JP5290558B2 - ナチュラルヘナ抽出物とその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、ナチュラルヘナの抽出物および該抽出物に含まれる新規フラバンダイマー化合物またはそれらの塩に関する。
より詳細には、本発明は、インドおよびスリランカに多年生植物として自生するか、または栽培されているマメ科植物であるカッシア アウリクラタ(Cassia auriculata)の葉部を主として含む地上部(通称:ナチュラルヘナ)の含水アセトン抽出物および/または該抽出物に含まれる新規フラバンダイマー化合物またはそれらの塩の用途に関する。
さらに詳細には、本発明は、上記の抽出物または該抽出物に含まれ、スーパーオキシドラジカルの消去活性、メラニン生成抑制活性、アルドース還元酵素阻害活性および肝保護作用を有する新規フラバンダイマー化合物またはそれらの塩の少なくとも一つを含有する美白用香粧品および該組成物が添加されてなる健康食品に関する。
C. auriculataは、タンニンを含み獣皮をなめすために用いられる収斂性樹皮を産することで最も知られている。
また、ナチュラルヘナの浸煎液には僅かに芳香臭があり、スリランカでは紅茶の代わりにマタラ(marter)チャとして飲用されている。
さらに、ナチュラルヘナには、抗糖尿病、抗結膜炎、抗皮膚病および瀉下作用があると報告されている(例えば、非特許文献1)。
また、近年、上記C. auriculataの葉部抽出物が皮膚および毛髪において優れた清浄およびコンディショニング効果示し、該抽出物を含む化粧品製剤についても報告されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、ナチュラルヘナの抽出物が、スーパーオキシドラジカルの消去活性作用、メラニン生成抑制活性作用、アルドース還元酵素阻害活性作用および肝保護作用を有すること、ならびに上記の薬理作用の有効成分については何ら報告されていなかった。
特表2001-517611号公報 Rao G. N.ら、Fitoterapia、71、82-83 (2000)
本発明は、ナチュラルヘナの新規用途の開発を課題とする。
本発明者は、インド産ナチュラルヘナの含水アセトン抽出物、および該抽出物の水−酢酸エチル分配により得られる酢酸エチル移行部について、各種クロマトグラフィーにより分離精製し、ヘナの80%含水アセトン抽出物、酢酸エチル可溶画分濃縮物および各精製段階における酢酸エチル可溶画分の薬理作用を指標としてその含有成分を鋭意研究し、新規フラバンダイマー化合物を見出し、それらの化学構造を決定すると共に、当該化合物の薬理作用についても知見を得、ナチュラルヘナの新規用途を確立し、上記の課題を解決する。
すなわち、本発明によれば、 次の一般式(1):
[式中、R1は、次の式(2)〜(4):
[ここで、R2は、次の式(5)または(6):
で表される基である]
で表される基のいずれか一つである]
で表されるフラバンダイマー化合物またはそれらの塩が提供される。
また、本発明によれば、上記の本発明による化合物およびこれらの化合物を含有するナチュラルヘナ抽出物は、いずれもスーパーオキシドラジカルの消去活性作用およびメラニン生成抑制活性作用を有し、また、アルドース還元酵素阻害活性作用を有し、さらに肝保護作用も有するので、上記化合物の少なくとも一つまたは上記抽出物を有効成分として含む、美白、糖尿病または肝保護用医薬組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の組成物を含む美白用香粧品ならびに抗糖尿病および肝保護を意図する健康食品が提供される。
本発明は、ナチュラルヘナの水または含水低級アルコールまたは含水アセトン抽出物および/または該抽出物を必要に応じてさらに精製したナチュラルヘナ抽出物に含まれる、
上記の一般式(1)で表されるフラバンダイマー化合物またはそれらの塩およびそれらの使用に関している。
上記一般式(I)で表されるフラバンダイマー化合物の塩としては、当該化合物におけるフェノール性アルコールがナトリムまたはカリウムと形成する塩が挙げられる。
本発明において、用いられるナチュラルヘナとは、マメ科植物であるカッシア アウリクラタ(Cassia auriculata)の葉部を主として含む地上部、特に葉部を意味する。
本発明において、ナチュラルヘナは、採取したものをそのまま、もしくは乾燥して、または乾燥物を粉砕して用いることができる。
本発明の抽出物の調製に用いられる溶媒に関して、水およびアセトン以外の低級アルコールとしては、炭素数1〜4のモノアルコールまたはジアルコール類が挙げられる。
具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールもしくはt-ブタノールまたはこれらの混液あるいはこれらの任意の割合における含水アルコール等が挙げられる。さらに、エタンジオール、プロパンジオールおよびブタンジオールおよびこれらの位置異性体またはこれらの混液あるいはこれらの任意の割合における含水ジアルコール等が挙げられる。
上記の溶媒の中でも含水アセトン、特に含水80%アセトンが抽出効率の観点から好ましい。
また、本願発明による化合物またはナチュラルヘナ抽出物は、医薬品組成物、香粧品または健康食品に利用されるので、含水エタノール、特に約80%エタノールで抽出することもできる。
しかしながら、本発明において抽出溶媒として用いられる上記の含水アセトンにおけるアセトン含量および含水エタノールにおけるエタノール含量は、それぞれ厳密に80%に限定されるものではない。
これらの抽出用溶媒は、抽出材料に対して1〜50倍(容量)程度、好ましくは2〜10倍(容量)程度用いられる。
なお、抽出は、熱時または室温で行うことができ、抽出温度は、室温と溶媒の沸点の間で任意に設定できる。熱時抽出の場合、例えば、50℃〜抽出溶媒の沸点の温度で、振盪 (または撹拌)下もしくは非振盪下または還流下に、ナチュラルヘナを上記の抽出溶媒に浸漬することによって行うのが適当である。抽出材料を振盪下に浸漬する場合には、30分間〜5時間程度行うのが適当であり、非振盪下に浸漬する場合には、1時間〜2日間程度行うのが適当である。また、抽出溶媒の還流下に抽出するときは、30分〜数時間加熱還流するのが好ましい。
また、50℃より低い温度、例えば室温で浸漬して抽出することも可能であり、その場合には、上記の時間よりも長時間、例えば5時間〜7日間程度浸漬するのが好ましい。抽出操作は、同一材料について1回だけ行ってもよいが、複数回、例えば、2〜5回程度繰り返すのが抽出効率の点から好ましい。
固形物を、抽出後にろ別して得られる抽出液は、常法により濃縮して抽出エキスとしてもよい。濃縮は、減圧下に行うのが好ましい。また、濃縮は抽出液が乾固するまで行ってもよい。
抽出物は、そのまま本発明の組成物を調製するのに用いてもよいが、粉末状または凍結乾燥品等として用いてもよい。これらの固形物とする方法は、当該分野で公知の方法を採用することができる。
したがって、本発明における抽出物とは、抽出液、抽出エキス、濃縮乾固物または凍結乾燥物のいずれも意味するが、本発明による抽出物は、精製せずにそのまま用いることもでき、本発明の一部を構成している。
しかしながら、本発明では、抽出液を濃縮した抽出物を、溶媒による分配抽出、すなわち、水と非水和性有機溶媒とを用いる分配抽出に単回または複数回付し、有機溶媒可溶画分と水溶性画分として分離することができる。
非水和性有機溶媒としては、酢酸エチル、n-ブタノール、ヘキサン、クロロホルムなどが挙げられるが、中でも酢酸エチルが好ましい。
すなわち、ナチュラルヘナ抽出物を濃縮して得られた抽出物を、必要に応じて酢酸エチルと水を用いて分配し、酢酸エチル可溶画分と水溶性画分として得ることができる。
また、上記で得られる水溶性画分を、さらに水と非水和性有機溶媒を用いる分配抽出に付し、有機溶媒可溶画分と水溶性画分として分離することができる。
この場合の非水和性有機溶媒としては、n-ブタノール、ヘキサン、クロロホルムなどが挙げられるが、中でもn-ブタノールが好ましい。
すなわち、上記の酢酸エチルと水との分配後の水溶性画分をそのままn-ブタノールとの分配に付すか、または該水溶性画分を濃縮して得られる残渣をさらに水とn-ブタノールとの分配に付し、n-ブタノール画分と水溶性画分を得ることができる。
分配抽出は、当該分野で通常行われる撹拌もしくは振盪分配法または液滴向流分配法などの常法に従って行うことができる。例えば、室温下、振盪下または非振盪下に、抽出エキスなどに対して、非水和性有機溶媒と水とを1〜10倍 (容量)程度 (1:10〜10:1)加えて行うのが適当である。
なお、上記のナチュラルヘナ抽出物および各分配抽出物は、上記のいずれの段階においても、濃縮する前後に精製処理に付すことができる。
精製処理には、上記の溶媒による分配抽出以外に、当業者に公知のクロマトグラフ法、イオン交換クロマトグラフ法等を単独で、または組み合わせて採用することができる。例えば、クロマトグラフ法としては、順相もしくは逆相担体またはイオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーまたは遠心液体クロマトグラフィー等のいずれか、またはそれらを組み合わせて行う方法が挙げられる。この際の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。
本発明者は、ナチュラルヘナ抽出物の含有成分を、上記の精製方法を組み合わせて精製すると同時に精製物の作用について検討した。
そこで、本発明者は、上記の酢酸エチル画分について、逆相カラムを用いたクロマトグラフィーおよびHPLCによる精製を繰り返し、含有成分の単離を行った。
その結果、本発明者は、既知物質として酢酸エチル可溶画分から、公知物質であるクリソファノール、エモジン、ファイシオン、ランセオラチンB、プソイドセミグラブリン、6-デメトキシ-7-メチルカピラリシン、ルテオリン、3-メトキシルテオリン、イソケルセチン、ケルセチン、ケンフェロール、ミリセチン、6-デメトキシカピラリシン、(+)-カテキン、(−)-エピカテキン、ルチン、(+)-ガロカテキン、(−)-エピガロカテキン、ケンフェロール-3-O-β-D-グルコシド、ミリセチン-3-O-β-D-グルコシドを単離すると共に、新規フラバンダイマー化合物として、化合物I、化合物IIa、化合物IIb、化合物IIIaおよび化合物IIIbを見出し、それらの構造を決定した。
また、本発明者は上記のナチュラルヘナ抽出物、該抽出物の酢酸エチル可溶画分および上記の新規フラバンダイマー化合物のいずれもが、スーパーオキシドラジカルの消去活性作用、メラニン生成抑制活性作用、アルドース還元酵素阻害活性作用および肝保護作用を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、次の一般式(1):
[式中、R1は、次の式(2)〜(4):
[ここで、R2は、次の式(5)または(6):
で表される基である]
で表される基のいずれか一つである]
で表されるフラバンダイマー化合物またはそれらの塩が提供される。
ことに、本発明によれば、上記一般式(1)の化合物において、R1が、式(7):
で表されるフラバンダイマー化合物またはその塩が提供される。
また、本発明によれば、上記一般式(1)の化合物において、R1が、式(8):
で表されるフラバンダイマー化合物またはその塩が提供される。
また、本発明によれば、上記一般式(1)の化合物において、R1が、式(9):
で表されるフラバンダイマー化合物またはその塩が提供される。
また、本発明によれば、上記一般式(1)の化合物において、R1が、式(10):
で表されるフラバンダイマー化合物またはその塩が提供される。
また、本発明によれば、上記一般式(1)の化合物において、R1が、式(11):
で表されるフラバンダイマー化合物またはその塩が提供される。
より詳細には、本発明によれば、式(I):
で表される化合物(I)またはその塩が提供される。
また、本発明によれば、式(IIa):
で表される化合物(IIa)またはその塩が提供される。
また、本発明によれば、式(IIb):
で表される化合物(IIb)またはその塩が提供される。
また、本発明によれば、式(IIIa):
で表される化合物(IIIa)またはその塩が提供される。
また、本発明によれば、式(IIIb):
で表される化合物(IIIb)またはその塩が提供される。
インド産ナチュラルヘナ抽出物の調製および該抽出物含有成分の単離精製
例えば、インド産の乾燥ナチュラルヘナ(Cassia auriculataの葉部) 1.5 kgを、含水80%アセトンを用いてナチュラルヘナ抽出物を調製し、該ナチュラルヘナ抽出物を精製した例を表1および以下に示す。
(1)ナチュラルヘナのアセトン抽出物の調製
以下に示す操作に従って、乾燥ナチュラルヘナ(Cassia auriculataの葉部) 1.5 kgを含水80%アセトン19Lに室温で12時間浸漬し、ろ過し、ろ取したナチュラルヘナを、さらに同様の操作を2回繰り返して抽出液を得た。抽出液をろ過して合せ、溶媒を減圧留去し、ナチュラルヘナ抽出物としてアセトン抽出物(407.7 g、収率27.18%)を得た。
得られたアセトン抽出物のうち377.7 gをAcOEt:H2O=1:1の混液で分配抽出し、次いでH2O移行部をn-BuOHで分配抽出し、AcOEt移行部(164.1 g、11.81%)、n-BuOH移行部(63.7 g、4.58%)、H2O移行部(149.9 g、10.79%)を得た。DPPHラジカル消去活性が認められたAcOEt移行部について、該活性を指標として含有成分の探索を行った。
(2)AcOEt移行部の精製
EtOAc移行部を順相シリカゲルクロマトグラフィー、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび逆相HPLCで順次分離精製して、公知物質としてクリソファノール (0.00083%)、エモジン (0.00084%)、ファイシオン (0.0016%)、6-デメトキシ-7-メチルカピラリスム (0.0013%)、プソイドセミグラブリン (0.0011%)、ランセオラチンB (0.0015%)、イソケルセチン (0.00094%)、ミリセチン (0.00070%)、ケルセチン (0.0012%)、ルテオリン
(0.010%)、3-メトキシルテオリン (0.0018%)、6-デメトキシカピラリシン (0.0010%)、ケンフェロール (0.0027%)、(+)-カテキン (0.0037%)、(−)-エピカテキン (0.0060%)、(2S)-4',7-ジヒドロキシフラバン-(4β-8)カテキン (0.00075%)、(2S)-4',7-ジヒドロキシフラバン-(4β-8)エピカテキン (0.00070%)、(+)-ガロカテキン (0.0086%)、(−)-エピガロカテキン(0.0027%)、(2S)-4',7-ジヒドロキシフラバン-(4β-8)ガロカテキン (0.092%)、(2S)-4',7-ジヒドロキシフラバン-(4α-8)エピガロカテキン (0.071%)、(2S)-4',7
-ジヒドロキシフラバン-(4β-8)エピガロカテキン (0.068%)、ケンフェロール-3-O-β-D-グルコシド (0.0050%)、ルチン (0.8714%)、ミリセチン-3-O-β-D-グルコシド (0.0016%)を単離し、さらに、新規物質として、化合物I (0.00071%)、化合物IIa-IIb (0.0045%)、化合物IIIa-IIIb (0.0032%)を見出した。
上記の既知化合物については、文献値との1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルデータの比較により同定した。
但し、これらの単離成分の収率は、抽出に用いたナチュラルヘナからの単離収率である。
(3) 化合物(I)の構造解析
化合物(I)は、正の旋光性 ([α]D 26 +146.6°、MeOH)を示す黄色粉末として得られた。IRスペクトルからフェノール性アルコール(3430 cm-1)、C-C二重結合(1645、1636 cm-1)、およびエーテル(1075 cm-1)の存在が示唆された。
さらに高分解能FAB-MSから分子式C30H26O9を有する化合物であることが判明した。
また、化合物(I)の1H-および13C-NMR(アセトン-d6)スペクトルデータ(表2および3)、種々の二次元NMRデータを詳細に解析し、さらに、Hatano T.らにより、Phytochemistry、46、第893-900頁、1997に記載の類似化合物と比較して、立体構造を決定した。
以上の結果から、化合物(I)の化学構造を以下に示すように決定した。
(4) 化合物(IIa)および化合物(IIb)の構造解析
化合物(IIa)および化合物(IIb)についても同様の方法により構造解析を行った。その結果を以下に示す。
(5) 化合物(IIIa)および化合物(IIIb)の構造解析
化合物(IIIa)および化合物(IIIb)についても同様の方法により構造解析を行った。その結果を以下に示す。
本発明者は、上記の本発明による化合物(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)および(IIIb)ならびにこれらの化合物を含有するナチュラルヘナ抽出物が、いずれもスーパーオキシドラジカルの消去活性およびメラニン生成抑制活性を有し、また、アルドース還元酵素阻害活性を有し、さらに肝保護作用も有することを見出し本発明を完成した。
したがって、本発明によれば、本発明による上記化合物の少なくとも一つまたはこれらの化合物を含有するナチュラルヘナ抽出物を有効成分として含む医薬組成物が提供される。
すなわち、スーパーオキシドラジカルの消去用、メラニン生成抑制用、アルドース還元酵素阻害用および肝保護用医薬組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記の組成物を含む香粧品、特に美白用香粧品および健康食品が提供される。
本発明のナチュラルヘナ抽出物、すなわち含水80%アセトン抽出物、該抽出物の酢酸エチル可溶画分またはこれらの濃縮乾固物に含まれるか、あるいは精製した上記の本発明による化合物(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)および(IIIb)は、そのままの状態、または適当な媒体で希釈して、あるいは医薬品の製造分野において公知の方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤または液剤等、種々の医薬品の形態に製剤化して使用することができる。
これらの医薬品形態においては、適当な媒体を添加してもよい。そのような媒体としては、医薬的に許容される賦形剤、例えば結合剤 (例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガントまたはポリビニルピロリドン)、充填剤 (例えば乳糖、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン)、滑沢剤 (例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはポリエチレングリコール)、崩壊剤 (例えば馬鈴薯澱粉)または湿潤剤 (例えばラウリル硫酸ナトリウム)等が挙げられる。
錠剤は、通常の方法でコーティングしてもよい。液体製剤は、例えば水性または油性の懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップまたはエリキシルの形態であってもよく、使用前に水または他の適切な賦形剤で再生する乾燥製品として提供してもよい。
こうした液体製剤は、通常の添加剤、例えば懸濁化剤 (例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン水添加食用脂)、乳化剤 (例えばレシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアラビアゴム)、(食用脂を含んでいてもよい)非水性賦形剤 (例えばアーモンド油、分画ココヤシ油またはグリセリン、プロピレングリコールまたはエチルアルコールのような油性エステル)、保存剤 (例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、またはソルビン酸)、および所望により着色剤または香料等を含んでいてもよい。
また、本発明による組成物は、食品に添加して健康食品として利用することができる。
健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で保健、健康維持・増進等を目的とした食品を意味し、例えば、固形、半固形または液体の製品、具体的には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤または液剤等のほか、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、うどん等の麺類、清涼飲料、お茶類、栄養飲料、スープ等の形態が挙げられる。
これらの食品の製造工程において、あるいは最終製品に、上記の抽出物を添加して、健康食品とすることができる。
また、本発明による組成物は、香粧品に添加して香粧品、特に美白用香粧品として利用することができる。
上記の香粧品としては、美白用化粧水、美白用乳液、美白用クリーム、美白用エッセンス、美白用パック、クレンジングクリーム、洗顔料、化粧用下地、日焼け止め化粧用下地、ファンデーション、ボディーシャンプー、ボディーローション、全身用日焼け止め乳液、シャンプー、トリートメント、頭髪用ローション、頭髪用パック、ハンドクリーム、リップクリーム、入浴剤などが挙げられる。
上記の香粧品の添加剤としては、当業者に公知の添加剤を用いることができる。
また、上記の香粧品に用いられる香料としては、例えば、フトモモ葉エキス、酢酸カリオフィレン、ヘリオトロピン、ユーカリ油、ローズ水、ラベンダー油またはハッカ油等が挙げられるが、これらの香料から製品に応じて適宜選択し、その適量を添加することができる。
ナチュラルヘナ抽出物および該抽出物が含む本発明による化合物の使用量は、年齢、症状等によって異なるが、例えば該抽出物の濃縮乾固物を予防・治療に用いる場合には、成人1回につき50mg〜10g程度、好ましくは100mg〜3g程度使用できる。また、健康食品として使用する場合には、食品の味や外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対し上記乾固物を、100mg〜10g程度の範囲で用いることができる。
以下、本発明のナチュラルヘナ抽出物ならびに上記の本発明による化合物(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)および(IIIb)の精製法、また、それらの作用、ならびに本願組成物を用いた実施例を具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明をなんら制限するものではない。
なお、実施例では、特に記載がない限り、以下の各種溶媒、クロマトグラフィー用担体およびHPLC用カラムならびに各種分析器機を用いた:
アセトン:ナカライテスク社製、特級
メタノール(MeOH):ナカライテスク社製、特級
エタノール(EtOH):ナカライテスク社製、特級
クロロホルム:ナカライテスク社製、特級
酢酸エチル(AcOEt):ナカライテスク社製、特級
n-ブタノール(BuOH):ナカライテスク社製、特級
カラムクロマトグラフィー用順相シリカゲル (SiO2):富士シリシア化学社製、BW-200、150〜350メッシュ
カラムクロマトグラフィー用逆相シリカゲル:富士シリシア化学社製、Chromatorex ODS DM1020T、100〜200メッシュ
HPLC用カラム:NACALAI TESQE社製、COSMOSIL、5C18-PAQ (20×250 mm)
NMR:日本電子データム株式会社製(JEOL)、EX-270(270 MHz)、JNM-LA500(500 MHz)、ECA-600K(600 MHz)
IR:島津製作所社製、FTIR-8100
HPLC:島津製作所社製、検出器;示差屈折率検出器RID-6A
送液ユニット;LC-6AD
GC:島津製作所GC-14A
MS:日本電子データム社製(JEOL)、FABMS、HRFABMAS;JMS-SX 102A
EIMS、HREIMS;JMS-GCMATE
また、核磁気共鳴 (NMR)スペクトルにおいて、化学シフトδは百万分の一 (ppm)で表示し、略語はそれぞれ次の意味を有する:s:シングレット; d:ダブレット;dd:ダブルダブレット;t:トリプレット; q:クァルテット;dq:ダブルクァルテット;Ac;アセチル基;Tig:チグロイル基。
実施例1
(1)ナチュラルヘナ抽出物の調製
細断した乾燥インド産ナチュラルヘナ (Cssia auriculataの葉部) 1.5 kgを含水80%アセトン19Lに、室温で12時間浸漬抽出した。抽出液を濾過し、残渣を同量の含水80%アセトンに再度浸漬し、同様の抽出操作を計3回行った。ろ過した含水アセトン抽出液を合わせて減圧下溶媒留去し、アセトン抽出エキス(407.7 g、収率27.18%)を得た。
得られたアセトン抽出エキスのうち377.7 gをAcOEt:H2O=1:1の混液20Lで分配抽出後水層をさらにAcOEt10Lで2回抽出した。得られた水相をn-BuOH6Lで3回分配抽出し、各可溶画分を減圧下溶媒留去して、AcOEt可溶エキス(164.1 g、11.81%)、n-BuOH可溶エキス(63.7 g、4.58%)、H2O可溶エキス(149.9 g、10.79%)を得た。
(2)AcOH移行画分の精製
得られたAcOEt可溶エキス(144.1 g)を順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[2.5 kg、溶出剤;ヘキサン:酢酸エチル=10:1 → 5:1 → 2:1 → 1:1 → 1:2(容量)の濃度勾配で溶出し、次いで、CHCl3:MeOH:H2O=10:3:1 (下層) → 7:3:1 (下層) → 6:4:1 (下層) → 100%MeOH]で溶出分画して、以下のフラクション:Fr. 1 (1.
92 g)、Fr. 2 (10.19 g)、Fr. 3 (2.09 g)、Fr. 4 (2.66 g)、Fr. 5 (9.27 g)、Fr. 6 (65.07 g)、Fr. 7 (1.19 g)およびFr. 8 (35.70 g)を得た。
上記のFr. 1 (1.92 g)を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[60g、溶出剤;MeOH:H2O=40:60 → 60:40 → 75:25(容量)→ 100%MeOH]にて分画し、Fr. 1-1 (18 mg)、Fr. 1-2 (63 mg)、 Fr. 1-3 (70 mg)、Fr. 1-4 (65 mg)、Fr. 1-5 (182 mg)、Fr. 1-6 (579 mg)およびFr. 1-7 (567 mg)を得た。
得られたFr. 1-1 (18 mg)を、さらに、逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=80:20 (容量)] を用いて分離精製し、クリソファノール(5.0 mg、0.00041%)を単離した。
上記のFr. 2 (4.45 g)を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[60g、溶出剤;MeOH:H2O=40:60 → 60:40 → 75:25 → 90:10 (容量) → 100%MeOH]にて分画し、Fr.
2-1 (34 mg)、Fr. 2-2 (43 mg)、Fr. 2-3 (25 mg)、Fr. 2-4 (420 mg)、Fr. 2-5 (354 mg)およびFr. 2-6 (2830 mg)を得た。
得られたFr. 2-2 (43 mg)を、さらに、逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=80:20 (容量)]を用いて分離精製し、クリソファノール(5.1 mg、0.00042%)、エモジン(10.2
mg、0.00084%)を得た。
また、上記のFr. 2-3 (25 mg)、Fr. 2-4 (420 mg)およびFr. 2-5 (354 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=85:15 (容量)]を用いて分離精製してファイシオン(19.1 mg、0.0016%)を単離した。
上記のFr. 3 (2.09 g)を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[60 g、溶出剤;MeOH:H2O=30:70 → 50:50 → 70:30 → 90:10 (容量) → 100%MeOH]にて分画しFr. 3-1 (83 mg)、Fr. 3-2 (60 mg)、Fr. 3-3 (35 mg)、Fr. 3-4 (61 mg)、Fr. 3-5 (59 mg)、Fr. 3-6 (141 mg)、Fr. 3-7 (57 mg)、Fr. 3-8 (245 mg)およびFr. 3-9 (707 mg)を得た。
得られたFr. 3-4 (61 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=65:35
(容量)]を用いて分離精製し、6-デメトキシ-7-メチルカピラリスム(16.3 mg、0.0013%)、プソイドセミグラブリン(13.0 mg、0.0011%)を単離した。
また、上記のFr. 3-5 (59 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=65:35 (容量)]を用いて分離精製し、ランセオラチンB(17.9 mg、0.0015%)を得た。
上記のFr. 4 (2.66 g) を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[80 g、溶出剤;MeOH:H2O=15:85 → 30:70 → 45:55 → 60:40 → 75:25 (容量) → 100%MeOH]にて分画し、Fr. 4-1 (146 mg)、Fr. 4-2 (204 mg)、Fr. 4-3 (31 mg)、Fr. 4-4 (114 mg)、Fr. 4-5 (309 mg)、Fr. 4-6 (152 mg)、Fr. 4-7 (80 mg)、Fr. 4-8 (50 mg)、Fr. 4-9 (46
mg)、Fr. 4-10 (141 mg)、Fr. 4-11 (116 mg)およびFr. 4-12 (761 mg)を得た。
得られたFr. 4-4 (114 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=40:60 (容量)]を用いて分離精製し、イソケルセチン(11.5 mg、0.00094%)、ミリセチン(8.5 mg、0.00070%)を得た。
また、上記のFr. 4-5 (309 mg)をさらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=55:45 (容量)およびCH3CN:H2O=30:70 (容量)]を用いて分離精製し、ケルセチン(14.7 mg、0.0012%)、ルテオリン(122.2 mg、0.010%)、3-メトキシルテオリン(22.3 mg、0.0018%)、6-デメトキシカピラリスム(12.5 mg、0.0010%)を得た。
また、上記のFr. 4-6 (152 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=50:50 (容量)]を用いて分離精製し、ケンフェロール(32.4 mg、0.0027%)を単離した。
上記のFr. 5 (9.27 g) を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[280 g、溶出剤;MeOH:H2O=15:85 → 30:70 → 45:55 → 60:40 → 75:25 → 90:10 (容量) → 100%MeOH]にて分画し、Fr. 5-1 (587 mg)、Fr. 5-2 (147 mg)、Fr. 5-3 (113 mg)、Fr. 5-4
(316 mg)、Fr. 5-5 (100 mg)、Fr. 5-6 (215 mg)、Fr. 5-7 (1542 mg)、Fr. 5-8 (515 mg)、Fr. 5-9 (189 mg)、Fr. 5-10 (323 mg)、Fr. 5-11 (211 mg)、Fr. 5-12 (101 mg)、Fr. 5-13 (113 mg)、Fr. 5-14 (1197 mg)およびFr. 5-15 (2538 mg)を得た。
得られたFr. 5-2 (147 mg)およびFr. 5-3 (113 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=20:80 (容量)]を用いて分離精製し、(+)-カテキン(45.5 mg、0.0037%)を得た。
上記のFr. 5-4 (316 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=25:75 (容量)]を用いて分離精製し、(−)-エピカテキン(73.0 mg、0.0060%)を単離した。
また、上記のFr. 5-8 (515 mg)を、さらに逆相HPLC[検出:RI、MeOH:H2O (45:55 (容量)およびCH3CN:H2O (30:70 (容量)]を用いて分離精製し、化合物(IIa)+(IIb)(54.6 mg、0.0045%)、化合物(IIIa)+(IIIb)(38.5 mg、0.0032%)を得た。
また、上記のFr. 5-10 (323 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=50:50 (容量)]を用いて分離精製し、化合物(I)(8.7 mg、0.00071%)、(2S)-4',7-ジヒドロキシフラバン-(4β-8)-カテキン(9.2 mg、0.00075%)および(2S)-4',7-ジヒドロキシフラバン-(4β-8)-エピカテキン(8.6 mg、0.00070%)を得た。
上記のFr. 6 (50.0 g)を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1.5 kg、溶出剤;MeOH:H2O=15:85 → 30:70 → 50:50 → 70:30 (容量) → 100%MeOH]にて分画し、Fr. 6-1 (461 mg)、Fr. 6-2 (162 mg)、Fr. 6-3 (1234 mg)、Fr. 6-4 (218 mg)、Fr. 6-5 (768 mg)、Fr. 6-6 (395 mg)、Fr. 6-7 (6655 mg)、Fr. 6-8 (6350 mg)、Fr. 6-9 (2666 mg)、Fr. 6-10 (4713 mg)、Fr. 6-11 (2116 mg)、Fr. 6-12 (2252 mg)、Fr. 6-13 (8210 mg)およびFr. 6-14 (8166 mg)を得た。
得られたFr. 6-3 (1234 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=15:85 (容量)]を用いて分離精製し、(+)-ガロカテキン(81.1 mg、0.0086%)を得た。
また、上記のFr. 6-5 (768 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=20:80 (容量)]を用いて分離精製し、(−)-ガロカテキン(25.7 mg、0.0027%)を得た。
また、上記のFr. 6-7 (500 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=35:65 (容量)]を用いて分離精製し、(2S)-4',7-ジヒドロキシフラバン-(4β-8)-ガロカテキン(64.6 mg、0.092%)および(2S)-4',7-ジヒドロキシフラバン-(4α-8)-(エピ)ガロカテキン(混合物、50.0 mg、0.071%)を得た。
また、上記のFr. 6-9 (630 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=40:60 (容量)]を用いて分離精製し、(2S)-4',7-ジヒドロキシフラバン-(4β-8)-エピガロカテキン(15.0 mg、0.068%)を得た。
また、上記のFr. 6-12 (580 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=50:50 (容量)]を用いて分離精製し、ケンフェロール-3-O-β-D-グルコシド(12.7 mg、0.0050%)を得た。
また、上記のFr. 6-13 (800 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=40:60 (容量)]を用いて分離精製し、ルチン(128.5 mg、0.14%)を得た。
上記のFr. 7 (14.54 g)を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[420 g、溶出剤;MeOH:H2O=30:70 → 45:55 → 60:40 → 75:25 (容量) → 100%MeOH]にて分画し、F
r. 7-1 (500 mg)、Fr. 7-2 (846 mg)、Fr. 7-3 (856 mg)、Fr. 7-4 (689 mg)、Fr. 7-5 (3670 mg)、Fr. 7-6 (1163 mg)、Fr. 7-7 (901 mg)、Fr. 7-8 (1414 mg)、Fr. 7-9 (303 mg)、Fr. 7-10 (473 mg)、Fr. 7-11 (233 mg)およびFr. 7-12 (1563 mg)]を得た。
得られたFr. 7-2 (846 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=40:60 (容量)]を用いて分離精製し、ルチン(54.5 mg, 0.0044%)およびミリセチン3-O-β-D-グルコシド(19.6 mg、0.0016%)を得た。
また、上記のFr. 7-3 (120 mg) を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=45:55 (容量)]を用いて分離精製し、ルチン(63.8 mg, 0.037%)を得た。
上記のFr. 8 (30.0 g)を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[600 g、溶出剤;MeOH:H2O=30:70 → 45:55 → 60:40 → 75:25 (容量) → 100%MeOH]にて分画し、Fr. 8-1 (464 mg)、Fr. 8-2 (1251 mg)、Fr. 8-3 (1511 mg)、Fr. 8-4 (1230 mg)、Fr. 8-5 (618 mg)、Fr. 8-6 (7076 mg)、Fr. 8-7 (5160 mg)、Fr. 8-8 (1419 mg)、Fr. 8-9 (1476 mg)、Fr. 8-10 (791 mg)およびFr. 8-11 (1273 mg)]を得た。
得られたFr. 8-6 (100 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=40:60 (容量)]を用いて分離精製し、ルチン(64.2 mg, 0.44%)を得た。
また、上記のFr. 8-7 (100 mg)を、さらに逆相HPLC [検出:RI、溶出剤;MeOH:H2O=40:60 (容量)]を用いて分離精製し、同様にルチン(49.1 mg, 0.25%)を得た。
既知化合物については、文献値の1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルデータの比較により同定した。
(3) 化合物(I)の構造解析
化合物(I)は、正の旋光性 ([α]D 26 +146.6°、MeOH)を示す黄色粉末として得られた。IRスペクトルからフェノール性アルコール(3430 cm-1)、C-C二重結合(1645、1636 cm-1)、およびエーテル(1075 cm-1)の存在が示唆された。
さらに高分解能FAB-MSから分子式C30H26O9を有する化合物であることが判明した。
また、化合物(I)の1H-および13C-NMR(アセトン-d6)スペクトルデータ(表2および3参照)、種々の二次元NMRデータを詳細に解析し、さらに、Hatano T.らにより、Phytochemistry、46、第893-900頁、1997に記載の、以下に示す類似化合物:
の種々の物理データと比較して、化合物(I)の化学構造を前記式(I)および図1に示すように決定した。
化合物(I)の1H-および13C-NMR(アセトン-d6)スペクトルデータを表2および3に示し、種々の2次元NMRスペクトルの相関関係をその構造式と共に以下に示す。
(4) 化合物(IIa)および化合物(IIb)の構造解析
化合物(IIa)および化合物(IIb)についても同様の方法により構造解析を行った。その結果、化合物(IIa)は前記式(IIa)で表わされ、化合物(IIb)は前記式(IIb)で表わされることが判明した。すなわち、化合物(IIa)と(IIb)とは、その構造式における下部ユニットのフラバン骨格の2位におけるジアステレオマーであることが見出された。
これらの化合物の1H-および13C-NMR(アセトン-d6)スペクトルデータを表2および3に示し、種々の2次元NMRスペクトルの相関関係をその構造式と共に以下に示す。
(5) 化合物(IIIa)および化合物(IIIb)の構造解析
化合物(IIIa)および化合物(IIIb)についても同様の方法により構造解析を行った。その結果、化合物(IIIa)は前記式(IIIa)で表わされ、化合物(IIIb)は前記式(IIIb)で表わされることが判明した。すなわち、化合物(IIIa)と(IIIb)とは、その構造式における下部ユニットのフラバン骨格の2位におけるジアステレオマーであることが見出された。
これらの化合物の1H-および13C-NMR(アセトン-d6)スペクトルデータを表2および3に示し、種々の2次元NMRスペクトルの相関関係をその構造式と共に以下に示す。
上記化合物(I)、化合物(IIa)、化合物(IIb)、化合物(IIIa)および
化合物(IIIb)1H−NMR(500 MHz)データおよび13C−NMR(125 MHz)データを以下の表にまとめて示す。
試験例1
DPPHラジカル消去活性試験
実験方法
0.1 M酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 (pH 5.5) 1.0 ml、200 μmM 1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカルのエタノール溶液0.5 ml、各濃度の被験物質のエタノール溶液1.0 ml を混合した。室温にて30分間放置した後、517 nmにおける吸光度を測定し、吸光度の変化から50%のDPPHラジカル(終濃度40 mM)を消去するのに要した被験物質の濃度(SC50)を算出した。なお、被験物質はDMSOにて溶解した後、エタノールで希釈して用いた(DMSO終濃度0.2%)。
比較対照物質としてα-トコフェロール(SC50 = 4.3μg/ml) を用いた。
結果を以下の表に示す。
試験例2
スーパーオキシド(・O2 -)消去活性試験
100μMキサンチン100 mM EDTA、25μM WST-1を含む 50 mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH 10.2)および被験サンプルを含む反応液2.9 mlを37℃で10分間予備加温し、58 mU/ml キサンチン オキシダーゼ100μlを加えて20分間インキュベーションした。インキュベーション後、2 M塩酸100μlを加えて反応を止め、・O2 -により還元されて生成したWST-1 フォルマザンの吸光度を450 nmを測定波長として測定した。得られた値より50%阻害濃度(IC50)を算出した。
比較対照物質として(+)-カテキン(IC50 = 1.5 μg/ml)を用いた。
試験例3
アルドース還元酵素阻害活性試験
Dufraneらの方法を一部改変しておこなった。すなわち、Wistar系雄性ラット(紀和実験動物研究所、和歌山)のレンズを10 mM 2-メルカプトエタノール含有135 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)中でホモジナイズし、遠心分離 (100,000 rpm、30分、4 ℃)した。その上清を粗酵素として用いた。粗酵素はリン酸緩衝液(pH 7.0)に溶解し、以下の反応条件で約10 nmolのNADPが生成する濃度に希釈して用いた。反応混合液は、500 μl中に180 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)、100 mM Li2SO4、0.03 mM NADPH、基質として1 mM DL-グリセルアルデヒド、酵素分画100μlおよび被験サンプルのDMSO溶液25μlを含むように調製した。
反応は、30 ℃でNADPHの添加により開始した。30分間インキュベートした後、0.5M HCl
150μlを加え反応を停止した。反応停止後、溶液に10 mMイミダゾール含有6 M NaOH 0.5
mlを加え、20分間60℃で加熱し、NADPを蛍光物質に変換させた。生成した蛍光物質を、室温で蛍光強度を用い測定した(励起波長360 nm、測定波長460 nm)。得られた値より50%阻害濃度(IC50)を算出した。比較対照物質としてエパルレスタット(epalrestat(商品名))を用いた (IC50 = 0.023 μg/ml)。
以下の表に、上記試験例1〜3においてCassia auriculataの種子のMeOH抽出物および葉部(ナチュラルヘナ)のアセトン抽出物ならびに化合物(II)(化合物(IIa)+(IIb))および化合物(III)(化合物(IIIa)+(IIIb))を用いた試験結果を以下の表にまとめて示す。
上記の結果から、Cassia auriculataの種子のMeOH抽出物よりも、ナチュラルへナの含水80%アセトン抽出物が強力なラジカルスキャベンジング作用(DPPHラジカル消去作用およびスーパーオキシド(・O2 -)消去作用)を有し、同様に、化合物(II)および化合物(III)もさらに強力なラジカルスキャベンジング作用を有することが判明した。
また、上記の結果から、Cassia auriculataの種子のMeOH抽出物よりも、ナチュラルへナの含水80%アセトン抽出物が強力なアルドース還元酵素阻害作用を有し、同様に、化合物(II)および化合物(III)もさらに強力なアルドース還元酵素阻害作用を有することが判明した。
試験例4
メラニン産生抑制試験
24ウェル マルチプレートにB16-4A5細胞(理研細胞バンクより入手)を1.6×104細胞/400μl/ウェルずつ細胞を播種した。24時間培養(5%CO2、37℃)した後、テオフィリン溶液(40μl/ウェル、終濃度1 mM)および被験サンプル溶液を40μl/ウェルずつ添加し、72時間培養した。なお、培養液は高グルコース含有(グルコース4500 mg/L)Dulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM、シグマ社)を用いた。
また、細胞毒性については別に96ウェル マイクロプレートに播種(4×103細胞/100μl/ウェル)し、68時間培養後、WST-8溶液10μl/ウェルを添加し、4時間後に450 nm(参照波長:655 nm)における吸光度から判定した(Cell Counting Kit-8 (商品名、同人化学研究所))。
上清を取り除いた後、PBSで洗浄した。トリプシン処理によって細胞を回収し、PBSで洗浄した。次に上清を除去し、各チューブに1.0 M NaOH溶液120μlを加え、80℃で30〜60分間加熱することによって細胞を溶解した。溶解した液100μlずつを96ウェル マイクロプレートに移し、吸光度を測定した(測定波長:405 nm、参照波長:655 nm)。
上記の方法に従って、ナチュラルヘナの酢酸エチル可溶画分、化合物(II)(化合物(IIa)+(IIb))および化合物(III)(化合物(IIIa)+(IIIb))を用い、B16-4A5細胞におけるメラニン産生阻害効果の試験結果を以下の表にまとめて示す。
上記の結果から、ナチュラルへナのアセトン抽出物から得られた酢酸エチル可溶画分、化合物(II)および化合物(III)は、有意にメラニン産生抑制作用を有することが判明したが、上記の表に記載の濃度より高濃度では、いずれの被験物質も難溶性であるため、高濃度での各被験物質のメラニン産生抑制作用を測定できなかった。
試験例5
肝保護作用試験
成分の肝保護作用効果を、初代培養マウス肝細胞を用いる3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)比色法により測定した。肝細胞は、Markham K. R.らによるTetrahedron、32、2607〜2612 (1976)に記載のコラゲナーゼ潅流法により、ddY系雄性マウス(30〜35 g)から単離した。ウシ胎仔血清(10%)、ペニシリンG (100単位/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を含むWilliam's E培地100μl中に懸濁させた上記細胞4×104細胞を96ウェル マイクロプレートに播種し、5%CO2雰囲気下で37℃で4時間予備培養した。
D-ガラクトサミン2 mMおよび被験物質を含む新鮮培地100μlを加え、上記肝細胞を更に44時間培養した。培地を新鮮培地100μlと交換し、MTTを5 mg/mlの割合で含むリン酸緩衝
生理食塩溶液10μlをこの培地に加え培養した。培養4時間後に培地を除去し、次いで、0.04 M HClを含むイソプロパノール100μlを加え、細胞内に産生されたホルマザンを溶解した。ホルマザン溶液の光学密度(O.D.)を、測定波長570 nmにおいてマイクロプレートリーダーで測定した(参照波長:655 nm)。阻害率(%)を以下の式により得た。
阻害率(%)=[(O.D.(試料)−O.D.(対照))/(O.D.(正常)−O.D.(対照))]×100
上記の方法に従って、ナチュラルヘナの含水80%アセトン抽出物(アセトン抽出物)およびその酢酸エチル可溶画分の肝保護作用について試験した結果を以下の表に示す。
上記の結果から、ナチュラルへナの含水80%アセトン抽出物および酢酸エチル可溶画分は、有意に肝保護作用を有することが判明した。
実施例2
当該分野で公知の方法に従って、ナチュラルヘナ抽出物10重量部を乳糖25重量部と混合し、ゼラチンカプセルに充填し、1カプセル中に抽出物が500 mg含有されるゼラチンカプセル剤を得た。
実施例3
実施例1で得られた酢酸エチル可溶画分を実施例2のナチュラルヘナ抽出物に替えて、実施例2と同様にして、ゼラチンカプセル剤を得た。
実施例4
米粉50重量部、砂糖5重量部、全卵10重量部、実施例1で得られたナチュラルヘナ抽出物1重量部を秤量した。
全卵に砂糖を混合した後、予め篩に通した米粉を加え、軽く混ぜ合わせて生地を作り、これを適当な形に成形し、オーブンで焼き上げて、せんべいを作った。
実施例5
実施例1で得られた酢酸エチル可溶画分を実施例4のナチュラルヘナ抽出物に替えて、実施例4と同様にしてせんべいを作った。
実施例6
小麦粉100重量部、塩4重量部、実施例1で得られたナチュラルヘナ抽出物5重量部および水45重量部を秤量し、常法に従ってこれらをよく混合して、うどんを製造した。
実施例7
実施例1で得られた酢酸エチル可溶画分を実施例6のナチュラルヘナ抽出物に替えて、実施例6と同様にしてうどんを製造した。
実施例8
美白用化粧水の調製
以下の処方:
に従って、常法により美白用化粧水1kgを調製した。
実施例9
美白用乳液の調製
以下の処方:
に従って、常法により美白用乳液1kgを調製した。
実施例10
美白用クリームの調製
以下の処方:
に従って、常法により美白用クリーム1kgを調製した。
実施例11
美白用エッセンスの調製
以下の処方:
に従って、常法により美白用エッセンス1kgを調製した。
実施例12
美白用パックの調製
以下の処方:
に従って、常法により美白用パック1kgを調製した。
実施例13
クレンジングクリームの調製
以下の処方:
に従って、常法によりクレンジングクリーム1kgを調製した。
実施例14
洗顔料の調製
以下の処方:
に従って、常法により洗願料1kgを調製した。
実施例15
化粧用下地の調製
以下の処方:
に従って、常法により化粧用下地1kgを調製した。
実施例16
日焼け止めクリームの調製
以下の処方:
に従って、常法により日焼け止め化粧用下地1kgを調製した。
実施例17
ファンデーションの調製
以下の処方:
に従って、常法によりファンデーション1kgを調製した。
実施例18
ボディーシャンプーの調製
以下の処方:
に従って、常法によりボディーシャンプー1kgを調製した。
実施例19
ボディローションの調製
以下の処方:
に従って、常法によりボディーローション1kgを調製した。
実施例20
全身用日焼け止め乳液
以下の処方:
に従って、常法により全身用日焼け止め乳液1kgを調製した。
実施例21
シャンプーの調製
以下の処方:
に従って、常法によりシャンプー1kgを調製した。
実施例22
トリートメントの調製
以下の処方:
に従って、常法によりトリートメント1kgを調製した。
実施例23
頭髪用ローションの調製
以下の処方:
に従って、常法により頭髪用ローション1kgを調製した。
実施例24
頭髪用パックの調製
以下の処方:
に従って、常法により頭髪用パック1kgを調製した。
実施例25
ハンドクリームの調製
以下の処方:
に従って、常法によりハンドクリーム0.5kgを調製した。
実施例26
リップクリームの調製
以下の処方:
に従って、常法によりリップクリーム0.5kgを調製した。
実施例27
入浴剤の調製
以下の処方:
に従って、常法により入浴剤1kgを調製した。
本発明によるナチュラルヘナ抽出物、または該抽出物に含まれる本発明による化合物(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)および(IIIb)の少なくとも一つを有効成分とする組成物は、香粧品、特に美白用香粧品、遊離脂肪酸産生阻害剤、抗肥満および抗脂血症用組成物として安全に使用できる。

Claims (9)

  1. 次の一般式(1):
    [式中、R1は、次の式(2)〜(4):
    [ここで、R2は、次の式(5)または(6):
    で表される基である]
    で表される基のいずれか一つである]
    で表されるフラバンダイマー化合物またはそれらの塩。
  2. 前記一般式(1)の化合物において、R1が、式(7):
    で表される請求項1に記載のフラバンダイマー化合物またはその塩。
  3. 前記一般式(1)の化合物において、R1が、式(8):
    で表される請求項1に記載のフラバンダイマー化合物またはその塩。
  4. 前記一般式(1)の化合物において、R1が、式(9):
    で表される請求項1に記載のフラバンダイマー化合物またはその塩。
  5. 前記一般式(1)の化合物において、R1が、式(10):
    で表される請求項1に記載のフラバンダイマー化合物またはその塩。
  6. 前記一般式(1)の化合物において、R1が、式(11):
    で表される請求項1に記載のフラバンダイマー化合物またはその塩。
  7. マメ科植物カッシア アウリクラタの地上部であるナチュラルヘナの葉部の含水アセトン抽
    この抽出物をさらに酢酸エチル/水で分配処理して得られる酢酸エチル可溶画分、
    請求項3および4に記載のフラバンダイマー化合物、ならびに
    請求項5および6に記載のフラバンダイマー化合物
    からなる群から選択される少なくとも一つを有効成分として含むスーパーオキシドラジカルの消去用、メラニン生成抑制用、アルドース還元酵素阻害用および肝保護用の医薬組成物
  8. 請求項に記載の組成物が添加されてなる美白用香粧品。
  9. 請求項に記載の組成物が添加されてなる健康食品。
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