JP5293871B2 - フルオロポリマー、成形体及び積層体 - Google Patents

フルオロポリマー、成形体及び積層体 Download PDF

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Description

本発明は、新規なフルオロポリマー、新規なフルオロポリマーからなる成形体及び新規なフルオロポリマーからなる層を有する積層体に関する。
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体〔ETFE〕は、耐熱性と耐薬品性とをバランスよく備えているので、様々な分野で広く用いられている。また、燃料バリア性にも優れる材料である。
例えば、特許文献1には、燃料透過係数が低く、燃料バリア性に優れる共重合体として、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位(A)、エチレンに基づく重合単位(B)及びCH=CX(CFY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子である。)で表される化合物に基づく重合単位(C)を含有する含フッ素共重合体であって、(A)/(B)がモル比で20/80〜80/20であり、(C)/((A)+(B))がモル比で1/1000〜15/100であり、かつ容量流速が1〜1000mm/秒である含フッ素共重合体が提案されている。
特許文献2には、耐候性に優れ、引張弾性率が低い共重合体として、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位/エチレンに基づく重合単位のモル比が50/50〜70/30であり、かつ脂肪族カルボン酸ビニル(ただし、脂肪族カルボキシ基の炭素数は6〜18、分岐構造の脂肪族カルボキシ基の場合はその炭素数は9〜18である。)に基づく重合単位を10モル%を超え30モル%以下含有し、容量流速が0.01〜1000mm/秒であることを特徴とするテトラフルオロエチレン−エチレン系共重合体が提案されている。
耐熱性、耐薬品性及び燃料バリア性に優れるETFEであるが、一般的に機械的強度や寸法安定性が不充分であったり、高価であったりする欠点も有するので、他の材料と積層して使用されることも多い。しかし、積層して使用する場合には、ETFEが他の材料と充分に接着する必要がある。
そこで、特許文献3では、非フッ素系重合体との接着性に優れる共重合体として、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位(A)、エチレンに基づく重合単位(B)及び無水イタコン酸又は無水シトラコン酸に基づく重合単位(C)を含有する含フッ素共重合体であって、(A)/(B)がモル比で20/80〜80/20であり、(C)/((A)+(B))がモル比で1/10000〜5/100であり、かつ容量流速が1〜1000mm/秒であることを特徴とする含フッ素共重合体が提案されている。
特開2003−231718号公報 特開2003−268045号公報 特開2004−238405号公報
本発明は、従来のETFEとは異なる組成を有する新規なフルオロポリマーであって、燃料バリア性及び他の材料との接着性に優れ、燃料と接触した後であっても他の材料と良好な接着性を維持することができるフルオロポリマーを提供することを目的とする。
本発明は、エチレンに基づく重合単位、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、及び、下記式(1):
CH=CH−(CH−COOH (1)
(式中、nは1〜15の整数である。)で表される不飽和カルボン酸に基づく重合単位を含み、前記不飽和カルボン酸に基づく重合単位を全単量体単位の0.05〜10.0モル%含むことを特徴とするフルオロポリマーである。
更に、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)及びパーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも一種の単量体(X)に基づく重合単位を含むことが好ましい。
式(1)におけるnが2〜10の整数であることが好ましい。
エチレンに基づく重合単位とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位とのモル比が(20〜60)/(80〜40)であることが好ましい。
単量体(X)に基づく重合単位の含有量が、全単量体単位の0.05〜15.0モル%であることが好ましい。
単量体(X)がヘキサフルオロプロピレンであることが好ましい。
融点が150〜230℃であることが好ましい。
本発明は、上述のフルオロポリマーを成形することにより得られることを特徴とする成形体でもある。
本発明は、金属からなる基材と、前記基材上に形成された上述のフルオロポリマーからなる層とを有することを特徴とする積層体でもある。
本発明は、エチレン/酢酸ビニル共重合体からなる層と、前記層上に形成された上述のフルオロポリマーからなる層とを有することを特徴とする積層体でもある。
本発明のフルオロポリマーは、燃料バリア性及び他の材料との接着性に優れ、燃料と接触した後であっても他の材料と良好な接着性を維持することができる。また、本発明のフルオロポリマーからは、燃料と接触した後でも引張強度及び引張伸びに優れる積層体を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のフルオロポリマーは、エチレンに基づく重合単位、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、及び、下記式(1):
CH=CH−(CH−COOH (1)
(式中、nは1〜15の整数である。)で表される不飽和カルボン酸に基づく重合単位を含むことを特徴とする。
本発明のフルオロポリマーは、溶融加工が可能であり、DSC(示差走査熱量測定)で融点を示すフッ素樹脂である。
式(1)で表される不飽和カルボン酸としては、優れた接着性が実現できることから、式(1)におけるnが2〜10の整数であるものが好ましく、ペンテン酸、ウンデセン酸、ブテン酸、ヘキセン酸、デセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸からなる群より選択される少なくとも1種の不飽和カルボン酸であることがより好ましく、ペンテン酸及びウンデセン酸からなる群より選択される少なくとも1種の不飽和カルボン酸であることが更に好ましく、ウンデセン酸であることが特に好ましい。
本発明のフルオロポリマーは、式(1)で表される不飽和カルボン酸に基づく重合単位を全単量体単位の0.05〜10.0モル%含む。好ましくは0.05〜5.0モル%であり、より好ましくは0.2〜2.0モル%である。式(1)で表される不飽和カルボン酸の重合単位の含有量が上記範囲内にあると、燃料バリア性を損なうことなく、より高い接着性を得ることができる。
各重合単位の含有量は、NMRやIRを用いた方法で求めることができる。
本発明のフルオロポリマーは、耐クラック性に優れることから、上述した重合単位に加えて、更に、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)及びパーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも一種の単量体(X)に基づく重合単位を含むことが好ましく、ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位を含むことがより好ましい。
上記耐クラック性は、例えば、ASTM D2176準拠の標準折曲耐久試験機を用いたMIT折り曲げ試験等、種々の測定を行うことにより評価することができる。
本発明のフルオロポリマーは、耐クラック性に優れることから、下記一般式(2)
CH=CX−(CF−X (2)
(式中、XはH又はFであり、XはH又はFであり、nは3〜10の整数である。)で表される単量体(Y)に基づく重合単位を含むことがより好ましい。
単量体(Y)としては、CH=CH−C、CH=CH−C13、及び、CH=CF−CHからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明のフルオロポリマーは、エチレンに基づく重合単位とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位とのモル比が(20〜60)/(80〜40)であることが好ましく、(20〜50)/(80〜50)であることがより好ましく、(30〜50)/(70〜50)であることが更に好ましい。エチレン及びテトラフルオロエチレンの各重合単位のモル比が上記範囲にあると、燃料バリア性及び他の材料との接着性をより向上させることができる。
本発明のフルオロポリマーが単量体(X)に基づく重合単位をも含む場合、単量体(X)に基づく重合単位の含有量は全単量体単位の0.05〜15.0モル%であることが好ましく、0.05〜10.0モル%であることがより好ましく、0.2〜5.0モル%であることが特に好ましい。単量体(X)に基づく重合単位の含有量が上記範囲内にあると、耐クラック性に更に優れる成形体を得ることができる。
本発明のフルオロポリマーが単量体(Y)に基づく重合単位をも含む場合、単量体(Y)に基づく重合単位の含有量は全単量体単位の0.05〜15.0モル%であることが好ましく、0.05〜10.0モル%であることがより好ましく、0.2〜5.0モル%であることが特に好ましい。単量体(X)に基づく重合単位の含有量が上記範囲内にあると、耐クラック性に更に優れる成形体を得ることができる。
本発明のフルオロポリマーは、耐クラック性に優れることから、単量体(X)及び単量体(Y)に基づく重合単位を含むことが好ましい。この場合、単量体(X)に基づく重合単位の含有量は全単量体単位の0.05〜15.0モル%であることが好ましく、0.05〜10.0モル%であることがより好ましく、0.2〜5.0モル%であることが特に好ましい。また、単量体(Y)に基づく重合単位の含有量は全単量体単位の0.05〜15.0モル%であることが好ましく、0.05〜10.0モル%であることがより好ましく、0.2〜5.0モル%であることが特に好ましい。単量体(X)及び単量体(Y)に基づく重合単位の含有量が上記範囲内にあると、耐クラック性に更に優れる成形体を得ることができる。
本発明のフルオロポリマーは、融点が150〜230℃であることが好ましく、150〜220℃であることがより好ましく、150〜210℃であることが更に好ましい。融点が上記範囲内にあると、他の材料との接着性が向上し、比較的低い温度での成形が可能となる。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
本発明のフルオロポリマーは、メルトフローレート(MFR)が0.1〜70g/10minであることが好ましく、0.1〜50g/10minであることがより好ましい。MFRが上記範囲内にあると、優れた成形性を得ることができ、耐クラック性に優れる成形体を得ることができる。上記MFRは、メルトインデクサー(東洋精機製作所社製)を用い、各温度、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定して得られる値である。
本発明のフルオロポリマーは、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法によっても製造することができるが、工業的に実施が容易である点で、乳化重合又は懸濁重合により製造することが好ましい。
上記の重合においては、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
上記油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとして挙げられる。
上記水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
上記界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。なかでも、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合性酸素を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)、炭素数4〜20の直鎖又は分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。添加量(対溶媒)は、好ましくは50〜5000ppmである。
上記連鎖移動剤としては、例えば、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素などがあげられる。添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01質量%から20質量%の範囲で使用される。
上記溶媒としては、水、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
上記懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性及び経済性の面から、水性媒体に対して10〜100質量%が好ましい。
重合温度としては特に限定されず、0〜100℃であってよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0〜9.8MPaGであってよい。
本発明は、上述のフルオロポリマーを成形することにより得られることを特徴とする成形体でもある。
本発明の成形体は、例えば、チューブ、ホース類:自動車燃料配管用チューブ又はホース、自動車のラジエーターホース、ブレーキホース、エアコンホース等フィルム、シート類:ダイヤフラムポンプのダイヤフラムや各種パッキン等の高度の耐薬品性が要求される摺動部材等タンク類:自動車のラジエータータンク、薬液ボトル、薬液タンク、バッグ、薬品容器、ガソリンタンク等その他:キャブレターのフランジガスケット、燃料ポンプのOリング等の各種自動車用シール、化学薬品用ポンプや流量計のシール等の化学関係シール、油圧機器のシール等の各種機械関係シール等であってよい。
フルオロポリマーの成形は、従来公知の方法により実施することができる。成形方法の例としては、射出成形、真空あるいは加圧によるプレス成形、ブロー成形、インフレーション成形、押出成形等が挙げられる。
本発明のフルオロポリマーを成形することにより、本発明のフルオロポリマーからなる層を有することを特徴とする積層体を製造することができる。
上記積層体は、更に、フルオロポリマーからなる層の上に形成された金属又は有機材料からなる層を有することが好ましい。
金属からなる基材と、上記基材上に形成された上述のフルオロポリマーからなる層とを有することを特徴とする積層体も本発明の1つである。上記金属は、金、白金、銀、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、アルミニウム及びステンレスからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
有機材料としては、フルオロポリマー(但し、本発明のフルオロポリマーを除く。)であってもよいし、フッ素非含有有機材料であってもよい。
上記フッ素非含有有機材料とは、フッ素原子を含まない有機材料である。上記フッ素非含有有機材料は、本発明のフルオロポリマーと共押出可能な樹脂であることが好ましい。
上記フッ素非含有有機材料としては、結晶化度が高いポリマーからなる樹脂であることが好ましく、結晶化度が高く、かつ、極性官能基を有し分子間力が大きいポリマーからなる樹脂であることがより好ましい。
上記極性官能基は、極性を有し、フッ素非含有有機材料からなる層と隣接する層との接着に関与し得る官能基である。上記極性官能基は、アミノ基、イミノ基、カルボジイミド基、アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、エステル基、酸無水物基、カーボネート基、エポキシ基、ニトリル基、及び、イソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
上記フッ素非含有有機材料としては、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂〔ABS〕、セルロース系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂〔PEEK〕、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂〔PES〕、ポリエーテルイミド樹脂等の機械的強度に優れ、耐圧性や成形体の形状の維持を主たる役割とできる樹脂(以下、構造部材系樹脂とする。)、エチレン/ビニルアルコール共重合体からなる樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体からなる樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の燃料や気体に対する耐透過性能の高い樹脂(以下、耐透過性樹脂とする。)が挙げられる。上記フッ素非含有有機材料としては、フッ素非含有有機材料(但し、ポリオレフィン系樹脂を除く)であることが好ましく、ポリアミド系樹脂又はエチレン/酢酸ビニル共重合体からなる樹脂であることがより好ましい。
上記ポリアミド系樹脂は、分子内に繰り返し単位としてアミド結合〔−NH−C(=O)−〕を有するポリマーからなるものである。上記ポリアミド系樹脂としては、分子内のアミド結合が脂肪族構造又は脂環族構造と結合しているポリマーからなるいわゆるナイロン樹脂、又は、分子内のアミド結合が芳香族構造と結合しているポリマーからなるいわゆるアラミド樹脂のいずれであってもよい。
上記ナイロン樹脂としては特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン46、メタキシリレンジアミン/アジピン酸共重合体等のポリマーからなるものが挙げられ、これらのなかから2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アラミド樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリメタフェニレンイソフタラミド等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂は、また、繰り返し単位としてアミド結合を有しない構造が分子の一部にブロック共重合又はグラフト共重合されている高分子からなるものであってもよい。このようなポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6/ポリエステル共重合体、ナイロン6/ポリエーテル共重合体、ナイロン12/ポリエステル共重合体、ナイロン12/ポリエーテル共重合体等のポリアミド系エラストマーからなるもの等が挙げられる。これらのポリアミド系エラストマーは、ナイロンオリゴマーとポリエステルオリゴマーがエステル結合を介してブロック共重合することにより得られたもの、又は、ナイロンオリゴマーとポリエーテルオリゴマーとがエーテル結合を介してブロック共重合することにより得られたものである。上記ポリエステルオリゴマーとしては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート等が挙げられ、上記ポリエーテルオリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。上記ポリアミド系エラストマーとしては、ナイロン6/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体が好ましい。
上記ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド系樹脂からなる層が薄層でも充分な機械的強度が得られることから、なかでも、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン6/ポリエステル共重合体、ナイロン6/ポリエーテル共重合体、ナイロン12/ポリエステル共重合体、ナイロン12/ポリエーテル共重合体等が好ましく、これらのなかから2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エチレン/酢酸ビニル共重合体からなる層と、上記層上に形成された上述のフルオロポリマーからなる層とを有することを特徴とする積層体も本発明の1つである。エチレン/酢酸ビニル共重合体としては、エチレン/酢酸ビニルの質量比が95〜60/5〜40であるものが好ましい。また、エチレン/酢酸ビニル共重合体としては、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜150g/10分であるものが好ましい。
本発明のフルオロポリマーは、特にイミノ基又はカルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンと強固に接着する。従って、上記積層体は、フルオロポリマーからなる層と、フルオロポリマーからなる層の上に形成されたイミノ基又はカルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンからなる層を有することも好ましい。
イミノ基を有する変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンにイミノ基を多数含有しているポリイミン化合物をラジカル発生剤の存在下でグラフト処理することによって得られるイミン変性ポリオレフィンであることが好ましい。
上記イミン変性オレフィンは、ポリオレフィンにイミノ基を多数含有しているポリイミン化合物をラジカル発生剤の存在下でグラフト処理することによってえられる。ポリオレフィンとしてはポリエチレンが好ましい。
上記ポリイミン化合物としては、例えば、下記式:
Figure 0005293871
[式中のR、R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、非反応性の原子又は有機基を表し、RとRは互いに結合して環を形成していても良く、nは、20〜2000の整数を表す。] で表される化合物が好ましい。
式中のR、R、Rとしては、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基又はアルコキシ基であることが好ましい。この場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンチル基、イソピロピル基、イソブチル基等を含む炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜5アルキル基が更に好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
上記アルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、炭素数2〜8のアルケニル基がより好ましく、炭素数2〜5のアルケニル基が更に好ましく、炭素数2〜4のアルケニル基が特に好ましい。
上記アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ヘプチニル基などの、炭素数2〜18のアルキニル基が好ましく、炭素数2〜10のアルキニル基がより好ましく、炭素数2〜6のアルキニル基が更に好ましく、炭素数2〜4のアルキニル基が特に好ましい。
上記シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3〜6のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数5〜6のシクロアルキル基が更に好ましい。
上記アリール基としては、フェニル、トリル、ナフチル等の炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
上記複素環基としては、例えば、フラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、テトラヒドロフラン環などの5員環、ピラン環などの6員環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、キサントン環、キサンテン環、クロマン環、イソクロマン環、クロメン環などの縮合環に代表されるヘテロ原子として酸素原子を含む複素環、あるいは、例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチオフェン環などに代表されるヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環、さらに、例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピロリジン環などの5員環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、モルホリン環などの6員環、インドール環、インドレン環、イソインドール環、インダゾール環、インドリン環、イソインドリン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリンキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、プリン環、カルバゾール環、アクリジン環、ナフトキノリン環、フェナントロジン環、フェナントロリン環、ナフチリジン環、ベンゾキノリン環、フェノキサジン環、フタロシアニン環、アントラシアニン環などの縮合環に代表されるヘテロ原子として窒素原子を含む複素環などが挙げられる。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
ポリイミン化合物の好適な具体例としては、例えば、ポリエチレンイミンが挙げられる。
ポリイミン化合物は、分子量が1,000以上であることが好ましいが、活性化処理後のオレフィンとの反応性等の観点から、より高分子量であることが好ましい。具体的には、分子量が1,000〜200,000であることが好ましく、分子量が3,000〜200,000であることがより好ましく、分子量が15,000〜200,000であることが特に好ましい。
グラフト処理する際に用いるラジカル発生剤としては、有機過酸化物、有機パーエステルが挙げられる。たとえば、ベンゾイルパーオキシド、ジクロルベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシドベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびtert−ブチルペルジエチルアセテート、その他アゾ化合物、たとえばアゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートが用いられる。これらのうちではジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキシドが好ましい。
中でも、ラジカル発生剤としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、半減期の分解温度が100℃以上のものが好適である。また、有機過酸化物として具体的には、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ラウロイルパーオキサイド、及び、t−ブチルパーオキシベンゾエートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
ラジカル発生剤の使用割合は、ポリオレフィン100重量部に対して通常0.001〜1重量部である。
上記イミン変性オレフィンは、ポリオレフィンと、ポリイミン化合物と、ラジカル発生剤とを均一混合し処理することにより製造することができる。具体的には、押出機やバンバリーミキサー、ニーダーなどを用いる溶融混練法、適当な溶媒に溶解させる溶液法、適当な溶媒中に懸濁させるスラリー法、又は、いわゆる気相グラフト法等が挙げられる。
上記処理の温度としては、ポリオレフィンの劣化、ポリイミン化合物の分解、使用するラジカル発生剤の分解温度などを考慮して適宜選択される。例えば、上記溶融混練法の場合、通常、60〜350℃の温度で行われる。上記処理の温度として好ましくは、190〜350℃であり、より好ましくは、200〜300℃である。
カルボジイミド基を有する変性ポリオレフィンは、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィンと、カルボジイミド基含有化合物とを、未変性ポリオレフィンの存在下で反応させて得られるカルボジイミド変性ポリオレフィンであることが好ましい。反応させる方法としては、230℃以上の温度で溶融混練する方法が挙げられる。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィンは、ポリオレフィンに、カルボジイミド基と反応する基を有する化合物を導入することにより得ることができる。
ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、テトラシクロドデセン、ノルボルネンの単独重合体または共重合体が挙げられる。
カルボジイミド基と反応する基を有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、またはこれらの酸無水物あるいはこれらの誘導体(例えば酸ハライド、アミド、イミド、エステルなど)が挙げられる。これらの中では、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸アミノプロピルが好ましい。
カルボジイミド基と反応する基を有する化合物をポリオレフィンに導入する方法としては、周知の方法を採用することが可能であるが、例えば、ポリオレフィン主鎖にカルボジイミド基と反応する基を有する化合物をグラフト共重合する方法や、オレフィンとカルボジイミド基と反応する基を有する化合物をラジカル共重合する方法等を例示することができる。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン1、ポリ−4−メチルペンテン−1およびこれらのα−オレフィン共重合体などの結晶性ポリオレフィンの無水マレイン酸グラフト共重合体が好ましく、ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト共重合体がより好ましい。特に、密度0.915g/cm以上のポリエチレンの無水マレイン酸グラフト共重合体が好ましい。
カルボジイミド基含有化合物は、
−N=C=N−R
(式中、Rは炭素数2から40の2価の有機基を表す)で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミドである。
ポリカルボジイミドは、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなど有機ジイソシアネートを縮合触媒の存在下、無溶媒又は不活性溶媒中で、脱炭酸縮合反応を行なうことにより製造することができる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート等を使用することができる。
未変性ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体などの環状ポリオレフィンなどが挙げられる。
上記フッ素非含有有機材料は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、熱安定剤等の安定剤、補強剤、充填剤、紫外線吸収剤、顔料等の各種添加剤を添加してなるものであってもよい。上記フッ素非含有有機材料は、このような添加剤により、熱安定性、表面硬度、耐摩耗性、帯電性、耐候性等の特性が向上したものとすることができる。
本発明の積層体の成形方法としては、特に制限されず、積層体の用途と形状に応じて最適な方法を選ぶことができる。成形方法の例としては、射出成形、真空あるいは加圧によるプレス成形、ブロー成形、インフレーション成形、押出成形等が挙げられる。
上記射出成形は、熱可塑性樹脂の成形に広く用いられており、複雑な形状の成形体の作製に適している。積層体を成形するためには、例えば、溶融させた樹脂を成形体部品の金型に射出し、固化させることにより成形した樹脂層上に、溶融させた他の樹脂を射出し、固化させることを繰り返すことにより成形する方法により行うことができる。
ただし、上記射出成形法を用いた場合には、成形後金型を取り除かなければならないため、一度に積層体を作成することはできず、幾つかの部品に分けて成形し、その後、熱融着、接着等の手段によって一体に接合することにより、所望の積層体を得ることができる。
上記各層の成形工程の順序は、所望の積層構造に応じて適宜選択することができ、上述のように外面となる層から先に成形してもよいし、内面となる層の成形を先に行ってもよい。
上記射出成形の各条件は、使用する樹脂の種類や量に応じて適宜選択することができる。
上記プレス成形においては、後述の成型方法により得られたシート又はプレート(該シート又はプレートを、以下、積層体シートと総称する。)を原材料として、これを加熱下で真空、あるいは加圧、あるいはオス型により型に押しつけることによって成形を行うものである。
上記プレス成形における各条件は、使用する積層体シートの組成や厚みに応じて適宜選択することができるが、積層体シートを加熱する第1の工程において、各層の溶融温度に応じて、上ヒータと下ヒータの温度を異なる温度に設定することが好ましい。
上記原材料となる積層体シートを作製する方法としては、例えば、(1)樹脂を溶融状態で共押出成形することにより層間を熱溶融着(溶融接着)させ1段で多層構造の積層体を形成する方法(共押出成形)、(2)押出機によりそれぞれ別個に作製したフィルムを重ね合わせ熱融着により層間を接着させる方法、(3)予め作製したフィルムの表面上に押出機により溶融樹脂を押し出すことにより積層体を形成する方法、(4)予め作製したフィルムの表面上に、該フィルムに隣接することとなる層を構成する重合体を静電塗装したのち、得られる塗装物を全体的に又は塗装した側から加熱することにより、塗装に供した重合体を加熱溶融して層を成形する方法、等が挙げられる。
各層を構成する樹脂が共押出可能なものであれば、上記(1)の共押出成形によって形成することが一般的である。上記共押出成形としては、マルチマニホールド法、フィードブロック法、多層ブロー法、多層インフレーション成形法等の従来公知の多層共押製造法が挙げられる。これらの方法によって成形することにより、シート状、またはフィルム状の積層体とすることができる。
上記積層体シートを、公知の何らかの手段により接合して継ぎ合わせ、袋状にすることでタンク等の中空成形体とすることもできる。
接合の手段として、ヒートシール法等の熱溶融接着方法を用いた場合、具体的には、上記積層体シート2枚を、好ましくはフルオロポリマー同士が接するように重ねあわせ、ヒートシールを行う。ヒートシール温度は、シート間のシール強度の観点から、接着するフルオロポリマーの融点以上、接着するフルオロポリマー及び積層されたフッ素非含有有機材料の熱分解温度以下にすることが必要である。ヒートシール法は、接着剤の劣化による影響がない点で好ましい。
上記熱溶融接着方法としては、熱盤を使用する方法、熱風を利用する方法、摩擦熱を利用する方法(機械的、超音波)や高周波を利用する方法などが挙げられる。積層シートは真空成形、圧空成形、オス型成形、射出成形などの方法で成形された後、一度冷却され、これらの熱溶融接着方法により、袋状にすることもできる。真空成形、圧空成形、オス型成形では、成形時に積層シートはすでに加熱されているので、その直後に熱溶融接着を行うことは、生産効率的に好ましい。また、上述した熱溶融接着を組み合わせて行ってもよい。
さらに、溶着部に電熱線を用いたエレクトロフージョン(電気融着接合)も熱溶融接着方法として用いることもできる。
本発明の積層体は、接合して継ぎ合わせ、袋状にする場合、燃料透過性および耐薬品性の観点から、フルオロポリマー同士が溶融接着されていることが好ましいが、さらに、その他の層同士が溶融接着されている方が、機械的強度の観点から好ましい。
また、別の接合の手段としては、接着剤を利用する方法もある。この場合、例えば、継目に接着剤を塗布し、互いに押し付け、そしてこの接着剤を少なくとも部分的に硬化させる。次いで、135〜150℃の環境に放置した後、この継目を加圧のもとで冷却する。この継目の完全な硬化には室温で5〜8日間必要とする。
本発明の積層体が袋状である場合、その肉厚は用途によって適宜設定すればよいが、50μm以上であってよく、好ましくは100μm以上であってよい。また、袋状である場合の肉厚は、上記範囲内であれば、500μm以下であってよく、好ましくは300μm以下であってよい。肉厚が薄すぎると、燃料低透過性や機械強度が不充分となるおそれがあり、肉厚が厚すぎると、柔軟性が不充分となるおそれがある。
本発明の積層体は、多層ブロー成形により得ることもできる。上記多層ブロー成形は、必要な層数に応じた台数の押出機を用いて、溶融させた樹脂を多層ブロー成形用ダイに経路させてパリソンとして押し出し、該パリソンを割型ではさみ、上下を挟まれて袋状になったパリソン内に空気等を吹き込み、ふくらませて、所望の形状を有する金型の内壁へ密着させ、冷却固化後、成形体として取り出すことにより行うことができる。また、射出ブロー成形や延伸ブロー成形を用いてもよい。上記多層ブロー成形は、一連の工程が連続しており、成形が容易である点で好ましい。
本発明の積層体は、フルオロポリマーからなる層をコーティングにより成形したものであってもよい。コーティングによるフルオロポリマー層の成形は、例えば、上述の射出成形又は真空成形を行い、目的とする形状を有するフルオロポリマーからなる層以外の層からなる成形体部品を得た後、該成形体部品にフルオロポリマーを含む塗料を従来公知の方法により塗布し、乾燥して行うことができる。
本発明の積層体の用途としては、例えば、自動車のガソリンタンク、軽油タンク等の燃料用タンク、ラジエータータンク、溶剤用タンク、塗料用タンク、半導体用薬液等の酸・アルカリ等の腐食性、侵食性の強い薬液の容器や研磨材のスラリー用の容器、飲料用又は飲食物用タンク等、液体を収容するボトル、容器、タンク、袋、燃料補給ステーションに用いられる地下埋設チューブ又はホース等として好適に用いることができる。また、本発明の積層体はディーゼルエンジン排ガスに尿素水を噴霧してNOを低減するシステムにおける尿素水用容器としても、その優れた耐薬品性から好適に使用できる。
上記積層体からなる薬液用容器、尿素水用容器、燃料用タンク、飲料用タンク、食品用タンク、地下埋設チューブ又は地下埋設ホースも非常に優れた特性を示す。地下埋設チューブ又はホースは、例えば、燃料補給ステーションに用いられるものであることが好ましい。上記積層体からなるフィラーネックホース、燃料ホース、又は、燃料チューブも好適な利用態様である。フィラーネックホース、燃料ホース、又は、燃料チューブは、通常、自動車等の内燃機関に用いられるものである。
本発明の成形体並びに本発明の積層体を構成する各層は、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、金属酸化物等の種々の充填剤を含むものであってもよく、また、充填剤以外に、熱安定化剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料等、その他任意の添加剤を含むものであってもよい。
上記添加剤として、例えば、薬液透過低減の点で、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
上記添加剤として、例えば、導電性を付与するために、導電性フィラーを添加してもよい。導電性フィラーとしては特に限定されず、例えば、金属、炭素等の導電性単体粉末又は導電性単体繊維;酸化亜鉛等の導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末等が挙げられる。
上記導電性単体粉末又は導電性単体繊維としては特に限定されず、例えば、銅、ニッケル等の金属粉末;鉄、ステンレス等の金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリル等が挙げられる。
上記表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタン等の非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
上記導電化処理の方法としては特に限定されず、例えば、金属スパッタリング、無電解メッキ等が挙げられる。上述した導電性フィラーのなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。上記導電性フィラーを配合する場合、溶融混練して予めペレットを作製することが好ましい。
導電性フィラーを配合してなる成形体又は層の体積抵抗率は、1×10〜1×10Ω・cmであることが好ましい。より好ましい下限は、1×10Ω・cmであり、より好ましい上限は、1×10Ω・cmである。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
フッ素樹脂の単量体組成
NMR分析装置(ブルカーバイオスピン社製、AC300 高温プローブ)を用いて溶融状態にて測定した。
各単量体の含有率
溶融下、300MHzの19F−NMRを用い、得られたチャートよりTFE、Et、HFP3元の組成比率を以下の算式により計算した。
TFEの含有モル比={3B+3C−2A}/{4A+6B+3C}
Etの含有モル比={2A+3B}/{4A+6B+3C}
HFP含有モル比=4A/{4A+6B+3C}
なお、
A=−82〜−61ppmの範囲の積分値
B=−117〜−94ppmの範囲の積分値
C=−147〜−117ppmの範囲の積分値
共重合体の白色粉末の切断片を室温で圧縮成形し、厚さ50〜200μmのフィルムを作成した。このフィルムの赤外吸収スペクトル分析によってカルボキシル基〔−(C=O)OH〕のカルボニル基由来のピークが1630〜1783cm−1〔ν(C=O)〕の吸収波長に現れるので、そのν(C=O)ピークの吸光度を測定し、下記式(a)により、カルボキシル基の組成を算出した。
カルボキシル基の含有率(mol%)=AW/(10・εdf) (a)
A:カルボキシル基〔−(C=O)OH〕由来のν(C=O)ピークの吸光度
ε:カルボキシル基〔−(C=O)OH〕由来のν(C=O)ピークのモル吸光度係数。モデル化合物からε=500(l・cm−1・mol−1)とした
W:共重合体の組成から計算される単量体の平均分子量
以上の結果から、TFE、Et、HFP、カルボキシル基含有モノマーの4元の組成比を求め、カルボキシル基含有モノマーの組成(モル%)をカルボキシル基の含有率として算出した。
フルオロポリマーの融点
DSC装置(メトラー社製)を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めた。
MFR
メルトインデクサー(東洋精機製作所社製)を用い、各温度、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定した。
MIT
350℃、7.8MPaGの条件でプレス成形した厚さ0.22mmのフィルムを、幅1
3mm、長さ90mmの短冊状に切り出してサンプルを得た。これを、MIT耐折り曲げ
疲労試験機(安田精機製作所社製)に装着し、ASTMD−2176に準拠した条件(荷重
1.25kg、折り曲げ角度135度、175回/分)にて繰返し折り曲げ試験を行い、
破断するまでに要した折り曲げ回数を測定した。
フッ素非含有有機材料との接着強度
長さ5cm、幅1cmのサンプルをチューブから切り出し、サンプルの最も接着の弱い部分を剥離し、テンシロン(オリエンテック社製)を用いて180度の剥離試験を行い、N/cmを単位とする接着強度を測定した。
引張強度及び引張伸び
テンシロン(オリエンテック社製)を用い、室温において引張速度100mm/分にてミクロダンベルを引っ張り、その最大点強度及び伸度を測定した。
金属との接着強度
幅1cmのサンプルを金属から剥がし、最も接着の弱い部分を剥離し、テンシロン(オリエンテック社製)を用いて90度の剥離試験を行い、N/cmを単位とする接着強度を測定した。
実施例、比較例においては、以下の樹脂及び金属を使用した。
熱可塑性樹脂
変性ポリエチレン〔PE〕:国際公開第2007/040261号パンフレットによるポリオレフィンとカルボジイミド基含有化合物との反応によって得られたイミノ基変性ポリエチレン
HDPE:日本ポリオレフィン社製、商品名HJ451
エチレン−酢酸ビニル共重合体:ハンファL&C社製
銅板(厚み660μm)
実施例1(フルオロポリマーAの製造)
内容積6Lのオートクレーブに純水1.83kgを投入し、充分に窒素置換を行った後、オクタフルオロシクロブタン1127gを仕込み、系内を35℃、攪拌速度600rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレン408g、エチレン4.3g、ウンデシレン酸の50質量%メタノール溶液を17.6g仕込み、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液を13.1g添加して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン=67.5/32.5モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.28MPaGに保った。そして、ウンデシレン酸の50質量%メタノール溶液についても合計量55.3gを連続して仕込み、10.2時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、メタノール洗浄後、乾燥して、フルオロポリマーの白色粉末169gを得た。
得られたフルオロポリマーAは以下の組成及び物性を有していた。
TFE/Et/ウンデシレン酸=61.9/31.9/6.2(モル%)
融点:209℃
MFR:10g/10min(230℃、5kg)
MIT:103000回
実施例2(フルオロポリマーBの製造)
内容積6Lのオートクレーブに純水1.83kgを投入し、充分に窒素置換を行った後、オクタフルオロシクロブタン848gとヘキサフルオロプロピレン414gを仕込み、系内を35℃、攪拌速度600rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレン143g、エチレン4.5g、ウンデシレン酸の50質量%メタノール溶液0.3g、シクロヘキサン0.1gを仕込み、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液を21.5g添加して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン=51.2/42.1/6.7モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を0.92MPaGに保った。そして、ウンデシレン酸の50質量%メタノール溶液についても合計量3.6gを連続して仕込み、4.2時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、メタノール洗浄後、乾燥して、フルオロポリマーの白色粉末191gを得た。
得られたフルオロポリマーBは以下の組成及び物性を有していた。
TFE/Et/HFP/ウンデシレン酸=47.6/42.5/9.6/0.3(モル%)
融点:195℃
MFR:3.0g/10min(230℃、5kg)
MIT:87000回
実施例3(フルオロポリマーEの製造)
内容積6Lのオートクレーブに純水1.83kgを投入し、充分に窒素置換を行った後、オクタフルオロシクロブタン848gとヘキサフルオロプロピレン414gを仕込み、系内を35℃、攪拌速度600rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレン143g、エチレン4.5g、ウンデシレン酸の50質量%メタノール溶液3.0gを仕込み、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液を21.5g添加して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン=51.2/42.1/6.7モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を0.92MPaGに保った。そして、ウンデシレン酸の50質量%メタノール溶液についても合計量36gを連続して仕込み、12時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、メタノール洗浄後、乾燥して、フルオロポリマーの白色粉末190gを得た。
得られたフルオロポリマーEは以下の組成及び物性を有していた。
TFE/Et/HFP/ウンデシレン酸=46.0/41.3/8.9/3.7(モル%)
融点:186℃
MFR:12.0g/10min(230℃、5kg)
MIT:65000回
実施例4(フルオロポリマーFの製造)
内容積6Lのオートクレーブに純水1.83kgを投入し、充分に窒素置換を行った後、オクタフルオロシクロブタン848gとヘキサフルオロプロピレン414gを仕込み、系内を35℃、攪拌速度600rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレン143g、エチレン4.5g、ペンテン酸0.6gを仕込み、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液を35.8g添加して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン=51.2/42.1/6.7モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を0.92MPaGに保った。そして、ペンテン酸についても合計量1.53gを連続して仕込み、5.0時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、メタノール洗浄後、乾燥して、フルオロポリマーの白色粉末379gを得た。
得られたフルオロポリマーFは以下の組成及び物性を有していた。
TFE/Et/HFP/ペンテン酸=47.9/42.1/9.6/0.3(モル%)
融点:196℃
MFR:15.0g/10min(230℃、5kg)
MIT:66000回
実施例5
多層ブロー成形によって、フルオロポリマーA(肉厚250μm)/変性ポリエチレン(肉厚150μm)/HDPE(肉厚600μm)の外形10mmのチューブを作製した。作製したチューブの片方をヒートシールにより封をした後、CE10(イソオクタン/トルエン/エタノール=45/45/10(体積%))を入れ、他方をヒートシールにより封をした。CE10が密封されたチューブを60℃の雰囲気の防爆炉に168hr入れた。CE10を排出した後、ASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。また、CE10に浸漬する前のチューブからも同様にASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。CE10を浸漬させた後のミクロダンベルの引張強度及び伸びは、浸漬前のミクロダンベルの引張強度及び伸びの75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は34N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブの接着強度は32N/cmであった。
実施例6
変性ポリエチレン及びHDPEをエチレン−酢酸ビニル共重合体に変えた以外は、実施例5と同様に多層ブロー成形を実施し、フルオロポリマーA(肉厚250μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体(肉厚750μm)のチューブを作製した。CE10を浸漬した後でも、ミクロダンベルの引張強度と伸びは、75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は20N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブの接着強度は15N/cmであった。
実施例7
フルオロポリマーA(厚み500μm)と脱脂した銅板(厚み660μm)とを230℃、20kN、90秒でプレス接着させ、成形体を得た。作製した成形体をCE10で満たしたステンレス密閉容器に入れ、ステンレス密閉容器を60℃の雰囲気の防爆炉に168時間入れたのち、成形体を取り出した。CE10に浸漬する前の成形体の接着強度は32N/cmであり、CE10を浸漬させた後の成形体の接着強度は18N/cmであった。
実施例8
多層ブロー成形によって、フルオロポリマーB(肉厚250μm)/変性ポリエチレン(肉厚150μm)/HDPE(肉厚600μm)の外形10mmのチューブを作製した。作製したチューブの片方をヒートシールにより封をした後、CE10を入れ、他方をヒートシールにより封をした。CE10が密封されたチューブを60℃の雰囲気の防爆炉に168hr入れた。CE10を排出した後、ASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。また、CE10に浸漬する前のチューブからも同様にASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。CE10を浸漬させた後のミクロダンベルの引張強度及び伸びは、浸漬前のミクロダンベルの引張強度及び伸びの75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は35N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブの接着強度は31N/cmであった。
実施例9
変性ポリエチレン及びHDPEをエチレン−酢酸ビニル共重合体に変えた以外は、実施例8と同様に多層ブロー成形を実施し、フルオロポリマーB(肉厚250μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体(肉厚750μm)のチューブを作製した。CE10を浸漬したあとでも、ミクロダンベルの引張強度と伸びは、75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は10N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブの接着強度は7N/cmであった。
実施例10
フルオロポリマーB(厚み500μm)と脱脂した銅板(厚み660μm)を230℃、20kN、90秒でプレス接着させ、成形体を得た。作製した成形体をCE10で満たしたステンレス密閉容器に入れ、ステンレス密閉容器を60℃の雰囲気の防爆炉に168時間入れたのち、成形体を取り出した。CE10に浸漬する前の成形体の接着強度は30N/cmであり、CE10を浸漬させた後の成形体の接着強度は14N/cmであった。
実施例11
多層ブロー成形によって、フルオロポリマーE(肉厚250μm)/変性ポリエチレン(肉厚150μm)/HDPE(肉厚600μm)の外形10mmのチューブを作製した。作製したチューブの片方をヒートシールにより封をした後、CE10を入れ、他方をヒートシールにより封をした。CE10が密封されたチューブを60℃の雰囲気の防爆炉に168hr入れた。CE10を排出した後、ASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。また、CE10に浸漬する前のチューブからも同様にASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。CE10を浸漬させた後のミクロダンベルの引張強度及び伸びは、浸漬前のミクロダンベルの引張強度及び伸びの75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は38N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブの接着強度は33N/cmであった。
実施例12
変性ポリエチレン及びHDPEをエチレン−酢酸ビニル共重合体に変えた以外は、実施例11と同様に多層ブロー成形を実施し、フルオロポリマーE(肉厚250μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体(肉厚750μm)のチューブを作製した。CE10を浸漬した後でも、ミクロダンベルの引張強度と伸びは、75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は21N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブの接着強度は17N/cmであった。
実施例13
フルオロポリマーE(厚み500μm)と脱脂した銅板(厚み660μm)とを230℃、20kN、90秒でプレス接着させ、成形体を得た。作製した成形体をCE10で満たしたステンレス密閉容器に入れ、ステンレス密閉容器を60℃の雰囲気の防爆炉に168時間入れたのち、成形体を取り出した。CE10に浸漬する前の成形体の接着強度は35N/cmであり、CE10を浸漬させた後の成形体の接着強度は17N/cmであった。
実施例14
多層ブロー成形によって、フルオロポリマーF(肉厚250μm)/変性ポリエチレン(肉厚150μm)/HDPE(肉厚600μm)の外形10mmのチューブを作製した。作製したチューブの片方をヒートシールにより封をした後、CE10を入れ、他方をヒートシールにより封をした。CE10が密封されたチューブを60℃の雰囲気の防爆炉に168hr入れた。CE10を排出した後、ASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。また、CE10に浸漬する前のチューブからも同様にASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。CE10を浸漬させた後のミクロダンベルの引張強度及び伸びは、浸漬前のミクロダンベルの引張強度及び伸びの75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は33N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブの接着強度は31N/cmであった。
実施例15
変性ポリエチレン及びHDPEをエチレン−酢酸ビニル共重合体に変えた以外は、実施例14と同様に多層ブロー成形を実施し、フルオロポリマーF(肉厚250μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体(肉厚750μm)のチューブを作製した。CE10を浸漬した後でも、ミクロダンベルの引張強度と伸びは、75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は20N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブの接着強度は16N/cmであった。
実施例16
フルオロポリマーF(厚み500μm)と脱脂した銅板(厚み660μm)とを230℃、20kN、90秒でプレス接着させ、成形体を得た。作製した成形体をCE10で満たしたステンレス密閉容器に入れ、ステンレス密閉容器を60℃の雰囲気の防爆炉に168時間入れたのち、成形体を取り出した。CE10に浸漬する前の成形体の接着強度は32N/cmであり、CE10を浸漬させた後の成形体の接着強度は15N/cmであった。
比較例1(フルオロポリマーCの製造)
内容積6Lのオートクレーブに純水1.83kgを投入し、充分に窒素置換を行った後、オクタフルオロシクロブタン1127gを仕込み、系内を35℃、攪拌速度600rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレン408g、エチレン4.3g、(パーフルオロエチル)エチレンを10.2g仕込み、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液を13.2g添加して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン=67.5/32.5モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.28MPaGに保った。そして、(パーフルオロエチル)エチレンについても合計量13.6gを連続して仕込み、9.5時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、メタノール洗浄後、乾燥して、フルオロポリマーの白色粉末170gを得た。
得られたフルオロポリマーCは以下の組成及び物性を有していた。
TFE/Et/(パーフルオロエチル)エチレン=63.2/32.8/4.0(モル%)
融点:208℃
MFR:8.4g/10min(230℃、5kg)
MIT:32000回
比較例2(フルオロポリマーDの製造)
内容積6Lのオートクレーブに純水1.83kgを投入し、充分に窒素置換を行った後、オクタフルオロシクロブタン848gとヘキサフルオロプロピレン413gを仕込み、系内を35℃、攪拌速度600rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレン143g、エチレン4.5g、(パーフルオロエチル)エチレン0.3g、シクロヘキサン0.2gを仕込み、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液を21.7g添加して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン=51.2/42.1/6.7モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を0.92MPaGに保った。そして、(パーフルオロエチル)エチレンについても合計量1.0gを連続して仕込み、3.4時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、メタノール洗浄後、乾燥して、フルオロポリマーの白色粉末192gを得た。
得られたフルオロポリマーDは以下の組成及び物性を有していた。
TFE/Et/HFP/(パーフルオロエチル)エチレン=47.9/42.7/9.2/0.3(モル%)
融点:193℃
MFR:5.2g/10min(230℃、5kg)
MIT:28000回
比較例3(フルオロポリマーGの製造)
内容積4Lのオートクレーブに純水1kgを投入し、充分に窒素置換を行った後、ジクロロフルオロエタン753gとヘキサフルオロプロピレン447gを仕込み、系内を35℃、攪拌速度580rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレン/エチレン=82.6/17.4モル%の混合ガス160gとウンデシレン酸3.9gを仕込み、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液を24g添加して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン=47.6/40.8/11.6モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を0.85MPaGに保った。そして、ウンデシレン酸を合計量3.9g連続して仕込み、5.1時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、メタノール洗浄後、乾燥して白色粉末26gを得た。
得られたフルオロポリマーGは以下の組成及び物性を有していた。
TFE/Et/HFP/ウンデシレン酸=35.9/43.4/10.2/10.5(モル%)
融点:検出できず
MFR:粘度が低すぎて測定できなかった(140℃)
MIT:粘度が低くシート作成できず、測定不可
比較例4
多層ブロー成形によって、フルオロポリマーC(肉厚250μm)/変性ポリエチレン(肉厚150μm)/HDPE(肉厚600μm)の外形10mmのチューブを作製した。作製したチューブの片方をヒートシールにより封をした後、CE10を入れ、他方をヒートシールにより封をした。CE10が密封されたチューブを60℃の雰囲気の防爆炉に168hr入れた。CE10を排出した後、ASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。また、CE10に浸漬する前のチューブからも同様にASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。CE10を浸漬させた後のミクロダンベルの引張強度及び伸びは、浸漬前のミクロダンベルの引張強度及び伸びの75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は14N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブはフルオロポリマーCの層と変性ポリエチレンの層とが簡単に剥離した。
比較例5
変性ポリエチレン及びHDPEをエチレン−酢酸ビニル共重合体に変えた以外は、比較例4と同様に多層ブロー成形を実施し、フルオロポリマーC(肉厚250μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体(肉厚750μm)のチューブを作製した。CE10を浸漬した後でも、ミクロダンベルの引張強度と伸びは、75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は7N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブは2層が簡単に剥離した。
比較例6
フルオロポリマーC(厚み500μm)と脱脂した銅板(厚み660μm)を230℃、20kN、90秒でプレス接着させ、成形体を得た。作製した成形体をCE10で満たしたステンレス密閉容器に入れ、ステンレス密閉容器を60℃の雰囲気の防爆炉に168時間入れたのち、成形体を取り出した。CE10に浸漬する前の成形体の接着強度は6N/cmであり、CE10を浸漬させた後の成形体はフルオロポリマーCの層が基材から簡単に剥離した。
比較例7
多層ブロー成形によって、フルオロポリマーD(肉厚250μm)/変性ポリエチレン(肉厚150μm)/HDPE(肉厚600μm)の外形10mmのチューブを作製した。作製したチューブの片方をヒートシールにより封をした後、CE10を入れ、他方をヒートシールにより封をした。CE10が密封されたチューブを60℃の雰囲気の防爆炉に168hr入れた。CE10を排出した後、ASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。また、CE10に浸漬する前のチューブからも同様にASTM記載のミクロダンベルを打ち抜いた。CE10を浸漬させた後のミクロダンベルの引張強度及び伸びは、浸漬前のミクロダンベルの引張強度及び伸びの75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は16N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブはフルオロポリマーDの層と変性ポリエチレンの層とが簡単に剥離した。
比較例8
変性ポリエチレン及びHDPEをエチレン−酢酸ビニル共重合体に変えた以外は、比較例7と同様に多層ブロー成形を実施し、フルオロポリマーD(肉厚250μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体(肉厚750μm)のチューブを作製した。CE10を浸漬した後でも、ミクロダンベルの引張強度と伸びは、75%以上を保持していた。CE10に浸漬する前のチューブの接着強度は8N/cmであり、CE10を浸漬させた後のチューブは2層が簡単に剥離した。
比較例9
フルオロポリマーD(厚み500μm)と脱脂した銅板(厚み660μm)を230℃、20kN、90秒でプレス接着させ、成形体を得た。作製した成形体をCE10で満たしたステンレス密閉容器に入れ、ステンレス密閉容器を60℃の雰囲気の防爆炉に168時間入れたのち、成形体を取り出した。CE10に浸漬する前の成形体の接着強度は5N/cmであり、CE10を浸漬させた後の成形体はフルオロポリマーDの層が基材から簡単に剥離した。
本発明のフルオロポリマー、成形体及び積層体は、液体を収容する容器、ボトル、タンク、袋、チューブ、ホース、パイプ等として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. エチレンに基づく重合単位、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、及び、下記式(1):
    CH=CH−(CH−COOH (1)
    (式中、nは1〜15の整数である。)で表される不飽和カルボン酸に基づく重合単位を含み、
    前記不飽和カルボン酸に基づく重合単位を全単量体単位の0.05〜10.0モル%含み、融点が150〜230℃であることを特徴とするフルオロポリマー。
  2. 更に、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)及びパーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも一種の単量体(X)に基づく重合単位を含む請求項1記載のフルオロポリマー。
  3. 式(1)におけるnが2〜10の整数である請求項1又は2記載のフルオロポリマー。
  4. エチレンに基づく重合単位とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位とのモル比が(20〜60)/(80〜40)である請求項1、2又は3記載のフルオロポリマー。
  5. 単量体(X)に基づく重合単位の含有量が、全単量体単位の0.05〜15.0モル%である請求項2、3又は4記載のフルオロポリマー。
  6. 単量体(X)がヘキサフルオロプロピレンである請求項2、3、4又は5記載のフルオロポリマー。
  7. 請求項1、2、3、4、5記載のフルオロポリマーを成形することにより得られることを特徴とする成形体。
  8. 金属からなる基材と、前記基材上に形成された請求項1、2、3、4、5記載のフルオロポリマーからなる層とを有することを特徴とする積層体。
  9. エチレン/酢酸ビニル共重合体からなる層と、前記層上に形成された請求項1、2、3、4、5記載のフルオロポリマーからなる層とを有することを特徴とする積層体。
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