しかしながら、ルーバやブラインドが大きくなればなるほど、屋外の景色や屋内の様子が見えにくくなるばかりか、昼間でも屋内の照度が落ち、照明が必要になってしまい、省エネルギ化が損なわれる。
本発明は上記事情に鑑み、ダブルスキン方式の利点を生かしつつ省エネルギ化に向けて工夫を施した建築物を提供することを目的とするものである。
上記目的を解決する本発明の建築物は、屋外と屋内を仕切る外壁材として、2枚のガラスの間に空気層を有するガラス構造体を用いた建築物において、
上記2枚のガラスを支持する支持体と、
上記空気層につながる給気口と、
上記給気口とは別に設けられ、上記空気層につながる排気口と、
上記2枚のガラスのうちの少なくともいずれか一方のガラスに設けられ、太陽光を吸収して熱を発する発熱体とを有することを特徴とする。
ここにいう発熱体は、上記2枚のガラスのうちの少なくともいずれか一方のガラスにおける上記空気層側の面に設けられたものであってもよいし、あるいは上記2枚のガラスのうちの少なくともいずれか一方のガラスにおける上記空気層側の面とは反対側の面に設けられたものであってもよい。さらには、上記2枚のガラスの双方に設けられたものであってもよい。また、この発熱体は、ガラス面に貼られたフィルム状のものであってもよいし、あるいは、ガラス面に塗布されたものであってもよい。
本発明の建築物によれば、上記発熱体からの輻射熱によって上記空気層の空気が暖められる。すなわち、上記発熱体が上記2枚のガラスのうちの少なくともいずれか一方のガラスにおける上記空気層側の面に設けられたものであれば、上記空気層の空気が上記発熱体によって直接暖められる。また、上記発熱体が上記2枚のガラスのうちの少なくともいずれか一方のガラスにおける上記空気層側の面とは反対側の面に設けられたものであっても、上記発熱体が設けられたガラスがその発熱体によってまず暖められ、上記空気層の空気はその暖められたガラスによって暖められる。しかも、上記発熱体として、その発熱体が設けられるガラスの表面積と同じ表面積のものを用いてもよいため、輻射熱が増加し上記空気層の空気が暖まりやすい。空気層の空気が暖まると、空気層に上昇気流が生じ、暖まった空気が上記排気口から外部に排出されて、上記ガラス構造体から屋内に伝わってくる熱が軽減されるというダブルスキン方式の利点が生かされる。また、ルーバやブラインドを設けてもよいが、太陽光を大幅に遮り屋内の照度を大きく低下させるほどのものを設ける必要はなく、昼間、屋内の照度は太陽光によって確保しやすくなる。この結果、本発明の建築物は、省エネルギの観点から見ても好ましい。
ここで、上記発熱体が、金属成分を含む材料からなるものであってもよい。
金属成分を含む材料にすることで発熱体からの輻射熱が増加する。
また、上記発熱体が、紫外線を85%以上遮蔽するとともに近赤外線を35%以上遮蔽する一方で可視光透過率が80%以上の特性をもったものであることが好ましい。
紫外線は人体に有害なものであり、近赤外線は屋内の温度を上昇させるものである。この発熱体は、紫外線を遮蔽する際にその一部を吸収するとともに近赤外線を遮蔽する際にも近赤外線の一部を吸収し、発熱する。紫外線を85%以上遮蔽することは、紫外線の、人体への影響を大きく低減でき、近赤外線を35%以上遮蔽することは、夏場における強い太陽光による屋内の温度上昇をある程度抑えることができる。さらに、可視光透過率が80%以上であるため、屋内外の見通しは良好なものとなる。
さらに、本発明の建築物において、上記空気層に配置され、上記支持体よりも熱容量が大きい蓄熱体を有することが好ましい。
上記蓄熱体を設けることで、上記空気層の空気がより暖まり、上昇気流が発生しやすくなる。また、冬場においては、この蓄熱体に蓄えられた熱を利用して屋内を暖めることができる。上記蓄熱体は、屋外の景色を遮るほど大きなものである必要はなく、上昇気流を妨げることがない網目構造の濃色塗装を施したセラミックブロックやコンクリートブロック、あるいは、同じく濃色塗装を施した板状のセラミック片やコンクリート片等であればよい。ダブルスキン方式では、2枚のガラスの間、すなわち上記空気層に点検や掃除のために歩廊が設けられることが多く、上記蓄熱体をその歩廊に設置してもよいし、あるいは、上記給気口の近傍に設置してもよい。
さらに、上記蓄熱体が、上記空気層の下方へ配置されたものであることが好ましい。この蓄熱体を上記空気層の下方へ配置しておくことで、空気層の下方の空気が蓄熱体によって暖められ、暖められた空気が空気層内を上昇し、空気層内の空気が攪拌される。
また、本発明の建築物において、上記給気口を開閉する給気口開閉部材と、
上記排気口を開閉する排気口開閉部材とを有する態様も好ましい。
さらには、この好ましい態様において、上記給気口と上記排気口の双方が、屋外に向けて開口したものであってもよい。
こうすることで、例えば、夏場は上記給気口と上記排気口との双方を開け、上記空気層内に生じる上昇気流によってその空気層内で暑くなった空気を排出させ、冬場は上記給気口と上記排気口との双方を閉め、上記空気層を密閉状態にしてその空気層を断熱層や蓄熱層として用いることができる。
また、上記給気口と上記排気口の双方が、屋内に向けて開口したものであってもよい。
このように屋内に向けて開口したものであると、例えば、冬場の太陽光が照射している間は、上記給気口と上記排気口との双方を開け、上記空気層内に生じる上昇気流によって屋内→空気層→屋内という空気の循環を生じさせることができる。屋内の空気は上記空気層で暖められて屋内に戻ってくる。さらに、上記排気口が、屋内の空調設備における外気給気口につながるものであってもよい。
またさらに、この建築物が2階建て以上のものであり、上記空気層を各階毎に仕切る開閉自在な仕切部材を備え、
上記給気口と上記排気口の双方が、各階ごとに設けられたものであってもよい。
上記仕切部材を閉めれば、各階毎に上記ガラス構造体の利用の仕方を決めることができる。例えば、冬場、1階は上記給気口と上記排気口との双方を閉め、上記空気層を断熱層や蓄熱層として用い、2階は上記給気口と上記排気口との双方を開け、上記空気層を経由した空気の循環を生じさせてもよい。
さらに、上記給気口として、屋内の低いところに開閉自在に開口した低所給気口と、屋内の高いところに開閉自在に開口した高所給気口とを有し、
上記排気口が、屋外に向けて開口したものであってもよい。
暖かい空気は上昇し、冷たい空気は低いところに溜まりやすいことから、夏場は、上記低所給気口を閉じて上記高所排気口を開け、屋内の暖まった空気を上記空気層に生じた上昇気流を利用して上記排気口から屋外に排出させることができる。
また、本発明の建築物において、照明器具が配置された屋内に設けられ、その屋内の照度を検出する照度センサと、
上記照明器具に電力が供給されている状態で上記照度センサが検出した照度が所定値以下になると、上記照明器具への電力供給量を下げる制御部とを有する態様も好ましい。
本発明の建築物によれば、上述のごとく、太陽光を大幅に遮り屋内の照度を大きく低下させるほどのルーバやブラインドを設ける必要はないことから、太陽光による屋内の照度向上が期待でき、上記制御部によって節電が行われ、省エネルギの観点から見て非常に好ましい。
さらに、本発明の建築物において、上記空気層を流れる上昇風によって回転する風力発電用の回転体を有することも好ましい。
ここで、上記回転体が、上記空気層内に配置されたものであってもよいが、より好ましくは、
上記回転体が、上記排気口近傍に設けられ、上記上昇風によって回転するとともに自然風によっても回転するものであることである。
こうすることで、例えば、夏の風のない昼間等、自然風が吹かないときでも上昇風によって上記回転体が回転し、反対に、冬の風が強い夜間等、上昇風が生じにくいときでも自然風によって上記回転体が回転し、いずれも風力発電が行われ、省エネルギの観点から見て非常に好ましい。
本発明によれば、ダブルスキン方式の利点を生かしつつ省エネルギ化に向けて工夫を施した建築物を提供することができる。
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の建築物における一実施形態の概略構成を示す図であり、この図1には、夏場に太陽光(日射)が照射しているときの建築物1の様子が示されている。
図1に示す建築物1は、3階建ての建物の南向きの外壁面をダブルスキン化したものである。すなわち、屋外と屋内を仕切る南側の外壁材として、2枚のガラス11,12の間に空気層13を有するガラス構造体10を用いている。このガラス構造体10は、地面Gからこの建築物1の屋上Tまでつながったものであり、外壁面はガラスでほとんど覆われている。以下、図1に示す2枚のガラス11,12のうち屋外側のガラスを外ガラス11と称し、屋内側のガラスを内ガラス12と称することにする。なお、ガラス構造体10は2階から上に設けてもよい。また、外ガラス11と内ガラス12のうちの少なくともいずれか一方を、2枚のガラス間の幅が10mm前後のいわゆる複層ガラスにしてもよい。なお、一般的なダブルスキン方式における2枚のガラスの間隔は450mm〜600mm程度であるが、本発明は、この間隔に限定されるものではない。
図1に示す建築物1には、外ガラス11と内ガラス12それぞれを別々に支持するサッシュ14が設けられている。すなわち、図1に示すサッシュ14は、2枚のガラス11,12を1枚ずつ支持する2組のサッシュ14であり、本発明にいう支持体の一例に相当する。このサッシュ14は、各階の床F側と天井H側に設けられたアルミニウム合金等の金属製のものである。なお、ガラスを線支持するサッシュ14に代えて、ガラスを点支持する支持体を用い、いわゆるサシュレス構造にしてもよい。ガラスを点支持する支持体としては、DPG構法(Dot Pointed Glazing)を採用した支持体があげられる。
図1に示す内ガラス12の空気層13側の面121には、点線で示した発熱フィルム15が貼られている。この発熱フィルム15は、内ガラス12の空気層13側の面121全面に貼られている。図1に示す発熱フィルム15は、紫外線を85%以上遮蔽するとともに近赤外線を35%以上遮蔽する一方で可視光透過率が80%以上の特性をもったものである。紫外線は人体に有害なものであり、近赤外線は屋内の温度を上昇させるものである。この発熱フィルム15は、紫外線を遮蔽する際にその一部を吸収するとともに近赤外線を遮蔽する際にも近赤外線の一部を吸収し、発熱する。空気層13内の空気は、この発熱フィルム15の輻射熱によって暖まり、空気層13内に上昇気流が発生する。紫外線を85%以上遮蔽することは、紫外線の、人体への影響を大きく低減でき、近赤外線を35%以上遮蔽することは、夏場における強い太陽光による屋内の温度上昇をある程度抑えることができる。さらに、可視光透過率が80%以上であるため、屋内外の見通しは良好なものとなる。
発熱フィルム15には様々なものを用いることができるが、例えば、透明なフィルム状の基材に、紫外線遮蔽剤、赤外線遮蔽剤、バインダ成分、および多価アルコール系溶媒を配合したものを塗布したものを用いることができる。
紫外線遮蔽剤は、紫外線を反射する材料や紫外線を吸収する材料を含んだものである。この紫外線遮蔽剤としては公知の材料を用いることができ、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の有機化合物、二酸化チタン、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタン、酸化亜鉛、ケイ酸亜鉛、酸化セリウム等の無機化合物を用いることができる。ここで、二酸化チタン等のチタン化合物にはそれ自身が強い光触媒性能を有するため、その性能がバインダ成分の分解要因になる場合がある。この場合には、光触媒性能を弱めバインダ成分を分解し難くさせるため、その粒子表面にケイ素、アルミニウム、ジルコニウム等の酸化物、水和酸化物、水酸化物の少なくとも一種を被覆すればよい。
赤外線遮蔽剤は、赤外線を反射する材料や赤外線を吸収する材料を含み、近赤外線のみを反射あるいは吸収する材料も含んだものである。赤外線遮蔽剤としても公知の材料を用いることができ、例えば、ペリレン系化合物、アニリン系化合物、シアニン系化合物等の有機化合物、アンチモンをドープした酸化スズ、インジウムをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム、アルミニウムをドープした酸化亜鉛、雲母チタン(酸化チタン被覆マイカ)、酸化鉄被覆マイカ、塩基性炭酸鉛、オキシ塩化ビスマス、酸化セレン、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化ロジウム、酸化ルテニウムや銅、銀、鉄、マンガンの金属錯体などの無機化合物、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、ニッケル、インジウム、パラジウム、スズなどの金属やそれらの合金を用いることができる。
このように、紫外線遮蔽剤および赤外線遮蔽剤には、金属成分を含む材料が用いられている。金属成分を含む材料にすることで発熱フィルムからの輻射熱が増加する。
紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤の配合量は適宜設定することができ、例えば紫外線遮蔽剤および赤外線遮蔽剤を固形分に換算して塗液中に5〜20重量%配合させることが好ましい。また、紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を固体としてそのまま用いる場合には、1〜100nm程度の粒子径のものを用いることで、発熱フィルム全体の透明性が向上する。
また、バインダ成分としては、公知のバインダ成分を用いることができる。例えば、シリコーン樹脂、アルコキシシラン、アルコキシシランの部分加水分解縮合物、アルコキシシランの加水分解生成物、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、シリコンアクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、尿素樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、水ガラス、セメント、石膏などを適宜選択して用いることができる。ここで、フィルムの硬度を高めるため、シリコーン樹脂、アルコキシシラン、アルコキシシランの部分加水分解縮合物、アルコキシシランの加水分解生成物を用いることが好ましい。
シリコーン樹脂は、シロキサン結合の繰り返し(−Si−O−)nを主鎖とし、側鎖としてアルキル基、アリール基などをもつ重合体であり、三次元網目構造を有するシリコーンが好ましく、エポキシ変性、ポリエステル変性、アルキド変性、アクリル変性などの変性シリコーンでも良い。アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシランのモノマーを挙げることができ、そのアルコキシル基としてはメトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基などの炭素が1〜8程度のアルコキシル基を用いることができ、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素が1〜8程度のアルキル基を用いることができる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノプロピルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリエチルモノエトキシシラン、トリプロピルモノプロポキシシランなどを用いることができる。
アルコキシシランの部分加水分解縮合物は、前記のアルコキシシランモノマーを部分的に加水分解・縮合した二量体あるいは三量体以上のオリゴマーであり、1分子中にケイ素原子を2〜9個程度含むものが好ましい。また、アルコキシシランの加水分解生成物はアルコキシシランを完全に近い程度まで加水分解縮合して粒子形状を形成したものであり、一般にオルガノシリカゾルと呼ばれるものを用いることができる。
バインダ成分の配合量も適宜設定することができ、例えばバインダ成分を固形分に換算して塗液中に5〜20重量%程度配合させることが好ましい。
多価アルコール系溶媒は分子中に2個以上の水酸基をもつアルコールであり、2個の水酸基をもつ2価アルコールであるグリコール、3個の水酸基をもつ3価アルコールであるグリセリンなどを用いることができる。4価以上のアルコールでも使用できるが、低沸点である2価アルコールのグリコールがより好ましい。グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオールなどが挙げられ、その中のプロピレングリコールが最も好ましい。多価アルコールのほかに、水などの無機系溶媒、1価アルコール、エーテル、アミドなどの有機系溶媒から選ばれる少なくとも一種を配合することもできる。
多価アルコール系溶媒の配合量は、60〜90重量%程度配合させることが好ましい。
さらに、これまで説明した材料の他に、分散剤、増粘剤、粘度調整剤、硬化剤、架橋剤、レベリング剤、界面活性剤、顔料、充填剤、吸着剤、脱臭剤、抗菌剤、導電剤、帯電防止剤、電磁波遮蔽剤などの添加剤を適宜配合しても良い。
以上説明した発熱フィルム15は、本発明にいう発熱体の一例に相当するものであるが、本発明にいう発熱体は、フィルム状のものに限らず、塗膜等であってもよい。
また、図1に示す建築物1には、複数の給気口161〜163と複数の排気口171,172が設けられている。これら複数の給気口161〜163はいずれも空気層13につながるものである。複数の給気口161〜163としては、屋内の床F付近に開口した屋内低所給気口161、屋内の天井H付近に開口した屋内高所給気口162、屋外に開口した屋外給気口163があげられる。屋内低所給気口161および屋内高所給気口162は、各階ごとに、内ガラス12に設けられたものである。一方、屋外給気口163は、各階ごとに、外ガラス11に設けられたものである。この屋外給気口163は、各階の下の方に設けられている。これら総ての給気口161〜163には、各給気口161〜163を開閉する給気口開閉部材165が設けられているが、図1においては、開いた状態の給気口では給気口開閉部材165を図示省略し、閉じた状態の給気口のみに給気口開閉部材165を示している(以下に参照する図においても同じ)。上述のごとく、図1には、夏場に太陽光が照射しているときの建築物1の様子が示されており、複数の給気口161〜163のうち、屋外給気口163のみが開いた状態にあり、給気口開閉部材165が図示省略されている。
また、複数の排気口171,172は、給気口161〜163とは別に設けられ、空気層13につながるものである。これら複数の排気口171,172としては、屋内の天井H付近に開口した屋内高所排気口171と、屋外に開口した屋外排気口172があげられる。屋内高所排気口171は、各階ごとに、内ガラス12に設けられたものである。一方、屋外排気口172は、ガラス構造体10の最も高い位置に設けられたものである。すなわち、この建築物1の屋上Tに設けられたものである。これら総ての排気口171,172にも、各排気口171,172を開閉する排気口開閉部材175が設けられているが、図1においては、給気口と同様、開いた状態の排気口では排気口開閉部材175を図示省略し、閉じた状態の排気口のみに排気口開閉部材175を示している(以下に参照する図においても同じ)。図1に示す、夏場に太陽光が照射しているときの建築物1では、屋内高所排気口171は開いた状態にあり、排気口開閉部材175が図示省略されている。
なお、屋内低所給気口161および屋内高所給気口162を排気口として利用することも可能である。
図1に示す屋内の各階には、空調設備の外気処理ユニット21が天井裏に配置されている。各階において、屋内高所排気口171と外気処理ユニット21はダクト22で結ばれている。
また、屋内の各階には、照明器具23と、屋内の照度を検出する照度センサ24が設けられている。さらに、図1に示す建築物1は制御部25を有する。この建築物1では、空気層13にルーバやブラインドといった日除け手段は設けられておらず、しかも南向きの外壁面はガラスでほとんど覆われており、発熱フィルム15は可視光透過率が80%以上の特性をもつものであるため、天気の良い日には屋内に太陽光が十分に入射する。制御部25は、照明器具23に電力が供給されている状態で照度センサ24が検出した照度が所定値以下になると、照明器具23への電力供給量を下げる。すなわち、制御部25は、照明器具23への電力供給を中止させたり、インバータ制御により照明器具23の発光量を下げる。こうすることで、節電が行われ、省エネルギの観点から見て非常に好ましい。
また、図1に示す建築物1の空気層13内には蓄熱体18が配置されている。この蓄熱体18は、サッシュ14よりも熱容量が大きなものであり、図1には、上昇気流を妨げることがない網目構造の濃色塗装を施したセラミックブロックが示されている。図1に示す蓄熱体18は、各階の屋外給気口163近傍に配置されている。この図1では図示省略したが、2枚のガラス11,12の間、すなわち空気層13には、点検や掃除のための歩廊が設けられている。蓄熱体18はその歩廊に設置されており、屋内外の見通しを遮ることはない。
さらに、図1に示す建築物1には、空気層13を各階毎に仕切る開閉自在な仕切部材が設けられているが、図1に示す建築物1では、各仕切部材は開いた状態にあり図示省略されている。
また、図1に示す建築物1の屋上には、風力発電用のファン30が設置されている。このファン30は、屋外排気口172の近傍に設けられており、空気層13で生じた上昇気流の風によって回転する。図1に示すファン30は、本発明にいう回転体の一例に相当する。なお、風力発電用のファンを空気層13内に設けても良い。
以上説明した図1に示す建築物1におけるガラス構造体10の状態をまとめると、屋内低所給気口161および屋内高所給気口162は閉じた状態にあり、屋外給気口163は開いた状態にある。また、屋内高所排気口171は閉じた状態にあり、屋外排気口172は開いた状態にある。さらに、不図示の仕切部材は開いた状態にある。このような状態の建築物1に、夏場の強い太陽光が照射すると、空気層13内の空気は、ルーバやブラインドがなくても、発熱フィルム15の輻射熱によって暖められ、空気層13内に上昇気流が生じる。空気層13内には、屋外給気口163から外気が入り込み、空気層内13で暖められた空気は上昇気流によって屋外排気口172から排出される。この結果、空気層13内の熱が排出され、ガラス構造体10から屋内に伝わってくる熱が軽減され、屋内の空調設備の電力使用量を減らすことができ、省エネルギの観点から見て好ましい。
また、屋外排気口172から排出された上昇風は、風力発電用のファン30を回転させ、風力発電が行われる。また、自然風を取り入れるダンパ31を開けると、このファン30は自然風によっても回転し、風力発電が行われる。これらのことも、省エネルギの観点から見て非常に好ましい。
以下の説明では、これまで説明した構成要素と同じ構成要素には、これまで使用した符号と同じ符号を用いる。また、これまでの説明と重複する説明についは省略する。
図2は、冬場の平均気温が15℃以上ある地方に建てられた建築物の夏場の様子を示す図である。
図2に示す建築物1では、外ガラス11の空気層13側の面111にも発熱フィルム15が貼られている。すなわち、2枚のガラス11,12それぞれの空気層13側の面111,121に発熱フィルム15が貼られている。夏場の平均気温が30℃近くになる地方では、屋内の温度上昇を抑えるために、少しでも多くの近赤外線を遮蔽する必要がある。そこで、近赤外線を遮蔽する特性をもった上述の発熱フィルム15を外ガラス11にも設けている。
また、図2に示す建築物1では、蓄熱体18は、各階の屋内高所給気口162近傍に配置されているが、屋内外の見通しを遮ることはない。図2に示す蓄熱体18は、網目構造の濃色塗装を施したコンクリートブロックである。なお、図2に示す蓄熱体18は必ずしも設ける必要はなく、取り外してもよい。
この図2に示す建築物1におけるガラス構造体10の状態は、屋内低所給気口161および屋外給気口163は閉じた状態にあり、屋内高所給気口162は開いた状態にある。また、屋内高所排気口171は閉じた状態にあり、屋外排気口172は開いた状態にある。さらに、不図示の仕切部材は開いた状態にある。このような状態の建築物1に、夏場の非常に強い太陽光が照射すると、図1に示す建築物1と同じように、空気層13内の空気は、ルーバやブラインドがなくても、発熱フィルム15の輻射熱によって暖められ、空気層13内に上昇気流が生じる。ここで、屋内でも暖かい空気は上昇する。このため、屋内高所給気口162から屋内の暖かい空気が空気層13内に取り込まれ、屋内の熱が排出される。また、空気層内13で暖められた空気は上昇気流によって屋外排気口172から排出され、ガラス構造体10から屋内に伝わってくる熱が軽減される。このように、図2に示す建築物1では、屋内の熱の排出と、ガラス構造体10から屋内に伝わってくる熱の軽減という2つの効果により、屋内の空調設備の電力使用量をより減らすことができ、省エネルギの観点から見て好ましい。
図3は、図1および図2それぞれに示す建築物とは異なる建築物における冬の昼間の様子を示す図である。
図3に示す建築物1では、外ガラス11の空気層13側の面111には発熱フィルム15が貼られているが、内ガラス12の空気層13側の面121には発熱フィルム15が貼られていない。このようなガラス構造体10を備えた建築物1は、例えば、東京や大阪に建てられる。
また、屋外排気口172の真上には、風力発電用の風車32が設置されている。図3に示す風車32は、2枚の半円筒型の羽根321で構成され、これらの羽根321を多少重なり合う部分を残して互い違いに円周方向にずらして組み合わせた、いわゆるサボニウス型風車であり、風向きに関係なく回転する。この風車32も、図1に示すファン30と同様、本発明にいう回転体の一例に相当し、屋外排気口172が開いた状態にあるときには、空気層13で生じた上昇気流の風によって回転する。また、自然風を取り入れるダンパ31を開けると、自然風によっても回転する。
この図3に示す建築物1におけるガラス構造体10の状態は、屋内低所給気口161および屋内高所給気口162は閉じた状態にあり、屋外給気口163は開いた状態にある。また、屋外排気口172は閉じた状態にあり、屋内高所排気口171は開いた状態にある。さらに、仕切部材19は閉じた状態にある。このような状態の建築物1では、冬場でも太陽光が照射すると、空気層13内の空気は、ルーバやブラインドがなくても、発熱フィルム15の輻射熱によって暖められ、空気層13内に上昇気流が生じる。ただし、空気層13は、仕切部材19によって各階ごとに仕切られているため、各階ごとに上昇気流が生じることになる。空気層13内には、屋外給気口163から外気が入り込み、その外気は空気層内13で暖められて上昇気流によって屋内高所排気口171から排出される。屋内高所排気口171は、空調設備の外気処理ユニット21にダクト22によってつながっており、空気層内13で暖められた外気は外気処理ユニット21に吸い込まれる。したがって、各階の空調設備の熱効率が向上し、省エネルギの観点から見て好ましい。また、空気層13は断熱層になって屋内の温度が屋外へ逃げてしまうことが抑えられる。
なお、屋外排気口172は閉じた状態にあるため、風車32は上昇風によっては回転しないが、ダンパ31が開いているため自然風によって回転し、風力発電が行われる。
図4は、冬場の平均気温が0℃近くになる地方に建てられた建築物の冬場における昼間の様子を示す図である。
図4に示す建築物1では、図1に示す建築物1と同じように、内ガラス12の空気層12側の面121には発熱フィルム15が貼られているが、外ガラス11の空気層13側の面111には発熱フィルム15が貼られていない。内ガラス11に発熱フィルム15を貼ることにより屋内も暖められる。すなわち、図4に示す建築物1では、発熱フィルム15によって内ガラス12がまず暖められ、屋内の空気は、その暖められた内ガラス12によって暖められる。
また、図4に示す建築物1は、図1に示す建築物1の各階に設けられていた外気処理ユニット21に代えて、これらの外気処理ユニット21の役割を1台で担う外調機(OHU)26が屋上Tに設けられている。屋外排気口172は、この外調機26にダクト27によってつながっており、風力発電用のファン30は取り外されている。また、各階の外気処理ユニット21がなくなったことから、屋内高所排気口171も設けられていない。
さらに、図4に示す建築物1には、図1に示すブロック状の蓄熱体に代えて、板状の蓄熱体18が設けられている。図4に示す蓄熱体18は、内ガラス12の空気層12側の面121に貼り付けられた、濃色塗装を施した板状のセラミック片である。この蓄熱体18は、各階の下方(床F側)に配置されており、屋内外の見通しを遮ることはない。
この図4に示す建築物1におけるガラス構造体10の状態は、屋内高所給気口162および屋外給気口163は閉じた状態にあり、屋内低所給気口161は開いた状態にある。また、屋外排気口172は開いた状態にある。さらに、不図示の仕切部材は開いた状態にある。冬場においても、このような状態の建築物1に太陽光が照射すると、空気層13内の空気は、ルーバやブラインドがなくても、発熱フィルム15の輻射熱によって暖められ、空気層13内に上昇気流が生じる。ここで、屋内でも冷たい空気は低いところに溜まりやすい。このため、屋内低所給気口161から屋内の冷たい空気が空気層13内に取り込まれ、その空気は空気層内13で暖められて上昇気流によって屋外排気口172から排出される。空気層内13で暖められて排出された空気は、ダクト27を通って外調機26に吸い込まれ、各階の空調設備の熱効率が向上する。このように、図4に示す建築物1では、屋内の冷たい空気の排出と、各階の空調設備における熱効率の向上と、空気層13による断熱効果といった3つの効果により、屋内の空調設備の電力使用量をより減らすことができ、省エネルギの観点から見て好ましい。
なお、図1に示す建築物1では、各給気口161〜163の状態は、図4に示す各給気口161〜163の状態と同じにし、排気口の状態については、屋外排気口172は閉じて屋内高所排気口171の方を開けば、同様な効果を得ることができる。
図5は、図4に示す建築物の冬場における夜間の様子を示す図である。
この図5に示す建築物1におけるガラス構造体10の状態は、総ての給気口161〜163および総ての屋外排気口172が閉じた状態にあり、仕切部材19も閉じた状態にある。このような状態の建築物1では、空気層13が各階ごとに密閉された状態にある。空気層13に配置された蓄熱体18は、昼間に太陽光を受けることによって、あるいは発熱フィルム15の輻射熱によって、蓄熱した状態にある。このため、夜間に密閉された空気層13内の空気は、その蓄熱体18によって暖められる。しかも、図5に示す蓄熱体18は、各階の下方(床F側)に配置されているため、各階ごとに空気層13の下方の空気がその蓄熱体18によって暖められ、暖められた空気が空気層13内を上昇し、各階ごとに空気層13内の空気が攪拌される。図5に示す空気層13は、断熱層として機能するばかりでなく蓄熱層としても機能し、屋内も暖められる。その結果、屋内の空調設備の電力使用量を減らすことができ、省エネルギの観点から見て好ましい。
なお、仕切部材19を閉じて空気層13を仕切ることで、階ごとに空気層13の使い方を変えることができる。例えば、1階と2階の間の仕切部材19は閉じて、2階と3階の間の仕切部材19は開けておけば、太陽光が照射しているときでも1階はこの図5に示すような、空気層13を密閉状態にした態様にすることができ、2階および3階は、図4に示すような、空気層13に生じる上昇気流を利用した態様にすることができる。
以上、説明したように、図1から図5のいずれに示す建築物1も、ダブルスキン方式の利点を生かしつつ省エネルギ化に向けての工夫が施された建築物である。
なお、ここでの説明では、発熱フィルム15を、空気層13側に設けた例、すなわち外ガラス11の屋内側の面111および/または内ガラス12の屋外側の面121に設けた例について説明したが、発熱フィルム15を空気層13とは反対側に設けても良い。すなわち、発熱フィルム15を、外ガラス11の屋外側の面および/または内ガラス12の屋内側の面に設けてもよい。これまで説明した例では、空気層13側に設けられた発熱フィルム15によって空気層13の空気が直接暖められるが、発熱フィルム15を空気層13とは反対側に設けても、発熱フィルム15が設けられたガラスがその発熱フィルム15によってまず暖められ、空気層13の空気はその暖められたガラスによって暖められる。
最後に、ここで説明した技術を応用した、ガラス構造体の変形例について以下に記す。この変形例では、外壁材としてガラス構造体を用いるのではない。すなわち、この変形例のガラス構造体は、2枚のガラスのうちの一方のガラスとなる内ガラスは建築物に設けられたものであり、上記2枚のガラスのうちのもう一方のガラスとなる外ガラスは、上記建築物に設けられた内ガラスを外側から覆うものであり、
上記内ガラスを支持する内サッシュと、
上記内サッシュとは別体で自立した、上記外ガラスを支持する外サッシュとを備えたものであることを特徴とする。上記内ガラスと上記内サッシュを組み合わせたものは、建築基準法にいう工作物に相当するものである。
また、この変形例における上記建築物が、暗渠に用いられるプレキャストコンクリートを利用したものであってもよい。