JP5283272B2 - トロリ線 - Google Patents
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Description
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1及び図2に示すように、集電装置(2)のすり板(2a)が摺動し電気車(1)に電力を供給するトロリ線であって、横風を受けたときの上下振動を低減するために、トロリ線上面(9D)からの気流の剥離を抑制する剥離抑制部(9d)を備え、前記剥離抑制部は、前記トロリ線上面の中央部に第1の湾曲面(9e)を備え、前記トロリ線上面の両肩部に前記第1の湾曲面に連なりこの第1の湾曲面よりも曲率半径(R 2 )の小さい第2の湾曲面(9f,9g)を備え、前記第1の湾曲面の曲率半径がR 1 であり、前記第2の湾曲面の曲率半径がR 2 であるときに、R 1 ≦10R 2 /3+20(mm)であり、前記集電装置のすり板が摺動するときに発生するトロリ線応力を低減するために、中立軸(O)から前記トロリ線上面(9D)までの距離(L 1 )がこの中立軸から前記トロリ線下面(9A)までの距離(L 2 )よりも短いことを特徴とするトロリ線(9)である。
図1は、この発明の実施形態に係るトロリ線を備える架線を概略的に示す側面図であり、図1(A)は集電装置の通過前後の状態を模式的に示す側面図であり、図1(B)は集電装置が通過中の状態を模式的に示す側面図。図2は、この発明の実施形態に係るトロリ線の断面図である。
図1に示す車両1は、電車又は電気機関車などの電気車であり、例えば高速で走行する新幹線などの鉄道車両である。集電装置2は、トロリ線9から電力を車両1に導くための装置である。集電装置2は、トロリ線9と摺動するすり板2aと、このすり板2aを支持する集電舟(舟体)2bと、この集電舟2bを支持した状態で上下方向に動作する枠組2cと、車両1の屋根上のがい子に取り付けられた状態で枠組2cを支持する台枠2dなどを備えている。図1に示す集電装置2は、例えば、車両1の進行方向に対して非対称なシングルアーム式パンタグラフである。
図1に示すように、車両1とともに集電装置2が矢印方向に移動すると、集電装置2のすり板2aによってトロリ線9が押し上げられて、集電装置2が通過するたびにトロリ線9が湾曲しトロリ線9の表面にトロリ線応力が発生する。トロリ線応力を繰り返し受けるとトロリ線9が疲労し破断するおそれがあるが、実際に問題となるのはトロリ線9の上面9Dに発生するトロリ線応力である。図2に示すように、トロリ線9の中立軸Oから上面9Dまでの距離L1がこの中立軸Oの下面9Aまでの距離L2よりも短くなるようにトロリ線9の断面形状が設計されている。このため、実際に問題となるトロリ線9の上面9Dに発生するトロリ線応力が低減する。
(1) この実施形態では、横風を受けたときの上下振動を低減するために、トロリ線9の上面9Dからの気流の剥離を剥離抑制部9dが抑制する。このため、トロリ線9が横風を受けて上下振動した状態で集電装置2が通過したときに、すり板2aがトロリ線9から離れる離線現象が発生するのを防ぎ、列車の走行に支障が生ずるのを防ぐことができる。
図3は、この発明の実施例に係るトロリ線の断面図である。
曲げ応力低減効果とギャロッピング特性の改善とを両立可能な断面形状を検討するために、図3に示す実施例に係るトロリ線について風洞試験を実施した。ここで、図3に示す寸法はmmである。風洞試験の結果、ギャロッピング特性は、図2に示すトロリ線9の上面9Dの湾曲面9e〜9gの曲率半径R1,R2に強く依存することが確認された。このため、図3に示すトロリ線では、曲率半径R1を10(mm)とし、曲率半径R2を1.5(mm)として製作した。図3に示すトロリ線は、従来型の溝付きトロリ線の円形ベースの断面に比べて曲げ応力を10%程度低減可能であると予測される。
図4に示す縦軸は、ギャロッピング条件式の値であり、横軸は迎角(度)である。ここで、ギャロッピング条件式の値=CD+dCL/dα(CD:抗力係数、CL:揚力係数、α:迎角)である。また、迎角とは、図2に示すトロリ線9の中心線Cと直交する方向(水平方向)と気流の方向とのなす角度であり、トロリ線9に向かって気流が斜め上方向であるときには正の値であり、トロリ線9に向かって気流が斜め下方向であるときには負の値である。ギャロッピング条件式の値が著しく負値である場合には、ギャロッピングを生じる可能性が高いが、図4に示すようにこの実施例にかかるトロリ線では風速30(m/s)以下ではギャロッピングを生じる可能性が低いことが確認された。なお、風速30(m/s)を超える場合には、この実施例に係るトロリ線についてもギャロッピングを生じる可能性が高い。しかし、風速30(m/s)の場合には、列車の運転抑止や徐行を行う運転規制がかかるため、この発明の実施例に係るトロリ線のギャロッピング特性が原因となって列車の運行に支障が生じる可能性は低い。
図5に示す実施例、現行品及び比較例1〜3に係るトロリ線について風洞試験を実施した。ここで、図5に示す寸法はmmであり、実施例、現行品及び比較例1〜3に係るトロリ線の断面積はいずれも公称断面積110(mm2)と略同一である。図6に示す縦軸は、図2に示す曲率半径R1に相当し、横軸は図2に示す曲率半径R2に相当する。図6に示す風洞試験は、風速30(m/s)以下でのギャロッピングの有無の結果である。図6に示すように、実施例に係るトロリ線については、現行品のトロリ線と同様にギャロッピングを生じ難いことが確認されたが、比較例1〜3に係るトロリ線についてはギャロッピングを生じ易いことが確認された。その結果、図5及び図6に示すように、図2に示す曲率半径R2を小さくすると気流の剥離が激しくなって剥離領域が広がるため、トロリ線上面に気流を再付着させるためにはトロリ線上面を凸状にし曲率半径R1を小さくするほうが好ましいことが確認された。また、図6に示す風洞試験結果から図中一転鎖線で示すように、図2に示す曲率半径R1,R2については、R1≦10R2/3+20(mm)とすることが好ましいことが確認された。
例えば、この実施形態では、新幹線などの高速化を例に挙げて説明したが、在来線の高速化を図る場合にもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、トロリ線9の断面積が110(mm2)である場合を例に挙げて説明したが、断面積が170(mm2)のトロリ線についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、トロリ線9がPHC材質である場合を例に挙げて説明したが、機械的強度及び耐摩耗性を向上させるために鋼心を入れたCSトロリ線やTAトロリ線などの複合トロリ線についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、コンパウンド式のカテナリちょう架線方式の電車線路にトロリ線9を使用する場合を例に挙げて説明したが、近年新幹線でも使用されているシンプル式のカテナリちょう架線方式の電車線路にトロリ線9を使用することもできる。
2 集電装置
2a すり板
3 架線
8 イヤー
9 トロリ線
9A 下面(トロリ線下面)
9B,9C 側面
9D 上面(トロリ線上面)
9a 摺動部
9b 溝部
9c 平坦部
9d 剥離抑制部
9e 湾曲面(第1の湾曲面)
9f,9g 湾曲面(第2の湾曲面)
C 中心線
O 中立軸
R0〜R2 曲率半径
Claims (2)
- 集電装置のすり板が摺動し電気車に電力を供給するトロリ線であって、
横風を受けたときの上下振動を低減するために、トロリ線上面からの気流の剥離を抑制する剥離抑制部を備え、
前記剥離抑制部は、前記トロリ線上面の中央部に第1の湾曲面を備え、前記トロリ線上面の両肩部に前記第1の湾曲面に連なりこの第1の湾曲面よりも曲率半径の小さい第2の湾曲面を備え、
前記第1の湾曲面の曲率半径がR 1 であり、前記第2の湾曲面の曲率半径がR 2 であるときに、R 1 ≦10R 2 /3+20(mm)であり、
前記集電装置のすり板が摺動するときに発生するトロリ線応力を低減するために、中立軸から前記トロリ線上面までの距離がこの中立軸から前記トロリ線下面までの距離よりも短いこと、
を特徴とするトロリ線。 - 請求項1に記載のトロリ線において、
前記トロリ線の断面積は、113.17 mm2であること、
を特徴とするトロリ線。
Priority Applications (1)
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JP2009147235A JP5283272B2 (ja) | 2009-06-22 | 2009-06-22 | トロリ線 |
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JP7437622B2 (ja) | 2020-03-13 | 2024-02-26 | 株式会社リコー | 走行装置 |
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JPH10250419A (ja) * | 1997-03-17 | 1998-09-22 | Toshiba Corp | 防振性トロリー線 |
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