JP5294942B2 - 液体クロマトグラフィー用カラム充填剤、ヘモグロビンA1c及び異常ヘモグロビン類の測定方法、並びに、液体クロマトグラフィー用カラム充填剤の製造方法 - Google Patents

液体クロマトグラフィー用カラム充填剤、ヘモグロビンA1c及び異常ヘモグロビン類の測定方法、並びに、液体クロマトグラフィー用カラム充填剤の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、蛋白質類を短時間で高精度に測定することができ、かつ、カラム寿命を向上させることのできる液体クロマトグラフィー用カラム充填剤に関する。また、本発明は、該液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用いたヘモグロビンA1c及び異常ヘモグロビン類の測定方法、並びに、該液体クロマトグラフィー用カラム充填剤の製造方法に関する。
臨床検査の分野においては、糖尿病診断の指標としてヘモグロビンA1cの測定が汎用的に行なわれている。ヘモグロビンA1cは、液体クロマトグラフィー(以下、HPLCともいう)、免疫法、酵素法等により測定されているが、なかでもHPLC法は精度が良く、短時間に測定できるため、特に糖尿病患者のヘモグロビンA1c値の管理に用いられている。一般に糖尿病患者のヘモグロビンA1c値の管理に用いられるためには、同時再現性試験のCV値が1.0%以下程度であることが必要とされている。
ヘモグロビンA1cを短時間かつ高精度に測定でき、しかも低コストでの測定が可能なカラム耐久性(カラム寿命)の大きいカラム充填剤に必要な要件は、測定対象試料中の成分の非特異吸着を抑制することである。試料中成分の、カラム充填剤への非特異吸着は、クロマトグラムを変形させることによりヘモグロビンA1c値の測定精度を低下させ、カラム耐久性を短縮化させる。
ヘモグロビンA1cを測定するためのカラム充填剤としては、例えば、特許文献1には、イオン交換基を導入した架橋重合体粒子が開示されている。特許文献1では、一般的に行われている手法、すなわち架橋重合体粒子が有する水酸基をエポキシ化した後、硫酸ナトリウムでスルホン酸基を導入する方法により得られたカラム充填剤により、ヘモグロビンA1cを測定できる旨の開示がされている。
しかしながらこのようなイオン交換基の導入法により得られたカラム充填剤は、イオン交換基が存在しない表面部分の疎水性が残り、この部分への非特異吸着は抑制できない。
このような非特異吸着等を抑制するため、充填剤粒子を親水性材料により調製する方法が考えられる。しかしながら、架橋重合体粒子自体をより親水性にすると、耐圧性、耐膨潤性が低下して、迅速な分析ができない。
カラム充填剤の耐圧性等の強度を低下させずに親水性化する手段として、親水性高分子で充填剤表面を被覆した二層構造のカラム充填剤を用いることが公知である。例えば特許文献2には、親水性高分子であるポリビニルアルコールで充填剤表面を被覆することによりイオン交換基が導入された充填剤が開示されている。しかしながらこのような被覆層の調製方法は、高分子鎖の疎水性に依存した物理的な吸着によるものであるため、多数の試料を測定する場合には被覆層が剥離し、測定精度が低下する可能性が大きい。
一方、より強固に親水性高分子を架橋重合体表面に被覆して二層構造とする方法としては、架橋重合体粒子の表面で、親水性単量体を重合して被覆する方法が挙げられ、特許文献3には、架橋重合体粒子の表面に親水性重合体の層を形成する方法が開示されている。特許文献3では、親水性重合体として、カチオン交換性重合体を用いることにより、ヘモグロビンA1cが高精度に分離できるとしている。しかしながら、測定のより高速化、高精度化が要望される現在では、特許文献3のカラム充填剤でも分離性能が不充分である。特許文献3の技術を用いて分離性能を改善するためには、架橋重合体粒子表面のカチオン交換性重合体の種類の変更、又は、カチオン交換基量の増減等が考えられるが、これらの最適化技術では分離性能の改善に限界があった。
ヘモグロビンA1cの測定は、臨床検査の現場において、短時間内における高精度測定に関する強い要望があり、上述した非特異吸着の課題を解決した上で、より高い分離性能を実現する必要があった。
特開平03−255360公報 特開平11−183460公報 特開平03−73848号公報
本発明は、蛋白質類を短時間で高精度に測定することができ、かつ、カラム寿命を向上させることのできる液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用いたヘモグロビンA1c及び異常ヘモグロビン類の測定方法、並びに、該液体クロマトグラフィー用カラム充填剤の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、環状構造を有するアクリル系単量体及び架橋性アクリル系単量体を含有し、かつ、アクリル系単量体のみからなる単量体混合物を重合して得られる架橋重合体粒子と、上記架橋重合体粒子の表面において重合されてなる、イオン交換基を有するアクリル系重合体層とからなる液体クロマトグラフィー用カラム充填剤である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者は、従来の二層構造の充填剤において、分離性能には無関係と思われていたコア部分の組成を最適化することにより、分離性能を改良できることを見出した。
すなわち、環状構造を有するアクリル系単量体及び架橋性アクリル系単量体を含有し、かつ、アクリル系単量体のみからなる単量体混合物を重合して得られる架橋重合体粒子の表面に、イオン交換基を有する重合体層を重合させることにより得られるカラム充填剤を用いることにより、高い分離性能が得られ、また長期間の使用時においてもその分離性能が劣化しにくいことを見出した。
更に、得られたカラム充填剤は、ヘモグロビン類以外の試料の測定においても高精度の測定が可能となることを見出した。
本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤は、環状構造を有するアクリル系単量体(以下、環状構造アクリル系単量体ともいう)及び架橋性アクリル系単量体を含有し、かつ、アクリル系単量体のみからなる単量体混合物を重合して得られる架橋重合体粒子を基材とする。
なお、本明細書において「アクリル系」とは、アクリル基又はメタクリル基を有することを意味する。また、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸又はメタクリル酸」であることを示す。
上記環状構造アクリル系単量体が有する環状構造は、上記環状構造を形成する炭素数が4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。
上記環状構造の主骨格は、炭素骨格に加えて窒素等によって構成される複素環であってもよいが、炭素のみの主骨格であることが好ましい。
また、上記環状構造の主骨格以外の付加物又は置換物の構成は特に限定されないが、イオン交換基を有しないことが好ましい。
上記環状構造の主骨格は、不飽和結合を含む骨格であってもよいし、不飽和結合を含まない骨格であってもよい。
上記環状構造アクリル系単量体は特に限定されず、例えば、脂肪族環状構造を有する環状構造アクリル系単量体、芳香族環状構造を有する環状構造アクリル系単量体、複素環構造を有する環状構造アクリル系単量体等が挙げられる。
上記脂肪族環状構造を有する環状構造アクリル系単量体は特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ter−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクロイルプロピルヘキサヒドロフタレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記芳香族環状構造を有する環状構造アクリル系単量体は特に限定されず、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクロイルプロピルフタレート等が挙げられる。
上記複素環構造を有する環状構造アクリル系単量体は特に限定されず、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、アクロイル化モルホリン等が挙げられる。
これらの環状構造アクリル系単量体は、単独で用いてもよいし、用いられる総量が後述する範囲内であれば、2種以上を併用してもよい。
上記単量体混合物を100重量%とした場合の上記環状構造アクリル系単量体の配合量の好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は20重量%である。
上記環状構造アクリル系単量体の配合量が0.5重量%未満であると、環状構造アクリル系単量体の添加効果が現ないことがある。上記環状構造アクリル系単量体の配合量が20重量%を超えると、環状構造の疎水性により非特異吸着等が起こりやすくなり、正確な測定ができなくなることがある。上記環状構造アクリル系単量体の配合量のより好ましい下限は1.0重量%、より好ましい上限は15重量%である。
上記架橋性アクリル系単量体は特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
上記ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる
上記ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)−ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコール−ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ウレタン(メタ)ジアクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−5−メチル−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,11−ジ(メタ)アクリロキシ−4,8−ジオキサウンデガン−2,6,10−トリオール等が挙げられる。
上記分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの架橋性アクリル系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
また、上記架橋性アクリル系単量体は、イオン交換基を有さない構造であることが好ましい。
上記単量体混合物は、上記環状構造アクリル系単量体及び上記架橋性アクリル系単量体に加えて、必要に応じて、その他の非架橋性アクリル系単量体を含有してもよい。上記非架橋性アクリル系単量体は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル類、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、水酸基又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキル類は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
上記ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記水酸基又はグリシジル基を有する(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの非架橋性アクリル系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
また、上記非架橋性アクリル系単量体は、イオン交換基を有さない構造であることが好ましい。
上記単量体混合物を100重量%とした場合の上記非架橋性アクリル系単量体の配合量の好ましい上限は20重量%である。上記非架橋性アクリル系単量体の配合量が20重量%を超えると、架橋度が小さくなることにより、耐圧性、耐膨潤性が低下し、短時間での高精度測定時において測定精度が低下することがある。上記非架橋性アクリル系単量体の配合量のより好ましい上限は15重量%である。
上記架橋重合体粒子の形状は特に限定されないが、球状であることが好ましく、真球状であることがより好ましい。
上記架橋重合体粒子の粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は50μmである。上記架橋重合体粒子の粒子径が0.1μm未満であると、カラム圧力が増大し、HPLCに耐圧性付与のための特殊な部品等が必要となり、好ましくない。上記架橋重合体粒子の粒子径が50μmを超えると、カラム内の空隙率が増大し、試料の拡散が起き易くなり、ピークのブロード化等により測定精度が低下することがある。上記架橋重合体粒子の粒子径のより好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は30μmである。
本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤は、上記単量体混合物より調製された架橋重合体粒子と、上記架橋重合体粒子の表面において重合されてなる、イオン交換基を有するアクリル系重合体(以下、単にイオン交換性重合体ともいう)層により構成される。
上記イオン交換性重合体の有する「イオン交換基」とは、公知のイオン交換性を有する官能基を指し、カチオン交換基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられ、アニオン交換基としては、例えば、3級アミノ基、4級アンモニウム基等が挙げられる。なかでも、ヘモグロビン類の分離においてはカチオン交換基が好ましく、特にスルホン酸基が好ましい。
なお、本発明でいうイオン交換基には、イオン交換基に付随する構造は問わないため、上記イオン交換基を末端に有する全ての官能基を含む。例えば、本発明でいう「カルボキシル基」とは、カルボキシルエチル基、カルボキシルプロピル基等、カルボキシル基が結合する官能基類全てを含む。
また、上記イオン交換性重合体は、複数種のイオン交換基を有していてもよい。
上記イオン交換性重合体は、(1)イオン交換基を有するアクリル系単量体を重合して得られた重合体、又は、(2)イオン交換基に変換可能な官能基を有するアクリル系単量体を重合し、後に当該官能基をイオン交換基に変換して得られる重合体である。
上記(1)のイオン交換性重合体を構成する「イオン交換基を有するアクリル系単量体」としては、イオン交換基、すなわち、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の上記カチオン交換基若しくは3級アミノ基、4級アンモニウム基等の上記アニオン交換基の両方を有するアクリル系単量体類が挙げられる。
上記カルボキシル基を有する単量体は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体類が挙げられる。
上記リン酸基を有する単量体は特に限定されず、例えば、((メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート等の(メタ)アクリル酸誘導体類等が挙げられる。
上記スルホン酸基を有する単量体は特に限定されず、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体類等が挙げられる。
上記アニオン交換基を有する単量体は特に限定されず、例えば、3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート類、4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸誘導体類等が挙げられる。
上記3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3− ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸誘導体類は特に限定されず、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
一方、上記(2)のイオン交換性重合体を構成する、「イオン交換基に変換可能な官能基を有するアクリル系単量体」とは、化学反応等によりイオン交換基に変換可能な官能基、又は、後述するイオン交換基を有する化合物と反応可能な官能基(以下、反応性官能基ともいう)を有するアクリル系単量体である。
ここでいう反応性官能基とは、非イオン交換性であり、かつ、後述するイオン交換基を有する化合物と反応することができる官能基であれば特に限定されず、例えば、水酸基、グリコール基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基、シアノ基、アルデヒド基等が挙げられ、好ましくは水酸基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基であり、より好ましくは、水酸基、エポキシ基、グリシジル基である。
上記反応性官能基を有するアクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、例えば、エポキシ化(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル化(メタ)アクリレート類、アミノ化(メタ)アクリレート類、アルデヒド化(メタ)アクリレート類、シアノ化(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
上記エポキシ化(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシル化(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アミノ化(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記アルデヒド化(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、(メタ)アクロレイン等が挙げられる。
上記シアノ化(メタ)アクリレート類は特に限定されず、例えば、シアノ(メタ)アクリレート、エチル−2−シアノアクリレート等が挙げられる。
これらの反応性官能基を有するアクリル系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
上記(2)のイオン交換性重合体を調製するためのイオン交換基への変換は、上記反応性官能基を有するアクリル系単量体を重合して得られた、反応性官能基を有する重合体の当該反応性官能基に、イオン交換基を有する化合物を反応させることにより行われる。
上記反応性官能基を有する重合体に、イオン交換基を導入する方法としては、公知の化学反応による技術を用いることができる。下記に例示する方法は全て公知の化学反応であり、架橋重合体の分解等の反応を伴わない条件であれば、公知の反応を限定なく用いることができる。
上記反応性官能基を有する重合体が有する水酸基を介して、イオン交換基を導入する場合、例えば、ブロムエタンスルホン酸ナトリウム等のハロゲン化エタンスルホン酸類やクロロ酢酸ナトリウム等のハロゲン化酢酸類を、イオン交換基を有する化合物として用い、これらの化合物を水酸化アルカリ水溶液中で反応させることにより、上記重合体に導入することができる。
また、イオン交換基を有するアルデヒド化合物を、酸触媒下にてアセタール反応により水酸基と反応させることにより、同様にイオン交換基を導入することができる。
更に、例えば、トリカルバニル酸、ブタンテトラカルボン酸等の多官能カルボン化合物と水酸基の脱水反応によるエステル化により、カルボキシル基を導入することができる。
加えて、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン等を水酸化アルカリ水溶液中又は水酸化アルカリの有機溶媒溶液中で反応させることによってもスルホン酸基を導入することができる。
また、エポキシ基、グリシジル基、又は、アミノ基を介してイオン交換基を導入する場合、例えば、反応性官能基を有する重合体に、エピクロルヒドリンやトリグリシジルエーテルのようなエポキシ化合物を水酸化アルカリ水溶液中又は水酸化アルカリの有機溶媒溶液中で反応させてエポキシ化した後、硫酸ナトリウムやタウリン、グリコール酸等のカチオン交換基含有化合物を反応させる方法、三フッ化ホウ素エーテラートを結合した後、亜硫酸ナトリウム水溶液中で加熱処理する方法等が挙げられる。
同様に水酸化アルカリ水溶液中又は水酸化アルカリの有機溶媒溶液中に塩酸2−クロロトリエチルアミン水溶液を添加することにより、3級アミノ基を導入することができる。
反応性官能基がエポキシ基やグリシジル基の場合には、そのまま上記処理に供してもよい。
本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤は、上記環状構造アクリル系単量体及び上記架橋性アクリル系単量体を含有し、かつ、アクリル系単量体のみからなる単量体混合物を重合して得られた架橋重合体粒子、及び、重合開始剤の存在下において、上記イオン交換基を有するアクリル系単量体を重合し、上記架橋重合体粒子の表面にイオン交換性重合体層を形成させることにより得ることができる。このような製造方法もまた、本発明の一つである。
本発明の製造方法においては、まず、架橋重合体粒子を調製する。この架橋重合体粒子は、上記環状構造アクリル系単量体、上記架橋性アクリル系単量体、及び、必要に応じて非架橋性アクリル系単量体を含有し、かつ、アクリル系単量体のみからなる単量体混合物を用いて、重合開始剤の存在下で重合反応を行うことにより調製される。上記重合反応の方法は特に限定されず、例えば、乳化重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、懸濁重合法、シード重合法等の公知の重合反応を適用することができる。なかでも、分散重合法、懸濁重合法、シード重合法等を用いることが好適である。
具体的には例えば、懸濁重合法の場合、上記単量体混合物に重合開始剤を溶解し、適当な分散媒中に分散させた後、必要に応じて窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下にて攪拌しながら加温することにより、カラム充填剤として適当な、真球状の架橋重合体粒子を得ることができる。
上記重合開始剤は特に限定されず、水溶性又は油溶性の公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
上記過硫酸塩は特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記有機過酸化物は特に限定されず、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
上記アゾ化合物は特に限定されず、例えば、2,2−アゾビスイソブヒロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。
上記単量体混合物100重量部に対する上記重合開始剤の配合量の好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は5重量部である。上記重合開始剤の配合量が0.05重量部未満であると、重合反応が不充分となったり、重合反応に長時間要したりすることがある。上記重合開始剤の配合量が5重量部を超えると、急激な反応の進行により凝集物が発生することがある。
なお、上記重合開始剤は、上記単量体混合物に溶解させて用いることが好ましい。
また、重合に際しては、公知の重合方法において用いられる各種の添加剤等を添加してもよい。
上記添加剤は特に限定されず、例えば、重合体にマクロポアを形成するための多孔質化剤、重合反応を制御するための各種連鎖移動剤、懸濁粒子を安定化されるための分散剤等が挙げられる。
具体的には例えば、多孔質化剤として上記単量体混合物を溶解するが重合体を溶解しない有機溶媒を上記単量体混合物に添加して重合反応を行い、重合反応後に上記多孔質剤を除去することにより、得られる重合体にマクロポアを形成することができる。このような有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類、飽和炭化水素類、アルコール類等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素類は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、ドデシルベンゼン等が挙げられる。
上記飽和炭化水素類は特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等が挙げられる。
上記アルコール類は特に限定されず、例えば、イソアミルアルコール、オクチルアルコール等のアルコール等が挙げられる。
上記単量体混合物100重量部に対する上記多孔質化剤の配合量の好ましい上限は100重量部である。
本発明の製造方法における次の工程は、得られた上記架橋重合体粒子の表面において上記イオン交換基を有するアクリル系単量体を重合する工程である。本工程は、上記イオン交換基を有するアクリル系単量体を、上記架橋重合体粒子、及び、上記重合開始剤の存在下で重合反応を行うことにより、上記架橋重合体粒子表面での重合反応が行われる。上記架橋重合体粒子の表面以外の部分で行われた反応、すなわち上記イオン交換基を有するアクリル系単量体のみからなる重合体は、重合反応後に洗浄することで除去される。
上記架橋重合体粒子の表面で効率よく上記イオン交換基を有するアクリル系単量体を重合させるには、上記架橋重合体粒子内に上記重合開始剤を含有させた状態で、上記イオン交換基を有するアクリル系単量体を重合する方法を用いることが好ましい。上記架橋重合体粒子に上記重合開始剤を含有させる方法としては、例えば、上記架橋重合体粒子を膨潤させることができ、かつ、上記重合開始剤を溶解できる有機溶媒に上記重合開始剤を溶解し、更に、上記架橋重合体粒子をこの有機溶媒に含浸させる方法が挙げられる。この方法により上記重合開始剤を上記架橋重合体粒子の内部に含有させることができる。上記重合開始剤を含有する架橋重合体粒子を、上述した適当な分散媒中に分散し、上記イオン交換基を有するアクリル系単量体を添加して重合反応を行う。
また、上記架橋重合体粒子を調製する際の重合反応において、この重合反応が完了する前、すなわち上記重合開始剤が完全に消費される前に、上記イオン交換基を有するアクリル系単量体を反応系に添加することで、最初に添加した重合開始剤を利用して、上記架橋重合体粒子の表面に効率よくイオン交換基を有するアクリル系単量体を重合させることができる。
また、本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤は、上記環状構造アクリル系単量体及び上記架橋性アクリル系単量体を含有し、かつ、アクリル系単量体のみからなる単量体混合物を重合して得られた架橋重合体粒子、及び、上記重合開始剤の存在下において、上記反応性官能基を有するアクリル系単量体を重合し、上記架橋重合体粒子の表面に、反応性官能基を有する重合体を形成させ、更にこの反応性官能基に上記イオン交換基を有する化合物を反応させて、上記反応性官能基を有する重合体をイオン交換性重合体に変換することにより得ることができる。このような製造方法もまた、本発明の一つである。
反応性官能基を有するアクリル系単量体を用いた場合の本発明の製造方法も、上述したイオン交換基を有するアクリル系単量体を用いた場合と同様に行うことができる。すなわち、上記反応性官能基を有する重合体層を、上記架橋重合体粒子の表面に形成させた後、上述した方法によりイオン交換性重合体に変換する。
本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用いた液体クロマトグラフィー(HPLC)により、ヘモグロビンA1c等の種々の蛋白質等の試料を測定することができる。このような測定方法もまた、本発明の一つである。
本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用いてHPLCによりヘモグロビンA1c等のヘモグロビン類の測定を行なう場合には、溶離液送液用のポンプ、サンプラ、検出器等を備えた公知のHPLCシステムに、本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を充填したカラムを接続し、血液試料中のヘモグロビン類の測定を行なうことができる。
本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用いたHPLC法に用いられる溶離液としては、公知の塩化合物を含む緩衝液類や有機溶媒類を用いることが好ましく、具体的には例えば、有機酸、無機酸、及び、これらの塩類、アミノ酸類、グッドの緩衝液等が挙げられる。
上記有機酸は特に限定されず、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
上記無機酸は特に限定されず、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、酢酸等が挙げられる。
上記アミノ酸類は特に限定されず、例えば、グリシン、タウリン、アルギニン等が挙げられる。
また、上記緩衝液には、他に一般に添加される物質、例えば、界面活性剤、各種ポリマー、親水性の低分子化合物等を適宜添加してもよい。
ヘモグロビンA1cの測定を行う際の上記緩衝液の塩濃度の好ましい下限は10mmol/L、好ましい上限は1000mmol/Lである。上記緩衝液の塩濃度が10mmol/L未満であると、イオン交換反応が行なわれず、ヘモグロビンを分離することができなくなることがある。上記緩衝液の塩濃度が1000mmol/Lを超えると、塩が析出しシステムに悪影響を及ぼすことがある。
本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用い、HPLCにより、上記ヘモグロビンA1cに加えて、異常ヘモグロビン類を測定することができる。
このような測定方法もまた、本発明の一つである。
本発明の測定方法により測定できる異常ヘモグロビン類としては、例えば、ヘモグロビンS、ヘモグロビンC等が挙げられる。また、ヘモグロビンF(胎児性ヘモグロビン)やヘモグロビンA2を測定することもできる。
本発明の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤は、環状構造アクリル系単量体を素材の一部とした架橋重合体粒子と、その表面において重合されてなるイオン交換性重合体層により構成される。架橋重合体粒子に環状構造を有することにより、従来のカラム充填剤を用いた測定よりも短時間内での高分離性能が得られ、その結果、高精度な測定及びカラム耐久性能の向上が図られる。特にヘモグロビンA1cの測定において、高精度測定及びカラム耐久性の向上が達成される。
つまり、本発明によれば、蛋白質類を短時間で高精度に測定することができ、かつ、カラム寿命を向上させることのできる液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用いたヘモグロビンA1c及び異常ヘモグロビン類の測定方法、並びに、該液体クロマトグラフィー用カラム充填剤の製造方法を提供することができる。
実施例1のカラム充填剤を用いてヘモグロビンA1cの測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。 実施例4のカラム充填剤を用いて蛋白質標準液の測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。 実施例5のカラム充填剤を用いて蛋白質標準液の測定を行った際に得られたクロマトグラムである。 比較例1のカラム充填剤を用いてヘモグロビンA1cの測定を行った際に得られたクロマトグラムである。 実施例1のカラム充填剤を用いて異常ヘモグロビン類の測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。 実施例1のカラム充填剤を用いてヘモグロビンA2の測定を行なった際に得られたクロマトグラムである。 実施例1、2、及び、比較例1のカラム充填剤の耐久性評価の結果である。
(実施例1)
架橋性アクリル系単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)450g及びテトラメチロールメタントリアクリレート(新中村化学工業社製)40g、並びに、環状構造アクリル系単量体としてフェノキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油社製)10g(2重量%)の混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合物を、4重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液5Lに分散させ、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温し、1時間重合反応を行なった。温度を30℃に冷却した後、イオン交換基を有するアクリル系単量体として2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成社製)100gを反応系に添加し、再び80℃に加温して1時間重合反応を行なった。得られた架橋重合体粒子をイオン交換水及びアセトンで洗浄することにより、スルホン酸基が導入された架橋重合体粒子(液体クロマトグラフィー用カラム充填剤)を得た。
得られた液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を、内径3mm、長さ30mmのステンレス製カラムに充填し、蛋白質類分離カラムを調製した。
上記蛋白質類分離カラムを、HPLCシステム(島津製作所社製、「LC−10A」)に接続した。測定試料として、フッ化ナトリウム採血したヒト健常人血液を、0.05%のTritonX−100(Sigma−Aldrich社製)を含むリン酸緩衝液(pH6.8)により200倍に溶血希釈したものを用いた。溶離液Aとして200mmol/Lのリン酸緩衝液(pH5.3)、及び、溶離液Bとして400mmol/Lのリン酸緩衝液(pH7.5)の2種の溶離液を用い、流速1.0mLで送液して溶離液Aから溶離液Bへのステップワイズグラジエント法により分離し、415nmの吸光度を測定した結果、図1のクロマトグラムを得た。図1中、ピーク1がヘモグロビンA1c、ピーク2がヘモグロビンA0である。ヘモグロビンA1cと他のヘモグロビン分画とが短時間内に良好に分離された。
(実施例2)
架橋性アクリル系単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)400g及びテトラメチロールメタントリアクリレート(新中村化学工業社製)50g、並びに、環状構造アクリル系単量体としてシクロヘキシルアクリレート(日油社製)50g(10重量%)の混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合物を、4重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液5Lに分散させ、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温し、1時間重合反応を行なった。温度を30℃に冷却した後、イオン交換基を有するアクリル系単量体として2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成社製)100gを反応系に添加し、再び80℃に加温して1時間重合反応を行なった。得られた架橋重合体粒子をイオン交換水及びアセトンで洗浄することにより、スルホン酸基が導入された架橋重合体粒子(液体クロマトグラフィー用カラム充填剤)を得た。
得られた液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を、内径3mm、長さ30mmのステンレス製カラムに充填し、蛋白質類分離カラムを調製した。
実施例1と同様の方法により、ヒト健常人血液を用いて測定したところ、図1と同様のクロマトグラムを得た。
(実施例3)
架橋性アクリル系単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)300g及びテトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)175g、並びに、環状構造アクリル系単量体としてフェノキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油社製)25g(5重量%)の混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合物を、4重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液5Lに分散させ、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温し、1時間重合反応を行なった。温度を30℃に冷却した後、イオン交換基に変換可能な官能基を有するアクリル系単量体としてグリセリンメタクリレート(日油社製)100gを反応系に添加し、再び80℃に加温して1時間重合反応を行なった。得られた架橋重合体粒子をイオン交換水及びアセトンで洗浄することにより、イオン交換基に変換可能な水酸基が導入された架橋重合体粒子を得た。
得られた架橋重合体粒子50gを、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液100mLに分散させ、室温で40gのエピクロルヒドリンを添加し、5時間反応させた。得られたエポキシ化重合体粒子40gを20重量%の硫酸ナトリウム水溶液に分散させ、80℃で20時間反応させた。得られた反応物をイオン交換水で洗浄し、スルホン酸基が導入された架橋重合体粒子(液体クロマトグラフィー用カラム充填剤)を得た。
得られた液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を、内径3mm、長さ30mmのステンレス製カラムに充填し、蛋白質類分離カラムを調製した。
実施例1と同様の方法により、ヒト健常人血液を用いて測定したところ、図1と同様のクロマトグラムを得た。
(実施例4)
架橋性アクリル系単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)300g、非架橋性アクリル系単量体として2−ヒドロキシエチルメタクリレート(新中村化学工業社製)125g、及び、環状構造アクリル系単量体として2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業社製)75g(15重量%)の混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合物を、4重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液5Lに分散させ、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温し、1時間重合反応を行なった。温度を30℃に冷却した後、イオン交換基を有するアクリル系単量体としてメタクリル酸(和光純薬工業社製)150gを反応系に添加し、再び80℃に加温して1時間重合反応を行なった。得られた架橋重合体粒子をイオン交換水及びアセトンで洗浄することにより、カルボキシル基が導入された架橋重合体粒子(液体クロマトグラフィー用カラム充填剤)を得た。
得られた液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を、内径3mm、長さ30mmのステンレス製カラムに充填し、蛋白質類分離カラムを調製した。
得られたカラムを用いて、ヘモグロビン以外の蛋白質標準液試料を測定した。
溶離液Cとして50mmol/Lのリン酸緩衝液(pH7.0)、及び、溶離液Dとして溶離液Cと500mmol/LのNaCl水溶液の等量混合物の2種の溶離液を用い、流速1.0mLで送液して溶離液C100%から溶離液D100%へのリニアグラジエント法により分離し、280nmの吸光度を測定した結果、図2のクロマトグラムを得た。
図2中、ピーク11はミオグロビン、ピーク12はα−キモトリプシノーゲン、ピーク13はリボヌクレアーゼA、ピーク14はリゾチームを示す。いずれの蛋白質も短時間内で良好に分離できた。
(実施例5)
架橋性アクリル系単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)300g、非架橋性アクリル系単量体として2−ヒドロキシエチルメタクリレート(新中村化学工業社製)150g、及び、環状構造アクリル系単量体としてエトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート(新中村化学工業社製)50g(10重量%)の混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合物を、4重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液5Lに分散させ、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温し、1時間重合反応を行なった。温度を30℃に冷却した後、イオン交換基を有するアクリル系単量体として2,2−ジエチルアミノエチルメタクリレート(和光純薬工業社製)150gを反応系に添加し、再び80℃に加温して1時間重合反応を行なった。得られた架橋重合体粒子をイオン交換水及びアセトンで洗浄することにより、カルボキシル基が導入された架橋重合体粒子(液体クロマトグラフィー用カラム充填剤)を得た。
得られた液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を、内径3mm、長さ30mmのステンレス製カラムに充填し、蛋白質類分離カラムを調製した。
得られたカラムを用いて、ヘモグロビン以外の蛋白質標準液試料を測定した。
溶離液Eとして200mmol/LのTris塩酸緩衝液(pH8.6)、及び、溶離液Fとして溶離液Eと500mmol/LのNaCl水溶液の等量混合物の2種の溶離液を用い、流速1.0mLで送液して溶離液E100%から溶離液F100%へのリニアグラジエント法により分離し、280nmの吸光度を測定した結果、図3のクロマトグラムを得た。
図3中、ピーク21はオボアルブミン、ピーク22はトリプシンインヒビターを示す。いずれの蛋白質も短時間内で良好に分離できた。
(比較例1)
本比較例では、実施例1における環状構造アクリル系単量体を用いずに、架橋重合体粒子を調製した例を示す。
架橋性アクリル系単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)450g及びテトラメチロールメタントリアクリレート(新中村化学工業社製)50gの混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合物を、4重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液5Lに分散させ、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温し、1時間重合反応を行なった。温度を30℃に冷却した後、イオン交換基を有するアクリル系単量体として2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成社製)100gを反応系に添加し、再び80℃に加温して1時間重合反応を行なった。得られた架橋重合体粒子をイオン交換水及びアセトンで洗浄することにより、スルホン酸基が導入された架橋重合体粒子(液体クロマトグラフィー用カラム充填剤)を得た。
得られた液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を、内径3mm、長さ30mmのステンレス製カラムに充填し、蛋白質類分離カラムを調製した。
実施例1と同様の方法により、ヒト健常人血液を用いて測定したところ、図4のクロマトグラムを得た。図4中、ピーク1がヘモグロビンA1c、ピーク2がヘモグロビンA0である。実施例1のカラム充填剤により得られたクロマトグラム(図1)よりも測定時間を延長したにも関わらず、ヘモグロビンA1cの分離が不良であった。
(比較例2)
本比較例では、実施例3における環状構造アクリル系単量体を用いずに、架橋重合体粒子を調製した例を示す。
架橋性アクリル系単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)400g及びテトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)100gの混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合物を、4重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液5Lに分散させ、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温し、1時間重合反応を行なった。温度を30℃に冷却した後、イオン交換基に変換可能な官能基を有するアクリル系単量体としてグリセリンメタクリレート(日油社製)100gを反応系に添加し、再び80℃に加温して1時間重合反応を行なった。得られた架橋重合体粒子をイオン交換水及びアセトンで洗浄することにより、イオン交換基に変換可能な水酸基が導入された架橋重合体粒子を得た。
得られた架橋重合体粒子50gを、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液100mLに分散させ、室温で40gのエピクロルヒドリンを添加し、5時間反応させた。得られたエポキシ化重合体粒子40gを20重量%の硫酸ナトリウム水溶液に分散させ、80℃で20時間反応させた。得られた反応物をイオン交換水で洗浄し、スルホン酸基が導入された架橋重合体粒子(液体クロマトグラフィー用カラム充填剤)を得た。
得られた液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を、内径3mm、長さ30mmのステンレス製カラムに充填し、蛋白質類分離カラムを調製した。
実施例1と同様の方法により、ヒト健常人血液を用いて測定したところ、図4と同様のクロマトグラムを得られ、ヘモグロビンA1cの分離が不良であった。
(比較例3)
本比較例では、実施例2における環状構造アクリル系単量体の代わりに、アクリル系以外の環状構造単量体を用いて架橋重合体粒子を調製した例を示す。
架橋性アクリル系単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)400g及びテトラメチロールメタントリアクリレート(新中村化学工業社製)50g、並びに、アクリル系以外の環状構造単量体としてスチレン(キシダ化学社製)50g(10重量%)の混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合物を、4重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液5Lに分散させ、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温し、1時間重合反応を行なった。温度を30℃に冷却した後、イオン交換基を有するアクリル系単量体として2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成社製)100gを反応系に添加し、再び80℃に加温して1時間重合反応を行なった。得られた架橋重合体粒子をイオン交換水及びアセトンで洗浄することにより、スルホン酸基が導入された架橋重合体粒子(液体クロマトグラフィー用カラム充填剤)を得た。
得られた液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を、内径3mm、長さ30mmのステンレス製カラムに充填し、蛋白質類分離カラムを調製した。
実施例1と同様の方法により、ヒト健常人血液を用いて測定したところ、ピークが検出されなかった。これは試料中の成分がカラム充填剤に非特異吸着を起こし、溶出しなかったためであると考えられる。
(比較例4)
本比較例では、実施例1における環状構造アクリル系単量体を、架橋重合体粒子の表面において重合してカラム充填剤を調製した例を示す。
架橋性アクリル系単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)400g及びテトラメチロールメタントリアクリレート(新中村化学工業社製)50g、の混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(ナカライテスク社製)1.0gを溶解した。得られた単量体混合物を、4重量%のポリビニルアルコール(日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液5Lに分散させ、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温し、1時間重合反応を行なった。温度を30℃に冷却した後、イオン交換基を有するアクリル系単量体として2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成社製)100g、及び、環状構造アクリル系単量体としてフェノキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油社製)30gを反応系に添加し、再び80℃に加温して1時間重合反応を行なった。得られた架橋重合体粒子をイオン交換水及びアセトンで洗浄することにより、スルホン酸基が導入された架橋重合体粒子(液体クロマトグラフィー用カラム充填剤)を得た。
得られた液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を、内径3mm、長さ30mmのステンレス製カラムに充填し、蛋白質類分離カラムを調製した。
実施例1と同様の方法により、ヒト健常人血液を用いて測定したところ、ピークが検出されなかった。これは試料中の成分がカラム充填剤に非特異吸着を起こし、溶出しなかったためであると考えられる。
更に、実施例及び比較例で得られた蛋白質類分離カラムを用いて、以下の評価を行った。
(1)回収率試験
実施例及び比較例で調製した蛋白質類分離カラムを用いて、回収率試験を実施した。回収率は、カラムの代わりに内径0.25mm、長さ1000mmのPEEK製配管をHPLCに取り付け、実施例及び比較例で用いた試料を測定したときのピーク総面積に対する調製した蛋白質類分離カラムを取り付けて測定したときのピーク総面積の比率(%)により求めた。結果を表1に示す。
Figure 0005294942
実施例で調製した蛋白質類分離カラムにおいては、ほぼ100%の回収率が得られた。
一方、比較例3、4で調製した蛋白質類分離カラムでは回収率が50%以下と低かった。これは、測定対象であるヘモグロビンがカラム充填剤に非特異的に吸着して溶出してこなかったためであると考えられる。
(2)修飾ヘモグロビン類の分離性能評価
実施例に用いたヒト健常人血液の代わりに、修飾ヘモグロビン類を含む試料を人為的に調製して測定し、そのヘモグロビンA1cピークとの分離性能を評価した。
修飾ヘモグロビン類を含む試料としては、レイバイルヘモグロビンA1c含有試料(試料L)、アセチル化ヘモグロビン含有試料(試料A)、カルバミル化ヘモグロビン含有試料(試料C)の3種類を、公知の方法により調製した。
すなわち、試料Lは、ヒト健常人血液に、グルコースを2000mg/dLとなるように添加し、37℃で3時間加温することにより調製した。試料Aは、ヒト健常人血液に、アセトアルデヒドを50mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。試料Cは、ヒト健常人血液に、シアン酸ナトリウムを50mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。
得られた修飾ヘモグロビン類を含む試料(試料L、試料A、試料C)と、修飾ヘモグロビン類を含む試料の調製に用いたヒト健常人血液(非修飾品)とを、実施例及び比較例で調製した蛋白質類分離カラムを用いて測定し、ヘモグロビンA1cの測定値を比較した。分離性能は、修飾ヘモグロビン類を含む試料のヘモグロビンA1c値から非修飾品のヘモグロビンA1c値を差し引いた値(Δ値)を算出して比較することにより評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005294942
表2に示した実施例のΔ値は0.2%以下であり、修飾ヘモグロビン類が含まれる試料においても、正確にヘモグロビンA1cが測定できることがわかる。一方、比較例1、2の蛋白質類分離カラムを用いた場合では、修飾ヘモグロビンが存在すると、ヘモグロビンA1c値が大きく変動し、ヘモグロビンA1c値を正確に測定することができなかった。また、比較例3、4の蛋白質類分離カラムでは、ヘモグロビン類のピークが検出されなかったため、Δ値は算出できなかった。
(3)異常ヘモグロビン類の分離性能評価
実施例及び比較例で調製した蛋白質類分離カラムを用いて、異常ヘモグロビンとしてヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含む試料(ヘレナ研究所社製、「AFSCヘモコントロール」)の測定を行った。
実施例1の蛋白質類分離カラムを用いて測定した結果、得られたクロマトグラムを図5に示す。図5中、ピーク1はヘモグロビンA1c、ピーク2はヘモグロビンA0、ピーク3はヘモグロビンF(胎児性Hb)、ピーク4はヘモグロビンS、ピーク5はヘモグロビンCを示す。実施例1の蛋白質類分離カラムにおいては、異常ヘモグロビン類であるヘモグロビンS及びヘモグロビンCを良好に分離することができた。他の実施例のカラム充填剤を用いた場合でも、ほぼ同様の分離性能を示した。
一方、比較例の蛋白質類分離カラムを用いて測定した場合、異常ヘモグロビン類であるヘモグロビンS及びヘモグロビンCを分離することはできなかった。
(4)ヘモグロビンA2の分離性能評価
実施例及び比較例で調製した蛋白質類分離カラムを用いて、ヘモグロビンA2を含む試料として、A2コントロール(レベル2)(バイオラッド社製)を測定した。
実施例1のカラム充填剤を用いて測定して得られたクロマトグラムを図6に示す。図6中、ピーク1はヘモグロビンA1c、ピーク2はヘモグロビンA0、ピーク3はヘモグロビンF(胎児性Hb)、ピーク6はヘモグロビンA2を示す。実施例1の蛋白質類分離カラムにおいて、ヘモグロビンA2を良好に分離することができた。他の実施例のカラム充填剤を用いた場合でも、ほぼ同様の分離性能を示した。
一方、比較例のカラム充填剤を用いて測定した場合、ヘモグロビンA2を分離することはできなかった。
(5)カラム耐久性の評価
実施例1、2及び比較例1で調製した蛋白質類分離カラムを用いて、同一のヒト健常人血液試料を連続測定し、ヘモグロビンA1c値の推移を確認した。結果を図7に示す。
実施例1、2で調製した蛋白質類分離カラムでは、3000回測定においても測定値が変化しなかったが、比較例1で調製した蛋白質類分離カラムを用いた場合は、測定値が低下し、カラム寿命が短いことが確認された。
本発明によれば、蛋白質類を短時間で高精度に測定することができ、かつ、カラム寿命を向上させることのできる液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用いたヘモグロビンA1c及び異常ヘモグロビン類の測定方法、並びに、該液体クロマトグラフィー用カラム充填剤の製造方法を提供することができる。
1 ヘモグロビンA1c
2 ヘモグロビンA0
3 ヘモグロビンF(胎児性Hb)
4 ヘモグロビンS
5 ヘモグロビンC
6 ヘモグロビンA2
11 ミオグロビン
12 α−キモトリプシノーゲン
13 リボヌクレアーゼA
14 リゾチーム
21 オボアルブミン
22 トリプシンインヒビター

Claims (6)

  1. 環状構造を有するアクリル系単量体及び架橋性アクリル系単量体を含有し、かつ、アクリル系単量体のみからなる単量体混合物を重合して得られる架橋重合体粒子と、前記架橋重合体粒子の表面において重合されてなる、イオン交換基を有するアクリル系重合体層とからなる液体クロマトグラフィー用カラム充填剤であって、
    前記架橋重合体粒子が、環状構造を有するアクリル系単量体0.5〜20重量%、架橋性アクリル系単量体60〜99.5重量%、及び、20重量%以下のその他のアクリル系単量体からなる単量体混合物を重合して得られる架橋重合体粒子である
    ことを特徴とする液体クロマトグラフィー用カラム充填剤。
  2. 環状構造を有するアクリル系単量体の環状構造は、環状構造を形成する炭素数が4以上の不飽和環状構造又は飽和環状構造である
    ことを特徴とする請求項1記載の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤。
  3. 請求項1又は2記載の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用いることを特徴とする液体クロマトグラフィーによるヘモグロビンA1cの測定方法。
  4. 請求項1又は2記載の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を用いることを特徴とする液体クロマトグラフィーによるヘモグロビンA1c及び異常ヘモグロビン類の測定方法。
  5. 請求項1又は2記載の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を製造する方法であって、
    環状構造を有するアクリル系単量体及び架橋性アクリル系単量体を含有し、かつ、アクリル系単量体のみからなる単量体混合物を重合して架橋重合体粒子を形成する工程、及び、
    前記架橋重合体粒子と、イオン交換基を有するアクリル系単量体とを重合開始剤の存在下で重合し、前記架橋重合体粒子の表面にイオン交換基を有する重合体層を形成する工程を有する
    ことを特徴とする液体クロマトグラフィー用カラム充填剤の製造方法。
  6. 請求項1又は2記載の液体クロマトグラフィー用カラム充填剤を製造する方法であって、
    環状構造を有するアクリル系単量体及び架橋性アクリル系単量体を含有し、かつ、アクリル系単量体のみからなる単量体混合物を重合して架橋重合体粒子を形成する工程、及び、
    前記架橋重合体粒子と、イオン交換基に変換可能な官能基を有するアクリル系単量体とを重合開始剤の存在下で重合し、前記架橋重合体粒子の表面にイオン交換基に変換可能な官能基を有する重合体層を形成させ、前記イオン交換基に変換可能な官能基をイオン交換基に変換する工程を有する
    ことを特徴とする液体クロマトグラフィー用カラム充填剤の製造方法。
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