JP5277851B2 - 熱間プレス成形用めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、形状安定性いわゆるスプリングバックの問題も発生する。これに対しては潤滑剤を使用することにより改善する方法があるが、780Mpa級の高強度鋼板ではその効果は小さい。
以上のように、高強度の鋼板に熱間プレス成形を行った場合、生成した鉄系酸化物を除去する工程が必要であり、大幅なコスト増なしに該酸化物を除去する工程を省略できないこと、そして、たとえ該酸化物を除去してもめっき層などの表面処理層を有しない鋼板では防錆性に劣るのが現状である。
[1] 亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させ、接触処理終了後1〜90秒間保持した後、水洗及び乾燥を行うことにより前記めっき鋼板表面に平均厚さ10nm以上の酸化物層を形成するめっき鋼板の製造方法において、前記酸性溶液は、Tiイオンを含有することを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[2]前記[1]において、前記酸性溶液中に、Tiの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上を、Tiイオン濃度として0.1〜100g/lの範囲で含有することを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]において、前記酸性溶液は、pH緩衝作用を有し、かつ1リットルの該酸性溶液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/l水酸化ナトリウム溶液の量(l)で定義するpH上昇度が0.05〜0.5の範囲にあることを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記酸性溶液は、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち少なくとも1種類以上を、前記成分含有量5〜50g/lの範囲で含有し、pHが0.5〜2.0、液温が20〜70℃の範囲にあることを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記酸性溶液に接触させた後のめっき鋼板表面に形成する酸性溶液膜が20g/m2以下であり、かつ、前記酸性溶液膜がめっき鋼板表面に形成された状態での保持時間が1〜90秒の範囲であることを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法により製造され、ZnおよびTiを含む酸化物層を鋼板表面に平均厚さが10nm以上形成したことを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板。
酸性溶液にTiイオンを含有させるためには、Tiの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上をTiイオン濃度として0.1〜100g/lの範囲で含有することが好ましい。Tiイオン濃度が0.1g/l以上では、形成されるZn系酸化物量が少量でありTiが主体となる酸化物層となるため、高温加熱時の耐酸化性効果が十分得られるので、熱間プレス成形性改善効果が十分に得られる。一方、100g/l以下とすると、形成されるTi系酸化物の割合が適度であり、亜鉛系めっき鋼板を対象に設計された接着剤との適合性を劣化させることもない。また、形成される酸化物が粗大とならず、かつ量も多くないため、プレス金型等へ付着することがなく、生産性の低下を招くこともない。
使用する酸性溶液は、pH=0.5〜5.0の領域においてpH緩衝作用を有するものが好ましい。これは、前記pH範囲でpH緩衝作用を有する酸性溶液を使用すると、酸性溶液に接触後、所定時間保持することで、酸性溶液とめっき層の反応によりZnの溶解とTi系酸化物およびZn系酸化物の形成反応が十分に生じ、鋼板表面に本発明の目的とする酸化物層を安定して得ることができるためである。
また、酸性溶液に接触後、水洗までの時間(水洗までの保持時間)は、1〜90秒間必要である。これは水洗までの時間が1秒未満であると、溶液のpHが上昇しTi系酸化物層およびZn系酸化物層が形成される前に酸性溶液が洗い流されるために、耐酸化性の向上効果が得られない。一方、90秒を超えても、酸化物層の形成量に変化が見られないためである。
表面活性化処理は酸性溶液に接触する前に実施することが好ましいが、必要に応じて行われるめっき処理後に行われる調質圧延の前、後いずれで実施しても良い。ただし、調質圧延の後、表面活性化処理を施すと、圧延ロールにより押しつぶされ凸部となった部分でZn系酸化物が機械的に破壊されるため、凸部以外の凹部とZn系酸化物の除去量が異なる傾向がある。このため、表面活性化処理後のZn系酸化物量が、面内で不均一となり、引き続き行われる酸化処理が不均一となり十分な特性を得られない場合がある。このため、より好ましくはめっき処理後、表面活性化処理を施し、面内で均一にZn系酸化物を適正量除去した後、調質圧延を実施し、引き続き酸性溶液に接触させる処理とするプロセスが好ましい。
表面活性化処理の方法については、特に限定しない。浸漬法、スプレー法、ロール塗布法などが挙げられる。
以上により、めっき鋼板表面には、平均厚さ10nm以上の酸化物層が形成される。
また、熱間プレス成形中に、ダイとパンチを用いて10〜200℃/sの冷却速度にて部材を冷却したり、熱間プレス成形後に、熱間プレス成形した部材を金型より取り出し、液体または気体を用いて冷却することも可能である。
・ 熱間プレス成形性(外観評価)
加熱炉内で、大気雰囲気下で加熱速度:15℃/sにて900℃まで加熱し、900℃で60秒間保持後加熱炉より取り出し、円筒絞りの熱間プレス成形を行った。熱間プレス成形は、絞り高さ:25mm、肩R:5mm、ブランク直径:90mm、パンチ直径:50mm、ダイ直径:53mmの条件の下で実施した。成形後の試験片のめっき層密着状態として、めっき層の剥離の有無を目視で観察して、熱間プレス成形性として2段階で評価した。
◎:剥離なし、×剥離あり
・ 酸化物層厚さ測定
膜厚が96nmの熱酸化SiO2膜が形成されたSiウエハを参照物質として用い、蛍光X線分析装置でO・Kα X線を測定することで、SiO2換算の酸化物層の平均厚さを求めた。分析面積は30mmφである。
Claims (6)
- 亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させ、接触処理終了後1〜90秒間保持した後、水洗及び乾燥を行うことにより前記めっき鋼板表面に平均厚さ10nm以上の酸化物層を形成するめっき鋼板の製造方法において、前記酸性溶液は、Tiイオンを含有することを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性溶液中に、Tiの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上を、Tiイオン濃度として0.1〜100g/lの範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性溶液は、pH緩衝作用を有し、かつ1リットルの該酸性溶液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/l水酸化ナトリウム溶液の量(l)で定義するpH上昇度が0.05〜0.5の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性溶液は、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち少なくとも1種類以上を、前記成分含有量5〜50g/lの範囲で含有し、pHが0.5〜2.0、液温が20〜70℃の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性溶液に接触させた後のめっき鋼板表面に形成する酸性溶液膜が20g/m2以下であり、かつ、前記酸性溶液膜がめっき鋼板表面に形成された状態での保持時間が1〜90秒の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法により製造され、ZnおよびTiを含む酸化物層を鋼板表面に平均厚さが10nm以上形成したことを特徴とする熱間プレス成形用めっき鋼板。
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