JP5423215B2 - 表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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また、形状安定性いわゆるスプリングバックの問題も発生する。これに対しては潤滑剤を使用することにより改善する方法があるが、780Mpa級の高強度鋼板ではその効果は小さい。
このような現状に対して、780Mpa以上の高強度鋼板のような難プレス成形材料をプレス成形する技術として、成形すべき材料を予め加熱して成形する方法が考えられる。いわゆる熱間プレス成形および温間プレス成形である(以下、熱間プレス成形および温間プレス成形をまとめて熱間プレス成形と称する)。
しかしながら、熱間プレス成形は、加熱した鋼板を加工する成形方法であるため、表面酸化は避けられず、たとえ鋼板を非酸化性雰囲気中で加熱しても、例えば、加熱炉からプレス成形のために取り出すときに大気にふれると表面に鉄系酸化物が形成される。この鉄系酸化物はプレス時に脱落して金型に付着して生産性を低下させる。あるいは、プレス後の製品に残存して外観不良の原因となる。さらには、次工程で塗装する場合に鋼板と塗膜との密着性が劣ることになる。
そこで、熱間プレス成形後は、ショットブラストを行ってそのような鉄系酸化物から成るスケールを除去することが必要になる。しかし、これはコスト増を免れない。
このような問題を解決するべく、特許文献1では熱間成形時に母材鋼板の耐酸化抵抗性を持たせるためにアルミニウムを被覆し、所定の組成および組織とした鋼板を提案している。しかしながら、このような鋼板は普通鋼と比較した場合、大幅なコスト増となる。
以上のように、熱間プレス成形においては大幅なコスト増を避けられないのが現状である。つまり、所定の鋼組成および鋼組織のアルミニウム被覆した鋼板はコスト増となる。また、めっき層などの表面処理層を有しない高強度の鋼板に熱間プレス成形を行った場合、生成した鉄系酸化物を除去する工程が必要であり、大幅なコスト増なしに該酸化物を除去する工程を省略できないという問題がある。また、コスト増に甘んじ該酸化物を除去してもめっき層などの表面処理層を有しない鋼板では防錆性が劣るという問題が残る。そして、熱間プレス成形においては、加熱時生成した鉄系酸化物がプレス成形時にプレス金型内で剥離・脱落することで金型の手入れが必要となり生産時間ロスを招き、生産性低下が懸念される。
[1] 鋼板を酸性溶液に接触させ、接触処理終了後1〜90秒間保持した後、水洗及び乾燥を行うことにより前記鋼板表面に平均厚さ10nm以上の酸化物層を形成する表面処理鋼板の製造方法において、前記酸性溶液は、Zn、TiおよびZrから選ばれる1種以上である金属イオンと、尿素および/またはヘキサメチレンテトラミンを含有し、pHが1〜6であり、液温が20〜70℃であることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
[2] 前記[1]において、前記金属イオンの濃度は合計で0.01〜0.50mol/lであり、前記尿素および/またはヘキサメチレンテトラミンの濃度は合計で0.01〜0.50mol/lであることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
[3] 前記[1]または前記[2]の製造方法により製造され、鋼板表面に、Zn、TiおよびZrから選ばれる1種以上を含み平均厚さが10nm以上の酸化物層を有することを特徴とする表面処理鋼板。
[4] 前記[3]において、前記鋼板が亜鉛系めっき層を有することを特徴とする表面処理鋼板。
なお、接触処理は後述する浸漬処理、スプレー処理、ロール塗布により可能である。また、接触処理終了後とは、浸漬処理の場合は浸漬工程を終了した後を、スプレー処理の場合はスプレー工程が終了した後を、ロール塗布の場合は塗布工程が終了した後を示すものである。
これに対し、本発明では、鋼板を接触処理する溶液中に金属イオンと尿素および/またはヘキサメチレンテトラミンを含有することにより酸化物の生成速度が向上する。この機構は未だ明確ではないが、以下のように考えられる。本発明での酸化物生成は特開平2−190483号公報と同様に、表面近傍の鋼板側より供給される金属イオンがpHの上昇により水酸化物となって析出する反応が主体となっていると考えられる。そして、尿素またはヘキサメチレンテトラミンは水中で加水分解してアンモニアとホルムアルデヒドを分解することが知られていることから分解生成したアンモニアがpHを上昇させる。そして、Zn、TiおよびZrイオンの添加により表面近傍の金属イオン濃度が高くなる。これらにより必要な鋼板表面の溶解時間を短縮出来るため、結果として酸化物の生成速度が向上しているものと推察される。
鋼板を酸性溶液に接触させる方法には特に制限はなく、鋼板を酸性溶液に浸漬する方法、鋼板に酸性溶液をスプレーする方法、塗布ロールを介して酸性溶液を鋼板に塗布する方法等がある。
また、酸性溶液に接触後、水洗までの時間(水洗までの保持時間)は、1〜90秒間必要である。これは水洗までの時間が1秒未満であると、溶液のpHが上昇し酸化物層が形成される前に酸性溶液が洗い流されるために、耐酸化性の向上効果が得られない。一方、90秒を超えても、酸化物層の形成量に変化が見られず、90秒を超えた場合の保持時間では生産性を落としてしまう。短時間でも安定的に製造することが本発明では望ましく、本発明の効果を十分に発揮する点から保持時間は90秒以下とする。
以上により、鋼板表面には、Zn、TiおよびZrから選ばれる1種以上を含み平均厚さが10nm以上の酸化物層が形成される。
また、熱間プレス成形中に、ダイとパンチを用いて10〜200℃/sの冷却速度にて部材を冷却することも可能であり、さらに、熱間プレス成形後に、熱間プレス成形した部材を金型より取り出し、液体または気体を用いて冷却することも可能である。
鋼成分として、C:0.23mass%、Si:0.12mass%、Mn:1.5mass%、Cr:0.50mass%、B:0.0020mass%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる冷延鋼板に対して、溶融亜鉛めっき処理、合金化溶融亜鉛めっき処理、電気亜鉛めっき処理および溶融亜鉛−アルミニウムめっき処理を各々行い、板厚1.2mmの溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛−5mass%アルミニウムめっき鋼板を作製した。なお、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛−5mass%アルミニウムめっき鋼板のめっき付着量(片面当たり)はいずれも45g/m2である。また、めっき処理を行わない、板厚1.2mmの冷延鋼板(以下、単に冷延鋼板と称す)も作製した。
次いで、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛−5mass%アルミニウムめっき鋼板に対して、酸性溶液接触処理を行った。なお、酸性溶液処理は、表1〜表5に示す組成と温度の酸性溶液に3秒浸漬した。その後、ロール絞りを行い、液量を10g/m2に調整した後、10秒間大気中、室温にて放置し、十分水洗を行った後、乾燥を実施し、鋼板表面もしくはめっき鋼板表面に、酸化物層を形成した。なお、詳細な条件は、表1〜表5に示す。また、比較例として、上記酸性溶液処理を行わないもの、および尿素またはヘキサメチレンテトラミンを含有しない酸性溶液処理を行ったものも作製した。
(1)熱間プレス成形性
加熱炉内で、大気雰囲気下で加熱速度:15℃/sにて900℃まで加熱し、900℃で60秒間保持後加熱炉より取り出し、円筒絞りの熱間プレス成形を行った。熱間プレス成形は、絞り高さ:25mm、肩R:5mm、ブランク直径:90mm、パンチ直径:50mm、ダイ直径:53mmの条件の下で、酸性溶液処理を施した面が円筒の外面側になる様に実施した。成形後の試験片のめっき層密着状態として、めっき層の剥離の有無を目視で観察して、熱間プレス成形性として2段階で評価した。なお、冷延鋼板の評価はスケール層の剥離を目視で観察して、熱間プレス成形性として2段階で評価した。
○:剥離なし
×:剥離あり
(2)酸化物層厚さ測定
膜厚が96nmの熱酸化SiO2膜が形成されたSiウエハを参照物質として用い、蛍光X線分析装置でO・Kα X線を測定することで、SiO2換算の酸化物層の平均厚さを求めた。分析面積は30mmφである。
以上により得られた結果を条件と併せて表1〜表5に示す。
Claims (4)
- 鋼板を酸性溶液に接触させ、接触処理終了後1〜90秒間保持した後、水洗及び乾燥を行うことにより前記鋼板表面に平均厚さ10nm以上の酸化物層を形成する表面処理鋼板の製造方法において、前記酸性溶液は、Zn、TiおよびZrから選ばれる1種以上である金属イオンと、尿素および/またはヘキサメチレンテトラミンを含有し、pHが1〜6であり、液温が20〜70℃であることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
- 前記金属イオンの濃度は合計で0.01〜0.50mol/lであり、前記尿素および/またはヘキサメチレンテトラミンの濃度は合計で0.01〜0.50mol/lであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板の製造方法。
- 請求項1または2に記載の表面処理鋼板の製造方法により製造され、鋼板表面に、Zn、TiおよびZrから選ばれる1種以上を含み平均厚さが10nm以上の酸化物層を有することを特徴とする表面処理鋼板。
- 前記鋼板が亜鉛系めっき層を有することを特徴とする請求項3に記載の表面処理鋼板。
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