JP5292905B2 - 印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体デバイスに微細でかつ高精度の電極パターンを形成する凹版オフセット印刷での使用に好適な印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法に関する。
電子回路基板や表示デバイス等の半導体デバイスにおける電極等の形成には従来よりフォトリソグラフィー法が用いられてきたが、このフォトリソグラフィー法は製造工程が複雑であり、また材料ロスが多く、パターン形成に必要な露光装置等の製造設備に莫大な費用がかかるため、製造コストが極めて高くなるという問題があった。更に、パターン形成時の現像処理等にて生じる廃液を処理するコストも高く、しかもこの廃液については環境保護の観点からも問題があった。
そこで、低コストでかつ有害な廃液等を生じることのないパターン形成方法に関する研究が種々なされている。なかでも、凹版オフセット印刷法は、微細パターンを高い精度で形成することが可能であることから、フォトリソグラフィー法の代替法として注目されている。凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキとして最適な条件は、印刷版への充填、充填したインキを印刷用ブランケットへ転写するところまでは、粘性が低く、印刷版への充填が容易で、かつ、印刷用ブランケットへの密着性が良いことが求められる一方、印刷用ブランケットから被転写体への転写時には凝集性が高く、印刷用ブランケットから界面剥離するという相反する条件が求められている。凹版オフセット印刷法では、印刷用ブランケットからガラス基板などの被転写体に印刷用インキを100%転写させるため、印刷用ブランケット表面にはシリコーンゴムシートを用い、印刷用インキには印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムに溶解し易い、例えば溶剤を加え、この溶剤をシリコーンゴムに溶解させ、印刷用インキとシリコーンゴム界面の界面張力を低下させることでシリコーンゴムから印刷用インキを剥離し易くして印刷用インキを印刷用ブランケットから被転写体上に転写させている。印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムに溶解し易い溶剤としては、α−テルピネオールのようなアルコール類やブチルカルビトールアセテートのようなアルキルエーテル類が使用されていた。しかし、長時間連続印刷を行うと、印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに印刷用インキに含まれる溶剤が徐々に浸透し、シリコーンゴムシートが膨潤してしまうため、印刷パターンの形状が変動して、印刷の再現性が低下する問題点があった。
上記問題を解決する方策として、導電性インキ組成物を印刷用ブランケット表面からガラス基板の表面に転移させた後に印刷用ブランケットの表面を加熱し、次いで、印刷用ブランケットの表面を冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、印刷用ブランケット表面にシリコン系エラストマーを用いたものを使用し、印刷用インキとして、インキ中に低分子量ポリシロキサンを含有させたものを使用し、かつ印刷用インキを印刷用ブランケットから被転写体へ転写した後、印刷用ブランケットの表面を加熱して印刷用ブランケットに吸収された印刷用インキの溶剤を蒸散させ、次いで、印刷用ブランケットの表面を冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献1及び2に示される方法により、インキの溶剤によって印刷用ブランケットが膨潤する問題を解消することができる。
特開2002−245931号公報(請求項1) 特開2004−66804号公報(請求項1)
しかしながら、上記特許文献1及び上記特許文献2に使用されているような印刷用インキは、凹版オフセット印刷で最適な条件として求められている、印刷版への充填や印刷用ブランケットへの転写に必要な低い粘性を有し、かつ被転写体への転写に沿う高い凝集性を有しているとは言えなかった。具体的には、印刷版への充填や印刷用ブランケットへの転写に不具合を生じない程度の粘性を有し、かつ被転写体への転写を行える程度の凝集性を有するように調製されて印刷に使用しているのが実情であった。このような凹版オフセット印刷に最適な印刷条件とはなっていないインキでは、一定の速度を有する印刷では大きな問題を生じないが、印刷速度が遅かったり、速かったりすると、印刷のパターン不良を生ずるおそれがあった。
更に、上記特許文献1及び上記特許文献2に示される方法では、通常のオフセット印刷に加熱及び冷却の工程が付加されているため工程が煩雑であり、また印刷により印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートにインキ中の溶剤が浸透するのを防止することはできておらず、根本的な問題解消とはなっていない。
本発明の目的は、凹版オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状不良を低減し、かつ、印刷版への充填速度、印刷用ブランケットへの転写速度並びに被転写体への転写速度の速度幅をそれぞれ拡げることができる、印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、凹版オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減し得る印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法を提供することにある。
請求項1に係る発明は、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分をそれぞれ含有したインキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットに転写したインキに紫外線を照射しながら、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキの改良である。その特徴ある構成は、樹脂成分がオキセタン系樹脂、ポリエステル系若しくはポリエーテル系マレイミド樹脂及びアクリル系マレイミド樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の感光性粘着樹脂を含み、溶剤成分としてジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上を含み、溶剤成分として沸点が160℃以下の酢酸エステル、沸点が160℃以下の炭化水素、沸点が170℃以下のケトン類、沸点が170℃以下のメタクリル酸エステル及び沸点が170℃以下のアクリル酸エステルからなる群より選ばれた2種以上の化合物を更に含むところにある。
請求項1に係る発明では、上記感光性粘着樹脂は、紫外線を照射する前、即ち、インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填する際、及び充填したインキを印刷用ブランケットへ転写する際には、低粘度で流動性が高いため、この感光性粘着樹脂を含むインキは印刷版への充填及び印刷用ブランケットへの密着性がそれぞれ良好である。また、上記感光性粘着樹脂は、紫外線を照射した後は、硬化して粘着性を発現するため、インキの凝集力が向上し、印刷用ブランケットからの界面剥離が容易になるとともに、樹脂硬化後においても、被転写体への密着性を保持することが可能となる。従って、上記感光性粘着樹脂を樹脂成分として印刷用インキに使用することで、パターン形状不良を低減させ、かつ、印刷版への充填速度、印刷用ブランケットへの転写速度並びに被転写体への転写速度の速度幅をそれぞれ拡げることができる。
また、ジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤は、印刷用インキ中の樹脂成分を溶解することが可能であり、かつ印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートを膨潤させることがなく、沸点が160℃以下の酢酸エステル、沸点が160℃以下の炭化水素、沸点が170℃以下のケトン類、沸点が170℃以下のメタクリル酸エステル及び沸点が170℃以下のアクリル酸エステルは、素早く印刷用ブランケットに浸透して、印刷用ブランケットとインキとの間に溶剤に富んだ弱い境界層(WBL)を形成し、被転写体へのインキの転写を促すという効果を有するため、上記溶剤成分の双方を所定の割合で配合した溶剤成分を印刷用インキに使用することで、印刷用ブランケットを加熱及び冷却することなく、オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができる。
請求項に係る発明は、請求項1に係る発明であって、無機粉末が金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はこれらを混合した混合粉末である印刷用インキである。
請求項に係る発明は、請求項1又は2記載の印刷用インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットに転写したインキに紫外線を照射しながら、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写することを特徴とする塗膜の製造方法である。
本発明の印刷用インキは、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分をそれぞれ含有したインキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットに転写したインキに紫外線を照射しながら、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキの改良である。その特徴ある構成は、樹脂成分がオキセタン系樹脂、ポリエステル系若しくはポリエーテル系マレイミド樹脂及びアクリル系マレイミド樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の感光性粘着樹脂を含むところにある。上記感光性粘着樹脂は、紫外線を照射する前、即ち、インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填する際、及び充填したインキを印刷用ブランケットへ転写する際には、低粘度で流動性が高いため、この感光性粘着樹脂を含むインキは印刷版への充填及び印刷用ブランケットへの密着性がそれぞれ良好である。また、上記感光性粘着樹脂は、紫外線を照射した後は、硬化して粘着性を発現するため、インキの凝集力が向上し、印刷用ブランケットからの界面剥離が容易になるとともに、樹脂硬化後においても、被転写体への密着性を保持することが可能となる。従って、上記感光性粘着樹脂を樹脂成分として印刷用インキに使用することで、パターン形状不良を低減させ、かつ、印刷版への充填速度、印刷用ブランケットへの転写速度並びに被転写体への転写速度の速度幅をそれぞれ拡げることができる。
また溶剤成分としてジオール系溶剤やグリコールエーテル系溶剤を含むと、印刷用インキ中の樹脂成分を溶解することが可能であり、かつ印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートを膨潤させることがなく、更に溶剤成分として沸点が160℃以下の酢酸エステル、沸点が160℃以下の炭化水素、沸点が170℃以下のケトン類、沸点が170℃以下のメタクリル酸エステル及び沸点が170℃以下のアクリル酸エステルを更に含むと、素早く印刷用ブランケットに浸透して、印刷用ブランケットとインキとの間に溶剤に富んだ弱い境界層(WBL)を形成し、被転写体へのインキの転写を促すという効果を有するため、上記溶剤成分の双方を所定の割合で配合した溶剤成分を印刷用インキに使用することで、印刷用ブランケットを加熱及び冷却することなく、オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができる。
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本発明者は、凹版オフセット印刷に使用する印刷用インキについて、印刷版への充填から印刷用ブランケットへの転写までの工程と、ブランケットから被転写体へ転写する際の相反する条件を達成するため、インキ成分の一つである樹脂成分について鋭意検討した結果、感光性粘着樹脂が印刷用インキの凹版オフセット印刷の最適な条件に適用可能であり、更にこの感光性粘着樹脂の中でも、オキセタン系樹脂、ポリエステル系若しくはポリエーテル系マレイミド樹脂及びアクリル系マレイミド樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の感光性粘着樹脂を使用することで、凹版オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状不良を低減し、かつ、印刷版への充填速度、印刷用ブランケットへの転写速度並びに被転写体への転写速度の速度幅をそれぞれ拡げることができることを確認し、本発明に至った。
また、印刷用インキに使用される溶剤について、溶剤が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに及ぼす影響に関して鋭意検討した結果、溶剤として一般的に使用されているアルコール類やアルキルエーテル類に代わり、ジオール系溶剤やグリコールエーテル系溶剤を使用することによって、印刷用インキ中の樹脂成分を溶解することが可能であり、かつ印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートを膨潤させることがないことを確認し、本発明に至った。
本発明の印刷用インキは、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分をそれぞれ含有したインキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットに転写したインキに紫外線を照射しながら、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキの改良である。その特徴ある構成は、樹脂成分がオキセタン系樹脂、ポリエステル系若しくはポリエーテル系マレイミド樹脂及びアクリル系マレイミド樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の感光性粘着樹脂を含むところにある。上記樹脂成分に含まれる感光性粘着樹脂は、紫外線を照射する前は、低粘度で流動性が高いため、印刷版への充填及び印刷用ブランケットへの密着性がそれぞれ良好である。また、上記感光性粘着樹脂は、紫外線を照射した後は、硬化して粘着性を発現するため、インキの凝集力が向上し、印刷用ブランケットからの界面剥離が容易になるとともに、樹脂硬化後においても、被転写体への密着性を保持することが可能となる。従って、上記感光性粘着樹脂を樹脂成分として印刷用インキに使用することで、パターン形状不良を低減させ、かつ、印刷版への充填速度、印刷用ブランケットへの転写速度並びに被転写体への転写速度の速度幅をそれぞれ拡げることができる。
上記感光性粘着樹脂は、紫外線照射前における粘度が0.1〜10Pa・s、好ましくは0.5〜5Pa・sの範囲内が好適である。下限値未満では粘度が低すぎて印刷版へ充填したインキを印刷用ブランケットへ転写する際にブランケットに保持されず、上限値を越えると、印刷版への充填がし難くなり、また印刷版へ充填したインキを印刷用ブランケットへ転写する際のブランケットへの密着性が低下してしまう問題がある。紫外線照射後における感光性粘着樹脂は、JIS Z−0237に準拠した傾斜式ボールタック測定法によるタック値が、ボールNo.2〜10(傾斜角30°)の範囲内となる粘着性を発現していることが好ましい。紫外線照射後における感光性粘着樹脂のタック値が、ボールNo.2〜10の範囲内であれば、印刷用ブランケットから被転写体への転写時に印刷用インキの凝集性が高く、かつ印刷用ブランケットから容易に界面剥離することができる。
このJIS Z−0237に準拠した傾斜式ボールタック測定法とは、図2(a)及び図2(b)に示すように、傾斜角20〜40°の傾斜板を備えた三角形の装置の傾斜板に長さがそれぞれ100mmの助走路及び紫外線照射後の感光性粘着樹脂からなる測定路を設け、ボールの呼びが1/16〜1までの大きさの鋼球のうち、5/64、7/64、9/64、15/64及び27/64を除いた計31種の鋼球を用意し、傾斜板の助走路から測定路へと鋼球を転がし、測定路上で停止する最大径の鋼球の大きさで粘着の程度を調べるものである。具体的には、測定路で5秒以上静止した鋼球と、この静止した鋼球の前後のサイズ1個ずつ、計3個を再度転がして、最大径の鋼球を確認し、そのボールNo.と傾斜角度をタック値として記録することにより行われる。この測定法ではタック値が大きいほど粘着が強く、逆にタック値が小さいと粘着が弱いということになる。
感光性粘着樹脂のうち、オキセタン系樹脂としては、東亞合成社製UVA−1000シリーズ、2−エチルヘキシルオキセタン(EHOX)が好ましい。紫外線照射後におけるオキセタン系樹脂の傾斜式ボールタック測定法によるタック値は、ボールNo.4〜10(傾斜角30°)の範囲内が特に好ましい。また、ポリエステル系若しくはポリエーテル系マレイミド樹脂としては、東亞合成社製UVA−2000シリーズ、両末端マレイミド変性ポリエステル樹脂、両末端マレイミド変性ポリエーテル樹脂が好ましい。紫外線照射後におけるポリエステル系若しくはポリエーテル系マレイミド樹脂の傾斜式ボールタック測定法によるタック値は、ボールNo.4〜10(傾斜角30°)の範囲内が特に好ましい。更に、アクリル系マレイミド樹脂としては、東亞合成社製UVA−3000シリーズ、3,4,5,6−テトラヒドロフタロイミドエチルアクリレート(THPI−A)共重合アクリルポリマーが好ましい。紫外線照射後におけるアクリル系マレイミド樹脂の傾斜式ボールタック測定法によるタック値は、ボールNo.2〜7(傾斜角30°)の範囲内が特に好ましい。
本発明の印刷用インキに含有する粉末成分は、無機粉末又は有機粉末である。具体的には有機顔料、無機顔料、光輝性顔料、有機染料が挙げられる。また金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はそれらの混合粉末は導電性パターンの印刷に使用できるため特に好適である。有機顔料としては、アゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、キナクリドン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、ペリレン系、DPP系、蛍光顔料等が挙げられる。無機顔料としては、アセチルカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイトのような炭素粉末、合成シリカ、酸化クロム、酸化鉄、酸化チタン、チタンブラック、酸化コバルト、酸化銅、これらの複合酸化物、焼成顔料、硫化亜鉛等が挙げられる。光輝性顔料としては、パール顔料、フレーク顔料、アルミニウム顔料、ブロンズ顔料等が挙げられる。有機染料としては、アルコール可溶性染料、油溶性染料、蛍光染料、集光性染料等が挙げられる。金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はそれらの混合粉末の平均粒径は、印刷適性等を考慮すると、0.01〜10μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。
本発明の印刷用インキに含有する溶剤成分としては、ジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上(以下、第1溶剤成分という。)を含む。上記第1溶剤成分は、印刷用インキ中の樹脂成分を溶解することが可能であり、かつ印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートを膨潤させることがない。更に、第1溶剤成分とともに、沸点が160℃以下の酢酸エステル、沸点が160℃以下の炭化水素、沸点が170℃以下のケトン類、沸点が170℃以下のメタクリル酸エステル及び沸点が170℃以下のアクリル酸エステルからなる群より選ばれた2種以上の化合物(以下、第2溶剤成分という。)を更に含む。上記第2溶剤成分は素早く印刷用ブランケットに浸透して、印刷用ブランケットとインキとの間に溶剤に富んだ弱い境界層(WBL)を形成し、被転写体へのインキの転写を促すという効果を有する。従って、前述した第1溶剤成分及び第2溶剤成分の双方を所定の割合で配合した溶剤成分を本発明の印刷用インキに使用することで、印刷用ブランケットを加熱及び冷却することなく、凹版オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができるという利点がある。溶剤成分を構成する第1溶剤成分と第2溶剤成分との配合割合は、重合比で70〜40:30〜60が好適であり、このうち50:50の割合が特に好ましい。
ジオール系溶剤としては、炭素数5〜9のジオールからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物を含むことが好適である。具体的には、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールやこれらを複数種類含む混合溶剤が挙げられる。またグリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
第2溶剤成分の酢酸エステル、炭化水素、ケトン類、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの沸点の上限を規定したのは、これ以上の沸点では、所定の時間内に印刷用ブランケットに浸透した溶剤が抜けることが困難であるという理由による。沸点が160℃以下の酢酸エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸セカンダリーブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチルが挙げられる。このうち、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルが印刷用ブランケットへの浸透速度と印刷用ブランケットからの脱離速度とのバランスが良好であるため特に好ましい。また沸点が160℃以下の炭化水素としては、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、オクタン、1−オクテン、n−ノナン、1−ノネン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレン、スチレン、2−ヘプタンが挙げられる。このうち、トルエン、n−ノナンが印刷用ブランケットへの浸透速度と印刷用ブランケットからの脱離速度とのバランスが良好であるため特に好ましい。また沸点が170℃以下のケトン類としては、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノンが挙げられる。このうち、2,6−ジメチル−4−ヘプタノンが印刷用ブランケットへの浸透速度と印刷用ブランケットからの脱離速度とのバランスが良好であるため特に好ましい。また沸点が170℃以下のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチルが挙げられる。このうち、メタクリル酸イソブチルは蒸発速度がインクが乾燥しない程度に十分遅く、かつ、印刷用ブランケットへの浸透速度及び印刷用ブランケットからの脱離速度が連続印刷を良好に行える程度に十分速いため特に好ましい。また沸点が170℃以下のアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチルが挙げられる。このうち、アクリル酸ブチル及びアクリル酸イソブチルが印刷用ブランケットへの浸透速度と印刷用ブランケットからの脱離速度とのバランスが良好であるため特に好ましい。
本発明の印刷用インキは、インキ100重量%とするとき、樹脂成分5〜20重量%、溶剤成分7.5〜30重量%、粉末成分が残部となるような割合で配合することが好ましい。
また、本発明の印刷用インキは分散剤を更に含んでもよい。分散剤を更に含むことで塗工した層表面が平滑になる効果が得られる。インキ100重量%とするとき分散剤を3〜10重量%の割合で配合することが好ましい。また、形成するラインのエッジ部におけるシャープネスさが高くなる。分散剤としては、カルボン酸系やリン酸エステル系、ポリカルボン酸高分子アニオンアリルエーテルコポリマー、ポリアミン−脂肪酸縮合物、高分子界面活性剤、高分子脂肪酸、脂肪酸エステル縮合体を使用することが好適である。
本発明の印刷用インキを用いた凹版オフセット印刷法を説明する。
先ず、図1(a)に示すように、所望の凹状パターン10aを有する平面凹版10を印刷版として用意し、この平面凹版10表面に本発明の印刷用インキ11を所定量供給する。供給した印刷用インキ11は、スキージ12を平面凹版10表面にあててスライドさせることにより、凹状パターン10aに埋め込む。次いで、図1(b)に示すように、表面にシリコーンゴムシート13aが取り付けられたブランケットロール13を印刷用ブランケットとして用意し、このブランケットロール13を印刷用インキ11が凹状パターン10aに埋め込まれた平面凹版10上に圧接し、この状態でブランケットロール13を回転させ、平面凹版10上で転がすことにより、平面凹版10の凹状パターン10aに埋め込まれたインキ11の一部をブランケットロール13のシリコーン樹脂シート13a表面に転写する。このときの転写率は平面凹版の凹状パターンやインキに含まれる成分やその比率、印刷用ブランケットの圧接の強弱によっても異なるが、ほぼ50〜60%程度の割合である。なお、ブランケットロール表面にはシリコーンゴムシートの代わりにシリコーン樹脂シートを取り付けてもよい。
次に、図1(c)に示すように、ランプハウス14によって照射部以外が覆われた紫外線ランプ16からブランケットロール13に転写した印刷用インキ11に対して紫外線を照射しながらインキ11を転写したブランケットロール13をガラス基板17のような被転写体に圧接し、この状態でブランケットロール13を回転させ、ガラス基板17上で転がすことにより、図1(d)に示すように、ガラス基板17表面に所望のパターンが転写される。ブランケットロール13に転写されたインキ11へ紫外線照射することによって、本発明の印刷用インキに含まれる感光性粘着樹脂が硬化して、かつ粘着性を発現する。紫外線照射条件は、波長200〜400nmの紫外線を使用し、紫外線の積算光量を500〜1000mJ/cm2の範囲内とすることが好適である。紫外線の積算光量が下限値未満では感光性粘着樹脂が十分に硬化しないため高い凝集性が得られず、粘着性も発現しない。また、紫外線照射時間が上限値を越えても、その効果は変わらない。なお、紫外線ランプ16をランプハウス14によって覆うのは、紫外線照射による人体への悪影響を防ぐためである。
樹脂成分としてオキセタン系樹脂、ポリエステル系若しくはポリエーテル系マレイミド樹脂及びアクリル系マレイミド樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の感光性粘着樹脂を含んだ本発明の印刷用インキは、紫外線を照射する前、即ち、インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填する際、及び充填したインキを印刷用ブランケットへ転写する際には、低粘度で流動性が高いため、この感光性粘着樹脂を含むインキは、印刷版への充填及び印刷用ブランケットへの密着性がそれぞれ良好である。また、上記感光性粘着樹脂は、紫外線を照射した後は、硬化して粘着性を発現するため、インキの凝集力が向上し、印刷用ブランケットからの界面剥離が容易になるとともに、樹脂硬化後においても、被転写体への密着性を保持することが可能となる。従って、上記感光性粘着樹脂を樹脂成分として印刷用インキに使用することで、パターン形状不良を低減させ、かつ、印刷版への充填速度、印刷用ブランケットへの転写速度並びに被転写体への転写速度の速度幅をそれぞれ拡げることができる。
また溶剤成分にジオール系溶剤やグリコールエーテル系溶剤を含むと、印刷用インキ中の樹脂成分を溶解することが可能であり、かつ印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートを膨潤させることがなく、更に溶剤成分として沸点が160℃以下の酢酸エステル、沸点が160℃以下の炭化水素、沸点が170℃以下のケトン類、沸点が170℃以下のメタクリル酸エステル及び沸点が170℃以下のアクリル酸エステルを更に含むと、素早く印刷用ブランケットに浸透して、印刷用ブランケットとインキとの間に溶剤に富んだ弱い境界層(WBL)を形成し、被転写体へのインキの転写を促すという効果を有するため、上記溶剤成分の双方を所定の割合で配合した溶剤成分を印刷用インキに使用することで、印刷用ブランケットを加熱及び冷却することなく、オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができる。
本発明の印刷用インキは、インキをライン幅100μm、深さ25μm、ピッチ360μmの複数の凹状パターンを有する平面凹版からなる印刷版に充填し、充填したインキを表面に厚さ0.1〜1mmのシリコーンゴムシートが取り付けられたブランケットロールからなる印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットからガラス基板からなる被転写体へインキを転写することにより、被転写体の所定位置における9〜16箇所の線幅をそれぞれ測定したときの測定値が85〜95μm、好ましくは90〜95μmの範囲内であり、かつ測定値の標準偏差値が3〜10、好ましくは3〜5の範囲内となることが好適である。印刷パターンの形状変動が上記範囲内であれば、オフセット印刷による長時間連続印刷での使用に適し、印刷の再現性に優れたインクを提供することができる。
次に本発明の実施例を参考例、比較例とともに詳しく説明する。
参考例1〜21及び実施例1〜12
次の表1〜表5に示す粉末成分、樹脂成分(感光性粘着樹脂)、溶剤成分及び分散剤をミキサで混合し、更に三本ロールミルを用いて5〜10Pa・s程度混練することにより、印刷用インキを得た。
凹版オフセット印刷に使用する印刷版としてライン幅100μm、深さ25μm、ピッチ360μmの複数の凹状パターンを有する円筒凹版を、被転写体としてガラス基板をそれぞれ用意した。また、印刷用ブランケットとして表面に厚さ0.3mmのシリコーン樹脂層を有する樹脂シートが取り付けられた直径200mmのブランケットロールを用いた。先ず、円筒凹版表面に得られた印刷用インキを所定量供給し、SUS製スキージを用いて円筒凹版の凹状パターンにインキを埋め込んだ。次に、ブランケットロールを円筒凹版上に圧接した状態で回転させ、円筒凹版上を3m/minの速度で移動させることにより、円筒凹版の凹状パターンに埋め込まれたインキの一部をブランケットロールのシリコーン樹脂シート表面に転写した。紫外線ランプを用いてブランケット上のインキに紫外線を積算光量が700〜800mJ/cm2の範囲内となるように照射して、インキを硬化させた。最後に、ブランケットロールをガラス基板に圧接した状態で回転させ、ガラス基板上を6m/minの速度で移動させることにより、ガラス基板表面に所定のパターンを有する印刷基板を得た。上記オフセット印刷を連続で行い、印刷後、50枚毎にブランケット表面にガラス基板に印刷されずにインキが残っているか確認を行い、インキの残りが確認された枚数を、パイリング開始回数とした。
<比較例1>
樹脂成分として次の表5に示す非感光性樹脂を用いた以外は、参考例1と同様にして印刷用インキを得た。
この印刷用インキを用い、参考例1と同様にしてガラス基板表面に所定のパターンを有する印刷基板を得た。上記オフセット印刷を連続で行い、印刷後、50枚毎にブランケット表面にガラス基板に印刷されずにインキが残っているか確認を行い、インキの残りが確認された枚数を、パイリング開始回数とした。
Figure 0005292905
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表6より明らかなように、比較例1では、パイリング開始印刷回数が500枚であったが、参考例1〜21及び実施例1〜12では、パイリング開始印刷回数が800〜1200枚と、パイリング現象が発生するまでの連続印刷回数が延びることが確認された。
本発明の印刷用インキは、含有成分である粉末成分に金属粉末を使用した場合は、プラズマディスプレイパネルの電極作製に好適であり、有機物を使用した場合には、液晶のカラーフィルタの作製に好適である。
凹版オフセット印刷法の概略図。 傾斜式ボールタック測定法の説明図。
符号の説明
10 平面凹版
10a 凹状パターン
11 印刷用インキ
12 スキージ
13 ブランケットロール
13a シリコーンゴムシート
14 ランプハウス
16 紫外線ランプ
17 ガラス基板

Claims (3)

  1. 無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分をそれぞれ含有したインキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、前記充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、前記印刷用ブランケットに転写したインキに紫外線を照射しながら、前記印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写する凹版オフセット印刷法に使用する印刷用インキにおいて、
    前記樹脂成分がオキセタン系樹脂、ポリエステル系若しくはポリエーテル系マレイミド樹脂及びアクリル系マレイミド樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の感光性粘着樹脂を含み、
    前記溶剤成分としてジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上を含み、
    前記溶剤成分として沸点が160℃以下の酢酸エステル、沸点が160℃以下の炭化水素、沸点が170℃以下のケトン類、沸点が170℃以下のメタクリル酸エステル及び沸点が170℃以下のアクリル酸エステルからなる群より選ばれた2種以上の化合物を更に含む
    ことを特徴とする印刷用インキ。
  2. 前記無機粉末が金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はこれらを混合した混合粉末である請求項1記載の印刷用インキ。
  3. 請求項1又は2記載の印刷用インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、前記充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、前記印刷用ブランケットに転写したインキに紫外線を照射しながら、前記印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写することを特徴とする塗膜の製造方法。
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