JP5292598B2 - 低圧水銀ランプ及び、殺菌または消毒方法 - Google Patents

低圧水銀ランプ及び、殺菌または消毒方法 Download PDF

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本発明は、流水殺菌等、特に上水の殺菌等に用いられる水処理装置用低圧水銀ランプに関するものである。
放射される紫外線を利用する低圧水銀ランプは、紫外線透過性に優れた石英ガラスを発光管に用い、その両端に一対の電極を設置すると共に、この石英発光管内に希ガスと水銀を封入して構成され、殺菌に有効な254nm及び185nmの波長の紫外線を主に効率よく放射することを特徴とするランプである。
従来、この種の低圧水銀ランプを用いて流水殺菌を行なう場合は、例えば、石英ガラス管で構成される直管形ランプスリーブの内側に低圧水銀ランプを配置し、さらにこのスリーブを被処理水が流通する水槽内に設置して、低圧水銀ランプを発光させ紫外線を照射していた。このランプは、その両端に配置されるランプベース(口金)の一部がランプスリーブの内面に接触しているため、ランプ自体の発熱温度と、ランプスリーブの外周を流れる被処理水の温度の両方の影響を受ける。
一般に、低圧水銀ランプは、紫外線出力がランプ点灯時の発光管内の水銀蒸気圧によって左右されるが、発光管壁の最冷部の温度制御によって水銀蒸気圧をコントロールすることができ、また、この最冷部温度が40℃の時、波長254nmの紫外線出力が最大になることが知られている。従来の低圧水銀ランプでは通常、被処理水が流れるランプスリーブ内壁に接触しているランプベースの内部が最も温度が低くなり、従って、発光管壁の最冷部は、発光管端部の、図2に示すような位置Cに形成される。一方、流水殺菌等の対象となる水の温度は約10℃から30℃の範囲にあることが多い。そこで従来は、被処理水の流れるランプスリーブと接するランプベースを通して最冷部に伝わり発光管壁最冷部温度(以下、「Tc」と略す)が40℃になるように構造等のランプ仕様が調整されていた。
特許文献1には、ランプスリーブ(ジャケット)内面に接触するランプベース(口金)の寸法・形状を工夫して同スリーブ内面との接触面積を調整し、Tcを40℃に保つ手法が開示されている。
しかし、従来の低圧水銀ランプでは、紫外線照度がピークとなる温度範囲が狭く、図5に示すように、被処理水温度が10℃の時にTcが約40℃となり、その時に波長254nmの照度がピークとなるが、水温が5度以上変化し、5℃以下となった場合はTcが40℃を下回り、逆に15℃以上となった場合はTcが40℃を上回るために、いずれの場合も波長254nmにおける照度が低下する結果になっていた。このため、約10℃から30℃の範囲で変動し得る被処理水の温度に1種類のランプで適応するのが難しく、特許文献1に記載のように、処理の都度、被処理水の温度に合わせた仕様のランプを用意することで対応するしかないという問題があった。そこで、10℃から30℃の幅広い温度範囲で照度変動が小さく、この範囲のいずれの水温にも1種類で適応できる低圧水銀ランプの提供が求められていた。
特開2007−73472号公報
本発明は、10℃から30℃の被処理水温度範囲で紫外線照度が極力高く維持され、被処理水がこの範囲のいずれの水温の場合にも1種類で適応できる水処理装置用低圧水銀ランプを提供することを課題とする。
請求項1に記載の低圧水銀ランプは、内部にビスマス、インジウム及び錫のうち少なくとも1種以上の金属と水銀とのアマルガムが封入され、両端部はそれぞれ内部に突出する電極に連接したモリブデン箔を介して封着したシール構造を有し、両端部外周にはそれぞれ各端部を囲繞して挟持するランプベースが取り付けられた直管形石英ガラス製発光管を備え、かつ該発光管が、被処理水中に水平姿勢で配置した直管形石英ランプスリーブの中心軸に沿って同スリーブの内側底面上に載置して用いられる水処理装置用低圧水銀ランプにおいて、該発光管内面の両端部の少なくとも一方には前記アマルガムを固定すると共に該発光管内部に向けて開口した凹部が、前記両電極先端の間の発光管内部空間により規定される放電空間の外に形成され、かつ前記ランプベースは、非円筒形状を有し、前記凹部が常に前記発光管の内面の下側に位置し上向きに開口する姿勢を取るように規制する構造を有していることを特徴とする。
請求項2に記載の殺菌または消毒方法は、請求項1に記載の低圧水銀ランプを紫外線発光源として使用して対象物に紫外線を照射し、該対象物を殺菌または消毒することを特徴とする。
請求項1記載の低圧水銀ランプによれば、発光物質をアマルガムの形態で封入しているので、被処理水温度が10℃から30℃の範囲で変動しても紫外線照度の変動が小さく、またこのアマルガムが発光管最冷部に確実に固定されるので、紫外線照度が高く保たれ、従って、被処理水がこの範囲のいずれの水温の場合にも1種類で適応できる低圧水銀ランプを提供することができる。
請求項2記載の殺菌または消毒方法によれば、被処理水が10℃から30℃の範囲のいずれの水温の場合でも、高照度の紫外線を照射することができるので、常に高い殺菌または消毒効果を得ることができる。
本発明の実施例の低圧水銀ランプを使用した流水殺菌装置の一例の主要部の構造概要を一部省略して示した模式的外形図である。 従来の低圧水銀ランプの一例の構造概要を一部省略して示した模式的外形図である。 本発明の低圧水銀ランプに採用されるランプベースの外形の諸例を示す図である。 低圧水銀ランプの端部構造の概要について、発光管軸方向から見た模式的外形図で示した図である。 波長254nmの紫外線照度の水温に対する変動特性を示す図である。
本発明の最良の実施形態を以下に説明する。
図1は、本発明の実施例の低圧水銀ランプを使用した流水殺菌装置の一例の主要部の構造概要を示す模式的外形図である。1は本発明の低圧水銀ランプであり、直管形発光管2の中央部を省略して示してある。3及び3は一対の電極部、5及び5は電極部3及び3とモリブデン箔4及び4とを繋ぐリード線、6及び6はモリブデン箔4及び4と外部電源(図示せず)とを繋ぐリード線であり、7及び7は発光管2の両端をモリブデン箔4及び4を介して封着して形成されたピンチシール部である。図1では、板状のピンチシール部が水平姿勢で描かれている。9は最冷部に形成され発光管2内部に向けて開口した凹部であり、その中にアマルガム10を収納固定している。発光管2両端にはピンチシール部7及び7と、凹部9とその周辺を含む発光管端部とを外側から包囲し嵌入固定するランプベース8及び8が設けられている。図1では、ランプベース8に覆われて外からは見えない発光管端部の構造を、分かり易くするため便宜上、実線で表示し、ランプベース8は破線で表示してある。
こうして構成された低圧水銀ランプ1は、石英ガラス製で、低圧水銀ランプ1の外径より十分に大きい内径を有する直管形ランプスリーブ55の中心軸に沿ってその内側底面上に載置される。本発明の低圧水銀ランプが適用された流水殺菌装置においては、内側に低圧水銀ランプ1を載置したランプスリーブ55は、さらにその外周を水槽またはこれに相当する部材である包囲体56によって包囲されており、ランプスリーブ55と包囲体56との間に被処理水を流通させている。図1に示された流水殺菌装置では、包囲体56の内側に低圧水銀ランプ1を載置したランプスリーブ55が1体配置された例を示したが、本発明の低圧水銀ランプが適用された流水殺菌装置においてはこれに限定されることはなく、包囲体56の内側に低圧水銀ランプ1を載置したランプスリーブ55が複数体配置された構成を取ることも可能である。
本発明の低圧水銀ランプにおいては、発光管内に封入する発光物質としてアマルガムを用いる。この理由は、アマルガムを用いると、発光管内に供給される水銀蒸気が過多とならず、被処理水の温度が約10℃から30℃の範囲で変化する限りでは水銀蒸気圧の変動が小さく、従って紫外線照度の変動も小さいため、ランプ周囲環境の温度変化の影響を最小限にとどめられるからである。水銀とアマルガムを形成する金属物質としては、従来から水銀蒸気圧を制御するために低圧水銀ランプに用いられている金属物質をどれでも用いることができるが、ビスマス、インジウム、錫のうち少なくとも1種の金属と水銀とのアマルガムを用いるのが好ましい。また、このアマルガムにおける水銀の組成比率は15wt%以下であるのが好ましい。これは、水銀の組成比率が15wt%を超えると、水銀単体を封入した場合の特性に近付き、被処理水温に対する紫外線照度の変動が大きくなるからである。なお、水銀の組成比率の下限値は、被処理水温に対する紫外線照度の変動が小さいという条件を満たすと共に、紫外線照射の目的に応じて最適の紫外線照度が実現できる水銀蒸気圧に対応する比率を適宜設定すればよい。この下限値は通常、1wt%である。
次に、上記アマルガムの収納・固定のしかたに関しては、発光管壁最冷部に確実に固定するため、発光管が水平姿勢のときに発光管壁端部の最冷部となる箇所に凹部を形成し、この中に該アマルガムを収納する。すなわち、このアマルガムは、図1に示すように、電極下方の端部寄りの発光管内壁面の最冷部となる箇所に凹部9を穿設して形成し、この中に収納する。アマルガムは、自身の表面張力のため、全体の体積の一部が凹部に収納されていれば脱離・流出することはなく固定される。目安として、アマルガム粒塊の30%以上が凹部に収納されていればよい。収納するアマルガム量が多い場合は、発光管端部のランプベースへの収納の制約上、凹部の深さを深くするのではなく、凹部開口の大きさを広げて対処する。なお、図1では、凹部9は発光管2の一方の端部に設けてあるが、本発明ではこれに限定されることはなく、発光管2の反対側の端部に設けてあってもよく、また、両端部に設けてあってもよい。
上述のように、凹部9は、発光管壁最冷部に相当する位置に設けられる必要がある。凹部9は、図1に示すように、これが十分に冷却され、適度な温度に保たれるようにするため、外面が絶えず流通する被処理水に接触しているランプスリーブ55に内接するランプベース8に覆われる位置の発光管内壁面に形成される。しかし、これだけでは、凹部9は、水平姿勢の発光管の、最冷部が存在する下側内面に設置されるとは限らない。そこで、発光管2端部に嵌入固定されるランプベース8は、凹部9が常に前記発光管の内面の下側に位置し上向きに開口する姿勢を取るように規制する特別な形態を有して構成してある。
ランプベース8が、図4(b)〜(d)に示すように、もし発光管軸方向から見た断面形状が円形(ランプベース8A)である場合は、発光管端部に凹部9を有していたとしても、ランプスリーブ55内部での回転によりその位置が固定されず、従って凹部9の位置もアマルガム10の収納位置も一定にならないため、アマルガム10が発光管壁最冷部に固定されることが保障されない。図4(d)に示す配置になった場合は、ランプベース8のランプスリーブ55との内接点から遠くなって凹部の冷却が不十分となり、アマルガム10の温度が最適値を大きく上回ることになり、水銀蒸気増加による紫外線照度の低下を来たすことになる。
なお、ランプベース8に印を付け、強制的に凹部が下側に配置されるようにする方法も考えられるが、ランプベース8の転がりを避けることができず、凹部の配置に正確さを欠く側面がある。
これに対して、発光管軸方向から見た断面形状が、例えば図3(a)に示すような形状であれば、図4(a)に示すように、ランプスリーブ55内部で少なくとも2箇所以上で支持されるため、ランプベース8の姿勢が固定され、従って、凹部9が常に上向きで開口すると共に、常に発光管壁最冷部となる部位に配置されることとなり、アマルガム10を確実に発光管壁最冷部に収納固定することができる。
発光管軸方向から見たランプベース8の断面形状は、図3に示したものは一例であって、これ以外にも、ランプスリーブ55内部で少なくとも2箇所以上で支持される形態であれば変形が可能である。図3(a)〜(c)及び(e)の形状の場合は2箇所で、図3(d)の場合は3箇所で支持される。支持点が黒丸で示されている。81は、ランプベース8の底面に接着または端部に嵌着されて成る姿勢保持部材である。
図1に示す本発明の実施例の低圧水銀ランプ1は、発光管2が外径15mm、全長1555mmの直管形を使用し、電極部3、3の先端間の距離は1445mmに形成してある。凹部9は、電極部3の斜め下方の発光管内面上に1mm程度の深さで穿設して形成し、その中にビスマス(Bi)(64wt%)−インジウム(In)(32wt%)−水銀(Hg)(4wt%)から成るアマルガム粒塊104mgを収納した。発光管2の両端部のピンチシール部7、7には、図3に示すいずれかの形状のランプベース8、8が嵌め込まれ、接着剤で固定されている。低圧水銀ランプ1は、ランプスリーブ55内側底面上でランプベース8、8によって支持され、ランプスリーブ55の中心軸に沿って載置される。
このように構成した本発明の実施例の低圧水銀ランプの、定格電力240Wで点灯させた時の紫外線照度特性は、次のようにして測定した。すなわち、紫外線照度測定を行ない易くするため、図1に示すように、ランプスリーブ55の外周にそれよりも径の大きいスリーブ56を配置し、ランプ外周を二重管構造とし、スリーブ55と56の間に水を流通させ、その水温は5℃から50℃まで5℃刻みで変化させ、低圧水銀ランプ1の中心部から3m離れた箇所に紫外線照度計を設置し、波長254nmにおける照度を測定した。
比較のため、図2に示す従来構造を有しアマルガムを使用しない低圧水銀ランプ21を図1と同様の二重管構造を有するスリーブ内側底面に設置し、上記と同様の方法で波長254nmにおける照度を測定した。低圧水銀ランプ21は、発光管22内封入物としてアマルガムの代わりに水銀を使用し、発光管端部の最冷部近辺に凹部を持たない以外は、本発明の低圧水銀ランプ1と同一の構成とした。
上記紫外線照度測定の結果を図5に示す。波長254nmにおける紫外線照度特性について、最冷部となるべき部位に確実にアマルガムが固定できる本発明の低圧水銀ランプと従来の低圧水銀ランプとを図5に基づいて比較すると、本発明のランプの場合、水温10℃から30℃の範囲において照度変化が小さくフラットな特性を有しているのに対して、従来の低圧水銀ランプの場合は、10℃で照度がピークとなり、これより温度が上がるにつれ照度が低下していき、30℃では本発明よりも約4割程度照度が低くなった。
この理由としては、従来は水銀をアマルガムの形態ではなく水銀単体で発光管に封入されていたので、発光管内に供給される水銀蒸気が過多となり、水銀蒸気圧が最適値を上回り、光束の低下をもたらしていたが、本発明の場合は、アマルガムの形態で封入されるので、水銀蒸気圧が過度に上昇することが起きないためと考えられる。このため、ランプスリーブ外周の水温が10℃から30℃の範囲で変動しても比較的フラットな照度特性を保っている。
以上説明したように、本発明の低圧水銀ランプは、10℃から30℃の被処理水温度範囲で紫外線照度の変化が小さく照度値が高く維持され、被処理水がこの範囲のいずれの水温の場合にも1種類のランプで適応できる。また、本発明の殺菌または消毒方法によれば、被処理水が10℃から30℃の範囲のいずれの水温の場合でも、高照度の紫外線を照射することができるので、従来には無い優れた殺菌または消毒効果を得ることができる。
本発明は、低圧水銀ランプを用いた流水殺菌装置、紫外線酸化水処理装置などに利用することができる。
1、21…低圧水銀ランプ
2、22…発光管
3、23…電極部
4、24…モリブデン箔
5、25…リード線
6、26…リード線
7、27…ピンチシール部
8、8A、28…ランプベース
9…凹部
10…アマルガム
30…水銀
55…ランプスリーブ
56…包囲体
81…姿勢保持部材
C…最冷点

Claims (2)

  1. 内部にビスマス、インジウム及び錫のうち少なくとも1種以上の金属と水銀とのアマルガムが封入され、両端部はそれぞれ内部に突出する電極に連接したモリブデン箔を介して封着したシール構造を有し、両端部外周にはそれぞれ各端部を囲繞して挟持するランプベースが取り付けられた直管形石英ガラス製発光管を備え、かつ該発光管が、被処理水中に水平姿勢で配置した直管形石英ランプスリーブの中心軸に沿って同スリーブの内側底面上に載置して用いられる水処理装置用低圧水銀ランプにおいて、該発光管内面の両端部の少なくとも一方には前記アマルガムを固定すると共に該発光管内部に向けて開口した凹部が、前記両電極先端の間の発光管内部空間により規定される放電空間の外に形成され、かつ前記ランプベースは、非円筒形状を有し、前記凹部が常に前記発光管の内面の下側に位置し上向きに開口する姿勢を取るように規制する構造を有していることを特徴とする低圧水銀ランプ。
  2. 請求項1に記載の低圧水銀ランプを紫外線発光源として使用して対象物に紫外線を照射し、該対象物を殺菌または消毒することを特徴とする殺菌または消毒方法。
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