本発明の圧力検出装置用基体および圧力検出装置について、添付の図面を参照しつつ説明する。図1〜図5において、1は絶縁基体、1aは内部空間、1bは絶縁基板、1cはスペーサ、1dはダイアフラム、1eは可撓領域、1fは配線導体、1gは枠体、1hは凹部、1iは切欠き状の凹部、2は電極用導体層、3は上側電極、4は下側電極、5は絶縁層、6は検知用電極、6aは検知用電極用配線、7は電子部品、8は導電性接合材、9は封止樹脂である。
本発明の圧力検出装置用基体は、図1〜図4に示す例のように、互いに平行に対向する上面および下面がある内部空間1aを有し、表面に複数の電極用導体層2を有する絶縁基体1と、内部空間1aの上面および下面にそれぞれ電極用導体層2の少なくとも1つに電気的に接続されて形成された、互いに対向する上側電極3および下側電極4と、上側電極3または下側電極4を被覆した絶縁層5とを備え、上面および下面の少なくとも一方が、外部から圧力が加わることにより撓む可撓領域1eである圧力検出装置用基体であって、可撓領域1eの中央部に対応する絶縁層5の表面に、上側電極3および下側電極4とは電気的に独立な、絶縁層5で被覆されていない上側電極3または下側電極4との接触を検知するための検知用電極6を備えている。
図1,図2および図5に示す例では、絶縁層5は内部空間1aの下面(絶縁基板1bの上面の下側電極4の上面)に形成されており、検知用電極6はその絶縁層5の表面に形成されている。図3および図4に示す例では、絶縁層5は内部空間1aの上面(ダイアフラム1dの下面の上側電極3の下面)に形成されており、検知用電極6はその絶縁層5の表面に形成されている。また、図1(a)では内部空間1a,配線導体1f,上側電極3,下側電極4,絶縁層5および検知用電極6を透視して示しており、図1(b)では下側電極4を透視して示している。
このような本発明の圧力検出装置用基体によれば、外部の圧力の変化により、ダイアフラム1dが撓んで絶縁層5に接触しようとすると、上側電極3または下側電極4と、上側電極3と下側電極4との間の間隔が最も狭くなる可撓領域の最も可撓する領域の中心に対応する位置に形成された検知用電極6とが接触することとなり、それ以上ダイアフラム1dが変化しにくく、上側電極3と下側電極4との静電容量が変化しにくい状況にあることを検出することができる。従って、この検知用電極6によって上側電極3または下側電極4との接触の有無を検査することにより、所望の圧力範囲内において、静電容量と圧力との関係が所望の関係であることを良好に検知することができる圧力検出装置用基体を得ることができる。
このような本発明の圧力検出装置用基体によれば、外部の圧力の変化によってダイアフラム1dの可撓領域1eが大きく撓んでダイアフラム1dがダイアフラム1dに対向する面に接触するときには、絶縁層5で被覆されていない上側電極3または下側電極4と可撓領域1eの中央部に対応する絶縁層5の表面に形成された検知用電極6とが接触するので、絶縁層5で被覆されていない上側電極3または下側電極4と検知用電極6とが短絡する。そして、短絡することによって、ダイアフラム1dがダイアフラム1dと対向する面に接触していることを検知できるので、ダイアフラム1dがさらに圧力が加わっても変形しない状態であって、静電容量が変化しにくい、もしくは変化しないことを検出できる。
そして、このような圧力検出装置用基体を用いれば、例えば、製品の出荷前の検査の際に、所望の圧力範囲内で、絶縁層5で被覆されていない上側電極3または下側電極4と検知用電極6とが短絡するかどうかを検査することによって、短絡するような圧力検出装置用基体を不良品として取り除くことができる。従って、製品の出荷前の検査の際に、所望の圧力範囲内で良好に圧力を検出することができる圧力検出装置用基体を選ぶことができる。また、本発明の圧力検出装置用基体を用いた圧力検出装置であれば、使用時にダイアフラム1dとダイアフラム1dに対向する面とが接触することがあったとしても、接触を検知して、圧力検出装置が圧力を適正に測定できない状態にあることを検出することができる。
絶縁基体1は、酸化アルミニウム質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,炭化珪素質焼結体,窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックス等の電気絶縁性の焼結体から成り、例えば、図2に示す例のように、絶縁基板1bと枠状のスペーサ1cと中央部が可撓領域1eとなるダイアフラム1dとから構成され、これらが順に積層されることによって内部空間1aが形成されている。
絶縁基体1は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、次のようにして製作される。まず、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム等のセラミック原料粉末に、適当な有機バインダ,溶剤,可塑剤および分散剤を添加混合して泥漿状となすとともに、これをドクターブレード法によりシート状に成形して複数枚のセラミックグリーンシートを得る。これらのセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工および切断加工を施すことにより、絶縁基体1用(絶縁基板1b用,スペーサ1c用およびダイアフラム1d用)のセラミックグリーンシートを得る。このとき、スペーサ1c用のセラミックグリーンシートには、金型やパンチングによる打ち抜き加工またはレーザ加工等の孔加工方法により、内部空間1aとなる貫通孔を形成しておく。これらのセラミックグリーンシートを積層することにより、内部空間1aを有する絶縁基体1用のセラミックグリーンシート積層体を形成する。そして、このセラミックグリーンシート積層体を約1600℃の温度で焼成することにより、内部空間1aを有する絶縁基体1が製作される。
絶縁基体1には、図5および図6に示す例のように、絶縁基体1の可撓領域1eが形成された面と対向する面に電子部品7を収容するための凹部1hが形成されていても構わない。この場合、絶縁基体1は、電子部品7を収容するとともに電子部品7を保護するための容器としても機能する。
また、絶縁基体1は、図4〜図6に示す例のように、ダイアフラム1dの外周部の上に枠体1gを備えていても構わない。枠体1gは、ダイアフラム1dの上面の可撓領域1eより外周の領域に積層された、スペーサ1cと同様の枠状の形状のものである。これによれば、絶縁基体1用のセラミックグリーンシート積層体を形成する際に、ダイアフラム1d用のセラミックグリーンシートはスペーサ1c用のセラミックグリーンシートと枠体1g用のセラミックグリーンシートとにより上下方向から挟まれて形成されるので、ダイアフラム1dの焼成時の反りを抑制することができる。また、枠体1gは可撓領域1eの外表面から突出しているので、焼成前の絶縁基体1用のセラミックグリーンシート積層体,焼成後の圧力検出装置用基体および圧力検出装置の可撓領域1eに外部の物が当たることが抑えられ、厚みの薄い可撓領域1eが損傷してしまう可能性を低減することができる。
絶縁基体1の表面の電極用導体層2は、上側電極3と下側電極4との間の静電容量の変化を電気的な信号として外部回路基板へ伝えるための端子電極として機能するものであり、電極用導体層2と上側電極3および下側電極4それぞれとの間は、絶縁基体1の内部に形成された配線導体1fによって電気的に接続されている。また、図6に示す例のように、圧力検出装置に電子部品7を実装する場合は、電子部品7の端子が接続される接続電極として機能する電極用導体層2が設けられる。このような電極用導体層2は、可撓領域1e以外の絶縁基体1の表面に設けられる。図2〜図4に示す例では電極用導体層2を絶縁基体1の下面に設けているが、電極用導体層2は絶縁基体1の側面に設けてもよい。あるいは、図5および図6に示す例のように、絶縁基体1の側面に切欠き状の凹部1iを形成し、この凹部1iの内面に端子電極として機能する電極用導体層2を設けて、いわゆるキャスタレーション導体としてもよい。
絶縁基体1の内部空間1aの下面(図2に示す例においては絶縁基板1bの上面)には下側電極4が被着され、絶縁基体1の内部空間1aの上面(図2に示す例においてはダイアフラム1dの下面)には、下側電極4と対向するようにして上側電極3が被着されている。下側電極4および上側電極3は静電容量形成用の電極であり、これらの間に下側電極4と上側電極3とが対向する面積および下側電極4と上側電極3との間隔に応じた静電容量が形成される。図2および図3に示す例では、絶縁基体1に外部から圧力が印加されると、その圧力に応じてダイアフラム1dの可撓領域1eが絶縁基板1b側に撓んで下側電極4と上側電極3との間隔が変わり(小さくなり)、下側電極4と上側電極3との間の静電容量が変化する(大きくなる)ので、この静電容量の変化を検出することによって、外部の圧力の変化を静電容量の変化として検出する圧力検出装置として機能する。なお、圧力が大きく減少した場合は、その圧力に応じてダイアフラム1dの可撓領域1eが絶縁基板1bと反対側に撓んで下側電極4と上側電極3との間隔が変わる(大きくなる)こともあり、そのときには平衡状態から下側電極4と上側電極3との間の静電容量が変化する(小さくなる)こととなる。
また、図4に示す例では、絶縁基体1に外部から圧力が印加されると、その圧力に応じて内部空間1aの上下に設けられたダイアフラム1dの可撓領域1eがそれぞれ内部空間1a側に撓んで下側電極4と上側電極3との間隔が変わって(小さくなって)、これらの間の静電容量が変化する(大きくなる)。この例でも、圧力が大きく減少した場合は、その圧力に応じて内部空間1aの上下に設けられたダイアフラム1dの可撓領域1eがそれぞれ内部空間1aと反対側に撓んで下側電極4と上側電極3との間隔が変わる(大きくなる)こともあり、そのときには平衡状態からこれら下側電極4と上側電極3との間の静電容量が変化する(小さくなる)こととなる。
そして、この静電容量の変化を電極用導体層2を介して電気的な信号として外部回路基板に伝達させて、外部回路基板に搭載した演算処理装置等の電子部品で演算処理することによって、外部の圧力の大きさおよび変化を知ることができる。ここで、図6に示す例のように、絶縁基体1に凹部1hが形成され、この凹部1h内に演算処理装置等の電子部品7が搭載される場合は、静電容量の変化は外部回路基板ではなく凹部1h内の電子部品7に伝達される。
電極用導体層2,上側電極3,下側電極4および配線導体1fは、タングステン,モリブデン,銅または銀等の金属粉末を用いたメタライズ導体から成り、例えば、絶縁基体1が酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、タングステン等の金属粉末に適当な有機バインダ,溶剤,可塑剤および分散剤等を添加混合して得たメタライズペーストをスクリーン印刷法によって絶縁基体1用のセラミックグリーンシートに所定のパターンに印刷塗布し、これを絶縁基体1用のセラミックグリーンシート積層体とともに焼成することによって、絶縁基体1の内部および表面に所定のパターンに形成される。絶縁基体1内で上下方向に延びる配線導体1fは、セラミックグリーンシートに貫通孔を形成しておき、この貫通孔にメタライズペーストを充填しておくことによって形成される。
スペーサ1cは、図2および図3に示す例では上面に下側電極4を備える絶縁基板1bと下面に上側電極3を備えるダイアフラム1dとの間に、図4に示す例では上下のダイアフラム1d・1d間に、それぞれ所定の間隔を設けるものとして機能し、内部空間1aを形成する貫通孔を有する枠状に形成されている。なお、スペーサ1cは、その厚みが0.01mm未満では、下側電極4と上側電極3との間隔が小さく可撓領域1eの可撓範囲が小さいものとなるので、広範囲の圧力範囲にわたって圧力を検出することが困難となる傾向にある。他方、5mmを超えると、可撓領域1eの撓み量に対して下側電極4と上側電極3との間隔が大きいものとなるので、電極間距離の変化率が小さくなり静電容量の変化率が小さくなって感度が低いものとなってしまう傾向がある。従って、スペーサ1cの厚みは0.01mm〜5mmの範囲であることが好ましい。
ダイアフラム1dは、外部の圧力に応じて絶縁基板1b側に、また場合によってはその反対側に撓んで、圧力検出用のダイアフラムとして機能する。図2に示す例では、ダイアフラム1dの内部空間1aの上面となる部分、すなわちスペーサ1cの貫通孔と重なる領域が可撓領域1eとなり、この可撓領域1eが、外部から圧力が加わることにより撓むこととなる。なお、ダイアフラム1dは、厚みが0.01mm未満では、その機械的強度が小さいものとなり、また上述したセラミックグリーンシートを用いた作製が困難となる傾向にある。他方、1mmを超えると、小さな圧力では撓みにくくなり、圧力検出装置用のダイアフラムとしては不適となってしまう傾向にある。したがって、ダイアフラム1dの厚みは0.01〜1mmの範囲が好ましい。このような厚みのダイアフラム1dを有する圧力検出装置用基体を用いた圧力検出装置は、80kPa(低圧用圧力検出装置)〜2000kPa(高圧用圧力検出装置)の圧力の下で使用することが可能である。
なお、内部空間1aは、平面視で円形状の円柱形状であることが好ましい。内部空間1aが平面視で円形状、すなわちスペーサ1cの貫通孔およびダイアフラム1dの可撓領域1eが円形状であることにより、外部の圧力が加わった際に、ダイアフラム1dの可撓領域1eを均等に撓ませることができ、厚みの薄いダイアフラム1dの一部が大きく変形しないので、そこから壊れることがなく、外部の圧力を感度良く検出することができる。
また、ダイアフラム1dに形成される上側電極3および下側電極4は、内部空間1aの形状と同様に、平面視で円形状であることが好ましい。このような電極形状とすることで、ダイアフラム1dの可撓領域1eを均等に撓ませることができる。
また、上側電極3および下側電極4の少なくとも一方は、内部空間1aのそれが設けられた上面または下面よりも小さいことが好ましい。外部の圧力の変動による上側電極3と下側電極4との電極間距離の変化率は、内部空間1aの平面方向の中央側において大きく、内部空間1aの外周側においては小さい。従って、上側電極3および下側電極4の少なくとも一方の電極が、内部空間1aのそれが設けられた上面または下面よりも小さいと、電極間距離の変化率の大きい内部空間1aの中央部だけで上側電極3と下側電極4とを対向させることができるので、外部の圧力が加わることによる上側電極3と下側電極4とで形成される静電容量の変化率が大きくなり、圧力検出装置の感度を高めることができる。
上側電極3と下側電極4とは、一方を他方より大きいものとすると、絶縁基体1を作製する際の上側電極3と下側電極4との位置ずれがあっても、上側電極3と下側電極4とが対向する面積が変わらないので好ましい。さらにこの場合には、ダイアフラム1dに形成する電極、図1に示す例における上側電極3を、図1および図2に示す例のように内部空間1aの上面より大きくすると、外部の圧力が加わった際にダイアフラム1dを良好に撓ませることができるので好ましい。これは、例えば、ダイアフラム1dの可撓領域1eより小さい上側電極3が形成されていると、可撓領域1e内において上側電極3が形成された領域とそうでない領域との間でたわみに差が生じるからであり、また、この差が大きいとこれらの領域の境界で割れてしまう場合があるからである。
絶縁層5は、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体または炭化珪素質焼結体等の電気絶縁材料から成る。図2に示す例のように、下側電極4の面積が内部空間1aの下面(絶縁基板1bの上面)の面積よりも小さい場合には、絶縁層5は、下側電極4を被覆するように形成される。絶縁層5が、図2に示す例のように、下側電極4を覆うように形成される場合は、内部空間1aの下面となる絶縁基体1用のセラミックグリーンシート上に印刷された下側電極4用のメタライズペースト上に、スクリーン印刷法等の印刷手段によって絶縁層5用のセラミックペーストを印刷塗布し、そのセラミックペーストを絶縁基体1用のセラミックグリーンシート積層体と同時焼成することによって、下側電極4を被覆している絶縁層5が形成される。絶縁層5用のセラミックペーストは、主成分のセラミック粉末に有機バインダおよび有機溶剤、また必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミルまたはプラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練して製作される。
また、図5に示すように、上側電極3および下側電極4の少なくとも一方を絶縁基体1の内部に埋設しても構わない。この場合は、絶縁基体1の一部を絶縁層5として利用することができる。このような絶縁層5は、下側電極4用のメタライズペーストが印刷されたセラミックグリーンシート上に、絶縁層5となる絶縁基体1用のセラミックグリーンシートを積層しておくことによって形成することができる。なお、この場合には、絶縁層5は、セラミックグリーンシートを用いて形成するので、セラミックペーストを印刷して形成する場合と比較して絶縁層5の厚みのばらつきを低減できるので、厚み精度に優れた圧力検出装置用基体とすることができる。
また、絶縁層5は、電極の表面から15μm以上の厚みで、電極の表面から電極の外周縁より15μm以上外側にわたって形成しておくことが好ましい。このように、絶縁層5の厚みおよび幅を、15μm以上としておくことにより、絶縁層5に空洞等の欠陥が発生し、不要な領域に被着されためっき層と内部空間1aの面積よりも小さい電極とが電気的に接続することを抑制することができる。
そして、本発明の圧力検出装置用基体においては、可撓領域1eの中央部に対応する絶縁層5の表面に、上側電極3および下側電極4とは電気的に独立している検知用電極6を備えている。検知用電極6は、検知用電極用配線6aと配線導体1fとを介して、電極用導体層2の1つに電気的に接続されている。
検知用電極6および検知用電極用配線6aは、電極用導体層2と同様に、タングステン,モリブデン,銅または銀等の金属粉末を用いたメタライズ導体から成り、例えば、絶縁層5が酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、タングステン等の金属粉末に適当な有機バインダ,溶剤,可塑剤および分散剤等を添加混合して得たメタライズペーストをスクリーン印刷法によって絶縁層5用のセラミックペーストの表面に印刷塗布し、これを絶縁基体1用のセラミックグリーンシート積層体とともに焼成することによって、可撓領域1eの中央部に対応する絶縁層5の表面に形成される。
なお、絶縁層5となるセラミックグリーンシート上に検知用電極6用のメタライズペーストを印刷する場合は、セラミックペースト表面に印刷する場合と比較して、検知用電極6用のメタライズペーストを良好に印刷しやすくなるので、検知用電極6を精度良く形成しやすくなる。
また、絶縁層5および検知用電極6は、内部空間1aの上面が、外部から圧力が加わることにより撓む可撓領域1eである場合であれば、図2および図5に示す例のように、内部空間1aの下面側(絶縁基板1bの下側電極4の表面側)に形成されていることが好ましい。これにより、上面側に絶縁層5および検知用電極6を形成していないので、絶縁層5および検知用電極6を、内部空間1aの上面側(ダイアフラム1dの上側電極3の表面側)に形成した場合と比較して、可撓領域1eを薄く、かつ平坦な状態に形成することができるので、外部の圧力の変動による圧力検出用基体の感度を良好にすることができる。
また、検知用電極6は、図5および図6の例に示すように、電子部品7の端子が接続される接続電極として機能する電極用導体層2に接続しておいても構わない。この場合には、圧力検出装置の使用中に上側電極3と検知用電極6とが接触していることを電子部品7で検知させることができる。
また、検知用電極6は、平面視で、絶縁基体1が縦5mm〜15mm,横5mm〜15mm,厚さ2mm〜5mmであって、ダイアフラム1dの可撓領域1eが半径2mm〜5mm程度の円形状の場合であれば、ダイアフラム1dの可撓領域1eの中心部から半径0.05mm以内の範囲に対応する領域に中心が位置するように、半径0.05mm〜1mm程度の円形状に形成しておくことが好ましい。なお、検知用電極6を四角形状等の円形状以外の形状に形成する場合であれば、上記した中心部から半径0.05mm以内の範囲に対応する領域を含んで、可撓領域1eの面積の0.01%〜5%程度となるように形成しておくことが好ましい。
例えば、絶縁基体1が縦5mm,横5mm,厚さ2mmであって、ダイアフラム1dの可撓領域1eが半径2mm程度の円形状の場合であれば、ダイアフラム1dの可撓領域1eの中心部から半径0.1mm以内の範囲に対応する領域に、半径0.05mm程度の円形状に形成する。また、絶縁基体1が縦15mm,横15mm,厚さ5mmであって、ダイアフラム1dの可撓領域1eが半径5mm程度の円形状の場合であれば、ダイアフラム1dの可撓領域1eの中心部から半径1mmの範囲に対応する領域に、半径1mm程度の円形状に形成する。
検知用電極6を上記の範囲および面積に形成しておけば、図2および図5に示す例のように、絶縁層5および検知用電極6が、内部空間1aの下面側(絶縁基板1bの下側電極4の表面側)に形成されている場合には、検知用電極6と上側電極3との接触を、また、図3および図4に示す例のように、絶縁層5および検知用電極6が、内部空間1aの上面側(ダイアフラム1dの下面の上側電極3の下面)に形成されている場合には、検知用電極6と下側電極4との接触を、それぞれ検出するのにより有効である。
なお、電極用導体層2の露出表面には、電極用導体層2が酸化腐食することを防止するとともに、電極用導体層2と外部回路基板の配線導体とを接合するためのはんだ等の導電性接合材8との接合を良好なものとするために、厚みが1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚みが0.1〜3μm程度の金めっき層とが電解めっき法により順次被着される。
また、上記の圧力検出装置用基体は、絶縁基板1bとスペーサ1cとダイアフラム1dとを焼結一体化することによって絶縁基体1を形成しているが、絶縁基板1bの上面とスペーサ1cの下面とに枠状の接合用金属層を形成しておき、接合用金属層の表面に厚みが1〜10μm程度のニッケルめっき層を被着させた後、Ag−Cuろう材のろう材等によりこれらの部材同士を接合することによって絶縁基体1を形成しても構わない。このような接合用金属層は、電極用導体層2と同様な方法によって形成することができる。
本発明の圧力検出装置は、図6に示す例のように、上記構成の本発明の圧力検出装置用基体の電極用導体層2に電子部品7が電気的に接続されている。本発明の圧力検出装置によれば、上記構成の圧力検出装置用基体の電極用導体層2に、電子部品7が電気的に接続されている。このことから、圧力検出装置用基体によって外部からの圧力の変化を精度よく検出して、演算処理装置等の電子部品7によって圧力の変化による静電容量の変化に応じた出力信号を処理することで、静電容量の変化を外部の圧力値の変化として精度良く検出することができる。
図6に示す例のように、演算処理装置等の電子部品7が導電性接合材8を介して電極用導体層2に直接接続される場合は、外部回路基板に搭載された同様の電子部品7に接続される場合に比較して、下側電極4および上側電極3と電子部品7との間の配線長を短くすることができるので、外部の圧力を精度良く検出することができるものとなる。また、電子部品7が内蔵された圧力検出装置とすることで、このような圧力検出装置および外部回路基板等を含めた圧力センサモジュールを小型化することができる。
電子部品7は、図6に示す例では、上述した演算処理を行なうための演算処理装置としての半導体素子であるが、これ以外に、チップコンデンサやチップ抵抗等の受動素子や加速度センサ等の電子部品を搭載しても構わない。
また、図6に示す例では、フリップチップ型の電子部品7が凹部1h内の電極用導体層2上に導電性接合材8を介して接合されている。これにより、電子部品7の各電極と各電極用導体層2とが電気的に接続されるとともに、電子部品7が絶縁基体1に固定される。この場合の導電性接合材8としては、はんだバンプや金バンプ、または導電性樹脂(異方性導電樹脂等)が用いられる。また、電子部品7がワイヤボンディング型のものである場合には、電子部品7を凹部1hの底面にガラス,樹脂またはろう材等の接合材により固定した後、ボンディングワイヤを介して電子部品7の電極と電極用導体層2とが電気的に接続される。
また、図6に示す例では、電子部品7は、例えばエポキシ樹脂等の封止樹脂9により覆われることによって、凹部1h内に封止されている。あるいは、凹部1h内に実装された電子部品7を覆うようにして凹部1hを塞ぐように、金属やセラミックスから成る蓋体(図示せず)を絶縁基体1に接合することにより封止してもよい。