JP5294022B2 - トロロアオイの保存方法とその粘性の改善方法 - Google Patents
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Description
これらのことから、防腐剤等を使用することなくトロロアオイを長期保存でき、抽出されるネリの粘性や抽出量の低下を抑えつつ品質を維持することができる技術の開発が望まれていた。
次に、洗浄工程において、収穫したトロロアオイを洗浄する。この洗浄は、一般的な水洗いでよく、トロロアオイに付着した泥や虫などを洗い流すようにすればよい。
これらのことから、上記の緩慢凍結工程においては、トロロアオイを降温したときに、このトロロアオイの細胞が破壊するまで緩慢凍結を施すようにする。
なお、緩慢凍結時の冷却温度は、−30℃に限ることなく、−30℃から−18℃まで程度の範囲内の適宜の温度であってもよい。このため、緩慢凍結工程は、一般の冷却能力を有する冷凍庫を用いて実施することも可能である。
解凍工程においては、緩慢凍結工程により凍結したトロロアオイを、冷蔵庫による解凍、自然解凍、水による解凍などの適宜の解凍手段により解凍させる。その際、この解凍工程を緩慢凍結工程と同様に、トロロアオイの最大氷結晶生成帯を通過する時間が、氷の結晶によりトロロアオイが細胞破壊する時間以上となるように解凍速度を遅くすることが好ましい。解凍工程後には、袋を開封してトロロアオイを取り出し、必要に応じて水に浸すようにする。水に浸す時間は、例えば、2〜3日程度が好ましく、これは、収穫直後のトロロアオイからネリを抽出する場合と同様である。
また、上述した真空密閉工程や緩慢凍結工程及び抽出工程、並びに、収穫工程、洗浄工程は、トロロアオイの保存方法とその粘性の改善方法における各工程の好ましい一例を示したものであり、各工程は実施に応じて適宜の態様とすることができる。
なお、図3(b)においては、急速凍結による比較例を示している。この場合には、急速に凍結していることで氷の結晶が成長し難くなり、解凍時のドリップが少なくなる。
試料Aに用いたトロロアオイは、収穫後に冷暗所にて乾燥させたもの(一般的な抄紙で使用されるトロロアオイ)240gとした。
試料Bに用いたトロロアオイは、上述したトロロアオイの保存方法と粘性の改善方法とに準じるものとし、トロロアオイを、収穫後に真空密閉工程において真空パックし、次いで、緩慢凍結工程において約3ヶ月の凍結期間で凍結し、更に、解凍工程において冷蔵庫で約1ヶ月保存するようにしたもの240gとした。
これらを、3000rpmの回転数で10分間、遠心分離したのちに、その上澄液を採取し、これを蒸留液で希釈したものを分光高度計により測定した。その際、265nmにおける吸光度を測定した。この測定結果を表1に示し、表1をグラフ化したものを図4に示す。
試料Cに用いたトロロアオイは、上述したトロロアオイの保存方法とその粘性の改善方法とに準じるものとし、真空密閉工程において真空パックし、これを一旦冷凍した後に解凍させたもの520gとした。
試料Dに用いたトロロアオイは、収穫後に冷暗所にて約1年6ヶ月程度乾燥させたもの(一般的な抄紙で使用されるトロロアオイ)52gとした。
試料Cの粘性は、継続的に高い数値、具体的には第19回目まで高い数値を示している。これにより、上述したトロロアオイの粘性の改善方法により得られるネリの粘性は、抽出工程を19回繰り返したときにも同程度であることが確認された。一方、試料Dの粘性が維持されるのは、第4回目までであり、このことから、試料Cと比較して、同量のトロロアオイから得られるネリの抽出量が少なくなるということがいえる。
以上の実施例の結果より、上述したトロロアオイの保存方法とその粘性の改善方法とによって得られるネリは、トロロアオイを乾燥させて保存させた場合と比較して、長期間保存する場合においても粘性が低下することが抑えられ、その抽出量を多く確保できることが確認された。
Claims (4)
- 収穫したトロロアオイを収納する真空密閉工程と、この真空密閉状態でトロロアオイを降温させたときの最大氷結晶生成帯を通過する時間が、氷の結晶によりトロロアオイが細胞破壊する時間以上となるように凍結速度を遅くした緩慢凍結工程を経てトロロアオイを長期保存できるようにしたことを特徴とするトロロアオイの保存方法。
- 収穫したトロロアオイを真空袋に収納して真空密閉し、その後、この袋を−30℃まで前記緩慢凍結工程を経て緩慢凍結した請求項1に記載のトロロアオイの保存方法。
- 収穫したトロロアオイを収納する真空密閉工程と、この真空密閉状態でトロロアオイを降温させたときの最大氷結晶生成帯を通過する時間が、氷の結晶によりトロロアオイが細胞破壊する時間以上となるように凍結速度を遅くした緩慢凍結工程と、解凍工程とを経た後に、トロロアオイから粘性物質を抽出する抽出工程を経ることにより、トロロアオイを乾燥させ又は防腐剤を用いて保存する方法に比べて粘性を向上させたことを特徴とするトロロアオイの粘性の改善方法。
- 粘性物質の吸光度を0.349Abs以下とした請求項3に記載のトロロアオイの粘性の改善方法。
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