本発明の一実施形態について図1〜図26に基づいて説明すると以下の通りである。
〔実施の形態1〕
(表面プラズモンセンサーの全体構成)
まず、本発明の一実施形態である表面プラズモンセンサー1の全体構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は、表面プラズモンセンサー1の全体構成の概略を示す図である。
表面プラズモンセンサー1は、図1に示すように、光源2と、コリメートレンズ3と、集光レンズ4と、プリズム(誘電体基板)5と、金属層6と、第1レンズ7と、第2レンズ8と、光検出器9と、光源駆動回路10と、算出回路11と、モニター12とを備えている。なお、上記構成の他、本来、A/D変換回路、D/A変換回路、及び各回路を制御するCPU(central processing unit)など(不図示)が必要であるが、本発明の目的とはあまり関係がないので、以下では、このような回路やCPUなどに関する説明は省略する。
本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、試料(検出対象を含む液体または気体)14を接触させた金属層6に対し、光源2から出射された光ビーム13を金属層6の試料14が接触している面とは反対側の面に照射することにより、試料14の屈折率および消衰係数を検出するものである。なお、試料14としては、検出対象を含む液体または気体が挙げられる。なお、以下では、検出対象を含まない液体または気体は、試料とは呼ばないこととする。
光源2は、光ビーム13を出射するものであり、半導体レーザや発光ダイオード等が好適に用いられる。光源2から出射された光ビーム13は、金属層6に照射されることにより、金属層6表面において表面プラズモンを励起する。ここで、光ビーム13が複数の波長を含んでいる場合、各波長における表面プラズモンの励起条件が異なる。そのため、光ビーム13が金属層6によって反射された反射光の入射角依存性が異なり、分析が複雑になってしまう。したがって、光源2の波長領域は、できるだけ狭いことが望ましく、単一波長であることがより好ましい。
また、光源2から出射された光ビーム13の偏光方向は、プリズム5と金属層6との間に形成された界面の法線と、光ビーム13の光軸を含む面とを入射面としたとき、該入射面に対して平行な偏光方向、すなわちp偏光が望ましい。光ビーム13は、偏光方向をp偏光とすることにより、金属層6表面において表面プラズモンを励起することができる。なお、光ビーム13の偏光方向が前記入射面に対して垂直な偏光方向、すなわちs偏光の場合は、光ビーム13は金属層6表面において表面プラズモンを励起することができない。
コリメートレンズ3は、光源2から出射された光ビーム13を平行光に変換するものである。コリメートレンズ3の焦点距離は、短ければ短いほど、光源2から出射された光ビーム13の利用効率が上がる。
集光レンズ4は、光源2から出射された光ビーム13を、金属層6上に集光するものである。コリメートレンズ3によって光源2から出射された光ビーム13を平行光に変換しておくことにより、集光レンズ4は効率よく光ビーム13を金属層6上に集光することができる。また、集光レンズ4は、位置を調整することにより、様々な入射角で光ビーム13を金属層6へ入射することができる。
集光レンズ4としては、全方位を集光する平凸レンズ等のレンズを用いてもよいし、一方向のみ集光するシリンドリカルレンズ等のレンズを用いてもよい。集光レンズ4として全方位を集光するレンズを用いた場合は、金属層6への入射角が複雑となるが、照射面積を小さくすることができる。そのため、全方位を集光するレンズを用いた表面プラズモンセンサー1は、試料14の局所的な情報を得ることが可能となる。
また、集光レンズ4として一方向のみ集光するレンズを用いた場合は、集光しない方向は元のビームサイズのままであるため、金属層6への入射角は集光した方向にのみ依存する。そのため、一方向のみを集光するレンズを用いた表面プラズモンセンサー1は、試料14の解析が容易となるとともに、光ビーム13の照射面積を大きくできるため、試料14の全体的な情報を得ることができる。
金属層6への入射角の角度範囲は、集光レンズ4の開口数で決まるが、金属層6上で表面プラズモンが励起される角度が含まれるように決定する必要がある。さらに、金属層6への入射角の範囲を、全ての光ビーム13が全反射するような範囲にすることも好ましい。なお、コリメートレンズ3および集光レンズ4は、それぞれ一度平行光にしてから集光する構成にしているが、有限系のレンズ1つで代用してもよい。
プリズム5は、透光性を有する誘電体基板であり、光源2から出射された光ビーム13を通過させることにより、任意の入射角で光ビーム13を金属層6に照射し、金属層6表面に表面プラズモンを励起するものである。プリズム5を構成する材料としては、光源2の波長を透過でき、金属層6上に表面プラズモンを励起できる材料であれば特に限定されないが、ガラスや樹脂等が好適に用いられる。光源2から出射された光ビーム13の波長が赤外の場合は、プリズム5を構成する材料としてシリコンを用いてもよい。
金属層6表面に表面プラズモンを効率よく励起するためには、光ビーム13を入射角が約45度で金属層6に照射することが望ましい。しかしながら、光ビーム13をプリズム5ではなく平行基板を介して、約45度の入射角で金属層6に入射させることは困難である。そのため、本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、プリズム5を用いることにより、金属層6に入射角約45度で光ビーム13を照射している。
プリズム5としては、図1においては三角プリズムが用いられているが、台形、楔形、半円柱型、および半球型プリズム等も好適に用いられる。例えば、プリズム5として半円柱型や半球型プリズムを用いた場合は、半円柱および半球の中心に向かって光ビーム13を入射すると、プリズムの入射面への入射角がほぼ直角であるために、該入射面における反射率が小さくなり、光の利用効率が高くなる。
また、プリズム5として三角プリズムを用いた場合は、入射面での屈折により、プリズムへの入射角と金属層6への入射角とが異なるが、半円柱型プリズムに比べ安価であるために、一般的に利用されている。プリズム5は、上述した構成に限られず、金属層6に適切な角度で入射できればよいため、他の形状でもよいし、導波路でもよい。
金属層6は、光源2から照射された光ビーム13により、表面プラズモンを発生させるものであり、互いに膜厚の異なる第1金属膜6aおよび第2金属膜6bから構成されている。表面プラズモンセンサー1では、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bを備えることにより、試料14の屈折率および消衰係数を算出することができる。なお、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚の選定方法および試料14の屈折率および消衰係数を算出方法については、後述するのでここでは説明は省略する。
金属層6は、スパッタや蒸着等により形成することができ、プリズム5の所定の一面上に直接形成されていてもよいし、プリズム5と同程度の屈折率を有した誘電体基板上に形成し、前記誘電体基板の金属層6が形成されている側とは反対側の面をプリズム5の所定の一面上にインデックスマッチング剤を挟んでのせてもよい。前記インデックスマッチング剤としては、市販されている液体やジェル等を用いてもよいし、UV硬化樹脂を用いてもよい。ただし、金属層6が形成された前記誘電体基板が傾くと、入射角の誤差が生じるため、該誘電体基板をプリズム5上に安定して固定可能なインデックスマッチング剤を用いる必要がある。また、前記誘電体基板またはプリズム5との密着性の向上や、金属層6の面精度を上げるために、前記誘電体基板またはプリズム5と金属層6との間に下地層を設けてもよい。
また、金属層6が形成された前記誘電体基板をプリズム5に対して着脱可能にしておくことにより、検出対象に応じて金属膜を誘電体基板ごと取り替えることが可能となる。これにより、1つの装置を用いて、多種の試料14の検出を行うことが可能となる。すなわち、他の材料から構成されており、かつ、他の膜厚を有する金属層6が形成された誘電体基板と取り替えることにより、表面プラズモンセンサー1の感度や測定範囲等を変えることができる。
なお、プリズム5の所定の一面上とは、プリズム5が図1に示す三角プリズムの場合は三角形の底辺を含む面であり、プリズム5が半円柱型または半球型プリズムの場合は半円柱または半球型の中心を含む面であり、プリズム5によって光ビーム13を入射角約45度で金属層6に入射可能な面である。
また、金属層6表面にさらに特定の分子を吸着できる吸着層を設け、試料14中の特定の分子を検出する構成としてもよい。試料14には、検出対象以外の物質が混入している可能性がある。その場合、表面プラズモンセンサー1によって試料14の屈折率を検出すると、前記検出対象および前記物質が含まれた濃度が検出されてしまう。そこで、金属層6に前記吸着層を設けることにより、検出対象のみを吸着することができ、該検出対象のみの屈折率および消衰係数を知ることが可能となる。
金属層6を構成する材料としては、表面プラズモンを励起可能な金属または合金であればよく、例えば、銀、銅、アルミニウム、白金、金等が好適に用いられる。金属層6は、試料14に直接接触するために、試料14によって化学反応を起こさない安定した金属から構成されていることが望ましい。
上述した金属のうち、金は、非常に安定した金属であり、錆びないために耐久性が高く、さらに、表面プラズモンを効率よく励起する。そのため、表面プラズモンセンサー1の金属膜として、金は最も好適に用いられる。金属層6として金を用いることにより、試料14によって化学反応を起こさず、高い分解能で屈折率を検出することができるとともに、金属膜の酸化による経時劣化を防ぐことができる。
なお、金には不純物が含まれていてもよいが、一般に不純物濃度が高くなると、反射率のdipが広くなり、検出分解能を下げることになるため、金の純度は高い方が好ましい。
金属層6が金から構成されている場合、金属層6上に表面プラズモンを励起するためには、約600nm〜約1550nmの波長の光ビーム13を金属層6に照射することが望ましい。光源2から約600nm〜約1550nmの波長の光ビーム13を金から構成された金属層6に照射することにより、表面プラズモンの励起効率が高まり、高い分解能で試料14の屈折率を検出することができる。
また、金属層6の膜厚は、非特許文献1に示すように、主に4つの要素、すなわちプリズム5、金属層6および試料14の検出対象を含まない状態の屈折率および消衰係数と光源2の波長とにより、表面プラズモンを励起するための膜厚dが決定され、通常、数10nm程度である。ただし、本発明においては、金属層6は互いに膜厚が異なる金属膜からなることが特徴であり、この詳細については後述する。
また、表面プラズモンセンサー1では、各金属膜間に形成された境界線は、光ビームの入射角を変化させて複数の測定を行なう場合に、光ビームの入射角の変化が最も大きくなる方向に対して平行となるように構成されていることが好ましい。
光ビームを金属膜に照射する際、互いに膜厚が異なる金属膜の各金属膜に順番に照射してもよいが、互いに膜厚が異なる金属膜に同時に照射すると、測定時間が短くなる。この際、前記各金属膜間に形成された境界線は、光ビームの入射角を変化させて複数の測定を行なう場合に、光ビームの入射角の変化が最も大きくなる方向に対して平行となるように構成されているので、それぞれの金属膜に対して、最も測定範囲が広くなるようにすることができる。
第1レンズ7および第2レンズ8は、プリズム5と金属層6との間に形成された界面において反射した光ビーム13を、光検出器9へ集光させて入射させるためのものである。第1レンズ7および第2レンズ8は、前記界面からの反射光を一度平行光にしてから光検出器9に集光する構成であるが、本発明はこれに限られず、1つの有限系のレンズを用いてもかまわない。
光検出器9は、プリズム5と金属層6との間に形成された界面において光ビーム13が反射した反射光強度を検出するものである。光検出器9としては、CCD(charge-coupled device)若しくはCMOS(complementary metal-oxide semiconductor)、またはアレイ状検出器を用いることにより、反射光を一度に取り込むことが好ましい。特に、光検出器9としてCCDまたはCMOSを用いれば、光ビーム13のどの光線を測定に用いるかを選択することができる。
光源駆動回路10は、光源2を駆動するものであり、図示しない電源から電圧の供給を受けて光源2に電流を流すことにより、光源2を駆動する。なお、光源2の破壊を防ぐために、光源駆動回路10には光源2に流す電流値に上限値を設けておくことが好ましい。
算出回路11は、光検出器9の検出結果から試料14の屈折率および消衰係数を算出するものである。具体的には、算出回路11は、光検出器9で検出された光ビーム13の反射光強度から、光ビーム13の金属層6への入射角θminを算出する。そして、算出回路11は、予め入力された入射角θminと屈折率および消衰係数との関係から、算出された前記入射角θminに対応する屈折率および消衰係数を算出する。
また、算出回路11は、表面プラズモンセンサー1による検出結果を記憶する記憶部を備えていてもよい。算出回路11としては、LSI(large-scale integration)やIC(integrated circuit)などの半導体チップや、これらを複合化したコンピュータ等が好適に用いられる。
モニター12は、算出回路11に記憶された測定結果や、該測定結果から算出した正確な屈折率および消衰係数の種々の結果を表示するものである。
モニター12としては、例えば、CRT(cathode-ray tube)や液晶ディスプレイ等が好適に用いられる。
次に、本実施形態の表面プラズモンセンサー1を用いて、試料14の屈折率および消衰係数を検出する方法について図1〜図3を参照して説明する。図2は、表面プラズモンセンサー1の金属層6に対する試料14の接触方法の一例を示す図である。図3は、表面プラズモンセンサー1の金属層6に対する試料14の接触方法の他の一例を示す図である。なお、試料14は、表面プラズモンセンサー1によって屈折率を検出する対象であり、検出対象を含んだ液体または気体である。
まず、本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、試料14の屈折率の検出を行うために、試料14を金属層6表面に接触させる。例えば、試料14として液体を用いた場合には、図2に示すように、金属層6のプリズム5が設けられている側とは反対側の面に液滴として接触させる。また、例えば、試料14として液体または気体を用いた場合には、図3に示すように、金属層6表面に設けられたマイクロ流路15に液体または気体を流して接触させる。試料14を金属層6表面に接触させる方法としては、上述した方法に限られず、試料14が金属層6表面に接触可能な構成であれば構わない。
そして、試料14を金属層6表面に接触させた後、図1に示すように、光源2から光ビーム13が出射される。そして、光ビーム13は、コリメートレンズ3によって平行光に変換され、集光レンズ4によって様々な入射角で、プリズム5を介してプリズム5と金属層6との間に形成された界面に対して金属層6にp偏光で照射される。そして、光ビーム13は、金属層6で反射され、その反射光は第1レンズ7および第2レンズ8を介して光検出器9へ集光される。そして、光検出器9へ集光された反射光の反射光強度の入射角依存性の測定を行い、モニター12に表示する。なお、本願では、金属層6は、少なくとも2つの金属膜からなるため、反射光の分析は、それぞれの金属膜に分けて行われる。
さらに算出回路11は、光検出器9で検出された光ビーム13の反射光強度から、それぞれの金属膜における入射角θminを算出する。そして、予め入力された入射角θminと屈折率および消衰係数との関係から、算出された入射角θminに対応する試料14の屈折率および消衰係数を算出する。さらに、算出回路11は、予め屈折率または消衰係数と濃度との関係を入力しておくことにより、算出された前記屈折率に対応する試料14の濃度を算出することもできる。
(第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚の選定)
上述したように、表面プラズモンセンサー1では、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bは、互いに膜厚が異なっており、プリズム5の所定の一面上に隣接して形成されている。表面プラズモンセンサー1では、前記構成により、試料14の屈折率および消衰係数を算出することができる。まず、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bを備えることにより、試料14の屈折率および消衰係数を算出する方法について以下に説明する。
光ビーム13の第1金属膜6aおよび第2金属膜6bに対する反射率の最小値Rminおよび反射率Rminにおける光ビーム13の第1金属膜6aおよび第2金属膜6bに対する入射角θminは、試料14の屈折率および消衰係数に依存して変化する。さらに、入射角θminの試料14の屈折率および消衰係数への依存性は、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚よって変化する。
そのため、光源2から出射された光ビーム13を、試料14を接触させた第1金属膜6aおよび第2金属膜6bに照射することにより、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bにおける入射角θminを測定することができる。
ここで、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bにおける入射角θminと、屈折率および消衰係数との関係を予め調べておくことにより、試料14の屈折率および消衰係数を算出することができる。
なお、金属層への入射角と、屈折率および消衰係数との関係は、フレネルの式から導出できる。ここでは、図27に基づき、多層膜における反射率を、転送行列法を使って導く方法について説明する(非特許文献3参照)。
図27に示すように、N層の多層膜へ、媒質0から媒質N+1へ向かってp偏光の光が入射した場合を考える。多層膜の入射側からj番目の膜に対する転送行列は、膜厚dj、この膜への入射角θj、ならびにj番目の膜の屈折率njおよび消衰係数kjを纏めた、
ここで、入射空間である媒質0における電場および磁場の大きさである、
と書ける。
これにより、入射角、試料14の屈折率および消衰係数、反射率の関係がわかる。したがって、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bのそれぞれが、試料14の屈折率および消衰係数が変化したときに、入射角θminがどのような依存性を持つかをあらかじめ調べておくことができる。屈折率および消衰係数が未知の試料14を測定したときは、これらの結果を理論式に代入して解いてもよいし、後に、説明する図5〜7などのようなグラフをあらかじめ計算しておき、ここから求めてもよい。
なお、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚は、反射率Rminおよび入射角θminを測定するために、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bに照射された光ビーム13の少なくとも一部を表面プラズモンに変換可能に設定されている必要がある。
次に、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚の選定方法について、図4〜図16を参照して説明する。第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚は、上述したように、4つの要素、すなわち、プリズム5、金属層6、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率、および光源2の波長により、種々の膜厚を選択することができる。以下に、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚の選定に用いられる前記各要素の取り得る値について、代表的な例を説明する。
プリズム5の屈折率としては、一般にプリズムに用いられる石英の屈折率1.46と、高屈折率な屈折率2.0とを用いる。なお、プリズム5の材料としては、石英だけでなくガラスも好適に用いられるが、一般的なガラスの屈折率は約1.5であり、石英の場合とほぼ同様の結果となる。
第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの屈折率は、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bを構成する材料に依存しており、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bを構成する材料は、上述したように種々の材料が考えられる。ただし、以下の説明においては、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの材料としてAu(金)を用いる。
試料14の検出対象を含まない状態の屈折率としては、試料14が検出対象を含む液体である場合と、検出対象を含む気体である場合が考えられる。そのため、試料14が検出対象を含む液体である場合、検出対象を水に溶かして濃度を測定することを想定し、検出対象を溶かす前の溶媒、すなわち水の屈折率1.33を用いる。また、試料14が検出対象を含む気体である場合、検出対象を空気または真空中に溶かして濃度を想定することを想定し、検出対象を溶かす前の屈折率1.0を用いる。
第1金属膜6aおよび第2金属膜6bを構成する材料をAuとした場合、光源2の波長としては、第1金属膜6aおよび第2金属膜6b上に表面プラズモンを励起するのに適した赤色から赤外域が用いられる。具体的に、以下の説明においては、半導体レーザの波長635nm、780nm、YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)レーザの波長1054nmを用いる。
以下に、前記4つの要素を組み合わせた場合における第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚の選定について第1実施例〜第3実施例を挙げて説明する。ただし、プリズム5を石英、試料14を液体とすると、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bにおいて表面プラズモンをほとんど励起することができないため、この構成は除外した。
〔第1実施例〕
まず、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚の選定の第1実施例について図4〜7を参照して説明する。本実施例では、前記4つの要素として、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、および1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を選択した場合における第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚の選定について説明する。
まず、前記4つの要素で消衰係数を0とした場合の光源2の各波長における、光ビーム13の第1金属膜6aおよび第2金属膜6bに対する入射角と反射率との関係について図4を参照して説明する。図4は、前記4つの要素で消衰係数を0とした場合における、光源2から出射された各波長635nm、780nm、および1054nmの光ビーム13の金属層6に対する入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。なお、図中の点線は光ビーム13の波長635nmを、破線は光ビームの波長780nmを、実線は光ビームの波長1054nmを示している。
また、光源2から出射された光ビーム13の各波長における金属層6の膜厚は、反射率の最小値Rminが0に近くなるように、光ビーム13の波長が635nmの場合は金属層6の膜厚を50nm、光ビーム13の波長が780nmの場合は金属層6の膜厚を45nm、光ビーム13の波長が1054nmの場合は金属層6の膜厚を35nmとしている。
光ビーム13の各波長における反射率が落ちるdipの半値全幅は、図4に示すように、光ビーム13の波長が635nmのとき約3.4度、光ビーム13の波長が780nmのとき約0.8度、光ビーム13の波長が1054nmのとき約0.5度であることが分かる。
ここで、「dipの半値全幅」とは、入射角と反射率との対応関係において反射率が、表面プラズモン共鳴により、所定の入射角で急激に低下して極小値をとる場合の、該極小値近傍の該反射率に対する入射角の半値全幅のことである。
次に、試料14の光吸収を考慮し、消衰係数を0から増加させた場合において、光源2の各波長における金属層6の膜厚の選定について説明する。
〔波長635nm〕
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、Au膜の膜厚を30nm、35nm、および50nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図5(a)および図5(b)を参照して説明する。図5(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示した図(グラフ)であり、図5(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示した図(グラフ)である。なお、点線が膜厚30nm、破線が膜厚35nm、実線が膜厚50nmを示す。
Au膜の膜厚が光ビーム13の波長635nmの膜厚dである50nmの場合、図5(a)に示すように、消衰係数が0から0.09まで増加するに伴い、入射角θminが約0.7度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約3.4度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.344として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図5(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
また、Au膜の膜厚が35nmの場合、図5(a)に示すように、消衰係数が0から0.09まで増加するに伴い、入射角θminが約0.4度増加する。これは、上述したdipの半値全幅(約3.4度)の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、反射率Rminの値も、図5(b)に示すように、50nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
また、Au膜の膜厚が30nmの場合、図5(a)および図5(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである50nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
以上のことから、光ビーム13の波長が635nmの場合、Au膜の膜厚を膜厚dである50nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.05の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、Au膜の膜厚を35nm、すなわち前記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、Au膜の膜厚を30nmまで薄くしてしまうと、Au膜の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
したがって、光ビーム13の波長が635nmの場合におけるAu膜の膜厚は、Au膜の膜厚dに対して、0nmを超え、かつ約20nm以下の範囲内で薄くすることにより、光ビーム13のAu膜に対する入射角θminおよび反射率Rminは、Au膜の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
すなわち、光ビーム13の波長が635nmの場合、第1金属膜6aの膜厚を膜厚dとし、第2金属膜6bの膜厚を膜厚dよりも0nmを超え、かつ約20nm以下の範囲内で薄くすることにより、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bから屈折率と消衰係数とをそれぞれ算出することができる。
〔波長780nm〕
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、金属層6の膜厚を30nm、35nm、および45nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図6を参照して説明する。図6(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示した図(グラフ)であり、図6(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示した図(グラフ)である。なお、点線が膜厚30nmの場合、破線が膜厚35nmの場合、実線が膜厚45nmの場合を示す。
金属層6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである45nmの場合、図6(a)に示すように、消衰係数が0から0.025まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.16度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.8度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.334として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図6(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
また、金属層6の膜厚が35nmの場合、図6(a)に示すように、消衰係数が0から0.025まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.08度増加する。これは、上述したdip(約0.8度)の半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。反射率Rminの値も、図5(b)に示すように、45nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
また、金属層6の膜厚が30nmの場合、図6(a)および図6(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである45nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
以上のことから、光ビーム13の波長が780nmの場合、金属層6の膜厚を膜厚dである45nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.018の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属層6の膜厚を35nm、すなわち前記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属層6の膜厚を30nmまで薄くしてしまうと、金属層6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
したがって、光ビーム13の波長が780nmの場合における金属層6の膜厚は、金属層6の膜厚dに対して、0nmを超え、かつ約15nm以下の範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属層6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属層6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
〔波長1054nm〕
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、金属層6の膜厚を22.5nm、25nm、および35nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図7を参照して説明する。図7(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示した図(グラフ)であり、図7(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示した図(グラフ)である。なお、点線が膜厚22.5nmの場合、破線が膜厚25nmの場合、実線が膜厚35nmの場合を示す。
金属層6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである35nmの場合、図7(a)に示すように、消衰係数が0から0.02まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.09度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.5度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.332として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図7(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
また、金属層6の膜厚が25nmの場合、消衰係数が0から0.02まで増えたときの入射角θminの増加分は約0.05度である。これは、dipの半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、消衰係数が増えたときの反射率Rminも、35nmの場合に比べて半分以下の変動に抑えられている。
また、金属層6の膜厚が22.5nmの場合、図7(a)および図7(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである35nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
以上のことから、光ビーム13の波長が1054nmの場合、金属層6の膜厚を膜厚dである35nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.012の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属層6の膜厚を25nm、すなわち前記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属層6の膜厚を22.5nmまで薄くしてしまうと、金属層6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
したがって、光ビーム13の波長が1054nmの場合における金属層6の膜厚は、金属層6の膜厚dに対して、0nmを超え、かつ約12.5nm以下の範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属層6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属層6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
〔第2実施例〕
次に、金属層6の膜厚の選定の第2実施例について図8〜11を参照して説明する。本実施例では、前記4つの要素として、金属層6の材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、および1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.0を選択した場合における金属層6の膜厚の選定について説明する。
まず、前記4つの要素で消衰係数を0とした場合の光源2の各波長における、光ビーム13の金属層6に対する入射角と反射率との関係について図8を参照して説明する。図8は、前記4つの要素で消衰係数を0とした場合における、光源2から出射された各波長635nm、780nm、および1054nmの光ビーム13の金属層6に対する入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。なお、図中の点線は光ビーム13の波長635nmを、破線は光ビームの波長780nmを、実線は光ビームの波長1054nmを示している。
また、光源2から出射された光ビーム13の各波長における金属層6の膜厚は、反射率の最小値Rminが0に近くなるように、光ビーム13の波長が635nmの場合は金属層6の膜厚を50nm、光ビーム13の波長が780nmの場合は金属層6の膜厚を45nm、光ビーム13の波長が1054nmの場合は金属層6の膜厚を40nmとしている。
光ビーム13の各波長における反射率が落ちるdipの半値全幅は、図8に示すように、光ビーム13の波長が635nmのとき約1.2度、光ビーム13の波長が780nmのとき約0.3度、光ビーム13の波長が1054nmのとき約0.12度であることが分かる。
次に、試料14の光吸収を考慮し、消衰係数を0から増加させた場合において、光源2の各波長における金属層6の膜厚の選定について説明する。
〔波長635nm〕
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、金属層6の膜厚を33.5nm、40nm、50nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図9(a)および図9(b)を参照して説明する。図9(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示した図(グラフ)であり、図9(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示した図(グラフ)である。なお、点線が膜厚33.5nm、破線が膜厚40nm、実線が膜厚50nmを示す。
金属層6の膜厚が光ビーム13の波長635nmの膜厚dである50nmの場合、図9(a)に示すように、消衰係数が0から0.035まで増加するに伴い、入射角θminが約0.2度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約1.2度)の1/6程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.003として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図9(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
また、金属層6の膜厚が40nmの場合、図9(a)に示すように、消衰係数が0から0.035まで増加するに伴い、入射角θminが約0.13度増加する。これは、上述したdipの半値全幅(約1.2度)の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、反射率Rminの値も、図9(b)に示すように、50nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
また、金属層6の膜厚が33.5nmの場合、図9(a)および図9(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである50nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
以上のことから、光ビーム13の波長が635nmの場合、金属層6の膜厚を膜厚dである50nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.024の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属層6の膜厚を40nm、すなわち前記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属層6の膜厚を33.5nmまで薄くしてしまうと、金属層6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
したがって、光ビーム13の波長が635nmの場合における金属層6の膜厚は、金属層6の膜厚dに対して、0nmを超え、かつ約16.5nm以下の範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属層6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属層6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
〔波長780nm〕
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、金属層6の膜厚を26.5nm、30nm、45nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図10を参照して説明する。図10(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示した図(グラフ)であり、図10(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示した図(グラフ)である。なお、点線が膜厚26.5nmの場合、破線が膜厚30nmの場合、実線が膜厚45nmの場合を示す。
金属層6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである45nmの場合、図10(a)に示すように、消衰係数が0から0.018まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.07度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.3度)の1/3程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.002として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図10(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
また、金属層6の膜厚が30nmの場合、図10(a)に示すように、消衰係数が0から0.018まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.04度増加する。これは、上述したdip(約0.3度)の半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。反射率Rminの値も、図10(b)に示すように、45nmの場合に比べて1/3程度の変動に抑えられている。
また、金属層6の膜厚が26.5nmの場合、図10(a)および図10(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである45nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
以上のことから、光ビーム13の波長が780nmの場合、金属層6の膜厚を膜厚dである45nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.01の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属層6の膜厚を30nm、すなわち前記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属層6の膜厚を26.5nmまで薄くしてしまうと、金属層6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
したがって、光ビーム13の波長が780nmの場合における金属層6の膜厚は、金属層6の膜厚dに対して、0nmを超え、かつ約18.5nm以下の範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属層6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属層6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
〔波長1054nm〕
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、金属層6の膜厚を22nm、25nm、40nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図11を参照して説明する。図11(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示した図(グラフ)であり、図11(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示した図(グラフ)である。なお、点線が膜厚22nmの場合、破線が膜厚25nmの場合、実線が膜厚40nmの場合を示す。
金属層6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである40nmの場合、図11(a)に示すように、消衰係数が0から0.007まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.03度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.12度)の1/4程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.001として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図11(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
また、金属層6の膜厚が25nmの場合、消衰係数が0から0.007まで増えたときの入射角θminの増加分は約0.015度である。これは、dipの半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、消衰係数が増えたときの反射率Rminも、35nmの場合に比べて1/3程度の変動に抑えられている。
また、金属層6の膜厚が22nmの場合、図11(a)および図11(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである40nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
以上のことから、光ビーム13の波長が1054nmの場合、金属層6の膜厚を膜厚dである40nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.003の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属層6の膜厚を25nm、すなわち前記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属層6の膜厚を22nmまで薄くしてしまうと、金属層6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
したがって、光ビーム13の波長が1054nmの場合における金属層6の膜厚は、金属層6の膜厚dに対して、0nmを超え、かつ約18nm以下の範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属層6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属層6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
〔第3実施例〕
次に、金属層6の膜厚の選定の第3実施例について図12〜15を参照して説明する。本実施例では、前記4つの要素として、金属層6の材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として1.46を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.0を選択した場合における金属層6の膜厚の選定について説明する。
まず、前記4つの要素で消衰係数を0とした場合の光源2の各波長における、光ビーム13の金属層6に対する入射角と反射率との関係について図12を参照して説明する。図12は、前記4つの要素で消衰係数を0とした場合における、光源2から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビーム13の金属層6に対する入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。なお、図中の点線は光ビーム13の波長635nmを、破線は光ビームの波長780nmを、実線は光ビームの波長1054nmを示している。
また、光源2から出射された光ビーム13の各波長における金属層6の膜厚は、反射率の最小値Rminが0に近くなるように、光ビーム13の波長が635nmの場合は金属層6の膜厚を50nm、光ビーム13の波長が780nmの場合は金属層6の膜厚を45nm、光ビーム13の波長が1054nmの場合は金属層6の膜厚を40nmとしている。
光ビーム13の各波長における反射率が落ちるdipの半値全幅は、図12に示すように、光ビーム13の波長が635nmのとき約2.1度、光ビーム13の波長が780nmのとき約0.4度、光ビーム13の波長が1054nmのとき約0.18度であることが分かる。
次に、試料14の光吸収を考慮し、消衰係数を0から増加させた場合において、光源2の各波長における金属層6の膜厚の選定について説明する。
〔波長635nm〕
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、金属層6の膜厚を33nm、40nm、50nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図13(a)および図13(b)を参照して説明する。図13(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示した図(グラフ)であり、図13(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示した図(グラフ)である。なお、点線が膜厚33nm、破線が膜厚40nm、実線が膜厚50nmを示す。
金属層6の膜厚が光ビーム13の波長635nmの膜厚dである50nmの場合、図13(a)に示すように、消衰係数が0から0.032まで増加するに伴い、入射角θminが約0.33度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約2.1度)の1/6程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.005として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図13(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
また、金属層6の膜厚が40nmの場合、図13(a)に示すように、消衰係数が0から0.032まで増加するに伴い、入射角θminが約0.2度増加する。これは、上述したdipの半値全幅(約2.1度)の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、反射率Rminの値も、図13(b)に示すように、50nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
また、金属層6の膜厚が33nmの場合、図13(a)および図13(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである50nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
以上のことから、光ビーム13の波長が635nmの場合、金属層6の膜厚を膜厚dである50nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.024の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属層6の膜厚を40nm、すなわち前記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属層6の膜厚を33nmまで薄くしてしまうと、金属層6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
したがって、光ビーム13の波長が635nmの場合における金属層6の膜厚は、金属層6の膜厚dに対して、0nmを超え、かつ約17nm以下の範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属層6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属層6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
〔波長780nm〕
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、金属層6の膜厚を27nm、30nm、45nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図14を参照して説明する。図14(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示した図(グラフ)であり、図14(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示した図(グラフ)である。なお、点線が膜厚27nmの場合、破線が膜厚30nmの場合、実線が膜厚45nmの場合を示す。
金属層6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである45nmの場合、図14(a)に示すように、消衰係数が0から0.015まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.08度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.4度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.0015として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図14(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
また、金属層6の膜厚が30nmの場合、図14(a)に示すように、消衰係数が0から0.015まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.04度増加する。これは、上述したdip(約0.4度)の半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。反射率Rminの値も、図14(b)に示すように、45nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
また、金属層6の膜厚が27nmの場合、図14(a)および図14(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである45nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
以上のことから、光ビーム13の波長が780nmの場合、金属層6の膜厚を膜厚dである45nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.008の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属層6の膜厚を30nm、すなわち前記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属層6の膜厚を27nmまで薄くしてしまうと、金属層6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
したがって、光ビーム13の波長が780nmの場合における金属層6の膜厚は、金属層6の膜厚dに対して、0nmを超え、かつ約18nm以下の範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属層6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属層6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
〔波長1054nm〕
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、金属層6の膜厚を21nm、25nm、40nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図15を参照して説明する。図15(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示した図(グラフ)であり、図15(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示した図(グラフ)である。なお、点線が膜厚21nmの場合、破線が膜厚25nmの場合、実線が膜厚40nmの場合を示す。
金属層6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである40nmの場合、図15(a)に示すように、消衰係数が0から0.007まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.05度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.18度)の1/4程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.001として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図15(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
また、金属層6の膜厚が25nmの場合、消衰係数が0から0.007まで増えたときの入射角θminの増加分は約0.02度である。これは、dipの半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、消衰係数が増えたときの反射率Rminも、40nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
また、金属層6の膜厚が21nmの場合、図15(a)および図15(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである40nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
以上のことから、光ビーム13の波長が1054nmの場合、金属層6の膜厚を膜厚dである40nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.003の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属層6の膜厚を25nm、すなわち前記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属層6の膜厚を21nmまで薄くしてしまうと、金属層6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
したがって、光ビーム13の波長が1054nmの場合における金属層6の膜厚は、金属層6の膜厚dに対して、0nmを超え、かつ約19nm以下の範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属層6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属層6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
前記第1実施例〜前記第3実施例に示したように、金属層6の膜厚を膜厚d、すなわち、消衰係数が0の状態で表面プラズモン共鳴を起こす膜厚とした場合は、消衰係数が0のときに入射角θminおよび反射率Rminが最小値となる。すなわち、入射角θminおよび反射率Rminは、消衰係数が0のとき最小値となり、消衰係数の増加に伴い単調増加していく。そのため、入射角θminおよび反射率Rminの変化を所定の範囲内に抑えるためには、狭い範囲の消衰係数の検出対象しか測定できないという不具合が生じる。
そこで、表面プラズモンセンサー1では、金属層6の膜厚を膜厚dよりも薄くすることにより、所定の消衰係数の値で入射角θminおよび反射率Rminを最小とすることができる。すなわち、入射角θminおよび反射率Rminは、消衰係数が0から所定値までで一度減少し、所定値以降で増加していく。そのため、金属層6の膜厚を膜厚dとする場合と比較して、入射角θminおよび反射率Rminの変化を半分程度にすることができる。
このとき、金属層6の膜厚の下限値は、入射角θminが金属層6の膜厚を膜厚dとした場合の入射角θminと同じになる膜厚である。すなわち、上述した本発明の効果は、金属層6の膜厚を下限値から膜厚dまでの範囲内とすることにより、得ることができる。金属層6の膜厚の選定方法における前記第1実施例〜前記第3実施例の結果に基づいて、金属層6の膜厚d、推奨膜厚、下限値を下記表にまとめる。(単位はすべてnm)
前記表1から、金属層6の膜厚が膜厚dより約20nm薄い膜厚から膜厚dまでの範囲内であれば、本発明の効果を得られることが分かる。このように、金属層6の膜厚と膜厚dとの差を約20nm以下にすることにより、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を、膜厚dの場合よりも抑えることができる。また、反射率Rminの変動も、膜厚dの場合よりも抑えることができるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
また、金属層6の膜厚を膜厚dより10nm〜15nmの範囲で薄くすることにより、推奨値の範囲となることが分かる。これにより、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を十分に小さく、例えばdipの1/10程度にまで抑えること可能である。そのため、試料14の正確な屈折率が検出可能な、検出対象の消衰係数の範囲を最大限にすることができる。また、この消衰係数の範囲における反射率Rminの変動も、金属層6の膜厚を膜厚dとした場合と比較して、半分以下に抑えられるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
したがって、金属層6の膜厚を膜厚dより薄い膜厚とすることにより、試料14に吸収がある場合でも、入射角θminの変化は試料14の屈折率のみに依存する。そのため、算出回路11は、予め入力された入射角θminと試料14の屈折率との関係から、入射角θminに対応した正確な屈折率、さらには濃度を算出することができる。
ここで、入射角θminと、反射率Rminと、屈折率との関係について図16を参照して説明する。図16(a)は金属層6の材料としてAuを、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、入射角θminと試料14の屈折率との関係をプロットした図(グラフ)であり、図16(b)は金属層6の材料としてAuを、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、反射率Rminと試料14の屈折率との関係をプロットした図(グラフ)である。
図16(a)のグラフから、入射角θminと試料14の屈折率との関係はほぼ線形であることが分かる。また、金属層6の材料、プリズム5の屈折率および試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として他の組合せを用いた場合であっても、図16(a)に示したグラフと同様に線形となる。したがって、算出回路11は、入射角θminと試料14の屈折率との関係を予め計算しておくことにより、線形近似することによって、非常に単純な計算で入射角θminから試料14の屈折率を算出することができる。また、試料14の屈折率と濃度との関係もほぼ線形であるために、入射角θminと屈折率との関係と同様に、単純な計算で濃度も算出することが可能である。
また、図16(b)のグラフから、試料14の屈折率は反射率Rminに依存していないことが分かる。そのため、試料14の屈折率は、入射角θminのみに基づいて算出することができる。
なお、試料14の屈折率の検出における誤差をさらに少なくするためには、金属層6の膜厚を試料14の消衰係数の範囲に応じて選択することが望ましい。具体的には、試料14の消衰係数が前記第1実施例〜前記第3実施例において述べた範囲よりも小さい場合には、より膜厚dに近い膜厚とする。
また、前記説明においては、入射角θminの変化がdipの半値全幅の1/10程度であれば、検出できない範囲の角度シフトであると説明したが、表面プラズモンセンサー1の検出感度が高くなるに伴い、金属層6の膜厚を膜厚dにより近い膜厚にすることが望ましい。
また、金属層6の膜厚の選定方法における前記第1実施例〜前記第3実施例では、金属層6の材料としてAuを用いて説明しているが、本発明の原理は金属層6がAuから構成されている場合に限られず、金属層6が他の材料から構成されている場合であっても適用することができる。また、プリズム5および試料14についても、金属層6と同様であり、プリズム5および試料14が上述した材料以外から構成されていたとしても、本発明の原理を適用することが可能である。
また、試料14である、検出対象を含まない液体または気体自体にもともと吸収がある場合でも、検出対象に吸収があり、該検出対象を含む液体または気体の濃度を濃くしたときに試料14の消衰係数が増加すれば、本発明の原理と同様である。
なお、金属層6が、膜厚dより薄い金属膜と、膜厚dに等しい金属膜との組合せから構成される場合、光の吸収がある試料を測定する場合においても、より正確な屈折率及びより正確な消衰係数を算出することが可能となる。なぜなら、膜厚dより薄い金属膜での測定結果を用いれば、消衰係数の影響を抑制して正確な屈折率を算出することができ、さらに、膜厚dに等しい金属膜での測定結果と、膜厚dより薄い金属膜より算出した正確な屈折率とを用いて正確な消衰係数を算出することが可能となるからである。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図17〜図26に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、実施の形態1の表面プラズモンセンサー1と同一の構成であるが、実施の形態1の表面プラズモンセンサー1では第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚はどちらも表面プラズモンが励起される膜厚であるのに対し、本実施形態では第1金属膜6aの膜厚を膜厚dとし、第2金属膜6bの膜厚を表面プラズモンが励起されない膜厚としている。
本実施形態の表面プラズモンセンサー1では、前記構成により、第1金属膜6aからの反射光を第2金属膜6bからの反射光で規格化することで、バックグラウンドノイズに影響されないようにすることができる。その原理について、図26を参照して説明する。
図26は、実施の形態2の表面プラズモンセンサー1における、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bからの反射光の強度分布と、第1金属膜6aからの反射光を第2金属膜6bからの反射光で規格した場合の強度分布を示す図(グラフ)である。
なお、破線aは第2金属膜6bからの反射光の強度分布を示しており、実線bは第1金属膜6aからの反射光の強度分布を示しており、実線cは第1金属膜6aからの反射光を第2金属膜6bからの反射光で規格化した場合の強度分布を示している。具体的な規格化の方法については、後に説明する。
第2金属膜6bからの反射光の強度分布は、図17の破線aに示すように、光源2自身の強度分布であるガウス分布となるが、レンズやプリズム5の光学部品に付着したごみ等により、不均一な強度分布となっている。
また、第1金属膜6aからの反射光の強度分布は、図17の実線bに示すように、所定の入射角で表面プラズモンが励起されるため、表面プラズモンの励起された角度で鋭い吸収が起きたことを示している。
したがって、第1金属膜6aからの反射光を、第2金属膜6bからの反射光によって規格化することにより、図17の実線cに示すように、破線aのガウス分布やゴミなどの不均一さを除くことができる。ただし、第2金属膜6bでの反射率が1でない場合は、これを補正することが好ましい。
次に、第2金属膜6bの膜厚の選定方法について、図17〜図25を参照して説明する。第2金属膜6bの膜厚は、上述したように、4つの要素、すなわちプリズム5、金属層6、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率、および光源2の波長により、種々の膜厚を選択することができる。第2金属膜6bの膜厚の選定に用いられる前記各要素の取り得る値についての代表的な例は、第1実施形態で説明した値と同一であるので、ここでは説明を省略する。なお、以下の説明においては、第2金属膜6bの材料としてAuを用いる。
以下に、前記4つの要素を組み合わせた場合における第1金属膜6aおよび第2金属膜6bの膜厚の選定について第1実施例〜第3実施例を挙げて説明する。ただし、プリズム5を石英、試料14を液体とすると、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bにおいて表面プラズモンをほとんど励起することができないため、この構成は除外した。
第2金属膜6bの膜厚の選定方法としては、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、光ビーム13を第2金属膜6bに照射したとき、光ビーム13の第2金属膜6bに対する反射率が1となる膜厚以上とすることにより可能である。
(第1実施例)
まず、第2金属膜6bの膜厚の選定の第1実施例について図17〜図19を参照して説明する。本実施例では、前記4つの要素として、第2金属膜6bの材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、および1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として1.46を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.0を選択した場合における第2金属膜6bの膜厚の選定について説明する。
(波長635nm)
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、第2金属膜6bの膜厚を10nm、30nm、50nm、100nm、150nm、および170nmとしたときの光ビーム13の入射角と反射率との関係について図17を参照して説明する。図17は前記4つの要件で、消衰係数を0とした場合における、光源から出射された波長635nmの光ビームの金属膜に対する入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。
図17に示すように、第2金属膜6bの膜厚が、10nmから膜厚dである50nmと厚くなるのにしたがいdipの存在が明確となり、50nmから170nmと厚くなるにしたがい反射率が高くなる。
したがって、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、膜厚を170nm以上にする必要がある。なお、膜厚を10nm以下にすることにより、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とすることも可能であるが、膜厚を10nm以下に加工することは非常に困難であり、現実的でない。
(波長780nm)
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、第2金属膜6bの膜厚を10nm、30nm、50nm、100nm、および150nmとしたときの試料14の入射角と反射率との関係について図18を参照して説明する。図18は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。
図18に示すように、第2金属膜6bの膜厚が、10nmから膜厚dである50nmと厚くなるのにしたがいdipの存在が明確となり、50nmから150nmと厚くなるにしたがい反射率が高くなる。
したがって、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、膜厚を150nm以上にする必要がある。なお、膜厚を10nm以下にすることにより、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とすることも可能であるが、膜厚を10nm以下に加工することは非常に困難であり、現実的でない。
(波長1054nm)
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、第2金属膜6bの膜厚を10nm、30nm、50nm、および130nmとしたときの試料14の入射角と反射率との関係について図19を参照して説明する。図19は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。
図19に示すように、第2金属膜6bの膜厚が、10nmから膜厚dである50nmと厚くなるのにしたがいdipの存在が明確となり、50nmから130nmと厚くなるにしたがい反射率が高くなる。
したがって、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、膜厚を130nm以上にする必要がある。なお、膜厚を10nm以下にすることにより、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とすることも可能であるが、膜厚を10nm以下に加工することは非常に困難であり、現実的でない。
(第2実施例)
次に、第2金属膜6bの膜厚の選定の第2実施例について図20〜22を参照して説明する。本実施例では、前記4つの要素として、第2金属膜6bの材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、および1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.0を選択した場合における第2金属膜6bの膜厚の選定について説明する。
(波長630nm)
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、第2金属膜6bの膜厚を10nm、30nm、50nm、100nm、および150nmとしたときの試料14の入射角と反射率との関係について図20を参照して説明する。図20は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。
図20に示すように、第2金属膜6bの膜厚が、10nmから膜厚dである50nmと厚くなるのにしたがいdipの存在が明確となり、50nmから150nmと厚くなるにしたがい反射率が高くなる。
したがって、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、膜厚を150nm以上にする必要がある。なお、膜厚を10nm以下にすることにより、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とすることも可能であるが、膜厚を10nm以下に加工することは非常に困難であり、現実的でない。
(波長780nm)
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、第2金属膜6bの膜厚を10nm、30nm、50nm、80nm、100nm、および130nmとしたときの試料14の入射角と反射率との関係について図21を参照して説明する。図21は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。
図21に示すように、第2金属膜6bの膜厚が、10nmから膜厚dである50nmと厚くなるのにしたがいdipの存在が明確となり、50nmから130nmと厚くなるにしたがい反射率が高くなる。
したがって、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、膜厚を130nm以上にする必要がある。なお、膜厚を10nm以下にすることにより、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とすることも可能であるが、膜厚を10nm以下に加工することは非常に困難であり、現実的でない。
(波長1054nm)
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、第2金属膜6bの膜厚を10nm、30nm、50nm、100nm、および130nmとしたときの試料14の入射角と反射率との関係について図22を参照して説明する。図22は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。
図22に示すように、第2金属膜6bの膜厚が、10nmから膜厚dである50nmと厚くなるのにしたがいdipの存在が明確となり、50nmから130nmと厚くなるにしたがい反射率が高くなる。
したがって、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、膜厚を130nm以上にする必要がある。なお、膜厚を10nm以下にすることにより、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とすることも可能であるが、膜厚を10nm以下に加工することは非常に困難であり、現実的でない。
(第3実施例)
次に、第2金属膜6bの膜厚の選定の第3実施例について図23〜25を参照して説明する。本実施例では、前記4つの要素として、第2金属膜6bの材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、および1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を選択した場合における第2金属膜6bの膜厚の選定について説明する。
(波長630nm)
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、第2金属膜6bの膜厚を10nm、30nm、50nm、100nm、150nmとしたときの試料14の入射角と反射率との関係について図23を参照して説明する。図23は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。
図23に示すように、第2金属膜6bの膜厚が、10nmから膜厚dである50nmと厚くなるのにしたがいdipの存在が明確となり、50nmから150nmと厚くなるにしたがい反射率が高くなる。
したがって、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、膜厚を150nm以上にする必要がある。なお、膜厚を10nm以下にすることにより、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とすることも可能であるが、膜厚を10nm以下に加工することは非常に困難であり、現実的でない。
(波長780nm)
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、第2金属膜6bの膜厚を10nm、30nm、50nm、80nm、100nm、および130nmとしたときの試料14の入射角と反射率との関係について図24を参照して説明する。図24は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。
図24に示すように、第2金属膜6bの膜厚が、10nmから膜厚dである50nmと厚くなるのにしたがいdipの存在が明確となり、50nmから130nmと厚くなるにしたがい反射率が高くなる。
したがって、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、膜厚を130nm以上にする必要がある。なお、膜厚を10nm以下にすることにより、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とすることも可能であるが、膜厚を10nm以下に加工することは非常に困難であり、現実的でない。
(波長1054nm)
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、第2金属膜6bの膜厚を10nm、30nm、50nm、100nm、および130nmとしたときの試料14の入射角と反射率との関係について図25を参照して説明する。図25は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の入射角と反射率との関係を示す図(グラフ)である。
図25に示すように、第2金属膜6bの膜厚が、10nmから膜厚dである50nmと厚くなるのにしたがいdipの存在が明確となり、50nmから130nmと厚くなるにしたがい反射率が高くなる。
したがって、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とするためには、膜厚を130nm以上にする必要がある。なお、膜厚を10nm以下にすることにより、第2金属膜6bが表面プラズモンを励起しない膜厚とすることも可能であるが、膜厚を10nm以下に加工することは非常に困難であり、現実的でない。
以上の図17〜25は、光源2の波長、またはプリズム5の屈折率、または試料14の検出対象を含まない状態の屈折率を変えた場合における、入射角と反射率の関係を示すグラフである。これらより、それぞれ膜厚が一定以上であれば、第1金属膜6aのdipの範囲で反射率がほぼ一定になることがわかる。図17〜25より示される、第2金属膜6bの膜厚の下限値を以下の表にまとめる。
つぎに、以上の構成の金属層6を備えた表面プラズモンセンサー1における算出回路11および光検出器9による正確な反射率の算出方法について説明する。
算出回路11は、光検出器9の測定結果から正確な反射率を算出するものであり、LSIやICなどの半導体チップ、または、これらを複合化したコンピュータなどを用いればよい。
次ぎに、上記実施の形態2の表面プラズモンセンサー1における金属層6の構成の説明で用いた図26を用いて正確な反射率の具体的な算出方法について説明する。
図26は、光検出器9で検出される第1金属膜6aおよび第2金属膜6bからの反射光強度から1ラインを取り出し、その入射角依存性を示したグラフである。また、図26は、算出回路11の算出結果も示している。
第1金属膜6aおよび第2金属膜6b表面に試料がある場合、第1金属膜6aには、ある入射角で表面プラズモンが励起されるため、図26の実線bのように、表面プラズモンの励起された角度で鋭い吸収が起きた強度分布が光検出器9で検出される。
第2金属膜6bでは表面プラズモンが励起されないため、反射光の強度分布は、図26の破線aのように光源2自身の強度分布であるガウス分布となるが、レンズやプリズム5などの光学部品に付着したゴミなどで、不均一な強度分布となる。
第2金属膜6bからの反射光強度分布は、入射光の強度分布そのものと考えられる。よって、これを基に、各入射角の入射光量を規格化することができる。また、別の測定時と比較して、入射光の強度変動が起きていないことを確認することもできる。算出回路11による算出は単純に、上記第1の行程の結果と上記第2の行程との比または差を取ればよい。この算出結果が、図26の実線cであり、図26の破線aのガウス分布やゴミなどの不均一さを除くことができる。ただし、第2金属膜6bでの反射率が1でない場合は、これを補正することが好ましい。
以上、算出回路11により求められた上記入射角を用いて、試料の正確な反射率を求めることができる。その結果、屈折率を求めることができ、物質の検知を行うことができる。また、規定物質の濃度を測定する場合には、予め、各濃度に対する上記入射角の関係を測定しておけば、濃度を容易に求めることができる。さらに、正確な反射率から上記入射角を自動算出する構成としてもよい。
なお、別途、金属層6表面に試料がない状態で、あらかじめ第2金属膜6bからの反射光強度分布を測定しておいてもよい。
上記の構成を有する表面プラズモンセンサー1は、光源2の温度変化や経時変化のみならず、光源駆動回路10の温度変化などの要因により、入射光の強度変動が起きた場合にも、正確な反射率を得ることができる。また、第1金属膜6aおよび第2金属膜6bで反射する光がほぼ同じ光路を通るため、上記の要因に加え、光路上の影響にも対応可能である。また、従来に比べて、部品点数を少なくすることができ、低コストとすることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。