JP2008184618A - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、さらに加熱処理により合金化し、調質圧延を施した後、酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜120秒放置した後、水洗を行うことにより、亜鉛めっき鋼板表面に10nm以上のZn系酸化物層を形成させる際に、前記酸性溶液中にSnイオンを含有させる。以上により、めっき鋼板表面に、平均厚さが10nm以上であり、かつ、Snを主体成分とする金属粒子およびZnを必須成分として含む酸化物層が形成され、課題が解決される。また、前記酸性溶液中には、Snの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上をSnイオン濃度として0.1〜50g/lの範囲で含有することが好ましい。
【選択図】なし
Description
。そのような用途での合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス成形を施されて使用に供される。しかし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、冷延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。これはプレス金型での合金化溶融めっき鋼板の摺動抵抗が冷延鋼板に比べて大きいことが原因である。すなわち、金型とビードでの摺動抵抗が大きい部分で合金化溶融亜鉛めっき鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすい。
特許文献6の方法により製造される合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面には、Znを主体とする酸化物層が形成されており、大半が調圧部に形成される。実際のプレス成形において、金型と優先的に接触する面はこの調圧部であり、接触面圧が低い場合には、調圧部表面のZn系酸化物が、金型とめっき層表面の直接接触を抑制することでプレス成形性の向上効果が得られる。しかし、めっき下地鋼板として高強度鋼を使用する場合は、軟質鋼よりも成形荷重が高く型かじりや割れを生じやすく、このような場合には、特許文献6に記載されるZn系酸化物では効果が不十分であることがわかった。そして、さらに、研究を進めた結果、本発明者らは、Zn系酸化層のみでは成形荷重が高い場合でも高い潤滑性を発現するには限界があり、Zn系酸化層に加えてSnを主体とする金属粒子を混在させることで、高い摺動性が得られることを知見した。この理由は、めっき成分であるZn-Fe合金やZn系酸化物と比較してやわらかい金属(Sn)が表面に存在することにより、金型とのせん断抵抗が低下する効果が付与されたためだと考える。また、本発明ではZn系酸化物と混在することが必須であることから、Zn系酸化物による凝着抑制効果との協奏効果もあると推定している。
[1] 鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、さらに加熱処理により合金化し、調質圧延を施した後、酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜120秒放置した後、水洗を行うことにより、亜鉛めっき鋼板表面に10nm以上のZn系酸化物層を形成する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記酸性溶液中にSnイオンを含有することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[2]前記[1]において、前記酸性溶液中に、Snの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上をSnイオン濃度として0.1〜50g/lの範囲で含有することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]において、前記酸性溶液は、pH緩衝作用を有し、かつ、1リットルの酸性溶液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/l水酸化ナトリウム溶液の量(l)で定義するpH上昇度が0.05〜0.5の範囲であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記酸性溶液は、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち少なくともを1種類以上を、成分含有量5〜50g/lの範囲で含有し、かつ、pHが0.5〜2.0、液温が20〜70℃であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記酸性溶液に接触させた後の鋼板表面に形成する酸性溶液膜が50g/m2以下であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
、めっき表面は平滑化され凹凸が緩和される。従って、プレス成形時には、金型がめっき表面凸部を押しつぶすのに必要な力が低下し、摺動特性を向上させることができる。
、調質圧延前に厚い酸化物層を形成させたとしても、調質圧延時に生じる酸化物層の破壊を避けることはできないため、めっき層表面の酸化物層が不均一に存在し、良好な摺動性を安定して得ることはできない。
板厚0.8mmの冷延鋼板上に、常法の合金化溶融亜鉛めっき皮膜を形成し、更に調質圧延を行った。引き続き、酸化物形成処理として、酢酸ナトリウム40g/lの酸性水溶液にSnイオン濃度(硫酸スズ(II)として添加)、溶液の温度を適宜変えた酸性溶液に3秒浸漬した。なお、酸性溶液のpHは、全て1.5であった。その後、ロール絞りを行い、液量を調整した後、1〜120秒間大気中、室温にて放置し、十分水洗を行った後、乾燥を実施した。
プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を以下のようにして測定した。
図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押し上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取り付けられている。上記押付力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取り付けられている。なお、潤滑油としてスギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを摩擦係数測定用試料1の表面に塗布して試験を行った。
オージェ電子分光(AES)によりめっき表層の調圧部および未調圧部について、各元素の含有率(at.%)を測定し、引き続いて所定の深さまで、Arスパッタリングした後、AESによりめっき皮膜中の各元素の含有率の測定を行い、これを繰り返すことにより、深さ方向の各元素の組成分布を測定した。酸化物、水酸化物に起因するOの含有率が、最大値より深い位置で、最大値と一定値との和の1/2となる深さを酸化物の厚さとし、調圧部および未調圧部に対してそれぞれ2箇所づつ酸化物の厚さを測定し、これらの平均値をそれぞれ調圧部および未調圧部の酸化物の厚さとした。なお、予備処理として30秒のArスパッタリングを行って、供試材表面のコンタミネーションレイヤーを除去した。
Zn系酸化物層上に付与した金属SnはICP(誘導プラズマ発光分析)法により単位面積当たりの質量として評価した。
No.1の比較例は酸性溶液による処理を行っていないため、調圧部および未調圧部に摺動性を向上させるのに十分な酸化膜が形成されず、面圧の低い条件1においても摩擦係数が高い。また、面圧の高い条件2では、さらに摩擦係数が上昇しており、型かじりを生じていた。
No.2〜4の比較例は、酸性溶液での処理を行っているもののSnイオンを含まない浴を用いた比較例である。この場合、Znを主体とする酸化物層が主にめっき鋼板表面の調圧部に形成されているため、成形時に金型との接触が主として調圧部となる面圧の低い条件1の摩擦係数の改善効果は見られるものの、金型との接触が調圧部および未調圧部にわたるような面圧の高い条件2では高い摩擦係数を示している。
一方で、No.5〜28は、Snイオンを含む浴を用いた例である。保持することなく水洗を行ったNo.14を除く本発明例では、Snの金属粒子およびZnを含有する酸化物層がめっき鋼板表面に存在することから、面圧の低い条件1に加えて、面圧の高い条件2においても、摩擦係数が低位で安定している。
No.5〜7は、Snイオンを含有した酸性溶液での処理を行った本発明例であり、面圧の低い条件1に加えて、面圧の高い条件2の摩擦係数も低下している。また、No.8〜10、16〜18、26〜28は、No.5〜7と同一の処理条件で液中のSnイオン濃度を増加させた本発明例であるが、いずれの条件においても摩擦係数が低位安定している。
No.14〜19は、鋼板表面に酸性溶液膜を形成し、水洗を施すまでの時間を変化させた例である。保持することなく水洗を行ったNo.14の比較例では、調圧部および未調圧部において摺動性を向上させるのに十分な酸化膜が形成されず、面圧の低い条件1に加えて、面圧の高い条件2も摩擦係数が上昇している。1秒以上の保持時間となるNo.15〜19は、いずれの条件においても摩擦係数は低位で安定している。
No.11〜13、16〜18、20〜25は処理液温度を変化させた本発明例であり、面圧の低い条件1および面圧の高い条件2のいずれにおいても摩擦係数の向上効果は十分である。しかし、No20〜25では、製造時にはより耐熱性の高い設備仕様とする必要性が生じ、また、製造時の液の蒸発量が多くなるために液膜量の制御がやや困難となる。
2試料台
3スライドテーブル
4ローラ
5スライドテーブル支持台
6ビード
7第一ロードセル
8第二ロードセル
N 押付荷重
F 摺動抵抗力
Claims (5)
- 鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、さらに加熱処理により合金化し、調質圧延を施した後、酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜120秒放置した後、水洗を行うことにより、亜鉛めっき鋼板表面に10nm以上のZn系酸化物層を形成する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記酸性溶液中にSnイオンを含有することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性溶液中に、Snの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩のうち、少なくとも1種類以上をSnイオン濃度として0.1〜50g/lの範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性溶液は、pH緩衝作用を有し、かつ、1リットルの酸性溶液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/l水酸化ナトリウム溶液の量(l)で定義するpH上昇度が0.05〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性溶液は、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち少なくともを1種類以上を、成分含有量5〜50g/lの範囲で含有し、かつ、pHが0.5〜2.0、液温が20〜70℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記酸性溶液に接触させた後の鋼板表面に形成する酸性溶液膜が50g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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