JP5286958B2 - 燃料電池搭載車両 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池搭載車両に関する。
燃料電池搭載車両は、その搭載した燃料電池のアノードに燃料ガスを供給し、カソードには酸素含有ガスを供給して発電させ、その電力を駆動力とする。こうした燃料電池の発電は、燃料ガス、例えば水素ガスの水素と、酸素含有ガスとしての空気中の酸素との電気化学反応に伴うことから、カソード側にて水を生成する。この生成水がカソードに残留したままでは、電解質膜の膜面が水で覆われたままとなって発電が低下するフラッディングを招くことから、生成水を除去する手法が種々提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2001−229938号公報
この特許公報では、減速時には燃料電池の発電への負荷が小さいとして、積極的にこの減速時において電極残留水を通気にて排出することが提案されている。
しかしながら、一般に低負荷状況では、車両を取り巻く騒音や振動も低いため、次のような改善が求められるに到った。減速時に水分排出を行う度、通気のためのコンプレッサやモータ等の駆動機器を駆動する必要がある。このため、車両を取り巻く環境は低騒音・低振動でありながら、水分排出のための駆動機器の駆動に伴う駆動音や振動が生じることになり、車両走行に違和感を覚えることがある。
本発明は、上記した課題を踏まえ、燃料電池からの水分排出の実効性を確保した上で、車両走行に伴う違和感を軽減することをその目的とする。
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
[適用:燃料電池搭載車両]
電解質膜を挟んで対向するアノードとカソードに燃料ガスと酸素含有ガスとの供給を受けて発電する燃料電池を搭載した車両であって、
前記アノードに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系と、
前記カソードに前記酸素含有ガスを供給する酸素ガス供給系と、
前記カソードにおいて、電極に通気することで、電極に残留する残留水量を低減する水分排出を図る水分排出系と、
該水分排出系での前記通気の実行状況を車両の加速要求操作時と減速要求操作時とで異なるものとし、前記減速要求操作時には前記加速要求操作時よりも少ない実行頻度で前記通気を実行する水分排出通気手段とを備える
ことを要旨とする。
上記構成の燃料電池搭載車両は、燃料電池のアノードに燃料ガス供給系から燃料ガスを供給し、カソードに酸素ガス供給系から酸素含有ガスを供給して、燃料電池を発電させる。その一方、カソードにおいて、水分排出系での電極への通気を経て、電極に残留する残留水量の低減のための水分排出を図る。そして、この電極からの水分(残留水)の排出に際しては、水分排出通気手段による水分排出系での通気の実行状況を車両の加速要求操作時と減速要求操作時で異なるものとし、前記減速要求操作時には前記加速要求操作時よりも少ない実行頻度で前記通気を実行する。
加速要求操作に基づいて車両が加速する状況では、車両運転者は、加速要求操作、具体的にはアクセルの踏込操作を行い、この加速要求操作により車両の加速状況を期待することから、加速に伴う車両周りの音や振動の増加を違和感なく受け止める。よって、上記構成の燃料電池搭載車両は、加速時において、残留水量の低減のための水分排出を通気を経て実行するので、この通気実行に伴う機器駆動音や振動が増加しても、車両走行に伴う違和感を低減できると共に、水分排出の実効性を確保できる。
減速要求操作に基づいて車両が減速する状況においては、水分排出のための通気を既述したように加速時よりも少ない実行頻度とする。よって、通気実行の頻度が少ない分、車両周りの音や振動の増加に対しての違和感を感じやすい減速時においても、車両走行に伴う違和感を低減できる。
上記した燃料電池は、次のような態様とすることができる。例えば、加速要求操作時であって、車両の車速が予め定めた所定の車速より低い時には、前記通気の実行頻度を少なくして前記通気を実行するようにできる。こうすれば、加速初期の低車速の状況であるために車両周りの音や振動の増加に対しての違和感を感じやすい状況では、通気の実行頻度を少なくするので、加速初期の低車速状況においても車両走行に伴う違和感の低減と、水分排出の実効性確保を達成できる。
また、前記減速要求操作時において前記通気を中断するようにでき、こうすれば、車両周りの音や振動の増加に対しての違和感を感じやすい減速時において、車両走行に伴う違和感をより確実に低減できる。
また、前記カソードの側の前記水分排出系を、前記酸素ガス供給系を含んで構成した上で、前記水分排出通気手段による通気の実行に際しては、前記酸素含有ガスを前記酸素ガス供給系での供給量より増量して前記カソードに供給するようにできる。こうすれば、水分排出系を独立の系として構成する必要がないので、構成の簡略化を図ることができる。しかも、酸素含有ガスは増量されてカソードに供給されるので、燃料電池の発電に求められるガス量(供給量)を確保できることから、燃料電池の発電にも大きな支障を与えない。
また、前記水分排出通気手段での通気実行に際して、前記燃料電池の運転状況を監視し、該監視した運転状況が電極での水分不足での運転状況となると、車両加速状況であっても前記通気の実行頻度を少なくするようにできる。こうすれば、水分不足での運転状態での通気による水分排出を抑制できるので、電解質膜の過乾燥を招かないようにして、発電性能の低下回避が可能となる。
更に、前記水分排出通気手段での通気実行に際して、前記通気による水分排出を図る電極での残留水量を監視し、該監視した残留水量と電極における許容残留水量との変位を低減するよう前記通気の程度を決定し、該決定した通気程度で前記通気を実行するようにできる。こうすれば、電極の残留水量を許容残留水量に近づけることができるので、電解質膜の湿潤状態の維持、延いては発電性能の維持の上から望ましい。
[適用:燃料電池搭載車両の運転方法]
電解質膜を挟んで対向するアノードとカソードに燃料ガスと酸素含有ガスとの供給を受けて発電する燃料電池を搭載した車両の運転方法であって、
前記アノードへの前記燃料ガスの供給と、前記カソードへの前記酸素含有ガスの供給とを行いつつ、前記カソードにおいて、電極に通気することで、電極に残留する残留水量を低減する水分排出を図るに当たり、
前記カソードにおける前記通気の実行状況を車両の加速要求操作時と減速要求操作時とで異なるものとし、前記減速要求操作時には前記加速要求操作時よりも少ない実行頻度で前記通気を実行する
ことを要旨とする。
こうした運転方法であっても、車両走行に伴う違和感を低減できると共に、水分排出の実効性を確保できる。
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例としての燃料電池搭載車両10を概略的に平面視して示す説明図である。
図示するように、この燃料電池搭載車両10は、車体20に、燃料電池100と、水素ガスタンク110を含む水素ガス供給系120と、モータ駆動のコンプレッサ130を含む空気供給系140と、ラジエータ150およびファン152とを含む冷却系160とを備える。燃料電池100は、電解質膜の両側にアノードとカソードの両電極を接合させた図示しない膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly/MEA)を備える発電モジュールを積層して構成され、前輪FWと後輪RWの間において車両床下に位置する。そして、この燃料電池100は、後述の水素ガス供給系120と空気供給系140から供給された水素ガス中の水素と空気中の酸素との電気化学反応を起こして発電し、その発電電力にて前後輪の図示しない駆動用モータ等の負荷を駆動する。燃料電池100の発電状況は電流センサ102にて計測され、その計測結果は電流センサ102から後述の制御装置200に出力される。
水素ガス供給系120は、水素ガスタンク110から燃料電池100に到る水素供給経路121と、未消費の水素ガス(アノードオフガス)を水素供給経路121に循環させる循環経路122とを備える。そして、この水素ガス供給系120は、水素供給経路121の流量調整バルブ123にて調整した流量と、循環経路122の循環ポンプ124にて調整した循環流量との合算した流量の水素ガスを、燃料電池100のアノードに供給する。この水素ガス供給量は、アクセル170の操作に基づいて、後述の制御装置200にて定められ、燃料電池100に求められる負荷に応じた供給量となる。なお、水素ガス供給系120は、循環経路122から分岐した排出管路125の開閉バルブ126の開閉調整を経て、適宜、アノードオフガスを大気放出する。
空気供給系140は、コンプレッサ130を経て燃料電池100に到る酸素供給経路141と、未消費の空気(カソードオフガス)を大気放出する放出経路142とを備える。そして、この空気供給系140は、酸素供給経路141の開口端から取り込んだ空気を、コンプレッサ130にて流量調整した上で燃料電池100のカソードに供給しつつ、放出経路142の排出流量調整バルブ143で調整された流量でカソードオフガスを放出経路142を経て大気放出する。このように空気供給系140にて空気供給とカソードオフガス排出とを行う場合、空気供給系140は、排出流量調整バルブ143を所定開度にした上で、コンプレッサ130にて空気を供給する。この際の空気供給量にあっても、水素ガスと同様に、アクセル170の操作に基づいて制御装置200にて定められ、燃料電池100に求められる負荷に応じた供給量となる。空気供給系140は、この負荷に応じた供給量を増量した供給量での空気供給と、排出流量調整バルブ143の所定開度以上の開度調整とを行うことで、カソード側の電極に残留する残留水量を放出経路142から排出して電極の残留水量の低減を図る。なお、空気の増量供給による残留水量低減については、その実行タイミング並びにその様子について後述する。
冷却系160は、ラジエータ150から燃料電池100への冷却媒体の循環を図る循環経路161と、バイパス経路162と、経路合流点の三方流量調整弁163と、循環ポンプ164と、温度センサ165とを備える。そして、この冷却系160は、ラジエータ150にて熱交換した冷却媒体を循環経路161を経て燃料電池100の図示しないセル内循環経路に導き、燃料電池100を所定温度に冷却する。この場合、循環ポンプ164の駆動量、即ち冷却媒体の循環供給量や、三方流量調整弁163による調整流量は、温度センサ165の検出温度たる燃料電池温度や電流センサ102の検出した発電状況に基づいて、制御装置200にて定められる。
制御装置200は、論理演算を実行するCPUやROM、RAM等を備えたいわゆるマイクロコンピュータで構成され、アクセル170等のセンサ入力を受けて燃料電池搭載車両10の種々の制御を司る。
次に、上記した構成を有する燃料電池搭載車両10の制御装置200が電極残留水排出に関して行う処理について説明する。図2は電極残留水算出の様子を示すフローチャートである。
図示する残留水算出処理は、所定時間ごとに繰り返し実行され、まず、前回のこの残留水算出処理で算出・記憶した緒言、具体的には前回算出の燃料電池温度、発電量および算出残留水量を読み込む(ステップS100)。次いで、冷却系160の温度センサ165からの現状の燃料電池温度スキャン(ステップS110)と、電流センサ102からの現状の発電量スキャン(ステップS120)とを順次実行する。そして、これらスキャン結果と読込済みの燃料電池温度および発電量から、燃料電池温度推移および発電量推移を求め、この推移から残留水変化量を演算し(ステップS130)、この演算した残留水変化量と読込済みの前回の算出残留水量とから現状の残留水量ZWを演算し、その演算結果を更新記憶する(ステップS140)。
その後、次回処理時での算出に備えスキャン結果である燃料電池温度と発電量とを更新記憶し(ステップS150)、燃料電池のインピーダンス(FCインピーダンス)についても電流センサ102のセンサ出力に基づいて演算してこれを記憶する(ステップS160)。以上説明したように、この残留水算出処理により、残留水量ZWやFCインピーダンスは所定時間ごとに更新して得られることになり、後述の残留水排出処理に用いられる。
図3は車両加減速に応じた残留水排出の判断に用いるアクセルフラグセット処理を示すフローチャート、図4は加速フラグAFのセット・リセットの様子を説明する説明図である。
図示するアクセルフラグセット処理にあっても所定時間ごとに実行され、まず、アクセル170の操作量ΔAを読み込み(ステップS200)、その操作量ΔAが加速操作に相当するか否かの判定(ステップS210)と、アクセル操作量ΔAが減速操作に相当するか否かの判定(ステップS220)とを順次実行する。これらの判定に際しては、アクセル170の踏込増操作に基づくアクセル操作量ΔAであるか、アクセル170の踏込戻し操作に基づくアクセル操作量ΔAであるかが参酌される。つまり、図4に示すように、アクセル操作量ΔAが3%を超える踏込増操作に相当すれば、当該操作は加速アクセル操作状況とし、アクセル操作量ΔAが1%以上の踏込戻し操作に相当すれば、当該操作は減速アクセル操作状況とし、この加減速判定にヒステリシスを持たしている。
よって、ステップS210にてアクセル操作量ΔAが3%を超える踏込増操作であれば、当該アクセル操作は加速状況のものであるとして加速フラグAFに値1をセットする(ステップS230)。ステップS210での否定判定に続くステップ220にて、アクセル操作量ΔAが1%以上の踏込戻し操作であれば、当該アクセル操作は減速状況のものであるとして加速フラグAFに値0をセットする(ステップS240)。その一方、ステップS220での否定判定時には、アクセル操作量ΔAは加速状況とできるほど踏込増操作でもなく減速状況とできるほど踏込戻し操作でもないとして、加速フラグAFについてはその値を維持する(ステップS250)。
図5は所定時間ごとに繰り返される残留水排出処理を示すフローチャート、図6は残留水排出処理の際に用いる残留水量閾値と車速の関係を示す説明図である。なお、図5の残留水排出処理は、その処理過程において最大10secの残留水排出を実行することと、この排出を継続して繰り返すことを想定しているので、これらを考慮して処理の繰り返し時間が設定されている。
図5の残留水排出処理では、まず、図2の残留水算出処理で更新記憶した残留水量ZWを読み込み(ステップS300)、その残留水量ZWが初期閾値以下か否かを判定する(ステップS310)。この初期閾値は、カソードでの電極の残留水量の最低値を規定する値であり、予めセットされている。本実施例では、燃料電池100のMEA構成を考慮して、初期閾値を35g/cm2とし、残留水量ZWが初期閾値以下であれば(ステップS310肯定判定)、水分排出は不要として処理を終了する。一方、ステップS310で否定判定して残留水量ZWが初期閾値を上回れば、カソードからの水分排出が必要な状況があり得るとして、FCインピーダンスを読み込み(ステップS320)、読み込んだFCインピーダンスが、燃料電池100の運転が水分不足の状況での運転に相当する場合の高いインピーダンス、例えば、160mΩ以上であるか否かを判定する(ステップS330)。
このステップS330で高インピーダンスであると肯定判定すると、カソードでは水分不足の状況にあると予想されることから、水分排出は不要として後述のステップS410に移行して、後述するように空気の増量供給とバルブ開度増大による排気増大を中断する。これにより、高インピーダンスであれば、水分排出を行わないようにすることで、さらなる水分不足の状況を回避でき、燃料電池100の出力低下についてもこれを回避できる。
その一方、ステップS330で高インピーダンスではないと否定判定すると、インピーダンスの状況からは水分排出の必要性は低いものの、他の要請、例えば加速状況での生成水生成過多によるカソードからの水分排出が必要な状況があり得るとして、図示しない車速センサからの車速の読み込みと車速に対応した閾値〈2〉を読み込む(ステップS340)。この閾値〈2〉は、水分排出の実行頻度を定めるものであり、残留水量ZWが閾値〈2〉以下であれば、水分排出は不要となり、閾値を上回ると、水分過多につき水分排出が必要であることを意味する。そして、図6に示すように閾値〈2〉は車速に応じて定まり、低車速では大きな値となり、40km/h以上では小さな値とされている。
次いで、ステップS300で読み込んだ残留水量ZWがステップS340で読み込んだ車速対応の閾値〈2〉以上であるかを判定し(ステップS350)、ここで残留水量ZWが閾値〈2〉を下回ると否定判定すれば、残留水量ZWは少ないとして水分排出は不要であるので一旦本ルーチンを終了する。一方、ステップS350で残留水量ZWが閾値〈2〉以上であると肯定判定すれば、残留水量ZWの排出が必要とも言えることから、更に水分排出の必要性判断を図るべく、残留水量ZWが車速に対して一律の閾値〈1〉以上であるかを判定する(ステップS360)。このステップS360で残留水量ZWが閾値〈1〉以上であるかと肯定判定すれば、カソードの残留水量は過多であるとして速やかに水分排出を図るべく、ステップS370以降に進む。この場合、閾値〈1〉は、車速に拘わらず一律であり、その値は閾値〈2〉より大きな値とされているので、ステップS360〜370で共に肯定判定された場合は、車速の上からも水分排出が必要であるばかりか、カソードに残留が許容される最大の残留水量(閾値〈1〉)を超えていることからも、水分排出が必要なことになる。
ステップS370では、カソードの残留水をカソードに供給する空気と共に排出するよう、制御装置200は、空気供給系140のコンプレッサ130を空気の増量供給状況で駆動制御すると共に、排出流量調整バルブ143をそれまでのオフガス量確保のためのバルブ開度が開くよう駆動制御する。これにより、カソードでは、発電に必要とされていた以上の空気の増量供給と、バルブ開度増加によるオフガス量増大とが、制御装置200が定めた時間tに亘って起きるので、これによりカソードからの残留水が空気のオフガスと共に放出経路142を経て排出される。
この場合、制御装置200は、今回の水分排出がカソードでの最大残留水量(閾値〈1〉)を超える残留水量ZWによるものであることから、空気の増量供給とオフガス量増大を図る時間tを最長の10secとする。よって、ステップS370により、この時間tを変数とする関数式f(t)で算出される水分量(排出残留水量)がカソードから排出されることになる。よって、ステップS340に続くステップ380では、排出残留水量f(t)をステップS300で読み込んだ残留水量ZWから減算した残留水量を、水分排出後の残留水量ZWとして演算する。
次に、水分排出後の残留水量ZWが初期閾値以下か否かを再度判定し(ステップS390)、肯定判定すれば、ステップS370での水分排出により水分は十分排出されたとして一旦本ルーチンを終了する。水分排出後の残留水量ZWが初期閾値を超えていると否定判定すれば、ステップS370での水分排出が不足しているとして、ステップS370に戻って空気の増量供給とオフガス量増大とによる再度の水分排出、水分排出後の残留水量ZW算出、初期閾値との対比を繰り返す。これにより、ステップS360で残留水量ZWが最大残留水量(閾値〈1〉)を超えると、残留水量ZWが初期閾値に低減するまで水分排出が継続される。なお、水分排出に際して、空気の増量供給とオフガス量増大を図る時間tを最長の10secと設定することに加え、或いはこのような時間設定とは別に、空気供給の増量程度とオフガス量増大程度、即ちコンプレッサ130の駆動程度と排出流量調整バルブ143の開度増大程度を、水分排出が進んで残留水量ZWが初期閾値に低減するように設定することもできる。
その一方、ステップS360で否定判定した場合には、車速対応の閾値〈2〉よりも残留水量ZWは多いことから、車両加減速に応じて水分排出の必要性を判断する。つまり、ステップS360の否定判定に続くステップ400では、加速フラグAFの状況を判定し、このステップS400で加速フラグAF=1と肯定判定すれば、燃料電池搭載車両10は既述したように加速状況にあることからカソードでの生成水生成は活発に進行していることから実際に水分排出を行うべく、ステップS370以降の処理に進む。
この場合のステップS370の処理は、加速フラグAF=1に基づく加速状況下での水分排出であることから、制御装置200は、空気供給系140のコンプレッサ130の空気増量駆動制御と排出流量調整バルブ143の開度増大駆動制御とを行う時間tを、残留水量ZWと車速対応の閾値〈2〉との偏差に応じて定める。具体的には、残留水量ZWが閾値〈2〉より隔たるほど時間tを、最長の10secよりは短い範囲において、長く設定する。これにより、カソードでは、発電に必要とされていた以上の空気の増量供給と、バルブ開度増加によるオフガス量増大とが、制御装置200が定めた上記のように残留水量偏差に応じて定めた時間tに亘って起きるので、これによりカソードからの残留水が空気のオフガスと共に放出経路142を経て排出される。
この場合のステップS370に続いては、既述したようにステップ380での排出残留水量f(t)の減算を経た残留水量ZWの演算、ステップS390での初期閾値との再判定を行い、残留水量ZWが初期閾値を下回るまで水分排出を繰り返す。なお、ステップS400の肯定判定に続く場合のステップS390では、残留水量ZWを車速対応の閾値〈2〉と対比するようにすることもできる。
一方、ステップS400にて否定判定した場合には、車両は減速状況にあるので、制御装置200は、それまで空気供給系140のコンプレッサ130で行っていた空気増量制御と、排出流量調整バルブ143の開度復帰とを実行して、水分排出を中断する(ステップS410)。つまり、空気供給系140では、発電に必要とされる供給量での空気供給がなされ、復帰した排出流量調整バルブ143の開度に応じた量でオフガスが排出されることになる。
以上説明したように、本実施例の燃料電池搭載車両10は、カソードにおいて、空気供給系140にての空気の増量供給を経たカソードでの残留水量の低減のための水分排出を、加速状況では実行し減速状況では停止するようにした(ステップS400〜410、ステップS370〜390)。その上で、車両加速時には、残留水の排出要否を定めるための閾値〈2〉を低車速側では大きくし、高車速側では小さくした。よって、車両加速の状況下で水分排出を行うに当たっても、低車速側では水分排出のための空気の増量供給の実行頻度を少なくした。更には、車両減速時には、水分排出を中断することにより、加速時の際の水分排出よりも少ない実行頻度とした。
アクセル170を踏込操作して車両加速を望む車両運転者は、加速に伴う車両周りの音や振動の増加を違和感なく受け止める。このため、上記したように車両加速時においては、カソードでの残留水量低減のための空気の増量供給に伴うコンプレッサ130の駆動音や振動が増加しても、本実施例の燃料電池搭載車両10によれば、車両走行に伴う違和感を低減できると共に、水分排出の実効性を確保できる。しかも、上記の実施例の燃料電池搭載車両10は、加速初期の低車速の状況であるために車両周りの音や振動の増加に対しての違和感を感じやすい状況では、水分排出のための空気増量供給の要否を定める閾値〈2〉を大きくして空気の増量供給の実行頻度を少なくするので(ステップS350)、加速初期の低車速状況においても車両走行に伴う違和感の低減と、水分排出の実効性確保を達成できる。
しかも、車両減速時においては、水分排出のための空気の増量供給を中断して当該増量供給の実行頻度を加速時よりも少なくした。よって、空気の増量供給の実行頻度が少ない分、車両周りの音や振動の増加に対しての違和感を感じやすい減速時においても、車両走行に伴う違和感をより確実に低減できる。
また、カソードからの水分排出のための空気通気を、空気の増量供給で行うようにしたので、空気供給系140を水分排出のために兼用できる。よって、本実施例の燃料電池搭載車両10によれば、構成の簡略化を図ることができる。しかも、空気は発電に必要な供給量より増量されてカソードに供給されるので、燃料電池100の発電に求められる空気を確保できることから、燃料電池100の発電にも大きな支障を与えない。
また、本実施例では、燃料電池100の運転状況を電流センサ102のセンサ出力を経て監視し、その監視した運転状況が電極での水分不足での運転状況となる高インピーダンスとなると(ステップS330)、車両加速状況であっても、空気供給系140での空気の増量供給を中断する。よって、本実施例の燃料電池搭載車両10によれば、高インピーダンスで水分不足での運転状態での空気の増量供給を行わないので、MEAにおける電解質膜の過乾燥を招かないようにでき、発電性能の不用意な低下を招かない。
更に、本実施例では、空気供給系140での空気の増量供給に際して、カソードでの残留水量ZWを監視し、その監視した残留水量ZWとカソードにおける許容残留水量(閾値〈1〉或いは閾値〈2〉)との変位を低減するよう空気の増量供給の程度(例えば、増量供給の実行時間t)を決定する(ステップS370)。そして、この決定した空気の増量供給の程度での空気の増量供給を実行して水分排出を図る(ステップS380〜390)。よって、カソードでの残留水量ZWを許容残留水量(初期閾値或いは閾値〈2〉)に近づけることができるので、電解質膜の湿潤状態の維持、延いては発電性能の維持の上から望ましい。
以上、本発明の実施の形態を実施例にて説明したが、本発明は上記した実施例や変形例の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、上記の実施例では、カソードについて車両加速時等に空気の増量供給を図って水分排出を行うようにしたが、アノードの側においても水分排出を行うようにすることもできる。このようにアノードでの水分排出は、循環ポンプ124を停止した上で開閉バルブ126を開弁制御し、流量調整バルブ123での調整流量を増大させればよい。
本発明の実施例としての燃料電池搭載車両10を概略的に平面視して示す説明図である。 電極残留水算出の様子を示すフローチャートである。 車両加減速に応じた残留水排出の判断に用いるアクセルフラグセット処理を示すフローチャートである。 加速フラグAFのセット・リセットの様子を説明する説明図である。 所定時間ごとに繰り返される残留水排出処理を示すフローチャートである。 残留水排出処理の際に用いる残留水量閾値と車速の関係を示す説明図である。
符号の説明
10…燃料電池搭載車両
20…車体
100…燃料電池
102…電流センサ
110…水素ガスタンク
120…水素ガス供給系
121…水素供給経路
122…循環経路
123…流量調整バルブ
124…循環ポンプ
125…排出管路
126…開閉バルブ
130…コンプレッサ
140…空気供給系
141…酸素供給経路
142…放出経路
143…排出流量調整バルブ
150…ラジエータ
152…ファン
160…冷却系
161…循環経路
162…バイパス経路
163…三方流量調整弁
164…循環ポンプ
165…温度センサ
170…アクセル
200…制御装置
FW…前輪
RW…後輪

Claims (7)

  1. 電解質膜を挟んで対向するアノードとカソードに燃料ガスと酸素含有ガスとの供給を受けて発電する燃料電池を搭載した車両であって、
    前記アノードに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給系と、
    前記カソードに前記酸素含有ガスを供給する酸素ガス供給系と、
    前記カソードにおいて、電極に通気することで、電極に残留する残留水量を低減する水分排出を図る水分排出系と、
    該水分排出系での前記通気の実行状況を車両の加速要求操作時と減速要求操作時とで異なるものとし、前記減速要求操作時には前記加速要求操作時よりも少ない実行頻度で前記通気を実行する水分排出通気手段とを備える
    燃料電池搭載車両。
  2. 前記加速要求操作時であって、車両の車速が予め定めた所定の車速より低い時には、前記通気の実行頻度を少なくして前記通気を実行する請求項1に記載の燃料電池搭載車両。
  3. 前記水分排出通気手段は、前記減速要求操作時において前記通気を中断する請求項1または請求項2に記載の燃料電池搭載車両。
  4. 前記カソードの側の前記水分排出系は、前記酸素ガス供給系を含んで構成され、前記水分排出通気手段は、前記酸素含有ガスを前記酸素ガス供給系での供給量より増量して前記カソードに供給することで前記通気を行う請求項1ないし請求項3いずれかに記載の燃料電池搭載車両。
  5. 請求項1ないし請求項4いずれかに記載の燃料電池であって、
    前記水分排出通気手段は、前記燃料電池の運転状況を監視し、該監視した運転状況が電極での水分不足での運転状況となると、車両加速状況であっても前記通気の実行頻度を少なくする
    燃料電池搭載車両。
  6. 請求項1ないし請求項5いずれかに記載の燃料電池であって、
    前記水分排出通気手段は、前記通気による水分排出を図る電極での残留水量を監視し、該監視した残留水量と電極における許容残留水量との変位を低減するよう前記通気の程度を決定し、該決定した通気程度で前記通気を実行する
    燃料電池搭載車両。
  7. 電解質膜を挟んで対向するアノードとカソードに燃料ガスと酸素含有ガスとの供給を受けて発電する燃料電池を搭載した車両の運転方法であって、
    前記アノードへの前記燃料ガスの供給と、前記カソードへの前記酸素含有ガスの供給とを行いつつ、前記カソードにおいて、電極に通気することで、電極に残留する残留水量を低減する水分排出を図るに当たり、
    前記カソードにおける前記通気の実行状況を車両の加速要求操作時と減速要求操作時とで異なるものとし、前記減速要求操作時には前記加速要求操作時よりも少ない実行頻度で前記通気を実行する
    燃料電池搭載車両の運転方法。
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