JP5277851B2 - 熱間プレス成形用めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

熱間プレス成形用めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐酸化性に優れた熱間プレス成形用めっき鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、自動車車体の軽量化のため、鋼板の高強度化(例えば、780Mpa級)を図り、使用する鋼板の厚みを減ずる努力が行われている。しかし、鋼板をプレス加工する場合、例えば、絞り加工を行う場合、鋼板の強度が高くなると、絞り加工時に金型との接触圧力が高まることに起因して、鋼板のかじりや破断が発生する。また、そのような問題を少しでも軽減するために、鋼板の絞り加工時の材料の金型内への流入を高めるためのブランク押さえ圧を下げた場合、成形後の形状がばらつく等の問題点がある。
また、形状安定性いわゆるスプリングバックの問題も発生する。これに対しては潤滑剤を使用することにより改善する方法があるが、780Mpa級の高強度鋼板ではその効果は小さい。
このような現状に対して、780Mpa以上の高強度鋼板のような難プレス成形材料をプレス成形する技術として、成形すべき材料を予め加熱して成形する方法が考えられる。いわゆる熱間プレス成形および温間プレス成形である(以下、熱間プレス成形および温間プレス成形をまとめて熱間プレス成形と称する)。
しかしながら、熱間プレス成形は、加熱した鋼板を加工する成形方法であるため、表面酸化は避けられず、たとえ鋼板を非酸化性雰囲気中で加熱しても、例えば、加熱炉からプレス成形のために取り出すときに大気にふれると表面に鉄系酸化物が形成される。この鉄系酸化物はプレス時に脱落して金型に付着して生産性を低下させる。あるいは、プレス後の製品に残存して外観不良の原因となる。さらには、次工程で塗装する場合に鋼板と塗膜との密着性が劣ることになる。
そこで、熱間プレス成形後は、ショットブラストを行ってそのような鉄系酸化物から成るスケールを除去することが必要になる。しかし、これはコスト増を免れない。
このような問題を解決するべく、特許文献1では熱間成形時に母材鋼板の耐酸化抵抗性を持たせるためにアルミニウムを被覆し、所定の組成および組織とした鋼板を提案している。しかしながら、このような鋼板は普通鋼と比較した場合、大幅なコスト増となる。
以上のように、高強度の鋼板に熱間プレス成形を行った場合、生成した鉄系酸化物を除去する工程が必要であり、大幅なコスト増なしに該酸化物を除去する工程を省略できないこと、そして、たとえ該酸化物を除去してもめっき層などの表面処理層を有しない鋼板では防錆性に劣るのが現状である。
特開2000−38640号
本発明は、かかる事情に鑑み、優れた耐酸化性を有する熱間プレス成形用めっき鋼板およびその製造方法を大幅なコスト増を伴うことなく提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、以下の知見を得た。
熱間プレス成形前にTiイオンを含有する酸性溶液に鋼板(亜鉛系めっき層)を接触させ、めっき層の表面にZnおよびTiを必須成分として含む酸化物層を形成させることで、熱間プレス成形後に外観を損ねることなく、また大幅なコスト増を伴うことなく、耐酸化性に顕著な改善が見られることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1] 亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させ、接触処理終了後1〜90秒間保持した後、水洗及び乾燥を行うことにより前記めっき鋼板表面に平均厚さ10nm以上の酸化物層を形成するめっき鋼板の製造方法において、前記酸性溶液は、Tiイオンを含有することを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[2]前記[1]において、前記酸性溶液中に、Tiの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上を、Tiイオン濃度として0.1〜100g/lの範囲で含有することを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]において、前記酸性溶液は、pH緩衝作用を有し、かつ1リットルの該酸性溶液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/l水酸化ナトリウム溶液の量(l)で定義するpH上昇度が0.05〜0.5の範囲にあることを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記酸性溶液は、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち少なくとも1種類以上を、前記成分含有量5〜50g/lの範囲で含有し、pHが0.5〜2.0、液温が20〜70℃の範囲にあることを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記酸性溶液に接触させた後のめっき鋼板表面に形成する酸性溶液膜が20g/m2以下であり、かつ、前記酸性溶液膜がめっき鋼板表面に形成された状態での保持時間が1〜90秒の範囲であることを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法により製造され、ZnおよびTiを含む酸化物層を鋼板表面に平均厚さが10nm以上形成したことを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板。
なお、本発明においては、亜鉛を含有するめっき層を有する鋼板を総称して亜鉛系めっき鋼板と呼称する。したがって、めっき処理後に合金化処理を施す、施さないにかかわらず、亜鉛を含有するめっき層を有していれば本発明の亜鉛系めっき鋼板である。すなわち、本発明における亜鉛系めっき鋼板とは、合金化処理を施していない溶融亜鉛めっき鋼板、合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウムめっき鋼板など、いずれも含むものである。
本発明によれば、優れた耐酸化性を有する熱間プレス成形用めっき鋼板が得られる。そして、本発明の熱間プレス成形用めっき鋼板を用いて熱間プレス成形を行うことにより、鋼板のかじりや破断が発生することなく加工が可能となり、ショットブラストなどのスケール除去を行う必要がないためコスト低減が可能となる。
熱間プレス成形時には鋼板はA3変態点以上(約900℃以上)の加熱を受ける。この場合、Znの融点は418℃、沸点は907℃であることから、亜鉛系めっき鋼板の場合は、鋼板上のZnめっきが蒸発することが予想され、その結果、鋼板素地が酸化されることになる。このため、めっき鋼板の表面には、硬質かつ高融点の物質が存在することが鋼板素地の酸化防止の点から非常に有効であると考えられる。
そこで、硬質かつ高融点の物質をめっき表面に形成させる検討を進めた。その結果、亜鉛系めっき鋼板表面に高融点で所定の厚さの酸化物層を形成させることが優れた耐酸化性を付与する手法として非常に有効であることを見出した。さらに、この酸化物層に高融点のTiを含有させることで、より高融点の酸化物層とすることでき、耐酸化性を飛躍的に向上させることが可能となることも見出した。
以上より、本発明においては、めっき鋼板表面には、ZnおよびTiを含む酸化物層を有することとする。
そして、めっき鋼板表面に形成する酸化物層の平均厚さは10nm以上とする。10nm以上とすることにより、熱間プレス成形時の加熱温度(Ac3変態点以上の温度)においてもこの酸化物層がバリア層となり、スケールの発生を抑制することができる。一方、厚さを200nm以下とすると、熱間プレス成形性の効果が得られる上に、この厚さを有する酸化物層をめっき層表面に形成するためのライン長さをとくに考慮する必要がなく、設備上の問題も生じない。よって、上限は、好ましくは200nm以下である。
なお、本発明における酸化物層の平均厚さは、膜厚が既知のシリカ皮膜のO(酸素)のKα蛍光X線強度により作成した検量線を用いて求めたシリカ換算の膜厚である。
以上から、本発明では、熱間プレス成形用のめっき鋼板表面には、ZnおよびTiを含み、平均厚さが10nm以上の酸化物層が形成されていることとする。これらは本発明の特徴であり、このような酸化物層が鋼板表面に存在することで鋼板素地の酸化を防止し、優れた耐酸化性を有することになる。
めっき鋼板の表面に上記酸化物層を形成させる方法としては、めっき層の水溶液による反応を利用する方法が最も効果的である。例えば、亜鉛系めっき鋼板をTiイオンを含有する酸性溶液に接触させ、接触処理終了後1〜90秒間保持した後、水洗及び乾燥を行うことによりめっき鋼板表面に平均厚さ10nm以上の酸化物層を形成することができる。
この酸化物層形成メカニズムについては明確ではないが、次のように考えることができる。亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させると、鋼板側からは亜鉛の溶解が生じる。この亜鉛の溶解は、同時に水素発生を生じるため、亜鉛の溶解が進行すると、酸性溶液中の水素イオン濃度が減少し、その結果、酸性溶液のpHが上昇し、酸化物(水酸化物)が安定となるpH領域に達すると、亜鉛系めっき鋼板表面にZn系酸化物層が形成すると考えられる。この際にTiイオンを含有する酸性溶液を使用すると、Ti系酸化物の形成反応がZn系酸化物の形成反応よりも低いpH領域において生じ、その後さらにpHが上昇するとZn系酸化物の形成反応が生じるため、Zn系酸化物のみの形成時と比較して酸化物層の形成反応が容易に起こることが考えられる。
酸性溶液にTiイオンを含有させるためには、Tiの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上をTiイオン濃度として0.1〜100g/lの範囲で含有することが好ましい。Tiイオン濃度が0.1g/l以上では、形成されるZn系酸化物量が少量でありTiが主体となる酸化物層となるため、高温加熱時の耐酸化性効果が十分得られるので、熱間プレス成形性改善効果が十分に得られる。一方、100g/l以下とすると、形成されるTi系酸化物の割合が適度であり、亜鉛系めっき鋼板を対象に設計された接着剤との適合性を劣化させることもない。また、形成される酸化物が粗大とならず、かつ量も多くないため、プレス金型等へ付着することがなく、生産性の低下を招くこともない。
使用する酸性溶液は、pH=0.5〜5.0の領域においてpH緩衝作用を有するものが好ましい。これは、前記pH範囲でpH緩衝作用を有する酸性溶液を使用すると、酸性溶液に接触後、所定時間保持することで、酸性溶液とめっき層の反応によりZnの溶解とTi系酸化物およびZn系酸化物の形成反応が十分に生じ、鋼板表面に本発明の目的とする酸化物層を安定して得ることができるためである。
また、このようなpH緩衝作用の指標として、1リットルの酸性溶液のpHを2.0〜5.0まで上昇させるのに要する1.0mol/l水酸化ナトリウム水溶液の量(l)で定義するpH上昇度で評価でき、この値が0.05〜0.5の範囲にあるとよい。pH上昇度を0.05以上とすると、pHの上昇が速やかに起こって酸化物層の形成に十分な亜鉛の溶解が得られないことがないため、十分な酸化物層の形成が生じる。一方で、0.5以下とすると、亜鉛の溶解が促進されすぎることがなく、酸化物層の形成に長時間を有することがないだけでなく、めっき層の損傷も激しくなく、本来のZnの鋼に対する犠牲防食の役割も失うことがないと考えられるためである。ここで、pHが2.0を超える酸性溶液のpH上昇度は、酸性溶液に硫酸などのpH=2.0〜5.0の範囲でほとんど緩衝性を有しない無機酸を添加してpHを一旦2.0に低下させて評価することとする。
このようなpH緩衝性を有する酸性溶液としては、酢酸ナトリウム(CH3COONa)などの酢酸塩やフタル酸水素カリウム((KOOC)2C6H4)などのフタル酸塩、クエン酸ナトリウム(Na3C6H5O7)やクエン酸二水素カリウム(KH2C6H5O7)などのクエン酸塩、コハク酸ナトリウム(Na2C4H4O4)などのコハク酸塩、乳酸ナトリウム(NaCH3CHOHCO2)などの乳酸塩、酒石酸ナトリウム(Na2C4H4O6)などの酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち少なくとも1種類以上を、前記各成分含有量を5〜50g/lの範囲で含有する水溶液を使用することができる。前記濃度を5g/l以上とすると、亜鉛の溶解とともに溶液のpH上昇が比較的すばやく生じることがないため、耐酸化性の向上に十分な酸化物層を形成することができる。また、50g/l以下とすると、亜鉛の溶解が促進されすぎることがなく、酸化物層の形成に長時間を有することがないだけでなく、めっき層の損傷も激しくなく、本来のZnの鋼に対する犠牲防食の役割も失うことがないと考えられるためである。
酸性溶液のpHは0.5〜2.0の範囲にあることが望ましい。pHを2.0以下とすると、溶液中でTiイオンの沈殿(水酸化物の形成)が生じず、酸化物層中にTi系酸化物が十分に取り込まれる。一方、pHを0.5以上とすると、亜鉛の溶解が促進されすぎることがなく、めっき付着量の減少がないだけでなく、めっき皮膜に亀裂が生じることがなく加工時に剥離が生じやすくならないので、望ましい。なお、酸性溶液のpHが0.5〜2.0の範囲より高い場合は硫酸等のpH緩衝性のない無機酸でpH調製することができる。
酸性溶液の温度については、20〜70℃の範囲であることが好ましい。20℃以上とすると、酸化物層の生成反応に長時間を有することがなく、生産性の低下を招くことがない。一方、70℃以下とすると、鋼板表面に処理ムラを発生することがなく、反応を比較的すばやく進行させることができる。
めっき鋼板を酸性溶液に接触させる方法には特に制限はなく、めっき鋼板を酸性溶液に浸漬する方法、めっき鋼板に酸性溶液をスプレーする方法、塗布ロールを介して酸性溶液をめっき鋼板に塗布する方法等がある。
めっき鋼板を以上からなる酸性溶液に接触させた後に、その溶液が薄い液膜状で鋼板表面に存在することが望ましい。これは、鋼板表面に存在する溶液の量が多すぎると、亜鉛の溶解が生じても溶液のpHが上昇しにくく、次々と亜鉛の溶解が生じるのみであり、目的とする酸化物層を形成するまでに長時間を有するためである。また、めっき層の損傷も激しく、本来の防錆鋼板としての役割を失うことも考えられるためである。この観点から、鋼板表面に形成する溶液膜量は、20g/m以下に調整することが好ましい。より好ましくは、液膜の乾燥を防ぐ目的で3g/m2以上の液膜量が適している。なお、溶液膜量の調整は、絞りロール、エアワイピング等で行うことができる。
また、酸性溶液に接触後、水洗までの時間(水洗までの保持時間)は、1〜90秒間必要である。これは水洗までの時間が1秒未満であると、溶液のpHが上昇しTi系酸化物層およびZn系酸化物層が形成される前に酸性溶液が洗い流されるために、耐酸化性の向上効果が得られない。一方、90秒を超えても、酸化物層の形成量に変化が見られないためである。
なお、酸性溶液に接触させる前に、表面活性化処理を施してもよく、表面活性化処理に用いる薬液はpH11以上であるアルカリ性溶液であることが好ましい。この処理の目的は、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板の場合では、表面に形成したZn系酸化物を除去し、表面に新生面を露出させることにより、新生面が露出された部分で反応を活性化させ、新たに酸化物層の形成を容易にするためである。
また、この表面活性化処理の前に調質圧延を行ってもよい。さらに、めっき処理後表面活性化処理を行い、調質圧延を行い、その後、酸性溶液に接触させるようにしてもよい。これは、調質圧延の際に使用する調圧ロールなどにより、めっき鋼板表面に存在するZn系酸化物層の一部を破壊することもでき、表面活性化処理を組み合わせることによりZn系酸化物層を効果的に除去できる。
表面活性化処理に用いる水溶液はpHが11以上、浴温を30℃以上とし、該液との接触時間を1〜30秒とすることが好ましい。1秒以下の場合はZn系酸化物を十分溶解できない為、その後に引き続く酸性溶液との反応性を高めることが出来ず、酸化物層が十分に形成しない。一方、30秒より多くても構わないが、長時間処理することは生産性を低下するため好ましくない。より好ましくはpH11以上、浴温50℃以上である。上記範囲内のpHであれば溶液の種類に制限はなく、水酸化ナトリウムや水酸化ナトリウム系の脱脂剤などを用いることができる。
表面活性化処理は酸性溶液に接触する前に実施することが好ましいが、必要に応じて行われるめっき処理後に行われる調質圧延の前、後いずれで実施しても良い。ただし、調質圧延の後、表面活性化処理を施すと、圧延ロールにより押しつぶされ凸部となった部分でZn系酸化物が機械的に破壊されるため、凸部以外の凹部とZn系酸化物の除去量が異なる傾向がある。このため、表面活性化処理後のZn系酸化物量が、面内で不均一となり、引き続き行われる酸化処理が不均一となり十分な特性を得られない場合がある。このため、より好ましくはめっき処理後、表面活性化処理を施し、面内で均一にZn系酸化物を適正量除去した後、調質圧延を実施し、引き続き酸性溶液に接触させる処理とするプロセスが好ましい。
表面活性化処理の方法については、特に限定しない。浸漬法、スプレー法、ロール塗布法などが挙げられる。
以上により、めっき鋼板表面には、平均厚さ10nm以上の酸化物層が形成される。
なお、本発明における酸化物層とは、ZnとTiを含んだ酸化物及び/又は水酸化物などからなる層のことである。このようなZnおよびTiを含む酸化物層の平均厚さは10nm以上であることが必要である。酸化物層の平均厚さが、10nm未満と薄くなると耐酸化性に対する効果が不十分となる。一方、ZnおよびTiを含む酸化物層の平均厚さを200nm以下とすると、熱間プレス成形中に皮膜が破壊することがないので摺動抵抗が上昇しない。また溶接性が低下することもないので好ましい。さらに、形成される酸化物が粗大とはならず、かつ量も多くないため、プレス金型等へ付着せず、生産性を低下させることがないので好ましい。
なお、本発明では、使用する酸性溶液中にTiイオンを含有していれば、耐酸化性に優れた、つまり熱間プレス成形性に優れた酸化物層を安定して形成できるため、酸性溶液中にその他の金属イオンや無機化合物などを不純物として、あるいは故意に含有していても本発明の効果が損なわれるものではない。特にZnイオンは、めっき層と酸性溶液が接触する際に溶出するイオンであるため、操業中に酸性溶液中Zn濃度の増加が認められるが、このZnイオンの濃度の大小は本発明の効果には特に影響を及ぼさない。
また、本発明にかかる素地鋼材は、特に限定はしないが、めっき処理時のめっき濡れ性、めっき後のめっき密着性が良好となる鋼組成とすることが好ましい。また、熱間プレス成形を行う場合を考慮して、その特性として、熱間プレス成形後に急冷して高強度、高硬度となる焼入れ鋼、例えば高張力鋼板が実用上は特に好ましい。
また、本発明において、めっき法に特に限定はないが、溶融亜鉛めっき法がコストの点で好ましい。もちろん、所定のZnとTiを含有する酸化物層をめっき表面に得られるのであれば、例えば、電気めっき、溶射めっき、蒸着めっき等その他いずれの方法でめっき層を設けても良い。
また、熱間プレス成形の方法については特に限定しない。例えば、本発明の熱間プレス成形用亜鉛系めっき鋼板に対して、1〜100℃/秒の加熱速度にてAc3変態点以上に加熱し、5〜6000秒間の保持後、400〜800℃の温度域で熱間プレス成形することにより、本発明の耐酸化性の効果を最大限に得ることができる。
また、熱間プレス成形中に、ダイとパンチを用いて10〜200℃/sの冷却速度にて部材を冷却したり、熱間プレス成形後に、熱間プレス成形した部材を金型より取り出し、液体または気体を用いて冷却することも可能である。
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。
鋼成分として、C:0.23mass%、Si:0.12mass%、Mn:1.5mass%、Cr:0.50mass%、B:0.0020mass%を含有する鋼板に対して、溶融亜鉛めっき処理、合金化溶融亜鉛めっき処理、電気亜鉛めっき処理および溶融亜鉛−アルミニウムめっき処理を各々行い、板厚1.2mmの溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛−アルミニウムめっき鋼板を作製した。なお、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛−アルミニウムめっき鋼板のめっき付着量はいずれも45g/m2である。
次いで、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛−アルミニウムめっき鋼板に対して、酸性溶液接触処理を行った。なお、酸性溶液処理は、緩衝性を持つ酢酸ナトリウム40g/lの酸性水溶液を作成し、次いで、pHを硫酸で調整した酸性溶液に3秒浸漬した。その後、ロール絞りを行い、液量を調整した後、1〜90秒間大気中、室温にて放置し、十分水洗を行った後、乾燥を実施し、めっき鋼板表面に、Zn及びTiを含む酸化物層を形成した。形成した酸化物層の断面をエネルギー分散型蛍光X線分析装置により分析することにより、ZnとTiの存在を確認した。なお、詳細な条件は、表1〜表4に示す。また、比較例として、上記酸性溶液処理を行わないもの、及びTiイオンを含有しない酸性溶液処理を行ったものも作製した。
以上により作製した鋼板について、自動車用外板として十分な熱間プレス成形性(成形後の外観)を有するか判定するとともに、めっき表面の酸化物層の平均厚さを測定した。熱間プレス成形性の評価方法及び酸化物層厚さの測定方法の詳細は以下の通りである。
・ 熱間プレス成形性(外観評価)
加熱炉内で、大気雰囲気下で加熱速度:15℃/sにて900℃まで加熱し、900℃で60秒間保持後加熱炉より取り出し、円筒絞りの熱間プレス成形を行った。熱間プレス成形は、絞り高さ:25mm、肩R:5mm、ブランク直径:90mm、パンチ直径:50mm、ダイ直径:53mmの条件の下で実施した。成形後の試験片のめっき層密着状態として、めっき層の剥離の有無を目視で観察して、熱間プレス成形性として2段階で評価した。
◎:剥離なし、×剥離あり
・ 酸化物層厚さ測定
膜厚が96nmの熱酸化SiO2膜が形成されたSiウエハを参照物質として用い、蛍光X線分析装置でO・Kα X線を測定することで、SiO2換算の酸化物層の平均厚さを求めた。分析面積は30mmφである。
以上により得られた結果を条件と併せて表1〜表4に示す。
Figure 0005277851
Figure 0005277851
Figure 0005277851
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本発明例では、熱間プレス成形時のめっきの蒸発抑制およびスケール発生防止により外観不良が抑制され、めっき層剥離は観察されず、耐酸化性に優れるため、熱間プレス成形性が良好であった。
一方で、酸性溶液処理を行っていない比較例では、本発明の酸化物層が形成されず、熱間プレス成形後にスケール発生に起因するめっき層剥離が観察された。
本発明の熱間プレス成形用めっき鋼板は、耐酸化性に優れることから、自動車用の足回り、シャーシ、補強部品などの自動車車体用途を中心に広範な分野で適用できる。

Claims (6)

  1. 亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させ、接触処理終了後1〜90秒間保持した後、水洗及び乾燥を行うことにより前記めっき鋼板表面に平均厚さ10nm以上の酸化物層を形成するめっき鋼板の製造方法において、前記酸性溶液は、Tiイオンを含有することを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記酸性溶液中に、Tiの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上を、Tiイオン濃度として0.1〜100g/lの範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
  3. 前記酸性溶液は、pH緩衝作用を有し、かつ1リットルの該酸性溶液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/l水酸化ナトリウム溶液の量(l)で定義するpH上昇度が0.05〜0.5の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
  4. 前記酸性溶液は、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち少なくとも1種類以上を、前記成分含有量5〜50g/lの範囲で含有し、pHが0.5〜2.0、液温が20〜70℃の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
  5. 前記酸性溶液に接触させた後のめっき鋼板表面に形成する酸性溶液膜が20g/m2以下であり、かつ、前記酸性溶液膜がめっき鋼板表面に形成された状態での保持時間が1〜90秒の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法により製造され、ZnおよびTiを含む酸化物層を鋼板表面に平均厚さが10nm以上形成したことを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板。
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