JP3896837B2 - 熱可塑性樹脂組成物、積層樹脂成形体、多層成形品及び含フッ素樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素エチレン性重合体と、非フッ素熱可塑性樹脂との溶融混合物において、非相溶な多相形態を示さず均一に混ざりあった構造を示す熱可塑性樹脂組成物に関し、上記熱可塑性樹脂組成物を用いた積層樹脂成形体、多層成形品及び含フッ素樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ素樹脂は、耐熱性、耐油・耐薬品性、耐薬液透過性、耐候性、低摩擦性や非粘着性等の表面特性、電気絶縁性に優れているために高機能を要求される種々の用途に用いられている。特に、含フッ素エチレン性重合体は、ポリテトラフルオロエチレンの成形性の悪さを改良したものとして、近年広く用いられている。
【0003】
しかし、一方で、含フッ素エチレン性重合体は、一般に機械的強度や寸法安定性が不十分であったり、また、価格的に高価であったりする。
そこで、含フッ素エチレン性重合体の長所を最大限に活かし、短所を最小限とするため、他の熱可塑性樹脂との接着、積層化、複合化、等の検討が様々に行なわれている。
【0004】
しかし、含フッ素エチレン性重合体は、本来、表面自由エネルギーが低いため、他材料(基材)との接着は困難で、熱融着等での接着を試みても、接着強度が不十分であったり、接着強度にばらつきがあったりして、接着に対する信頼性が十分ではなかった。
【0005】
含フッ素エチレン性重合体と他の材料とを接着させる方法として、
1.基材の表面をサンドブラスト処理等で物理的に荒らす方法、
2.含フッ素エチレン性重合体に対し、ナトリウム・エッチング、プラズマ処理、光化学的処理等の表面処理を行なう方法、
3.接着剤を用いて接着させる方法、
等が検討されているが、上記1、2については、接着の前処理工程が必要となり、工程が複雑化し生産性が悪くなる。また、基材の種類や形状が限定される。えられた積層体の外観にも問題(着色や傷等)を生じやすい。
【0006】
上記3に関しても、接着剤の検討が種々行なわれている。しかし、一般の炭化水素系接着剤は、接着力が不十分であると共に、それ自体の耐熱性が不十分であり、一般に高温での成形、加工を必要とするフッ素樹脂に対して用いた場合には、熱分解による剥離や着色等を起こす。更に、耐油・耐薬品性等も不十分であり、環境の変化により接着力を維持できなくなる等、信頼性にかける。
【0007】
そこで、一般的な炭化水素系接着剤に代わり、含フッ素エチレン性重合体と積層する相手材との混合物(樹脂ブレンド)を接着性材料として用いる検討が行なわれてきた(例えば、US4886689、特開平4−140588、特開平5−220906、再公表95−11940、特許2973860、特開2001−108163)。しかし、これらの樹脂ブレンド系接着性材料は、含フッ素エチレン性重合体と他材とが本質的に非相溶であるという問題点を有している。
【0008】
含フッ素エチレン性重合体と他材とが本質的に非相溶であるために、これらの樹脂ブレンド系接着性材料における混合の状態は、本質的に不安定系である。そのため、混合時や積層時の僅かな条件の変化で多相形態が大きく変化し、それに伴って、接着力もまた変化することになり、成形加工条件の狭さや、接着に対する信頼性の不足という結果をもたらす場合が多かった。
【0009】
また、含フッ素エチレン性重合体と他材とが本質的に非相溶であるため、その樹脂ブレンドは機械的特性に劣り、そのために、積層体を剥離させた場合でも、機械的に劣る接着層の凝集破壊によって剥離が進行する結果となった。
更にまた、耐薬液透過性、特に、燃料系に用いられた場合の耐燃料透過性は、フッ素樹脂との混合物にもかかわらず、かなり劣る結果となっている。これも、含フッ素エチレン性重合体と他材とが非相溶系であるためと考えられる。
【0010】
このような、含フッ素エチレン性重合体と他材とが本質的に非相溶であるという問題点を解決するために、含フッ素エチレン性重合体と他材との親和性を改良する目的で、第3成分としていわゆる相溶化剤を添加することがしばしば行なわれている(例えば、特開昭62−218446、特開平3−62853、特開平1−165647、特開平1−197551、特開平1−263144、特開昭64−11109、特開平1−98650、特開平1−110550)。
【0011】
しかし、これらの例では、実質的に全て、PVdFとアクリルポリマーのようなカルボニル基含有ポリマーとの親和性が優れていることを利用して合成された非フッ素系相溶化剤を用いており、含フッ素エチレン性重合体がPVdFに限定される。また、このような相溶化剤を用いた親和性改良方法では、相溶化剤自身の耐薬品性や耐熱性が主成分の樹脂よりも劣るため、成形品の物性を低下させるという問題点がある。
【0012】
また、反応性官能基含有フッ素ポリマーを利用した組成物の試みもある。例えば、特開昭62−105062、特開昭63−254155、特開昭63−264672等が、それらの例の1つとしてあげられる。しかし、これらの例では、官能基を有する含フッ素ポリマーがオイル状物質として得られるフルオロポリエーテルや、樹脂とは規定し難い低分子量物のポリマーが例示されているのみであり、その添加効果は、マトリックスポリマーの潤滑性改良程度の限定されたものと考えられる。
【0013】
また、反応性官能基含有フッ素ポリマーを利用した組成物の試みの別の例として、WO94/13738、再公表95−29956、再公表95−33782等も挙げられるが、これらの例では、官能基がヒドロキシル基、エポキシ基、カルボキシル基であり、適用される含フッ素ポリマーはパーフルオロ樹脂か、又は、比較的融点の高いものとなっており、混合する相手材樹脂は、耐熱性の樹脂に限られていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の樹脂ブレンド系接着性材料のもつ非相溶系という問題点を解決して、機械的特性を向上させ、接着力の向上と安定、更には、耐薬液透過性の向上を目指すことにある。更に、本発明の目的は、特に加熱溶融接着工程によって基材と強固に接着しうる樹脂アロイ系接着性材料及びそれらからなる積層体を提供することにある。更にまた、本発明の目的は、機械的特性の向上によって、単に接着剤としてだけでなく、単独の構造体として用いることのできる樹脂アロイを提供することにもある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、含フッ素エチレン性重合体(Y)及び非フッ素熱可塑性樹脂(Z)からなる熱可塑性樹脂組成物であって、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)は、主鎖末端及び/又は側鎖末端に反応性官能基を有するものであり、上記非フッ素熱可塑性樹脂(Z)は、結合形成性部位を有する非フッ素ポリマーからなるものであり、上記結合形成性部位は、上記反応性官能基との結合形成性を有するものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
【0016】
本発明は、フッ素含有エチレン性ポリマーからなる層(A)、中間の層(B)、及び、熱可塑性非フッ素樹脂からなる層(C)がこの順に積層されてなる積層樹脂成形体であって、上記層(B)は、上記熱可塑性樹脂組成物からなるものであることを特徴とする積層樹脂成形体である。
【0017】
本発明は、上記積層樹脂成形体からなるものであることを特徴とする多層成形品である。
本発明は、上記熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする含フッ素樹脂成形品である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、含フッ素エチレン性重合体(Y)及び非フッ素熱可塑性樹脂(Z)からなる熱可塑性樹脂組成物であって、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)は、主鎖末端及び/又は側鎖末端に反応性官能基を有するものであり、上記非フッ素熱可塑性樹脂(Z)は、結合形成性部位を有する非フッ素ポリマーからなるものであり、上記結合形成性部位は、上記反応性官能基との結合形成性を有するものであることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、後述のように、少なくとも得られる成形体において、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)と上記非フッ素熱可塑性樹脂(Z)とが非相溶性を有しないこととなる。この非相溶性を有しない状態は、例えば上記含フッ素エチレン性重合体(Y)と上記非フッ素熱可塑性樹脂(Z)とを溶融混練等により製造して得られた熱可塑性樹脂組成物において実現することができる場合がある。
【0020】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)は、主鎖末端及び/又は側鎖末端に反応性官能基を有するものである。上記反応性官能基としては、ヒドロキシル基、エポキシ基、カルボニルジオキシ基〔−O−C(=O)−O−〕、カルボキシル基、ハロホルミル基〔−C(=O)−X;Xはハロゲン原子〕、アルコキシカルボニル基、酸無水物、イソシアネート基等、種々のものが利用可能である。
【0021】
上記反応性官能基としては、カルボニル基〔−C(=O)−〕を有するものであることが好ましい。上記カルボニル基を有するものとしては、カルボニル基を有する官能基又は結合が挙げられる。本明細書において、上記「カルボニル基を有する官能基又は結合」を「カルボニル基含有基」という。
【0022】
上記カルボニル基含有基は、特に、熱可塑性樹脂組成物を構成する場合の相手材、すなわち、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)として最も一般的に用いられるであろうポリアミド系樹脂中のアミド基やアミノ基等の官能基と基本的に反応することができる。上記カルボニル基含有基としては、例えば、カルボニルジオキシ基、ハロホルミル基、ホルミル基(アルデヒド基)、アシル基(ケトン基)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物、イソシアネート基等を挙げることができる。これらのカルボニル基含有基は、一般に反応性が良好である。上記カルボニル基含有基としては、導入が容易であり、ポリアミド系樹脂との反応性が高い点から、カルボニルジオキシ基及びハロホルミル基が好ましい。
【0023】
本明細書において、上記カルボニル基含有基は、アミド結合〔−NH−C(=O)−〕、イミド基〔−C(=O)−NH−C(=O)−〕、ウレタン結合〔−NH−C(=O)−O−〕、ウレア基〔−NH−C(=O)−NH−〕は含まないものである。これらは、カルボニル基を有するものではあるが、カルボニルジオキシ基をはじめとする先に例示したカルボニル基含有基と異なり、反応性に乏しく、例えばポリアミド系樹脂とは基本的に反応し得ないものであるということができる。
【0024】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)中のカルボニルジオキシ基は、上述のように−O−C(=O)−O−で表される基であり、上記カルボニルジオキシ基を含む基としては、具体的には、−OC(=O)O−R基(Rは有機基又はVII族元素である。)の構造のもの等が挙げられる。上記有機基としては、例えば、C1〜C20のアルキル基、エーテル結合を有するC2〜C20のアルキル基等が挙げられ、前者としては、C1〜C10のアルキル基が好ましい。上記−OC(=O)O−Rで表されるものとしては、−OC(=O)OCH3、−OC(=O)OC3H7 、−OC(=O)OC8H17、−OC(=O)OCH2CH2CH2OCH2CH3等が好ましく挙げられる。
【0025】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)中のハロホルミル基は、上述のように−COY(Yはハロゲン元素)で表されるものであり、−COF、−COCl等が例示される。
【0026】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)は、そのポリマー鎖にカルボニル基含有基を有するが、ポリマー鎖が上記カルボニル基含有基を有する態様としては特に限定されず、例えば、カルボニル基含有基がポリマー鎖末端又は側鎖に結合していてよい。より具体的には、例えば、カルボニル基含有基がカルボニルジオキシ基又はハロホルミル基である場合には、
(1)カルボニルジオキシ基のみをポリマー鎖末端又は側鎖に有する含フッ素エチレン性重合体(Y)、
(2)ハロホルミル基のみをポリマー鎖末端又は側鎖に有する含フッ素エチレン性重合体(Y)、及び、
(3)カルボニルジオキシ基及びハロホルミル基をポリマー鎖末端又は側鎖に有する含フッ素エチレン性重合体(Y)があり、
これらのいずれのものであってもよい。なかでも、ポリマー鎖末端にカルボニル基含有基を有するものが、耐熱性、機械特性、耐薬品性を著しく低下させない理由で又は生産性、コスト面で有利である理由で好ましい。
【0027】
上記カルボニル基は、パーオキサイドに由来するものであることが好ましい。パーオキシカーボネート〔−O−C(=O)−O−O−C(=O)−O−〕やパーオキシエステル〔−O−C(=O)−O−〕のようなカルボニル基含有基を含むか、又は、カルボニル基含有基に変換できる官能基を有する重合開始剤を使用してポリマー鎖末端にカルボニル基含有基を導入する方法を用いる場合、カルボニル基はパーオキサイドに由来するものとなる。このようなカルボニル基含有基を導入する方法は、導入が非常に容易で、しかも導入量の制御も容易なことから好ましい態様である。なお、本発明では、パーオキサイドに由来するカルボニル基含有基とは、パーオキサイドに含まれる官能基から直接又は間接的に導かれるカルボニル基含有基をいう。
【0028】
上記含フッ素エチレン性重合体(Y)中のカルボニル基の数は、溶融混合される相手材の種類、形状、用途、該重合体の形態と成形方法等の違いにより適宜選択されうるが、含フッ素エチレン性重合体(Y)の主鎖炭素数1×106個あたり3〜1000個であることが好ましい。上記カルボニル基の数が主鎖炭素数1×106個あたり、3個未満であると、溶融混合の相手材と充分に反応しない場合がある。また、1000個を超えると溶融混合とそれに引続く成形操作に伴い、カルボニル基の化学変化によってガス等が発生し、熱可塑性樹脂組成物の物性に悪影響を与える場合がある。より好ましい下限は3個、より好ましい上限は500個であり、更に好ましい下限は10個、更に好ましい上限は300個である。なお、含フッ素エチレン性重合体(Y)中のカルボニル基の含有量は、赤外吸収スペクトル分析により測定することができる。
【0029】
従って、本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)が、例えば、カルボニルジオキシ基及び/又はハロホルミル基を有するものである場合、カルボニルジオキシ基のみを有するのであれば、そのカルボニルジオキシ基の数が主鎖炭素数1×106個あたり3〜1000個であり、ハロホルミル基のみを有するのであれば、そのハロホルミル基の数が主鎖炭素数1×106個あたり3〜1000個であり、カルボニルジオキシ基とハロホルミル基の両方を有するのであれば、それらの基の合計数が主鎖炭素数1×106個あたり3〜1000個であるものが好ましい。
【0030】
上記カルボニルジオキシ基及び/又はハロホルミル基の合計数が上記含フッ素エチレン性重合体(Y)の主鎖炭素数1×106個あたり、3個未満であると、充分な接着力が発現しない場合があり、1000個を超えると、接着操作に伴い、カルボニルジオキシ基又はハロホルミル基の化学変化によって発生するガスが熱可塑性樹脂組成物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。耐熱性、耐薬品性の観点から、より好ましい下限は3個、より好ましい上限は500個であり、更に好ましい下限は10個、更に好ましい上限は300個である。
【0031】
なお、ポリアミド系樹脂との反応性に特に優れるハロホルミル基が、含フッ素エチレン性重合体(Y)の主鎖炭素数1×106個あたり20個以上存在していれば、カルボニル基合計の含有量を上記主鎖炭素数1×106個あたり150個未満にしても、溶融混合の相手材に対し、充分な反応性を発現することができる。
【0032】
上記含フッ素エチレン性重合体(Y)の主鎖炭素数1×106個あたりのカルボニル基の数としては、ハロホルミル基が存在していた場合におけるハロホルミル基が分解して生じるカルボキシル基を一般的に含むものである。ハロホルミル基は、例えば、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)を成形する際の加熱等により、又は、経時的に、カルボン酸に分解してしまうことがある。従って、後述の本発明の積層樹脂成形体において上記熱可塑性樹脂組成物からなる層(B)中の含フッ素エチレン性重合体(Y)には、ハロホルミル基が存在していた場合、ハロホルミル基が分解して生じたカルボキシル基を一般的に含むが、このようなカルボキシル基も、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)の主鎖炭素数1×106個あたりのカルボニル基の数として含む。
【0033】
なお、本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)においては、カルボニル基含有基を含まない含フッ素エチレン性重合体が存在してもよく、この場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物をなす含フッ素エチレン性重合体(Y)全体における合計として、主鎖炭素1×106個あたり上記範囲内の個数を有する存在比率でカルボニル基を有していればよい。
【0034】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)の種類及び構造は、目的、用途、使用方法等により適宜選択され得るが、なかでも、融点が120〜270℃であるものが好ましい。このような重合体であれば、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と溶融混合する場合、特にカルボニル基含有基と相手材との反応性を充分に発揮することができ、有利である。上記含フッ素エチレン性重合体(Y)の融点としては、更にまた、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)として比較的耐熱性の低いものを用いて溶融混合する場合であっても相手材の分解を促進しないように、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
【0035】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)の分子量については、該重合体が熱分解温度以下で成形でき、しかも得られた成形体が含フッ素エチレン性重合体(Y)本来の優れた機械特性、耐薬品性等を発現できるような範囲であることが好ましい。具体的には、メルトフローレート〔MFR〕を分子量の指標として、フッ素樹脂一般の成形温度範囲である約230〜350℃の範囲の温度におけるMFRが0.5〜100g/10分であることが好ましい。
【0036】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)は、上述のように、含フッ素エチレン性重合体の主鎖末端及び/又は側鎖末端に反応性官能基が結合したものであり、上記反応性官能基としてはカルボニル基又はカルボニル基含有基が好ましい。このような含フッ素エチレン性重合体(Y)の主鎖及び/又は側鎖の構造は、一般に、少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体から誘導される繰り返し単位を有するホモポリマー鎖又はコポリマー鎖からなり、含フッ素エチレン性単量体のみを重合してなるか、又は、含フッ素エチレン性単量体とフッ素原子を有さないエチレン性単量体とを重合してなるポリマー鎖であってよい。
【0037】
上記含フッ素エチレン性単量体は、フッ素原子を有するオレフィン性不飽和単量体であり、具体的には、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン、へキサフルオロイソブテン、式(2):
CH2=CX1(CF2)nX2 (2)
(式中、X1は−H又は−F、X2は−H、−F又は−Cl、nは1〜10の整数である。)で示される単量体、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類等である。
【0038】
上記フッ素原子を有さないエチレン性単量体は、耐熱性や耐薬品性等を低下させないためにも炭素数5以下のエチレン性単量体から選ばれることが好ましい。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0039】
含フッ素エチレン性単量体とフッ素原子を有さないエチレン性単量体との単量体組成としては、含フッ素エチレン性単量体10〜100モル%とフッ素原子を有さないエチレン性単量体0〜90モル%の量比であってよく、例えば、含フッ素エチレン性単量体30〜100モル%とフッ素原子を有さないエチレン性単量体0〜70モル%の量比であってもよい。なお、上述のようにフッ素原子を有さないエチレン性単量体は、任意の単量体成分であり、用いなくてもよい。
【0040】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)においては、含フッ素エチレン性単量体及びフッ素原子を有さないエチレン性単量体の種類、組合せ、組成比等を選ぶことによって重合体の融点又はガラス転移点を調節することができ、また更に樹脂状のもの、エラストマー状のもののどちらにもなりうる。接着の目的や用途、積層体の目的や用途に応じて、含フッ素エチレン性重合体(Y)の性状は適宜選択できる。
【0041】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)としては、耐熱性、耐薬品性の面で、テトラフルオロエチレンを必須の単量体成分とするカルボニルジオキシ基含有含フッ素エチレン性重合体が好ましく、また、成形加工性の面でフッ化ビニリデン単位を必須成分とするカルボニルジオキシ基含有含フッ素エチレン性共重合体が好ましい。本明細書において、カルボニルジオキシ基を有する含フッ素エチレン性重合体(Y)を、「カルボニルジオキシ基含有含フッ素エチレン性重合体」又は「カルボニルジオキシ基含有共重合体」ということがある。
【0042】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)の好ましい具体例としては、ポリマー鎖が本質的に下記の単量体を重合してなるポリマー鎖であるカルボニルジオキシ基含有含フッ素エチレン性共重合体(I)〜(V)等を挙げることができる:
(I)テトラフルオロエチレン及びエチレンを含む単量体成分から得られる共重合体、
(II)テトラフルオロエチレン、及び、下記一般式(1)
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は−CF3又は−ORf2を表す。Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物を含む単量体成分から得られる共重合体、
【0043】
(III)フッ化ビニリデンを含む単量体成分から得られる共重合体、
(IV)下記a、b及びcを含む単量体成分から得られる共重合体、
a.テトラフルオロエチレン19〜90モル%、好ましくは20〜70モル%
b.エチレン9〜80モル%、好ましくは20〜60モル%
c.上記一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物1〜72モル%、好ましくは1〜60モル%、
並びに、
(V)下記d、e及びfを含む単量体成分から得られる共重合体。
d.フッ化ビニリデン15〜60モル%
e.テトラフルオロエチレン35〜80モル%
f.ヘキサフルオロプロピレン5〜30モル%
【0044】
上記共重合体(I)〜(V)は、いずれも、特に耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気絶縁性、非粘着性に優れている点で好ましく、なかでも、カルボニルジオキシ基を有するものがより好ましい。上記共重合体(I)〜(V)の単量体成分は、それぞれ上述した単量体のみからなるものであってもよいし、上述した単量体に加え、上述した単量体と共重合可能なその他の単量体を含むものであってもよい。
【0045】
上記共重合体(I)として、例えば、側鎖にカルボニル基含有基を有する場合、カルボニル基含有基を有する単量体を除いた残りの単量体成分が、テトラフルオロエチレン20〜90モル%(例えば20〜60モル%)、エチレン10〜80モル%(例えば20〜60モル%)及びこれらと共重合可能な単量体0〜70モル%とからなるものであるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体等が挙げられる。上記テトラフルオロエチレン及びエチレンと共重合可能な単量体は、任意成分であり、単量体成分に含まれなくてもよい。
【0046】
上記共重合可能な単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、上記一般式(2)で表される単量体、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類、プロピレン等が挙げられ、通常これらの1種又は2種以上が用いられる。このような含フッ素エチレン性重合体(Y)は、特に耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気絶縁性、非粘着性に優れている点で好ましい。
【0047】
上記共重合体(I)としては、なかでも、
(I−1) テトラフルオロエチレン62〜80モル%、エチレン20〜38モル%、及び、これらと共重合可能な単量体0〜10モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体、
(I−2) テトラフルオロエチレン20〜80モル%、エチレン10〜80モル%、へキサフルオロプロピレン0〜30モル%、及び、これらと共重合可能な単量体0〜10モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体
が、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体の優れた性能を維持し、融点的にも比較的低くすることができ、他材との接着性を最大限に発揮できる点で好ましい。本明細書において、上記共重合体(1)を「テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体」ということがある。
【0048】
上記共重合体(II)としては、例えば、
(II−1)テトラフルオロエチレン65〜95モル%、好ましくは75〜95モル%、及び、ヘキサフルオロプロピレン5〜35モル%、好ましくは5〜25モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体、
(II−2)テトラフルオロエチレン70〜97モル%、及び、CF2=CFORf2(Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)3〜30モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体、
(II−3)テトラフルオロエチレン、へキサフルオロプロピレン、CF2=CFORf2(Rf2は上記と同じ)からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニル基含有共重合体であって、へキサフルオロプロピレンとCF2=CFORf2との合計が単量体成分の5〜30モル%である共重合体
等が好ましい。
【0049】
上記共重合体(II−2)及び上記共重合体(II−3)は、パーフルオロ系共重合体でもあり、含フッ素ポリマーの中でも耐熱性、耐薬品性、撥水性、非粘着性、電気絶縁性等に最も優れている。
【0050】
上記共重合体(III)としては、例えば、側鎖にカルボニル基含有基を有する場合、カルボニル基含有基を有する単量体を除いた残りの単量体成分が、フッ化ビニリデン15〜99モル%、テトラフルオロエチレン0〜80モル%、並びに、ヘキサフルオロプロピレン及び/又はクロロトリフルオロエチレン0〜30モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体等が挙げられる。
【0051】
上記共重合体(III)としては、例えば、
(III−1)フッ化ビニリデン30〜99モル%、及び、テトラフルオロエチレン1〜70モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体、
(III−2)フッ化ビニリデン60〜90モル%、テトラフルオロエチレン0〜30モル%、及び、クロロトリフルオロエチレン1〜20モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体、
(III−3)フッ化ビニリデン60〜99モル%、テトラフルオロエチレン0〜30モル%、及び、ヘキサフルオロプロピレン5〜30モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体、
(III−4)フッ化ビニリデン15〜60モル%、テトラフルオロエチレン35〜80モル%、及び、ヘキサフルオロプロピレン5〜30モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体
等が挙げられる。
【0052】
本発明における含フッ素エチレン性重合体(Y)の製造方法としては特に限定されず、カルボニル基含有基を有するエチレン性単量体を、目的の含フッ素エチレン性重合体(Y)に合わせた種類、配合の含フッ素エチレン性単量体と共重合することにより得られる。
【0053】
上記カルボニル基含有基を有するエチレン性単量体としては、好ましくは、パーフルオロアクリル酸フルオライド、1−フルオロアクリル酸フルオライド、アクリル酸フルオライド、1−トリフルオロメタクリル酸フルオライド、パーフルオロブテン酸等の含フッ素単量体;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸クロライド、ビニレンカーボネート等のフッ素を含まない単量体をそれぞれ例示できる。
【0054】
ポリマー鎖の主鎖末端にカルボニル基含有基を有する含フッ素エチレン性重合体(Y)を得るためには種々の方法を採用することができるが、パーオキサイド、特に、パーオキシカーボネートやパーオキシエステルを重合開始剤として用いる方法が、経済性の面、耐熱性、耐薬品性等品質面で好ましく採用できる。この方法によれば、パーオキサイドに由来するカルボニル基含有基、例えば、パーオキシカーボネートに由来するカルボニルジオキシ基、パーオキシエステルに由来するエステル基又はこれらの官能基を変換して得られるハロホルミル基を、ポリマー鎖の主鎖末端に導入することができる。これらの重合開始剤のうち、パーオキシカーボネートを用いた場合には、重合温度を低くすることができ、開始反応に副反応を伴わないことから、より好ましい。
【0055】
上記パーオキシカーボネートとしては下記一般式
【0056】
【化1】
【0057】
(式中、R及びR′は同一又は異なって、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分枝状の一価飽和炭化水素基、又は、末端にアルコキシ基を有する炭素数1〜15の直鎖状若しくは分枝状の一価飽和炭化水素基を表し、R′′は炭素数1〜15の直鎖状若しくは分枝状の二価飽和炭化水素基、又は、末端にアルコキシ基を有する炭素数1〜15の直鎖状又は分枝状の二価飽和炭化水素基を表す。)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0058】
なかでも、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等が好ましい。
【0059】
パーオキシカーボネート、パーオキシエステル等の開始剤の使用量は、目的とする重合体の種類(組成等)、分子量、重合条件、使用する開始剤の種類によって異なるが、重合で得られる含フッ素エチレン性重合体(Y)100重量部に対して0.05〜20重量部、特に0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0060】
重合方法としては、工業的にはフッ素系溶媒を用い、重合開始剤としてパーオキシカーボネート等を使用した水性媒体中での懸濁重合が好ましいが、他の重合方法、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合等も採用できる。懸濁重合においては、水に加えてフッ素系溶媒を使用してよい。懸濁重合に用いるフッ素系溶媒としてはハイドロクロロフルオロアルカン類(例えば、CH3CClF2、CH3CCl2F、CF3CF2CCl2H、CF2ClCF2CFHCl)、クロロフルオロアルカン類(例えば、CF2ClCFClCF2CF3、CF3CFClCFClCF3)、パーフルオロアルカン類(例えば、パーフルオロシクロブタン、CF3CF2CF2CF3、CF3CF2CF2CF2CF3、CF3CF2CF2CF2CF2CF3)が使用でき、なかでもパーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素溶媒の使用量は、懸濁性、経済性の面から、水に対して10〜100重量%とするのが好ましい。
【0061】
重合温度は特に限定されず、0〜100℃でよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常0〜9.8MPaGであってよい。
【0062】
なお、分子量調整のために、通常の連鎖移動剤、例えば、イソペンタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;メタノール、エタノール等のアルコール;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素を用いることができる。また、末端のカルボニルジオキシ基又はエステル基の含有量は、重合条件を調整することによってコントロールでき、パーオキシカーボネート又はパーオキシエステルの使用量、連鎖移動剤の使用量、重合温度等によってコントロールできる。
【0063】
ポリマー分子末端にハロホルミル基を有する含フッ素エチレン性重合体(Y)を得るためには種々の方法を採用できるが、例えば、上述のカルボニルジオキシ基又はエステル基を末端に有する含フッ素エチレン性重合体(Y)を加熱させ、熱分解(脱炭酸)させることにより得ることができる。加熱温度は、カルボニルジオキシ基又はエステル基の種類や含フッ素エチレン性重合体(Y)の種類によって異なるが、重合体自体が270℃以上、好ましくは280℃以上、特に好ましくは300℃以上になるように加熱するのが好ましく、加熱温度の上限は、含フッ素エチレン性重合体(Y)のカルボニルジオキシ基又はエステル基以外の部位の熱分解温度以下にすることが好ましく、具体的には400℃以下、より好ましくは350℃以下である。
【0064】
本発明の非フッ素熱可塑性樹脂(Z)は、結合形成性部位を有する非フッ素ポリマーからなるものである。
上記非フッ素系ポリマーとしては、たとえばポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、アクリル系、酢酸ビニル系、ポリオレフィン、塩化ビニル系、ポリカーボネート、スチレン系、ポリウレタン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体〔ABS〕、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルポリエーテルケトン〔PEEK〕、ポリエーテルサルホン〔PES〕、ポリスルホン、ポリエーテルフェニルオキサイド〔PPO〕、ポリアラミド、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル、セロハン等が挙げられる。
【0065】
上記結合形成性部位は、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)の反応性官能基との結合形成性を有するものである。このような結合形成性部位としては、後述のポリアミド系樹脂のように主鎖中に存在するアミド結合等の結合であってもよいし、主鎖及び/又は側鎖に有する官能基であってもよいし、これらの両方であってもよい。
【0066】
上記結合形成性部位としては上記反応性官能基と結合形成性を有するものであれば特に限定されず、含フッ素エチレン性重合体(Y)の反応性官能基として最も好ましいカルボニル基含有基に対する反応性と耐熱性の面から見て、ヒドロキシル基、エポキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物、アミド結合、アミノ基、スルホンアミド基が好ましく、なかでも、アミド結合及びアミノ基がより好ましい。
【0067】
非フッ素熱可塑性樹脂(Z)としては、ポリアミド系樹脂、結合形成性部位含有ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリシロキサン、ポリアリレンオキサイド、ポリアリレンスルファイド等が挙げられ、ポリアミド系樹脂及び結合形成性部位含有ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0068】
上記ポリアミド系樹脂は、高強度、高靱性、軽量で加工性に優れ、特に柔軟である等の特性を有し、一般的にフッ素樹脂の有する欠点を補うものとして特に好ましい。
本発明におけるポリアミド系樹脂とは、分子内に繰り返し単位としてアミド結合〔−NH−C(=O)−〕を有する高分子をいう。このようなものとしては、例えば、アミド結合の過半が脂肪族、あるいは脂環族構造と結合している樹脂等が挙げられる。
【0069】
このようなポリアミド系樹脂としては、例えば、環状脂肪族ラクタムの開環重合;脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルポン酸又は芳香族ジカルポン酸との縮合;アミノ酸の縮重合;不飽和脂肪酸の二量化により得られる炭素数36のジカルボン酸を主成分とするいわゆるダイマー酸と短鎖二塩基酸との共重合等で合成されるポリアミド系樹脂等が挙げられ、いわゆるナイロン樹脂を挙げることができる。具体的には、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン46及びメタキシリレンジアミン/アジピン酸の重合体、並びに、これらのブレンド物等を挙げることができる。
【0070】
本発明におけるポリアミド系樹脂は、アミド結合を繰り返し単位として有しない構造が分子にブロック又はグラフト結合されているものであってもよい。このような樹脂としては、例えば、ポリアミド成分を結晶性のハードセグメントとし、ポリエーテルをソフトセグメントとするAB型ブロックタイプのポリエーテルエステルアミド及びポリエーテルアミドエラストマーであるポリアミドエラストマー等が挙げられ、これは、例えば、ラウリルラクタムとジカルボン酸及びテトラメチレングリコールとの縮合反応から得られる。
【0071】
ハードセグメント部のポリアミドの炭素数及びソフトセグメント部の炭素数の種類並びにそれらの割合、あるいはそれぞれのブロックの分子量は、柔軟性と弾性回復性面から自由に設計することができる。
【0072】
上記官能基をポリアミド系樹脂に含有させるための方法としては特に限定されず、上記官能基を有する共重合可能な単量体をポリアミド系樹脂に上記含有量となるように共重合させてもよく、又は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基及びスルホンアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する可塑剤や、ポリアミド系樹脂と相溶性がありこれらの官能基を有する高分子を、上記官能基含有量となるように配合してもよい。
【0073】
上記のポリアミド系樹脂と相溶性があり上述の官能基を有する高分子としては、例えば、エステル及び/又はカルボン酸変性オレフィン樹脂(エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/アクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/無水マレイン酸共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、プロピレン/無水マレイン酸共重合体等)、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリフェニレンオキサイド等を挙げることができる。
【0074】
このような、アミド結合を繰り返し単位として有しない構造が結合したポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6−ポリエステル共重合体、ナイロン6−ポリエーテル共重合体、ナイロン12−ポリエステル共重合体、ナイロン12−ポリエーテル共重合体等のポリアミド系樹脂エラストマー等を挙げることができる。これらのポリアミド系樹脂エラストマーは、ナイロン樹脂オリゴマーとポリエステル樹脂オリゴマーあるいはポリエーテル樹脂オリゴマーとが、エステル結合又はエーテル結合を介してブロック共重合されたものである。上記ポリエステル樹脂オリゴマーとしては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート等を、ポリエーテル樹脂オリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等をそれぞれ例示できる。特に好ましい態様としては、ナイロン6−ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12−ポリテトラメチレングリコール共重合体等である。
【0075】
ところで、一般にポリアミド系樹脂は、成形時に加熱されることにより分解反応を容易に起こし、モノマー等の低分子量物が発生したり、ゲル化を引き起こすことから、これを抑制するために、また、酸化等による着色を抑制するために、通常、重合時にモノカルボン酸やその誘導体を添加して、所謂、末端封鎖を行って末端アミノ基濃度を低下させることが広く行われている。従って、ポリアミド系樹脂は末端アミノ基濃度が一般に10当量/106g未満のものが広く使用されている。しかしながら、ポリアミド系樹脂と反応性官能基含有含フッ素エチレン性重合体(Y)との溶融混練りを行なった場合に充分な反応が進行しない場合があった。この現象を検討したところ、ポリアミド系樹脂の末端アミノ基濃度が10当量/106g未満である場合には、フッ素含有エチレン性ポリマーからなる層(A)との反応が不充分である。しかしこの末端アミノ基濃度を大きくすると、反応が顕著に向上することが見いだされた。
【0076】
一方、この値が60当量/106gを超えると、成形体の機械特性に劣り、また、貯蔵中に着色し易くなりハンドリング性に劣ることも併せて見いだされた。従って、本発明においてポリアミド系樹脂の末端アミノ基濃度の好ましい下限は、10当量/106gであり、好ましい上限は60当量/106gである。より好ましい下限は10当量/106gであり、より好ましい上限は50当量/106gである。更に好ましい下限は15当量/106gであり、更に好ましい上限は35当量/106gある。
【0077】
本発明においては、ポリアミド系樹脂は、末端カルボキシル基濃度の好ましい上限は80当量/106gである。80当量/106gを超えても、末端アミノ基濃度が上記範囲にあるかぎり充分な反応が発現されるが、しかし、該樹脂の分子量が必ずしも充分でない場合があり、末端カルボキシル基濃度を80当量/106g以下とすることによりこのような問題を回避しうる。より好ましい上限は70当量/106gであり、更に好ましい上限は60当量/106gである。
【0078】
本発明においてポリアミド系樹脂は、その融点が130℃以上となるように適宜、選択されることが好ましい。融点が130℃未満であると、形成される熱可塑性樹脂組成物の機械特性、耐熱性等に劣る場合がある。より好ましい下限は150℃であり、より好ましい上限は300℃である。更に好ましい下限は、150℃であり、更に好ましい上限は270℃である。
【0079】
上記結合形成性部位含有ポリオレフィン樹脂は、結合形成性部位を形成するための官能基(y)を有する単量体と、エチレンとを重合して得られる共重合体であり、上記単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル及び/又はビニルアルコールが好ましい。
【0080】
上記結合形成性部位含有ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン/酢酸ビニル共重合体〔EVA〕、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/無水マレイン酸共重合体等であって、結合形成性部位を有するものが挙げられ、なかでも、ポリエチレンが好ましい。
【0081】
上記ポリビニルアルコールとしては、種々の酢酸ビニル含有量及び鹸化度のものが市販されているので、その中から酢酸ビニル含有量X(モル%)及びメチルエステルの鹸化度Y(%)が、X×Y/100≧7.0を満足するものを選択すればよい。
本発明において使用できるポリビニルアルコールとしては、例えば、エバールF101(商品名、クラレ社製)は、酢酸ビニル含有量68モル%で、鹸化度95%であるから、X×Y/100は64.6となる。メルセンH6051(商品名、東ソー社製)は、酢酸ビニル含有量11.2モル%で、鹸化度100%であるから、X×Y/100は11.2となる。テクノリンクK200(商品名、田岡化学社製)は、酢酸ビニル含有量11.2モル%で、鹸化度85%であるから、X×Y/100は9.52となる。
【0082】
上記ポリシロキサンとしては、シリコーン樹脂として一般的に知られているものを用いることができる。
上記ポリアリレンオキサイドとしては、ポリフェニレンオキサイド〔PPO〕が好ましく、PPOとして一般的に知られているものを用いることができる。
上記ポリアリレンスルファイドとしては、ポリフェニレンスルファイド〔PPS〕が好ましく、PPSとして一般的に知られているものを用いることができる。なお、本明細書において、上記ポリアリレンオキサイド及び上記ポリアリレンスルファイドにおける「アリレン」とは、aryleneを意味し、allyleneを意味しない。
【0083】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述のように、含フッ素エチレン性重合体(Y)及び非フッ素熱可塑性樹脂(Z)とからなるものであるが、含フッ素エチレン性重合体(Y)と非フッ素熱可塑性樹脂(Z)とを混合したものである熱可塑性樹脂組成物の態様としては、
(a)含フッ素エチレン性重合体(Y)、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)両方ともがパウダーであり、それらパウダーを均質になるまで常温で混ぜたパウダー、
(b)含フッ素エチレン性重合体(Y)、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)両方ともがペレットであり、それらペレットを均質になるまで常温で混ぜたペレット、
(c)含フッ素エチレン性重合体(Y)と非フッ素熱可塑性樹脂(Z)を前混合の後にペレットの形状で押出成形したもの、又は、溶融押出の工程で含フッ素エチレン性重合体(Y)と非フッ素熱可塑性樹脂(Z)を混合し、ペレットの形状としたものであり、出来上がったペレット中で、含フッ素エチレン性重合体(Y)と非フッ素熱可塑性樹脂(Z)とは、最終的な反応状態に達していないもの、
(d)(c)と同様の工程を経てペレット化されたものであり、かつ、出来上がったペレット中で、含フッ素エチレン性重合体(Y)と非フッ素熱可塑性樹脂(Z)とが、最終的な反応状態に達しているもの
等が挙げられる。
【0084】
本明細書において、上記「最終的な反応状態」とは、含フッ素エチレン性重合体(Y)と非フッ素熱可塑性樹脂(Z)を必要十分な温度と時間で溶融混合した場合に達する状態を意味する。
上記(a)〜(d)のうち、(a)〜(c)では、得られた熱可塑性樹脂組成物を成形品へと成形加工する工程で、含フッ素エチレン性重合体(Y)と非フッ素熱可塑性樹脂(Z)との反応を起こさせ、最終的な反応状態にすることを意図するものである。
【0085】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述のように、反応性官能基を有する含フッ素エチレン性重合体(Y)と、上記反応性官能基との結合形成性を有する結合形成性部位を有する非フッ素熱可塑性樹脂(Z)とからなるものであるので、少なくとも上記熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体において、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)と上記非フッ素熱可塑性樹脂(Z)との非相溶によって生み出される多相形態構造が存在しないようにすることができる。
【0086】
本明細書において、上記「多相形態構造」とは、ある成分が他の成分からなるマトリックス中に孤立した粒子状に分散した多相構造をとっている状態を意味する。このような多相形態は、非相溶性の多相系において、よく見られる状態である。上記多相形態は、例えば図2の透過型電子顕微鏡像における多相構造のように、不均一な系であるということができる。
【0087】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、上記多相形態構造が存在しないこととなる機構としては明確ではないが、上記反応性官能基と上記結合形成性部位とが結合を形成することによるものと考えられる。この場合、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)は、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と結合を形成することとなる。
【0088】
この上記反応性官能基と上記結合形成性部位との結合は、通常、上記反応性官能基と上記結合形成性部位とが反応することにより形成されるものであると考えられ、このような反応による結合が好ましいが、例えば、更に、水素結合等のいわゆる化学反応によらない結合が形成されていてもよい。この場合、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)は、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と反応したものとなる。
【0089】
上記反応性官能基と上記結合形成性部位との反応は、上述の熱可塑性樹脂組成物を製造する段階において、例えば溶融混練等により例えば260℃以上の温度に加熱する場合、通常起こるものと考えられるが、反応の程度は、成形前においては成形性を損なわない程度であることが好ましく、有する反応性官能基と結合形成性部位の量によっては、上述の最終的な反応状態に達しないことが好ましい場合もある。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形前においては、このように多相形態構造が存在しないものであっても存在するものであってもよいが、成形時に、少なくとも加熱により、通常上記反応性官能基と上記結合形成性部位とが反応するので、得られる成形体においては、多相形態構造が存在しないものとなる。
【0090】
このように、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)は、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と結合を形成したものであってもよい。上記含フッ素エチレン性重合体(Y)は、また、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と反応したものであってもよい。
【0091】
上記多相形態構造が存在しないことにより、成形体は、非相溶型で多相形態の存在する樹脂組成物よりも機械的強度が優れており、これを接着性材料として用いることにより、より接着力の優れた積層体を得ることができ、また、耐薬品透過性の面でも非相溶型の樹脂組成物より優れている。
【0092】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形体を製造するために用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂組成物からなる層を含んだ多層構造を有する成形体と、上記熱可塑性樹脂組成物のみからなる単層構造を有する成形体の何れの成形体の成形にも好ましく用いられる。
【0093】
上記多層構造を有する成形体としては、例えば、含フッ素エチレン性重合体(Y)と接着性を有する層(a)、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる層(b)、及び、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と接着性を有する層(c)が積層されてなる成形体等が挙げられる。
【0094】
上記層(a)をなす樹脂は、含フッ素エチレン性重合体(Y)と強固な接着性を有するものであれば特に限定されず、層(c)をなす樹脂は、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と強固な接着性を有するものであれば特に決定されないが、余分な官能基や添加剤等の混入を回避し得る点から、上記層(a)をなす樹脂は、含フッ素エチレン性重合体(Y)と同種の樹脂からなり相溶的に接着するものが好ましく、上記層(c)をなす樹脂は、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と同種の樹脂からなり相溶的に接着するものが好ましい。
このような多層構造を有する成形体としては、例えば後述の積層樹脂成形体等が挙げられ、この積層樹脂成形体は、本発明の一つである。
【0095】
本発明の積層樹脂成形体は、フッ素含有エチレン性ポリマーからなる層(A)、中間の層(B)、及び、熱可塑性非フッ素樹脂からなる層(C)がこの順に積層されてなる積層樹脂成形体であって、上記層(B)は、上記熱可塑性樹脂組成物からなるものであることを特徴とするものである。
【0096】
本明細書において、上記「フッ素含有エチレン性ポリマー」とは、主鎖をなす炭素原子に結合するフッ素原子を有するエチレン性ポリマーを意味する。上記フッ素含有エチレン性ポリマーに属するポリマーは、上記含フッ素エチレン性重合体(Y)に属する重合体と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
本明細書において、上記「熱可塑性非フッ素樹脂」とは、分子内にフッ素原子を有しない熱可塑性樹脂を意味する。上記熱可塑性非フッ素樹脂に属する樹脂は、上記非フッ素熱可塑性樹脂(Z)に属する樹脂と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0097】
上記積層樹脂成形体において、上記熱可塑性樹脂組成物は、含フッ素エチレン性重合体(Y)及び非フッ素熱可塑性樹脂(Z)の2種類の樹脂からなるので、含フッ素エチレン性重合体(Y)と接着性を有する上記層(A)を強固に接着することができるとともに、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と接着性を有する上記層(C)を強固に接着させることができる。
【0098】
フッ素含有エチレン性ポリマーは、含フッ素エチレン性重合体(Y)と強固な接着性を有するものであれば特に限定されず、熱可塑性非フッ素樹脂は、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と強固な接着性を有するものであれば特に限定されない。余分な官能基や添加剤等の混入を回避し得る点から、フッ素含有エチレン性ポリマーは、含フッ素エチレン性重合体(Y)と同種のポリマーであり相溶的に接着するものが好ましく、熱可塑性非フッ素樹脂は、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と同種の樹脂であり相溶的に接着するものが好ましい。
【0099】
更に、フッ素含有エチレン性ポリマーと含フッ素エチレン性重合体(Y)とが同種のポリマーであり、熱可塑性非フッ素樹脂と非フッ素熱可塑性樹脂(Z)とが同種の樹脂である場合、本発明の積層樹脂成形体が自動車燃料や薬液、飲料のためのチューブ、ホース、タンク、ボトルに用いられるときには、一般的にフッ素樹脂の持つ耐熱性、耐油・耐薬品性、薬液低透過性等の特性を活かす点から、層(A)が内層になることが好ましい。また、多層積層体が上記のような用途に用いられる場合、一般的なフッ素樹脂の欠点を補うために、高強度、高靱性を有するポリアミド系樹脂を非フッ素熱可塑性樹脂(Z)及び熱可塑性非フッ素樹脂として用いることが好ましい。この場合、層(C)が外層となる。
【0100】
なお、本発明における積層樹脂成形体中の上記層(A)及び/又は上記層(C)は、各種の有機又は無機の添加剤を有していても良く、導電性を付与するカーボンや金属粉等、積層体の耐摩耗性を向上させる無機フィラー、また、可塑剤や耐熱材、インパクトモディファイヤー等の用途の有機材料を有していても良い。
【0101】
上記層(A)を形成するフッ素含有エチレン性ポリマーは、先に熱可塑性組成物の材料として説明した含フッ素エチレン性重合体(Y)から適宜選択することができるが、反応性官能基を有する必要はない。フッ素含有エチレン性ポリマーとしては、耐薬品性、耐燃料透過性、耐低温衝撃性に優れている点から、テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体〔ETFE系共重合体〕が好ましい。本発明において、上記「ETFE系共重合体」とは、テトラフルオロエチレン及びエチレンを含む単量体成分から得られる共重合体を意味する。上記形成するフッ素含有エチレン性ポリマーがETFE系共重合体である場合、含フッ素エチレン性重合体(Y)の好ましいものとして上述した共重合体(I)と同様のものを用いてもよいが、反応性官能基を有する必要はない。
【0102】
上記層(A)は、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素繊維、金属酸化物、カーボン等の種々の充填剤を配合したものであってもよい。上記層(A)は、また、充填剤以外に、顔料、紫外線吸収剤、その他任意の添加剤を混合したものであってもよい。上記層(A)は、添加剤以外に、また、他のフッ素樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂、合成ゴム等を配合したものであってもよく、これらを配合することにより、機械的特性の改善、耐候性の改善、意匠性の付与、静電防止、成形性改善等が可能となる。上記層(A)は、特に、カーボンブラック、アセチレンブラック等の導電性材料を配合すると、燃料配管用チューブやホース等の静電荷蓄積防止に有利であるので好ましい。
【0103】
上記層(A)は、上述の含フッ素含有エチレン性ポリマー及び必要に応じて配合されるその他の成分からなり、必要に応じて、層(A)は、導電性のものである。なお、本発明でいう「導電性」とは、例えば、ガソリンのような引火性の流体が樹脂のような絶縁体と連続的に接触した場合に静電荷が蓄積して引火する可能性があるのであるが、この静電荷が蓄積しない程度の電気特性を有することを意味し、例えば、SAEJ2260では表面抵抗が106Ω/□以下であると定められている。上記層(A)を導電性のものとする場合の上記導電性材料の配合割合は、上記層(A)を構成すべき組成物中20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下がより好ましい。下限は、上記した表面抵抗値を付与することができる量であればよい。
【0104】
上記層(B)における熱可塑性樹脂組成物としては、上記層(A)との接着性と上記層(C)との接着性に優れる点から、含フッ素エチレン性重合体(Y)が上述の共重合体(IV)であることが好ましい。
【0105】
上記層(C)を形成する熱可塑性非フッ素樹脂としては、ポリアミド系樹脂が好ましい。ポリアミド系樹脂は、先に熱可塑性組成物の材料として説明したポリアミド系樹脂から適宜選択することができるが、この多層成形体を押出し成形やブロー成形によって成形する場合には、相対粘度で表される分子量が1.8以上であることが好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。1.8未満であると、これらの成形の際の成形性に劣り、得られた成形品の機械特性に劣る場合がある。一方、上限は、4.0以下であることが好ましい。4.0を超えると、樹脂の重合自体が困難であり、上述の成形の際の成形性も損なわれる場合がある。なお、上記相対粘度は、JIS K 6810に準じて測定される。
【0106】
上記熱可塑性非フッ素樹脂として用いるポリアミド系樹脂は、成形時の加熱により分解反応を起こして低分子量物が発生したり、ゲル化を引き起こしたりすることを抑制するために、また、酸化等による着色を抑制するために、末端アミノ基濃度が10〜60当量/106gのものであることが好ましい。
【0107】
上記熱可塑性非フッ素樹脂として用いるポリアミド系樹脂は、充分な分子量を有するものであるために、末端カルボキシル基濃度が80当量/106g以下のものであることが好ましい。
【0108】
上記ポリアミド系樹脂としては、本発明の積層樹脂成形体をチューブ、ホース成形体等のように強靱性が要求される用途に使用する場合にあっては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン6−ポリエステル共重合体、ナイロン6−ポリエーテル共重合体、ナイロン12−ポリエステル共重合体、及び/又は、ナイロン12−ポリエーテル共重合体であることが好ましく、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6−ポリエーテル共重合体、又は、ナイロン12−ポリエーテル共重合体であることがより好ましい。なかでも、ナイロン11及びナイロン12が更に好ましい。
【0109】
上記層(C)は、また更に、本発明の目的を損なわない範囲で、可塑剤や他の樹脂等を含んでいてもよい。上記可塑剤は、樹脂組成物を柔軟にし、特に樹脂積層体(例えば、チューブ又はホース)の低温機械特性を向上させることができる。また、他の樹脂を配合することで、例えば、樹脂積層体(例えば、チューブ又はホース)の耐衝撃性を向上させることができる。
【0110】
上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシレングリコール、グリセリン、β−ナフトール、ジベンジルフェノール、オクチルクレゾール、ビスフェノールA等のビスフェノール化合物、p−ヒドロキシ安息香酸オクチル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ペプチル、p−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ε−カプロラクトン、フェノール類のリン酸エステル化合物、N−メチルベンゼンスルホンアミド、N−エチルベンゼンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシルトルエンスルホンアミド等を挙げることができる。
【0111】
上記層(C)に配合し得る上記他の樹脂としては、相溶性に優れるものが好ましく、例えば、エステル及び/又はカルボン酸変性オレフィン樹脂、アクリル樹脂(特に、グルタルイミド基を有するアクリル樹脂)、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、ポリフェニレンオキサイド等を挙げることができる。
【0112】
上記層(C)は、更にまた、本発明の目的を損なわない範囲で、着色剤、各種添加剤等を含んでいてもよい。上記添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、強化剤(フィラー)等を挙げることができる。
【0113】
本発明の積層樹脂成形体は、上記層(A)としては、ETFE系共重合体からなるものが好ましく、上記層(B)としては、含フッ素エチレン性重合体(Y)が上述の共重合体(IV)である熱可塑性樹脂組成物からなるものが好ましく、上記層(C)としては、ポリアミド系樹脂からなるものが好ましい。
【0114】
本発明の積層樹脂成形体は、少なくとも、上記層(A)及び上記層(C)を、上記層(B)を接着層として積層させて形成される。これには、上記層(A)、上記層(C)及び上記層(B)を含む構成層を、逐次又は共押出し成形する製造方法、成形体の加熱圧着による製造方法等を適用することができ、上記層(A)、上記層(C)及び上記層(B)とを含む構成層の間の良好な接着状態が形成される。上記製造は、通常用いられる熱可塑性樹脂の成形機、例えば、射出成形機、圧縮成形機、ブロー成形機、押出し成形機等を使用することができ、シート状、チューブ状その他各種形状に製造可能である。多層チューブ、多層ホース、多層タンク等の多層成形品とする場合には、多層共押出し成形、多層ブロー成形、多層射出成形等の成形方法を適用することができる。このうち、チューブ、ホース、シート等の成形には、押出し成形、特に、多層共押出し成形が好ましく、円筒形状等の中空状物品の成形にはブロー成形を好適に使用できる。また、成形されたシートを他の基材と積層してライニング体を製造することもできる。
【0115】
成形条件としては、カルボニル基、特にカルボニルジオキシ基の種類、含フッ素エチレン性重合体(Y)の種類、フッ素含有エチレン性ポリマーの種類等によって異なるが、押出し又はブロー成形にあっては、シリンダー温度が200℃以上になるよう加熱することが適当である。加熱温度の上限は、含フッ素エチレン性重合体(Y)、フッ素含有エチレン性ポリマー、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)及び熱可塑性非フッ素樹脂の熱分解による発泡等の悪影響を抑えられる温度以下にすることが好ましく、具体的には、400℃以下、特に好ましくは350℃以下である。
【0116】
また、積層樹脂成形体が複雑な形状のものである場合や、成形後に加熱曲げ加工を施す場合には、得られる積層樹脂成形体の残留歪みを消すために、上述の積層樹脂成形体を溶融押出しし、形成された上記積層樹脂成形体を、上記積層樹脂成形体を構成する樹脂の融点のうち最も低い融点未満の温度で0.01〜10時間熱処理して目的の積層樹脂成形体とすることも可能である。この製造方法を採用することにより、残留歪みが解消し、また、層界面付近の未反応物が反応すると考えられ、これらが相まって積層樹脂成形体の接着強度を一層上昇させることができる。この熱処理は、60℃以上、更には80℃以上で行うことが好ましい。
【0117】
本発明においては、ポリアミド系樹脂からなる層(A)と上記層(B)との層間初期接着力は、20N/cm以上とすることができる。
【0118】
このとき、上記層(A)、上記層(B)及び上記層(C)は、加熱により多少とも官能基の分解や反応が生じることがあるが、このような溶融押出し成形された積層樹脂成形体もまた本発明の積層樹脂成形体である。
【0119】
本発明の積層樹脂成形体は、上記層(B)が厚さ0.5mm未満のものであってよい。耐燃料透過性が層(B)より良いものを上記層(A)又は上記層(C)とする場合には、上記層(B)を薄くすることもできる。その範囲は、層(B)の厚みが上記層(A)の厚み及び上記層(C)の厚みの合計の1.5倍未満であってよい。上記層(B)は、従って、接着層を薄くすることができ、経済的にも有利である。
【0120】
本発明の積層樹脂成形体は、更に、フッ素樹脂からなる層(D)が、層(B)が積層している面と反対側の層(A)の面に積層しているものであってもよい。
上記フッ素樹脂からなる層(D)は、必要に応じて、導電性を付与するために導電性材料を含有するものであってもよい。この場合、導電性材料の配合量は、導電性を付与することができる量であればよく、上述の配合割合であってよい。
【0121】
上記フッ素樹脂としては特に限定されず、溶融成形可能なフッ素樹脂であれば使用可能であり、例えば、テトラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体〔ETFE〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体〔ECTFE〕等を挙げることができる。また、上述の含フッ素エチレン性重合体(Y)であってもよい。これらのうち、燃料低透過性を維持しながら柔軟性、低温耐衝撃性、耐熱性等に優れ、しかもポリアミド系樹脂との同時多層押出しにより燃料配管用チューブ、ホース等を作製するのに好適であるのは、メルトフローレートが230℃〜350℃において0.5〜100g/10分であるものである。
上記層(A)におけるフッ素含有エチレン性ポリマーと、上記層(D)におけるフッ素樹脂は、同一であっても異なっていてもよいが、接着性の観点からは同一種であることが好ましい。
【0122】
本発明においては、上記層(A)であって導電性材料を含まないものと、更に、導電性材料を含有する層(D)とを積層してもよい。この場合、導電性材料の配合量は、導電性を付与することができる量であればよく、上述の配合割合であってよい。この場合、上記層(D)を構成するフッ素樹脂としては上述のフッ素樹脂を使用することができ、上記層(C)と同一又は異なる種類のフッ素樹脂であってよい。
【0123】
本発明の積層樹脂成形体は、更に、保護のための層(E)が、層(B)が積層している面と反対側の層(C)の面に積層しているものであり、上記層(E)は、熱可塑性樹脂又はゴムからなるものであってもよい。
上記層(E)は、上記層(A)、上記層(B)及び上記層(C)並びに所望により設けられる上記層(D)からなる積層体と同時に共押出しされるか、又は、別工程で被覆して形成される。
【0124】
本発明の多層成形品は、上記積層樹脂成形体からなるものであることを特徴とするものである。上記多層成形品としては、例えば、
チューブ、ホース類:自動車燃料配管用チューブ又はホース、自動車のラジエーターホース、ブレーキホース、エアコンホース、電線被覆材、光ファイバー被覆材等
フィルム、シート類:ダイヤフラムポンプのダイヤフラムや各種パッキン等の高度の耐薬品性が要求される摺動部材、農業用フィルム、ライニング、耐候性カバー、建築や家電分野等で使用されるラミネート鋼板等
タンク類:自動車のラジエータータンク、薬液ボトル、薬液タンク、バッグ、薬品容器、ガソリンタンク等
その他:キャブレターのフランジガスケット、燃料ポンプのOリング等の各種自動車用シール、化学薬品用ポンプや流量計のシール等の化学関係シール、油圧機器のシール等の各種機械関係シール等のほか、ベローズ、スペーサー類、ローラー、電子・電気部品等であってよい。
【0125】
なかでも、好ましい態様としては、例えば、
(i)層(C)を外層とし、上記熱可塑性樹脂組成物からなる層を層(B)とし、導電性材料を含有していてもよい層(A)を内層とする少なくとも3層構造のチューブ又はホース、特に自動車燃料配管用若しくは薬液用チューブ又はホース
(ii)層(C)を外層とし、上記熱可塑性樹脂組成物からなる層を層(B)とし、層(A)を内層とし、導電性材料を含んでいてもよい層(D)を最内層とする少なくとも4層構造のチューブ又はホース、特に自動車燃料配管用若しくは薬液用チューブ又はホースが挙げられる。
【0126】
なお、上記(i)及び(ii)の態様においては、耐燃料性の観点から、燃料と接する層は、特に導電性材料を配合する場合には、そのMFRが低く抑えられていることが好ましく、例えば、297℃で測定した場合100g/10分以下、好ましくは40g/10分以下であってよく、265℃で測定した場合50g/10分以下、好ましくは20g/10分以下であってよい。
【0127】
上記多層成形品は、フィルム、ホース、チューブ、ボトル又はタンクであることが好ましく、自動車燃料配管用チューブ又は自動車燃料配管用ホースであることがより好ましい。
【0128】
また、上記の態様において、取り付け性、衝撃吸収性等を目的として層(C)のみを、又は、全ての層を、蛇腹状若しくは渦巻き状等に加工してもよい。更に、例えば、コネクター等の必要な部品を付加したり、曲げ加工によりL字、U字の形状としたりできる。
【0129】
本発明の含フッ素樹脂成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物からなるものである。本発明の含フッ素樹脂成形品は、単独で用いることができる。この場合、上記含フッ素樹脂成形品は、フィルム、ホース、チューブ、ボトル又はタンクと好ましく用いられ、自動車燃料配管用チューブ又は自動車燃料配管用ホースとしてより好ましく用いられる。
【0130】
本発明の含フッ素樹脂成形品は、また、他の層と積層させて用いてよい。この場合、例えば本発明の積層樹脂成形体や本発明の多層成形体として上述した積層体と同様であってもよいし、異なる態様の積層体であってもよい。本発明の含フッ素樹脂成形品を用いた積層体としては、例えば、次のようなものが挙げられ、例えばチューブとして好ましく用いることができる。
【0131】
ポリアミドを用いた積層チューブとして好ましい具体例としては、
i)(B1)本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層
(C1)ポリアミド系樹脂からなる層
からなる積層体がチューブ状に成形されてなる積層チューブであって(B1)が内層を形成していることを特緻とする積層チューブ;
ii)(B1)本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層
(A1)ETFEからなる層
(C1)ポリアミド系樹脂からなる層
からなる積層体がチューブ状に成形されてなる積層チューブであって、ETFEからなる層(A1)が最内層を形成していることを特徴とする積層チューブ;
【0132】
iii)(B1)本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層
(C1)ポリアミド系樹脂からなる層
からなる積層体がチューブ状に成形されてなる積層チューブであって(B1)が内層を形成していることを特徴とする積層チューブ;
iv)(B1)本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層
(A2)PVdF又はVdF系共重合体からなる層
(C1)ポリアミド系樹脂からなる層
からなる積層体がチューブ状に成形されてなる積層チューブであって、PVdF又はVdF系共重合体からなる層(A2)が最内層を形成していることを特徴とする積層チューブ;
【0133】
v)(C1)ポリアミド系樹脂からなる層
(B1)本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層
(C1)ポリアミド系樹脂からなる層
からなる積層体がチュ−ブ状に成形されてなる積層チューブであって(B1)がポリアミド系樹脂(C1)2層の中間層に位置することを特徴とする積層チューブ等があげられる。
【0134】
これらの積層体の各層の目的の特性を損なわない範囲で上述と同様な充填剤、補強剤、添加剤を添加できる。特に燃料配管や薬液チューブに用いる場合、内層の含フッ素重合体の層においては導電性を付与する充填剤を添加することが好ましい。
本発明の含フッ素樹脂成形品は種々の後加工により必要な形状にすることができる。例えばコネクター等の必要な部品を付け加えたり、曲げ加工により、L字、U字の形状としたり、コルグレト管の形状としたりできる。
【0135】
さらに本発明の含フッ素樹脂成形品を用いた積層体の好ましい具体例としては、
(B1)本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層と
(D1)ポリエチレン類からなる層
からなる積層体である。ポリエチレン類(D1)は上述のカルボニルジオキシ基やハロホルミル基と反応性又は親和性を有する官能基を有していることが好ましく、具体的には、エポキシ変性ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体等が好ましい例示である。これらの積層体は、上述と同様、種々の形状に成形でき、なかでも、タンクの形状にした場合、例えば、近年樹脂化が進んでいる、自動車用ガソリンタンクとして利用でき、燃料透過性を改善できたり耐熱性を付与できたりする。
【0136】
具体的には、
i)(B1)本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層
(D1)ポリエチレン類からなる層
からなり、(B1)が内層側に位置する積層体がタンク状に成形されてなるもの;
ii)(D1)ポリエチレン類からなる層
(B1)本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層
(D1)ポリエチレン類
からなり、(B1)、(D1)2層の間に位置する積層体がタンク状に成形されてなるもの等が好ましくあげられる。
【0137】
またさらに、本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層と、ポリエチレン類とからなる積層体を、ボトルの形状にした場合、例えば、含フッ素エチレン性重合体(Y)の耐薬品性を利用して半導体用のボトルとして利用できる。
具体例には
i)(B1)本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層
(D1)ポリエチレン類からなる層
からなり、(B1)が内層側に位置する積層体がボトル状に成形されてなるものが好ましい。
【0138】
本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層を用いた積層体の製法は、含フッ素接着剤の種類や形態、有機材料の種類や形状によって適宜選択される。
たとえば、上述の熱可塑性樹脂組成物を用いて本発明の含フッ素樹脂成形品からなるフィルムを作製し、有機材料と重ね合わせ上記したような加熱による熱活性化によって積層する方法、また、有機材料の上に、熱可塑性樹脂組成物を水位又は有機溶剤分散体、有機溶剤可溶体、粉体等の塗料の形態とし、塗布し、加熱等による熱活性化させる方法、インサート成形法、または上述の熱可塑性樹脂組成物と溶融成形可能な熱可塑性ポリマーとを積層する場合は、共押出法等が採用できる。
これらの方法により本発明の含フッ素樹脂成形品からなる層を用いた積層体はホース、パイプ、チューブ、シート、シール、ガスケット、パッキング、フィルム、タンク、ローラー、ボトル、容器等の形状に成形できる。
【0139】
こられの積層体の製法としては、カルボニル基含有基を有する熱可塑性樹脂組成物と熱可塑性フッ素樹脂とを成形温度、つまり成形時の樹脂温度がそれぞれの結晶融点又はガラス転移点を越える温度で同時押出しにより成形することを特徴とするものである。つまり、同時溶融押出しによって、熱可塑性樹脂組成物と熱可塑性フッ素樹脂の接着と、目的の形状への成形を同時に、連続的に達成できるため生産性に優れ、かつ接着性能も良好となる点で好ましい。
【0140】
なお、上述の各種積層体は、その最外層として保護、防汚、絶縁性、衝撃吸収性等を目的としたジャケット層を有していてもよい。上記ジャケット層は、例えば、樹脂、天然又は合成ゴム等を用いて、樹脂積層体と同時に共押出しされるか、又は、別工程で被覆して形成される。また、金属等で補強することも可能である。
【0141】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下において、各種パラメーターの測定は以下のとおりに行った。
(1)含フッ素エチレン性重合体の組成の測定
19F−NMR分析により測定した。
【0142】
(2)融点(Tm)の測定
セイコー型DSC装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度(℃)を融点(Tm)とした。
【0143】
(3)MFR(Melt Flow Rate)の測定
東洋精機製作所社製メルトインデクサーを用い、各種温度、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間として10分間に流出するポリマーの重量(g)を測定した。
【0144】
(4)カルボニルジオキシ基の個数の測定
得られた含フッ素エチレン性重合体の白色粉末又は溶融押出しペレットの切断片を室温にて圧縮成形し、厚さ0.05〜0.2mmのフィルムを作成した。このフィルムの赤外吸収スペクトル分析によってカルボニルジオキシ基〔−OC(=O)O−〕のカルボニル基が帰属するピークが1809cm−1(νC=O)の吸収波長に現れ、そのνC=Oピークの吸光度を測定した。下記式(i)によって主鎖炭素数106個当たりのカルボニルジオキシ基の個数(N)を算出した。
N=500AW/εdf ・・・(i)
A:カルボニルジオキシ基〔−OC(=O)O−〕中のνC=Oピークの吸光度
ε:カルボニルジオキシ基〔−OC(=O)O−〕中のνC=Oピークのモル吸光度係数[単位:l・ cm−1・mol−1]。
モデル化合物からε=170とした。
W:モノマー組成から計算される単量体の平均分子量
d:フィルムの密度〔g/cm3〕
f:フィルムの厚さ〔mm〕
なお、赤外吸収スペクトル分析は、Perkin−Elmer FTIRスペクトロメーター1760X(パーキンエルマー社製)を用いて40回スキャンして行った。得られたIRスペクトルをPerkin−Elmer Spectrum for Windows Ver. 1.44Cにて自動でベースラインを判定させ1809cm−1のピークの吸光度を測定した。また、フィルムの厚さはマイクロメーターにて測定した。
【0145】
(5)フルオロホルミル基の個数の測定
得られた含フッ素エチレン性重合体の主鎖炭素数106個当たりのフルオロホルミル基の個数(N)を、上述のカルボニルジオキシ基の個数の測定と同様に、赤外吸収スペクトル分析によって測定、算出した。
【0146】
(6)多層チューブの接着強度の測定
チューブから1cm幅のテストピースを切り取り、サンプルの一部を剥離した後、外層と内層とチャックに固定しテンシロン万能試験機にて、25mm/分の速度で180°剥離試験を行い、伸び量−引っ張り強度グラフにおける極大5点平均を層間の接着強度として求めた。
【0147】
(7)燃料透過速度の測定
約20mlの容積を有するSUS製容器に試験燃料(CM15;トルエン:イソオクタン:メタノール=32.5:32.5:15[容積比])を満たし、開放された片側をサンプルシートで密閉したものの、60℃での重量の変化から燃料透過速度を測定した。
【0148】
合成例1 カルボニルジオキシ基含有含フッ素エチレン性重合体の合成
オートクレーブに蒸留水380Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、1−フルオロ−1,1−ジクロロエタン75kg、ヘキサフルオロプロピレン155kg、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)0.5kgを仕込み、系内を35℃、攪拌速度200rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレンを0.7MPaまで圧入し、更に引き続いてエチレンを1.0MPaまで圧入し、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート2.4kgを投入して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン=40.5/44.5/15.0モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.0MPaに保った。そして、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)についても合計量1.5kgを連続して仕込み、20時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂(1)の粉末200kgを得た。フッ素樹脂(1)の物性を表1に示す。
【0149】
合成例2 カルボニルジオキシ基含有ETFE系共重合体の合成
オートクレーブに蒸留水380Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、1−フルオロ−1,1−ジクロロエタン325kg、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)0.9kgを仕込み、系内を35℃、攪拌速度200rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレンを0.86MPaまで圧入し、更に引き続いてエチレンを0.90MPaまで圧入し、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート3.5kgを投入して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン=64.8/35.2モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を0.90MPaに保った。そして、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)についても合計量9.1kgを連続して仕込み、24時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥してエチレン/テトラフルオロエチレン〔ETFE〕系共重合体の粉末200kgを得た。このETFE系共重合体をフッ素樹脂(2)とし、物性を表1に示す。
【0150】
合成例3 フルオロホルミル基含有ETFE系共重合体の合成
フッ素樹脂(2)の粉末を単軸押出機(田辺プラスチック機械社製、VS50−24)(L/D=24)(スクリュー直径:50mm)に投入し、シリンダー温度300〜320℃、ダイス付近の樹脂温320℃にて押出しを行い、フッ素樹脂(3)のペレットを得た。フッ素樹脂(3)の物性を表1に示す。
【0151】
合成例4 反応性官能基を有しない含フッ素エチレン性重合体の合成
フッ素樹脂(1)の粉末95kg、純水100Lを500Lステンレス製のオートクレーブに入れ、28%アンモニア水7kgを加え、撹拌を行いながら80℃で5時間加熱した。内容物の粉末を取り出し、水洗、乾燥を行い、フッ素樹脂(4)の粉末93kgを得た。フッ素樹脂(4)の物性を表1に示す。
【0152】
合成例5 反応性官能基を有しないETFE系共重合体の合成
フッ素樹脂(2)の粉末を用い、合成例4と同様の手順でフッ素樹脂(5)の粉末を得た。フッ素樹脂(5)の物性を表1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
加工例1 カルボニルジオキシ基含有含フッ素エチレン性重合体とポリアミドとの溶融混練り
260℃に設定した東洋精機製作所社製ラボプラストミル・ミキサーに、フッ素樹脂(1)32.4g、市販のポリアミド12(宇部興産株式会社製、商品名:UBE3030B)23.2gを投入し、10rpmで2分間の予備混練りの後、50rpmで8分間溶融混練りを行い、熱可塑性樹脂組成物(6)を得た。
【0155】
実施例1 熱可塑性樹脂組成物の電子顕微鏡像観察
熱可塑性樹脂組成物(6)を液体窒素で冷却し、マイクロトームにて切削してサンプルを作成し、加速電圧200kVにて透過型電子顕微鏡像を撮影した。得られた電子顕微鏡像を図1に示す。
【0156】
比較例1 反応性官能基を有しない含フッ素エチレン性重合体とポリアミドからなる樹脂組成物の電子顕微鏡像観察
フッ素樹脂(1)にかえてフッ素樹脂(4)を用いる他は、加工例1と同様にして、樹脂組成物(7)を得た後、この樹脂組成物(7)の透過型電子顕微鏡像を実施例1と同様にして撮影した。得られた電子顕微鏡像を図2に示す。
【0157】
実施例2 カルボニルジオキシ基含有含フッ素エチレン性重合体とポリアミドからなる熱可塑性樹脂組成物の引張試験
熱可塑性樹脂組成物(6)を細かく切断した後、260℃に予熱した100mmφの金型に入れ、260℃に設定したプレス機にセットし、5分間の更なる予熱の後、20kgf/cm2で20秒間圧縮成形を行い、厚さ1mmのシートを得た。5号試験片打抜刃を用い、得られたシートからダンベルを打抜き、テンシロン万能試験機にて、10mm/分の速度で引張り試験を行い、N数=10での引張破断点強度と引張破断点伸度とを求めた。結果を表2に示す。
【0158】
比較例2 反応性官能基を含有しない含フッ素エチレン性重合体とポリアミドからなる樹脂組成物の引張試験
熱可塑性樹脂組成物(6)にかえて樹脂組成物(7)を用いるほかは、実施例2と同様にして、シートを得た後、引張破断点強度と引張破断点伸度とを求めた。結果を表2に示す。
【0159】
【表2】
【0160】
表2から、本発明の熱可塑性樹脂組成物(6)を用いた実施例2では、含フッ素エチレン性重合体が反応性官能基を有しない比較例2と比べ、引張破断点強度、引張破断点伸度ともに高く、しかも標準偏差が小さいので、これらの高い強度は安定して得られることがわかった。
【0161】
参考例1 カルボニルジオキシ基含有ETFE系共重合体とポリアミドとからなる熱可塑性樹脂組成物のペレット作成
フッ素樹脂(2)の粉末を単軸押出機(田辺プラスチック機械社製、品番:VS50−24、L/D=24、スクリュー直径:50mm)に投入し、シリンダー温度210〜280℃、ダイス付近の樹脂温280℃にて押出しを行い、フッ素樹脂(2)のペレットを作成した。
このフッ素樹脂(2)のペレットと市販のポリアミド12(宇部興産株式会社製、商品名:UBE3030B )のペレットを重量比で7:3の割合で予め混合したものを、東洋精機製作所社製ラボプラストミル2軸押出機(スクリュー直径:25mm)に投入し、シリンダー温度200〜260℃、ダイス付近の樹脂温260℃にて押出しを行い、熱可塑性樹脂組成物(8)のペレットを作成した。
【0162】
参考例2 反応性官能基を有しないETFE系共重合体のペレット作成
フッ素樹脂(2)にかえてフッ素樹脂(5)を用いるほかは、参考例1と同様にして、樹脂組成物(9)のペレットを作成した。
【0163】
実施例3 多層チューブの作成
マルチマニホールドダイを装着した3種3層のチューブ押出し装置を用いて、チューブの外層が市販のポリアミド12(宇部興産株式会社製、商品名:UBE3035MI1)、中間層が熱可塑性樹脂組成物(8)、内層が市販のETFE(ダイキン工業製、商品名:ネオフロンETFE EP−610AS)からそれぞれなるように、外層、中間層及び内層用の押出し機にポリアミド12、熱可塑性樹脂組成物(8)及びEP−610ASとを供給して外径8mm、内径6mmのチューブを連続して成形した。成形条件及び得られたチューブの評価結果を表3に示した。剥離は、外層と中間層との界面での界面破壊として起こった。剥離強度(接着強度)は、33.5N/cmに達した。剥離して生じた剥離面の外観は、表面の荒れがなく、平滑であった。
【0164】
比較例3 多層チューブの作成
中間層として熱可塑性樹脂組成物(8)の代わりに樹脂組成物(9)を供給すること以外は実施例3と同様にして、チューブを連続して成形した。成形条件及び得られたチューブの評価結果を表3に示した。剥離は、中間層の凝集破壊として起こった。剥離強度(接着強度)は、24.5N/cmであった。剥離して生じた剥離面の外観は、表面が荒れていた。
【0165】
【表3】
【0166】
表3から、含フッ素エチレン性重合体が反応性官能基を有しない比較例3では、中間層の凝集破壊が起ったことから中間層の引張り強度は弱いものと考えられ、また、接着強度が弱かったのに対し、本発明の熱可塑性樹脂組成物(8)を用いた実施例3では、外層と中間層との界面で破壊したことから中間層内部の引張強度は強いものと考えられ、接着強度が高いことがわかった。
【0167】
実施例4 フルオロホルミル基含有ETFE系共重合体とポリアミドとからなる熱可塑性樹脂組成物より得たシートの燃料透過率測定
フッ素樹脂(1)にかえてフッ素樹脂(3)を用いるほかは加工例1と同様にして得た熱可塑性樹脂組成物(10)を細かく切断し、280℃に予熱した100mmφの金型に入れ、280℃に設定したプレス機にセットし、更に5分間予熱した後、37kgf/cm2で20秒間圧縮成形を行い、厚さ0.5mmのシートを得た。このシートを用い、燃料透過率を測定した。結果を表4に示す。
【0168】
比較例4 反応性官能基を有しないETFE系共重合体とポリアミドとからなる樹脂組成物より得たシートの燃料透過率測定
熱可塑性樹脂組成物(10)に代えて樹脂組成物(9)を用いるほかは、実施例4と同様にしてシートを作成し、燃料透過率を測定した。結果を表4に示す。
【0169】
【表4】
【0170】
表4から、含フッ素エチレン性重合体が反応性官能基を有しない比較例4では、耐燃料透過性能に劣っていたのに対し、本発明の熱可塑性樹脂組成物(10)を用いた実施例4では、耐燃料透過性能に優れていることがわかった。
【0171】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述の構成よりなるので、反応性官能基を有しない含フッ素エチレン性重合体を用いた樹脂組成物よりも、機械的強度に優れ、隣接するフッ素樹脂からなる層と熱可塑性樹脂からなる層とをより強く接着することができ、耐燃料透過性能にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1における透過型電子顕微鏡像である。
【図2】図2は、比較例1における透過型電子顕微鏡像である。
Claims (31)
- 含フッ素エチレン性重合体(Y)及び非フッ素熱可塑性樹脂(Z)からなる熱可塑性樹脂組成物であって、
前記含フッ素エチレン性重合体(Y)は、主鎖末端及び/又は側鎖末端に反応性官能基を有するものであり、
前記非フッ素熱可塑性樹脂(Z)は、結合形成性部位を有する非フッ素ポリマーからなるものであり、
前記結合形成性部位は、前記反応性官能基との結合形成性を有するものであり、
前記反応性官能基は、カルボニルジオキシ基及び/又はフルオロホルミル基であり、
前記非フッ素熱可塑性樹脂(Z)は、ポリアミド系樹脂であり、
前記ポリアミド系樹脂は、末端アミノ基濃度が10〜60当量/106gのものである
ことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 含フッ素エチレン性重合体(Y)は、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と結合を形成したものである請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 含フッ素エチレン性重合体(Y)は、非フッ素熱可塑性樹脂(Z)と反応したものである請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 多相形態構造を有しないものである請求項1、2又は3記載の熱可塑性樹脂組成物。
- カルボニルジオキシ基及び/又はフルオロホルミル基は、含フッ素エチレン性重合体(Y)の主鎖炭素数1×106個あたり3〜1000個である請求項1、2、3又は4記載の熱可塑性樹脂組成物。
- カルボニルジオキシ基及び/又はフルオロホルミル基は、パーオキサイドに由来するものである請求項5記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 含フッ素エチレン性重合体(Y)は、融点が120〜270℃であるものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 含フッ素エチレン性重合体(Y)は、テトラフルオロエチレン及びエチレンを含む単量体成分から得られるものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 含フッ素エチレン性重合体(Y)は、テトラフルオロエチレン、及び、下記一般式(1)
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は−CF3又は−ORf2を表す。Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物を含む単量体成分から得られるものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 含フッ素エチレン性重合体(Y)は、テトラフルオロエチレン19〜90モル%、エチレン9〜80モル%、及び、下記一般式(1)
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は−CF3又は−ORf2を表す。Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物1〜72モル%を含む単量体成分から得られるものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 含フッ素エチレン性重合体(Y)は、フッ化ビニリデン15〜60モル%、テトラフルオロエチレン35〜80モル%、及び、ヘキサフルオロプロピレン5〜30モル%を含む単量体成分から得られるものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ポリアミド系樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン6−ポリエステル共重合体、ナイロン6−ポリエーテル共重合体、ナイロン12−ポリエステル共重合体、及び/又は、ナイロン12−ポリエーテル共重合体である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ポリアミド系樹脂は、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6−ポリエーテル共重合体、又は、ナイロン12−ポリエーテル共重合体である請求項12記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ポリアミド系樹脂は、末端カルボキシル基濃度が80当量/106g以下のものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の熱可塑性樹脂組成物。
- フッ素含有エチレン性ポリマーからなる層(A)、中間の層(B)、及び、熱可塑性非フッ素樹脂からなる層(C)がこの順に積層されてなる積層樹脂成形体であって、前記層(B)は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14記載の熱可塑性樹脂組成物からなるものであることを特徴とする積層樹脂成形体。
- 層(A)は、導電性を有するものである請求項15記載の積層樹脂成形体。
- 層(A)は、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体からなるものであり、層(C)は、ポリアミド系樹脂からなるものである請求項15又は16記載の積層樹脂成形体。
- 層(C)におけるポリアミド系樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン6−ポリエステル共重合体、ナイロン6−ポリエーテル共重合体、ナイロン12−ポリエステル共重合体、及び/又は、ナイロン12−ポリエーテル共重合体である請求項17記載の積層樹脂成形体。
- 層(C)におけるポリアミド系樹脂は、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6−ポリエーテル共重合体、又は、ナイロン12−ポリエーテル共重合体である請求項17記載の積層樹脂成形体。
- 層(C)におけるポリアミド系樹脂は、末端アミノ基濃度が10〜60当量/106gのものである請求項17、18又は19記載の積層樹脂成形体。
- 層(C)におけるポリアミド系樹脂は、末端カルボキシル基濃度が80当量/106g以下のものである請求項17、18、19又は20記載の積層樹脂成形体。
- 熱可塑性樹脂組成物は、請求項9記載のものである請求項15、16、17、18、19、20又は21記載の積層樹脂成形体。
- 更に、フッ素樹脂からなる層(D)が、層(B)が積層している面と反対側の層(A)の面に積層しているものである請求項15、16、17、18、19、20、21又は22記載の積層樹脂成形体。
- 層(D)は、導電性材料を含有するものである請求項23記載の積層樹脂成形体。
- 更に、保護のための層(E)が、層(B)が積層している面と反対側の層(C)の面に積層しているものであり、前記層(E)は、熱可塑性樹脂又はゴムからなるものである請求項15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24記載の積層樹脂成形体。
- 請求項15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25記載の積層樹脂成形体からなるものであることを特徴とする多層成形品。
- フィルム、ホース、チューブ、ボトル又はタンクである請求項26記載の多層成形品。
- 自動車燃料配管用チューブ又は自動車燃料配管用ホースである請求項27記載の多層成形品。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする含フッ素樹脂成形品。
- フィルム、ホース、チューブ、ボトル又はタンクである請求項29記載の含フッ素樹脂成形品。
- 自動車燃料配管用チューブ又は自動車燃料配管用ホースである請求項30記載の含フッ素樹脂成形品。
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