本発明の第1の発明は、シート材の送り方向に回転しシート材の下側搬送路壁に配設される給送ローラと、シート材の上側搬送路壁に配設され給送ローラに所定の圧力で付勢当接される捌きローラと、を有するシート材供給装置において、捌きローラは、ローラゴムを捌きローラハウジングに外嵌固着した捌きローラ回転体と、捌きローラ回転体が回動する捌きローラ軸と、捌きローラ軸と一体化して固定されたトルクリミッタ内輪とトルクリミッタ外枠とで構成されたトルクリミッタと、捌きローラ軸に巻回されトルクリミッタ外枠と捌きローラに係止されている戻しバネとを有し、トルクリミッタはトルクリミッタ内輪とトルクリミッタ外枠との相対的な回転に対して所定の空転負荷トルクを発生させと共に、戻しバネはシート材の給送方向へ所定の角度回転可能であり、捌きローラ回転体をシート材の給送方向に回転させたときに与えられる戻しバネのねじりたわみ力が、トルクリミッタの設定トルクよりも小さく設定されていることを特徴とするシート材供給装置。
この構成によって、給送ローラに当接してシート材の分離効果を奏する捌きローラを逆転駆動することなく、重送して給送ローラと捌きローラとのニップ位置を通過したシート材について、給送ローラに当接したシート材以外のシート材に対して給送方向とは逆方向の戻し作用を与えることができるので、構造の複雑化とコストアップをせずに良好なシート材分離性能を有するシート材供給装置を提供することができる。
本発明の第2の発明は、第1の発明に従属する発明であって、捌きローラ回転体の捌きローラ軸に対して捌きローラ回転体をシート材送り方向に回転させたとき、回転開始からの所定の回転角を超えるまでは、所定の割合で負荷トルクが増加し、所定の回転角を超えたところで、捌きローラ回転体と捌きローラ軸との間の空転負荷は負荷トルクで一定となることを特徴とするシート材供給装置。
この構成によって、捌きローラ回転体に所定の初期設定トルクとして、トルクリミッタ設定トルクの50%以上のトルクを付与しているので、捌きローラ回転体の戻り回転の全範囲において、シート材に対して有効な戻し力を発生することができ、構造の複雑化とコストアップをせずに良好なシート材分離性能を有するシート材供給装置を提供することができる。
本発明の第3の発明は、第1の発明に従属する発明であって、給送ローラを捌きローラ回転体の所定角度以上に回転させた後は、戻しバネにトルクリミッタの設定トルクと同程度の復元トルクを蓄積した状態で捌きローラを給送ローラに付勢当接させた状態で保持することを特徴とするシート材供給装置。
この構成によって、捌きローラ回転体に所定の初期設定トルクとして、トルクリミッタ設定トルクの50%以上のトルクを付与しているので、捌きローラ回転体の戻り回転の全範囲において、シート材に対して有効な戻し力を発生することができ、構造の複雑化とコストアップをせずに良好なシート材分離性能を有するシート材供給装置を提供することができる。
本発明の第4の発明は、第1の発明に従属する発明であって、給送ローラに対してシート材の搬送方向上流に配設されピックアップローラ駆動軸によりシート材の給送方向に回転するピックアップローラと、シート材の上側搬送路壁に一端の揺動支部を中心として揺動可能に軸視され、先端部はピックアップローラと給送ローラとの間に、シート材の給送を阻止するように弾性部材で付勢された給送阻止部材と、シート材の下側搬送路壁に揺動支部を中心として揺動可能に軸視され、先端部に係止爪を形成し給送阻止部材がシート材の給送方向に開かないように給送阻止部材の先端部を係止している係止部材と、係止部材の下面に弾性部材で付勢当接され、回転によって揺動し給送阻止部材との係止と解除を行なう開閉カムとを有し、給送阻止部材の解除までの時間はピックアップローラ駆動軸と開閉カムの係止に遊びを持たせ、ピックアップローラ駆動軸の回転後タイムラグであることを特徴とするシート材供給装置。
この構成によって、セットされたシート材の先端近傍に配設された開閉可能な搬送阻止部材と、前記給送ローラに対して給送方向上流位置に配設されたピックアップローラとを有し、ピックアップローラの起動後、所定の遅延時間後に前記搬送阻止部材の係止を解除することにより、セット時に先端が揃っていないシート材の束であっても重送を発生せず、良好なシート材分離性能を有するシート材供給装置を提供することができる。
以下、本願発明の要旨を説明し、その後、構成の詳細、作用原理について説明する。
まず、本願発明の要旨は、トルクリミッタを内蔵する捌きローラ(リタードローラ)の、捌きローラとトルクリミッタ間に掛け渡された戻しバネに、常時、シート材間の動摩擦力より大きな復元力をオフセットとして設定したことを特徴とするシート材供給装置である。
このように構成することにより、まず、給紙開始前に戻しバネにトルクリミッタが滑り始める空転負荷トルクに相当するねじり力(復元力)を与え、トルクリミッタにはより大きな負荷トルクを与えることにより、戻しバネに上記ねじり力を保持させる。
そして、給紙開始後、シート材の重送発生の度に捌きローラが搬送方向とは逆方向に回転することにより戻しバネのねじりが戻り、チャージしていたねじり力が徐々に減少しても、オフセットされたねじり力が維持され、且つそれがシート材間の動摩擦力より相当程度大きく設定されている。
そのため、その後、更にシート材の重送が発生しても、捌きローラは少なくともオフセットされた戻しバネのねじり力からもたらされる分離力を保持しているため、その分離力に加え、捌きローラが重送するシート材と共に回転したことにより増加した戻しバネの戻し力により、重送する用紙の進行を阻止し且つ逆送させるため、確実にシート材の重送を阻止することができるという効果を奏する。
次に、シート材供給装置の基本構成について説明する。
図1は本発明に係るシート材供給装置の基本構成図である。
図1において、ピックアップローラ6は駆動部(駆動手段)としてのモータの駆動力を受けて矢印D方向に回転し、図示しない給紙トレイに載置されたシート材9及び9´の最下層のシート材9を給紙トレイからピックアップする。給紙ローラ1はピックアップローラ6と同じく駆動部(駆動手段)としてのモータの駆動力を受けて矢印E方向に回転し、シート材9を矢印F方向に搬送する。
捌きローラ2は、通常、同軸上に複数のローラを有し、正常給送時、シート材9´が給紙ローラ1と捌きローラ2とのニップ部に侵入しようとする動作と捌きローラ2に掛け渡された後述する戻しバネの戻し力により、侵入したシート材9´を引き戻そうとする動作が小刻みに繰り返され、シート材9の正常搬送中もシート材9´がシート材9と共に重送しないよう、シート材9´の搬送を阻止している。シート材9及びシート材9´が重送した場合は、戻しバネの戻し力により矢印G方向に回転し、重送したシート材9´を矢印Fと反対方向に戻し、重送を解消する。
以下、捌きローラ2の基本構成について説明する。
図2は本発明に係るシート材供給装置に用いる捌きローラの基本構成を示す断面図である。
捌きローラ2は、通常、複数備えられ、それぞれにローラゴム101が被覆されている。複数の捌きローラ2は図示しない捌きローラハウジングにより一体化され、捌きローラ軸103の周りを一体的に同期して回動する。
図2に示す左側の捌きローラ2には、ローラゴム101に被覆されたトルクリミッタ105が備えられている。トルクリミッタ105はトルクリミッタ内輪105aとトルクリミッタ外枠105bで構成され、トルクリミッタ内輪105aは捌きローラ軸103と一体化して固定されている。捌きローラハウジングに取り付けられたローラゴム101は、図1で説明した給送ローラ1から直接的に若しくはシート材9を介して間接的に回転力を受け、トルクリミッタ外枠105bがトルクリミッタ内輪105aに対して滑りを生じるまでは、トルクリミッタ外枠105bとは独立に回転可能であり、トルクリミッタ外枠105bは所定の空転負荷トルクに相当する回転力がかけられるまではトルクリミッタ内輪105aに拘束され、捌きローラ軸103に対して回動できない。しかし、所定の空転負荷トルクを超える回転力がかけられると、トルクリミッタ外枠105bはトルクリミッタ内輪105aの負荷に抗してトルクリミッタ内輪105aに対して滑り出し、捌きローラ軸103及びトルクリミッタ内輪105aに対して回動することができる。
捌きローラ軸103の軸周りにはスプリング状の戻しバネ106が巻回されている。戻しバネ脚106aは左側捌きローラ2のトルクリミッタ外枠105bに係止され、戻しバネ脚106bは右側捌きローラ2に係止されている。
捌きローラ2を図面奥側に向かう矢印H方向(シート材順搬送方向)に回動させると、それに伴って戻しバネ脚106bが図面手前側に向かう矢印I方向に回動する。戻しバネ脚106aはトルクリミッタ105に拘束されているので、戻しバネ脚106bが矢印I方向に回動すると、戻しバネ106にねじり力が発生する。また、戻しバネ脚106aにも戻しバネ脚106bが矢印I方向に回動するのに伴って同様に矢印I方向に回復力(ねじり力)が生じるが、回復力がトルクリミッタ105の所定の空転負荷トルクに達するまで、戻しバネ脚106aはトルクリミッタ105に拘束され、動かない。戻しバネ脚106bは戻しバネ脚106aに生じるねじり力がトルクリミッタ105を滑らせる直前の空転負荷トルクを生じさせるまで回転するが、トルクリミッタ105が滑り出す空転負荷トルクが発生する時点の角度以上は回動できず、その位置で保持される。
次に、戻しバネ106について説明する。
図3は本発明に係るシート材供給装置に用いる戻しバネの構成図であり、図2において、戻しバネ106の一構成例を捌きローラ軸103方向(矢印J方向)からみたものである。
本願で例示する戻しバネ106は、図3(a)に示すようなスプリング形状のバネであり、図2で説明したように、戻しバネ106の一端である戻しバネ脚106aはトルクリミッタ105に係止され、他端の戻しバネ脚106bはトルクリミッタ105を備えない捌きローラ2に係止されている。
戻しバネ106は外力がかからない状態では図3(a)に示す形態であり、本願発明では、図3(b)に示すように、初期状態で戻しバネ脚106aに時計回りにFoffsetの力をかけて所定角度のねじりを与えた状態でトルクリミッタ105のトルクリミッタ外枠105bに係止することを特徴としている。
図4は本発明に係るシート材供給装置に用いる捌きローラの構成図であり、図2の捌きローラ2を矢印J方向(捌きローラ軸103の軸方向)からみたときの、捌きローラ軸103、戻しバネ106、トルクリミッタ105、捌きローラ2の関係を示したものである。
戻しバネ106は捌きローラ軸103の軸周りに巻回され、戻しバネ106の図面手前側の一端である戻しバネ脚106aは、初期状態でFoffsetの力をかけて所定角度のねじりをチャージした状態でトルクリミッタ105のトルクリミッタ外枠105bに係止されており、戻しバネ脚106bはトルクリミッタ105を備えない捌きローラ2に係止されている。
次に、本発明に係るシート材供給装置によって給紙を開始してから以降の捌きローラ2の動作を時系列に説明する。
図5は本発明に係るシート材供給装置に用いる戻しバネの戻し力の時間変化を示す図である。図6〜図10は本発明に係るシート材供給装置に用いる捌きローラを構成する戻しバネの変化を示す図である。
以下、図6〜図10の捌きローラ2及び給送ローラ1の動作説明に合わせて、図5のグラフの変化を説明する。
図5の時間t0においては、戻しバネ106にFoffsetの戻し力がかかっている。この状態は図6(a)に対応しており、給紙待機時を表している。図6(a)では、図5で説明した通り、戻しバネ脚106aを時計方向に所定角度移動させることにより、戻しバネ106全体に初期状態でFoffsetのねじり力(戻り力)がチャージされた状態でトルクリミッタ105のトルクリミッタ外枠105bに係止されており、戻しバネ脚106aは図6(a)の実線の位置から点線で示す外力がかからない位置の方向に戻ることはない。
図5の時間t0〜t1は給紙開始前の準備段階であり、図6(a)から図6(b)の状態に移行する。図6(b)では、図示しない駆動源としてのモータにより給紙ローラ1が矢印E方向に回転し、給紙ローラ1から回転力を受けて捌きローラ2が矢印H方向に連れ回りする。それに伴って、トルクリミッタ105を有しない捌きローラ2に係止された戻しバネ脚106bが図6(a)の初期位置から図6(b)の位置までねじりを加えられる。このとき戻しバネ106には全体としてF1の戻し力がチャージされる。
このときの戻し力F1はトルクリミッタ外枠105bがトルクリミッタ内輪105aに対して滑り出す空転負荷力に相当するため、給送ローラ1が更に矢印E方向に回転速度を増しながらF1より大きい回転力を捌きローラ2に与えても、トルクリミッタ外枠105bがトルクリミッタ内輪105aに対して滑りながら回転するため、戻しバネ106は図6(b)の開き角を維持したまま回転する。
次に、シート材9の正常給紙状態の動作について説明する。
図5の時間t1〜t2は給紙開始後の正常給紙状態を表しており、図7が対応する。
図7では、捌きローラ2のトルクリミッタ外枠105bがトルクリミッタ内輪105aに対し滑り出す空転負荷トルクに相当する戻し力F1が戻しバネ106にチャージされた状態であり、給紙ローラ1は戻し力F1よりも大きな回転力F(F>F1)で回転し、シート材91を搬送する。それに伴って、捌きローラ2もシート材91を介して戻し力F1よりも大きな回転トルクを受けるため、トルクリミッタ外枠105bがトルクリミッタ内輪105aに対し滑りながら回転し、給紙ローラ1と同じ周速度でシート材91を搬送する。
給送するシート材9がシート材91しかない場合は、給紙ローラ1、捌きローラ2とも、戻し力F1よりも大きな回転力F(F>F1)で回転し続けるが、実際は、図7のように複数のシート材9が積層されている場合、次のシート材92の先端がシート材91に連れられて捌きローラ2と給紙ローラ1とのニップ部にわずかに侵入するため、捌きローラ2は戻しバネ106にチャージされた戻し力F1により矢印H方向とは逆方向にわずかに回転してシート材92を押し戻し、戻しバネ106の戻し力もF1からわずかに減少する。
押し戻されたシート材92は再びシート材91に連れられて捌きローラ2と給紙ローラ1とのニップ部に侵入しようとするので、捌きローラ2もそれに連れられてH方向にわずかに回転し、戻しバネ106の戻し力が回復し、更に捌きローラ2が戻しバネ106にチャージされた戻し力F1により矢印H方向とは逆方向にわずかに回転してシート材92を押し戻す。
つまり、シート材91が完全に捌きローラ2と給紙ローラ1とのニップ部を通過するまで、捌きローラ2とシート材92は矢印Kのような揺動を繰り返す。以上が実際のシート材給紙装置の正常給紙状態の動作である。
次に、シート材9の重送が生じたときの動作について説明する。
図5の時間t2〜t3はシート材9の重送が発生したときの戻しバネ106にチャージされた戻し力の変化の様子を表しており、図8が対応する。
図8は給紙ローラ1と捌きローラ2とのニップ部にシート材91だけでなく、シート材92が相当量進入してきた様子を表している。
給紙ローラ1はシート材91を強い搬送力Fで搬送しており、シート材92の先端がシート材91に連れられて捌きローラ2と給紙ローラ1とのニップ部に相当量進入すると、捌きローラ2は戻しバネ106にチャージされた戻し力F1により矢印H方向とは逆の矢印G方向に回転する。このとき、矢印F1方向に戻し力F1を発生させ、戻し力F1はシート材92に対し静止摩擦力として作用する。一方、シート材91は正常搬送されているので、給紙ローラ1とシート材91との間には矢印F方向に強い搬送力Fが発生し、搬送力Fはシート材91に対し静止摩擦力として作用する。
これに対し、シート材91とシート材92との間に生じている摩擦力は、シート材92がシート材91に対して滑り始めた時点で動摩擦力F0に変化しており、F>F1>F0であるので、捌きローラ2の戻しバネ106にチャージされた戻し力F1がシート材91とシート材92間の動摩擦力F0に打ち勝ち、捌きローラ2が矢印G方向に回転してシート材92を矢印F1方向に押し戻す。このとき、戻しバネ106も矢印L方向に戻るため、図5の時間t2〜t3に示すように、戻し力もF1からF2に減少する。
次に、シート材9の正常給紙再開後の動作について説明する。
図5の時間t3〜t4は重送解消後の正常給紙状態を表しており、図9が対応する。
図9では、戻し力F2が戻しバネ106にチャージされた状態であり、給紙ローラ1は戻し力F2よりも大きな回転力F(F>F2)で回転し、シート材92を搬送する。
一方、捌きローラ2と給紙ローラ1とのニップ部には、次のシート材93の先端がシート材92に連れられてわずかに進入してくるが、図7における説明と全く同様の動作で捌きローラ2がシート材93の進入を阻止するので、給紙ローラ1はシート材92を正常に給送することができる。
10(a)〜(d)は、シート材9の給紙開始後、正常給紙と重送発生及びその解消動作を繰り返した場合の、捌きローラ2の戻しバネ106のねじり量の変化を時系列に示したものである。
図5の時間t0〜t1では、図10(a)に示すように、シート材9の給紙開始前に捌きローラ2の戻しバネ106にねじりを加え、トルクリミッタ105が滑り出す空転負荷トルクを発生させる戻し力F1を与える。
図5の時間t1〜t2では、シート材9の正常搬送が行われ、捌きローラ2に備えられる戻しバネ106の戻しバネ脚106bは、図10(a)の位置にあって、戻し力F1を維持している。
図5の時間t2〜t3では、捌きローラ2と給紙ローラ1(図6等に示す)のニップ部でシート材9(図1等に示す)の重送が発生しており、図8で説明したように、捌きローラ2が戻しバネ106の戻し力F1を利用して、重送したシート材9の押し戻しを行う。重送したシート材9の押し戻しは、戻しバネ106のねじりの戻りによって行われるので、図5の時間t2で戻しバネ脚106bは図10(a)のF1の位置にあったのが、重送したシート材9の押し戻しが完了した時点である図5の時間t3において、図10(b)のF2の位置になる。
図5の時間t3〜t4では、重送したシート材9の引き戻しが完了し、シート材9の正常搬送が再開した状態を表している。捌きローラ2に備えられる戻しバネ106の戻しバネ脚106bは、図10(b)の位置にあって、戻し力F2を維持している。
図5の時間t4〜t5における捌きローラ2の動作は時間t2〜t3におけるものと同様であるが、重送したシート材9の押し戻しのため、図5の時間t4で戻しバネ脚106bは図10(b)のF2の位置にあったのが、重送したシート材9の押し戻しが完了した時点である図5の時間t5において、図10(c)のF3の位置になる。
図5の時間t5〜t6では、重送したシート材9の押し戻しが完了し、シート材9の正常搬送が再開した状態を表している。捌きローラ2に備えられる戻しバネ106の戻しバネ脚106bは、図10(c)の位置にあって、戻し力F3を維持している。
図5の時間t6〜t7における捌きローラ2の動作は時間t2〜t3におけるものと同様であるが、重送したシート材9の押し戻しのため、図5の時間t6で戻しバネ脚106bは図10(c)のF3の位置にあったのが、重送したシート材9の押し戻しが完了した時点である図5の時間t7において、図10(d)に示す、戻しバネ脚106bに外力がかからない初期位置になる。
このとき、図10(d)の戻しバネ脚106aはねじり量がオフセットされたFoffsetの位置で係止されているため、図10(d)の点線で示す初期位置に戻ることはなく、戻しバネ106にチャージされた戻し力もFoffsetより小さくなることはない。従って、図5の時間t7〜では、戻しバネ106に常時チャージされたFoffsetの分離力(堰き止め力)と、図7で説明したようなシート材9のわずかな侵入により戻しバネ脚106bがねじられることにより戻しバネ106にチャージされる戻し力とにより、シート材9の重送が何度発生しても効果的に押し戻しを行うことができる。
以上のように、本願発明は、捌きローラ2の戻し力発生源として戻しバネ106を用いたシート材給紙装置であって、戻しバネ106に重送した複数のシート材9間の動摩擦力より充分大きな分離力(堰き止め力)を発生させるねじり量のオフセットを与えることにより、長時間のシート材9の読み取りを行うことにより、戻しバネ106にトルクリミッタ105を滑らせるために必要な空転負荷力に相当するような大きなねじり量をチャージした後、シート材9の重送が繰り返されて戻しバネ106のねじり量が徐々に減少し、戻し力が徐々に減少しても、常時チャージされたFoffsetの分離力(堰き止め力)によりシート材9の重送を効果的に防止及び解消することができる。
ここで、図10(d)で説明したように、戻しバネ脚106bが外力がかからない初期位置にあって、戻しバネ脚106aがFoffsetの位置で係止されている状態であっても、少なくとも戻しバネ106に常時チャージされたFoffsetの分離力(堰き止め力)によって、シート材9の重送を解消することができるにもかかわらず、何故、図10(a)のように、戻しバネ脚106aにねじりを加え、戻し力F1をチャージさせるのか、その理由について説明する。
図11は本発明に係るシート材供給装置における重送発生時の動作説明図である。
図11(a)では、シート材91とシート材92が重送を起こしている状態を示している。仮に図10(d)のように、戻しバネ脚106bが外力がかからない初期位置にあって、戻しバネ脚106aがFoffsetの位置で係止されている状態でシート材9の給送を異なった場合、正常給送では、シート材91が1枚目として給送され、捌きローラ2を通過した後、シート材92が給送されるが、ときにシート材92がシート材91より先に進入してきて、シート材91との重送を起こす場合がある。このとき、図11(a)のように、シート材91に対するシート材92の先行量がわずかであれば、シート材92の進入によって戻しバネ脚106bが図11(a)に示す外力がかからない初期位置から反時計方向にわずかにねじられ、戻し力がチャージされるが、直後にシート材91が進入してくることにより重送状態となり、戻しバネ脚106bが初期位置方向に戻ることによって捌きローラ2が時計方向に回転し、シート材92を押し戻すことができる。
しかし、図11(b)に示すように、シート材92が相当量進入してからシート材91が遅れて進入してきた場合、シート材92の給送によって戻しバネ脚106bが、外力がかからない初期位置(図10(d))から反時計方向に戻し力F1を生じる位置(図10(a))までねじられているが、既にシート材92の進入量が、戻しバネ脚106bが戻し力F1を生じる位置(図10(a))から初期位置(図10(d))まで戻ることによる捌きローラ2の時計方向への回転量(戻し量)を超えていると、図11(b)に示すように、戻しバネ脚106bが初期位置(図10(d))まで戻るまで捌きローラ2が時計方向に回転しても、シート材92を捌きローラ2と給紙ローラ1とのニップ位置手前まで充分に戻すことができない。
このため、図11(b)に示すように、シート材92の先頭が捌きローラ2と給紙ローラ1とのニップ位置を過ぎた位置で静止したままシート材91の給送が行われ、シート材91が捌きローラ2と給紙ローラ1とのニップ位置を通過した後、シート材92の再給送が開始されるため、シート材92の先頭位置に誤差が生じ、搬送方向下流側での読み取り等の処理にエラーが生じることがある。
このような事態を防止するため、戻しバネ脚106aにねじりを加え、図10(a)で説明したように、充分な戻し力F1を事前にチャージさせておき、シート材9の重送がどのような態様で生じても、確実に解消することができるようにしているのである。
以下、本発明に係る実施例1を、図面を参照しつつ説明する。
図12は本発明の一実施例に係るシート材供給装置を構成する捌きローラの構成斜視図であり、図12(a)は捌きローラの完成図、図12(b)は捌きローラの分解図である。図13は本発明の一実施例に係るシート材供給装置を構成する捌きローラハウジングと戻しバネ連結部材の組立関係説明図であり、図13(b)は図13(a)において捌きローラハウジング102の中心軸Y1−Y2を通るX平面で切断したものを矢印Z方向より見た斜視図、図13(c)は捌きローラハウジング102を戻しバネ連結部材107挿入方向から見た斜視図である。
まず、図12、図13を用いて、捌きローラ2の構成を説明する。図12において、捌きローラ2は、ローラゴム101、捌きローラハウジング102、捌きローラハウジングカバー110、捌きローラ軸103、回り止めピン104、トルクリミッタ105、戻しバネ106、戻しバネ連結部材107、止め輪108によって構成されている。
トルクリミッタ105はトルクリミッタ内輪105aとトルクリミッタ外枠105bとの相対的な回転に対して、所定の空転負荷トルクを発生させる。
図13(a)において、トルクリミッタ105はトルクリミッタ外枠105bに形成された回り止め突起105dと、戻しバネ連結部材107に形成された孔107fとが噛合うように、図12(b)に示す戻しバネ連結部材107のトルクリミッタ収納室107eに挿嵌される。
図12(b)において、トルクリミッタ105のトルクリミッタ内輪105aには、捌きローラ軸103の回り止めピン104を係止するための回り止め切欠105cが軸対称に2箇所設けられており、トルクリミッタ105のトルクリミッタ内輪105aに捌きローラ軸103を挿入していくと、捌きローラ軸103に取り付けられた回り止めピン104がトルクリミッタ105の前記2箇所の回り止め切欠105cに係止される。これにより、捌きローラ軸103のトルクリミッタ105に対する自由な回転が拘束される。
戻しバネ106は一端106aから他端106bへらせん状に巻かれたねじりバネであり、一端106aは捌きローラハウジング102に形成した係止溝102aに係止され、他端106bは戻しバネ連結部材の噛合突起107bに形成した係止溝107aに係止される。
戻しバネ連結部材107は、噛合突起107bが捌きローラハウジング102のトルクリミッタ収納室102bに形成された噛合突起102a1と102a2との間に没入するように、捌きローラハウジング102の係止溝102aと戻しバネ連結部材107の係止溝107aとの間に戻しバネ106の他端106bが係止される。
これにより、戻しバネ106は締まり方向(図12矢印A方向)へ所定角度の回転力が与えられることによりねじりたわみ力が与えられる。
同時に、戻しバネ連結部材107の外周面107cは、捌きローラハウジング102のトルクリミッタ収納室102bの内周面102eに対して回転可能に形成され、噛合突起102a1、102a2間の開き角102cが、戻しバネ連結部材107の噛合突起107bの形成角度107gに対して所定の可動範囲を有するように形成されている。
前記したように、戻しバネ106は所定のねじりたわみを与えられているので、戻しバネ連結部材107は戻しバネ106の緩み方向(矢印B方向)に復元トルクを受け、戻しバネ連結部材の噛合突起107bは捌きローラハウジング102の噛合突起102a1と噛合位置で回転せず保持される。
本実施例における戻しバネ106は、後述する上側搬送路壁7(図14)に捌きローラ2を装着した場合におけるシート材給送方向への回転方向を締まり方向とする。
捌きローラハウジングカバー110は、前記した構成を組み立てる上で必要な捌きローラハウジング102の開放部をふさぐための部材で、捌きローラハウジング102に装着される。止め輪108は捌きローラハウジング102の内部に挿嵌されるトルクリミッタ105とは反対側から、捌きローラ軸103に挿入され、捌きローラ軸103が捌きローラハウジング102から抜けることを防止する抜け止めである。
ローラゴム101は捌きローラハウジング102に外嵌固着され、捌きローラハウジング102と一体的に回転する。ローラゴム101を捌きローラハウジング102に外嵌固着したものを、捌きローラ回転体109(図14)という。
図12(a)で説明したように、捌きローラ2を組み立てた状態では、戻しバネ106は自由な状態から所定角度だけ締まり方向にねじられた状態になっているので、戻しバネ連結部材107は捌きローラハウジング102に対して戻しバネ106の復元トルクを受け、戻しバネ連結部材107の噛合突起107bは、捌きローラハウジング102の戻しバネ106の緩み方向側の噛合突起102a1に押しつけられた状態で保持されているが、この状態で戻しバネ106の発生するトルクを初期設定トルクTsとする。
次に、図12、図14を用いて、捌きローラ2の動作について説明する。
図14は発明の一実施例に係るシート材供給装置の断面図である。
図12において、捌きローラ2は、捌きローラ軸103の端部に形成された平面部103a、103bが図14の捌きローラ軸受14に対して回転不可に把持され、捌きローラ軸受14は上側搬送路壁7に、給送ローラ1に対して離接する方向に形成された案内溝7aに沿って給送ローラ1に対して離接可能に保持されている。
また、捌きローラ軸受14は、捌きローラ付勢バネ10により給送ローラ1に向かって付勢されているので、給送ローラ1が回転すると捌きローラ回転体109も捌きローラ軸103を中心として給送ローラ1に連れ回りして回転する。
ここで、図12により、給送ローラ1の静止状態から回転を開始した際における、捌きローラ2の構成要素である、ローラゴム101、捌きローラハウジング102、捌きローラ軸103、トルクリミッタ105、戻しバネ106、戻しバネ連結部材107の動作について説明する。
図14の給送ローラ1が回転を開始するまでは、図12の戻しバネ連結部材107の噛合突起107bは戻しバネ106の復元力により捌きローラハウジング102の噛合突起102a1と当接している。
給送ローラ1がシート材給送方向(図14の反時計方向)に回転を開始し、シート材9が給紙ローラ1と捌きローラ2のニップ部に給紙されると、給送ローラ1に対する連れ回りにより捌きローラ回転体109がシート材給送方向へ回転を開始する。戻しバネ106はその一端106aが捌きローラ回転体109の係止溝102aと係合しているので、矢印A方向に回転しようとする。
このとき、戻しバネ連結部材107も噛合突起107bに戻しバネ106の一端106aが係止されているので、戻しバネ106が矢印A方向に回転するのに伴って戻しバネ連結部材107も回転トルクを受けるが、戻しバネ連結部材107はトルクリミッタ105の設定トルク値まではトルクリミッタ105に回転を阻止され、捌きローラ軸103に対して回転できない。そのため、捌きローラハウジング102は、戻しバネ106が更にねじりたわみ量を増加させるのに伴い、捌きローラハウジング102の噛合突起102a2(図13(c))が戻しバネ連結部材107の噛合突起107bに当接する位置まで回転する。
図14の捌きローラ回転体109が給紙ローラ1の回転に連れ回りして更に回転を続け、戻しバネ連結部材107が戻しバネ106の回転により受けるトルクが設定トルク値を超えると、トルクリミッタ105が矢印A方向に滑り始め、捌きローラ回転体109はトルクリミッタ105と共にトルクリミッタ105の設定トルク値の空転負荷に抗して矢印A方向に回転を続ける。当然ながら、給送ローラ1と捌きローラ2との当接摩擦力(静止摩擦力)は、トルクリミッタ105の設定トルク値に抗するのに十分な程度に大きく設定されている。
シート9が給送ローラ1を通過して給送ローラ1が回転を停止すると、捌きローラ回転体109の連れ回りも停止する。このとき、戻しバネ106は、戻しバネ連結部材107の噛合突起107bが捌きローラハウジングの噛合突起102a2と当接するまでねじられているが、戻しバネ106に掛かる締まりトルクは、トルクリミッタ105の設定トルクより小さく設定されているので、給送ローラ1と捌きローラ回転体109との間の大きな静止摩擦力のため、捌きローラ回転体109は停止した位置で保持される。
ここで、給送ローラ1と捌きローラ2とを離間させ、あるいは給送ローラ1と捌きローラ2との間に摩擦の小さい部材を介在させた場合等、捌きローラハウジング102を静止保持させる力が解除されるような状況になると、ねじられた戻しバネ106は緩み方向に復元するため、捌きローラ回転体109の戻しバネ連結部材107の噛合突起107bが捌きローラハウジング102の噛合突起102a2(図13(b))から離れて戻しバネ106の緩み方向(図12の矢印B方向)に回転し、次いで戻しバネ連結部材107の噛合突起107bが捌きローラハウジング102の噛合突起102a1に当接するまで回転して停止する。
図15に捌きローラ回転体109を給送方向に回転させた場合の、捌きローラ回転体109の回転開始からの回転角θと、回転させるために必要なトルクTとの関係を示す。
図15は本発明の一実施例に係るシート材供給装置を構成する捌きローラに掛かる負荷トルクの説明図である。
図15において、Tsは戻しバネ連結部材107の噛合突起107bが捌きローラハウジング102の噛合突起102a1に当接している状態で戻しバネ106が発生するトルクであり、Tlはトルクリミッタ105の作動設定トルク、θsは戻しバネ連結部材107の噛合突起107bが、捌きローラハウジングの噛合突起102a1を離れて噛合突起102a2に当接するまでの回転角である。即ち、図13(b)の開き角102cと図13(a)の形成角度107gとの差が、回転角θsとして設定される。
給送ローラ1が回転を開始して、捌きローラ回転体109が連れ回りを開始すると、戻しバネ連結部材107の噛合突起107bが捌きローラハウジング102の噛合突起102a2に当接するまで、戻しバネ106はねじり角度が増加するから、戻しバネ106の発生するトルクは増加する。
次に、戻しバネ連結部材107の噛合突起107bが、捌きローラハウジング102の噛合突起102a2に当接すると、捌きローラハウジング102と戻しバネ連結部材107は一体的に回転するので、連れ回りによる回転力はトルクリミッタ105に作用し、トルクリミッタ105の作動設定トルクTlを超える回転力が加わると、トルクリミッタ105は作動設定トルクTlで滑りを生じ、以後の捌きローラ回転体109の回転に対しては、一定の空転負荷として作用する。
従って、回転開始からの回転角が回転角θsを超えるまでは、所定の割合で負荷トルクが増加し、回転角θsを超えたところで、捌きローラ回転体109の空転負荷は作動設定トルクTlで一定となる。戻しバネ106のバネ定数を、回転角θsのときの発生トルクが作動設定トルクTlとなるように設定しておけば、戻しバネ106のねじりたわみ角度の増加と、捌きローラハウジング102の噛合突起102a2と戻しバネ連結部材107の噛合突起107bの当接によるトルクリミッタ105の作動による発生空転トルクとの切り替わりを滑らかにすることができる。
次に、回転角θsを超えて給送ローラ1を回転させて停止させたとき、捌きローラ2の戻しバネ106はそのバネ定数の設定に応じて発生するトルクリミッタ105の作動設定トルクTl近傍のトルクで、捌きローラ回転体109を給送方向とは逆方向に回転させようとするが、捌きローラ2は給送ローラ1へ付勢当接されているため、前記当接力をNとして、給送ローラ1と捌きローラ2との摩擦係数μを、(Tl<μ・N)となるように設定しておけば、捌きローラ2は戻しバネ106のねじりたわみを生じたままで当接状態を保持できる。
即ち、給送ローラ1を捌きローラ回転体109の回転角θs相当以上に回転させた後は、戻しバネ106にトルクリミッタ105の設定トルクと同程度の復元トルクを蓄積した状態で捌きローラ2を給送ローラ1に付勢当接させた状態で保持することができる。
次に図14、図16、図17、図18、図19を用いて、本実施例に係るシート材供給装置の構成と、捌きローラの作用及び効果について説明する。図14は先述した通りであり、図16は本発明の一実施例に係るシート材供給装置の要部斜視図、図17は本発明の一実施例に係るシート材供給装置を構成するローラ駆動部の斜視図、図18及び図19は本発明の一実施例に係るシート材供給装置を構成する搬送阻止部材駆動機構の斜視図である。
図14において、給送ローラ1と捌きローラ2は、前記したようにそれぞれ下側搬送路壁8と上側搬送路壁7に配設され、所定の力で給送ローラ1と捌きローラ2同士互いに付勢当接されている。ピックアップローラ6は、下側搬送路壁8の給送ローラ1に対してシート材搬送方向上流に配設されている。
搬送阻止部材3は、上側搬送路壁7に一端の揺動支部3aを中心として揺動可能に軸支され、搬送阻止部材3の先端部はピックアップローラ6と給送ローラ1との間に、シート材9の給送を阻止するように搬送阻止部材付勢バネ4で付勢されている。
係止部材5は、下側搬送路壁8にその揺動支軸部5aを中心に揺動可能に軸支され、係止部材5の先端部には係止爪5bが形成されており、搬送阻止部材3が給送方向に開かないように搬送阻止部材3の先端部を係止している。係止部材5の下面5cは開閉カム11に係止部材バネ12で付勢当接されており、開閉カム11の回転によって揺動して搬送阻止部材3との係止と解除が可能である。
図18は係止部材5が搬送阻止部材3を係止した状態、図19は解除した状態を示す。ここで、開閉カム11はピックアップローラ駆動軸31に対して、図示しないトルクリミッタを内蔵しており、ピックアップローラ駆動軸31に対しては所定の空転負荷トルクを介して空転可能である。これらの動作は後述する。
図17にて給送ローラ1、捌きローラ2、ピックアップローラ6の動作について説明する。まずシート材9を給送する場合においては、モータ20が矢印20a方向に回転すると、回転はモータプーリ21からベルト22、ギアプーリ23及び下流のギア24、25、26を介して給送ローラ駆動軸32を、ギア24、25、27、28を介してピックアップローラ駆動軸31を、それぞれ矢印32a、31a方向に回転させる。
ギア26と27は共にギア25に噛合しており、ピックアップローラ駆動軸31と給送ローラ駆動軸32の駆動力は、ここで分割される。ここで、ワンウェイクラッチ内蔵ギア29、30の内蔵ワンウェイクラッチは図示しないが、それぞれの入力軸の矢印31a、32aの回転方向の回転に対してはそれぞれの入力軸と噛合し、逆の回転方向に対しては空転するように構成されており、給送ローラ1はワンウェイクラッチ内蔵ギア29から給送ローラ1の一端に形成されたギアを介して矢印1aの給送方向に回転する。
また、ピックアップローラ6は、ピックアップローラ駆動軸31からワンウェイクラッチ内蔵ギア30、ギア33、34を介して給送ローラ1と同様に矢印6aの給送方向に回転する。
従って、給送ローラ1、ピックアップローラ6にシート材9が当接している場合は、給送ローラ1とピックアップローラ6の回転によりシート材9は給送方向に給送される。
また、図16で説明したように、捌きローラ2の捌きローラ回転体109は、給送ローラ1または給送されたシート材9に対して連れ回りをする。
次に、図18、図19にて、搬送阻止部材3と係止部材5の動作について説明する。図18において、開閉カム11は係止部材5を押し上げた状態で、係止部材5の係止爪5bは搬送阻止部材3を係止している。
次に、図19において、モータ20が矢印20aで示すシート材9の給送方向に回転すると、前記したようにピックアップローラ駆動軸31は矢印31a方向に回転し、開閉カム11を同方向(矢印31a方向)に回転させる。係止部材5は揺動支軸部5aを中心にして、図示しない係止部材バネで係止部材5を解除する方向5d1に付勢されているので、係止部材5は搬送阻止部材3の係止を解除し、搬送阻止部材3はシート材9の給送方向に向かって開閉可能になる。このとき、シート材9がピックアップローラ6に当接するように載置されていれば、シート材9はピックアップローラ6によりシート材9の送り方向へ送られ、シート材9は搬送阻止部材3を矢印3c方向に押し開きながら、図14の給送ローラ1と捌きローラ2のニップ位置へ給送される。
前記したように、開閉カム11はピックアップローラ駆動軸31に対して図示しないトルクリミッタを内蔵しているので、更にピックアップローラ駆動軸31が回転すると、開閉カム11は矢印11aで示す方向へ所定の角度回転後、図14の下側搬送路壁8に形成された図示しない解除側ストッパと当接してその回転を止められるが、開閉カム11に内蔵された前記トルクリミッタが空転することにより、開閉カム11本体は前記解除側ストッパとの当接位置で停止したままとなる。
次に、シート材9の給送が完了後にモータ20を停止し、図18に示すように、モータ20を矢印20bの方向に回転させると、前記した回転伝達経路を経由して給送ローラ駆動軸32とピックアップローラ駆動軸31を、シート材9の給送時とは逆の矢印31b、32bの方向に回転させるので、開閉カム11も矢印11b方向に回転して係止部材5を押し上げる。
搬送阻止部材3は、搬送阻止部材付勢バネ4(図14)により矢印3d方向に付勢されているので、シート材9の給送が完了したところでシート材9の載置時のシート材9の先端位置付近へ戻っており、搬送阻止部材3が係止部材5の係止爪5bによって係止されると、搬送阻止部材3の給送方向への開放が禁止される。
開閉カム11に対しては、前記したように係止部材5の搬送阻止部材3との係止位置近傍にも、下側搬送路壁8に図示しない係止側ストッパが配設されており、開閉カム11が前記係止側ストッパに当接する位置まで回転すると、前記した図示しない内蔵トルクリミッタが空転し、開閉カム11は係止側ストッパ当接位置で停止する。
図17の給送ローラ1も、モータ20の矢印20bで示す方向への回転によりシート材9の給送方向とは逆方向に回転するが、給送ローラ駆動軸32が矢印32b方向へ回転すると、ワンウェイクラッチ内蔵ギア29の図示しないワンウェイクラッチの噛合がかからないため、捌きローラ回転体109(図16)は内蔵された戻しバネ106(図12(b))が緩むことで、図13に示す捌きローラハウジング102の噛合突起102a1と戻しバネ連結部材107の噛合突起107bとが当接する位置まで回転し、図17の給送ローラ1は捌きローラ回転体109に連れ回りして給送方向とは逆方向に回転する。
その後は、捌きローラ2に内蔵したトルクリミッタ105(図12)の空転負荷が作用するため、図17のワンウェイクラッチ内蔵ギア29と給送ローラ駆動軸32とが互いに滑りながら、モータ20から給送ローラ駆動軸32までの伝達機構が回転する。モータ20は、図18の開閉カム11が前記した図示しない係止側ストッパに当接するまで回転して停止する。
次に、シート材9の給送について説明する。まず、図14に示すように、複数のシート材9の束を、シート材9の先端が搬送阻止部材3に当接するようにシート材給送装置にセットする。図17のモータ20を矢印20aで示すシート材給送方向に回転駆動させると、セットされたシート材9はピックアップローラ6により給送方向へ送られる。
同時に、図19で開閉カム11が矢印11aで示す解除方向に回転して係止部材5による搬送阻止部材3の係止が解除されると、搬送阻止部材3はシート材9に押されて矢印3c方向に開き始める。モータ20の回転開始から係止部材5による搬送阻止部材3の解除までの時間は、係止部材5の係止爪5bの搬送阻止部材3への係りしろの深さによって設定できる。または、搬送阻止部材3の解除までの時間はピックアップローラ駆動軸31と開閉カム11の係止に遊びを持たせ、ピックアップローラ駆動軸31の回転後タイムラグをもって開閉カム11が回転する構成とすることにより設定できる。
図14において、セットされたシート材9の先端部が揃っていない場合には、図19の搬送阻止部材3が係止爪5bによる係止の解除により矢印3c方向へ開き始めるまでは、最下層のシート材9aに対して突出しているシート材9は搬送阻止部材3によって進入を阻止され、ピックアップローラ6に当接する最下層のシート材9aは送られるので、この間に最下層のシート材9aはシート材9aより先端が突出した他のシート材9の先端部に追いつき、搬送阻止部材3に当接して揃えられる。従って、シート材9の先端が揃っていない場合においても、最初に給送されるべき最下層のシート材9aから順に給送することができる。
また、図17の捌きローラ2に関しては、モータ20の回転開始と同時に給送ローラ1もピックアップローラ6と共にシート材9の給送方向に回転を開始するので、捌きローラ回転体109もシート材9の給送方向に連れ回りを開始して、戻しバネ106(図12)は締まり方向(矢印A方向)にたわみ始める。図15で説明したように、捌きローラ回転体109が所定の回転角θs以上に回転すると、トルクリミッタ105が動作し始める。
図18、図19において、搬送阻止部材3が解除され、給送されるシート材9に押し開けられると、シート材9は給送ローラ1と捌きローラ2のニップ位置まで進入するが、搬送阻止部材3の閉じた位置と給送ローラ1と捌きローラ2のニップ位置までの距離を、捌きローラ回転体109の回転角θsに相当する周長程度に設定しておけば、給送されたシート材9が前記ニップ位置に到達するまでに戻しバネ106は回転角θsのねじりたわみを発生し、トルクリミッタ105の設定トルクの捌き力がシート材9に作用し、給送ローラ1に当接する最下層のシート材9a(図14)のみが前記ニップ位置を通過して下流へと搬送される。
ここで、図14において、シート材9のセット時の先端不揃いが過度なため、前記したような搬送阻止部材3による先端揃えが充分でない場合等、シート材9の捌きが充分に行われずに2枚以上のシート材9がニップ位置を通過した場合を説明する。
一般に、用紙等の紙のシート材9同士の動摩擦係数は、ゴム材であるローラ材とシート材9との静止摩擦係数より小さいので、給送途中でシート材9とシート材9との間で滑りが発生し、給送ローラ1に当接する最下層側のシート材9aのみが送り力を受けて給送される。
一方、捌きローラ2の戻しバネ106には前記したようにねじりたわみが発生しているので、上側搬送路壁7に回転不能に保持された捌きローラ軸103に対して、捌きローラ回転体109には給送方向と反対方向に回転させようとするトルクが作用しており、最下層から2枚目以降のシート材9は捌きローラ回転体109の給送方向とは反対方向への回転により押し戻され、2枚目以降のシート材9は、先端部が給送ローラ1と捌きローラ2とのニップ位置の手前まで戻される。
ここで、捌きローラ回転体109が、戻しバネ106により給送方向と逆に回転する場合、トルクリミッタ105は、戻しバネ106の反作用力を受けるが、前記したように戻しバネ106が所定角度θsだけねじられた状態で発生するトルクは、トルクリミッタ105と同程度に設定されており、戻しバネ106のねじりたわみの解放により、反作用として作用するトルクはトルクリミッタ105の設定トルクより小さくなるので、トルクリミッタ105は空転せず、捌きローラ軸103と一体のまま、装置に保持される。
最下層の1枚目のシート材9aの後端が、給送ローラ1と捌きローラ2のニップ位置を通過すると、2枚目である次の最下層のシート材9が給送ローラ1により送られ、以下、載置されたシート材9がなくなるまでこれを繰り返す。
図18において、最後のシート材9が給送されると、搬送阻止部材3は搬送阻止部材付勢バネ4(図14)で閉位置へ押し戻される。給送されたシート材9が処理装置から排出されると、モータ20は給送方向とは逆の矢印20b方向へ回転駆動され、前記した通り開閉カム11は係止部材5を押し上げるので、搬送阻止部材3は閉位置で係止部材5と係合し、給送方向への開きが禁止される。