以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る運転支援装置を、緊急車両(例えば、救急車、消防車、警察車両)に搭載される運転支援装置に適用する。本実施の形態に係る運転支援装置は、インフラ協調制御により、交差点通過する際に必要な運転支援を行う。特に、本実施の形態に係る運転支援装置は、緊急車両が緊急走行し、道路交通法上の交通規制(例えば、信号機、進入禁止)に関係なく優先して交差点を通過する際に、安全かつスムーズに走行できるように運転支援を行う。本実施の形態では、運転支援として他の移動体との衝突を防止するための横断歩行者事故防止支援(歩行者以外にも、横断歩道を移動する他の移動体(自転車など)も含む)、出会い頭事故防止支援、正面衝突事故防止支援、右直事故防止支援、左折巻き込み事故防止支援、交差点内における追突防止支援とする。なお、本実施の形態では、赤信号(但し、矢灯信号がある信号機の場合には矢印信号が全消灯)が進行不可信号であり、この赤信号以外の信号状態が進行許可信号である。
図1〜図3を参照して、本実施の形態に係る運転支援装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る緊急車両に搭載される運転支援装置の構成図である。図2は、本実施の形態に係る一般車両に搭載される運転支援装置の構成図である。図3は、緊急車両が進入する交差点の一例を示す模式図である。
運転支援装置1は、緊急車両が緊急走行時には必要な支援を選択して運転支援を行い、緊急車両が通常走行時には一般車両と同様の運転支援を行う。緊急車両が緊急走行時、運転支援装置1では、進入する交差点毎に、インフラ情報を取得し、信号機の状態、道路規制(進入禁止など)、緊急車両の交差点内での進行方向に基づいて必要な運転支援や不必要な運転支援を決定するとともに運転支援の順序を決定し、その決定に従って運転支援を行う。なお、本実施の形態では、緊急車両が通常走行時の一般車両と同様の運転支援については、その説明を省略する。
運転支援装置1は、交差点に進入する移動体(横断歩道を移動する移動体も含む)との通信(車車間通信、歩車間通信など)が可能であり、その移動体に関する情報を受信し、交差点に進入する移動体との衝突の可能性がある場合には運転者に対して情報提供を行うとともにその衝突の可能性のある移動体に対して情報提供を行う。また、運転支援装置1は、路側に設置されるインフラ装置(光ビーコン)との路車間通信が可能であり、進入する交差点における信号機の信号サイクル情報、交差点に接続する各道路の進入禁止情報(左折禁止、右折禁止の情報も含む)、交差点の位置情報や形状情報、横断歩道情報(有無、位置など)を受信し、緊急車両が交差点に進入するときの信号機の状態、緊急車両が交差点通過後に走行ルート上の道路の規制情報、交差点の形状、通過する横断歩道情報を把握できる。また、運転支援装置1が搭載される緊急車両は、ナビゲーションシステムを装備しており、目的地(現場)までの走行ルートを把握できる。
そのために、運転支援装置1は、緊急走行ON/OFFスイッチ10、移動体通信アンテナ11、移動体通信車載機12、路車間通信アンテナ13、路車間通信車載機14、ナビゲーションシステム15、報知装置16及びECU[Electronic Control Unit]17を備えている。この各部の構成については後で詳細に説明する。なお、本実施の形態では、移動体通信アンテナ11及び移動体通信車載機12が特許請求の範囲に記載する移動体検出手段に相当し、路車間通信アンテナ13及び路車間通信車載機14が特許請求の範囲に記載する信号機情報取得手段に相当し、ナビゲーションシステム15が特許請求の範囲に記載する進行方向検出手段に相当し、ECU17における処理が特許請求の範囲に記載する運転支援手段に相当する。
一方、交差点に進入する他車両(自動二輪車も含む)にも、運転支援装置2がそれぞれ搭載されている。運転支援装置2は、他の車両(緊急車両など)との車車間通信が可能であり、他の車両から送信される衝突を防止するための情報(例えば、交差点のどちらの方向から緊急車両が接近しているか、交差点に進入すると緊急車両と衝突する可能性があるか否か)を運転者に提供するとともに、車両情報(例えば、現在位置、現在の進行方向、車速、交差点での進行方向(進入する道路))を他の車両に送信する。そのために、運転支援装置2は、車車間通信アンテナ20、車車間通信車載機21、報知装置22(例えば、スピーカ、ディスプレイ)及びECU23を備えている。他の車両から信号を受信する場合、車車間通信アンテナ20で所定距離以内に存在する車両から信号を受信し、車車間通信車載機21でその受信した信号を復調して情報を取り出してECU23に送信する。ECU23ではその情報を運転者に提供するための音声信号や画像信号を生成し、報知装置22にその音声信号や画像信号を送信する。報知装置22では、その音声信号に応じた音声を出力したり、あるいは、その画像信号に応じて画像を表示する。また、他の車両に信号を送信する場合、ECU23では、他のシステムやセンサなどから収集した情報に基づいて、他の車両に提供する車両情報を車車間通信車載機21に送信する。車車間通信車載機21ではその情報を変調し、車車間通信アンテナ20から所定距離以内に存在する車両に対してその変調した信号を送信する。なお、運転支援装置2は、他の移動体との衝突を防止するための運転支援を独自で行う機能も有していてもよい。
なお、歩行者や自転車の乗員も、携帯電話などを利用して、上記の他車両が行うような他の車両(緊急車両など)から送信される衝突を防止するための情報(例えば、交差点のどちらの方向から緊急車両が接近しているか、横断歩道を横断すると緊急車両と衝突する可能性があるか否か)を歩行者などに提供するとともに、歩行者などの情報(例えば、現在位置、現在の進行方向)を車両に送信する。
ここで、図3を参照して、緊急車両EVが進入する交差点Cの一例を説明しておく。交差点Cは、2本の道路が直交(交差)し、4つの道路R1,R2,R3,R4が接続する4差路の交差点である。交差点Cに接続する各道路R1,R2,R3,R4には、交差点Cから所定距離離れた各位置にインフラ装置(光ビーコンBなど)が設置されている。緊急車両EVでは、路車間通信により、この光ビーコンBのダウンリンクエリアを通過する際に情報がダウンリンクされる。
このダウンリンクされる情報としては、VICS[Vehicle Information CommunicationSystem]情報やインフラ情報がある。VICS情報は、全車線で共通の道路交通情報である。道路交通情報は、渋滞情報、交通規制情報、駐車場情報などがある。インフラ情報は、交差点の位置情報、交差点の形状情報、交差点における横断歩道情報(横断歩道の有無、横断歩道の位置)、交差点に接続する各道路の進入禁止情報(進入禁止(一方通行)、右折禁止、左折禁止など)、信号サイクル情報などがある。このインフラ情報で取得できる信号サイクル情報は、青信号、黄信号、赤信号の点灯サイクル(矢灯信号を備える信号機の場合には矢灯信号も含めた点灯サイクル)、各信号の点灯時間(秒数)、現在点灯している信号とその信号が点灯してからの経過時間などである。
このインフラ情報で取得できる横断歩道情報は、交差点Cに接続する全ての道路R1,R2,R3,R4についての横断歩道の有無及び横断歩道がある場合にはその位置情報である。この例では、道路R1に横断歩道PC1が設けられ、道路R2に横断歩道PC2が設けられている。また、このインフラ情報で取得できる進入禁止情報は、交差点Cに接続する全ての道路R1,R2,R3,R4についての進入禁止情報である。また、このインフラ情報で取得できる信号サイクル情報は、緊急車両EVが走行している道路R1,R2の信号機S1,S2の情報だけでなく、交差点Cで直交する道路R3,R4の信号機S3,S4の情報も取得できる。
また、緊急車両EVでは、車車間通信により、交差点C周辺に存在する他車両OV1,OV2などから各車両の情報を受信する。この車両情報としては、現在位置、進行方向、車速などである。また、緊急車両EVでは、歩車間通信により、交差点C周辺に存在する歩行者W1,W2などから各歩行者の情報を受信する。この歩行者情報としては、現在位置、進行方向などである。また、緊急車両EVでは、ナビゲーションシステムによって現場までの走行ルートを取得する。
緊急走行中の緊急車両EVでは、インフラ情報を取得すると、交差点の位置情報と信号サイクル情報、車速、現在位置情報に基づいて、交差点に進入するときの進行方向の道路の信号機の状態及び直交方向の道路の信号機の状態をそれぞれ予測する。そして、緊急車両EVでは、進行方向の信号機の状態、直交方向の信号機の状態、各道路の進入規制道路及び走行ルート(交差点内での進行方向)に基づいて動作させる運転支援を選択し、その選択した運転支援を行う。
それでは、運転支援装置1の各部について詳細に説明する。緊急走行ON/OFFスイッチ10は、運転者による操作によって緊急走行を行っているか否か(ON/OFF)を入力するためのスイッチである。緊急走行ON/OFFスイッチ10では、運転者のON/OFF操作情報をECU17に送信する。
移動体通信アンテナ11及び移動体通信車載機12は、自車両周辺の移動体と通信を行うための移動体通信装置(例えば、車車間通信装置、歩車間通信装置)である。移動体通信アンテナ11では、緊急車両周辺の所定距離内に存在する移動体と電波によって信号を送受信する。信号を送信する場合、移動体通信車載機12では、ECU17からの提供情報を変調し、その変調した信号を移動体通信アンテナ11に送信する。信号を受信する場合、移動体通信車載機12では、その受信した信号を復調して情報を取り出し、その情報をECU17に送信する。なお、この移動体通信装置は、車車間通信装置及び歩車間通信装置などを全て行うことができる一体の通信装置でもよいし、車車間通信装置や歩車間通信装置などにそれぞれ対応した各通信装置でもよい。
路車間通信アンテナ13及び路車間通信車載機14は、インフラ装置と通信を行うための路車間通信装置であり、光ビーコン用の通信装置である。路車間通信アンテナ13では、緊急車両が交差点の手前のダンリンクエリア内を通過しているときに、交差点の手前の所定の位置に設置される光ビーコンと近赤外線によって信号を送受信する。特に、光ビーコンから信号を受信する場合、路車間通信車載機14では、その受信した信号を復調してダウンリンク情報を取り出し、そのダウンリンク情報(特に、インフラ情報)をECU17に送信する。なお、インフラ装置が光ビーコンでない場合、インフラ装置に応じた通信装置となる。
ナビゲーションシステム15は、緊急車両の現在位置や進行方向の検出及び目的地が設定された場合には目的地までの走行ルートを算出し、走行ルートに沿った経路案内などを行うシステムである。特に、ナビゲーションシステム15では、検出した現在位置や進行方向及び車速センサから取得している車速情報をECU17に送信する。また、ナビゲーションシステム15では、緊急走行時に目的地(現場)が登録された場合、目的地までの走行ルート情報をECU17に送信する。
なお、ナビゲーションシステムが搭載されていない場合、他の手段で現在位置や進行方向を取得する。例えば、GPS受信装置で現在位置を取得し、その現在位置の時間変化によって進行方向を取得する。あるいは、ジャイロセンサなどの各種方向センサで進行方向を取得する。また、ウインカスイッチの操作情報で交差点内での進行方向を取得する。
報知装置16は、運転者へ情報提供を行うための報知装置であり、例えば、スピーカ、ディスプレイである。報知装置16では、ECU17から音声信号を受信すると、その音声信号に応じて音声を出力する。また、報知装置16では、ECU17からの画像信号を受信すると、その画像信号に示される画像を表示する。
ECU17は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、運転支援装置1を統括制御する。ECU17では、緊急車両がダウンリンクエリア通過時には路車間通信車載機14からインフラ情報を受信し、自車両周辺に通信可能な移動体が存在するときには移動体通信車載機12から移動体情報を受信する。また、ECU17では、所定時間毎にナビゲーションシステム15から各種情報を受信する。そして、ECU17では、これら各情報に基づいて信号状態予測処理、運転支援処理などを実行し、情報提供する場合には報知装置16に各信号をそれぞれ送信するとともに移動体通信車載機12に提供情報を送信する。
信号状態予測処理について説明する。ECU17では、通過する交差点毎に、路車間通信車載機14からの交差点位置情報と信号サイクル情報、ナビゲーションシステム15からの車速情報と現在位置情報に基づいて、緊急車両が現在車速を維持したと仮定した場合に緊急車両が交差点に進入するときの進行方向の道路の信号機の状態及び直交方向の道路の信号機の状態を予測する。具体的には、ECU17では、緊急車両の現在位置と交差点の位置に基づいて交差点までの残距離を算出し、その残距離と緊急車両の現在車速に基づいて交差点に到達するまでの残時間を算出する。そして、ECU17では、その残時間と信号サイクル情報に基づいて、交差点に到達するときの信号機の状態をそれぞれ予測する。なお、緊急車両の加速度などの他の情報を考慮して予測してもよい。
運転支援処理について説明する。緊急走行している場合でも、進行方向の信号機の状態が進行許可信号のときには、交通規制を遵守した走行となるので、通常の一般車両に対して動作させる運転支援を選択する。また、緊急走行している場合でも、交差点における全ての信号機の状態が進行不可信号の場合、緊急車両以外の全ての移動体が停止している。したがって、緊急車両が他の移動体を衝突する可能性がないので、全ての運転支援を動作させる必要がなく、全ての運転支援を選択しない。
進行方向の信号機の状態が進行不可信号や進入先の道路の進行禁止を守らないで交通規制を無視して緊急走行するときには、緊急車両が通常と異なる走行を行うので、交通規制を遵守して走行するときには通常動作させない運転支援を動作させる必要がある。このような必要となる運転支援としては、(1)横断歩行者事故防止支援、(2)出会い頭事故防止支援、(3)正面衝突事故防止支援がある。
また、進行方向の信号機の状態が進行不可信号の場合、緊急車両と同じ進行方向の他の車両は、進行不可信号で停止している。そのため、信号機の状態が進行不可信号を守らないで交通規制を無視して緊急走行するときには、このような同じ進行方向の他の車両との関係において交通規制を遵守して走行するときには通常動作させる運転支援でも動作させなくてもよい。このような不必要となる運転支援としては、(4)右直事故防止支援、(5)左折巻き込み事故防止支援、(6)交差点内における追突事故支援がある。
以下に、緊急車両が交差点に進入するときの進行方向の信号機の状態と直交方向の信号機の状態、緊急車両の交差点内での進行方向(直進or右折or左折)、緊急車両の進行先の道路の進入禁止情報による各条件において、選択される運転支援について具体的に説明する。
進行方向の信号機の状態が進行許可信号の条件について説明する。進行方向の信号機が青信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号と判定した場合、交差点内での進行方向が直進のときには追突事故防止支援を選択し、交差点内での進行方向が右折のときには右直事故防止支援、横断歩行者事故防止支援及び追突事故防止支援を選択し、交差点内での進行方向が左折のときには左折巻き込み事故防止支援、横断歩行者事故防止支援及び追突事故防止支援を選択する。また、進行方向の信号機が右折矢印かつ直交方向の信号機の状態が赤信号と判定した場合、交差点内での進行方向が右折のときには追突事故防止支援を選択する。
全ての信号機が進行不可信号の条件について説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号と判定した場合、全ての運転支援を選択しない。
(1)横断歩行者事故防止支援が必要となる場合の条件1について図4を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が青信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が直進or右折or左折と判定した場合(条件1)、横断歩行者事故防止支援を選択する。
図4に示す例の場合、上記の条件1(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が青信号かつ緊急車両EVの走行ルートが直進or右折or左折)で緊急車両EVが交差点Cに進入する場合、横断歩道PC1に対する信号機の状態が青信号なので、交通規制に従って歩行する歩行者W1が、緊急車両EVに気付かずに、横断歩道PC1に進入する可能である。そのため、上記の条件1が成立した場合、交差点Cに進入する緊急車両EVと歩行者W1とが衝突する可能性があるので、歩行者W1に対する横断歩行者事故防止支援を動作させる必要がある。さらに、緊急車両EVが直進する場合、横断歩道PC2に対する信号機の状態が青信号なので、横断歩道PC2を横断する歩行者W2に対する横断歩行者事故防止支援も行う必要がある。ただし、緊急車両EVが右折又は左折する場合、直交する道路R3,R4に横断歩道があっても、この横断歩道に対する信号機の状態は赤信号なので、横断歩行者事故防止支援を動作させる必要はない。
一般車両に対する運転支援において条件1が成立した場合、従来技術では、その車両が赤信号で交差点に進入しないような運転支援(情報提供、介入制御など)を最優先に動作させる。その際、一般車両は赤信号で停止するので、歩行者W1,W2に対する運転支援は、原則的には動作されない。このように条件1において横断歩行者事故防止支援を動作させる必要があるのは、緊急車両が交通規制を無視して赤信号で交差点に進入する場合に特化した運転支援の考え方である。
(2)出会い頭事故防止支援が必要となる場合の条件2−1について図5を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が青信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が直進or右折or左折と判定した場合(条件2−1)、出会い頭事故防止支援を選択する。
図5に示す例の場合、上記の条件2−1(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が青信号かつ緊急車両EVの走行ルートが直進or右折or左折)で緊急車両EVが交差点Cに進入する場合、直交方向の道路R3、R4を走行中の他車両OV1,OV2が、緊急車両EVに気付かずに、交通規制に従って交差点Cに進入する可能である。そのため、上記の条件2−1が成立した場合、交差点Cに進入する緊急車両EVと他車両OV1,OV2とが衝突する可能性があるので、直交方向の道路R3,R4を走行する他車両OV1,OV2に対する出会い頭事故防止支援を動作させる必要がある。
(2)出会い頭事故防止支援が必要となる場合の条件2−2について図6を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が右折矢印かつ緊急車両の交差点内での進行方向が直進or右折と判定した場合(条件2−2)、出会い頭事故防止支援を選択する。
図6に示す例の場合、上記の条件2−2(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が右折矢印かつ緊急車両EVの走行ルートが直進or右折)で緊急車両EVが交差点Cに進入する場合、直交方向の道路R3、R4を走行中の他車両OV1,OV2が、緊急車両EVに気付かずに、交通規制に従って交差点Cで右折する可能である。そのため、上記の条件2−2が成立した場合、交差点Cで直進又は右折する緊急車両EVと他車両OV1、OV2とが衝突する可能性があるので、直交方向の道路R3,R4で右折する他車両OV1,OV2に対する出会い頭事故防止支援を動作させる必要がある。
(2)出会い頭事故防止支援が必要となる場合の条件2−3について図7を参照して説明する。進行方向の信号機が右折矢印かつ直交方向の信号機の状態が赤信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が直進or左折と判定した場合(条件2−3)、出会い頭事故防止支援を選択する。
図7に示す例の場合、上記の条件2−3(信号機S1,S2が右折矢印かつ信号機S3,S4が赤信号かつ緊急車両EVの走行ルートが直進or左折)で緊急車両EVが交差点Cに進入する場合、対向側の道路R2を走行中の他車両OV1が、緊急車両EVに気付かずに、交通規制に従って交差点Cで右折する可能である。そのため、上記の条件2−3が成立した場合、交差点Cで直進又は左折する緊急車両EVと他車両OV1とが衝突する可能性があるので、対向側の道路R2で右折する他車両OV1に対する出会い頭事故防止支援を動作させる必要がある。
一般車両に対する運転支援において条件2−1、条件2−2、条件2−3のいずれかが成立した場合、従来技術では、その車両が赤信号で交差点に進入しないような運転支援を最優先に動作させる。そもそも、出会い頭事故防止支援は、信号機のない交差点で動作させる運転支援であり、信号機のある交差点では原則的には動作されない(交通規制を遵守していれば、信号機のある交差点では出会い頭事故は発生しない)。このように条件2−1、条件2−2、条件2−3において出会い頭事故防止支援を動作させる必要があるのは、緊急車両が交通規制を無視して赤信号や右折矢印信号で交差点に進入する場合に特化した運転支援の考え方である。
(3)正面衝突事故防止支援が必要となる場合の条件3−1について図8を参照して説明する。進行方向の信号機が青信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が直進かつ緊急車両の直進先の道路が進入禁止と判定した場合(条件3−1)、正面衝突事故防止支援を選択する。
図8に示す例の場合、上記の条件3−1(信号機S1,S2が青信号かつ信号機S3,S4が赤信号かつ緊急車両EVの走行ルートが直進かつ対向側の道路R2が進入禁止)で緊急車両EVが直進せざる得ない場合(現場への近道など)、対向側の道路R2を走行中の他車両OV1が、交通規制に従って交差点Cに向かって進行すると、緊急車両EVと正面衝突する可能性が可能である。そのため、上記の条件3−1が成立した場合、対向側の道路R2を走行する他車両OV1に対する正面衝突事故防止支援を動作させる必要がある。
(3)正面衝突事故防止支援が必要となる場合の条件3−2について図9を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が青信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が右折かつ緊急車両の右折先の道路が進入禁止(すなわち、右折禁止)と判定した場合(条件3−2)、正面衝突事故防止支援を選択する。
図9に示す例の場合、上記の条件3−2(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が青信号かつ緊急車両EVの走行ルートが右折かつ直交方向の右側の道路R3が進入禁止)で緊急車両EVが右折せざる得ない場合(現場への近道など)、直交方向の右側の道路R3を走行中の他車両OV1が、交通規制に従って交差点Cに向かって進行すると、緊急車両EVと正面衝突する可能性が可能である。そのため、上記の条件3−2が成立した場合、直交方向の右側の道路R3を走行する他車両OV1に対する正面衝突事故防止支援を動作させる必要がある。
(3)正面衝突事故防止支援が必要となる場合の条件3−3について図10を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が青信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が左折かつ緊急車両の左折先の道路が進入禁止(すなわち、左折禁止)と判定した場合(条件3−3)、正面衝突事故防止支援を選択する。
図10に示す例の場合、上記の条件3−3(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が青信号かつ緊急車両EVの走行ルートが左折かつ直交方向の左側の道路R4が進入禁止)で緊急車両EVが左折せざる得ない場合(現場への近道など)、直交方向の左側の道路R4を走行中の他車両OV1が、交通規制に従って交差点Cに向かって進行すると、緊急車両EVと正面衝突する可能性が可能である。そのため、上記の条件3−3が成立した場合、直交方向の左側の道路R4を走行する他車両OV1に対する正面衝突事故防止支援を動作させる必要がある。
一般車両に対する運転支援において条件3−1、条件3−2、条件3−3のいずれかが成立した場合、従来技術では、その車両が進入禁止の道路に進入しないような運転支援を動作させる。そもそも、正面衝突事故防止支援は、交差点ではなく、単路で動作させる運転支援であり(例えば、道路のセンタラインを超えた車両やセンタラインのない道路において中央付近を走行している車両に対して正面衝突の可能性がある場合の運転支援)、進入禁止の道路を逆走する車両に対しては原則的には動作されない(交通規制を遵守していれば、進入禁止規制のある道路では正面衝突事故は発生しない)。このように条件3−1、条件3−2、条件3−3において正面衝突事故防止支援を動作させる必要があるのは、緊急車両が交通規制を無視して進入禁止がある道路に進入する場合に特化した運転支援の考え方である。
(4)右直事故防止支援が不必要となる場合の条件4−1について図11を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が青信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が右折と判定した場合(条件4−1)、右直事故防止支援を選択しない。
図11に示す例の場合、上記の条件4−1(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が青信号かつ緊急車両EVの走行ルートが右折)で緊急車両EVが交差点Cで右折する場合、右直事故防止支援の対象となる対向側の道路R2の他車両OV3は、交通規制を遵守するので、赤信号で停止中である。そのため、上記の条件4−1が成立した場合、右直事故防止支援を動作させる必要はない。ちなみに、この条件4−1が成立している場合、上記の条件2−1も成立しているので、直交方向の道路R3,R4を走行する他車両OV1,OV2に対する出会い頭事故防止支援を動作させる必要がある。
(4)右直事故防止支援が不必要となる場合の条件4−2について図12を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が右折と判定した場合(条件4−2)、右直事故防止支援を選択しない。
図12に示す例の場合、上記の条件4−2(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が赤信号かつ緊急車両EVの走行ルートが右折)で緊急車両EVが交差点Cで右折する場合、右直事故防止支援の対象となる対向側の道路R2の他車両OV3は、交通規制を遵守するので、赤信号で停止中である。そのため、上記の条件4−2が成立した場合、右直事故防止支援を動作させる必要はない。ちなみに、この条件4−2が成立している場合、上記の進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号の条件も成立しているので、右直事故防止支援も含めて全ての運転支援を動作させる必要がない。
一般車両に対する運転支援において条件4−1、条件4−2のいずれかが成立した場合、従来技術では、その車両が赤信号(又は右折できない信号機の状態)で交差点に進入しないような運転支援を最優先で動作させる。そもそも、右直事故防止支援は、信号機のある交差点の場合には青信号で右折するときに動作させる運転支援であり、信号機のある交差点において赤信号で右折する場合には原則的には動作されない。一般車両の場合で右直事故防止支援が不要となる条件は、進行方向の信号機が右折矢印の場合のみであり、この場合には対向車両と交錯しない。このように条件4−1、条件4−2において右直事故防止支援を動作させる必要がないのは、緊急車両が交通規制を無視して赤信号で交差点で右折する場合に特化した運転支援の考え方である。
(5)左折巻き込み事故防止支援が不必要となる場合の条件5−1について図13を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が青信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が左折と判定した場合(条件5−1)、左折巻き込み事故防止支援を選択しない。
図13に示す例の場合、上記の条件5−1(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が青信号かつ緊急車両EVの走行ルートが左折)で緊急車両EVが交差点Cで左折する場合、左折巻き込み事故防止支援の対象となる緊急車両EVの左側の自動二輪車MCは、交通規制を遵守するので、赤信号で停止中である。そのため、上記の条件5−1が成立した場合、左折巻き込み事故防止支援を動作させる必要はない。ちなみに、この条件5−1が成立している場合、上記の条件2−1も成立しているので、直交方向の道路R3,R4を走行する他車両OV1,OV2に対する出会い頭事故防止支援を動作させる必要がある。
(5)左折巻き込み事故防止支援が不必要となる場合の条件5−2について図14を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が左折と判定した場合(条件5−2)、左折巻き込み事故防止支援を選択しない。
図14に示す例の場合、上記の条件5−2(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が赤信号かつ緊急車両EVの走行ルートが左折)で緊急車両EVが交差点Cで左折する場合、左折巻き込み事故防止支援の対象となる緊急車両EVの左側の自動二輪車MCは、交通規制を遵守するので、赤信号で停止中である。そのため、上記の条件5−2が成立した場合、左折巻き込み事故防止支援を動作させる必要はない。ちなみに、この条件5−2が成立している場合、上記の進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号の条件も成立しているので、左折巻き込み事故防止支援を含めて全ての運転支援を動作させる必要がない。
(5)左折巻き込み事故防止支援が不必要となる場合の条件5−3について図15を参照して説明する。進行方向の信号機が右折矢印かつ直交方向の信号機の状態が赤信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が左折と判定した場合(条件5−3)、左折巻き込み事故防止支援を選択しない。
図15に示す例の場合、上記の条件5−3(信号機S1,S2が右折矢印かつ信号機S3,S4が赤信号かつ緊急車両EVの走行ルートが左折)で緊急車両EVが交差点Cで左折する場合、左折巻き込み事故防止支援の対象となる緊急車両EVの左側の自動二輪車MCは、交通規制を遵守するので、右折のみ可で停止中である。そのため、上記の条件5−3が成立した場合、左折巻き込み事故防止支援を動作させる必要はない。ちなみに、この条件5−3が成立している場合、上記の条件2−3も成立しているので、対向側の道路R2を走行中の他車両OV1が右折する場合に対する出会い頭事故防止支援を動作させる必要がある。
(5)左折巻き込み事故防止支援が不必要となる場合の条件5−4について図16を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が右折矢印かつ緊急車両の交差点内での進行方向が左折と判定した場合(条件5−4)、左折巻き込み事故防止支援を選択しない。
図16に示す例の場合、上記の条件5−4(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が右折矢印かつ緊急車両EVの走行ルートが左折)で緊急車両EVが交差点Cで左折する場合、左折巻き込み事故防止支援の対象となる緊急車両EVの左側の自動二輪車MCは、交通規制を遵守するので、赤信号で停止中である。そのため、上記の条件5−4が成立した場合、左折巻き込み事故防止支援を動作させる必要はない。ちなみに、この条件5−4が成立している場合、直交方向の道路R3,4を走行中の他車両OV1、OV2が右折するが、これらの他車両OV1,OV2と緊急車両EVとが交錯することはないので、出会い頭事故防止支援を動作させる必要がない。したがって、左折巻き込み事故防止支援を含めて全ての運転支援を動作させる必要がない。
一般車両に対する運転支援において条件5−1、条件5−2、条件5−3、条件5−4のいずれかが成立した場合、従来技術では、その車両が赤信号で交差点に進入しないような運転支援を最優先で動作させる。そもそも、左折巻き込み事故防止支援は、信号機のある交差点の場合には青信号で左折するときに動作させる運転支援であり、信号機のある交差点において赤信号で左折する場合には原則的には動作されない。このように条件5−1、条件5−2、条件5−3、条件5−4において左折巻き込み事故防止支援を動作させる必要がないのは、緊急車両が交通規制を無視して赤信号で交差点で左折する場合に特化した運転支援の考え方である。
(6)追突事故防止支援が不必要となる場合の条件6−1について図17を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が右折矢印かつ緊急車両の交差点内での進行方向が直進or右折or左折と判定した場合(条件6−1)、追突事故防止支援を選択しない。
図17に示す例の場合、上記の条件6−1(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が右折矢印かつ緊急車両EVの走行ルートが直進or右折or左折)で緊急車両EVが交差点Cで進入する場合、緊急車両EVが走行中の道路R1の他車両は、交通規制を遵守するので、赤信号で停止中である。そのため、上記の条件6−1が成立した場合、交差点C内において緊急車両EVの前方には車両が存在しないので、追突事故防止支援を動作させる必要はない。ちなみに、この条件6−1が成立している場合、上記の条件2−2も成立する場合があるので、その場合には直交方向の道路R3,R4の他車両が右折する場合には出会い頭事故防止支援を動作させる必要がある。
(6)追突事故防止支援が不必要となる場合の条件6−2について図18を参照して説明する。進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号かつ緊急車両の交差点内での進行方向が直進or右折or左折と判定した場合(条件6−2)、追突事故防止支援を選択しない。
図18に示す例の場合、上記の条件6−2(信号機S1,S2が赤信号かつ信号機S3,S4が赤信号かつ緊急車両EVの走行ルートが直進or右折or左折)で緊急車両EVが交差点Cで進入する場合、緊急車両EVが走行中の道路R1の他車両は、交通規制を遵守するので、赤信号で停止中である。そのため、上記の条件6−2が成立した場合、交差点C内において緊急車両EVの前方には車両が存在しないので、追突事故防止支援を動作させる必要はない。ちなみに、この条件6−2が成立している場合、上記の進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号の条件も成立しているので、追突事故防止支援を含めて全ての運転支援をさせる必要がない。
一般車両に対する運転支援において条件6−1、条件6−2のいずれかが成立した場合、従来技術では、その車両が赤信号で交差点に進入しないような運転支援を最優先で動作させる。そもそも、追突事故防止支援は、信号機のある交差点の場合には青信号や右折矢印で交差点に進入するときに動作させる運転支援であり、信号機のある交差点において赤信号で交差点に進入する場合には原則的には動作されない。このように条件6−1、条件6−2において追突事故防止支援を動作させる必要がないのは、緊急車両が交通規制を無視して赤信号で交差点に進入する場合に特化した運転支援の考え方である。
図19には、上記で説明した、緊急車両が交通規制を無視して緊急走行する場合に交通規制を遵守している場合には通常動作させる必要のない運転支援を動作させる場合の条件の一覧を示している。また、図20には、上記で説明した、緊急車両が交通規制を無視して緊急走行する場合に交通規制を遵守している場合には通常動作させる必要がある運転支援を動作させない場合の条件の一覧を示している。
さらに、図21には、進行方向の信号機の状態、直交方向の信号機の状態、緊急車両の交差点内での進行方向の3つのパラメータでパターン分けした場合において、上記で説明した動作させるために選択した運転支援と選択した運転支援の支援順序を示している。
進行方向の信号機の状態が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が青信号の場合が、パターン(i)である。進行方向の信号機の状態が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が右折矢印の場合が、パターン(ii)である。進行方向の信号機の状態が赤信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号の場合が、パターン(iii)である。進行方向の信号機の状態が青信号かつ直交方向の信号機の状態が赤信号の場合が、パターン(iv)である。進行方向の信号機の状態が右折矢印(対向側も右折矢印)かつ直交方向の信号機の状態が赤信号の場合が、パターン(v)である。
パターン(i)のときに緊急車両の進行方向が直進の場合が、パターンAであり、この場合には上記したように横断歩行者事故防止支援と出会い頭事故防止支援が選択され、交差点通過前の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行い、交差点における出会い頭事故防止支援を行い、交差点通過後の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行う。パターン(i)のときに緊急車両の進行方向が右折の場合が、パターンBであり、この場合には上記したように横断歩行者事故防止支援と出会い頭事故防止支援が選択され、さらに、右折先の道路が進入禁止の場合には上記したように正面衝突事故防止支援が選択され、まず、交差点通過前の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行い、交差点における出会い頭事故防止支援を行い、必要に応じて正面衝突事故防止支援を行う。この場合、上記したように、右直事故防止支援は選択されない。パターン(i)のときに緊急車両の進行方向が左折の場合が、パターンCであり、この場合には上記したように横断歩行者事故防止支援と出会い頭事故防止支援が選択され、さらに、左折先の道路が進入禁止の場合には上記したように正面衝突事故防止支援が選択され、まず、交差点通過前の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行い、交差点における出会い頭事故防止支援を行い、必要に応じて正面衝突事故防止支援を行う。この場合、上記したように、左折巻き込み事故防止支援は選択されない。
パターン(ii)のときに緊急車両の進行方向が直進の場合が、パターンDであり、この場合には上記したように出会い頭事故防止支援が選択され、交差点における出会い頭事故防止支援を行う。この場合、上記したように、追突事故防止支援は選択されない。パターン(ii)のときに緊急車両の進行方向が右折の場合が、パターンEであり、この場合には上記したように出会い頭事故防止支援が選択され、交差点における出会い頭事故防止支援を行う。この場合、上記したように、追突事故防止支援は選択されない。パターン(ii)のときに緊急車両の進行方向が左折の場合が、パターンFであり、この場合には、他の移動体と交錯しないので、全ての運転支援が選択されない。
パターン(iii)のときに緊急車両の進行方向が直進or右折or左折の場合が、パターンGであり、この場合には、上記したように、全ての運転支援が選択されない。ただし、交差点の進行中にいずれかの信号が青信号になる場合、進行方向の信号機が青信号になるとパターン(iv)での支援を優先的に行い、直交方向の信号機が青信号になるとパターン(i)での支援を優先的に行う。
パターン(iv)のときに緊急車両の進行方向が直進の場合が、パターンHであり、この場合には追突事故防止支援が選択され、さらに、直進先の道路が進入禁止の場合には上記したように正面衝突事故防止支援が選択され、交差点における追突事故防止支援を行い、必要に応じて正面衝突事故防止支援を行う。パターン(iv)のときに緊急車両の進行方向が右折の場合が、パターンIであり、この場合には右直事故防止支援、横断歩行者事故防止支援及び追突事故防止支援が選択され、まず、右直事故防止支援を行い、交差点における追突事故防止支援を行い、交差点通過後の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行う。パターン(iv)のときに緊急車両の進行方向が左折の場合が、パターンJであり、この場合には左折巻き込み事故防止支援、横断歩行者事故防止支援及び追突事故防止支援が選択され、まず、左折巻き込み事故防止支援を行い、交差点における追突事故防止支援を行い、交差点通過後の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行う。このパターン(iv)では、全ての進行方向について、交通規制を遵守した走行なので、一般車両に対する支援と同じである。
パターン(v)のときに緊急車両の進行方向が直進の場合が、パターンKであり、この場合には出会い頭事故防止支援が選択され、交差点における出会い頭事故防止支援を行う。パターン(v)のときに緊急車両の進行方向が右折の場合が、パターンLであり、この場合には追突事故防止支援が選択され、交差点における追突事故防止支援を行う。パターン(v)のときに緊急車両の進行方向が左折の場合が、パターンMであり、この場合には出会い頭事故防止支援が選択され、交差点における出会い頭事故防止支援を行う。この場合、上記したように、左折巻き込み事故防止支援は選択されない。このパターン(v)では、左折について、交通規制を遵守した走行なので、一般車両に対する支援と同じである。
具体的な処理としては、ECU17では、進行方向の信号機の状態、直交方向の信号機の状態及び緊急車両の交差点内での進行方向を判定し、必要に応じて緊急車両の交差点通過後の進行先の進入禁止規制を判定する。
そして、ECU17では、パターン(i)のAと判定した場合には横断歩行者事故防止支援、出会い頭事故防止支援、横断歩行者事故防止支援の順で運転支援を行う。また、ECU17では、パターン(i)のBと判定した場合には横断歩行者事故防止支援、出会い頭事故防止支援の順で運転支援を行い、右折先の道路が進入禁止と判定した場合には正面衝突事故防止支援を行う。ECU17では、パターン(i)のCと判定した場合には横断歩行者事故防止支援、出会い頭事故防止支援の順で運転支援を行い、左折先の道路が進入禁止と判定した場合には正面衝突事故防止支援を行う。
ECU17では、パターン(ii)のDと判定した場合には出会い頭事故防止支援を行う。また、ECU17では、パターン(ii)のEと判定した場合には出会い頭事故防止支援を行う。ECU17では、パターン(ii)のFと判定した場合には運転支援を行わない。
ECU17では、パターン(iii)のGと判定した場合、運転支援を行わない。
ECU17では、パターン(iv)のHと判定した場合には追突事故防止支援を行い、直進先の道路が進入禁止と判定した場合には正面衝突事故防止支援を行う。また、ECU17では、パターン(iv)のIと判定した場合には右直事故防止支援、横断歩行者事故防止支援+追突事故防止支援の順で運転支援を行う。また、ECU17では、パターン(iv)のJと判定した場合には左折巻き込み事故防止支援、横断歩行者事故防止支援+追突事故防止支援の順で運転支援を行う。
ECU17では、パターン(v)のKと判定した場合には出会い頭事故防止支援を行う。また、ECU17では、パターン(v)のLと判定した場合には追突事故防止支援を行う。また、ECU17では、パターン(v)のMと判定した場合には出会い頭事故防止支援を行う。
ECU17では、横断歩行者事故防止支援を行ったときに衝突の可能性があると判定した場合、緊急車両の運転者に対して進行方向における横断歩道を横断する歩行者(自転車も含む)の存在情報及び衝突の可能性の情報を提供するための音声信号や画像信号を生成し、各信号を報知装置16に送信するとともに、対象の歩行者に対して歩車間通信するために緊急車両の接近情報、衝突の可能性の情報及び接近方向の情報を移動体通信車載機12に送信する。
ECU17では、出会い頭事故防止支援、正面衝突事故防止支援、右直衝突事故防止支援、追突事故防止支援を行ったときに衝突の可能性があると判定した場合、緊急車両の運転者に対して他車両との衝突の可能性の情報及びその他車両の接近方向の情報を提供するための音声信号や画像信号を生成し、各信号を報知装置16に送信するとともに、対象の他車両に対して車車間通信するために緊急車両の接近情報、衝突の可能性の情報及び接近方向の情報を移動体通信車載機12に送信する。
ECU17では、左折巻き込み事故防止を行ったときに衝突の可能性があると判定した場合、緊急車両の運転者に対して左側の二輪車との衝突の可能性の情報を提供するための音声信号や画像信号を生成し、各信号を報知装置16に送信するとともに、対象の二輪車に対して車車間通信するために緊急車両の接近情報、衝突の可能性の情報及び接近方向の情報を移動体通信車載機12に送信する。
なお、上記した横断歩行者事故防止支援、出会い頭事故防止支援、正面衝突事故防止支援、右直事故防止支援、左折巻き込み事故防止支援、追突防止支援の5つの運転支援の具体的な制御については、従来の手法を適用するので、その説明を省略する。
図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る運転支援装置1における動作について説明する。特に、ECU17における処理については、図22のフローチャートに沿って説明する。図22は、図1の運転支援装置のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、運転支援装置1が搭載される緊急車両が緊急走行する場合における動作について説明する。
緊急出動の指令を受けると、緊急車両の運転者は、緊急走行ON/OFFスイッチ10をON操作する。緊急走行ON/OFFスイッチ10では、そのON操作情報をECU17に送信する。ECU17では、このON操作情報を受信し、緊急走行フラグをOFFからONに切り替える。
また、緊急車両の運転者は、現場へ向かうために、ナビゲーションシステム15に目的地として現場を登録する。ナビゲーションシステム15では、その現場への走行ルートを探索し、その探索した走行ルート情報をECU17に送信する。ECU17では、その走行ルート情報を受信する(S1)。
走行ルート上の交差点毎に、自車両が交差点手前のダウンリンクエリアに入ると、路車間通信アンテナ13で光ビーコンからの信号を受信し、路車間通信車載機14でその受信した信号からインフラ情報などを取り出し、そのインフラ情報をECU17に送信する。ECU17では、そのインフラ情報を受信する(S2)
交差点周辺の各他車両では、車車間通信アンテナ20及び車車間通信車載機21によって、現在位置、進行方向、車速などの情報を配信している。緊急車両では、移動体通信アンテナ11でその配信された信号を受信し、移動体通信車載機12でその受信した信号から他車両の情報を取り出し、その他車両の情報をECU17に送信する。ECU17では、その周辺の他車両の情報を受信する(S3)。また、交差点周辺の歩行者などは、携帯電話などを利用して、現在位置、進行方向などを配信している。緊急車両では、移動体通信アンテナ11でその配信された信号を受信し、移動体通信車載機12でその受信した信号から歩行者の情報を取り出し、その歩行者の情報をECU17に送信する。ECU17では、その周辺の歩行者の情報を受信する(S3)。
また、ナビゲーションシステム15では、一定時間毎に、現在位置、進行方向などを検出し、その現在位置、進行方向及び車速などの情報をECU17に送信する。ECU17では、一定時間毎に、緊急車両の現在位置、進行方向、車速などを受信する。
ECU17では、緊急走行フラグがONか否かを判定する(S4)。ちなみに、緊急走行していない場合、S4にて緊急走行フラグがOFFと判定し、ECU17では、一般車両と同様の運転支援を行う(S5)。
S4にて緊急走行フラグがONと判定すると、ECU17では、インフラ情報の信号サイクル情報や交差点位置情報、緊急車両の現在位置、進行方向、車速などの情報に基づいて、緊急車両が前方交差点に進入するときの進行方向の信号機の状態及び直交方向の信号機の状態を予測する。そして、ECU17では、その予測した進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が青信号か否かを判定する(S6)。
S6にて進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が青信号と判定した場合、ECU17では、走行ルート上の緊急車両の交差点での進行方向が直進か否かを判定する(S7)。S7にて直進と判定した場合、ECU17では、交差点通過前の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行い、交差点における出会い頭事故防止支援を行い、交差点通過後の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行う(S8)。S7にて直進以外と判定した場合、ECU17では、走行ルート上の緊急車両の交差点での進行方向が右折か否かを判定する(S9)。S9にて右折と判定した場合、ECU17では、交差点通過前の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行い、交差点における出会い頭事故防止支援を行う(S10)。この際、ECU17では、右折先の道路が進入禁止(右折禁止)か否かを判定し、進入禁止と判定した場合には正面衝突事故防止支援も行う(S10)。S9にて右折でない(左折)と判定した場合、ECU17では、交差点通過前の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行い、交差点における出会い頭事故防止支援を行う(S11)。この際、ECU17では、左折先の道路が進入禁止(左折禁止)か否かを判定し、進入禁止と判定した場合には正面衝突事故防止支援も行う(S11)。
S6にて進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が青信号でないと判定した場合、ECU17では、進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が右折矢印信号か否かを判定する(S12)。
S12にて進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が右折矢印信号と判定した場合、ECU17では、走行ルート上の緊急車両の交差点での進行方向が直進か否かを判定する(S13)。S13にて直進と判定した場合、ECU17では、交差点における出会い頭事故防止支援を行う(S14)。S13にて直進以外と判定した場合、ECU17では、走行ルート上の緊急車両の交差点での進行方向が右折か否かを判定する(S15)。S15にて右折と判定した場合、ECU17では、交差点における出会い頭事故防止支援を行う(S16)。S15にて右折でない(左折)と判定した場合、ECU17では、全ての運転支援を行わない(S17)。
S12にて進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が右折矢印信号でないと判定した場合、ECU17では、進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が赤信号か否かを判定する(S18)。
S18にて進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が赤信号と判定した場合、ECU17では、全ての運転支援を行わない(S19)。
S18にて進行方向の信号機が赤信号かつ直交方向の信号機が赤信号でないと判定した場合、ECU17では、進行方向の信号機が青信号かつ直交方向の信号機が赤信号か否かを判定する(S20)。
S20にて進行方向の信号機が青信号かつ直交方向の信号機が赤信号と判定した場合、ECU17では、走行ルート上の緊急車両の交差点での進行方向が直進か否かを判定する(S21)。S21にて直進と判定した場合、ECU17では、交差点における追突事故防止支援を行う(S22)。この際、ECU17では、直進先の道路が進入禁止か否かを判定し、進入禁止と判定した場合には正面衝突事故防止支援も行う(S22)。S21にて直進以外と判定した場合、ECU17では、走行ルート上の緊急車両の交差点での進行方向が右折か否かを判定する(S23)。S23にて右折と判定した場合、ECU17では、右直事故防止支援を行い、交差点における追突事故防止支援を行い、交差点通過後の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行う(S24)。S23にて右折でない(左折)と判定した場合、ECU17では、左折巻き込み事故防止支援を行い、交差点における追突事故防止支援を行い、交差点通過後の横断歩道で横断歩行者事故防止支援を行う(S25)。
S20にて進行方向の信号機が青信号かつ直交方向の信号機が赤信号でないと判定した場合、ECU17では、進行方向の信号機が右折矢印信号かつ直交方向の信号機が赤信号か否かを判定する(S26)。
S26にて進行方向の信号機が右折矢印信号かつ直交方向の信号機が赤信号と判定した場合、ECU17では、走行ルート上の緊急車両の交差点での進行方向が直進か否かを判定する(S27)。S27にて直進と判定した場合、ECU17では、交差点における出会い頭事故防止支援を行う(S28)。S27にて直進以外と判定した場合、ECU17では、走行ルート上の緊急車両の交差点での進行方向が右折か否かを判定する(S29)。S29にて右折と判定した場合、ECU17では、交差点における追突事故防止支援を行う(S30)。S29にて右折でない(左折)と判定した場合、ECU17では、交差点における出会い頭事故防止支援を行う(S31)。
各運転支援を行い、周辺の移動体と衝突する可能性があると判定した場合、ECU17では、緊急車両の運転者に対して衝突の可能性情報やその対象の移動体の情報を提供するための音声信号や画像信号を生成し、各信号を報知装置16に送信する。報知装置16では、その音声信号に応じて音声を出力したり、その画像信号に応じて画像を表示する。また、ECU17では、その対象の移動体に対して緊急車両の接近情報、衝突の可能性情報及び接近方向の情報を移動体通信車載機12に送信する。移動体通信車載機12ではその情報を変調し、その変調した信号を移動体通信アンテナ11で送信する。例えば、対象の移動体が車両の場合、その信号を車車間通信アンテナ20で受信し、車車間通信車載機21でその受信した信号を復調して情報を取り出してECU23に送信する。ECU23ではその情報を運転者に提供するための音声信号や画像信号を生成し、報知装置22にその音声信号や画像信号を送信する。報知装置22では、その音声信号に応じた音声を出力したり、その画像信号に応じて画像を表示する。
全ての運転支援が終了し、緊急車両が交差点を通過(進入先の横断歩道も通過)すると、ECU17では、この交差点についての処理を終了する(S32)。
この運転支援装置1によれば、緊急車両の進行方向と直交方向における信号機の状態、緊急車両の交差点内での進行方向及び必要に応じて進入先の道路の進入禁止情報に基づいて運転支援の内容を決定することにより、緊急車両が緊急走行する場合でも、適切な運転支援を選択でき、適切な運転支援を行うことができる。その結果、緊急車両と交差点に進入する移動体との衝突を防止することができ、緊急車両が安全かつスムーズに緊急走行できる。
特に、運転支援装置1によれば、緊急走行時に交通規制(例えば、赤信号、進入禁止)を無視して走行することを考慮し、交通規制を遵守して走行する場合には通常動作させない運転支援を動作させることにより、緊急走行中の緊急車両に対して適切な運転支援を行うことができる。
また、運転支援装置1によれば、緊急走行時に交通規制を無視して走行することを考慮し、交通規制を遵守して走行する場合には通常動作させる運転支援を動作させないことにより、システムの処理負荷を軽減できる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では緊急車両に搭載される運転支援装置に適用したが、他に道路交通法上の交通規制に関係なく優先して走行することが許可される車両が存在する場合にはその車両の運転支援装置にも適用可能であり、あるいは、インフラ側の装置に適用してもよい。
また、本実施の形態では2本の道路が交差する4差路の交差点を例に説明したが、3差路、5差路、6差路などの他の交差点にも適用可能である。
また、本実施の形態では横断歩行者事故防止支援、出会い頭事故防止支援、正面衝突事故防止支援、右直事故防止支援、左折巻き込み事故防止支援、追突防止支援の5つの運転支援を対象としたが、他の運転支援を対象としてもよい。また、本実施の形態ではこの5つの運転支援について信号機の状態、交差点内での進行方向及び進入禁止規制に基づいて必要な場合と不必要な場合の条件を示したが、他の様々な条件にも適用可能である。
また、本実施の形態では緊急車両が緊急走行時に所定の条件の場合に右直、左折巻き込み、追突事故防止支援を動作させない構成としたが、完全に停止するのではなく、動作させる優先順位を下げるなどしてもよい。
また、本実施の形態では緊急車両の進行方向の信号機の状態が赤信号の場合には追突事故防止支援を行わない構成としたが、直進先、右折先、左折先の道路が渋滞中の場合もあるので、そのような渋滞中の車両との追突を防止するための追突事故防止支援を行うようにしてもよい。
また、本実施の形態では音声出力や画像表示などの報知による情報提供で支援する構成としたが、ブレーキ制御や操舵制御などによる介入制御や警報出力などで支援を行ってもよい。
また、本実施の形態では携帯電話などによる歩車間通信を利用して歩行者や自転車の乗員の情報を取得する構成としたが、歩車間通信で情報を取得できない場合、横断歩道で歩行者が横断するものと仮定して運転支援を行ってもよいし、あるいは、自車に搭載した検出手段(画像センサなど)によって歩行者などの情報を取得してもよい。
また、本実施の形態では車車間通信を利用して他車両の情報を取得する構成としたが、車車間通信で情報を取得できない場合、他車両が存在するものと仮定して運転支援を行ってもよいし、あるいは、自車に搭載した検出手段(画像センサなど)によって他車両の情報を取得してもよい。