JP5283871B2 - メチル−t−ブチルエーテルの分解によるイソブテンの製造方法 - Google Patents

メチル−t−ブチルエーテルの分解によるイソブテンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)の分解によるイソブテンの製造方法に関する。
イソブテンは、多数の製品の製造のため、例えばブチルゴム、ポリイソブチレン、イソブテン−オリゴマー、分枝鎖状のC5−アルデヒド、C5−カルボン酸、C5−アルコール及びC5−オレフィンの製造のための出発物質である。さらに、特にt−ブチル芳香族化合物の合成のための、アルキル化剤として、及び過酸化物の製造のための中間生成物として使用される。さらにまた、イソブテンは、メタクリル酸及びそのエステル類の製造のための前駆物質として使用されることができる。
工業用の流れの中には、イソブテンはしばしば、飽和及び不飽和のC4−炭化水素と共に存在する。これらの混合物から、イソブテンは、イソブテンと1−ブテンとの間の少ない沸点差もしくは極めて小さい分離係数のために、蒸留により経済的に分離されることができない。故に、イソブテンは、工業用炭化水素混合物から、通常、イソブテンが、残されているその他の炭化水素混合物から容易に分離されることができる誘導体へ変換され、かつ単離された誘導体が分解されて元のイソブテン及び誘導体化剤に戻されることによって取得される。
通常、イソブテンは、C4−カット、例えばスチームクラッカーのC4−留分から、次のように分離される。抽出(抽出蒸留)又は線状ブテン類への選択的水素化による、大部分のポリ不飽和炭化水素、主にブタジエンの除去後に、残っている混合物(ラフィネートI又は水素化されたクラック−C4)は、アルコール又は水と反応される。メタノールの使用の場合に、イソブテンから、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)が、かつ水の使用の場合に、t−ブタノール(TBA)が生じる。それらの分離後に、双方の生成物は、それらの形成とは逆にイソブテンへ分解されることができる。
MTBEは、TBAよりも安価である、なぜなら、イソブテン含有炭化水素とメタノールとの反応は、水との反応よりも容易であり、かつMTBEはガソリン燃料の成分として多量に生産されるからである。故に、MTBEからのイソブテンの取得は、MTBEの分解について、TBAの分解についてのように類似して良好な方法が入手可能である場合には、TBAからの取得よりも潜在的により経済的である。
MTBEの分解は、液相、気液相又は気相中で、酸性触媒の存在で実施されることができる。どの相中で分解が実施されるかと全く同じように、異なる規模の場合でも、副生物は生じる。例えば、分解の際に生じるイソブテンから、酸性触媒作用による二量化又はオリゴマー化により、望ましくないC8−及びC12−成分が形成されうる。望ましくないC8−成分は、主に、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン及び2,4,4−トリメチル−2−ペンテンである。さらにまた、分解の際に生じるメタノールの一部が反応されてジメチルエーテルに変換されうる。
経済的な理由から(低価格;高い入手可能性)、MTBEの分解によるイソブテンの製造のためには、高純度MTBE、例えばOxeno Olefinchemie GmbHのMTBE/Sではなくて、通常の工業用品質(燃料グレード)のMTBEが使用される。工業用MTBEは、副成分として、たいていC8−オレフィン、例えば前記の、線状ブテン類及びメタノールからのMTBEの合成の際に生じた2−メトキシブタン、TBA、メタノール及び場合によりC4−及びC5−炭化水素を含有する。
MTBEの分解によりイソブテンを製造する多様な方法が知られている。
欧州特許(EP)第0 302 336号明細書においては、イソブテンは、撹拌釜、蒸留塔及び抽出塔からなる組合せである塔中でのMTBEの分解により取得される。酸性触媒は、塔底循環路中に配置されている。MTBEは、塔底循環路中へ供給される。塔底循環の一部は除去される。粗製イソブテンは、塔中で水で抽出される。メタノールを含有する水性抽出物は、塔底の上方で除去される。塔頂生成物として、イソブテンが含まれる。塔底抜出しは、部分量の排出後に返送される。
欧州特許(EP)第0 068 785号明細書においては、MTBEの分解が連続的に運転される撹拌釜中で行われる方法の特許の保護が請求されている。その際に、酸性触媒は出発物質中に懸濁されている。留去する反応混合物から、イソブテンは、塔を経て塔頂生成物として分離される。塔底生成物は一部が撹拌釜中へ返送される。その他の部分は、二塔系において、撹拌釜中へ返送されるMTBE含有流と、側留として取り出されるメタノールとに分離される。使用されるMTBE中の副成分と形成された副生物とがどのようにして分離されるのかは説明されていない。
独国特許(DE)第32 10 435号明細書においては、MTBEは、反応性蒸留塔中で分解される。塔頂生成物として、少量のメタノール及び痕跡量のジイソブテンを有するイソブテン混合物が得られる。反応性蒸留塔の塔底生成物は、蒸留塔中で、反応性蒸留塔中へ返送されるMTBE含有流と、メタノールからなる塔底生成物とに分離される。副生物がどのようにして分離されるのかは示されていない。
欧州特許(EP)第0 633 048号明細書、独国特許(DE)第100 20 943号明細書及び独国特許(DE)第101 11 549号明細書においては、反応性蒸留塔中でのMTBEの分解によるイソブテンの製造の特許の保護が請求されている。分解混合物からの副成分の分離は開示されていない。
独国特許(DE)第102 27 350号明細書及び独国特許(DE)第102 27 351号明細書には、気相中でのMTBEの分解によるイソブテンの製造方法が記載されている。双方の方法において、分解生成物は、凝縮後に、水で抽出される。抽出物として、水−メタノール混合物が得られ、この混合物は、蒸留によりメタノールと水とに分離される。ラフィネートは、イソブテン、未反応MTBE及び副成分からなる。この混合物は、蒸留により、少量のジメチルエーテルを有するイソブテンを含有する塔頂生成物と、MTBE及び副成分からなる塔底生成物とに分離される。生じるMTBE混合物の使用もしくは後処理に関して、報告されていない。
米国特許(US)第6,049,020号明細書には、とりわけ、MTBEの分解によるイソブテンの製造が記載されている。反応生成物から、水での抽出によりメタノールが除去される。残っているラフィネートは、蒸留により、イソブテンを含有する塔頂生成物と、未反応MTBE及び副成分からなる塔底生成物とに分離される。MTBE混合物の後処理は記載されていない。米国特許(US)第6,072,095号明細書及び米国特許(US)第6,143,936号明細書においては、分解生成物の後処理が類似して行われる。副成分を有する生じたMTBE混合物は後処理されず、この混合物はMTBEを製造するための設備へ導通されることができる。
2−メトキシブタンを含有する工業用MTBEの分解の際に、2−メトキシブタンの分解により、線状ブテン類が生じる。前記の方法のいずれも、イソブテンからの線状ブテン類の分離もしくはイソブテン留分中の線状ブテン類含量の制限のための解決手段を報告していない。
R. Trotta及びI. Miraccaは、Catalysis Today 34 (1997), p.447〜455(事例紹介:MTBEの合成及び分解)において、MTBEの分解により製造されているイソブテン中の線状ブテン類含量、原料MTBE中の2−メトキシブタン含量及びMTBE転化率の依存性を示している。この関係は、目盛りのない図表中に示されている。原料MTBE中の2−メトキシブタン含量が高ければ高いほど、かつMTBE転化率が高ければ高いほど、分解生成物中の線状n−ブテン類の含量もますます高くなる。1000質量ppmを上回る2−メトキシブタン(MSBE)含量を有する原料MTBEからは、完全なMTBE転化の場合に、1000質量ppmを下回る線状ブテン類含量を有するイソブテンは製造されることができない。この場合に、MTBE転化率は低下されなければならない。このことは、イソブテンの分離後に、主にメタノール及びMTBEからなり、かつ原料MTBEよりも高い濃度の2−メトキシブタンを含有するより大量の混合物が生じる結果となる。この混合物は、そのより高い2−メトキシブタン含量のために、イソブテン仕様を遵守するためには、分解反応器中へ供給されてはならない。分解のために必要とされるのとちょうど同じ量のMTBEを製造する前接続されたMTBE設備中へのこの流れの返送でさえ不可能である、なぜなら2−メトキシブタンは設備系中で豊富化されうるからである。故に、MTBE損失を伴う排出流は不可避である。
欧州特許(EP)第0 302 336号明細書 欧州特許(EP)第0 068 785号明細書 独国特許(DE)第32 10 435号明細書 欧州特許(EP)第0 633 048号明細書 独国特許(DE)第100 20 943号明細書 独国特許(DE)第101 11 549号明細書 独国特許(DE)第102 27 350号明細書 独国特許(DE)第102 27 351号明細書 米国特許(US)第6,049,020号明細書 米国特許(US)第6,072,095号明細書 米国特許(US)第6,143,936号明細書 米国特許(US)第5,171,920号明細書 欧州特許(EP)第0 589 557号明細書 欧州特許(EP)第0 428 265号明細書 欧州特許(EP)第0 396 650号明細書 米国特許(US)第5,244,929号明細書 独国特許(DE)第102 38 370号明細書 欧州特許(EP)第1 254 887号明細書 独国特許(DE)第101 02 062号明細書 R. Trotta及びI. Miracca, Catalysis Today 34 (1997), p.447〜455 独国実用新案DE 298 07 007.3 U1号 Vauck/Mueller, "Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik", p. 626, VEB Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie. J. Gmehling, J. Li, 及びM. Schiller, Ind. Eng. Chem. Res. 32, (1993), p. 178-193
故に、本発明の課題は、2−メトキシブタンを含有するMTBEの分解が、得られるイソブテンがC4−オレフィン留分を基準として線状ブテン類1000質量ppm未満を含有し、かつ副成分のための排出流が小さく保持されることができるように実施されることができる、MTBEを分解する方法を提供することであった。
意外なことに、低沸成分、特に2−メトキシブタンを蒸留により分離する工程、引き続いてMTBE分解の工程を有するMTBE分解法を用いて、分解生成物中の線状ブテン類(これらはMSBEの分解により得られる)の含量が、イソブテンを基準として1000質量ppmより小さく低下されることできるように実施されることができることが目下見出された。
故に、特に、この調査結果は意外である、それというのも、R. Trotta及びI MiraccaがCatalysis Today 34 (1997), p.453に、2−メトキシブタン及びMTBEが同じ沸点を有し、故に互いに分離されることができないことを記載しているからである。
故に、本発明の対象は、MTBEを含有する流れIを、MTBEを含有する塔頂流IIと、MTBEよりも高沸点の化合物を含有する塔底流IIIとに、蒸留により分離する工程、及び塔頂流II中に含まれているMTBEを触媒上で分解して分解生成物IVを得る工程を少なくとも有するメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を分解する方法であって、前記方法は、流れIがMTBEを基準として1000質量ppmよりも大きい2−メトキシブタン(MSBE)の割合を有し、かつ工程a)における蒸留による分離及び/又は工程b)における分解を、得られる分解生成物IVが、C4−オレフィン留分を基準として線状ブテン類1000質量ppm未満の濃度を有するように実施することにより特徴付けられている。
本発明による方法は、次の利点を有する:本方法は、異なる濃度の副生物、例えばジイソブテン又は2−メトキシブタンを含有しうる多様なMTBE品質に関して、極めてフレキシブルである。蒸留条件及び/又は分解条件を適合させることにより、C4−オレフィン留分を基準として線状ブテン類1000質量ppm未満を含有するイソブテンを製造することは、その都度可能である。分解生成物からのイソブテンの分離後に、メタノール、MTBE及び副生物を含有する残留している混合物は、完全にMTBE設備中へ返送されることができる。これは、このMTBE設備が、分解に必要とされるのと同じ量のみのMTBEが製造される場合ですら当てはまる。外部から納入される(angeliefertes)MTBEが使用される独立型設備(stand alone plants)の場合に、イソブテン及びメタノールの分離後に残留している分解生成物の残余を蒸留塔中へ返送することは可能である。
次に、本発明は例示的に記載されるが、本発明の保護範囲は特許請求の範囲及び明細書から明らかとなるものであり、例示的な記載に限定されるものではない。特許請求の範囲自体も、本発明の開示内容の一部である。次に、範囲、一般式又は化合物クラスが記載されている場合には、本開示は、明示的に挙げられている相応する範囲又は化合物の群だけでなく、個々の値(範囲)又は化合物の省略により得られうるが、より良好な明瞭さの理由から明示的に記載されていない全ての部分範囲及び化合物の部分群も包含するものである。
少なくとも、
a)MTBEを含有する流れIを、MTBEを含有する塔頂流IIと、MTBEよりも高沸点の化合物を含有する塔底流IIIとに、蒸留による分離する工程、及び
b)塔頂流II中に含まれているMTBEを触媒上で分解して分解生成物IVを得る工程
を有する、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を分解する本発明による方法は、
流れIが、MTBEを基準として1000質量ppmよりも大きい2−メトキシブタン(MSBE)の割合を有し、かつ工程a)における蒸留による分離及び/又は工程b)における分解が、得られた分解生成物IVが、C4−オレフィン留分を基準として線状ブテン類1000質量ppm未満の濃度を有するように実施される点で優れている。
処理工程a)
処理工程a)による、MTBEを含有する塔頂流IIと、MTBEよりも高沸点の化合物を含有する塔底流IIIとへの、MTBEを含有する流れIの蒸留による分離は、少なくとも1つの塔、好ましくはちょうど1つの蒸留塔中で行われる。塔中で、MTBEを含有する流れIは、好ましくは蒸留され、その際に、高沸成分、特に2−メトキシブタンは、MTBEから分離される。使用される蒸留塔は、好ましくは50〜140の理論分離段、より好ましくは60〜120の理論分離段及び極めて特に好ましくは80〜110の理論分離段を有する。本発明の範囲内で、留出物の質量流量で除した還流の質量流量として定義される還流比は、実現される段数、使用されるMTBEの組成及び必要な純度に依存して、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10の値である。運転圧力は、好ましくは0.1〜2.0MPa(abs)であってよい。塔頂生成物IIの分解が分解反応器中で気相中で高められた圧力で行われる場合には、蒸留をより高い圧力で実施することは有利でありうる、その際、この場合に塔頂凝縮器は、好ましくは部分凝縮器として運転され、かつ塔頂生成物(II)は蒸気状で除去される。分解反応器中の反応圧が例えば0.7MPa(abs)である場合には、蒸留圧は好ましくは少なくとも0.75MPa(abs)であるべきである。1.3MPa(abs)よりも大きい運転圧力の場合に、凝縮熱を用いてND蒸気が発生されることができ、これを用いて前記方法のその他の塔が加熱されることができる。塔の加熱のためには、選択される運転圧力に応じて、蒸気又は熱媒体油が使用されることができる。塔底生成物IIIは、高沸成分、例えば2−メトキシブタン及びジイソブテンに加えて、MTBEも含有していてよい。この混合物は、熱的に利用されることができ、合成ガス設備用の原料として利用されることができ、又は直接的に又は水素化後に、燃料成分として使用されることができる。
塔頂流II中の2−メトキシブタン含量は、蒸留条件の変更により、異なる値に調節されることができる。後接続された反応器R中のMTBEの分解度に応じて、塔頂流II中の異なる2−メトキシブタン濃度が許容されることができる。反応器R中での流れII中に含まれているMTBEをできるだけ完全に転化させようとする場合には、線状ブテン類1000質量ppm未満のイソブテン仕様を遵守するために、流れII中の2−メトキシブタン含量は1000質量ppmを超えるべきではない;なぜなら、完全なMTBE転化の場合に2−メトキシブタン対MTBEの比は、分解生成物中の線状ブテン類対イソブテンの比にほぼ相当するからである。それに反して、反応器R中でより少ないMTBE転化率に調節される場合には、流れII中の2−メトキシブタン濃度は1000質量ppmよりも多くてよい、それというのも、MTBEは2−メトキシブタンよりも迅速に分解されるからである。
MTBEの分解速度対2−メトキシブタンの分解速度の比は、分解条件に加えて、使用される触媒にも依存しうる。留出物II中の許容される2−メトキシブタン濃度は、所定の触媒及び転化率の場合に、単純な予備試験により決定されることができる。例えば、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる以下に記載されるような触媒の使用の場合に、85〜95%のMTBE転化率で、2500質量ppmまで、特に2000質量ppmの2−メトキシブタン濃度(その都度MTBEを基準として)が、イソブテン仕様を危うくすることなく許容される。
処理工程b)
イソブテンと、メタノールとへの、流れII中に存在しているMTBEの分解は、酸性触媒の存在で、液相もしくは気/液−混合相中で又は気相中で、実施されることができる。本発明による方法において、MTBE分解は、好ましくは気相中で行われる。好ましくは、MTBE分解は、200〜400℃、好ましくは230〜350℃の範囲内の温度で行われる。
本発明による方法において、MTBEの分解のためには、MTBEの分解に適している公知の全ての酸性触媒が使用されることができる。酸性触媒として、例えば金属酸化物、金属混合酸化物、特に酸化ケイ素又は酸化アルミニウムを含有するそのような金属混合酸化物、金属酸化物担体上の酸又は金属塩が使用されることができる。
好ましくは、工程b)における分解は、2−メトキシブタン分解に関する活性よりも少なくとも1%、好ましくは5%及び特に好ましくは10%よりも大きいMTBE分解に関する活性を有する触媒上で実施される。触媒の活性は単純な方法で、MSBE及びMTBEからなる混合物が定常状態の条件下で、選択された触媒上で反応され、引き続いて得られた反応生成物が、未反応MTBE及びMSBEに関して分析されることによって決定されることができる。
好ましくは、本発明による方法において、MTBEの分解のため、より好ましくは気相中でのMTBEの分解のために、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる触媒が使用される。そのような触媒は、例えば、米国特許(US)第5,171,920号明細書の例4に、及び欧州特許(EP)第0 589 557号明細書に記載されている。
特に好ましくは、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素を有し、かつ0.5〜20質量%、好ましくは5〜15質量%及び特に好ましくは10〜15質量%の酸化マグネシウム割合、4〜30質量%、好ましくは10〜20質量%の酸化アルミニウム割合及び60〜95質量%、好ましくは70〜90質量%の二酸化ケイ素割合を有する触媒が使用される。触媒が酸化マグネシウムに加えて、アルカリ金属酸化物を有する場合が有利でありうる。このアルカリ金属酸化物は、例えば、Na2O又はK2Oから選択されていてよい。好ましくは、触媒は、アルカリ金属酸化物としてNa2Oを含有する。好ましくは使用される触媒は、好ましくは、200〜450m2/g、より好ましくは200〜350m2/gのBET表面積(DIN ISO 9277により窒素を用いる容量法による決定)を有する。本発明による触媒が活性材料として担体上に施与される場合には、活性材料のみが前記の範囲内のBET表面積を有する。それに反して、触媒と担体とからなる材料は、担体の性質に応じて、明らかに相違するBET表面積、特により小さいBET表面積を有していてよい。
触媒の細孔容積は好ましくは0.5〜1.3ml/g、より好ましくは0.65〜1.1ml/gである。細孔容積は、好ましくは、シクロヘキサン法により決定される。この方法の場合に、試験すべき試料を、まず最初に110℃で恒量まで乾燥させる。引き続いて、0.01gまで正確にはかり取った試料約50mlを、下面にすり合わせコック(Schliffhahn)を備えた流出開口部を有し、清浄化しかつ恒量まで乾燥させた含浸管中に満たす。流出開口部は、ポリエチレン製の小さなプレートでカバーされており、それにより、試料による流出開口部の閉塞は防止される。含浸管を試料で充填した後に、管を注意深く気密に閉じる。引き続いて、含浸管を水流ポンプにつなぎ、すり合わせコックを開け、噴射水流により含浸管中を20mbarの真空に調節する。真空は、並列に接続された真空計で調べることができる。20min後、すり合わせコックを閉じ、引き続いて真空排気された含浸管を、正確に測定された体積のシクロヘキサンが装入されるシクロヘキサン受け器と、すり合わせコックを開けることによりシクロヘキサンが受け器から含浸管中へ吸引されるようにつなぐ。すり合わせコックを、全試料がシクロヘキサンでフラッジングされるまで開けたままにしておく。引き続いて、すり合わせコックを再び閉じる。15min後に、含浸管を慎重に換気し、吸収されなかったシクロヘキサンを受け器中へ排出する。含浸管中もしくは流出開口部中又はシクロヘキサン受け器との結合部中に付着しているシクロヘキサンを、個別の慎重な圧力パルスにより吸引球から換気管路を経て受け器中へ輸送されることができる。受け器中に存在しているシクロヘキサンの体積を記録する。細孔容積は、測定後の受け器中のシクロヘキサン体積を減じた測定前の受け器中のシクロヘキサン体積から決定される吸収されたシクロヘキサン体積から、調べた試料の質量を除することにより明らかになる。
触媒の平均孔径(好ましくはDIN 66133に従って決定される)は、好ましくは5〜20nm、より好ましくは8〜15nmである。特に好ましくは、触媒の少なくとも50%、好ましくは70%を上回る全細孔容積(DIN 66133による水銀ポロシメトリーを用いて決定される3.5nm以上の孔径を有する細孔の細孔容積の総和)が、3.5〜50nmの直径を有する細孔(メソ孔)に割り当てられる。
本発明による方法において、10μm〜10mm、好ましくは0.5mm〜10mmの平均粒度(ふるい分析により決定)、特に好ましくは1〜5mmの平均粒度を有する触媒が好ましくは使用される。好ましくは、2〜4mm、特に3〜4mmの平均粒度d50を有する中実の(feste)触媒が使用される。
本発明による方法において、触媒は成形体として使用されることができる。成形体は、任意の形を有していてよい。好ましくは、触媒は、球、押出物又はタブレットの形の成形体として使用される。成形体は、好ましくは、前記の平均粒度を有する。
触媒は、担体、例えば金属担体、プラスチック担体又はセラミック担体上、好ましくは触媒が使用されるべきである反応に関して不活性な担体上に施与されていてもよい。特に、本発明による触媒は、金属担体、例えば金属板又は金属織物上に施与されていてよい。本発明による触媒が設けられたそのような担体は、例えば、反応器又は反応性蒸留塔中の内部構造物として使用されることができる。担体は、金属球、ガラス球又はセラミック球又は無機酸化物の球であってもよい。本発明による触媒が不活性担体上に施与されている場合には、不活性担体の材料及び組成は、触媒の組成の決定の際に顧慮されない。
特に好ましくは使用すべき、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(Al23)及び二酸化ケイ素を含有する触媒は、例えば、
A1)アルミノケイ酸塩を酸性のマグネシウム塩水溶液で処理する工程及び
B1)マグネシウム塩水溶液で処理されたアルミノケイ酸塩をか焼する工程
を有する方法を用いて製造されることができる。その際、アルミノケイ酸塩は、本質的には形式的に酸化アルミニウム(Al23)及び二酸化ケイ素(SiO2)の含分から構成される化合物であると理解されるべきである。しかし、アルミノケイ酸塩は、少ない割合のアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物をさらに含有していてもよい。前記方法において、アルミノケイ酸塩として、ゼオライト、例えばゼオライトA、X、Y、USY又はZSM−5又は無定形ゼオライト(例えばMobil OilのMCM 41)も使用されることができる。前記方法において使用されるアルミノケイ酸塩は、無定形又は結晶質であってよい。出発物質として本発明による方法において使用されることができる、適した商用のアルミノケイ酸塩は、例えば、沈殿、ゲル化又は熱分解により製造されたアルミノケイ酸塩である。前記方法において、好ましくは、酸化アルミニウム5〜40質量%、より好ましくは10〜35質量%及び二酸化ケイ素60〜95質量%、より好ましくは65〜90質量%(乾燥質量を基準として;処理:850℃で1h強熱)を有するアルミノケイ酸塩が使用される。使用されるアルミノケイ酸塩もしくは得られた触媒の組成の決定は、例えば、古典的分析、ほう砂を用いる溶融溶解(Schmelzaufschluss)及びRFA(レントゲン蛍光分析)、エネルギー分散型レントゲン分析、炎光分光法(Al及びMg、Siではない)、湿式分解(nassem Aufschluss)及び引き続きICP−OES(誘導結合高周波プラズマを用いる光学的発光分析法)又は原子吸光分析法により行われることができる。前記方法において使用されることができる、特に好ましいアルミノケイ酸塩は、13質量%のAl23の形式的な割合及び76質量%の二酸化ケイ素の割合を有する。そのようなアルミノケイ酸塩は、Grace Davison社から、Davicat O 701の名称で販売されている。
アルミノケイ酸塩は、多種多様な形で前記方法において使用されることができる。こうして、アルミノケイ酸塩は、成形体、例えばタブレット、ペレット、グラニュール、ビレット(Straengen)又は押出物の形で使用されることができる。しかし、アルミノケイ酸塩は、アルミノケイ酸塩粉末としても使用されることができる。出発物質として、多様な平均粒度及び多様な粒度分布を有する粉末から出発されることができる。好ましくは、成形体の製造のためには、粒子の95%が5〜100μm、好ましくは10〜30μm及び特に好ましくは20〜30μmの平均粒度を有するアルミノケイ酸塩粉末が使用される。粒度の決定は、例えば、Malvern社の粒子分析器、例えばMastersizer 2000を用いるレーザー回折により実施されることができる。
マグネシウム塩水溶液の製造のためには、水溶性であるか又は酸の添加により水溶性化合物へ転化するマグネシウム化合物が使用される。好ましくは、塩として硝酸塩が使用される。より好ましくは、マグネシウム塩として、強い鉱酸の塩、例えば硝酸マグネシウム六水和物又は硫酸マグネシウム七水和物を含有するマグネシウム塩溶液が使用される。使用される酸性のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の水溶液は、好ましくは6より小さく、より好ましくは6より小さく3まで、及び特に好ましくは5.5〜3.5のpH値を有する。pH値の決定は、例えば、ガラス電極又は試験紙を用いて実施されることができる。塩溶液が、6又はそれ以上であるpH値を有する場合には、pH値は、酸、好ましくはそのアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が溶液中に存在している酸の添加により、調節されることができる。好ましくは、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の溶液が塩として硝酸塩を有する場合には、酸として硝酸が使用される。使用されるマグネシウム塩溶液のマグネシウム含量は、好ましくは0.1〜3mol/l、より好ましくは0.5〜2.5mol/lである。
工程A1)における処理は、アルミノケイ酸塩をマグネシウム塩溶液と接触させるのに適している多様な方法で行われることができる。可能な処理方法は、例えばアルミノケイ酸塩へのマグネシウム塩溶液の含浸、浸漬、噴霧又は注流(Begiessen)である。アルミノケイ酸塩の処理が、マグネシウム塩溶液が少なくとも0.1〜5h、好ましくは0.5〜2h、アルミノケイ酸塩に作用することができるように行われる場合が有利でありうる。そのような作用時間は、特に、処理が単純な浸漬により行われる場合に、有利でありうる。
前記方法の工程A1)の好ましい一実施態様において、マグネシウム塩溶液でのアルミノケイ酸塩、特にアルミノケイ酸塩成形体の処理は、例えば真空含浸によりこのために適した真空含浸設備中で、行われることができる。この種類の処理の際に、アルミノケイ酸塩は、真空含浸設備中でまず最初に真空排気される。引き続いて、マグネシウム塩溶液は、担体積重ね物の上縁を上回るまで吸引されるので、全てのアルミノケイ酸塩が溶液で覆われている。好ましくは0.1〜10h、より好ましくは0.5〜2hである作用時間後に、担体により吸収されなかった溶液は排出される。
前記方法の工程A1)のさらに好ましい実施態様において、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の溶液でのアルミノケイ酸塩、特にアルミノケイ酸塩成形体の処理、例えばアルミノケイ酸塩への噴霧又は注流が行われることができる。好ましくは、溶液がトロンメル中で回転するアルミノケイ酸塩上に噴霧されるか又は注がれることによるアルミノケイ酸塩へのマグネシウム塩溶液の噴霧又は注流が行われる。処理は、一気に行われることができる、すなわちアルミノケイ酸塩に、最初に、マグネシウム塩溶液の全量が1つの工程において添加される。しかしまた、前記塩溶液は、噴霧又は注流により少量ずつ計量供給されることができ、その際に添加の期間は、好ましくは0.1〜10h及びより好ましくは1〜3hである。塩溶液の量は、好ましくは、全溶液がアルミノケイ酸塩により吸収されるように計量される。特に、浸漬、しかしまた噴霧もしくは注流は、常用の工業用装置、例えばEirich社により販売されているような、コーンミキサー又はインテンシブミキサー中で、実施されることができる。
工程A1)におけるマグネシウム塩溶液でのアルミノケイ酸塩の処理は、1つの工程又は複数の部分工程において行われることができる。特に、処理を2つ又はそれ以上の部分工程において実施することが可能である。個々の部分工程のそれぞれにおいて、その都度同じマグネシウム塩溶液が、又はしかしそれぞれの部分工程において濃度が異なるマグネシウム塩溶液が使用されることができる。例えば、アルミノケイ酸塩に、まず最初にマグネシウム塩溶液の一部のみが、及び、場合により中間乾燥後に、同じか又は他の温度で、使用されるマグネシウム塩溶液の残量が、添加されることができる。工程A1)が2つ又はそれ以上の部分工程において実施されることが可能であるだけではない。同様に、前記方法が複数の工程A1)を有することが可能である。この場合にも、多様な工程A1)において、濃度に関して同じか又は異なるマグネシウム塩溶液が使用されることができる。
工程A1)における処理は、好ましくは、10〜120℃、より好ましくは10〜90℃、特に好ましくは15〜60℃の温度で及び極めて特に好ましくは20〜40℃の温度で実施されることができる。
工程A1)において、1つ又はそれ以上の添加剤が、アルミノケイ酸塩もしくはマグネシウム塩溶液に、添加されるかもしくは混合される場合が有利でありうる。そのような添加剤は、例えば結合剤、潤滑剤又は成形助剤であってよい。適した結合剤は、例えばベーマイト又は擬ベーマイトであってよく、これは例えば名称Disperal(約77質量%のAl23含量(残余は水及び不純物の痕跡量)を有するベーマイト)でSasol Deutschland GmbHにより販売されている。ベーマイト、特にDisperalが結合剤として添加される場合には、これは、例えば1.28質量%硝酸水803質量部へのDisperal 197質量部の撹拌混入、60℃で3hの徹底的な撹拌、室温への冷却及び場合により蒸発された水分維持の補充により得られることができるゲルとして、好ましくは添加される。成形助剤として、例えばシリカ、特に、例えばDegussa AGにより名称アエロジル(Aerosil)で販売されているような、熱分解法シリカ、ベントナイト、粘土、カオリン、カオリナイト、ボールクレー及び当業者にこのためによく知られているその他の物質が使用されることができる。改善されたタブレット化のためにその使用が有利でありうる潤滑剤として、例えばグラファイトが添加されることができる。
工程A1)における前記の添加剤の1つ又はそれ以上の添加は、多様な方法で行われることができる。特に、前記添加は、マグネシウム塩溶液でのアルミノケイ酸塩の処理の間に行われることができる。例えば、アルミノケイ酸塩、添加剤及びマグネシウム塩溶液は、工業用装置中へ充填され、引き続いて緊密に混合されることができる。他の可能性は、まず最初にアルミノケイ酸塩を添加剤と混合し、引き続いてマグネシウム塩溶液を添加することにある。別の変法において、アルミノケイ酸塩に、添加剤及びマグネシウム塩溶液が同時に計量供給されることができる。添加は、その都度一注ぎで、少しずつ又は噴霧により行われることができる。添加時間は、好ましくは5h未満、より好ましくは3h未満である。前記混合物を0.1〜10h、好ましくは0.5〜3h後混合することは有利でありうる。
好ましくは使用される触媒の製造方法は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の溶液で処理されたアルミノケイ酸塩がか焼される少なくとも1つの処理工程B1)を有する。か焼は、好ましくはガス流中で、例えば、空気、窒素、二酸化炭素及び/又は1つ又はそれ以上の希ガスを例えば含有するか又はこれらの成分の1つ又はそれ以上からなるガス流中で行われる。好ましくは、か焼は、ガス流としての空気の使用下に行われる。
処理工程B1)におけるか焼は、好ましくは、200〜1000℃、より好ましくは300〜800℃の温度で実施される。か焼は、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは1〜5時間の期間にわたって行われる。特に好ましくは、か焼は、200〜1000℃、好ましくは300〜800℃の温度で0.1〜10時間、より好ましくは1〜5時間にわたり実施される。
好ましくは、工業的なか焼はシャフト炉中で実施されることができる。しかしながら、か焼は、その他の公知の工業用装置、例えば流動層か焼炉、回転管炉又はトレー炉(Hordenoefen)中でも実施されることができる。
工程A1)とB1)との間に、マグネシウム塩溶液で処理されたアルミノケイ酸塩が乾燥される工程C1)が実施される場合が有利でありうる。工程C1)における乾燥は、100〜140℃の温度で行われることができる。好ましくは、乾燥は、ガス流中で行われる。乾燥は、例えば、空気、窒素、二酸化炭素及び/又は1つ又はそれ以上の希ガスを例えば含有するか又はこれらの成分の1つ又はそれ以上からなるガス流中で実施されることができる。アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の溶液での処理後及びか焼前の乾燥の中間工程により、か焼の際に大量の水蒸気が放出されないことが達成されることができる。そのうえ、乾燥により、か焼の際に自発的に蒸発する水により、触媒の形が分解することが防止されることができる。
触媒がどの所望の形で存在すべきかに応じて、製造方法をさらに追加の処理工程により相応して適合させることは有利でありうる。前記方法を用いて例えば粉末状触媒が製造されるべきである場合には、アルミノケイ酸塩は、アルミノケイ酸塩粉末の形で使用され、かつ例えばコーンミキサー中でマグネシウム塩溶液で処理され(例えば含浸により)、場合により乾燥され、引き続いてか焼されることができる。しかしまた、粉末状触媒は、触媒成形体が、粉砕及びふるい分けこにより、粉末状触媒へ加工されることによって製造されることもできる。
触媒成形体は、例えば、ビレット、球、ペレット又はタブレットの形で存在していてよい。成形された触媒(触媒成形体)を得るために、それぞれの成形変法に依存して、処理、乾燥、か焼の処理工程に加えて、別の処理工程、例えば成形、粉砕又はふるい分けが実施されることができる。成形助剤は、前記プロセスにおける多様な位置で導入されることができる。触媒成形体の製造は、多様な方法で行われることができる:
第一の実施変法において、触媒成形体、特に本発明による触媒成形体は、アルミノケイ酸塩成形体を酸性のマグネシウム塩水溶液で処理し、場合により乾燥させ、引き続いてか焼することにより得ることができる。
第二の実施態様において、触媒成形体は、アルミノケイ酸塩粉末を、まず最初に酸性のマグネシウム塩水溶液で処理し、ついで場合により乾燥させ、引き続いてか焼し、かつ引き続いて得られた触媒粉末を、工業的に常用の方法、例えば圧密化、押出し、ペレット化、タブレット化、造粒又はコーティングにより、触媒成形体に加工することにより得ることができる。成形に必要とされる添加剤、例えば結合剤又は別の助剤は、その際、製造プロセスにおいて多様な位置で、例えば処理工程A1)において、添加されることができる。出発物質としてアルミノケイ酸塩粉末から成形体を製造する際に、多様な平均粒度及び多様な粒度分布を有する粉末から出発されることができる。好ましくは、成形体の製造のためには、粒子の95%が5〜100μm、好ましくは10〜30μm及び特に好ましくは20〜30μmの粒度(レーザー回折により決定、上記参照)を有するアルミノケイ酸塩粉末が使用される。
前記方法の第三の実施態様において、触媒のペレットは、処理工程A1)において、アルミノケイ酸塩粉末を酸性のマグネシウム塩水溶液で処理し、場合により乾燥させ(処理工程C1))、引き続いて処理工程B1)においてか焼し、こうして得られた触媒粉末を、例えばEirichミキサー中で、結合剤を添加しながらペレット化し、得られたペレットを別の処理工程C1)において乾燥させ、引き続いて別の処理工程B1)においてか焼することによって得ることができる。
前記製造方法の第四の実施態様において、触媒のペレットは、処理工程A1)においてアルミノケイ酸塩粉末、結合剤及び酸性のマグネシウム塩水溶液を混合し、こうして処理されたアルミノケイ酸塩粉末を、例えばEirichミキサー中で、ペレット化し、得られた湿ったペレットを処理工程C1)において乾燥させ、引き続いて処理工程B1)においてガス流中でか焼することによって得ることができる。
前記製造方法の第五の実施態様において、触媒のタブレットは、処理工程A1)においてアルミノケイ酸塩粉末、結合剤、場合により潤滑剤及び酸性のマグネシウム塩水溶液を混合し、こうして処理されたアルミノケイ酸塩粉末を、例えばEirichミキサー中で、好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは1〜5mm及び特に好ましくは1〜3mmの平均直径(粒度の決定は例えばふるい分析により行われることができる)を有するマイクロペレットにペレット化し、得られた湿ったペレットを処理工程C1)において乾燥させ、引き続いて場合により処理工程B1)においてガス流中でか焼することによって得ることができる。得られたペレットはついで、処理工程A1)においてまだ行われなかった場合には、潤滑剤、例えばグラファイトと混合され、引き続いて市販のタブレットプレス、例えばロータリープレス上でタブレット化されることができる。タブレットはついで、まだ処理工程B1)が実施されなかった場合には、処理工程B1)においてか焼されることができる。
前記製造方法の第六の実施態様において、触媒のタブレットは、例えばペレットとして実施態様3又は4において得られることができるような、予備成形された成形体触媒を粉砕し、得られたグラニュール/粉末をふるい分けして、触媒のタブレット化可能なグラニュールを得て、このグラニュールに潤滑剤を混合することによって得ることができる。こうして準備されたグラニュールは引き続いてタブレット化されることができる。タブレットはついで、まだ処理工程B1)が実施されなかった場合には、処理工程B1)においてか焼されることができる。潤滑剤の混合は、既にペレットの製造の際に、例えば処理工程A1)において潤滑剤が添加された場合には割愛することができる。
本発明による方法の第七の実施態様において、触媒で被覆された材料/担体が製造されることができる。この実施態様の場合に、まず最初に触媒粉末は、処理工程A1)においてアルミノケイ酸塩粉末を酸性のマグネシウム塩水溶液で処理し、場合により乾燥させ(処理工程C1))、場合によりか焼する(処理工程B1))ことにより製造される。こうして得られた触媒粉末は、引き続いて懸濁剤、例えば水又はアルコール中に懸濁され、その際に場合により結合剤は懸濁液に添加されることができる。こうして製造された懸濁液は、ついで各々任意の材料上に施与されることができる。施与後に、場合により乾燥され(処理工程C1))、引き続いてか焼される(処理工程B1))。このようにして、好ましい触媒で被覆された材料/担体が準備されることができる。そのような材料/担体は、例えば、反応器又は塔、特に反応性蒸留塔中の内部構造物として使用されることができるような、金属板又は金属織物であってよく、又はまた金属球、ガラス球又はセラミック球又は無機酸化物の球であってもよい。
前記製造方法の第八の実施態様において、触媒、特に本発明による触媒の押出物は、処理工程A1)においてアルミノケイ酸塩粉末、酸性のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の水溶液、結合剤、例えばDisperal及び押出しのために常用の別の成形助剤、例えば粘土、例えばベントナイト又はアタパルジャイトをニーダー又はEirichミキサー中で混合し、押出機中で好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは1〜5mm及び特に好ましくは1〜3mmの平均直径を有する押出物に押し出し、得られた湿った押出物を場合により処理工程C1)において乾燥させ、引き続いて処理工程B1)においてガス流中でか焼することによって得ることができる。
反応圧は、工程b)において、好ましくは0.1〜10MPa(abs)、より好ましくは0.5〜0.8MPa(abs)である。分解は、好ましくは0.1〜5h-1、より好ましくは1〜3h-1(毎時触媒1kgあたりのMTBEのkg)のWHSV(質量空間速度)で実施される。ワンパスのMTBE転化率は、好ましくは70〜98%、より好ましくは90〜95%である。分解は、常用の反応器中、例えば管形反応器、管束反応器、シャフト炉又は流動床反応器又はこれらの組合せ中で実施されることができる。
好ましくは、気相中での分解は、加熱マントルが設けられており、かつ液状熱媒体を用いて加熱される反応器中で実施され、その際に分解は、入口温度を基準として、各々任意の位置での触媒帯域/反応帯域中での温度降下が50℃より小さく、好ましくは40℃より小さく及び特に好ましくは1〜30℃であり、反応器中の反応混合物及びマントル中の熱媒体が並流で反応器を流れ、かつ反応器へのフィード位置と反応器からの排出口との間の熱媒体の温度差が40℃未満であるように実施される。最大の温度降下は、多数のパラメーターにより、例えば加熱のために使用される熱媒体の温度により並びに熱媒体がマントルを流れる速度により調節されることができる。
好ましくは、ガス状出発物質の入口温度は、特に本発明による処理工程b)のこの好ましい実施態様の場合に、200℃を上回り、より好ましくは230℃を上回り、かつ特に好ましくは250℃を上回る。出発物質の入口温度は、反応器に前接続された加熱器中で調節されることができる。MTBE分解の場合の新鮮な触媒の使用の際に、特に新鮮な酸化マグネシウム/酸化アルミニウム/酸化ケイ素−触媒の使用の際に、入口温度は好ましくは250〜270℃である。運転の過程で、触媒の失活が増大すると共に、転化率の一定維持のために入口温度を400℃まで上昇させることは有利でありうる。400℃に達した場合に転化率がもはや保持されることができない場合には、触媒を完全にか又は部分的に交換することは有利でありうる。
反応器は、特に本発明による処理工程b)のこの好ましい実施態様の場合に、ワンパスで好ましくは0.1〜5h-1、特に1〜3h-1の空間速度(質量空間速度(WHSV)[毎時触媒1kgあたりの出発物質のkg])で運転される。
反応器は、特に本発明による処理工程b)のこの好ましい実施態様の場合に、各々任意の空間方向に配置されていてよい。反応器が反応器管を有する場合には、これらは同様に各々任意の空間方向を指し示してよい。しかしながら、好ましくは、反応器は、反応器もしくは反応器管が垂直に揃うように設置されている。垂直に揃った反応器の場合に、熱媒体は、好ましくは、マントルの最も高い位置で又は最も高い位置の近くで供給され、かつ反応器の最も低い位置で又は最も低い位置の近くで除去されるか、又はその逆である。反応帯域内の反応混合物及びマントル内の熱媒体は、反応器を好ましくは同じ方向で貫流する。特に好ましくは、熱媒体及び反応混合物は、反応器のマントルもしくは反応器の反応帯域を上から下へ貫流する。
反応帯域のより均一な加熱を達成するために、熱媒体を、一箇所でだけでなく、ほぼ同じ高さの複数の箇所で、反応器中へ供給することは有利でありうる。管束反応器の使用の際に、周辺管と比較して中央管中のより大きい温度降下を回避するために、熱媒体用の1つのフィード又は複数のフィード中に、中央管への熱媒体の輸送を促進するノズルを設けることは有利でありうる。このようにして、管束の断面全体の温度変動は回避されることができる。
熱媒体は、1つ又はそれ以上の箇所で反応器を去ることができる。反応器が、熱媒体により上から下へ貫流される場合には、構造上の措置により、反応帯域、例えば反応管は、完全に熱媒体で周囲が洗われる(umspuelt)ことが保証されるべきである。
熱媒体は、反応器の外部で、直接的又は間接的な加熱により、所望の温度にされ、かつ反応器を経てポンプ輸送されることができる。
熱媒体として、溶融塩、水又は熱媒体油が使用されることができる。200〜400℃の温度範囲のためには、熱媒体油の使用が有利である、それというのも、それらを有する加熱循環路は、その他の技術的な解決手段と比較して、より少ない資本投資を必要とするからである。使用されることができる熱媒体油は、例えば、商標名Marlotherm(例えばSasol Olefins & Surfactants GmbHのMarlotherm SH)、Diphyl(Bayer社)、Dowtherm(Dow社)又はTherminol(Therminol社)で販売されているそのような熱媒体油である。これらの合成的に製造される熱媒体油は本質的には、熱安定な環状炭化水素をベースとしている。
好ましくは、反応器中を流れる出発物質の温度よりも10〜40℃、好ましくは10〜30℃高い温度を有する熱媒体が、反応器の加熱マントル中へ導かれる。反応器全体、すなわち、加熱マントル中へ入る際の熱媒体の入口温度と、加熱マントルから出る際の熱媒体の出口温度との間の液状熱媒体の温度差は、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃未満及び特に好ましくは10〜25℃である。温度差は、加熱マントルを経る単位時間当たりの熱媒体の質量流量(毎時kg)により調節されることができる。
本発明による処理工程b)の好ましい実施態様は、加熱マントルが設けられており、かつ液状熱媒体で加熱されることができる適した全ての反応器中で実施されることができる。そのような反応器は、触媒を有する反応帯域(触媒帯域)を有し、この帯域は、熱媒体が流れる加熱マントルとは、空間的に分離されている。好ましくは、本発明による方法は、プレート型反応器中、管形反応器中、互いに並列に接続された複数の管形反応器又はプレート型反応器中又は管束反応器中で実施される。好ましくは、本発明による方法は、管束反応器中で実施される。
触媒が中に存在する中空体は、通常の語法における管だけである必要がないことを指摘することができる。中空体は、円形の断面を有していなくてもよい。これらは、例えば楕円形又は三角形であってよい。
反応器の組立てのために使用される材料、特に加熱マントルから反応帯域を分離する材料は、好ましくは高い熱伝導率係数(40W/(m・K)より大きい)を有する。好ましくは、高い熱伝導係数を有する材料として、鉄又は鉄合金、例えば鋼が使用される。
本発明による方法が管束反応器中で実施される場合には、個々の管は、好ましくは1〜15m、より好ましくは3〜9m及び特に好ましくは5〜9mの長さを有する。本発明による方法において使用される管束反応器中の個々の管は好ましくは、10〜60mm、より好ましくは20〜40mm及び特に好ましくは24〜35mmの内径を有する。本発明による方法において使用される管束反応器の個々の管が、1〜4mm、好ましくは1.5〜3mmの管壁の厚さを有する場合が有利でありうる。
本発明による処理工程b)の好ましい実施態様において使用される管束反応器中で、管は好ましくは並列に配置されている。好ましくは、管は均一に配置されている。管の配置は、例えば正方形、三角形又は菱形であってよい。3つの相互に隣接した管の仮想的に結合された中心が正三角形を形成する配置が特に好ましく、すなわち管は同じ間隔を有する。好ましくは、本発明による方法は、管が互いに3〜15mm、特に好ましくは4〜7mmの間隔を有する管束反応器中で実施される。
好ましくは、工程b)における分解は、MTBE転化率が2−メトキシブタンの転化率よりも大きいそのような条件下で実施される。この単純な方法で、塔頂流IIが、MTBEを基準として1000質量ppmよりも大きい2−メトキシブタン(MSBE)の割合を有する場合にも、分解生成物が、C4−オレフィン留分を基準として線状ブテン類1000質量ppm未満の濃度を有することが保証されることができる。塔頂流II中に含まれているMSBEの割合に応じて、MSBE転化率が、明らかに、すなわち、例えばMTBE転化率よりも少なくとも50%だけより少ないそのような条件に調節することが必要でありうる。これらの条件は、単純な予備試験により決定されることができる。
本発明による方法の処理工程b)における主反応は、イソブテン及びメタノールへのMTBEの分解である。原料MTBEに、分解からの返送流が混合されない場合には、分解生成物IVは、調節されるMTBE転化率に応じて、好ましくは2〜29質量%の残留MTBE含量を含有する。メタノール含量は好ましくは25〜35質量%であり、イソブテン含量は好ましくは44〜61質量%である。
未反応MTBEが、分解に引き続く蒸留において分解生成物から分離され、かつ分解中へ返送される場合には、返送されるMTBEのメタノール含量に相応して組成が変わる。副反応として、分解の際にイソブテンからのジイソブテンの形成及びジメチルエーテルへのメタノールの反応が生じうる。さらに、出発物質中に含まれている2−メトキシブタンは、部分的に、線状ブテン類に、及び含まれている第三級ブチルアルコール(TBA)は、イソブテン及び水に、分解されることができる。故に、処理工程b)における反応により生じたさらなる成分として、とりわけ、ジイソブテン、ジメチルエーテル、線状ブテン類及び水が分解生成物IV中に含まれていてよい。
処理工程c)
分解生成物混合物をさらに後処理するためには、分解生成物IVが、別の蒸留工程c)において、イソブテンを含有する塔頂流Vと、未反応MTBEを含有する塔底流VIとに分離される場合が有利でありうる。処理工程c)による、イソブテンを含有する塔頂流Vと、未反応MTBEを含有する塔底流VIとへの分解生成物IVの蒸留による分離は、少なくとも1つの塔、好ましくはちょうど1つの蒸留塔中で行われる。
処理工程c)において好ましくは使用される蒸留塔は、好ましくは20〜55の理論分離段、より好ましくは25〜45の理論分離段及び特に好ましくは30〜40の理論分離段を有する。還流比は、実現される段数、反応器排出物の組成及び留出物及び塔底生成物の必要な純度に依存して、好ましくは5より小さく、より好ましくは1より小さい。塔K2の運転圧力は、好ましくは0.1〜2.0MPa(abs)に調節されることができる。圧縮機を節約するために、塔を、処理工程b)における分解反応器Rが運転される圧力よりもより低い圧力で運転することは有利でありうる。イソブテンを冷却水に対して凝縮できるためには、約0.5MPa(abs)の圧力が必要である。処理工程b)における分解が、例えば0.65MPa(abs)の圧力で運転される場合には、処理工程c)の蒸留塔が0.55〜0.6MPa(abs)の運転圧力で実施される場合が有利でありうる。蒸発器の加熱のためには、例えば、0.4MPaの蒸気が使用されることができる。塔底生成物VIは、好ましくは、未反応MTBE、メタノール並びに場合により副生物、例えばジイソブテン及び2−メトキシブタンを含有する。塔頂生成物は、好ましくは、全塔頂生成物を基準として95質量%よりも大きい純度を有するイソブテンである。
場合により、処理工程c)は、反応性蒸留塔として構成される少なくとも1つの塔中で実施されることができる。本発明による方法のこの実施態様は、全方法におけるMTBE転化率が、処理工程b)において未反応のMTBEの一部が処理工程c)の反応性蒸留塔の反応部において、イソブテン及びメタノールへ分解されることにより、高められることができるという利点を有する。
触媒として、反応性蒸留塔の反応部中で、MTBEの分解に適している全ての触媒が使用されることができる。好ましくは、触媒として酸性触媒が使用される。反応性蒸留塔の反応部中での使用のための酸性触媒の特に好ましい群は、中実の酸性のイオン交換体樹脂、特にスルホン酸基を有するそのようなイオン交換体樹脂である。適した酸性イオン交換体樹脂は、例えば、フェノール/アルデヒド縮合物又は芳香族ビニル化合物のコオリゴマーのスルホン化により製造されるそのようなイオン交換体樹脂である。コオリゴマーを製造するための芳香族ビニル化合物の例は次のものである:スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルエチルベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼン、ビニルキシレン及びジビニルベンゼン。特に、スチレンとジビニルベンゼンとの反応により生じるコオリゴマーは、スルホン酸基を有するイオン交換体樹脂の製造のための前駆物質として使用される。樹脂は、ゲル状、マクロ孔状又はスポンジ状で製造されることができる。これらの樹脂の性質、特に比表面積、多孔度、安定性、膨潤もしくは縮み及び交換容量は、製造プロセスにより変更されることができる。
反応性蒸留塔の反応部において、イオン交換体樹脂は、それらのH型で使用されることができる。スチレン−ジビニルベンゼン型の強酸性樹脂は、とりわけ、次の商標名で販売されている:Duolite C20、Duolite C26、Amberlyst 15、Amberlyst 35、Amberlyst 46、Amberlite IR-120、Amberlite 200、Dowex 50、Lewatit SPC 118、Lewatit SPC 108、K2611、K2621、OC 1501。
使用されるイオン交換体樹脂の細孔容積は好ましくは0.3〜0.9ml/g、特に0.5〜0.9ml/gである。この樹脂の粒度は、好ましくは0.3mm〜1.5mm、より好ましくは0.5mm〜1.0mmである。粒度分布は、より狭く又はより広く選択されることができる。こうして、例えば、極めて均一な粒度を有するイオン交換体樹脂(単分散性樹脂)が使用されることができる。イオン交換体の容量は、納品形を基準として、好ましくは0.7〜2.0eq/l、特に1.1〜2.0eq/lである。
処理工程c)において場合により反応性蒸留塔として構成される塔の反応部中で、触媒は、充填物中に、例えばKataMax(登録商標)(例えば欧州特許(EP)第0 428 265号明細書に記載される)又はKataPak(登録商標)(例えば欧州特許(EP)第0 396 650号明細書又は独国実用新案DE 298 07 007.3 U1号に記載される)充填物中に組み込まれていてよいか、又は成形体上に重合されていてよい(米国特許(US)第5,244,929号明細書に記載される)。
好ましくは、反応性蒸留塔は触媒充填物の上方で、純粋に蒸留により分離する領域を有する。好ましくは、触媒充填物の上方の帯域は、5〜25、特に5〜15の理論分離段を有する。触媒の下方の分離帯域は、好ましくは5〜35、より好ましくは5〜25の理論分離段を含む。反応性蒸留塔へのフィードは、触媒帯域の上方又は下方で、好ましくは上方で行われることができる。
イソブテン及びメタノールへのMTBEの転化は、反応性蒸留において好ましくは60〜140℃の温度範囲で、より好ましくは80〜130℃で、特に好ましくは90〜110℃で行われる(触媒が存在する塔の領域内の温度;塔底温度は、明らかにより高くてよい)。
反応性蒸留塔の運転圧力については、原則的に、純粋な蒸留塔としての前記の構成についてのように類似して運転条件が選択されることができる。こうして、好ましくは、反応性蒸留塔の運転圧力は0.1〜1.2MPa(abs)に調節される。圧縮機を節約するために、塔を、処理工程b)における分解反応器Rが運転される圧力よりもより低い圧力で運転することは有利でありうる。イソブテンを冷却水に対して凝縮できるためには、約0.5MPa(abs)の圧力が必要である。処理工程b)における分解が、例えば0.65MPa(abs)の圧力で運転される場合には、処理工程c)の蒸留塔が0.55〜0.6MPa(abs)の運転圧力で実施される場合が有利でありうる。蒸発器の加熱のためには、例えば蒸気が使用されることができる。
塔の触媒充填物中の液圧ローディングは、好ましくはそれらのフラッディング点ローディングの10%〜110%、より好ましくは20%〜70%である。蒸留塔の液圧ローディングは、上昇する蒸気−質量流量及び戻る液体−質量流量による塔断面の均一な流動工学的な要件(Beanspruchung)であると理解される。ローディング上限は、その上方では、上昇する蒸気流による還流液体の飛沫同伴又はせき止めのために分離作用が低下する、蒸気及び還流液体による最大ローディングを示す。ローディング下限は、その下方では、不規則な流動のため又は塔、例えばトレイが空になるために分離作用が低下するか又は崩壊する、最小ローディングを示す。(Vauck/Mueller, "Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik", p. 626, VEB Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie.)。
反応性蒸留塔としての処理工程c)における塔の構成の場合にも、好ましくは、未反応MTBE及びメタノール並びに場合により副生物、例えばジイソブテン、及び2−メトキシブタンを含有する塔底生成物VIが得られる。塔頂生成物は、好ましくは、95質量%よりも大きい純度を有するイソブテンを含有する。
処理工程c)において得られた塔底生成物VIは、処理工程b)において未反応のMTBEと、MTBEの分解の際に生じたメタノールの大部分とを含有する。場合により、この塔底生成物は、副生物、例えばジイソブテン及び/又は2−メトキシブタンを含有していてよい。この流れVIの使用もしくは後処理のためには、多様な可能性がある。MTBE分解設備が、MTBEの製造のための設備と結び付いている場合には、流れVIはMTBE設備中へ、好ましくは合成部中へ、送られることができる。これは、MTBE設備が、分解に必要とされるのとちょうど同じ量のみのMTBEを製造し、ひいては合成部中に、高沸点成分用の別の出口が存在していない場合ですら当てはまる。第二の可能性は、流れVIからメタノールの大部分を蒸留により分離し、かつ残余を処理工程a)中へ返送する(図2中の流れVIII)ことにある。別の可能性は、流れVIからメタノール、副生物及び2−メトキシブタンを蒸留により分離し、かつ取り残されているMTBEを処理工程b)中へ返送することにある。最後2つの可能性は、特に、外部から納入されるMTBEが使用される独立型設備(stand alone plants)にとって有利である。
処理工程c)において得られ、かつ好ましくは95質量%より多くがイソブテンからなる塔頂生成物Vは、直接市販品として使用されることができるか、又はさらに精製されることができる。
イソブテンはメタノールと最小のアゼオトロープを形成するので、処理工程c)において得られた塔頂生成物Vは、主生成物イソブテンに加えて特にメタノールを含有する。別の成分として、塔頂生成物V中には、例えばメタノールの縮合により発生されうるジメチルエーテル、及び例えば2−メトキシブタンの分解により発生されうる線状ブテン類(1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン)及び水が例えば含まれうる。
塔頂生成物Vから、ジメチルエーテルの一部が、場合により、既に処理工程c)において、蒸留塔もしくは反応性蒸留塔上の凝縮器が部分凝縮器として運転されることによって、分離されることができる。この凝縮器中で、塔頂生成物中に含まれているC4−留分が凝縮されることができ、かつ塔頂生成物V中に含まれているジメチルエーテルの一部がガス状で除去されることができる。
処理工程c)において得られる塔頂生成物V中の線状ブテン類含量は、C4−オレフィン留分を基準として、好ましくは1000質量ppm未満である。その場合に、塔頂留分V中の1−ブテン含量は、C4−オレフィン留分を基準として、好ましくは500質量ppm未満である。2−ブテン類の含量(2つの2−ブテン類の総和)は、C4−オレフィン留分を基準として、好ましくは同様に500質量ppm未満である。
処理工程d) イソブテン後処理
市場向きのイソブテングレードは、通常、事実上メタノール不含である。メタノールは、処理工程c)において得られた流れVから、それ自体として公知の方法に従い、例えば抽出により、分離されることができる。流れVからのメタノールの抽出は、例えば、抽出剤として水又は水溶液を用い、例えば抽出塔中で実施されることができる。好ましくは、水又は水溶液での抽出は、好ましくは4〜16の理論分離段を有する抽出塔中で実施される。抽出剤は、抽出すべき流れに関して、好ましくは向流で抽出塔へ導かれる。抽出は、好ましくは15〜50℃、より好ましくは25〜40℃の温度で実施される。例えば、0.9MPa(abs)の圧力及び40℃の温度で運転され、6よりも多い理論分離段を有する抽出塔の使用の場合に、99質量%を上回るイソブテン含量を有する水で飽和されたイソブテンが得られることができる。
抽出の際に得られたメタノール含有の水抽出物は、蒸留により、水とメタノールとに分離されることができる。この水は、抽出剤として抽出段階へ返送されることができる。このメタノールは、常用の工業的合成、例えばエステル化又はエーテル化に利用されることができる。
抽出塔からの湿ったイソブテン流は、別の蒸留塔中で、水及びジメチルエーテルから分離され、かつ乾燥したイソブテンへ後処理されることができる。その場合に乾燥したイソブテンは塔底生成物として得られる。塔の頂部での凝縮系において、相分離後に、水は液状で、及びジメチルエーテルはガス状で除去される。乾燥のために好ましくは使用される蒸留塔は、好ましくは30〜80の理論分離段、より好ましくは40〜65の理論分離段を有する。還流比は、実現される段数及びイソブテンの必要な純度に依存して、好ましくは60より小さく、より好ましくは40より小さい。塔K2の運転圧力は、好ましくは0.1〜2.0MPa(abs)に調節されることができる。
抽出及び蒸留によるイソブテンの後処理は、例えば、独国特許(DE)第102 38 370号明細書に詳細に記載されている。
そのように取得されたイソブテンは、例えば、第1表に記載された組成を有していてよい:
第1表:市場向きのイソブテンの典型的な組成。
Figure 0005283871
しかし、純度要求に応じて、必要に応じて、より少ない濃度の副成分も可能である。
本発明による方法を用いて製造されたイソブテンは、例えば、塩化メタリル、スルホン酸メタリル類、メタクリル酸又はメタクリル酸メチルの製造に使用されることができる。特に、メタノール並びにイソブテンが、分解生成物から分離される場合に、メタノール並びにイソブテンをメタクリル酸メチルの製造に使用することは有利でありうる。メタクリル酸メチルのそのような製造方法は、例えば欧州特許(EP)第1 254 887号明細書に記載されており、これについて明らかに参照される。
原料物質
MTBEを含有する流れIとして、処理工程a)において、異なる品質のMTBEが使用されることができる。特に、多様な品質の工業用MTBE、又は工業用MTBE及びメタノールからなる混合物が流れIとして使用されることができる。工業用MTBE(燃料グレード)は、好ましい原料物質である。第2表は、例えば、OXENO Olefinchemie GmbHの工業用MTBEの典型的な組成を示す。
第2表:Oxenoの工業用MTBE(燃料グレード)の典型的な組成。
Figure 0005283871
工業用MTBEは、公知の方法に従い、ポリ不飽和炭化水素が大幅に除去されているC4−炭化水素混合物、例えばラフィネートI又は選択的に水素化されたクラック−C4と、メタノールとの反応により製造されることができる。MTBEの製造方法は、例えば、独国特許(DE)第101 02 062号明細書に記載されている。
流れIとして、本発明による方法において、工業用MTBEと、分解生成物IVの蒸留により分離された部分流とからなる混合物も使用されることができる。この部分流は、特に、処理工程c)において塔底生成物VIとして得られる流れ、又は処理工程c)において得られた塔底流VIの後処理により得られることができる流れであってよい。
本発明による方法において、流れIとして、MTBEを含有する流れIaからの場合による処理工程e)における低沸成分の分離により完全にか又は部分的に得られる、MTBEを含有する流れが使用される場合が、特に有利でありうる。この流れIにも、分解生成物IVの蒸留により分離された部分流が添加されることができる。
低沸成分の分離は、MTBEを含有する流れIaが例えばC4−又はC5−炭化水素を含有する場合に、特に有利でありうる。場合による処理工程e)における流れIaからの低沸成分の分離は、好ましくは蒸留塔中で行われることができる。この蒸留塔は、好ましくは、低沸成分が塔頂生成物として分離されることができるように運転される。
好ましくは、処理工程e)は、30〜75の理論分離段、好ましくは40〜65の理論分離段及び特に好ましくは40〜55の理論分離段を有する蒸留塔中で実施される。好ましくは、この塔は、実現される段数、使用されるMTBEの組成及びC4−及びC5−炭化水素の必要な純度に依存して、150〜350、特に200〜300の還流比で運転される。場合による処理工程e)における塔は、好ましくは0.2〜0.6MPa(abs)、より好ましくは0.3〜0.4MPa(abs)の運転圧力で運転される。塔の加熱のためには、例えば蒸気が使用されることができる。凝縮は、選択される運転圧力に応じて、冷却ブライン、冷却水又は空気に対して行われることができる。塔の頂部蒸気は、完全にか又は部分的にのみ凝縮されることができるので、塔頂生成物VIIは、液状で又は蒸気状で除去されることができる。塔頂生成物VIIは、熱的に利用されることができ、又は合成ガス設備の原料物質として利用されることができる。
本発明による方法において、塔、例えば図1もしくは図2中でK1、K2及びK3と呼ばれた塔が使用される場合には、これらに、例えばトレイ、回転する内部構造物、不規則な積重ね物及び/又は規則充填物である内部構造物が設けられていてよい。
塔トレイの場合に、例えば次のタイプが使用されることができる:
トレイプレート中に穴又はスリットを有するトレイ。
バッブルキャップ、キャップ又はフードにより覆われているネック又はチムニーを有するトレイ。
トレイプレート中に回転可能な弁により覆われている穴を有するトレイ。
特殊構造を有するトレイ。
回転する内部構造物を備えた塔中で、還流は、例えば回転する漏斗により噴霧されることができるか、又はローターを用いて、フィルムとして加熱された管壁上に広げられることができる。
本発明による方法において、既に述べたように、多様な充填物を有する不規則な積重ね物を有する塔が使用されることができる。充填物は、ほぼ全ての原料から、特に鋼、合金鋼、銅、炭素、石器、磁器、ガラス又はプラスチックからなっていてよく、かつ多種多様な形、特に球、滑らかな又は異形化された表面を有するリング、内部支柱又は壁貫通孔を有するリング、ワイヤメッシュリング、サドル体及びスパイラルの形を有していてよい。
規則的/秩序的なジオメトリーを有する充填物は、例えば薄板又は織物からなっていてよい。そのような充填物の例は、金属又はプラスチックからなるSulzer織物充填物BX、金属薄板からなるSulzer層状充填物Mellapak、MellapakPlusのようなSulzer高性能充填物、Sulzer(Optiflow)、Montz(BSH)及びKuehni(Rombopak)の構造充填物である。
図1及び2に基づいて、本発明は次により詳細に説明されるが、本発明は図面に例示的に図示された実施態様に限定されるものではない。
本発明による方法が実施されることができる設備の一実施態様のブロック図は、図1に示されている。MTBEを含有する原料流Iは、塔K1中で、MTBEよりも高沸点の副成分、例えばジイソブテン及び2−メトキシブタンを含有する塔底生成物IIIと、MTBEを含有する塔頂生成物IIとに分離される。塔頂生成物II中に含まれているMTBEは、反応器R中で主要部分がイソブテン及びメタノールへ分解される。反応器R中で得られた分解生成物IVは、塔K2中で、メタノール及び場合によりジメチルエーテルを含有し、イソブテンを有する混合物Vと、未反応MTBE、メタノール及び副成分を含有する塔底生成物VIとに分別される。
場合により、原料流Iに、とりわけ未反応MTBEが含まれている、分解からの返送流VIIIが添加されることができる。そのような返送流VIIIは、例えば、塔K2の塔底生成物VIであってよく、その際にその中に含まれているメタノールは返送前に、1つ又はそれ以上の蒸留工程により部分的にか又は完全に分離されるべきである。塔K2は、場合により、反応性蒸留塔として構成されることができる。
本発明による方法が実施されることができる設備のさらなる実施態様のブロック図は、図2に示されている。図2の実施態様は、図1とは、原料MTBE Iaが、予備塔K3中で、低沸成分、例えばC4−及びC5−炭化水素を含有する塔頂生成物VIIと、低沸成分が取り除かれたMTBEを含有する流れIとに分離され、この流れがついで塔K1中へ供給される点で相違する。
次の例は、本発明を説明するものであるが、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになる適用分野を限定するものではない。
例a:アルミノケイ酸塩成形体の製造
アルミノケイ酸塩粉末500g(製造者:Grace Davison、タイプ:Davicat O 701、形式的なAl23含量:13質量%、形式的なSiO2含量:76質量%、形式的なNa2O含量:0.1質量%、850℃での強熱減量:約11%)、1.28質量%硝酸水803g中へのDisperal、Sasol Deutschland GmbHの77質量%の形式的なAl23含量を有するベーマイト 197gの撹拌混入、引き続き蓋をした容器中での60℃で3hの、形成されるゲルが常にせん断されかつこうして易流動状態で保持される念入りな撹拌、室温へのゲルの冷却及び場合により蒸発された水の置換により得られるDisperalゲル363g(形式的なAl23含量:15.6%)、及び完全脱塩水370g(VE水)を、まず最初にEirich社のインテンシブミキサー中で互いに念入りに混合した。引き続いて、ペレット化をEirich社のインテンシブミキサー中で行い、30〜40分かけて約1〜3mmの直径を有する均一に丸みを帯びたペレットが得られた。湿ったペレットを、まず最初に120℃で空気流中で乾燥させ、引き続いて2K/minで550℃に加熱し、この温度で空気流中で10hか焼した。こうして製造されたアルミノケイ酸塩ペレットは形式的にAl23 76質量%及びSiO2 24質量%を含有していた。さらに、製造された触媒は、ナトリウム化合物0.12質量%を含有していた(酸化ナトリウムとして計算)。アルミノケイ酸塩ペレットの組成を、出発物質の量及び組成から計算した。アルミノケイ酸塩ペレットは、前記のシクロヘキサン法を用いて決定された1.15ml/gの細孔容積を有していた。
例b:成形された触媒の製造(本発明による)
完全脱塩水及び硝酸マグネシウム六水和物から、4.7質量%のマグネシウム含量を有する含浸溶液を製造した。この溶液のpH値は5.1であった。真空含浸により、例1において製造されたアルミノケイ酸塩担体のふるい分けされた画分(直径:1.0mm〜2.8mm)を、酸性の硝酸マグネシウム溶液に浸漬した。そのためには、ペレットをガラス管中へ充填し、これを約30min、真空排気した(約25hPaの水流ポンプ真空)。引き続いて、含浸溶液を下から固体積重ね物の上縁を上回るまで吸引した。約15分の作用時間後に、担体により吸収されなかった溶液を排出した。湿ったペレットを、まず最初に空気流中で140℃で恒量まで乾燥させ、引き続いて3K/minで450℃に加熱し、この温度で12hか焼した。製造された触媒は、形式的に二酸化ケイ素68質量%、酸化アルミニウム21質量%及び酸化マグネシウム11質量%からなっていた。さらに、製造された触媒は、ナトリウム化合物0.11質量%を含有していた(酸化ナトリウムとして計算)。触媒の組成を、出発物質並びに排出された含浸溶液の量及び組成から計算した。ナトリウム量は、例1において使用されるアルミノケイ酸塩の成分であった。前記のシクロヘキサン法を用いて決定された細孔容積は1.1ml/gであった。
次の例の計算を、定常状態のシミュレーションプログラムASPEN Plus(AspenTech社のVersion 12.1)を用いて実施した。透明で再現可能なデータを生じさせるために、一般的に入手可能な物質データのみを使用した。そのうえ、全ての変法の場合に、反応性蒸留の使用を放棄した。これらの単純化により、計算を追体験することは、当業者には容易に可能である。使用された方法は、確かに、工業用設備の設計のために十分な精度を有しないが、しかし、接続(Schaltungen)の定性的な差異は、正しく把握される。示された全ての変法において、MTBE転化率は、反応性蒸留の使用により高められることができる。
例において、物性推算法"UNIFAC-DMD"(J. Gmehling, J. Li, 及びM. Schiller, Ind. Eng. Chem. Res. 32, (1993), p. 178-193)を利用した。反応器Rについては、その都度100 lの反応器容積をモデリングし、その際に、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなり、かつ製造が例a及びbにおいて記載される触媒での充填が想定される。
反応器モデリングのためには、計算において、この触媒を用いる広範囲に亘る実験的な測定データに基づく速度論的な反応器モデルを使用した。故に、例において、その都度、反応器モデリングの際に想定された反応温度も挙げられている。反応段階の入ってくる流れ及び出て行く流れの組成もその都度挙げられているので、ほぼ所定の転化率を有する反応器の追跡により、速度論についての正確な方程式を知る必要なく、例を再計算することが、当業者には可能である。反応器圧は、全ての例において0.8MPa(abs)である。
例1:
例1は、分解生成物を塔K1に場合により返送しない場合の、図2に示された変法に相当する。図2に従い、MTBE分解設備へのフィードとして、第3表に記載された組成を有する100kg/hのMTBE流(Ia)(原料MTBE)を想定した。市販の燃料MTBE(第1表参照)とは異なり、2−メトキシブタン含量が高められていた。これは、MTBE分解設備と結合されているMTBE合成設備からのMTBEに典型的である。そのような結合設備中での2−メトキシブタンのための唯一の出口は、2−メトキシブタンが部分的に塔底を経て分離される塔K1である。故に、2−メトキシブタンを含有するMTBE分解からの流れをMTBE合成中へ返送することにより、MTBE中の2−メトキシブタンの値は高められる。
第3表:例1についてのMTBE分解設備中への想定されるMTBE流入流の組成。
Figure 0005283871
MTBE流(Ia)から、まず最初に、塔K3中で、C4−及びC5−炭化水素を50質量ppmの残留含量まで分離する。この塔は、50の理論段を有し、かつ210の還流比及び0.5MPa(abs)の圧力で運転される。粗製MTBE Iaのフィードを、上から数えて段20の上方で行う。塔頂温度は63.0℃であり、塔底温度は111.9℃である。この塔の留出物(VII)は、MTBE 10質量%の残留含量を有する。還流比及び/又は分離段数を増大させることにより、MTBE含量は、さらに減少されることができた。第4表は、塔K3の留出物流(VII)及び塔底流の組成を示す。
第4表:例1についての留出物流(VIII)及び塔K3の塔底流の組成。
Figure 0005283871
低沸成分が最も広範囲に及んで取り除かれているMTBE流I(塔K3の塔底生成物)を塔K1に供給し、この塔中で、とりわけジイソブテン及び2−メトキシブタンを、塔底(III)を経て分離する。この塔は、90の理論段を有し、かつ4.6の還流比及び0.9MPa(abs)の圧力で運転される。流れIの添加を、上から数えて段30の上方で行う。塔頂温度は141.3℃であり、塔底温度は145.8℃である。塔頂生成物(II)として、98.5質量%を上回るMTBEを含有するガス状留分が得られる。留出物中の2−メトキシブタン含量を2000質量ppmに調節した(第5表参照)。還流比及び/又は分離能を増大させることにより、塔底生成物中のMTBE含量は、減少されることができた。
第5表:例1についての塔K1の留出物流(II)及び塔底流(III)の組成。
Figure 0005283871
塔K1の留出物流(II)を、反応温度にさらに加熱した後に、反応部(R)に供給する。反応器を300℃及び0.8MPa(abs)で運転する。これらの反応条件の場合に、約96%のMTBE転化率となり、2−メトキシブタンの転化率は約22%である。しかし、反応器フィード中の2000質量ppmへの2−メトキシブタンの割合の制限に基づいて、2−メトキシブタンが2−ブテンに分解するにもかかわらず、イソブテン生成物中の線状ブテン類のための必要とされる仕様は脅かされていない。反応器排出物(IV)の組成は、第6表に示されている。
第6表:例1についての反応器排出物(IV)並びに塔K2の留出物流(V)及び塔底流(VI)の組成。
Figure 0005283871
反応器排出物(IV)を部分的に凝縮させ、かつ二相で塔K2に供給する。この塔は、40の理論段を有し、かつ0.3の還流比及び0.6MPa(abs)の圧力で運転される。物質フィードを、上から数えて段30の上方で行う。塔頂温度は48.4℃であり、塔底温度は114.8℃である。塔底生成物は主に、未反応MTBE(約10質量%)及びメタノール(約88質量%)からなる、第6表参照。この塔底生成物は、MTBE合成設備中へ返送されることができる。合成設備中に通常、2−メトキシブタン用の出口が存在しないので、それにより、この例において顧慮されるように、MTBE中の2−メトキシブタン含量は、MTBE分解と結合しない場合のMTBE合成において生産されるMTBEに比較して高められる、第2及び3表参照。
塔頂生成物(V)は、イソブテン96質量%よりも大きい純度を有するイソブテンを含有する。線状ブテン類(<1000質量ppm)及びC5−炭化水素(<1000質量ppm)についての典型的なイソブテン仕様において必要とされる限界は確実に遵守される、第1及び6表参照。必要に応じて、水での抽出により、メタノールは除去されることができ、残留水及びジメチルエーテルは、その後の蒸留により分離されることができ、かつイソブテンは99.9質量%よりも大きい純度に濃縮されることができる。こうしてさらに精製されたイソブテンは、第2表において必要とされる仕様を満たす。
例2:
例2は、塔K1への分解生成物の返送を伴う図2に示された変法に相当する。MTBE分解設備へのフィードとして、図2に従い、第7表に記載された組成を有する100kg/hのMTBE流(Ia)が想定される(典型的な燃料MTBE、第2表と共に参照)。
第7表:例2についてのMTBE分解設備中への想定されるMTBE流入流の組成。
Figure 0005283871
MTBE流(Ia)から、まず最初に、塔K3中で、低沸成分(C4−及びC5−炭化水素)を50質量ppmの残留含量まで分離する。塔K3の段数、フィード添加位置、還流比及び運転圧力は、例1に対して変更されていない。塔頂温度は63.0℃であり、塔底温度は111.8℃である。この塔の留出物(VII)は、MTBE 10質量%の残留含量を有する。還流比及び/又は分離段数を増大させることにより、MTBE含量は、さらに減少されることができた。第8表は、塔K3の留出物流(VII)及び塔底流の組成を示す。
第8表:例2についての留出物流(VIII)及び塔K3の塔底流の組成。
Figure 0005283871
低沸成分が最も広範囲に及んで取り除かれたMTBEに、MTBE分解からの返送流(VIII)を混合して流れ(I)を得る。これは、塔K2の塔底流(VI)であり、その際、返送前にメタノール及び副成分の大部分が1つ又はそれ以上の蒸留工程により分離されたと想定する。返送流(VIII)及び前記混合物からもたらされる塔K1へのフィード流(I)の想定される組成は、第9表に示されている。
第9表:例2についての分解からの返送流(VIII)及び塔へのフィード流(I)の組成。
Figure 0005283871
塔K3の塔底生成物とMTBE分解からの返送流(VIII)との混合により生じた流れ(I)を、塔K1に供給し、この塔中で同様に、とりわけジイソブテン及び2−メトキシブタンを、塔底(III)を経て分離する。塔K1の段数、物質フィード位置及び運転圧力は、例1に対して変更されていない。この塔を、例2において3.2の還流比で運転する。塔頂温度は135.8℃であり、塔底温度は147.2℃である。塔頂生成物(II)として、MTBE約94.5質量%を含有するガス状留分が得られる。留出物中の2−メトキシブタン含量を2500質量ppmに調節した(第10表参照)。還流比及び/又は分離能を増大させることにより、塔底生成物中のMTBE含量は、減少されることができた。
第10表:例2についての塔K1の留出物流(II)及び塔底流(III)の組成。
Figure 0005283871
塔K1の留出物流を、反応温度にさらに加熱した後に、反応部(R)に供給する。反応器を265℃及び0.8MPa(abs)で運転する。これらの反応条件の場合に、約85%のMTBE転化率となり、2−メトキシブタンの転化率は約15%である。しかし、反応器フィード中の2500質量ppmへの2−メトキシブタンの制限に基づいて、2−メトキシブタンが線状ブテン類に分解するにもかかわらず、イソブテン生成物中の線状ブテン類のための必要とされる仕様は脅かされていない。反応器排出物(IV)の組成は、第11表に示されている。
第11表:例2についての反応器排出物(IV)並びに塔K2の留出物流(V)及び塔底流(VI)の組成。
Figure 0005283871
反応器排出物(IV)を部分的に凝縮させ、かつ二相で塔K2に供給する。塔K2の段数、物質フィード位置、還流比及び運転圧力は、例1に対して変更されていない。塔頂温度は48.3℃であり、塔底温度は111.4℃である。塔底生成物は、同様に、主に未反応MTBE(約31質量%)及びメタノール(約67質量%)からなる、第11表参照。例1に比較して明らかにより高い残留MTBE含量に基づいて、この例において、メタノールの大部分及び別の副成分を、1つ又はそれ以上の蒸留工程により分離し、かつこうして精製された流れを塔K1の前へ返送することは価値がある。こうして、イソブテンの全収率は、MTBE原料を基準として、明らかに高められことができる。
塔頂生成物(V)は、イソブテン96質量%よりも大きい純度を有するイソブテンである。線状ブテン類(<1000質量ppm)及びC5−炭化水素(<1000質量ppm)についての典型的なイソブテン仕様において必要とされる限界は確実に遵守される、第1及び11表参照。必要に応じて、水での抽出により、メタノールは除去されることができ、残留水及びジメチルエーテルは、その後の蒸留により分離されることができ、かつイソブテンは99.9質量%よりも大きい純度に濃縮されることができる。こうしてさらに精製されたイソブテンは、第1表において必要とされる仕様を満たす。
本発明による方法が実施されることができる設備の一実施態様を示すブロック図。 本発明による方法が実施されることができる設備のさらなる実施態様を示すブロック図。
符号の説明
I MTBEを含有する流れ、 Ia MTBEを含有する流れ、 II 塔頂流、 III 塔底流、 IV 分解生成物、 V 塔頂流、 VI 塔底流、 VII 塔頂生成物、 VIII 返送流、 K1〜K3 塔、 R 反応器

Claims (10)

  1. 少なくとも
    a)メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を含有する流れIを、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を含有する塔頂流IIと、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)よりも高沸点の化合物を含有する塔底流IIIとに、蒸留による分離する工程、及び
    b)塔頂流II中に含まれているメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を触媒上で分解して分解生成物IVを得る工程
    を有する、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を分解する方法であって、
    流れIが、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を基準として1000質量ppmよりも大きい2−メトキシブタン(MSBE)の割合を有し、かつ工程a)における蒸留による分離を、80〜110の理論分離段で、0.1〜2.0MPa(絶対圧)の運転圧力で、1〜20の還流比で行い、工程b)において、気相中で230℃〜350℃温度範囲で、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ナトリウムを含有し、200〜450m 2 /gのBET表面積を有し、0.5〜1.3ml/gの細孔容積を有し、5〜20nmの平均孔径を有しかつメソ孔に関して全細孔容積の70%を上回る分布を有する触媒上で行う分解は、得られた分解生成物IVが、C4−オレフィン留分を基準として線状ブテン類1000質量ppm未満の濃度を有するように実施することを特徴とする、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を分解する方法。
  2. 工程a)における蒸留による分離を、得られる流れIIが、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を基準として1000質量ppmより小さい2−メトキシブタンの濃度を有するように実施する、請求項1記載の方法。
  3. 工程b)における分解を、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)転化率が2−メトキシブタンの転化率よりも大きい条件下で実施する、請求項1又は2記載の方法。
  4. 工程b)における分解を、2−メトキシブタン分解に関する触媒の活性よりも少なくとも1%大きいメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)分解に関する触媒の活性を有する触媒上で実施する、請求項3記載の方法。
  5. 工程b)における分解を、少なくとも70%のメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)転化率で実施する、請求項3記載の方法。
  6. 流れIとして工業用メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
  7. 分解生成物IVを、別の処理工程c)において、蒸留により、イソブテンを含有する塔頂流Vと、未反応のメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を含有する塔底流VIとに分離する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
  8. 処理工程c)において得られたイソブテンを含有する塔頂流Vから、別の処理工程d)においてメタノールを抽出により、及び抽出されたイソブテンからジメチルエーテル及び水を蒸留により、分離する、請求項7記載の方法。
  9. 流れIとして工業用メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)と、蒸留により分離された分解生成物IVの部分流とからなる混合物を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
  10. 流れIとして、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を含有する流れIaからの低沸成分の分離により完全にか又は部分的に得られる、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を含有する流れを使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
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