JP2001242072A - 光吸収応答型sprセンサーおよびその測定方法と装置 - Google Patents
光吸収応答型sprセンサーおよびその測定方法と装置Info
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Abstract
従来の吸光法に対して、高感度、高速応答のセンシング
を可能とする新規な吸光に基づいた測定法を提供する。 【解決手段】 本発明は、光吸収応答型のSPRセンサ
ーの理論式を組み立て、計算機シュミレーションを行
い、光吸収変化の測定方法とその測定方法を実現する装
置に関する。測定方法は、2通りある。一つは、光の吸
収最大波長に入射波長を実質的に一致させ、反射強度変
化から、光吸収変化を測定する方法である。もう一つ
は、入射波長を、光の吸収は起こるが、吸収最大波長と
異なるものとし、光吸収変化を屈折率変化として測定す
るものである。前者は、反射光をP偏光とS偏光の成分
に分けて測定し、本発明で展開した理論式に基づいた解
析方法を行うことを特徴とする。後者は、従来のSPR
センサーで使われている装置と同様な光学配置を有する
ものであり、本発明で展開した理論式に基づいた解析方
法を行うことを特徴とする。
Description
鳴(Surface Plasmon Resonance)現象を使ったSPR
センサーに関する。本発明は、光の吸収特性の変化に伴
う複素屈折率変化を観測してセンシングすることを特徴
とするSPRセンサー、それを用いた測定方法、及びそ
のための装置に関する。
アルタイムに蛋白質などの生体物質の分子間相互作用を
測定できる装置である。1990年代初めから使われ始
め、10年足らずの間に、生化学分野の研究者の間でポ
ピュラーな分析機器の一つになった。その最も大きな原
因の一つは、SPRセンサーがラベルフリーの測定が可
能なことにある。SPRセンサーの登場以前には、生体
物質間相互作用を観測するには、多くの場合、色素・酵
素・放射性元素などを生体物質にラベル化する必要があ
った。ラベル化は、手続きが面倒であるばかりでなく、
本来の生体物質間相互作用を歪めてしまい、ラベル化自
体に問題があることが長いこと指摘されていた。SPR
センサーは、そのラベル化の問題を解決し、本来の生体
物質間相互作用を観測することを可能とした。
センサーの測定原理は、測定面から数百ナノメートル範
囲の屈折率変化を、表面プラズモンの光共鳴現象を利用
して、測定することにある。リガンドを測定面に固定化
し、アナライトを外部より供給し、リガンドとアナライ
トとの間の分子間相互作用を測定面上で起こす。その結
果起こる屈折率変化をSPR現象を使って検出する。表
面プラズモンは、金属中の自由電子によるプラズマ振動
と結合した光であるため、屈折率変化に敏感に応答を示
し、金属表面を伝播する波であるために、測定面上の数
百ナノメートルという狭い範囲の屈折率変化に応答を示
す。
ンサーの登場には、表面プラズモンの長く地道な研究の
歴史がある。表面プラズモンの現象は、20世紀初め、
回折格子からの反射に暗線が生じるウッドのアノマリー
として観測されていた。初期の表面プラズモンの研究
は、電子散乱の手法により行われた。電子ビームを金属
薄膜に打ち込み、散乱された電子ビームの解析により、
表面プラズモンのエネルギー状態が調べられた。光によ
って表面プラズモンを共鳴励起する現象、つまり、表面
プラズモン共鳴(SPR)現象を使って、表面プラズモ
ンを研究することは、1960年代末になって始まる。
SPR現象は、電子散乱の手法を用いた表面プラズモン
の詳細な研究の末に発見された。クレッチマンは、プリ
ズム上に金属薄膜を形成し、表面プラズモンをSPR現
象を使って研究をした先駆的な研究者の一人である。そ
の光学配置は、現在、クレッチマン配置と呼ばれてお
り、SPRセンサーを構成する上で、本質的な機構の一
つとなっている。1960年代末にSPR現象が発見さ
れて、1980年代初めにSPRセンサーが登場するま
での約15年間、SPR現象の理論の確立や、SPR現
象を使った単分子膜や薄膜の物性研究が中心として行わ
れた。そうした研究の流れの中でSPRセンサーは、S
PR現象を使ってセンシングするという自然な流れの中
で生じた。最初の報告は、単に、ガスの屈折率を計ると
いう単純なものであった。その後、SPRセンサーにお
いて、抗原−抗体反応を利用した免疫学的な手法を導入
するなどの先駆的な研究が行われることになる。SPR
センサーが、現在のようにポピュラーな分析装置となっ
たのは、スウェーデン王国ファルマシア社によってSP
Rセンサー装置が販売されてからである。その装置は、
オートメション化されており、SPR現象の原理的な理
解なくして、ラベルフリーの生体分子間相互作用の実験
ができるため、高価な製品であるにも関わらず、生化学
分野の研究者に喜んで受け入れられた。現在のSPRセ
ンサーの研究動向は、蛋白質などの生体分子を選択的に
検出するセンサーチップの作製に重点が置かれ、物理的
な観点より、化学や生化学的な観点で研究が進んでい
る。
センサーはラベルフリー測定の分析装置として開発され
てきた。その測定原理は、測定面から数百ナノメートル
領域の屈折率変化をSPR現象を使い測定することにあ
る。生体物質間相互作用の観測メカニズムは、測定面に
固定化したリガンドが、外部より供給されるアナライト
を分子認識し、非共有結合を起こした結果を、測定領域
における屈折率変化として検出する、一連の過程であ
る。生体物質間相互作用を屈折率変化として検出するこ
とに、ラベルフリー測定を可能とする測定の秘策があ
る。
ラズモン共鳴(SPR)現象に立ち戻って、現状のSP
Rセンサーを再考すると、原理的に限られた使われ方し
かしていないことが判明する。つまり、現状のSPRセ
ンサーは、屈折率の実部しか観測していないのである。
一般に、表面プラズモン共鳴(SPR)現象は、屈折率
の実部だけでなく虚部にも応答を示す。屈折率の虚部
は、光の吸収変化により起こるので、光吸収応答型のS
PRセンサーが可能になる。
収の原因は、外部から測定領域に来るもの、及び、測定
領域にあるものが光吸収変化を示すものと2通りに分け
られる。前者の例は、固有な光吸収スペクトルを持つ被
測定物質や、被測定物質にラベルした色素などの光吸収
を示す物質である。特に、光吸収の原因として、被測定
物質の固有な光吸収スペクトルを使う場合、測定領域に
は、被測定物質を選択的に認識するリガンドを必要とし
ない、リガンドフリーの特徴を持つセンシングが可能に
なる。また、後者の例は、被測定物質が原因となって光
吸収特性が変化するセンシング層を使う場合である。従
来の光吸収に基づくセンシングは、感度を上げるために
は、光の通過距離を長くする必要があった。しかし、S
PR現象を使った光吸収センシングでは、測定領域が数
百ナノメートルと非常に薄いため、高価なセンシング材
料も少量で済み、また、応答時間も速い、という特徴を
持つ。以上のように、光吸収応答型のSPRセンサー
は、従来にない、新規なセンシングを可能にする。
の測定方法を提供するものである。クレッチマン配置に
よるSPR現象について、光の吸収特性が変化した場合
を理論的に考察し、光吸収変化に基づくセンシングの方
法を提供し、その測定法を実現する装置の例を提示する
ものである。
答型のSPRセンサーの理論式を組み立て、計算機シュ
ミレーションをしたところ、光吸収変化の観測方法に主
に2通りあることを見出した。一つは、光の吸収最大波
長に入射波長を実質的に一致させ、反射強度変化から、
光吸収変化を測定する方法である。もう一つは、入射波
長を、光の吸収は起こるが、吸収最大波長と異なるもの
とし、光吸収変化を屈折率変化として測定するものであ
る。特に、後者の方法は、従来のSPRセンサーで使わ
れている測定方法であり、従来の測定方法が光吸収変化
を観測する場合にも有効であることが判明した。
面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したセンシング
において、測定領域に被測定物質が存在又は接触するこ
とが原因となって該測定領域の光吸収特性が変化するこ
とによる該光吸収特性変化に伴う複素屈折率変化を観測
することからなる光吸収応答型SPRセンサーに関す
る。また、本発明は、前記の光吸収応答型SPRセンサ
ーにおいて、入射光を単色光とし、その波長を光吸収の
最大波長と一致させ、測定領域における光吸収特性変化
に伴う複素屈折率の変化を複素屈折率の虚部だけに起こ
るようにすることによって、該複素屈折率の虚部の観測
から被測定物質を同定若しくは検出する測定方法、又
は、測定領域の光吸収特性が均一に変化する、前記した
光吸収応答型SPRセンサーにおいて、入射光を単色光
とし、その波長を光吸収の最大波長と異なるが光吸収が
起こる波長にして、測定領域における光吸収特性変化に
伴う複素屈折率の変化を複素屈折率の虚部だけでなく実
部にも起こるようにすることによって、該複素屈折率の
虚部の観測だけでなく実部の観測からも被測定物質を同
定又は検出する測定方法に関する。本発明の方法は、測
定領域の吸収物質のモル濃度で定量する方法にも関す
る。さらに、本発明は前記した光吸収応答型SPRセン
サー装置、より詳細には前記した測定方法を実施するた
めのSPRセンサー装置に関する。
概略について説明する。図1に光吸収応答型のSPRセ
ンサーのデバイスモデルを示す。光学配置は、クレッチ
マン配置と呼ばれているものである。表面プラズモン共
鳴励起のメカニズムは次のように説明される。プリズム
側から入射したP偏光の光がエバネッセント波を金属薄
膜中に発生し、そのエバネッセント波と表面プラズモン
の波数が一致したとき、表面プラズモンが共鳴励起され
る。共鳴励起の結果、ある入射角の光が吸収され、反射
光に暗線が生じる。その暗線を解析することにより、測
定領域の光吸収変化を決定する。
討と計算機シュミレーションが非常に有効である。フレ
ネルの式と、薄膜による多波干渉の式を組み合わせるこ
とにより、シュミレーションが可能になる。初めに、S
PRセンサーの理論において、最も基本になる3層モデ
ルを考察する。3層モデルは、図2に示すように、プリ
ズム/金属薄膜/光吸収変化層から構成される。以下
に、具体的な理論式を示す。ここでは、各層の誘電率に
ついて詳細する。入射光の波長λの角振動数ωは、真空
中の光速度c=2.99792458×108m/sを
用いて、 ω=2πc/λ (1) と書ける。まず、プリズムの誘電率εpは、プリズムの
屈折率をnpとすると、 εp=np 2 (2) と書ける。次に、金属の誘電率は、古典的なモデルの範
囲においてドルーデの理論で扱われ、
ωpは固体における長波長のプラズマ角振動数、ωcは
衝突振動数と呼ばれている。ωcは、プラズマ振動の緩
和時間τと次式の関係がある。 ωp=2π/τ (4) 光の吸収特性の変化によりセンシングをする光吸収変化
層の誘電率εsは、ローレンツモデルにより記述でき
る。
33×10−19C、電子の質量m e=9.10938
97×10−31kg、真空中の誘電率ε0=107/
4πc2(=8.854187817・・・)である。
また、ωは入射光の角振動数、ω0は吸収の角振動数、
γは吸収の振動緩和を表し、吸収スペクトルの半値全幅
に相当する。ε∞は、入射光の角振動数ω→∞の場合に
おける、光吸収変化層の誘電率であり、多くの場合、現
象論的に導入される。fは振動子強度であり、吸収の強
さを表すパラメータである。Nは、色素などの吸収物質
の個数である。モル吸収係数を決める実験を行うと、ラ
ンベルト−ベールの法則を使って、fをモル吸収係数、
Nを吸収物質の濃度と関係づけることができる。
る。光が2つの均一等方な媒質の境界面に入射した場
合、一部は反射し、一部は屈折するが、フレネルの式
は、光の振幅反射係数と振幅透過係数を表す式であり、
1823年にA.J.Fresnelによって導き出された。フレ
ネルの式は入射光の偏光によって異なり、特に、入射波
の電場が入射面内にあるP偏光の場合にSPR現象が生
じるので、P偏光のフレネルの式がSPRセンサーのシ
ュミレーションでは重要である。図3に示したような光
学配置および光学定数では、振幅反射係数r12と振幅
透過係数t12は、それぞれ次式のように記述できる。 r12=(n2cosθ1−n1cosθ2)/(n2cosθ1+n1co sθ2) (6) t12=(2n1cosθ1)/(n1cosθ1+n2cosθ2)(7) 特に、式(6)は、入射光の波数の垂直成分k1zと、
透過光の波数の垂直成分k2zを使うと、次式のように
書き直せる。 r12=(ε1k2z−ε2k1z)/(ε1k2z+ε2k1z) (8) ここで、k1zとk2zは、
xは入射光の波数の水平成分であり、
ており、シュミレーションに便利な形に整理されてい
る。
干渉の理論について説明する。図4に示したような単層
膜の多波干渉について考察する。各層は、シュミレーシ
ョンに適用できるように、プリズム(εp)/金属薄膜
(εm)/光吸収変化層(ε s)の誘電率を使う。単層
膜の厚さはdとする。プリズムから金属薄膜に入射する
振幅反射係数rpmと振幅透過係数tpm、及び、金属
薄膜からプリズムに入射する振幅反射係数rmpと振幅
透過係数tmp、金属薄膜から光吸収変化層に入射する
振幅反射係数rmsを使うと、単層膜の振幅反射率r
psは、次式のように書ける。
あり、
注目すれば、 tpm 2=1−rpm 2 (16) である。式(14)−(16)を使うと、式(12)
は、以下のように変形をされる。
2)e2iδ、公比(−rpmrm se2iδ)がこの
等比数列の無限級数和であるから、結局、 rps=(rpm+rmse2iδ)/(1+rpmrmse2iδ) (17) と整理される。式(17)において、rpmとr
msは、式(8)を参考にすると、 rpm=(εpkmz−εmkpz)/(εpkmz+εmkpz) (18) rms=(εmksz−εskmz)/(εmksz+εskmz) (19) であることが導かれる。式(18)と(19)の、k
pz、kmz、kszは、式(9)と(10)を参考に
すると、
(22)のkxは、式(11)で与えられている。ま
た、式(20)のεpは式(2)で、式(21)のεm
は式(3)で、式(22)のεsは式(5)で与えられ
る。さらに、式(17)のδは、式(13)と式(2
1)を参考にすると、 δ=kmz (23) となる。最終的に実験観測される反射率Rは、
入して、シュミレーションすることにより、吸収応答型
SPRセンサーにおいて、光学応答の検出方法の重要な
手がかりを得ることが可能となる。
の仮定に基づいて与えた。 仮定1:金属薄膜は、50nmの金とする。 d=50×10−9、ωp=1.119×1016、ω
c=2.108×1014 仮定2:プリズムは、波長分散を無視できる高屈折率ガ
ラスとする。 np=1.79 仮定3:光吸収変化層の吸収物質は色素とする。最大吸
収波長λmaxを630nm、半値全幅δλを100n
mとする。また、振動子強度fは1とする。
ポリマー膜を膜材とするセンシング膜とする。光吸収変
化層の膜厚は、3層モデルに扱える程度に十分厚いもの
とする。 ε∞=1.42 仮定5:光吸収変化層の吸収物質は、被測定物質に応答
して、吸収増加を示すものとする。吸収物質のモル濃度
をχとすると、吸収物質の個数Nは、アボガドロ数NA
を用いて、次のように書ける。 N=103・NA・χ
収波長と同じにした場合、つまり、ω=ω0の場合にお
けるシュミレーション結果である。吸収物質のモル濃度
χは、0、10−2、5×10−2、10−1、2×1
0−1について計算した。図から理解されることは、以
下の2点である。 (1)反射率が最小となる共鳴角が、各モル濃度χにつ
いて同一である。 (2)共鳴角の反射率が、吸収物質のモル濃度χの増加
に従って、増加する。 このようなSPRカーブの振る舞いを利用して、吸収物
質のモル濃度χを定量することが可能となる。
吸収物質の吸収はあるが、最大吸収波長より長波長にし
た場合である。これは、
に、吸収物質のモル濃度χは、0、10−2、5×10
−2、10−1、2×10−1について計算した。図か
ら理解されることは、以下の2点である。 (1)反射率が最小となる共鳴角は、吸収物質のモル濃
度χの増加に従って、高角度に移動する。 (2)共鳴角における反射率が、吸収物質のモル濃度χ
の増加に従って、増加する。 この場合においても、SPRカーブの振る舞いを利用し
て、吸収物質のモル濃度χを定量することが可能とな
る。
吸収物質の吸収はあるが、最大吸収波長より短波長にし
た場合である。これは、 ω〜ω0+γ/2 の場合に相当する。ω=ω0の場合と同様に、吸収物質
のモル濃度は、0、10 −2、5×10−2、1
0−1、2×10−1について計算した。図から理解さ
れることは、以下の2点である。 (1)反射率が最小となる共鳴角は、吸収物質のモル濃
度χの増加に従って、低角度に移動する。 (2)共鳴角における反射率が、吸収物質のモル濃度χ
の増加に従って、増加する。 この場合においても全く同様に、SPRカーブの振る舞
いを利用して、吸収物質のモル濃度χを定量することが
可能となる。
と吸収物質の波長について、典型的な3つの場合におい
て計算した。個々の場合は、定数を変更して計算するこ
とが可能である。しかし、シュミレーション結果に対し
て、物理描像を与えることは、光吸収応答型SPRセン
サーの原理を理解するために極めて重要な作業である。
SPRセンサーのメカニズムに対して、物理描像を与え
る。そのためには、式(5)で与えられる光吸収変化層
の誘電率εsに対し、屈折率nsだけの変化を仮定す
る。つまり、 εs=ns 2 (25) をしばらくの間、仮定する。この場合、式(24)は、
式(3)の金属の誘電率が
る。
あり、前記式(27)のように与えられる。式(27)
のk0は金属薄膜の厚さが無限大の波数であり、kRは
金属薄膜の厚さが有限の場合に生じる波数の補正項であ
る。ここで、
ので、再記すると、
曲線により表現された形になっている。実験的に観測さ
れる暗線は、式(26)の最小値を与える付近で生じ
る。式(26)の最小値を与える入射角θminは、共
鳴角であり、 kx=k’sp (30) を満たすθpとして与えられる。式(30)の物理的な
解釈は、入射光の生じるエバネッセント波の波数と、表
面プラズモンの波数が一致することを意味しており、運
動量保存則と同値である。式(30)は、さらに、
Rセンサーの感度を議論する式として用いられる。ま
た、式(26)より、共鳴角θminにおける反射率R
minは、
方、反射率Rminの半値全幅θ1/2は、
る。
minのシフトにより、屈折率変化を検出する。式(3
1)を使うと、共鳴角θminは、
に対する共鳴角変化Δθminは、
PRセンサーの反射率Rminについても考察する。式
(33)より、Rminを決めるためには、ηを決めれ
ば良い。k”0は、式(28)に、
値、
値
の典型的な実験的な値
は、
だけ、式(47)に入ってきている。したがって、反射
率Rminは、屈折率nsにほとんど依存しなく、一定
と考えてよい。上記で仮定したシュミレーションのパラ
メータを使うと、波長630nmの時、式(47)の値
は、η=1.015となり、そのとき、Rmin=5.
5×10−5となる。ηは、ほとんどの場合、
を踏まえて、以下では、光吸収応答型SPRセンサーの
理論を展開する。ここでは、準備として、光吸収変化層
の複素屈折率
り、ksは消衰係数と呼ばれるものである。複素屈折率
Nsと誘電率εsは、 (ns+iks)2=εs (48) の関係がある。誘電率εsに対し、
(50)は、
sを、誘電率εsの式(5)から具体的に示すと、
(i)ω=ω0の場合、(ii)ω<ω0の場合、(i
ii)ω>ω0の場合に分けて考察する。 (i)ω=ω0の場合(入射光の波長と最大吸収波長が
一致する場合) 式(53)と式(54)は、
(52)より、
ず、一定となる。さらに、式(51)より、
数ksが増加する。(ii)ω<ω0の場合、及び、
(iii)ω>ω0の場合の屈折率nsと消衰係数ks
は、式(51)−(54)より、
とに、(ii)と(iii)を分けて考察する。 (ii)ω<ω0の場合(入射光の波長が最大吸収波長
より長波長側に位置する場合) 式(59)より、吸収増加に従って、屈折率nsは、一
次関数の平方根の関数として増加する。特に、
一方、式(60)より、消衰係数ksは、基本的にはω
=ω0の場合の式(58)と同じように、吸収変化の増
加に比例する。しかし、屈折率nsの増加に従って、増
加の割合が減少する。 (iii)ω>ω0の場合(入射光の波長が最大吸収波
長より低波長側に位置する場合) 式(59)より、吸収増加に従って、屈折率nsは、一
次関数の平方根の関数として減少する。特に、
一方、式(60)より、消衰係数ksは、基本的には式
(58)によるω=ω 0の場合と同じように、吸収変化
の増加に比例する。しかし、屈折率nsの減少に従っ
て、増加の割合が増加する。
合、光吸収変化層の誘電率εsに対し、式(5)を使え
ば良い。この場合も、
つ。共鳴角θminは、式(30)−(31)に近似式
(52)を使うと、
ンサーの理論式(36)と全く同じ形になる。したがっ
て、物理的な解釈も同じになり、式(61)は、共鳴角
θmi nは、光吸収変化層の屈折率(複素屈折率の実
部)によって決まることを意味している。特に、入射光
の波長と最大吸収波長の関係において議論する。 (i)ω=ω0の場合(入射光の波長と最大吸収波長が
一致する場合)、屈折率nsは、式(57)より吸収変
化に関わらず一定なので、共鳴角θminの変化は起き
ない。従って、共鳴角θminの変化により、吸収変化
を観測することはできない。 (ii)ω<ω0の場合(入射光の波長が最大吸収波長
より長波長側に位置する場合)屈折率nsは、一次関数
の平方根の関数として増加する。従って、共鳴角θ
minの変化により、吸収変化を観測することが可能で
ある。 (iii)ω>ω0の場合(入射光の波長が最大吸収波
長より低波長側に位置する場合)屈折率nsは、一次関
数の平方根の関数として減少する。従って、共鳴角θ
minの変化により、吸収変化を観測することが可能で
ある。 以上の結果は、入射光の波長が光吸収物質の吸収領域に
あるが、最大吸収波長が一致しない場合、共鳴角θ
minの変化により、吸収変化を観測することが可能で
あると、まとめることができる。
ける反射率Rminの理論式を導く。k”0は、式(2
8)に、
式(39)と一致する。また、式(62)は、式(5
1)−(52)を使えば、
0)の議論が全て当てはまり、
ηは、
ksが増加するから、ηは吸収増加につれて増加する。
また、ほとんどの場合、消衰係数ks→0において
Rminの式(32)は
θminにおける反射率Rminは、吸収が増加するに
つれて、増加する。また、反射率Rminに関する以上
の議論は、入射光の波長と最大吸収波長の関係にあまり
依存しない。その理由は、式(65)のηが、屈折率n
sに大きく依存した式でないからである。しかしなが
ら、入射光の波長と最大吸収波長の関係による屈折率n
sの効果は、ηに影響を与え、反射率Rminの測定で
十分観測される程度に大きい。
プリズム/金属薄膜/光吸収変化層からなる3層モデル
で議論した。しかし、多くの場合、光吸収変化層が有限
である場合が多い。特に、光吸収変化層が数百ナノメー
トル程度に薄い場合、プリズム/金属薄膜/光吸収変化
層/外部環境の4層モデルで議論しなければならない。
しかし、幸いなことに、シュミレーションにおいて、3
層モデルから4層モデルへの拡張は容易に行える。その
シュミレーション結果から理解されることは、2つあ
る。一つは、吸収を観測するのに、共鳴角θminの変
化により屈折率変化を測定することは、無効になるこ
と。もう一つは、吸収を観測するのに、反射率Rmin
の変化により消衰係数ksを測定することは、依然とし
て有効であること。このことから、反射率Rminの測
定は吸収変化を観測するのに、より一般的な方法である
ことが理解される。
モデルの数式を記す。4層モデルは、図9に示したよう
に、プリズム(εp)/金属薄膜(εm)/光吸収変化
層(εs)/外部環境(εe)からなる。ここで、カッ
コ内はそれぞれの誘電率である。金属薄膜の厚さをd、
光吸収変化層をtとする。また、外部環境の屈折率n e
は、誘電関数εeと、 εe=ne 2 (66) の関係がある。最終的に実験観測される反射率Rは、
おいて、
PRの測定方法についての実施の形態を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの具体的な装置及び方法に限定さ
れるものではなく、本発明の測定思想に基づくSPR装
置及びその方法並びにそれに付帯する技術の一切は本発
明の技術的範囲に属するものである。
論またはシュミレーション結果に基づき、光吸収変化
を、主に2つの方法により測定するものである。第1
は、光吸収を、共鳴角の変化により屈折率変化として測
定する方法である。 第2は、光吸収を、共鳴角におけ
る反射率の変化により消衰係数変化として測定する方法
である。光吸収変化層の厚さが、十分厚くない場合は、
第1の方法は使えない。以下では、それぞれの場合に対
して、測定法を実現する光学配置の例を示す。
R装置の例を示す。第1の測定方法は、共鳴角の変化に
よって、光吸収変化が原因で起こる屈折率変化を測定す
る方法である。共鳴角の変化によって屈折率変化を測定
するのは、従来のSPRセンサーと同じである。異なる
点は、従来のSPRセンサーでは、屈折率変化は、非共
有結合が主な原因となって起こる物質移動により生じる
が、光吸収応答型SPRセンサーでは、屈折率変化が光
吸収変化により起こることである。そのため、第1の測
定方法を実現するSPR装置は、従来のSPR装置を使
うことが可能である。ただし、最大吸収波長と入射光の
波長は異なるが近い範囲にあることや、共鳴角における
反射率が大きく変化するために従来のSPR装置におけ
る共鳴角を決定するアルゴリズムが無効になるなどの問
題点が存在する。しかしながら、光学系に関しては、図
10に代表されるような従来のSPR装置に使われてい
るものと同一のもので良い。解析アルゴリズムに関して
は、式(59)を使って、光吸収物質の個数を求める事、及
び、それと同等なことを行う必要がある。
置の例を示す。第2の測定方法は、共鳴角における反射
率を正確に決めることが重要となる。そのため、図10
に示したような共鳴角を測定する従来のSPRセンサー
は、光源強度の角度分布が不均一であるため、反射率を
十分精度良く決められない。そのためには、図11に示
したような光学配置からなるSPRセンサーを構築する
ことが望ましい。図11の光学配置は、反射光をP偏光
とS偏光に分け、それぞれの反射光を電子デバイスの検
出器により取り込み、P偏光の反射光角度分布をS偏光
の反射光角度分布で割り、SPRカーブを実験的に決め
るものである。SPR現象は、P偏光の励起においてし
か起こらないので、P偏光の反射光をS偏光の反射光で
割ることによって、不均一な光源強度の角度分布を補正
することができる。しかも、得られた像は、反射率の角
度分布を反映したものである。共鳴角における反射率
は、近似的に、光吸収物質の量に一次関数的に変化す
る。特に、3層モデルの場合は、厳密に、式(32)と
式(65)を使って、光吸収物質の量を決めることがで
きる。
域の光吸収特性が変化することによる該光吸収特性変化
に伴う複素屈折率変化を観測することからなる光吸収応
答型SPRセンサーという、SPRの測定分やにおける
全く新しい概念による測定方法を提供するものであり、
SPRの応用範囲を格段に広げるものである。したがっ
て、本発明による光吸収応答型SPRセンサーは、屈折
率実部における変化のみならず、その虚部のみにおいて
も、測定領域の光吸収特性が変化することにより複素屈
折率の変化を伴うものであれば、これを測定可能にした
ものであり、測定領域における色の変化(可視領域の光
吸収の変化)やその他の波長領域における吸収波長の変
化によるSPRセンサーでの測定を可能とするものであ
る。
づいて、光吸収に基づいたSPRセンサーの装置とその
測定方法を提供するものである。従来のSPRセンサー
は、被測定物質の移動による屈折率変化を測定するセン
シングであったが、本発明の光吸収応答型SPRセンサ
ーは、光吸収変化に基づくセンシングを可能にする。そ
のため、従来のSPRセンサーでは不可能であった被測
定物質のセンシングが可能になる。また、本発明の光吸
収応答型SPRセンサーは、従来の吸光法に対して、高
感度、高速応答のセンシングを可能とする新規な吸光法
を提供する。そのため、センシング分野において従来知
られている吸光法の全てに対して、高感度、高速応答な
どの性能向上に貢献することができる。
PRセンサーの光学配置である。
使う、プリズム/金属薄膜/光吸収変化層から構成される
3層モデルの光学配置である。
える、フレネルの式を説明するための光学配置である。
モデルである。
長が一致した場合の計算シュミレーショ結果である。図
中のXの値は、吸収物質のモル濃度である。
波長より長波長側にある場合の計算シュミレーション結
果である。図中のXの値は、吸収物質のモル濃度であ
る。
波長より短波長側にある場合の計算シュミレーション結
果である。図中のXの値は、吸収物質のモル濃度であ
る。
ラフである。
ズム/金属薄膜/光吸収変化層/外部環境から構成される
4層モデルの光学配置である。
サーの光学配置の一つである。
ことによって、光吸収応答型SPRセンサーを実現する
光学配置の一つである。
Claims (9)
- 【請求項1】 クレッチマン光学配置による表面プラズ
モン共鳴(SPR)現象を利用したセンシングにおい
て、測定領域に被測定物質が存在又は接触することが原
因となって該測定領域の光吸収特性が変化することによ
る該光吸収特性変化に伴う複素屈折率変化を観測するこ
とからなる光吸収応答型SPRセンサー。 - 【請求項2】 光吸収特性変化に伴う複素屈折率変化を
観測が、入射光に対する反射光の光学特性の変化を測定
するものである請求項1に記載の光吸収応答型SPRセ
ンサー。 - 【請求項3】 被測定物質に固有な光吸収スペクトルを
利用して、該被測定物質を同定又は検出する請求項1又
は2に記載の光吸収応答型SPRセンサー。 - 【請求項4】 被測定物質又は測定領域に固定された物
質にラベルした色素などの光吸収を示す物質を利用する
ものである請求項1〜3のいずれかに記載の光吸収応答
型SPRセンサー。 - 【請求項5】 被測定物質を選択的に認識し、その事が
原因となって吸収特性の変化を起こすセンシング層を測
定領域に設け、該センシング層の光吸収特性の変化によ
って、該光吸収特性変化に伴う複素屈折率変化を観測す
るものである請求項1〜4のいずれかに記載の光吸収応
答型SPRセンサー。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の光吸収
応答型SPRセンサーにおいて、入射光を単色光とし、
その波長を光吸収の最大波長と一致させ、測定領域にお
ける光吸収特性変化に伴う複素屈折率の変化を複素屈折
率の虚部だけに起こるようにすることによって、該複素
屈折率の虚部の観測から被測定物質を同定又は検出する
測定方法。 - 【請求項7】 測定領域の光吸収特性が均一に変化す
る、請求項1〜5のいずれかに記載の光吸収応答型SP
Rセンサーにおいて、入射光を単色光とし、その波長を
光吸収の最大波長と異なるが光吸収が起こる波長にし
て、測定領域における光吸収特性変化に伴う複素屈折率
の変化を複素屈折率の虚部だけでなく実部にも起こるよ
うにすることによって、該複素屈折率の虚部の観測だけ
でなく実部の観測からも被測定物質を同定又は検出する
測定方法。 - 【請求項8】 請求項6の測定方法において、共鳴角に
おける反射率を測定することを特徴とする光吸収応答型
SPRセンサー装置。 - 【請求項9】 請求項7の測定方法において、共鳴角を
測定することを特徴とする光吸収応答型SPRセンサー
装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000057442A JP2001242072A (ja) | 2000-03-02 | 2000-03-02 | 光吸収応答型sprセンサーおよびその測定方法と装置 |
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JP (1) | JP2001242072A (ja) |
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