JP3961405B2 - 表面プラズモン共鳴センサおよび屈折率変化測定方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は導波路構造及びその製造方法、並びにそれを用いた表面プラズモン共鳴センサと屈折率変化測定方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
屈折率は、液体、気体の特性変化を反映する光学パラメータである。そのため、屈折率の変化を検知するセンサあるいはデバイスは、プロセス監視の指標として取り入れられ、また、クロマトグラフィーや電気泳動法のための検出器として用いられ、さらには、イオノフォアのようなイオン感応材料あるいは選択的な吸着を起こす有機膜材料あるいはナノメートルオーダーの空孔を利用した分子サイズ効果による選択的吸着膜などを組み合わせて構成される化学センサや、酵素反応、抗原抗体反応などと組み合わせることで生物化学センサのための変換器(トランスデューサ)としても有用である。
【0003】
本発明は、試料の屈折率測定を用いる化学センサや、生物化学センサとして、ある特定の目的物に対する検知を可能とするセンサデバイスに関するものである。特に、大気・水・土壌環境に関わる物質である花粉やハロゲン化有機化合物やBTX類や窒化物、または日常の生活空間の空気質に関わるアルデヒド類やBTXや炭化水素類や農薬類、または医療に関わる院内病原菌や抗体、血中・尿中成分をモニタリングに使われるセンサの構造およびセンサを用いた測定法に関するものである。
【0004】
【従来技術】
屈折率を測定する方法としては、以前より、滑らかに研磨されて切り出し角度が既知な形状を持つ光学プリズムを用いる手法が用いられてきた。それらの装置は、透過光の偏角を求める最小偏角型屈折計や、全反射を利用するアッベの屈折計、液浸計、プルフリヒの屈折計がある。また、前述の方法では屈折率測定が難しい形状の物質(コロイド、高分子膜など)の屈折率を決定するために開発された、標準試料と比較して屈折率を決定する、光学プリズムを用いる反射強度型示差屈折計や、透過光を用いる偏位測定型示差屈折計があった。また、全反射光の透過光強度を測定する方法もある(特開2000−146836)。
【0005】
一方、表面プラズモン共鳴法が用いられるようになってきている。金属表面と接触している誘電体の屈折率変化を測定する表面プラズモン共鳴法では、例えば、ガラスやポリマーなどの光の導波路材料の上に金属(金、銀など)薄膜を形成し、導波路から光を全反射するように入射させたとき、TM波成分だけをモニタすると、ある光の入射角度において光反射強度が極小値を示す。あるいは、ある光の波長において光反射強度が極小値を示す、ということで観測することが可能で、光反射強度の極小値に相当する光の入射角度、または、波長が、減衰する金属薄膜に対して、導波路材料と反対側に存在する誘電体の屈折率に対応する。
【0006】
したがって、表面プラズモン共鳴センサは、光の導波路に金属薄膜を形成したものと、光の全反射条件とTM波の偏光を測定する検出器への光路を組み合わせで構成できる。そのため、他の屈折計と比べても、構成が比較的単純な利点がある。例えば、”Planar Substrate Surface Plasmon Resonance Probe,”Proceedings of SPIE、2836巻、S.Yee,外2名著、p.178−185(p.181の図2)に記載の構造がある。
【0007】
さらに、表面プラズモンセンサを用いると、金属薄膜に接触する光の導波路の部分とは反対側の誘電体部の屈折率変化を検知できることから、表面プラズモン共鳴センサには、次の利点がある。化学反応あるいは生物化学反応の場と光学系と隔離されているため、化学作用が直接的に光学系へ及ぼす測定誤差が小さく抑えられ、したがって、検出器で得られる光強度変化あるいはスペクトルの変化は、金属薄膜の外部で起こる化学、生物化学反応全てを反映するものである。例えば、金の金属薄膜の外部での酵素反応(生物化学反応)を解析することができる(”Detectin of Electrochemical Enzymatic Reactions by Surface Plasmon Resonance Measurement,”Analytical Chemistry,73巻、7号、岩崎 弦、外2名著、p.1595−1598 参照)。
【0008】
さらに、金属薄膜として用いることができる金属には、金、銀、白金、パラジウムなどが利用できる。金属の種類によって、物理化学的反応や化学反応や生物化学的反応における活性度が異なる場合、金属の種類を選択して、目的の反応に合わせた、最適な表面プラズモン共鳴センサの設計・作製が可能である。また、利用する波長あるいは波長範囲を選択することで、目的の反応に合わせた、感度が高い最適な表面プラズモン共鳴センサの設計・作製が可能である。
【0009】
このように、表面プラズモン共鳴センサは、物理化学的、化学的、生物化学的反応に関わる情報を、より多く得ることが可能なトランスデューサであり、表面プラズモン共鳴を用いたセンサシステムは、米国Biaocore社やTI社、国内においては日本レーザ電子やNTT−AT社などからすでに商品化されている。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−146836公報
【特許文献2】
特願2002−355353明細書
【特許文献3】
特願2002−355354明細書
【特許文献4】
特願2002−339895明細書
【特許文献5】
特開2000−304673公報
【非特許文献1】
”Planar Substrate SurfacePlasmon Resonance Probe,”Proceedings of SPIE、2836巻、S.Yee,外2名著、p.178−185(p.181の図2)
【非特許文献2】
”Detectin of Electrochemical Enzymatic Reactions by Surface Plasmon Resonance Measurement,”Analytical Chemistry,73巻、7号、岩崎 弦、外2名著、p.1595−1598
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、利用する光波長に対して吸収を持った物質は、従来の表面プラズモン共鳴センサのための導波路構造を適用する場合、屈折率を正確に測定できない問題があった。これは表面プラズモン共鳴が、複素屈折率の実数部と虚数部の両方に敏感だからである。
【0012】
従来の導波路構造を利用して、角度測定型の表面プラズモン共鳴センサとする場合には、測定対象物の吸収が存在しない光波長を選択し、それに対応する光源、また、利用する光の波長に合わせた光学プリズムおよび偏光子の材料を含めた光学系を再設計しなおして、光吸収のない状態での測定系を実現することで問題を解決してきた。
【0013】
しかし、光学系の変更は、光源および光学材料自身の変更が伴うため、簡単に実施することができるものではないため、表面プラズモン共鳴センサの適用できない反応系と試料物質があった。さらに、消衰係数kが未知の物質が試料として混入する場合も、従来の導波路構造では、正確な屈折率測定が不可能であった。
【0014】
そこで、表面プラズモン共鳴センサにおいて、測定対象物が光吸収を持つ場合の屈折率変化の測定の確度を向上させるデバイス構成を提案する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、本発明による表面プラズモン共鳴センサは、測定用の光を入射する導波路コア層と、前記コア層上に積層された金属薄膜と、前記金属薄膜上に形成され、前記導波路コア層より高い屈折率を持ち、前記導波路コア層に入射する測定用の光の波長の100から10分の1の厚さで前記金属薄膜と測定対象試料を設けるためのサンプル層とを隔てる誘電体膜とを備えたことを特徴とする。
【0018】
さらに本発明による屈折率変化測定方法は、表面プラズモン共鳴法による屈折率変化測定方法であって、表面プラズモンを発生させる金属薄膜と測定対象とを、測定用の光の波長の100から10分の1の厚さであって、金属薄膜の入射側物質の誘電率よりも高い誘電率を持つ誘電体膜で隔てて配置する手順と、前記金属薄膜に前記測定対象試料と反対側から光を照射し、反射光強度を測定する手順と、を備えることを特徴とする。
【0019】
測定対象試料は、高屈折率の絶縁体膜のさらに外側のサンプル層に設置される。
【0020】
高屈折率の絶縁体膜は、表面プラズモン共鳴センサが利用する光波長範囲(550から1000nm)の範囲において、大きな光吸収を持たないものであり、その膜の厚さは金属薄膜の表面で生じる表面プラズモンの影響がサンプル層に到達する程度に薄い。すなわち、前記絶縁体膜の厚さは、使用する測定用の光の波長の1/100〜1/10である。上記範囲を逸脱すると、表面プラズモン共鳴を生じることができないからである。また前記誘電体膜は、光の消衰係数kが0.01より小さい。0.01以上であると、表面プラズモン共鳴現象を引き起こすために金属薄膜での全反射により生じるエバネッセント光が、誘電体膜の上部のサンプル層に到達できる程度に光吸収が小さくなくなるからである。
【0021】
上記のような高屈折率の絶縁体膜は例えば、光学活性な有機低分子の有機固体材料からプラズマプロセスで形成するポリマーとして実現できる。プラズマプロセスは、有機の膜厚制御された薄膜形成法として有用であり、かつ、プラズマプロセスにおいて形成される有機薄膜は、三次元的ネットワークを持つ緻密な構造のポリマーであるため、光に対し高い屈折率を有する。また、構成物が主に炭素、水素、窒素であるため、550から1000nmの光波長範囲において、光吸収が小さい。また、絶縁性を有し、酸、アルカリに対する耐性を持つ特徴がある。
【0022】
【作用】
表面プラズモン共鳴現象を利用したセンシングにおいて、金属外部の測定対象である試料の層での光吸収による影響は、表面プラズモンの生成面、すなわち、金属薄膜と誘電体との界面から近傍で大きい。
【0023】
例えば、波長600nmの光を考えると、表面プラズモンの生成面から約10nm程度の領域においては、反射光強度に与えるk値の影響は非常に大きくなる。反対に、表面プラズモンの生成面から約10nm以上離れると、kの値が10倍程度違っていても、導波路コア層と金属薄膜界面に入射させた全反射光に対する反射光強度に与える影響はほとんど変化しない。
【0024】
そこで、kの値による影響が大きい金属薄膜の近傍面に、あらかじめ、導波路コア層より屈折率が高い誘電体膜を形成しておくことで、測定対象の試料のkが反射光強度に与える影響を小さくする。これにより、k値が大きい、すなわち、測定光に対し吸収を有する生成物の濃度変化を表面プラズモン共鳴センサにて求める際、対象物質の濃度変化による光吸収の影響を抑えて、濃度変化そのものを反映した反射光スペクトルを求めることができる。
【0025】
また、表面プラズモン共鳴を伴ったエバネッセント波の導波路コア層の外部に形成された高屈折率な誘電体層への導入により、さらに外部のサンプル層の屈折率に対応した漏洩モードの損失を同時に測定することができる。
【0026】
すなわち、本発明の導波路構造およびデバイスでは、高屈折率の絶縁体膜の外部にある試料である物質の屈折率ns、物質の吸光を表す消衰係数ksとして表すとき、表面プラズモン共鳴センサで検出する光反射強度の極小値に対し、ksが与える影響を小さく抑えることができる。
【0027】
例えば、光反射強度の極小値に対応する波長λminが、従来のデバイスにおいては、kの値が0.01程度と比較的大きい場合、n値が0.1大きくなっても、k値の影響によりλminの長波長側へのシフトが観測されずに、表面プラズモン共鳴センサが濃度変化に対応した屈折率変化を求めることができないことを表すが、本発明のデバイスによるならば、kの値が0.005という吸収を持つ場合にも、λminの値は長波長側にシフトすることが観測され、表面プラズモン共鳴センサの検知目的である、物理化学反応あるいは生物化学反応の結果生じる生成物の濃度上昇に対応する屈折率を正確に求めることができる。
【0028】
測定領域の光を吸収してしまう物質についても、表面プラズモン共鳴を利用した屈折率変化をモニタリングすることが可能になる。表面プラズモンセンサを利用する際の、波長領域を選択して、設計を作り変えたりする必要がなくなるため、表面プラズモン共鳴センサのデバイス適用範囲が広がる。
【0029】
【実施例1】
図1の(a)および(b)に、本発明である高屈折率の絶縁体膜を被覆した導波路構造を備えた表面プラズモン共鳴センサを示している。比較のために、従来の表面プラズモン共鳴センサの構成を図9に示す。
【0030】
本発明における図1(a)に示される導波路構造では、屈折率Nwを持つガラスまたはプラスチックで作製される導波路コア層1の上に屈折率NAuを持つ金の金属薄膜2を厚さ30〜50nm程度で形成し、その金の金属薄膜2上に屈折率Nf(ただし、Nf>Nw)、厚さd[nm]を持つ誘電体膜3が形成されている。さらに前記誘電体膜3上に、試料を設置するサンプル層4を形成し、表面プラズモン共鳴センサとしている。従来の表面プラズモン共鳴センサにおいては、誘電体膜3がなく、金の金属薄膜2の上に直接、試料を設置するサンプル層4がある。
【0031】
本発明である図1の(a)の導波路構造では、導波路コア層1の上に、金の金属薄膜2および誘電体膜3を直接形成する。一方、図1の(b)の表面プラズモン共鳴センサでは、導波路コア層1と同じ材料あるいは同等の屈折率および光透過特性を持つ材料で作られる補助導波路5を利用し、この上に金の金属薄膜2および誘電体膜3を形成し、導波路コア層1と補助導波路5の間には、オプティカルカップリングを成立させるための、液体あるいはゲル状のマッチングオイルの層6をはさむ。
【0032】
光の導波路コア層1への入射光7の導入方法については、表面が光学研磨された球面型あるいは適当な角度にカットされたプリズムを介した入射、あるいはレンズにより角度が調整され集光された光の導波路コア層1への直接的な入射、あるいは光ファイバの接続技術を用いた光の導波路コア層1への直接的な入射、などが考えられる。
【0033】
出射光8の検出器への導出は、空間伝播や光ファイバによる伝播が考えられる。出射光8と検出器の間にはTM波に対して選択的に透過させる偏光子9を設置し、表面プラズモン共鳴センサ用デバイスとする。
【0034】
波長λの入射光7が入射角度θ010にて導波路コア層1と金の金属薄膜2の界面に次の全反射条件「θ0>Sin−1(NAu/Nw)、ただしNAuは金の屈折率」を満たすように進入させる。表面プラズモンは、金の金属薄膜2とその上部の誘電体膜3の界面を入射光の進行方向に準じて伝播する。
【0035】
誘電体膜3の上部のサンプル層4に屈折率nsで消衰係数ksを持つ試料が吸着したとすると、このとき、出射光8を検出器で測定して、光反射強度の極小値を、入射角度θ0あるいは入射光波長λを掃引しながら求めると、サンプル層4の屈折率Nsに依存して、光反射強度の極小値に対応する、λminあるいはθminを求めることができる。
【0036】
本発明の効果を、Fresnelの反射率の式を元にした計算シミュレーションにより示す。ここで用いた値は、Nwの値として1.54、高屈折率の絶縁体膜の厚さについては金の金属薄膜と同じ厚さとし、d=25nmとした。試料のnsが1.34および1.35の時、光の吸収を表すksの値を0.001あるいは0.005と変化させたとき、従来の表面プラズモン共鳴センサである図8を想定して計算を行うと、図2の(a)にあるように、λminの値は、Nsが1.34でksが0.008の時には、nsが1.35でksが0.0005の時よりも長い波長になる。 一方、本発明による図1(a)および(b)を想定した計算では、図2の(b)にあるように、nsが1.35でksが0.0005の時には、λminの値はnsが1.34でksが0.008の場合よりも長い波長の値を示す。したがって、光吸収を表すksの値が変化した場合においても、本発明による表面プラズモン共鳴センサにおいては、屈折率の変化に対応するnsの変化を正確に求めることができる。
【0037】
【実施例2】
上記の場合に相当する実験として、光吸収を持つ物質として色素のメチレンブルーを用い、濃度の異なるメチレンブルー水溶液を、本発明による表面プラズモン共鳴センサおよび従来の表面プラズモン共鳴センサで測定した場合を示すが、まず、本発明で用いた高屈折率の絶縁体膜の特徴について述べる。導波路構造は、特願2002−355353、特願2002−355354、特願2002−339895に記載の方法で作製した。
【0038】
高屈折率の絶縁体膜には、スパッタリング法により有機固体材料であるアミノ酸を原料とする薄膜(特開2000−304673に基づいて作製)を用いた。図3に示すように、300nmから1000nmという広い光領域において、1.65以上の屈折率を有し、さらに、500nm以上から1000nmの範囲においては、屈折率が1.65から1.7へとなだらかに変化するという屈折率の異常分散を持たない膜である。また図4に示すように、kの値は500nmでは0.04であるが、それ以上から1000nmの波長範囲においては、さらに小さな値となっていく特徴を持つ。
【0039】
このように、スパッタリング法により有機固体材料であるアミノ酸を原料とする有機絶縁体膜は、可視領域に大きな吸収がなく1.65程度の高い屈折率を持つ絶縁性材料である。一方で、アミノ酸から形成されるスパッタ有機絶縁体膜の外部雰囲気の揮発性分子の濃度変化に対応して、ガス分子の吸収・脱離が可能であることが既知であり、この現象は、図5に示すように、角度検知型の表面プラズモン共鳴センサを利用し、870nmの入射光を用いて、スライドガラス(BK7)上の金の金属薄膜上に形成されたアミノ酸を原料とするスパッタ有機絶縁体膜が、1ppmのカルボンガス雰囲気に曝された時と、0ppm(空気)に曝された時、屈折率に対応する入射角度であるθminが0.001degの増加または減少を繰り返すということで観測が可能である。また、アミノ酸から作製されるスパッタ有機絶縁体膜は、水、アルコール、ヘキサンに代表される有機溶剤に対しても溶解しない化学的安定性を有する有機絶縁体膜であることから、安定した水溶液−膜界面が形成できることが期待できる。
【0040】
このスパッタリング法により有機固体材料であるアミノ酸を原料とする有機絶縁体膜を、金の金属薄膜を形成したポリマーの導波路コア層1の上に形成した。
【0041】
光源に300から1000nmの波長の可視光を出すことができるキセノンランプを用いている。デバイスの出射光8の出てくる端面にTM波用の偏光子10を設置し、空間伝播により検出器であるCCDカメラ(波長分解能が1nm)に導いた。
【0042】
メチレンブルー水溶液について、濃度を約0.1から0.02molL−1で調整した試料を、従来のデバイスに滴下して測定した結果は図6(a)で、スパッタリング法により有機固体材料であるアミノ酸を原料とする有機絶縁体膜の上に滴下して測定したものが図6(b)である。試料濃度は、試料Iが18μmolL−1、試料IIが92μmolL−1、試料IIIが1mmolL−1である。メチレンブルーは、600nm付近から光吸収を持つ色素である。
【0043】
従来のデバイスを用いた結果である図6(a)においては、濃度が低い試料Iと濃度が高い試料IIIを測定すると、反射率スペクトルが縦軸方向にシフトするが、屈折率と対応する横軸方向へのシフトは観測されない。すなわち、λminの値はほぼ一定値となる。これは反射光強度が、サンプル層における光吸収の影響によって変動するためと考えられる。
【0044】
一方、表面プラズモン共鳴センサを用いると、図6(b)にあるように、反射率のスペクトルの形状に大きな変化がないまま、ディップの位置が長波長側へ変化し、試料Iと試料IIIではΔλminが正の12nmという結果が得られた。また、反射率スペクトルのディップの深さが、従来の表面プラズモン共鳴センサを用いた図6(a)の結果と比べて明らかに深く、このことはλminの値を求めるためのフィッティングの正確性が上がる点において重要である。
【0045】
また、本発明による表面プラズモン共鳴センサを用いると、反射率スペクトルのディップが深くなる結果、図2におけるシミュレーションの結果とも一致している。また、λminの値が、従来の表面プラズモン共鳴センサを用いた図6(a)での550nm付近に比べて長波長側である600nm付近に現れているのも、図2のシミュレーション結果と矛盾のない結果である。
【0046】
図7のグラフにあるように、メチレンブルー水溶液濃度の対数に対する反射率の極小値に対応する波長の値においては直線的な関係が現れる。すなわち、光吸収を有するメチレンブルー溶液に対して、表面プラズモン共鳴センサデバイスによって、光吸収を持つメチレンブルーの屈折率変化を求められることが示されている。このグラフから求められる検量線から、波長分解能が1nmの検出器を用いて約0.18molL−1/nmのメチレンブルー水溶液濃度変化を、屈折率をパラメータとした変化として検知できることがわかる。
【0047】
図8に、測定波長範囲において吸収を持たない過塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を変化させたときの本発明による表面プラズモン共鳴センサによって求めた反射光スペクトルを示す。このように、0.5molL−1/nmと3.5molL−1/nmの過塩素酸ナトリウム水溶液に対して、それぞれ、591.9nm、および616.8nmにλminを持つディップが観測される。したがって、吸収を持たない物質に対しては、表面プラズモン共鳴に基づく屈折率測定が行われる。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、
(1)表面プラズモン共鳴センサにおいて、利用する測定光に対して吸収を持つ物質を試料とした場合でも、表面プラズモン共鳴を表現する光反射率スペクトル全体が大きくシフトすることなく、試料である物質の屈折率変化に対応したλminあるいはθminを求めることができる効果が得られる。
【0049】
(2)また、有機固体材料であるアミノ酸を出発物質とするプラズマプロセスにより、550nmから1000nmの間に大きな光吸収がなく、1.65から1.7程度の高い屈折率を保有する有機絶縁体膜は、形成することができる。
【0050】
(3)測定光に対して吸収を持つ試料に対して表面プラズモン共鳴法による屈折率変化を正確に検知できるセンサデバイスは、有機固体材料であるアミノ酸からプラズマプロセスにより作製する高屈折率な有機絶縁体膜を、導波路コア層上に形成した金属薄膜上に形成して、実現することができる。その結果、測定光に吸収を持つ水溶液に対しても、表面プラズモン共鳴デバイスにより、λminの値と濃度の対数との間に直線的な関係を求めることができる。
【0051】
このように、反射スペクトルのディップが深く、しかもシャープで半値幅が小さくなるディップとして得られるようになることは、反射率の極小値を求める計算の精度が上がることとなり、したがって、表面プラズモン共鳴センサの高感度化が可能になる、という効果が得られる。また、従来品に比べて、波長依存の反射率スペクトルが、より波長範囲の狭い領域でディップとして得られることは、特定の目的物質に合わせた光学系での分解能を高めやすいという利点、あるいは、より安価な光学系を設計できる利点がある。
【0052】
上記のように、本発明による表面プラズモン共鳴センサのデバイス構成の上に形成される、イオノフォアのようなイオン感応材料あるいは選択的な吸着を起こす有機膜材料あるいはナノメートルオーダーの空孔を利用した分子サイズ効果による選択的吸着膜などのサンプル層部分で起こる、低分子量の物質により生じる屈折率変化を高感度に検知できるようになるため、従来の表面プラズモン共鳴センサデバイスでは得られなかった高感度な、酵素センサ、抗原抗体反応センサ、ガスセンサなどが、表面プラズモン共鳴を原理として実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるクレッチマン型を基本とする高屈折率の絶縁体膜を有する表面プラズモン共鳴センサの構成図。
【図2】(a)は本発明の表面プラズモン共鳴センサ(高屈折率な誘電体膜あり)、(b)は従来の表面プラズモン共鳴センサ(高屈折率な誘電体膜なし)による屈折率nをもち消衰係数kを有する試料に対する反射率のシミュレーション結果を示す図。
【図3】分光エリプソメトリーによるアミノ酸を固体材料としてプラズマプロセスから形成される有機絶縁体膜の誘電体膜の波長と屈折率の関係のデータを示す図。
【図4】分光エリプソメトリーによるアミノ酸を固体材料としてプラズマプロセスから形成される有機絶縁体膜の誘電体膜の波長と消衰率の関係のデータを示す図。
【図5】870nmの入射光を用いて、スライドガラス(BK7)上の金の金属薄膜上に形成されたアミノ酸を原料とするスパッタ有機絶縁体膜膜の誘電体膜の1ppmのカルボンガスと0ppm(空気)に曝された時のθminの変化を示す図。
【図6】(a)本発明の表面プラズモン共鳴センサ(高屈折率な誘電体膜あり)、(b)従来の表面プラズモン共鳴センサ(高屈折率な誘電体膜なし)によるメチレンブルー水溶液試料の測定結果を示す図。
【図7】本発明の表面プラズモン共鳴センサ(高屈折率な誘電体膜あり)によるメチレンブルー水溶液測定の検量線を示す図。
【図8】過塩素酸ナトリウム水溶液を本発明の表面プラズモン共鳴センサ(高屈折率な誘電体膜あり)で測定した反射率スペクトルを示す図。
【図9】従来の表面プラズモン共鳴センサの構成図。
【符号の説明】
1 導波路コア層
2 金属薄膜
3 誘電体膜
4 サンプル層
5 補助導波路
6 マッチングオイルの層
7 入射光
8 出射光
9 TM波に対して選択的に透過させる偏光子
10 入射角度θ0
Claims (7)
- 測定用の光を入射する導波路コア層と、
前記コア層上に積層された金属薄膜と、
前記金属薄膜上に形成され、前記導波路コア層より高い屈折率を持ち、前記導波路コア層に入射する測定用の光の波長の100から10分の1の厚さで前記金属薄膜と測定対象試料を設けるためのサンプル層とを隔てる誘電体膜と、
を備えたことを特徴とする表面プラズモン共鳴センサ。 - 前記誘電体膜は光消衰係数が0.01より小さいことを特徴とする請求項1記載の表面プラズモン共鳴センサ。
- 前記誘電体膜は、光学活性な有機低分子の有機固体材料を出発材料とし、プラズマプロセスにより形成したポリマーであることを特徴とする請求項1または2記載の表面プラズモン共鳴センサ。
- 前記出発材料はアミノ酸であることを特徴とする請求項3記載の表面プラズモン共鳴センサ。
- 前記サンプル層は、イオン感応材料、選択的な吸着を起こす有機材料、あるいは分子サイズ効果による選択的吸着膜であることを特徴とする請求項1から4記載のいずれかの表面プラズモン共鳴センサ。
- 表面プラズモン共鳴法による屈折率変化測定方法であって、
表面プラズモンを発生させる金属薄膜と測定対象試料とを、測定用の光の波長の100から10分の1の厚さであって、金属薄膜の入射側物質の誘電率よりも高い誘電率を持つ誘電体膜で隔てて配置する手順と、
前記金属薄膜に前記測定対象試料と反対側から光を照射し、反射光強度を測定する手順と、
を備えることを特徴とする屈折率変化測定方法。 - 前記誘電体膜は、光学活性な有機低分子の有機固体材料を出発材料とし、プラズマプロセスにより形成したポリマーであることを特徴とする請求項6記載の屈折率変化測定方法。
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