JP5287563B2 - 湾曲形状防煙垂壁の形成方法、湾曲形状防煙垂壁用パネル及び湾曲形状防煙垂壁 - Google Patents

湾曲形状防煙垂壁の形成方法、湾曲形状防煙垂壁用パネル及び湾曲形状防煙垂壁 Download PDF

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この発明は、火災時などに発生する煙の流動を一時的に遮断する湾曲形状防煙垂壁の形成方法、湾曲形状防煙垂壁用パネル及び湾曲形状防煙垂壁に関する。
一般的に、火災時などに発生する煙の流動を一時的に遮断する防煙垂壁には、平板状の板ガラスが用いられている。
近年、防煙垂壁にも意匠性が要求され、湾曲形状に施工することが望まれている。しかしながら、湾曲形状の板ガラスは割れやすいため、搬送時は厳重な梱包により破損防止措置を施さなければならず、輸送コストが高くなるという問題がある。しかも、湾曲形状の板ガラスは、一般に流通されておらず特注となるため、更にコストが高くなるという問題がある。
そこで、特許文献1では、板ガラスの代わりにガラス繊維シートを取り付けた湾曲形状のパネルを製造し、このパネルを施工現場に搬送し、複数のパネルを設置場所に配置するとともにガラス繊維シートに生じた皺を除去して、湾曲形状の防煙垂壁を形成している。
特開2006−335775号公報
しかしながら、特許文献1に記載の防煙垂壁では、搬送の問題は若干解決されたものの、湾曲形状の枠体にガラス繊維シートが取り付けられたパネルを現場に搬送して施工するものであるため、搬送時のパネルの嵩みにより、搬送コストが十分に低減できないという問題がある。しかも、枠体とガラス繊維シートとが一体となったパネルを搬送するため、搬送時に生じたガラス繊維シートの皺を除去するのが煩雑になるという問題がある。
そこで、本発明は、搬送コストを低減してガラス繊維シートに皺のない湾曲形状防煙垂壁を形成することができる湾曲形状防煙垂壁の形成方法、湾曲形状防煙垂壁用パネル及び湾曲形状防煙垂壁を提供することを目的とする。
本発明に係る湾曲形状防煙垂壁の形成方法は、可撓性を有する枠体の一方の面にガラス繊維シートが取り付けられた防煙垂壁用パネル本体と、湾曲形状の外枠と、を備える湾曲形状防煙垂壁用パネルを用いた湾曲形状防煙垂壁の形成方法であって、平面形状の前記防煙垂壁用パネル本体を前記ガラス繊維シート側に凸形状に曲げ、当該防煙垂壁用パネル本体を前記外枠に取り付けて前記湾曲形状防煙垂壁用パネルを形成し、前記湾曲形状防煙垂壁用パネルを前記湾曲形状防煙垂壁の設置場所に配置して、前記湾曲形状防煙垂壁を形成することを特徴とする。
本発明に係る湾曲形状防煙垂壁の形成方法によれば、湾曲形状防煙垂壁用パネルを構成する防煙垂壁用パネル本体と外枠とが分離されているため、外枠に取り付けられていない状態で防煙垂壁用パネル本体を搬送することができる。そして、防煙垂壁用パネル本体は、可撓性を有する枠体とガラス繊維シートとにより構成されているため、防煙垂壁用パネル本体を平面形状の状態で施工現場に搬送することができる。これにより、防煙垂壁用パネル本体の梱包効率を向上させることができるため、搬送コストを低減することができる。また、湾曲形状防煙垂壁用パネルを組み立てる際に、防煙垂壁用パネル本体をガラス繊維シート側に凸形状に曲げて外枠に取り付けるため、ガラス繊維シートに張力が作用してガラス繊維シートの皺が伸びる。しかも、枠体は、その特性上、元の形状に戻ろうとして凸形状に湾曲された一対の辺部を離間させようとする力が作用するため、この力によっても、ガラス繊維シートに張力が作用してガラス繊維シートの皺が伸びる。その結果、ガラス繊維シートに皺のない湾曲形状防煙垂壁を形成することができる。そして、施工現場において防煙垂壁用パネル本体を外枠に取り付けることができるため、設置場所の形状に応じた微調整を簡易に行うことができる。しかも、防煙垂壁用パネル本体はガラス繊維シートにより構成されているため、従来のガラス板により構成される湾曲形状防煙垂壁に比べると、施工時に割れたり欠けたりする危険性を大幅に低減することができる。加えて、防煙垂壁用パネル本体は様々な形状に変形させることができるため、例えば、湾曲形状の防煙垂壁と平面形状の防煙垂壁とを形成したい場合でも、同一の防煙垂壁用パネル本体を利用することができ、防煙垂壁用パネル本体の汎用性を格段に向上させることができる。
本発明に係る湾曲形状防煙垂壁の形成方法は、可撓性を有する枠体の一方の面にガラス繊維シートが取り付けられた防煙垂壁用パネル本体と、湾曲形状の外枠と、を備える湾曲形状防煙垂壁用パネルを用いた湾曲形状防煙垂壁の形成方法であって、前記外枠を前記湾曲形状防煙垂壁の設置場所に配置し、平面形状の前記防煙垂壁用パネル本体を前記ガラス繊維シート側に凸形状に曲げ、当該防煙垂壁用パネル本体を前記外枠に取り付けて前記湾曲形状防煙垂壁を形成することを特徴とする。
本発明に係る湾曲形状防煙垂壁の形成方法によれば、湾曲形状防煙垂壁用パネルを構成する防煙垂壁用パネル本体と外枠とが分離されているため、外枠に取り付けられていない状態で防煙垂壁用パネル本体を搬送することができる。そして、防煙垂壁用パネル本体は、可撓性を有する枠体とガラス繊維シートとにより構成されているため、防煙垂壁用パネル本体を平面形状の状態で施工現場に搬送することができる。これにより、防煙垂壁用パネル本体の梱包効率を向上させることができるため、搬送コストを低減することができる。また、湾曲形状防煙垂壁用パネルを組み立てる際に、防煙垂壁用パネル本体をガラス繊維シート側に凸形状に曲げて外枠に取り付けるため、ガラス繊維シートに張力が作用してガラス繊維シートの皺が伸びる。しかも、枠体は、その特性上、元の形状に戻ろうとして凸形状に湾曲された一対の辺部を離間させようとする力が作用するため、この力によっても、ガラス繊維シートに張力が作用してガラス繊維シートの皺が伸びる。その結果、ガラス繊維シートに皺のない湾曲形状防煙垂壁を形成することができる。そして、施工現場において防煙垂壁用パネル本体を外枠に取り付けることができるため、設置場所の形状に応じた微調整を簡易に行うことができる。しかも、防煙垂壁用パネル本体はガラス繊維シートにより構成されているため、従来のガラス板により構成される湾曲形状防煙垂壁に比べると、施工時に割れたり欠けたりする危険性を大幅に低減することができる。加えて、防煙垂壁用パネル本体は様々な形状に変形させることができるため、例えば、湾曲形状の防煙垂壁と平面形状の防煙垂壁とを形成したい場合でも、同一の防煙垂壁用パネル本体を利用することができ、防煙垂壁用パネル本体の汎用性を格段に向上させることができる。
これらの場合、外枠は、内側に向けて開口する溝部が形成されたコ字状断面に形成されており、前記溝部に前記防煙垂壁用パネル本体をはめ込むことが好ましい。このように、防煙垂壁用パネル本体を外枠の溝部にはめ込むことで、防煙垂壁用パネル本体を外枠に確実に保持させることができると共に、外枠に対する防煙垂壁用パネル本体の取り付け作業性を向上させることができる。
また、枠体は、ガラス長繊維と熱硬化性樹脂とによりなることが好ましい。このように、ガラス長繊維と熱硬化性樹脂とにより枠体を構成することで、枠体に適度な可撓性及び柔軟性を与えることができるため、外枠の形状に合わせて防煙垂壁用パネル本体を適切に屈曲させることができる。
本発明に係る湾曲形状防煙垂壁用パネルは、湾曲形状防煙垂壁に用いられる湾曲形状防煙垂壁用パネルであって、可撓性を有する枠体の一方の面にガラス繊維シートが取り付けられた防煙垂壁用パネル本体と、前記防煙垂壁用パネル本体と分離可能な湾曲形状の外枠と、を備えており、平面形状の前記防煙垂壁用パネル本体を前記ガラス繊維シート側に凸形状に曲げ、当該防煙垂壁用パネル本体を前記外枠に取り付けられてなることを特徴とする。
本発明に係る湾曲形状防煙垂壁用パネルによれば、防煙垂壁用パネル本体と外枠とが分離可能であるため、外枠に取り付けられていない状態で防煙垂壁用パネル本体を搬送することができる。そして、防煙垂壁用パネル本体は、可撓性を有する枠体とガラス繊維シートとにより構成されているため、防煙垂壁用パネル本体を平面形状の状態で施工現場に搬送することができる。これにより、防煙垂壁用パネル本体の梱包効率を向上させることができるため、搬送コストを低減することができる。そして、湾曲形状防煙垂壁用パネルは、防煙垂壁用パネル本体をガラス繊維シート側に凸形状に曲げて外枠に取り付けられるため、ガラス繊維シートに張力が作用してガラス繊維シートの皺が伸びる。しかも、枠体は、その特性上元の形状に戻ろうとして凸形状に湾曲された一対の辺部を離間させようとする力が作用するため、この力によっても、ガラス繊維シートに張力が作用してガラス繊維シートの皺が伸びる。その結果、ガラス繊維シートの皺の発生を防止することができるため、この湾曲形状防煙垂壁用パネルを配置することで、ガラス繊維シートに皺のない湾曲形状防煙垂壁を形成することができる。そして、施工現場において防煙垂壁用パネル本体を外枠に取り付けるため、設置場所の形状に応じた微調整を簡易に行うことができる。しかも、防煙垂壁用パネル本体はガラス繊維シートにより形成されているため、従来のガラス板により構成される湾曲形状防煙垂壁用パネルに比べると、施工時に割れたり欠けたりする危険性を大幅に低減することができる。
本発明に係る湾曲形状防煙垂壁は、上述した湾曲形状防煙垂壁用パネルを設置場所に配置してなることを特徴とする。
本発明に係る湾曲形状防煙垂壁によれば、湾曲形状防煙垂壁用パネルを構成する防煙垂壁用パネル本体と外枠とが分離されているため、外枠に取り付けられていない状態で防煙垂壁用パネル本体を搬送することができる。そして、防煙垂壁用パネル本体は、可撓性を有する枠体とガラス繊維シートとにより構成されているため、防煙垂壁用パネル本体を平面形状の状態で施工現場に搬送することができる。これにより、防煙垂壁用パネル本体の梱包効率を向上させることができるため、搬送コストを低減することができる。また、湾曲形状防煙垂壁用パネルを組み立てる際に、防煙垂壁用パネル本体をガラス繊維シート側に凸形状に曲げて外枠に取り付けるため、ガラス繊維シートに張力が作用してガラス繊維シートの皺が伸びる。しかも、枠体は、その特性上元の形状に戻ろうとして凸形状に湾曲された一対の辺部を離間させようとする力が作用するため、この力によっても、ガラス繊維シートに張力が作用してガラス繊維シートの皺が伸びる。その結果、ガラス繊維シートに皺のない湾曲形状防煙垂壁を形成することができる。そして、施工現場において防煙垂壁用パネル本体を外枠に取り付けることができるため、設置場所の形状に応じた微調整を簡易に行うことができる。しかも、防煙垂壁用パネル本体はガラス繊維シートにより構成されているため、従来のガラス板により構成される湾曲形状防煙垂壁に比べると、施工時に割れたり欠けたりする危険性を大幅に低減することができる。
本発明によれば、搬送コストを低減してガラス繊維シートに皺のない湾曲形状防煙垂壁を形成することができる。
本実施形態に係る湾曲形状防煙垂壁を示す斜視図である。 防煙垂壁用パネルを示す斜視図である。 図2に示すIII−III線断面図である。 防煙垂壁用パネル本体を示す斜視図である。 図4に示すV−V線断面図である。 外枠を示す斜視図である。 図6に示すVII−VII線断面図である。 外枠の分解斜視図である。 湾曲形状防煙垂壁用パネルの形成方法を示す図である。 第2の実施形態で用いる外枠を示す斜視図である。 図10に示すXI−XI線断面図である。 湾曲形状防煙垂壁用パネルの形成方法を示す図である。 第3の実施形態で用いる湾曲形状防煙垂壁用パネル本体を示す斜視図である。 図13に示すXIV−XIV線断面図である。
以下、図面を参照して、本発明に係る湾曲形状防煙垂壁の形成方法、湾曲形状防煙垂壁用パネル及び湾曲形状防煙垂壁の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る湾曲形状防煙垂壁を示す斜視図である。なお、図1では、便宜上、天井面及び壁面の図示を省略している。図1に示すように、湾曲形状防煙垂壁1は、全体的に湾曲形状に形成されており、天井面から垂直方向に向けて垂下されるとともに、天井面に沿って水平方向に延在している。このため、湾曲形状防煙垂壁1は、レール2と、端部方立3と、中間方立4と、パネルジョイント5と、湾曲形状防煙垂壁用パネル6とにより構成される。なお、以下の説明では、湾曲形状防煙垂壁1が垂下する鉛直方向を、上下方向とも称し、湾曲形状防煙垂壁1が延在する水平方向を、左右方向とも称する。
レール2は、天井面(不図示)に固定されて湾曲形状防煙垂壁用パネル6を垂下するものである。このため、レール2は、湾曲形状防煙垂壁1と天井面との間に配置されて、湾曲形状防煙垂壁1の形状に沿った湾曲形状(曲線状)に形成されている。
端部方立3は、湾曲形状防煙垂壁用パネル6を壁面(不図示)に取り付けるものである。このため、端部方立3は、湾曲形状防煙垂壁用パネル6と壁面との間に配置されて、鉛直方向に延びる直線状に形成されている。
中間方立4は、隣接する湾曲形状防煙垂壁用パネル6を連結固定するものである。このため、中間方立4は、隣接する湾曲形状防煙垂壁用パネル6の間に配置されて、鉛直方向に延びる直線状に形成されている。
パネルジョイント5は、中間方立4により連結固定された隣接する湾曲形状防煙垂壁用パネル6を下面から支持して連結固定するものである。このため、パネルジョイント5は、中間方立4の下端に配置されて、水平方向に延びる曲線状に形成されている。
湾曲形状防煙垂壁用パネル6は、レール2に垂下されるとともに、端部方立3、中間方立4及びパネルジョイント5により連結固定される、パネル状部材である。
図2は、防煙垂壁用パネルを示す斜視図であり、図3は、図2に示すIII−III線断面図である。図2及び図3に示すように、湾曲形状防煙垂壁用パネル6は、湾曲形状に形成されており、防煙垂壁用パネル本体10と、外枠20とにより構成されている。
図4は、防煙垂壁用パネル本体を示す斜視図であり、図5は、図4に示すV−V線断面図である。図4及び図5に示すように、防煙垂壁用パネル本体10は、枠体11と、ガラス繊維シート12とにより構成されている。
枠体11は、ガラス繊維シート12を支持する枠であり、可撓性、柔軟性及び弾性(形状弾性)を有して変形可能に構成されている。枠体11は、矩形(矩形環)の枠状に形成されている。この枠体11は、左右方向に直線状に延在して上下方向に対向する一対の横枠部11a,11bと、上下方向に直線状に延在して左右方向に対向する一対の縦枠部11c,11dと、により構成されており、一対の横枠部11a,11bと一対の縦枠部11c,11dは、互いに端部で接続されている。このため、枠体11は、自然状態で平面状に形成されている。
このように形成される枠体11は、主にガラス長繊維と、このガラス長繊維に樹脂を含浸及び硬化させて形成した熱硬化性樹脂と、により構成されている。
枠体11全体に対するガラス長繊維の割合は、50〜80重量%とする。より好ましくは、60〜70重量%とする。ガラス長繊維の形態は、引き抜き成型などに使用される連続したガラス長繊維が好ましく、ロービングや、組布や、マットなどがより好ましい。ガラス繊維の組成としては、汎用の無アルカリ性ガラス繊維(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス繊維、高強度・高弾性率ガラス繊維(Sガラス、Tガラス)、耐アルカリ性ガラス繊維(ARガラス)などが挙げられるが、汎用性の高い無アルカリ性ガラス繊維(Eガラス)の使用が好ましい。
枠体11を構成する熱硬化性樹脂としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられるが、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、効果特性に優れている点で、ビニルエステル樹脂がより好ましい。なお、この熱硬化性樹脂には、低収縮材として熱可塑性ポリマーを添加してもよい。この場合、熱可塑性ポリマーの割合は、熱硬化性樹脂に対して3%程度とするのが好ましい。
このようにガラス長繊維と熱硬化性樹脂とにより構成される枠体11は、一般的な引き抜き成型により成型することができる。そして、枠体11の寸法は、厚さ×幅×長さ=(4〜6mm)×(15〜18mm)×(可搬容易な長さ)の矩形環の枠状とするのが好ましい。
そして、このように構成される枠体11の一方の面に、ガラス繊維シート12が取り付けられている。枠体11に対するガラス繊維シート12の取り付けは、例えば、接着剤(粘着材を含む)による接着や、螺子を用いた螺着などにより行うことができるが、施工性や作業性に鑑みて接着剤による接着が好ましく、両面テープを用いた接着により行うのが更に好ましい。なお、以下の説明では、ガラス繊維シート12が取り付けられる一方の面を表面とし、この表面の反対の面を裏面とし、表面と裏面とに連結される外側の面を周側面とする。
ガラス繊維シート12は、ガラス繊維織物に樹脂を含浸させてシート状に形成したものである。
このガラス繊維シート12は、可撓性、柔軟性及び弾性(形状弾性)を有して変形可能に形成されたものであり、優れた透明性及び不燃性を有するものである。このガラス繊維シート12は、全光線透過率が80%以上、且つ、ヘーズが30%以下であることが好ましく、全光線透過率が85%以上、且つ、ヘーズが20%以下であることが更に好ましい。このガラス繊維シート12は、例えば、日東紡績株式会社製のダンスモーク(日東紡績株式会社の登録商標)が好ましい。ガラス繊維シート12は、ガラス繊維織物と、このガラス繊維織物に樹脂を含浸及び硬化させた樹脂被覆層とにより構成されている。
ガラス繊維シート12を構成するガラス繊維織物は、ガラス繊維シート12の基布となる材料である。このガラス繊維織物の織組織としては、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織などが挙げられ、平織、朱子織、畦織が好ましい。ガラス繊維織物中の隣接する経糸の間の隙間及び隣接する緯糸の間の隙間は、共に0.5mm以下が好ましく、0.2mm以下が更に好ましい。
このガラス繊維織物を構成するガラス繊維糸の番手は、5〜70texが好ましく、10〜35texが更に好ましい。このガラス繊維糸に含まれるフィラメント(ガラス繊維)の直径は、1〜20μmが好ましく、3〜12μmが更に好ましい。このフィラメント(ガラス繊維)の組成としては、汎用の無アルカリ性ガラス繊維(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス繊維、高強度・高弾性率ガラス繊維(Sガラス、Tガラス)、耐アルカリ性ガラス繊維(ARガラス)などが挙げられるが、汎用性の高い無アルカリ性ガラス繊維(Eガラス)の使用が好ましい。
そして、これらガラス組成物の屈折率は、含浸に用いる樹脂の屈折率との差が±0.02以下となるように選定する。なお、樹脂側の屈折率を所望のように選定できれば、ガラス組成物として如何なる屈折率のものを選定してもよい。ガラス組成物としては、例えば、屈折率が1.4〜1.7程度のものが好ましく、1.5〜1.6のものが更に好ましい。無アルカリ性ガラス繊維(Eガラス)を用いた場合には、屈折率は1.55〜1.57程度となる。
なお、ガラス繊維織物は、1種類のガラス繊維で織られていてもよく、2種類以上のガラス繊維で織られていてもよい。例えば、経糸と緯糸とはガラス繊維の組成が同じであり、ガラス繊維の番手が異なっていてもよい。
そして、このように構成されるガラス繊維織物には、ガラス繊維シート12の耐久性を向上させるために、ガラス繊維処理剤で表面処理するのが好ましい。このガラス繊維処理剤は、例えば、通常使用されるシランカップリング剤が好ましい。このようにガラス繊維処理剤で表面処理することで、ガラス繊維織物と硬化した樹脂とを良好に接合させることができる。
ガラス繊維シート12を構成する樹脂被覆層は、ガラス繊維織物を被覆する樹脂であり、ガラス繊維織物のガラス繊維間の隙間に入り込んで表裏両面の表層に形成される樹脂層である。
この樹脂被覆層の材質は、その屈折率が、ガラス繊維織物のガラス組成物の屈折率との差が±0.02以下となるように選定する。このように、ガラス繊維織物と樹脂被覆層との屈折率の差を±0.02以下として十分小さくすることで、樹脂被覆層の中でガラス繊維織物が視認できなくなる。これにより、ガラス繊維織物と樹脂被覆層とで形成されたガラス繊維シート12を透明にして、全光線透過率を十分に高くすることができる。
樹脂被覆層を構成する樹脂としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられるが、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、効果特性に優れている点で、ビニルエステル樹脂がより好ましい。そして、この樹脂被覆層として、上記樹脂に、難燃剤、紫外線吸収剤、充填剤、帯電防止剤などの添加物を含めるのが好ましい。難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、トリクロロエチルホスフェート、トリアリルホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステルなどが挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、タルクなどが挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。これらの添加物は粒子形状であってもよく、粒子の場合には粒径が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。粒径が小さいと、全光線透過率が向上し、ヘーズが低下する。
そして、ガラス繊維シート12におけるガラス繊維織物と樹脂被覆層の割合は、ガラス繊維織物が20〜70重量%、樹脂被覆層が80〜30重量%とする。ガラス繊維織物が20重量%未満の場合には、ガラス繊維シート12における樹脂量が多くなり、得られるガラス繊維シート12の不燃性が低下する。一方、ガラス繊維織物が70重量%を超える場合には、得られるガラス繊維シート12の表層における樹脂量が少なくなり、ガラス繊維織物の模様の浮き出しや、樹脂被覆層の含浸不良による白化や、透明性の低下などが生じる場合がある。
ガラス繊維シート12の単位面積当たりのガラス繊維織物の質量は、ガラス繊維シート12の強度、耐久性や樹脂の含浸性などを考慮して定めるものであり、例えば、10〜300g/m程度とするのが好ましい。特に、ガラス繊維織物の強度及び耐久性や、ガラス繊維織物への樹脂の含浸性を向上させるために、ガラス繊維織物の質量を20〜300g/mとすると更に好ましい。ガラス繊維織物の質量を20g/m以上とすることで、ガラス繊維シート12の強度を十分に高めることができる。ガラス繊維織物の質量を300g/m以下とすることで、ガラス繊維シート12の単位面積あたりのガラス繊維織物の割合を少なくして、ガラス繊維織物の隙間を十分に増やし、樹脂の含浸不良を防止することができる。なお、ガラス繊維シート12の単位面積あたりのガラス繊維織物の質量を150g/m以上にする場合には、厚めのガラス繊維織物を1枚用いてもよく、薄めのガラス繊維織物を複数枚用いてもよい。含浸性を向上させる観点からは、薄めのガラス繊維織物を複数枚用いることが好ましい。
ガラス繊維シート12の単位面積当たりの樹脂被覆層の質量は、10〜500g/m程度とするのが好ましい。樹脂被覆層の質量を10g/m以上とすることで、ガラス繊維織物の模様の浮き出しや、樹脂被覆層の含浸不良による白化などの発生を防止することができる。また、樹脂被覆層の質量を500g/m以下とすることで、ガラス繊維シート12における比較的燃えやすい部分である樹脂の割合を低く抑えて、ガラス繊維シート12を難燃性に優れたものとすることができる。
また、ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と樹脂被覆層とのアッベ数の差が30以下となるように、樹脂被覆層を形成する樹脂の材質を選定することが好ましい。アッベ数の差を30以下に抑えることで、ガラス繊維織物と樹脂被覆層の界面で、可視光領域の散乱を少なくして、当該界面における着色を抑えることができる。なお、ガラス組成物のアッベ数は、特に制限されないが、例えば、35〜75の範囲であることが好ましく、50〜70の範囲であることが更に好ましい。
図6は、外枠を示す斜視図であり、図7は、図6に示すVII−VII線断面図であり、図8は、外枠の分解斜視図である。図6〜図8に示すように、外枠20は、湾曲形状に形成されて、防煙垂壁用パネル本体10を保持するものである。この外枠20は、金属材で形成されており、加工性に優れるアルミ材により形成されるのが好ましい。そして、外枠20は、上下一対の横枠部20a,20bと、左右一対の縦枠部20c,20dとにより構成されている。
横枠部20a,20bは、防煙垂壁用パネル本体10を上下方向から挟み込んで保持するものである。この横枠部20a,20bは、左右方向に延びて、レール2と同形の湾曲形状(曲線状)に形成されている。そして、横枠部20a,20bは、対向配置されており、内側に向けて開口した溝部21a,21bを有するコ字状断面に形成されている。
縦枠部20c,20dは、防煙垂壁用パネル本体10を左右方向から挟み込んで保持するものである。この縦枠部20c,20dは、横枠部20a,20bに直交する上下方向に延びる直線状に形成されている。そして、縦枠部20c,20dは、対向配置されており、内側に向けて開口した溝部21c,21dを有するコ字状断面に形成されている。
そして、外枠20は、横枠部20a,20bの端部と縦枠部20c,20dの端部とが連結されることにより矩形の枠状に組み立てられる。
このように構成される防煙垂壁用パネル本体10と外枠20とにより構成される湾曲形状防煙垂壁用パネル6は、図2及び図3に示すように、防煙垂壁用パネル本体10が曲げられた状態で外枠20の溝部21a〜21dにはめ込まれて、湾曲形状に形成されている。
次に、図9を参照して、本実施形態に係る湾曲形状防煙垂壁1の形成方法について説明する。図9は、湾曲形状防煙垂壁用パネルの形成方法を示す図である。
まず、現場施工に先立ち、工場などにおいて、防煙垂壁用パネル本体10を形成する。防煙垂壁用パネル本体10の形成は、枠体11の表面にガラス繊維シート12を取り付けることにより行う。枠体11に対するガラス繊維シート12の取り付けは、上述したように、枠体11とガラス繊維シート12との間に両面テープを貼付して、枠体11にガラス繊維シート12を固定する。
このとき、ガラス繊維シート12に張力がかかるように、ガラス繊維シート12を枠体11に貼付固定する。ガラス繊維シート12は、枠体11の表面にのみ配置して固定してもよく、枠体11の周側面や裏面まで回り込ませた状態に配置して固定してもよい。なお、湾曲形状防煙垂壁1を形成するために防煙垂壁用パネル本体10を湾曲形状に曲げることを考えると、ガラス繊維シート12を枠体11の周側面や裏面まで回り込ませた状態に配置して固定するのが好ましい。
次に、工場などで形成した防煙垂壁用パネル本体10と、外枠20と、レール2と、端部方立3と、中間方立4と、パネルジョイント5とを、それぞれ必要な数だけ梱包し、湾曲形状防煙垂壁1を設置する施工現場に搬送する。このとき、外枠20は、横枠部20a,20b及び縦枠部20c,20dを組み立てた状態で搬送してもよく、横枠部20a,20b及び縦枠部20c,20dを分解した状態で搬送してもよい。
次に、図9(a)に示すように、施工現場において、工場などから搬送された防煙垂壁用パネル本体10を、ガラス繊維シート12側に凸形状に曲げて(撓ませて)湾曲形状に変形させる。すると、枠体11に取り付けられたガラス繊維シート12が引っ張られて、ガラス繊維シート12に生じている皺が伸ばされる。このとき、防煙垂壁用パネル本体10の枠体10は、矩形環状に形成されているため、その特性上、元の形状に戻ろうとして凸形状に湾曲された一対の横枠部11a,11bを離間させようとする力が作用するため、この力によっても、ガラス繊維シート12に張力が作用してガラス繊維シート12に生じている皺が伸ばされる。
次に、図9(b)に示すように、湾曲形状に変形された防煙垂壁用パネル本体10を外枠20にはめ込む。外枠20に対する防煙垂壁用パネル本体10の嵌め込みは、横枠部20a,20bの溝部21a,21bを防煙垂壁用パネル本体10の左右端部にはめるとともに、縦枠部20c,20dの溝部21c,21dを防煙垂壁用パネル本体10の上部端部にはめる。そして、横枠部20a,20bの両端部と縦枠部20c,20dの両端部とをビス止めなどにより結合する。
このようにして、防煙垂壁用パネル本体10が外枠20にはめ込まれると、図10(c)に示すように、防煙垂壁用パネル本体10と外枠20とにより構成される湾曲形状防煙垂壁用パネル6が形成される。
その後、湾曲形状防煙垂壁1の設置を行う。湾曲形状防煙垂壁1の配置では、まず、レール2を天井面にビス止めすると共に、端部方立3を側壁面にビス止めする。
次に、天井に取り付けられたレール2に複数枚の湾曲形状防煙垂壁用パネル6をビス止めする。また、レール2に中間方立4をビス止めし、この中間方立4を介して隣接する湾曲形状防煙垂壁用パネル6を連結する。そして、中間方立4の下端にパネルジョイント5をビス止めし、このパネルジョイント5で隣接する湾曲形状防煙垂壁用パネル6を下面から支持して連結固定する。更に、左右端部の湾曲形状防煙垂壁用パネル6は、端部方立3にもビス止めする。
そして、レール2、端部方立3、中間方立4及びパネルジョイント5により複数枚の湾曲形状防煙垂壁用パネル6が配置固定されると、湾曲形状防煙垂壁1の設置が終了する。
このように、本実施形態によれば、湾曲形状防煙垂壁用パネル6を構成する防煙垂壁用パネル本体10と外枠20とが分離されているため、外枠20に取り付けられていない状態で防煙垂壁用パネル本体10を搬送することができる。そして、防煙垂壁用パネル本体10は、可撓性を有する枠体11とガラス繊維シート12とにより構成されているため、防煙垂壁用パネル本体10を平面形状の状態で施工現場に搬送することができる。これにより、防煙垂壁用パネル本体10の梱包効率を向上させることができるため、搬送コストを低減することができる。また、湾曲形状防煙垂壁用パネル6を組み立てる際に、防煙垂壁用パネル本体10をガラス繊維シート12側に凸形状に曲げて外枠20に取り付けるため、ガラス繊維シート12に張力が作用してガラス繊維シート12の皺が伸びる。しかも、枠体11は、その特性上、元の形状に戻ろうとして凸形状に曲げられた一対の横枠部11a,11bが離間しようとする力が作用するため、この力によっても、ガラス繊維シート12に張力が作用してガラス繊維シート12の皺が伸びる。その結果、ガラス繊維シート12に皺のない湾曲形状防煙垂壁1を形成することができる。そして、施工現場において防煙垂壁用パネル本体10を外枠20に取り付けることができるため、設置場所の形状に応じた微調整を簡易に行うことができる。しかも、防煙垂壁用パネル本体10はガラス繊維シート12により構成されているため、従来のガラス板により構成される湾曲形状防煙垂壁に比べると、施工時に割れたり欠けたりする危険性を大幅に低減することができる。加えて、防煙垂壁用パネル本体10は様々な形状に変形させることができるため、例えば、湾曲形状の防煙垂壁と平面形状の防煙垂壁とを形成したい場合でも、同一の防煙垂壁用パネル本体10を利用することができ、防煙垂壁用パネル本体10の汎用性を格段に向上させることができる。
そして、防煙垂壁用パネル本体10を外枠20の溝部21a〜21dにはめ込むことで、防煙垂壁用パネル本体10を外枠に20に確実に保持させることができると共に、外枠20に対する防煙垂壁用パネル本体10の取り付け作業性を向上させることができる。
また、枠体11をガラス長繊維と熱硬化性樹脂とにより構成することで、枠体11に適度な可撓性及び柔軟性を与えることができるため、外枠20の形状に合わせて防煙垂壁用パネル本体10を適切に屈曲させることができる。
[第2実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、基本的に第1の実施形態と同様であり、湾曲形状防煙垂壁パネルを構成する外枠の形状が第1の実施形態と相違する。このため、以下では、第1の実施形態と相違する点のみ説明し、第1の実施形態と同じ点の説明を省略する。
図10は、第2の実施形態で用いる外枠を示す斜視図であり、図11は、図10に示すXI−XI線断面図である。図10に示すように、第2の実施形態で用いる外枠30は、湾曲形状に形成されて、防煙垂壁用パネル本体10を保持するものである。この外枠30は、金属材で形成されており、加工性に優れるアルミ材により形成されるのが好ましい。そして、外枠30は、外枠30の一方の面から湾曲形状防煙垂壁用パネル6がはめ込めるように、L字状断面に形成されている。なお、図10及び図11では、外枠30の凹面側に開口したL字状断面となっているが、外枠30の凸面側に開口したL字状断面であってもよい。
次に、図12を参照して、湾曲形状防煙垂壁用パネルの形成方法について説明する。図12は、湾曲形状防煙垂壁用パネルの形成方法を示す図である。
まず、第1の実施形態と同様に、現場施工に先立ち、工場などにおいて、防煙垂壁用パネル本体10を形成する。
次に、工場などで形成した防煙垂壁用パネル本体10と、外枠30と、レール2と、端部方立3と、中間方立4と、パネルジョイント5とを、それぞれ必要な数だけ梱包し、湾曲形状防煙垂壁1を設置する施工現場に搬送する。
次に、レール2を天井面にビス止めし、端部方立3を側壁面にビス止めする。
次に、図12(a)に示すように、天井面にビス止めされたレール2に外枠30をビス止めする。なお、図12では、天井面及びレール2の図示を省略している。また、レール2に中間方立4をビス止めし、この中間方立4を介して隣接する外枠30を連結する。そして、中間方立4の下端にパネルジョイント5をビス止めし、このパネルジョイント5で隣接する外枠30を下面から支持して連結固定する。更に、左右端部の外枠30は、端部方立3にもビス止めする。
レール2、端部方立3、中間方立4及びパネルジョイント5により複数枚の外枠30が配置固定されると、図12(b)に示すように、防煙垂壁用パネル本体10をガラス繊維シート12側に凸形状に曲げて(撓ませて)湾曲形状に変形させる。すると、枠体11に取り付けられたガラス繊維シート12が引っ張られて、ガラス繊維シート12に生じている皺が伸ばされる。このとき、防煙垂壁用パネル本体10の枠体10は、矩形環状に形成されているため、その特性上、元の形状に戻ろうとして凸形状に湾曲された一対の横枠部11a,11bを離間させようとする力が作用するため、この力によっても、ガラス繊維シート12に張力が作用してガラス繊維シート12に生じている皺が伸ばされる。
次に、図12(c)に示すように、湾曲形状に変形された防煙垂壁用パネル本体10を配置固定された外枠30にはめ込む。外枠30に対する防煙垂壁用パネル本体10の嵌め込みは、外枠30の一方の面から防煙垂壁用パネル本体10を挿入することにより行う。そして、外枠30と防煙垂壁用パネル本体10とをビス止めする。
そして、全ての外枠30に防煙垂壁用パネル本体10がはめ込まれて固定されると、湾曲形状防煙垂壁1の設置が終了する。
このように、外枠の断面形状を変えても、第1の実施形態と同様に湾曲形状防煙垂壁を形成することができる。
そして、外枠をL字状断面に形成することで、外枠30の一方の面から防煙垂壁用パネル本体10を挿入するだけで、外枠30に防煙垂壁用パネル本体10をはめ込むことができるため、湾曲形状防煙垂壁用パネル6を容易に形成することができる。
[第3実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、基本的に第1の実施形態と同様であり、湾曲形状防煙垂壁パネル用本体に間隔調整手段が取り付けられている点のみ第1の実施形態と相違する。このため、以下では、第1の実施形態と相違する点のみ説明し、第1の実施形態と同じ点の説明を省略する。
図13は、第3の実施形態で用いる湾曲形状防煙垂壁用パネル本体を示す斜視図であり、図14は、図13に示すXIV−XIV線断面図である。図13及び図14に示すように、第3の実施形態で用いる湾曲形状防煙垂壁用パネル本体40は、枠体11と、ガラス繊維シート12と、複数の間隔調整支柱41と、により構成されている。
枠体11には、横枠部11a,11bの対向する位置に、間隔調整支柱41が挿入される穴が形成されている。そして、横枠部11aに設けられた穴と横枠部11bに設けられた穴とには、互いに逆方向に向いた雌ねじが刻設されている。
間隔調整支柱41は、枠体11を上下方向に伸縮させるものである。間隔調整支柱41は、細長い円柱状に形成されており、その上端部及び下端部には、互いに逆方向を向いた雄ねじが刻設されている。そして、各間隔調整支柱41は、その上端部及び下端部が枠体11の横枠部11a,11bに形成された穴にねじ込まれている。
このように構成される防煙垂壁用パネル本体10では、間隔調整支柱41を回転させると、間隔調整支柱41に刻設された雄ねじと横枠部11a,11bに刻設された雌ねじとの噛合いにより、横枠部11aと横枠部11bとの間隔が変化する。そして、間隔調整支柱41を回転させて、横枠部11aと横枠部11bとの間隔を広げることで、枠体11に取り付けられたガラス繊維シート12が引っ張られて、ガラス繊維シート12に生じた皺を簡易に伸ばすことができる。
なお、間隔調整支柱41の回転は、間隔調整支柱41を直接回転させることにより行ってもよく、横枠部11a,11bに形成された各穴にドライバーなどの工具を挿入し、これらの工具により間隔調整支柱41を回転させることにより行ってもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1,2]
実施例1は、下記条件により作成した湾曲形状防煙垂壁用パネル本体を用いて、第1の実施形態に係る方法により湾曲形状防煙垂壁を形成した。
実施例2は、下記条件により作成した湾曲形状防煙垂壁用パネル本体を用いて、第2の実施形態に係る方法により湾曲形状防煙垂壁を形成した。
〈枠体の作成〉
下記条件により、寸法が厚さ×幅×長さ=5mm×17mm×2000mmの長尺の成型品を得て、所定長さに切断すると共にその両端をビス止めして、外径寸法が1500mm×500mmの枠体を作成した。
・ガラス長繊維:無アルカリ性ガラス繊維(Eガラス)のロービング
・熱硬化性樹脂:ビニルエステル樹脂
・ガラスコンテント(Gc):65重量%
・引き抜き成型速度(Lsp):1m/min
・硬化温度:100〜150℃
〈ガラス繊維シートの作成〉
(1)ガラス繊維織物の作成
ガラス繊維織物は、「日東紡績株式会社製:商品名ダンスモーク(日東紡績株式会社の登録商標)」を用いた。このダンスモークは、ガラス繊維、ECE225を経糸、緯糸として織ったものであり、60本の経糸が25mmに含まれ、58本の緯糸が25mmに含まれる。ガラス繊維織物の重量は、105g/mであり、厚さは0.095mmである。ガラス繊維、ECE225は、無アルカリ性ガラス繊維(Eガラス)からなり、フィラメント直径は約7μmである。
(2)樹脂被覆層の作成
樹脂被覆層は、ビニルエステル樹脂を用いた。このビニルエステル樹脂は、「昭和高分子株式会社:商品名SSP50−C06、100重量部」と、「化薬アクゾ株式会社:商品名パーカドックスP16、0.5重量部」と、「日本油脂株式会社:商品名パーキュアHO、0.5重量部」とをスターラーを用いて約20分間攪拌した。そして、得られた混合物を約30分間真空下に放置することにより脱気して、未硬化の樹脂組成物を得た。
(3)ガラス繊維織物と樹脂被覆層とによるガラス繊維シートの作成
上述したガラス繊維織物と樹脂被覆層とによりガラス繊維シートを作成した。具体的には、樹脂組成物を、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、塗布量92g/m、300g/mで塗布した。この塗布した樹脂組成物上にガラス繊維織物を乗せ、更にその上からローラをかけて圧力を付与し、ガラス繊維織物に樹脂組成物を含浸させた。次に、これらの積層体を2枚のアルミ枠で挟み、80℃の温風乾燥機の中に入れて30分間放置し、樹脂組成物を硬化させた。その後、温風乾燥機からアルミ枠で挟んだ積層体を取り出し、アルミ枠を外して2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥して、ガラス繊維シートを得た。
(4)湾曲形状防煙垂壁用パネル本体の作成
枠体とガラス繊維シートとを両面テープを用いて貼り合わせて、湾曲形状防煙垂壁用パネル本体を作成した。
[比較例]
比較例は、アルミ製の湾曲形状の枠体にガラス繊維シートをはめ込んだ湾曲形状防煙垂壁用パネル本体を工場で作成し、この作成した湾曲形状防煙垂壁用パネル本体を施工現場に搬送した。そして、施工現場では、湾曲形状防煙垂壁用パネル本体の組立てを除き、第1の実施形態に係る方法により湾曲形状防煙垂壁を形成した。なお、比較例では、湾曲形状防煙垂壁用パネル本体として、間隔調整支柱を設けたものを使用した。
なお、実施例1、実施例2、比較例の主要条件を表1に示す。
Figure 0005287563
[評価1]
施工現場への搬送について実施例1、実施例2、比較例を評価した。その結果、比較例は、湾曲形状防煙垂壁用パネル本体が湾曲形状であるため、嵩張ってしまい、搬送が大変で輸送コストも高かった。これに対し、実施例1及び実施例2は、湾曲形状防煙垂壁用パネル本体が平面形状であるため、纏めて梱包しても嵩張らず、搬送は楽で輸送コストも安かった。
[評価2]
湾曲形状防煙垂壁を形成する際の作業性と、湾曲形状防煙垂壁の外観について評価した。評価結果を表2に示す。
Figure 0005287563
表2に示すように、引用例では、枠体にガラス繊維シートが取り付けられた状態で防煙垂壁用パネル本体を施工現場に搬送したため、搬送時の振動などによりガラス繊維シートに皺が生じた。このため、湾曲形状防煙垂壁用パネルの配置後に、間隔調整支柱の調整によりガラス繊維シートの皺を除去する作業が必要になり、面倒であった。しかも、枠体が硬質なアルミ製であるため、枠体と外枠との僅かな寸法誤差などにより、湾曲形状防煙垂壁用パネル本体を外枠にはめ込むのに手間取った。これに対し、実施例1及び実施例2では、施工現場において、平面形状の防煙垂壁用パネル本体をガラス繊維シート側に凸形状に曲げて枠体に取り付けることにより、ガラス繊維シートに適度な張力が作用して皺が伸びた。これにより、間隔調整支柱を用いなくても、極めて綺麗な外観を呈していた。その結果、湾曲形状防煙垂壁用パネルの配置後にガラス繊維シートの皺を除去する作業が省略できた。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態において、湾曲形状防煙垂壁は、レール、端部方立、中間方立及びパネルジョイントを用いて湾曲形状防煙垂壁用パネルを配置固定するものとして説明したが、複数枚の湾曲形状防煙垂壁用パネルを下側から支える下部通しフレームなどの他の部材を用いて湾曲形状防煙垂壁用パネルを配置固定するものとしてもよい。
また、第1の実施形態では、外枠が4分割されるものとして説明したが、2分割されるものであってもよく、一体的に構成されるものであってもよい。
1…湾曲形状防煙垂壁、2…レール、3…端部方立、4…中間方立、5…パネルジョイント、6…湾曲形状防煙垂壁用パネル、10…防煙垂壁用パネル本体、11…枠体、11a,11b…横枠部(辺部)、11c,11d…縦枠部、12…ガラス繊維シート、20…外枠、20a,20b…横枠部、21a,21b…横枠部の溝部、20c,20d…縦枠部、21c,21d…縦枠部の溝部、30…外枠、40…湾曲形状防煙垂壁用パネル本体、41…間隔調整支柱。

Claims (6)

  1. 可撓性を有する枠体の一方の面にガラス繊維シートが取り付けられた防煙垂壁用パネル本体と、湾曲形状の外枠と、を備える湾曲形状防煙垂壁用パネルを用いた湾曲形状防煙垂壁の形成方法であって、
    平面形状の前記防煙垂壁用パネル本体を前記ガラス繊維シート側に凸形状に曲げ、当該防煙垂壁用パネル本体を前記外枠に取り付けて前記湾曲形状防煙垂壁用パネルを形成し、
    前記湾曲形状防煙垂壁用パネルを前記湾曲形状防煙垂壁の設置場所に配置して、前記湾曲形状防煙垂壁を形成することを特徴とする湾曲形状防煙垂壁の形成方法。
  2. 可撓性を有する枠体の一方の面にガラス繊維シートが取り付けられた防煙垂壁用パネル本体と、湾曲形状の外枠と、を備える湾曲形状防煙垂壁用パネルを用いた湾曲形状防煙垂壁の形成方法であって、
    前記外枠を前記湾曲形状防煙垂壁の設置場所に配置し、
    平面形状の前記防煙垂壁用パネル本体を前記ガラス繊維シート側に凸形状に曲げ、当該防煙垂壁用パネル本体を前記外枠に取り付けて前記湾曲形状防煙垂壁を形成することを特徴とする湾曲形状防煙垂壁の形成方法。
  3. 前記外枠は、内側に向けて開口する溝部が形成されたコ字状断面に形成されており、
    前記溝部に前記防煙垂壁用パネル本体をはめ込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の湾曲形状防煙垂壁の形成方法。
  4. 前記枠体は、ガラス長繊維と熱硬化性樹脂とによりなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の湾曲形状防煙垂壁の形成方法。
  5. 湾曲形状防煙垂壁に用いられる湾曲形状防煙垂壁用パネルであって、
    可撓性を有する枠体の一方の面にガラス繊維シートが取り付けられた防煙垂壁用パネル本体と、
    前記防煙垂壁用パネル本体と分離可能な湾曲形状の外枠と、
    を備えており、
    平面形状の前記防煙垂壁用パネル本体を前記ガラス繊維シート側に凸形状に曲げ、当該防煙垂壁用パネル本体を前記外枠に取り付けられてなることを特徴とする湾曲形状防煙垂壁用パネル。
  6. 請求項5に記載した湾曲形状防煙垂壁用パネルを設置場所に配置してなることを特徴とする湾曲形状防煙垂壁。

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