JP5280562B2 - ウェットマスターバッチの製造方法および該製造方法によって得られるマスターバッチ - Google Patents

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Description

本発明は、ウェットマスターバッチの製造方法に関し、とりわけカーボンブラックを含有するウェットマスターバッチの製造方法に関する。
従来、カーボンブラックを含有するウェットマスターバッチは、一般に、ラテックス状態のゴムにカーボンブラックを入れ、撹拌しながら酸などで凝固させる方法により作製していた。しかしながら、凝固工程で酸などを使用するため、作業上注意を要した。
また、実験的には、溶液重合ゴムに関しても、一度溶媒に溶かし、カーボンブラックを入れて撹拌した状態で、水蒸気を一気に投入し、溶媒を一気に気化させて飛ばすという方法が知られていた。しかしながら、この方法では、多量の溶媒が一気に気化して非常に危険であった。
本発明の目的は、安全にカーボンブラックを含有するウェットマスターバッチを製造することにある。
すなわち、本発明は、ゴムを溶媒に溶解させて溶液を得る工程、該溶液にカーボンブラックを添加して攪拌する工程、および、該溶液を撹拌しながら貧溶媒で処理して再沈させる工程からなるウェットマスターバッチの製造方法に関する。
前記のウェットマスターバッチの製造方法において、貧溶媒はメタノールであることが好ましい。
前記のウェットマスターバッチの製造方法において、ゴム溶液にオイルを所定量より多く配合することが好ましい。
さらに、本発明は、前記の製造方法によって得られるウェットマスターバッチに関する。
本発明のウェットマスターバッチの製造方法によれば、ゴム溶液を貧溶媒で再沈させることによりウェットマスターバッチを得るので、安全にウェットマスターバッチを製造することができる。
再沈工程で、ゴム溶液中のオイルは一部溶出するが、予めゴム溶液中にオイルを所望するよりも多く配合しておくことによって、所望量のオイルを含むウェットマスターバッチを得ることができる。
使用済みのゴムの溶解に用いた溶媒、オイルおよびメタノールなどの貧溶媒は、蒸留などにより簡単に分離することができるので、再利用が可能である。
本発明のウェットマスターバッチの製造方法では、まずゴムを溶媒に溶解して溶液を得る。
ゴムとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムがあげられる。
前記ゴムを溶解させる溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、ヘキサンなどがあげられる。溶媒は、前記ゴム(固形分)100gに対して、1〜5リットルの割合で加えることが好ましい。ゴム100gに対して溶媒が1リットル未満では濃厚溶液となり、つぎに添加するカーボンブラックが分散しない傾向がある。5リットルをこえると以下に述べるゴムの再沈工程で、多量の貧溶媒が必要となる傾向がある。より好ましくは、ゴム100gに対する溶媒量の上限は3リットル、下限は1.5リットルである。
ついで該溶液にカーボンブラックを添加して攪拌する。
カーボンブラックとしては、たとえば、SAF、ISAF−HM、ISAF−LM、ISAF−HS、HAFなどがあげられる。カーボンブラックの添加量は、前記ゴム(固形分)100重量部に対して、20〜150重量部とすることが好ましい。カーボンブラックの配合量が20重量部未満ではウェットマスターバッチを製造することによる性能向上の効果が小さい傾向があり、150重量部をこえるとゴムが硬くなりすぎ、オイルを多量(たとえば、150重量部程度)に含んだとしても、その後の混練りが難しくなる傾向がある。より好ましくは、カーボンブラックの配合量の上限は130重量部、下限は30重量部である。
攪拌は、どのような方法によっても行なうことができる。
つぎに、該溶液を攪拌しながら貧溶媒で処理して再沈させる。前記貧溶媒としては、メタノール、エタノールの炭素数が2以下の低級アルコールなどがあげられる。
前述の工程で得られたカーボンブラックを分散させたゴム溶液を、貧溶媒で処理して再沈させるには、ゴム溶液を攪拌しながら前記貧溶媒に投入する方法、ゴム溶液を攪拌しながら前記貧溶媒を投入する方法が使用できる。このとき、貧溶媒の量は、体積比で、ゴムの溶解に用いた前記溶媒100に対して150〜500とすることが好ましい。貧溶媒の量が150未満では上手く再沈せず、500をこえると無駄に貧溶媒を使用することになる。また、ゴム溶液にオイルを配合した場合には、オイルの抽出量も多くなる傾向がある。
本発明のウェットマスターバッチの製造方法では、貧溶媒で処理する前に、ゴム溶液にオイルを含有させることができる。オイルとしては、たとえば、アロマオイル、ミネラルオイルなどがあげられる。
前記オイルは、貧溶媒で処理する際に、貧溶媒中に溶出しうる。しかし、すべてが溶出するわけではなく、たとえば貧溶媒としてメタノールを用いた場合、約半分が溶出する。そこで、メタノールで処理する場合、処理前のゴム溶液中に、希望するオイル量(所定量)の2倍のオイルを入れておけば、メタノールで処理して再沈させたときには希望のオイル量のウェットマスターバッチを得ることができる。具体的には、貧溶媒としてメタノールを用い、ゴム100重量部に対してオイル量が10〜120重量部のウェットマスターバッチを得る場合、処理前のゴム溶液中のオイル量が、ゴム(固形分)100重量部に対して20〜240重量部となるように、オイルを配合することが好ましい。
さらに、貧溶媒で処理する前に、ゴム溶液に、任意成分としてシリカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの充填剤を含有させることができる。
貧溶媒で処理して得られた再沈物は、真空乾燥などによって溶媒を完全に除去し、マスターバッチとして、その混練り、つまり、使用に応じて、他のゴムや充填剤との混練り、および、加硫剤、加硫助剤、老化防止剤、ワックス、加工助剤などとの混練りに使用することができる。
使用済みのゴムの溶解に用いた溶媒、オイルおよびメタノールなどの貧溶媒は、蒸留などにより分離して、再利用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1〜5
<使用した薬品>
油展溶液重合SBR(油展S−SBR):旭化成工業(株)製のタフデン3330(SBR100重量部に対し、油展量37.5重量部)
非油展溶液重合SBR(非油展S−SBR):日本ゼオン(株)製のニッポールNS116
カーボンブラック:昭和キャボット(株)製のショウブラックN220
アロマオイル:出光興産(株)製のAH−58
<製造方法>
実施例1
油展S−SBR 200gをトルエン3リットルに溶かし、そこにカーボンブラック150gを入れ、撹拌して溶かした。この溶液に5リットルのメタノールを一気に注ぎ、一気にゴムを再沈させた。この再沈物を真空乾燥させ、ウェットマスターバッチを得た。
実施例2
実施例1とまったく同様にしてウェットマスターバッチを作製した。
実施例3
油展S−SBR 200gをトルエン3リットルに溶かし、そこにカーボンブラック150gとアロマオイル54.5gを入れ、攪拌して溶かした。この溶液に5リットルのメタノールを一気に注ぎ、ゴムを再沈させた。この再沈物を真空乾燥させ、ウェットマスターバッチを得た。
実施例4
油展S−SBR 145.5gをトルエン3リットルに溶かし、そこにカーボンブラック150gとアロマオイル109gを入れ、撹拌して溶かした。この溶液に5リットルのメタノールを一気に注ぎ、ゴムを再沈させた。この再沈物を真空乾燥させ、ウェットマスターバッチを得た。
実施例5
非油展S−SBR 145.5gをトルエン3リットルに溶かし、そこにカーボンブラック150gとアロマオイル54.5gを入れ、撹拌して溶かした。この溶液に5リットルのメタノールを一気に注ぎ、ゴムを再沈させた。この再沈物を真空乾燥させ、ウェットマスターバッチを得た。
<試験方法>
各再沈物をアセトン抽出し、抽出液を乾燥させ抽出物の重量を測定し、オイル量とした。
つぎに、抽出後のゴムについてTGA(熱重量測定)を行なった。抽出後のゴムを昇温させてまずゴムを燃焼させ、その重量減少を測定し、ゴム量とした。さらに温度を上げてカーボンブラックを燃焼させ、その重量減少を測定し、カーボンブラック量とした。
<試験結果>
結果を表1に示す。
Figure 0005280562
表1に示すように、オイルはメタノールに溶け出し、得られたウッェットマスターバッチに含まれるオイルの量は、最初に仕込んだ量の約半分となった。このことから、最初にオイルを所望量の約2倍入れておくことにより、ほぼ希望どおりのオイル量のウッェットマスターバッチが得られることがわかる。
また、実施例1および2を比較すると、ゴム溶液を貧溶媒で再沈させる方法により、再現よくウッェットマスターバッチを製造することができることがわかる。

Claims (1)

  1. ゴムを溶媒に溶解させて溶液を得る工程、
    該溶液にカーボンブラックを添加して攪拌する工程、および、
    該溶液を撹拌しながら貧溶媒で処理して再沈させる工程からなるウェットマスターバッチの製造方法であり、
    前記貧溶媒が、炭素数が2以下の低級アルコールである
    ウェットマスターバッチの製造方法によって得られるウェットマスターバッチ。
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