってもよい。AlClと溶剤の混合物は適切な方法でガラスの主面に塗布される。例えば、一実施形態では、(例えば、燃焼CVDまたはCCVDを用いて)その処理を適用するために、AlClと溶剤の混合物は細長いガラスの上に配置されたガス/空気バーナーによってガラスの主面に向けて噴霧される。AlClと溶剤の混合物は液相と気相のいずれかでバーナーに適用されてよい。あるいは、AlClと溶剤の混合物は液体の形で噴霧することによって、またはガラスの主面にそれを蒸着することによってアルミニウム塩化物処理10の間にガラスの表面に塗布されてもよい。過剰な酸素が豊富な焼きなまし炉では、溶剤はすぐに燃え尽きて焼きなまし炉の排気口を通って除去される。
ガラスの主面(例えば、上側の表面)にAlClを塗布する目的は、ガラスから浸出するナトリウムまたは他のアルカリを削減することである。ガラスの表面のAlClは、(AlClに由来する)Clと、ガラス中にあるアルカリ元素(例えば、NaとKの両方またはいずれか一方)とアルカリ土類元素(例えば、CaとMgの両方またはいずれか一方)の両方またはいずれか一方との間で化学反応を起こす。例えば、ガラス基質のNaOはAlClに由来するClと反応し、NaClを形成する(NaCl→Na+Cl)。そして、酸素は、酸塩化物などとして除去される。更に、HClとHOの両方またはいずれか一方は、蒸気の形で除去される。同様な方法で、ガラス基質のKOは(AlClに由来する)Clと反応し、KClを形成する。他の例として、ガラスのCaOは(AlClに由来する)Clと反応し、CaClを形成する。再び、HClは燃やし尽くされ、焼きなまし炉にある、または焼きなまし炉の近くにある排気口によって除去される。従って、AlClのようなアルミニウム塩化物を用いたガラス表面の処理は、ガラスの表面部分からある程度の深さまでアルカリ元素とアルカリ土類元素を除去または削減するための有効な方法であることが分かる。その結果、(例えば、熱強化のような加熱処理の間に)ガラスから浸出し、その表面を汚し、またはそのコーティングにダメージを与え、あるいはその両方を行うアルカリ元素とアルカリ土類元素の両方またはいずれか一方の能力が削減される。従って、ガラスの表面部分は、ガラスシートの真ん中のようなガラスシートの残りよりも少ない量のアルカリ金属とアルカリ土類金属の両方またはいずれか一方(そしてもっと多くのAlとSiO)を持つことになる。それにより、ガラスの耐久性が改善し、そのよごれへの抵抗が改善する。
さらに、アルミニウム塩化物に由来するアルミニウムは、ガラス基質の元素と結合してガラスの表面部分に取り込まれる傾向がある。ガラスからのソーダがClと反応するとき、ガラス基質の中に酸素のダングリングボンドを残すが、アルミニウムはこれらの酸素のダングリングボンドと反応して、ガラスネットワークを強化し、強さと耐久性を改善する。また、ガラスの中のSiとAlは、ガラスの中の酸素を通して結合し、ある場合にはその表面でアルバイト構造を形成する。従って、ガラスの表面部分はAlとSiが豊富であり、その結果、ガラスの強さと耐久性が改善する。
上述したように、アルミニウム塩化物処理10では、AlClはアルコール(例えば、メタノール)のような溶剤の中に供給され、混合物を作る。また、アルミニウム塩化物は、ある場合には混合物を作るために水の中に供給されることができる。その混合物は望ましくは約1−25%のAlCl(より望ましくは約2−20%、さらにより望ましくは約3−15%、そして最も望ましくは約5−10%のAlCl)であり、本発明の一実施形態では残りは溶剤または水で構成される。その混合物におけるAlClと溶剤の重量比は、(メタノールが溶剤の例である場合には、)望ましくは約1:8から1:40であり、より望ましくは約1:10から1:20である。これらの比が応用と処理のために最も良い結果を与えることが見出された。
アルミニウム塩化物処理10の適用されるガラスの温度範囲が重要であることが見出された。特に、ガラスは、その処理を受けてガラスの元素とアルミニウム酸化物の良好な反応を促進するためには十分に高温でなければならないが、HClのような処理の腐食性の副産物が製造部品またはガラス自体に著しいダメージを引き起こさないように十分に低温でなければならない。アルミニウム塩化物処理10において、ガラスの温度が約550℃から900℃まで、より望ましくは約580℃から850℃まで、そして最も望ましくは約590℃から800℃までであるとき、ガラスの表面にアルミニウム塩化物を塗布することが望ましいことが見出された。
パターンガラスラインでは、ここに議論される有利な理由のために、アルミニウム塩化物処理10は焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前に実行される。けれどもパターンガラスラインには錫槽はなく、その代わりにガラスは米国特許第6,796,146号明細書に記載されているように1つ以上のローラーによって形成される。ここで、米国特許第6,796,146号明細書の開示を参照によりここに含める。
本発明に従って処理されたソーダ石灰シリカガラスの表面にアモルファスシリコンTFTを形成した。図2はその特性を示す。特に、図2は、本発明の一実施形態に従って製造されたソーダ石灰シリカをベースとするフロートガラス上のアモルファスシリコンTFTの特徴を示すゲート−ソース電圧とドレイン−ソース電流のグラフである。TFTは、50μm/10μmのチャネル幅/チャネル長の比と、ソース−ドレイン電圧=10Vによって特徴づけられる。測定結果は、ホウケイ酸ガラス上に形成されたTFTの特性と同様の電解効果移動度、しきい電圧、サブスレッショルド傾斜、およびオフ電流を含むTFT特性を証明する。TFTは、200℃で100時間保管の加速寿命試験を受けたが、ホウケイ酸ガラス上のTFTの変化と同様のわずかな変化のみが観察された。また、TFTはゲートに30Vで2時間のバイアスストレスを受けたが、しきい電圧と移動度の変化は小さく、参照したホウケイ酸ガラス上のTFTの変化と同様であった。
本発明の一実施形態では、ソーダ石灰シリカガラスのCTEは1つ以上の複数の方法によって削減される。ガラスは約500℃−550℃でプリシュリンク(プリアニーリング)されてよい。その後で、CTEはホウケイ酸ガラスのものと同様である。さらに、CTEに対処するためにガラスの組成を変えることができる。
ここに記載されるガラスは、フロートラインで製造されるようなガラスの厚さに従って製造される。また、ディスプレイへの応用のために、フロートプロセスの後で、従ってアルミニウム塩化物処理の後で、ガラスはより薄く研磨される。例えば、ディスプレイへの応用のために、約1.6mmの厚さを持った基板が約0.6mm−1.2mm(より望ましくは約0.7mm−1.1mm)の厚さに研磨される。他の例として、1.1mmの厚さを持ったガラス基板が0.7mmの厚さに研磨される。ガラスの処理された面におけるAlの状態を乱さないように、後処理としての研磨はアルミニウム塩化物で処理された表面の反対側のガラス面で実行される。
上述した開示が与えられると、多くの他の特徴、修正、改善が当業者にとって明らかになる。従って、そのような特徴、修正、改善は本発明の一部とみなされ、本発明の範囲は特許請求の範囲によって決定される。

Claims (20)

  1. 原料として、SiOを67−75重量%、NaOを10−20重量%、CaOを5−15重量%、Alを0−7重量%、KOを0−7重量%含むベースガラス部分を有するソーダ石灰シリカをベースとするガラスの製造方法であって、
    前記ソーダ石灰シリカをベースとするガラスを製造するためのガラス溶解物を形成するために加熱炉にガラスの原材料を供給するステップと、
    細長いガラスを形成するために錫槽に前記ガラス溶解物を注入するステップと、
    前記細長いガラスが焼きなましされる焼きなまし炉に前記細長いガラスを送るステップと、
    前記細長いガラスが約540℃から850℃までの温度であるとき、焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前にAlClを用いて前記細長いガラスの第1の主面を処理するステップと、
    前記AlClを用いて細長いガラスの第1の主面を処理するステップの後で、ディスプレイへの応用での使用に向けてガラスの厚さを削減するために、前記第1の主面の反対側にある第2の主面を研磨するステップと、
    を備えることを特徴とするガラス製造方法。
  2. 前記第2の主面を研磨するステップにおいて、研磨前の約1.3mmから1.8mmまでの厚さから、研磨後に約0.6mmから1.2mmまでの厚さにガラス基板を薄くすることを特徴とする請求項1に記載のガラス製造方法。
  3. 前記第2の主面を研磨するステップにおいて、研磨前の約1.5mmから1.7mmまでの厚さから、研磨後に約0.7mmから1.1mmまでの厚さにガラス基板を薄くすることを特徴とする請求項1に記載のガラス製造方法。
  4. 前記AlClを用いて細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、AlClと少なくとも1つの溶剤の混合物であって、AlClと溶剤の重量比が約1:8から1:40である混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項1に記載のガラス製造方法。
  5. 前記AlClを用いて細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、AlClと少なくとも1つの溶剤の混合物であって、AlClと溶剤の重量比が約1:10から1:20である混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項1に記載のガラス製造方法。
  6. 前記AlClを用いて細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、AlClと少なくとも1つの溶剤の混合物であって、約1重量%から25重量%までのAlClを含む混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項1に記載のガラス製造方法。
  7. 前記AlClを用いて細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、AlClと少なくとも1つの溶剤の混合物であって、約2重量%から20重量%までのAlClを含む混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項1に記載のガラス製造方法。
  8. 前記AlClを用いて細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、AlClと少なくとも1つの溶剤の混合物であって、約3重量%から15重量%までのAlClを含む混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項1に記載のガラス製造方法。
  9. 前記AlClを用いて細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、AlClと少なくとも1つの溶剤の混合物であって、約5重量%から10重量%までのAlClを含む混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項1に記載のガラス製造方法。
  10. 前記溶剤が、メタノールとエタノールの両方またはいずれか一方を含むことを特徴とする請求項4に記載のガラス製造方法。
  11. 前記溶剤が、メタノール、エタノール、イソプロピル・アルコールのうち1つ以上を含むことを特徴とする請求項4に記載のガラス製造方法。
  12. ソーダ石灰シリカをベースとするガラスの製造方法であって、
    ガラス溶解物を形成するために加熱炉にガラスの原材料を供給するステップと、
    前記細長いガラスが焼きなましされる焼きなまし炉に、前記ガラス溶解物から形成されたソーダ石灰シリカガラスを元に形成された細長いガラスを送るステップと、
    前記細長いガラスが約540℃から850℃までの温度であるとき、焼きなまし炉において、または焼きなまし炉の直前にアルミニウム塩化物を用いて少なくとも前記細長いガラスの第1の主面を処理するステップと、
    を備えることを特徴とするガラス製造方法。
  13. 前記アルミニウム塩化物を用いて少なくとも細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、アルミニウム塩化物と少なくとも1つの溶剤の混合物であって、アルミニウム塩化物と溶剤の重量比が約1:8から1:40である混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項12に記載のガラス製造方法。
  14. 前記アルミニウム塩化物を用いて少なくとも細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、アルミニウム塩化物と少なくとも1つの溶剤の混合物であって、アルミニウム塩化物と溶剤の重量比が約1:10から1:20である混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項12に記載のガラス製造方法。
  15. 前記アルミニウム塩化物を用いて少なくとも細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、アルミニウム塩化物と少なくとも1つの溶剤の混合物であって、約1重量%から25重量%までのアルミニウム塩化物を含む混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項12に記載のガラス製造方法。
  16. 前記アルミニウム塩化物を用いて少なくとも細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、アルミニウム塩化物と少なくとも1つの溶剤の混合物であって、約2重量%から20重量%までのアルミニウム塩化物を含む混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項12に記載のガラス製造方法。
  17. 前記アルミニウム塩化物を用いて少なくとも細長いガラスの第1の主面を処理するステップにおいて、アルミニウム塩化物と少なくとも1つの溶剤の混合物であって、約3重量%から15重量%までのアルミニウム塩化物を含む混合物を前記細長いガラスの表面に塗布することを特徴とする請求項12に記載のガラス製造方法。
  18. 前記溶剤が、メタノール、エタノール、イソプロピル・アルコールのうち1つ以上を含むことを特徴とする請求項15に記載のガラス製造方法。
  19. 前記アルミニウム塩化物を用いて少なくとも前記細長いガラスの第1の主面を処理するステップの後で、ディスプレイへの応用での使用に向けてガラスの厚さを削減するために、前記第1の主面の反対側にある第2の主面を研磨するステップを備えることを特徴とする請求項12に記載のガラス製造方法。
  20. 前記第2の主面を研磨するステップにおいて、研磨前の約1.3mmから1.8mmまでの厚さから、研磨後に約0.6mmから1.2mmまでの厚さにガラス基板を薄くすることを特徴とする請求項19に記載のガラス製造方法。
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