図1は、本発明が適用される車両10(図4参照)を構成する変速機としての変速機構12を説明する骨子図である。図1において、変速機構12は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスル(T/A)ケース14(以下、ケース14という)内において、走行用の駆動力源として機能する例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である車両用エンジンとしてのエンジン16側から順番に、そのエンジン16の出力軸(例えばクランク軸17)に作動的に連結されてエンジン16からのトルク変動等による脈動を吸収するダンパー18、そのダンパー18を介してエンジン16によって回転駆動させられる入力軸20、第1電動機M1、動力分配機構として機能する遊星歯車装置22、及び第2電動機M2を備えている。
この変速機構12は、例えば車両10において横置きされるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、エンジン16の動力を変速機構12の出力回転部材としての出力歯車24から、その出力歯車24と噛み合ってカウンタギヤ対26の一方を構成するカウンタドリブンギヤ25、ファイナルギヤ対28、差動歯車装置(終減速機)30、及び一対の車軸32等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する(図4参照)。このように、変速機構12、カウンタギヤ対26、ファイナルギヤ対28、差動歯車装置(終減速機)30等により動力伝達装置が構成される。
入力軸20は、両端がボールベアリング36及び38によって回転可能に支持されており、一端がダンパー18を介してエンジン16に連結されることでエンジン16により回転駆動させられる。また、他端には潤滑油供給装置としてのオイルポンプ40が連結されており入力軸20が回転駆動されることによりオイルポンプ40が回転駆動させられて、例えば遊星歯車装置22、カウンタギヤ対26、ファイナルギヤ対28などの動力伝達装置の各部やボールベアリング36、38等に潤滑油が供給される。
遊星歯車装置22は、所定のギヤ比ρを有するシングルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS、ピニオンギヤP、そのピニオンギヤPを自転及び公転可能に支持するキャリヤCA、ピニオンギヤPを介してサンギヤSと噛み合うリングギヤRを回転要素(要素)として備えている。尚、サンギヤSの歯数をZS、リングギヤRの歯数をZRとすると、上記ギヤ比ρはZS/ZRである。そして、遊星歯車装置22は、入力軸20に伝達されたエンジン16の出力を機械的に分配する機械的機構であって、エンジン16の出力を第1電動機M1及び出力歯車24に分配する。つまり、この遊星歯車装置22においては、キャリヤCAは入力軸20すなわちエンジン16に連結され、サンギヤSは第1電動機M1に連結され、リングギヤRは出力歯車24に連結されている。これより、遊星歯車装置22の3要素であるサンギヤS、キャリヤCA、リングギヤRは、それぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン16の出力が第1電動機M1及び出力歯車24に分配されると共に、第1電動機M1に分配されたエンジン16の出力で第1電動機M1が発電され、その発電された電気エネルギが蓄電されたりその電気エネルギで第2電動機M2が回転駆動されるので、変速機構12は例えば無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン16の所定回転に拘わらず出力歯車24の回転が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
このように、変速機構12は、エンジン16に動力伝達可能に連結された差動機構としての遊星歯車装置22と遊星歯車装置22に動力伝達可能に連結された差動用電動機としての第1電動機M1とを有し第1電動機M1の運転状態が制御されることにより遊星歯車装置22の差動状態が制御される電気式差動部すなわち電気式無段変速機である。また、変速機構12には、出力歯車24と一体的に回転するように作動的に連結されて走行用の駆動力源として機能する第2電動機M2が備えられている。つまり、この第2電動機M2は、駆動輪34に動力伝達可能に連結された走行用電動機である。本実施例の第1電動機M1及び第2電動機M2は、発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。そして、このように構成された変速機構12では、遊星歯車装置22が変速機として機能させられると共にモータ走行が可能な動力伝達装置が構成される。
図2は、変速機構12において各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図2の共線図は、遊星歯車装置22のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸20に作動的に連結されたエンジン16の回転速度NEを示している。
また、変速機構12を構成する遊星歯車装置22の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応するサンギヤS、第1回転要素(第1要素)RE1に対応するキャリヤCA、第3回転要素(第3要素)RE3に対応するリングギヤRの相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は遊星歯車装置22のギヤ比ρに応じて定められている。詳細には、共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、変速機構12では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρに対応する間隔に設定される。
図2の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構12は、遊星歯車装置22の第1回転要素RE1(キャリヤCA)が入力軸20すなわちエンジン16に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(リングギヤR)RE3が出力歯車24及び第2電動機M2に連結されて、入力軸20の回転を出力歯車24を介して駆動輪34へ伝達するように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0によりサンギヤSの回転速度とリングギヤRの回転速度との関係が示される。例えば、変速機構12(遊星歯車装置22)においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示されるリングギヤRの回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、第1電動機M1の回転速度NM1を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示されるサンギヤSの回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y2との交点で示されるキャリヤCAの回転速度すなわちエンジン回転速度NEが上昇或いは下降させられる。
図3は、エンジン16の概略構成を説明する図であると共に、エンジン16の出力制御等を実行する為に車両10に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図3において、エンジン16は、公知の自動車用ガソリンエンジンであり、シリンダヘッドとピストン42との間に設けられた燃焼室44と、燃焼室44の吸気ポートに接続された吸気管46と、燃焼室44の排気ポートに接続された排気管48と、シリンダヘッドに設けられ燃焼室44に吸入される吸気(吸入空気)に燃料を噴射供給する燃料噴射装置50と、燃料噴射装置50により噴射供給された燃料と吸入された空気とから構成される燃焼室44内の混合気に点火する点火装置52とを備えている。また、吸気管46内には、その上流部分に電子スロットル弁54が設けられており、その電子スロットル弁54はスロットルアクチュエータ56により開閉作動させられる。
また、車両10には、排気ガスEXの一部をエンジン16の排気系(すなわち排気管48)から取り出して、再びエンジン16の吸気系(すなわち吸気管46)に再循環させて戻す排気再循環装置58と、燃料蒸気を一時的に蓄え、エンジン16の運転状態に応じてその燃料蒸気をエンジン16の吸気系に吸い込ませるパージを行う燃料蒸気処理装置60とが備えられている。
排気再循環装置58は、例えば吸気管46と排気管48とを連通するEGR管62と、そのEGR管62の間部分に設けられ排気管48から吸気管46へ再循環する排気ガスEXの流通と遮断とを制御するEGR制御弁64とを備えている。EGR制御弁64は、例えばアクチュエータ等により電気的に開閉制御される電子制御バルブである。
このように構成された排気再循環装置58において、EGR制御弁64が開弁させられると、EGR管62内が連通され、吸気管46の負圧Pnegaにより排気管48から吸気管46へと排気ガスEXが再循環される。一方、EGR制御弁64が閉弁させられると、EGR管62内の連通が遮断され、排気ガスEXが吸気管46へ再循環されない。本実施例では、排気ガスEXが吸気管46へ再循環される状態をEGRオン(EGRON)状態と言い、排気ガスEXが吸気管46へ再循環されない状態をEGRオフ(EGROFF)状態と言う。尚、図3には、排気管48から吸気管46へ再循環する排気ガスEXを冷却する冷却装置が図示されていないが、排気再循環装置58はその冷却装置を備えていても良い。
このエンジン16では、吸気管46から燃焼室44に吸入される吸入空気に燃料噴射装置50から燃料が噴射供給されて混合気が形成され、燃焼室44内でその混合気が点火装置52により点火されて燃焼する。これにより、エンジン16は駆動され、燃焼後の上記混合気は排気ガスEXとして排気管48内へと送り出される。そして、排気ガスEXのうちEGR制御弁64の開弁により吸気管46へ再循環させられた排気ガスEXが、次のサイクルで用いられる吸気管46内の吸入空気に加えられる。上記燃焼室44に吸入される混合気の空燃比は、例えば、一定の範囲内で車両10の運転状態等に応じて制御される。
燃料蒸気処理装置60は、例えば燃料タンク66などの燃料系から蒸発する燃料蒸気(蒸発燃料、ベーパ)Vfを一時的に蓄えるキャニスタ68と、燃料タンク66とキャニスタ68とを連通するベーパ導管70と、キャニスタ68と吸気管46とを連通するパージ配管72と、そのパージ配管72の間部分に設けられキャニスタ68から吸気管46へ放出される燃料蒸気Vfの流通と遮断とを制御するパージ制御弁74とを備えている。キャニスタ68は、燃料蒸気Vfを吸着し且つ空気を流すと再び燃料蒸気Vfを離脱させる活性炭76を内蔵し、その活性炭76の両側にそれぞれ燃料蒸気室78と、大気室80とを備えている。燃料蒸気室78は、一方ではベーパ導管70を介して燃料タンク66に連結され、他方ではパージ配管72(及びパージ制御弁74)を介して吸気管46に連結されている。パージ制御弁74は、例えばアクチュエータ等により電気的に開閉制御される電子制御バルブである。
このように構成された燃料蒸気処理装置60において、例えば燃料タンク66内で発生した燃料蒸気Vfは、ベーパ導管70を介してキャニスタ68内に送り込まれて活性炭76に吸着される。そして、例えばエンジン運転時にパージ制御弁74が開弁させられると、パージ配管72内が連通され、空気が大気室80から活性炭76を通ってパージ配管72内に送り込まれる。この際、活性炭76に吸着されている燃料蒸気Vfは、活性炭76を通過する空気によりその活性炭76から離脱させられて、パージ配管72を介して吸気管46に放出される(吸い込まれる)、すなわちパージされる。一方、パージ制御弁74が閉弁させられると、パージ配管72内の連通が遮断され、燃料蒸気Vfが吸気管46へパージされない。本実施例では、燃料蒸気Vfが吸気管46へパージされる状態をパージオン(パージ)状態と言い、燃料蒸気Vfが吸気管46へパージされない状態をパージオフ(パージOFF)状態と言う。
更に、車両10には、例えばエンジン16の出力制御などの為の車両用エンジンの出力制御装置を含む電子制御装置100が備えられている。電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置100は、エンジン16、第1電動機M1、第2電動機M2などに関するハイブリッド駆動制御等の車両制御を実行するようになっており、必要に応じてエンジン16の出力制御用や変速機構12の変速制御用等に分けて構成される。
電子制御装置100には、例えば吸気管46の電子スロットル弁54よりも上流側に設けられたエアフローメータ82により検出された吸入空気量Qを表す信号、スロットル弁開度センサ84により検出された電子スロットル弁54の開度すなわちスロットル弁開度θTHを表す信号、吸気管46に設けられた吸気圧センサ86により検出された吸気管46内の圧力すなわち負圧Pnegaを表す信号、排気管48に設けられた空燃比センサ87により検出された排気ガスEX中の空燃比A/Fの状態を表す信号、水温センサ88により検出されたエンジン16の冷却水温TEMPwを表す信号、エンジン回転速度センサ89により検出されたエンジン16の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、アクセル開度センサ90により検出された車両10に対する運転者(ユーザ)の加速要求量としてのアクセルペダル92の操作量であるアクセル操作量としてのアクセル開度Accを表す信号、車速センサ94により検出された出力歯車24の回転速度(以下、出力回転速度)NOUTに対応する車速Vを表す信号などが、それぞれ供給される。また、不図示の各センサやスイッチなどから、モータ走行(EV走行)モードを設定する為のスイッチ操作の有無を表す信号、第1電動機M1の回転速度である第1電動機回転速度NM1を表す信号、第2電動機M2の回転速度である第2電動機回転速度NM2を表す信号、第1電動機M1及び第2電動機M2との間でインバータ96(図4参照)を介して充放電を行うすなわち電動機M1,M2への電力を需給する蓄電装置98(図4参照)の温度である蓄電装置温度THBATを表す信号、蓄電装置98の充電電流又は放電電流である充放電電流(或いは入出力電流)ICDを表す信号、蓄電装置98の電圧VBATを表す信号、上記蓄電装置温度THBAT、充放電電流ICD、及び電圧VBATに基づいて算出される蓄電装置98の充電状態(充電容量)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。尚、蓄電装置98は、充放電可能な直流電源であり、例えばニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池から成る。例えば、車両加速走行時には、エンジン16の出力に対する反力をとるときに第1電動機M1により発電された電気エネルギ(電力)がインバータ96を通して蓄電装置98に蓄電される。また、車両減速走行時の回生制動の際には、第2電動機M2により発電された電力がインバータ96を通して蓄電装置98に蓄電される。また、第2電動機M2によるモータ走行時には、蓄電された電力がインバータ96を通して第2電動機M2へ供給される。
また、電子制御装置100からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置99(図4参照)への制御信号例えばスロットル弁開度θTHを操作する為のスロットルアクチュエータ56への駆動信号や燃料噴射装置50による吸気管46或いはエンジン16の各気筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置52によるエンジン16の点火時期を指令する点火信号、第1電動機M1及び第2電動機M2の作動を指令する指令信号、EGR制御弁64を開閉制御してEGRオン状態とEGRオフ状態とを切り替える為のEGR制御弁64への駆動信号、パージ制御弁74を開閉制御してパージオン状態とパージオフ状態とを切り替える為のパージ制御弁74への駆動信号などが、それぞれ出力される。
図4は、電子制御装置100による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4において、ハイブリッド制御部すなわちハイブリッド制御手段102は、エンジン出力制御装置99を介してエンジン16の駆動を制御するエンジン駆動制御手段としての機能と、インバータ96を介して第1電動機M1及び第2電動機M2による駆動力源又は発電機としての作動を制御する電動機作動制御手段としての機能を含んでおり、それら制御機能によりエンジン16、第1電動機M1、及び第2電動機M2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。
例えば、ハイブリッド制御手段102は、エンジン16を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン16と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて変速機構12の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。具体的には、ハイブリッド制御手段102は、アクセル開度Accをパラメータとして車速Vと車両10に対する運転者の要求出力(運転者要求パワー、ユーザ要求パワー)Puser*との予め実験的に求められて記憶された例えば図5に示すような関係(ユーザ要求出力特性図、ユーザ要求出力マップ)から実際のアクセル開度Acc及び車速Vに基づいてユーザ要求パワーPuser*を算出する。次に、ハイブリッド制御手段102は、ユーザ要求パワーPuser*と例えば蓄電装置98の充電状態SOCに基づく充電要求値(充電要求パワー)Pchg*とから必要なトータル要求出力Pall*(=Puser*+Pchg*)を算出する。更に、ハイブリッド制御手段102は、そのトータル要求出力Pall*が得られるように、伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮してエンジン16に対する要求出力(エンジン要求パワー、目標エンジン出力)PE *を算出する。そして、ハイブリッド制御手段102は、そのエンジン要求パワーPE *が得られるエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとなるようにエンジン16を制御すると共に各電動機M1,M2の出力乃至発電を制御する。
つまり、ハイブリッド制御手段102は、動力性能や燃費向上などの為にエンジン16及び各電動機M1,M2の制御を実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン16を効率のよい作動域で作動させる為に定まるエンジン回転速度NEと車速V等で定まる出力回転速度NOUTとを整合させる為に、変速機構12が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段102は、例えばエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められた例えば図6の破線に示すような良く知られたエンジン16の動作曲線の一種である最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)LEを予め記憶している。そして、ハイブリッド制御手段102は、その最適燃費率曲線LEにエンジン16の動作点(以下、「エンジン動作点」と表す)PEGが沿わされつつエンジン16が作動させられるように、例えば上記トータル要求出力Pall*を充足する為に必要なエンジン要求パワーPE *を発生する為のエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとの各目標値(要求値)である目標エンジントルク(エンジン要求トルク)TE *と目標エンジン回転速度(エンジン要求回転装度)NE *とを定め、その目標値が得られるようにエンジン16の出力制御を実行すると共に変速機構12の変速比γ0をその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。
より具体的には、エンジン要求パワーPE *が例えばエンジン要求パワーPE *Aであるときには、図6に示すように、最適燃費率曲線LE上にてそのエンジン要求パワーPE *Aが得られるエンジン動作点PEGAでエンジン16が作動させられる。また、エンジン要求パワーPE *が例えばエンジン要求パワーPE *Bであるときには、図6に示すように、最適燃費率曲線LE上にてそのエンジン要求パワーPE *Bが得られるエンジン動作点PEGBでエンジン16が作動させられる。ここで、上記エンジン動作点PEGとは、エンジン回転速度NE及びエンジントルクTEなどで例示されるエンジン16の動作状態を示す状態量を座標軸とした二次元座標においてエンジン16の動作状態を示す動作点である。尚、本実施例では、燃費とは例えば単位燃料消費量当たりの走行距離であったり、車両全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)等である。
ハイブリッド制御手段102は、エンジン要求回転装度NE *をパラメータとしてエンジン要求トルクTE *とスロットル弁開度θTHの目標値(要求値)である目標スロットル弁開度(要求スロットル弁開度)θTH *との予め実験的に求められて記憶された例えば図7に示すような関係(要求スロットル弁開度マップ)から、エンジン要求パワーPE *を得る為のエンジン要求トルクTE *及びエンジン要求回転装度NE *に基づいて要求スロットル弁開度θTH *を設定する。その為、ハイブリッド制御手段102は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ56により電子スロットル弁54を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置50による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置52による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置99に出力して、必要なエンジン要求パワーPE *を発生する為のエンジン要求トルクTE *が得られるようにエンジン16の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。また、ハイブリッド制御手段102は、第1電動機M1による発電を制御させる指令をインバータ96に出力して、必要なエンジン要求パワーPE *を発生する為のエンジン要求回転装度NE *が得られるように第1電動機回転速度NM1を制御するすなわち変速機構12の変速比γ0を制御する変速制御手段を機能的に備えている。
このとき、ハイブリッド制御手段102は、例えば第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ96を通して蓄電装置98や第2電動機M2へ供給するので、エンジン16の動力の主要部は機械的に出力歯車24へ伝達されるが、エンジン16の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ96を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、電気エネルギにより第2電動機M2が駆動されてその第2電動機M2から出力される駆動力(例えばアシストトルク)が出力歯車24へ伝達される。この発電に係る第1電動機M1による電気エネルギの発生から駆動に係る第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン16の動力の一部が電気エネルギに変換され、その電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスが構成される。
また、ハイブリッド制御手段102は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、すなわち車速V(駆動輪34)に拘束される出力回転速度NOUTに拘わらず、変速機構12の電気的CVT機能によって例えば第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度(例えばエンジン回転速度NEの目標値)に回転制御させられる。つまり、ハイブリッド制御手段102は、遊星歯車装置22を介して入力軸20(すなわちエンジン16の出力軸)に作動的に連結される第1電動機M1をその入力軸20に動力伝達可能な回転駆動装置として機能させることで、第1電動機M1によりエンジン16を回転駆動させられる。例えば、ハイブリッド制御手段102は車両走行中にエンジン回転速度NEを引き上げる場合には、出力回転速度NOUTを略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。
また、ハイブリッド制御手段102は、エンジン16の運転を停止した状態で蓄電装置98からの電力により第2電動機M2を駆動してその第2電動機M2のみを駆動力源として走行するモータ走行(EV走行)を実行することができる。例えば、このハイブリッド制御手段102によるEV走行は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTE域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
ハイブリッド制御手段102は、このEV走行時には、運転を停止しているエンジン16の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、変速機構12の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度NEを零乃至略零に維持する。つまり、ハイブリッド制御手段102は、EV走行時には、エンジン16の運転を単に停止させるのではなく、エンジン16の回転(回転駆動)も停止させる。
図4に戻り、EGR制御部すなわちEGR制御手段104は、例えばエンジン16の動作状態(運転状態)に基づいて排気再循環装置58による排気再循環(EGR)を実行する。具体的には、EGR制御手段104は、冷却水温TEMPwがエンジン16の暖機が完了したことを判定する為の所定の冷却水温TEMPw’以上となっている場合に、EGR制御弁64を開弁する指令をそのEGR制御弁64のアクチュエータに出力して排気再循環(EGR)を実行する。一方、EGR制御手段104は、冷却水温TEMPwが上記所定の冷却水温TEMPw’未満である場合には、EGR制御弁64を閉弁する(全閉状態とする)指令をそのEGR制御弁64のアクチュエータに出力して排気再循環(EGR)を実行しない。尚、EGRが実行されてもエンジン16の燃焼安定性が確保される(損なわれない)ようなエンジン16の動作状態であれば、エンジン16の暖機完了前などのエンジン16の冷間時であってもEGRを実行するようにしても良い。例えば、暖機完了前であってもエンジン16の燃焼が安定しており且つ出力トルク変動も小さいような高回転速度且つ高負荷等であるエンジン16の動作領域(動作範囲)では、燃焼安定性を著しく損なうこと無く、EGRを実行することができると考えられる。また、エンジン16の暖機完了後であっても、冷却水温TEMPw、エンジン回転速度NE、エンジン負荷(例えば吸入空気量Q、スロットル弁開度θTH等)以外の他の物理量(例えば空燃比A/F等)を加味してEGRを実行しない場合があっても差し支えない。
パージ制御部すなわちパージ制御手段106は、例えばエンジン16の動作状態に基づいて燃料蒸気処理装置60によるパージを実行する。具体的には、パージ制御手段106は、エンジン16の作動時であって公知のフューエルカット中でなく且つ冷却水温TEMPwが上記所定の冷却水温TEMPw’以上となっている場合に、パージ制御弁74を開弁する指令をそのパージ制御弁74のアクチュエータに出力してパージを実行する。一方、パージ制御手段106は、冷却水温TEMPwが上記所定の冷却水温TEMPw’未満である場合、或いはエンジン16の作動時であっても上記フューエルカット中である場合には、パージ制御弁74を閉弁する(全閉状態とする)指令をそのパージ制御弁74のアクチュエータに出力してパージを実行しない。尚、エンジン16の暖機完了後のフューエルカット未作動時であっても、冷却水温TEMPw以外の他の物理量(例えば吸入空気量Q、スロットル弁開度θTH、空燃比A/F等)を加味してパージを実行しない場合があっても差し支えない。
ここで、前述したように、本実施例の車両10においては、例えばアクセル開度Acc等に基づいて必要なトータル要求出力Pall*が算出され、そのトータル要求出力Pall*を充足する為に必要なエンジン要求パワーPE *を発生する為のエンジン要求トルクTE *及びエンジン要求回転装度NE *が定められ、それら要求値が得られるようにエンジン16の出力制御と変速機構12の変速制御とが実行されて車両走行が制御される。この際、例えば図7に示すような要求スロットル弁開度マップからエンジン要求パワーPE *を得る為の要求スロットル弁開度θTH *が設定される。
ところで、本実施例の車両10においては、パージ制御手段106により例えばエンジン16の動作状態に基づいて燃料蒸気処理装置60によるパージが実行される。そして、燃料蒸気処理装置60によるパージが実行されると、上記設定されたエンジン要求パワーPE *を得る為の要求スロットル弁開度θTH *にて想定される吸入空気量Q以上に吸気管46に空気(新気)が入ることになる。そのすると、燃料蒸気処理装置60によるパージ時には、例えばそのパージによって新気が入ることによりエンジン要求パワーPE *(或いはエンジン要求トルクTE *)以上のエンジンパワーPE(或いはエンジントルクTE)が実際には出てしまう可能性がある。
そこで、本実施例では、例えば燃料蒸気処理装置60によるパージにより新気が入ることでエンジン要求パワーPE *以上に実際のエンジンパワーPEが出過ぎることが抑制される為に、燃料蒸気処理装置60によるパージ時のパージ量Rpgが多くなる程すなわち燃料蒸気処理装置60からのパージ量Rpgが多くなる程、エンジン要求パワーPE *を得る為の要求スロットル弁開度θTH *を小さくするように補正する。具体的には、燃料蒸気処理装置60によるパージにより吸気管46に新気が入った分に対応するスロットル弁開度θTH分を小さくするように補正する、すなわち燃料蒸気処理装置60から吸気管46に吸入されたパージ量Rpgに応じてスロットル弁開度θTHを小さくするように補正する。
また、上記燃料蒸気処理装置60によるパージの実行とは別に、本実施例の車両10においては、EGR制御手段104により例えばエンジン16の動作状態に基づいて排気再循環装置58によるEGRが実行される。そして、排気再循環装置58によるEGRが実行されると、上記設定されたエンジン要求パワーPE *を得る為の要求スロットル弁開度θTH *にて想定される吸入空気量Qまで吸気管46に新気が入らないことになる。そのすると、排気再循環装置58によるEGR時には、例えばそのEGRによって電子スロットル弁54を介した新気(吸入空気量Q)が減少することによりエンジン要求パワーPE *まで実際のエンジンパワーPEが出ない可能性がある。そこで、本実施例では、排気再循環装置58によるEGRが実行される場合は、実行されない場合と比較して、エンジン要求パワーPE *を得る為の要求スロットル弁開度θTH *を大きくするように補正する。
しかしながら、排気再循環装置58によるEGRが実行される際に燃料蒸気処理装置60によるパージが実行されると、吸気管46内の負圧Pnegaが減少する(すなわち負圧Pnegaの絶対値が小さくなる)為に、その負圧Pnegaにより排気管48から吸気管46へと排気ガスEXが再循環されるEGRではパージが実行されない場合と比較して実際の排気再循環量(EGR量)EXegrが減少し、パージが実行されるときにはそのEGR量EXegrの減少分に対応する分の新気が更に増えることになる。そうすると、排気再循環装置58によるEGRが実行される際の燃料蒸気処理装置60によるパージ時には、例えばEGR量EXegrの減少分に対応して新気が増えることにより、パージで新気が入る分のエンジン要求パワーPE *の増大に加え、更にエンジン要求パワーPE *以上のエンジンパワーPEが実際には出てしまう可能性がある。
そこで、本実施例では、例えば燃料蒸気処理装置60によるパージにより排気再循環装置58によるEGR量EXegrが減少する分に対応して新気が増えることでエンジン要求パワーPE *以上に実際のエンジンパワーPEが更に出過ぎることが抑制される為に、排気再循環装置58によるEGRが実行される場合は、実行されない場合と比較して、燃料蒸気処理装置60によるパージ時のパージ量Rpgが多くなる程要求スロットル弁開度θTH *を小さくするように補正するときのその要求スロットル弁開度θTH *の補正量を大きくする。具体的には、燃料蒸気処理装置60によるパージにより排気再循環装置58によるEGR量EXegrが減少する分に対応して吸気管46に入る新気の増量分に応じたスロットル弁開度θTH分を小さくするように補正することにより、要求スロットル弁開度θTH *の補正量を大きくする。
尚、上記パージ量Rpgは、エンジン16の充填効率ηcに対応する値すなわち充填効率ηcに換算した値(例えば単位は%)であって、パージ率と見ることもできる。上記充填効率ηcは、吸気行程でどれくらいの新気を取り込めるかを表す為の値であって、エンジン出力に直接比例するものである。例えば、上記充填効率ηcは、大気状態のもとでエンジン16のシリンダに吸入した実質的な新気の重量(Gs)と、標準大気状態のもとでシリンダの行程容積を占める新気の重量(Gh)との比(=Gs/Gh×100[%])で表される。
より具体的には、図4において、パージ量算出部すなわちパージ量算出手段108は、パージ量Rpgを算出する。例えば、パージ量算出手段108は、吸気管46内の負圧Pnegaに基づいてパージ量Rpgを算出する。具体的には、パージ量算出手段108は、負圧Pnegaとパージ量Rpgとの予め実験的に求められて記憶された例えば図8に示すような関係(パージ量マップ)から、吸気圧センサ86により検出された吸気管46内の実際の負圧Pnegaに基づいてパージ量Rpgを算出する。
EGRオン状態判定部すなわちEGRオン状態判定手段110は、EGRオン状態であるか否かを判定する。例えば、EGRオン状態判定手段110は、EGR制御手段104によりEGR制御弁64を開弁する指令がそのEGR制御弁64のアクチュエータに出力されているか否かに基づいて、EGRオン状態であるか否かを判定する。
ハイブリッド制御手段102は、EGRオン状態判定手段110によりEGRオン状態でないと判定されるときにパージ制御手段106により燃料蒸気処理装置60によるパージが実行されるときには、例えば図7に示すような要求スロットル弁開度マップを用いることに替えて、エンジン要求回転装度NE *に加えてパージ量算出手段108により算出されたパージ量Rpgをパラメータとしてエンジン要求トルクTE *と要求スロットル弁開度θTH *との予め実験的に求められて記憶された例えば図9に示すような関係(要求スロットル弁開度マップ、マップA)から、エンジン要求パワーPE *を得る為のエンジン要求トルクTE *及びエンジン要求回転装度NE *とパージ量Rpgとに基づいて要求スロットル弁開度θTH *を設定する。
図9に示すマップAは、エンジン要求回転装度NE *が3000[rpm]であるときのみを例示する要求スロットル弁開度マップであり他のエンジン要求回転装度NE *については省略してあるが、他のエンジン要求回転装度NE *についてもパージ量Rpgの変化に対する要求スロットル弁開度θTH *の変化傾向がこの3000[rpm]と同様の傾向であることは言うまでもない。図9に示すマップAにおいて、例えばパージ量Rpgが5[%]であるときには、パージ量Rpgが0[%]であるときと比較して、エンジン要求トルクTE *がAである場合に要求スロットル弁開度θTH *がa分だけ小さくされる。また、例えばパージ量Rpgが10[%]であるときには、パージ量Rpgが0[%]であるときと比較して、エンジン要求トルクTE *がAである場合に要求スロットル弁開度θTH *がaより大きなb分だけ小さくされる。このように、図9に示すマップAは、燃料蒸気処理装置60によるパージにより吸気管46に新気が入った分(増加分)に対応するスロットル弁開度θTH分を小さくするように補正することを加味した要求スロットル弁開度マップというべきものである。つまり、図9に示すマップAは、図7に示すようなEGRオフ状態であるときに燃料蒸気処理装置60によるパージが実行されないときの要求スロットル弁開度マップに加えて、パージ時のパージ量Rpgを更にパラメータとして予め求められた要求スロットル弁開度マップである。従って、EGRオフ状態であるときに、燃料蒸気処理装置60によるパージが実行されないときには例えば図7に示すような要求スロットル弁開度マップを用い、パージが実行されるときには例えば図9に示すようなマップAを用いることに替えて、ハイブリッド制御手段102は、パージが実行されるか否かに拘わらず、EGRオフ状態であるときには、例えば図9に示すようなマップAのみを用いて要求スロットル弁開度θTH *を設定しても良い。EGRオフ状態において、図9に示すようなマップAのみを用いるような場合に例えばパージオフ(パージOFF)状態であるときには、パージ量Rpgが0[%]として要求スロットル弁開度θTH *が設定される。
また、ハイブリッド制御手段102は、EGR制御手段104により排気再循環装置58によるEGRが実行されるときには、例えば図7に示すような要求スロットル弁開度マップを用いることに替えて、例えば図10に示すようなEGRオン状態のときの要求スロットル弁開度マップから、エンジン要求トルクTE *とエンジン要求回転装度NE *とに基づいて要求スロットル弁開度θTH *を設定する。図10に示す要求スロットル弁開度マップは、エンジン要求回転装度NE *が3000[rpm]であるときのみを例示する要求スロットル弁開度マップであり他のエンジン要求回転装度NE *については省略してあるが、他のエンジン要求回転装度NE *についてもEGRオフ状態時に対するEGRオン状態時の要求スロットル弁開度θTH *の変化傾向がこの3000[rpm]と同様の傾向であることは言うまでもない。図10に示す要求スロットル弁開度マップにおいて、EGRオン状態であるときには、図7に示す要求スロットル弁開度マップと同等のEGRオフ状態であるときと比較して、要求スロットル弁開度θTH *が全体的に所定量だけ大きくされる。このように、図10に示すマップは、EGRオン状態により吸気管46に入る新気が減少する分に対応するスロットル弁開度θTH分を大きくするように補正することを加味した要求スロットル弁開度マップというべきものである。
ハイブリッド制御手段102は、EGRオン状態判定手段110によりEGRオン状態であると判定されるときにパージ制御手段106により燃料蒸気処理装置60によるパージが実行されるときには、例えば図10に示すような要求スロットル弁開度マップを用いることに替えて、エンジン要求回転装度NE *に加えてパージ量算出手段108により算出されたパージ量Rpgをパラメータとしてエンジン要求トルクTE *と要求スロットル弁開度θTH *との予め実験的に求められて記憶された例えば図11に示すような関係(要求スロットル弁開度マップ、マップB)から、エンジン要求トルクTE *とエンジン要求回転装度NE *とパージ量Rpgとに基づいて要求スロットル弁開度θTH *を設定する。
図11に示すマップBは、エンジン要求回転装度NE *が3000[rpm]であるときのみを例示する要求スロットル弁開度マップであり他のエンジン要求回転装度NE *については省略してあるが、他のエンジン要求回転装度NE *についてもパージ量Rpgの変化に対する要求スロットル弁開度θTH *の変化傾向がこの3000[rpm]と同様の傾向であることは言うまでもない。図11に示すマップBにおいて、例えばパージ量Rpgが5[%]であるときには、パージ量Rpgが0[%]であるときと比較して、エンジン要求トルクTE *がAである場合に要求スロットル弁開度θTH *がa’分だけ小さくされる。また、例えばパージ量Rpgが10[%]であるときには、パージ量Rpgが0[%]であるときと比較して、エンジン要求トルクTE *がAである場合に要求スロットル弁開度θTH *がa’より大きなb’分だけ小さくされる。また、上記要求スロットル弁開度θTH *が小さくされるa’分は、図9のマップAに示すa分よりも大きく、また要求スロットル弁開度θTH *が小さくされるb’分は、図9のマップAに示すb分よりも大きく設定されている。このように、図11に示すマップBは、燃料蒸気処理装置60によるパージにより排気再循環装置58によるEGR量EXegrが減少して吸気管46に新気が入った分に対応するスロットル弁開度θTH分を小さくするように補正することにより要求スロットル弁開度θTH *の補正量を大きくすることを加味した要求スロットル弁開度マップというべきものである。つまり、図11に示すマップBは、図10に示すようなEGRオン状態であるときに燃料蒸気処理装置60によるパージが実行されないときの要求スロットル弁開度マップに加えて、パージ時のパージ量Rpgを更にパラメータとして予め求められた要求スロットル弁開度マップである。従って、EGRオン状態であるときに、燃料蒸気処理装置60によるパージが実行されないときには例えば図10に示すような要求スロットル弁開度マップを用い、パージが実行されるときには例えば図11に示すようなマップBを用いることに替えて、ハイブリッド制御手段102は、パージが実行されるか否かに拘わらず、EGRオン状態であるときには、例えば図11に示すようなマップBのみを用いて要求スロットル弁開度θTH *を設定しても良い。EGRオン状態において、図11に示すようなマップBのみを用いるような場合に例えばパージオフ(パージOFF)状態であるときには、パージ量Rpgが0[%]として要求スロットル弁開度θTH *が設定される。
図12は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわち燃料蒸気処理装置60によるパージ時にエンジン要求パワーPE *に対して実際のエンジンパワーPEが出過ぎるのを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
図12において、先ず、ハイブリッド制御手段102に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えば図5に示すようなユーザ要求出力マップから実際のアクセル開度Acc及び車速Vに基づいてユーザ要求パワーPuser*が算出され、ユーザ要求パワーPuser*と充電要求パワーPchg*とから必要なトータル要求出力Pall*(=Puser*+Pchg*)が算出され、そのトータル要求出力Pall*が得られるように、伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮してエンジン要求パワーPE *が算出され、例えば図6の破線に示すような最適燃費率曲線LEにエンジン動作点PEGが沿わされつつエンジン16が作動させられるようにエンジン要求パワーPE *を発生する為のエンジン要求トルクTE *とエンジン要求回転装度NE *とが設定される。次いで、EGRオン状態判定手段110に対応するS20において、例えばEGR制御弁64を開弁する指令がそのEGR制御弁64のアクチュエータに出力されているか否かに基づいてEGRオン状態であるか否かが判定される。EGRオフ状態である為にこのS20の判断が否定される場合はハイブリッド制御手段102に対応するS30において、例えば図9に示すようなマップAからエンジン要求トルクTE *とエンジン要求回転装度NE *とパージ量Rpgとに基づいて要求スロットル弁開度θTH *が設定される。一方、EGRオン状態である為に上記S20の判断が肯定される場合はハイブリッド制御手段102に対応するS40において、例えば図11に示すようなマップBからエンジン要求トルクTE *とエンジン要求回転装度NE *とパージ量Rpgとに基づいて要求スロットル弁開度θTH *が設定される。
上述のように、本実施例によれば、燃料蒸気処理装置60によるパージ時のパージ量Rpgが多くなる程、アクセル開度Accに基づいて予め設定されたエンジン要求パワーPE *を得る為の要求スロットル弁開度θTH *を小さくするように補正されるので、燃料蒸気処理装置60によるパージにより、例えば燃料蒸気処理装置60から新気が入ることでエンジン要求パワーPE *以上のエンジンパワーPEが実際に発生させられる可能性があることに対して、そのエンジン要求パワーPE *以上に実際のエンジンパワーPEが出過ぎることが抑制される。
また、本実施例によれば、燃料蒸気処理装置60からエンジン16の吸気管46に吸入されたパージ量Rpgに応じてスロットル弁開度θTHを小さくするように補正するので、例えば燃料蒸気処理装置60によるパージにより新気が入った分だけエンジン要求パワーPE *以上に余分に発生させられるエンジンパワーPE分が適切に抑制されて、エンジン要求パワーPE *に対して実際のエンジンパワーPEが出過ぎることが一層適切に抑制される。
また、本実施例によれば、排気再循環装置58によるEGRが実行される場合は、実行されない場合と比較して、エンジン要求パワーPE *を得る為の要求スロットル弁開度θTH *を大きくするように補正するので、EGRによって電子スロットル弁54を介した新気(吸入空気量Q)が減少することによりエンジン要求パワーPE *まで実際のエンジンパワーPEが出ない可能性があることに対して、そのエンジン要求パワーPE *まで実際のエンジンパワーPEが適切に出力され易くなる。加えて、排気再循環装置58によるEGRが実行される場合は、実行されない場合と比較して、燃料蒸気処理装置60によるパージ時のパージ量Rpgが多くなる程要求スロットル弁開度θTH *を小さくするように補正するときのその要求スロットル弁開度θTH *の補正量を大きくするので、燃料蒸気処理装置60によるパージによりエンジン16の吸気管46内の負圧Pnegaが減少する為に排気再循環装置58によるEGR量EXegrが減少してその減少分新気が増えることでエンジン要求パワーPE *以上のエンジンパワーPEがパージによるエンジンパワーPEの増大に加えて更に発生させられる可能性があることに対して、そのエンジン要求パワーPE *以上に実際のエンジンパワーPEが出過ぎることが抑制される。
また、本実施例によれば、燃料蒸気処理装置60によるパージにより排気再循環装置58によるEGR量EXegrが減少する分に対応してエンジン16の吸気管46に入る新気の増量分に応じたスロットル弁開度θTH分を小さくするように補正することにより、要求スロットル弁開度θTH *の補正量を大きくするので、例えば燃料蒸気処理装置60によるパージによりEGR量EXegrが減少して新気が入った分だけエンジン要求パワーPE *以上に余分に発生させられるエンジンパワーPE分が更に適切に抑制されて、エンジン要求パワーPE *に対して実際のエンジンパワーPEが出過ぎることが一層適切に抑制される。
また、本実施例によれば、エンジン要求パワーPE *はアクセル開度Accに基づいて設定される車両10に対するユーザ要求パワーPuser*が得られるように設定され、燃料蒸気処理装置60によるパージ時にはマップA(或いはマップB)からエンジン要求パワーPE *を得る為のエンジン要求トルクTE *及びエンジン要求回転装度NE *とパージ量Rpgとに基づいて要求スロットル弁開度θTH *を設定するので、燃料蒸気処理装置60によるパージ時には要求スロットル弁開度θTH *が適切に補正される。
また、本実施例によれば、燃料蒸気処理装置60によるパージ時のパージ量Rpgは、エンジン16の充填効率ηcに換算した値(例えば単位は%)であって、エンジン16の吸気管46内の負圧Pnegaに基づいて求められるので、燃料蒸気処理装置60によるパージ時には、パージ量Rpgに基づいて要求スロットル弁開度θTH *が適切に補正される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、本発明が適用される車両10を構成する動力伝達装置として電気式無段変速機である変速機構12を例示したが、他の変速機であっても良い。例えば、良く知られた遊星歯車式自動変速機やベルト式無段変速機等の他の変速機であっても本発明は適用され得る。尚、アクセル開度Accに基づいて直接的にスロットル弁開度θTHが制御される形式の車両よりも、運転者の車両に対する要求量に基づいて要求される車両出力を設定し、その要求された車両出力を実現する為にスロットル弁開度θTHが制御されるような所謂トルクデマンド型制御が実行される形式の車両である方が本実施例の効果が確実に得られる。
また、前述の実施例では、吸気管46内の実際の負圧Pnegaは吸気圧センサ86により検出されたが、吸気圧センサ86を備えない場合などでは、例えば負圧Pnegaをパラメータとしてエンジン回転速度NEと吸入空気量Q(或いはQ/NE)との予め実験的に求められて記憶された不図示の関係(マップ)から実際のエンジン回転速度NEと吸入空気量Qとに基づいて負圧Pnegaを求めるようにしても良い。
また、前述の実施例では、排気再循環装置58は、EGR制御弁64の開閉制御によりEGRオン状態とEGRオフ状態とを択一的に切り換えるものであったが、EGR制御弁64がステッピングモータ等により電気的にその開度が調節される電子制御バルブにて構成されて、EGRオン状態においてEGR制御弁64の開度が大きいほどEGR量EXegrが増加するように制御される構成であっても良い。例えば、燃費向上とエンジン16の燃焼安定性確保との両立が図れるように予め実験的に定められたEGR量EXegrが得られるようにEGR制御弁64の開度が調節される。このような場合には、例えば図10に示すような要求スロットル弁開度マップにおいて、EGRオン状態ではEGR量EXegrをパラメータとして要求スロットル弁開度θTH *が設定される。このようにしても本発明は適用され得る。
また、前述の実施例では、燃料蒸気処理装置60は、パージ制御弁74の開閉制御によりパージオン状態とパージオフ状態とを択一的に切り換えるものであったが、パージ制御弁74がステッピングモータ等により電気的にその開度が調節される電子制御バルブにて構成されて、パージオン状態においてパージ制御弁74の開度が大きいほどパージ量Rpgが増加するように制御される構成であっても良い。このような場合には、例えば図8に示すようなパージ量マップにおいて、パージ制御弁74の開度がパラメータに加えられ、吸気管46内の負圧Pnega及びパージ制御弁74の開度に基づいてパージ量Rpgが算出される。このようにしても本発明は適用され得る。
また、前述の実施例では、パージ量Rpgは充填効率ηcに換算した値であったが、例えば絶対量であっても良いし、スロットル弁開度θTHに対応する値に換算した値などであっても良い。例えば、パージ量Rpgとして絶対量を採用する場合には、吸入空気量Qに対するそのパージ量Rpgの絶対量の割合等をパラメータとして要求スロットル弁開度θTH *を補正するようにしても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。