しかしながら、上述のように、像担持体へのストレスは、クリーニング工程でクリーニング手段から受けるものばかりではなく、特に帯電工程における帯電手段からの電気的ストレスは、像担持体の表面状態を大きく変化させる。また、この電気的ストレスは、像担持体の表面近傍で放電現象を伴う、接触帯電方式や近接帯電方式で顕著である。これらの帯電方式では、像担持体の表面で多くの活性種や反応生成物が発生し、また、放電領域の大気中で発生した活性種や反応性生物の像担持体表面への吸着が多く生じてしまう。
特許文献1のようなステアリン酸亜鉛を用いた潤滑剤は、像担持体の表面を比較的均等に覆い良好な潤滑性及び保護性を与える。そのため、像担持体を帯電させる際に交流電圧を印加する作像プロセスで問題になっている感光体磨耗を防止するためにはステアリン酸亜鉛を使用することで容易に解決できる。しかし、ステアリン酸亜鉛はクリーニング性という面で大きな問題がある。それは、通常の作像プロセスでは転写後の残トナーを像担持体上から除去する手段としてブレードクリーニング方式が採用されているが、ステアリン酸亜鉛はこのブレードをトナーがすり抜け易くする性質がある。クリーニングブレードをトナーがすり抜けると、そのトナーが直接画像に出たり、帯電部材の汚染をさらに加速してしまう結果となる。このトナーすり抜けは、昨今の小粒経で球形のトナーであるほど顕著に表れる。また、ステアリン酸亜鉛を用いた物は、トナーなどのすり抜けが多いため、クリーニングブレードを磨耗させてしまい、作像装置が短寿命になってしまう。
また、このクリーニング工程でのトナーすり抜けは、トナーと同時に大量のステアリン酸亜鉛をもすり抜けてしまい、これが帯電部材を汚染するという問題になる。特にローラ上の帯電部材を像担持体に接触又は近接配置して帯電させる方式の場合、帯電部材の汚染は増大する。帯電部材が汚染された場合、濃度ムラ等の異常画像が発生してしまう。
特許文献2に記載の高級アルコールによる潤滑剤では、像担持体の表面に濡れ易く、潤滑剤としての効果は期待できるが、像担持体上に吸着した高級アルコール分子、一分子当りの占める吸着占有面積が広くなりがちである。このため、像担持体の単位面積あたりに吸着する分子の密度(単位面積当りの吸着分子重量)が小さいため、上述の電気的ストレスが保護層を容易に貫いてしまい、像担持体を十分に保護する効果が得られにくい。
特許文献3のように分子中に窒素原子を含む構成の有機系潤滑剤では、潤滑剤自体が上述の電気的ストレスを受けた場合に、分解生成物として窒素酸化物やアンモニウム含有化合物に類するイオン解離性の化合物を生成し、潤滑層内に取り込まれてしまい、高湿度下で潤滑層が低抵抗し、画像ボケを発生させることがある。
特許文献4では、シリカ、チタニア、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、フェライト及びマグネタイトといった微粒子を添加するとしているが、これら無機潤滑剤を添加しただけでは長期にわたって潤滑剤の消費速度を安定化することができず、経時で像担持体への供給量が不足してトナーや紙粉フィルミングが発生したり、クリーニング不良の原因となる。
特許文献5のように窒化ホウ素を像担持体保護剤として使用した場合、その潤滑性の高さゆえに像担持体の表面からの除去が困難であり、供給量が過剰となった場合には像担持体上にフィルミングとして付着してしまう。従って、この構成ではより安定した供給量の確保が大きな課題となる。
本発明は、上記のような現状の問題点に鑑み、充分な像担持体の表面の保護効果、クリーニング部材の劣化防止、トナーのすり抜け防止、及び像担持体への異物付着による画像ボケ防止を長期間に渡り安定して実現する像担持体保護剤を提供することを目的とする。
本発明は、良好な像担持体保護層を形成する保護層形成装置を提供することを目的とする。
本発明は、良好な品質の画像を長期間に渡り安定して得ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明は、良好な品質の画像を安定して得ることができるプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、像担持体の表面に塗布または付着させる像担持体保護剤であって、無機潤滑剤(A)を含有し、無機潤滑剤(A)の平均粒径をDa、像担持体の表面に含有されている微粒子(B)の平均粒径をDbとしたとき、Da/Dbが0.2≦Da/Db≦20の範囲となる平均粒径Daの無機潤滑剤(A)を有することを特徴としている。
請求項1の発明の像担持体保護剤は、無機潤滑剤(A)と脂肪酸金属塩(C)の混合物からなることを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1記載の像担持体保護剤において、無機潤滑剤(A)が窒化ホウ素であることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の像担持体保護剤において、脂肪酸金属塩(C)がステアリン酸亜鉛であることを特徴としている。
請求項4の発明は、像担持体の表面に像担持体保護剤を塗布または付着させる保護層形成装置において、像担持体保護剤が、請求項1ないし3の何れか1項に記載の像担持体保護剤であることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項4記載の保護層形成装置において、像担持体保護剤を像担持体の表面へ供給する供給部材を有することを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項4または5記載の保護層形成装置において、像担持体の表面へ供給された像担持体保護剤を押圧し皮膜化する層形成手段を有することを特徴としている。
請求項7の発明は、少なくとも、トナー像を担持する像担持体と、像担時体上のトナー像を転写媒体に転写する転写手段と、トナー像が転写媒体に転写されたあとの像担持体の表面に像担持体保護剤を塗布または付着させる保護層形成装置を有する画像形成装置において、保護層形成装置が請求項4、5または6記載の保護層形成装置であることを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項7記載の画像形成装置において、転写手段よりも像担持体回転方向下流側かつ保護層形成装置より像担持体回転方向上流側に、像担持体の表面に残留したトナーを、該像担持体との摺擦によって該表面から除去するクリーニング手段を有することを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項7または8記載の画像形成装置において、像担持体の表面が平均粒径Dbとなる微粒子(B)を含有し、この微粒子(B)が無機微粒子であることを特徴としている。
請求項10の発明は、請求項9記載の画像形成装置において、無機微粒子がアルミナであることを特徴としている。
請求項11の発明は、少なくとも、トナー像を担持する像担持体と、トナー像が転写媒体に転写されたあとの像担持体の表面に像担持体保護剤を塗布または付着させる保護層形成装置を有するプロセスカートリッジにおいて、保護層形成装置が請求項4、5または6記載の保護層形成装置であることを特徴としている。
請求項12の発明は、請求項11記載のプロセスカートリッジにおいて、像担時体上のトナー像を転写媒体に転写する転写手段よりも像担持体回転方向下流側かつ保護層形成装置より像担持体回転方向上流側に、像担持体の表面に残留したトナーを、該像担持体との摺擦によって該表面から除去するクリーニング手段を有することを特徴としている。
請求項13の発明は、請求項11または12記載のプロセスカートリッジにおいて、像担持体の表面が平均粒径Dbとなる微粒子(B)を含有し、微粒子(B)が無機微粒子であることを特徴としている。
請求項14の発明は、請求項13記載のプロセスカートリッジにおいて、無機微粒子がアルミナであることを特徴としている。
請求項15の発明は、請求項11ないし14の何れか1項に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴としている。
本発明にかかる像担持体保護剤によれば、無機潤滑剤(A)の平均粒径をDa、像担持体の表面に含有されている微粒子(B)の平均粒径をDbとしたとき、Da/Dbが0.2≦Da/Db≦20の範囲となる平均粒径Daの無機潤滑剤(A)を有するので、充分な像担持体の表面の保護効果、クリーニング部材の劣化防止、トナーのすり抜け防止、及び像担持体への異物付着による画像ボケ防止を長期間に渡り安定して実現することができる。
像担持体保護剤を無機潤滑剤(A)と脂肪酸金属塩(C)で構成し、中でもステアリン酸亜鉛を混合して用いることにより、特にフィルミングに対する効果が向上することができる。また、無機潤滑剤(A)を窒化ホウ素とすることで、特にLL環境下でのクリーニング性に対してより優れた効果が持続することができる。像担持体の表面に含有されている微粒子(B)を無機微粒子とし、中でもアルミナを選ぶことで、全ての特性をより良好に保つことができる。
本発明の保護層形成装置によれば、優れた特性の像担持体保護剤を用いるので、像担持体の表面に良好な保護層を形成することができる。また、像担持体保護剤を像担持体の表面へ供給する供給部材を有するので、像担持体保護剤と像担持体の間に供給部材を介させることにより、軟質な像担持体保護剤を用いた場合にでも、像担持体表面へ均等に供給することができる、良好な像担持体保護層を形成することができる。像担持体の表面へ供給された像担持体保護剤を押圧し皮膜化する層形成手段を有するので、像担持体の表面へ供給された像担持体保護剤で良好な像担持体保護層を形成することができる。
本発明に係る画像形成装置によれば、保護層形成装置を有するので、像担持体の表面に像担持体保護層を良好に形成することができ、像担持体が極めて長期間、交換することなく使用し続けることができるとともに、良好な品質の画像を長期間に渡り安定して得ることができる。
本発明に係る画像形成装置によれば、転写手段よりも像担持体回転方向下流側で、かつ保護層形成装置よりも像担持体回転方向上流側の部位に、像担持体の表面に残留したトナーを、該像担持体との摺擦によって該表面から除去するクリーニング手段を有するので、保護層が形成される前に、クリーニング部材にて像担持体上のトナーを主成分とする残存物を除去することができるので、残存物が保護層内に混入しなくなり、保護層が安定して良好な品質の画像を長期間に渡り安定して得ることができる。
本発明に係るプロセスカートリッジによれば、像担持体保護剤を有する保護層形成装置を有するので、像担持体の表面に像担持体保護層を良好に形成されるため、良好な品質の画像を安定して得ることができるとともに、像担持体が極めて長期間、交換することなく使用し続けることができる。このため、プロセスカートリッジの交換間隔を極めて長く設定することが可能となるとともに交換間隔が長くなるので、ランニングコストの低減を図りながらも廃棄物量も大幅に削減することができる。
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の保護層形成装置構成2の原理を説明する概略構成を示す。図2は保護層形成装置2を備えたプロセスカートリッジ50の概略構成を示す。図3は保護層形成装置2を有するプロセスカートリッジ50を備えた画像形成装置100の概略構成を示す。
図3に示すように、画像形成装置100は、像担持体であるドラム状の感光体(以下「感光体ドラム」と記す)1を備えている。感光体ドラム1の周囲には、帯電手段となる帯電ローラ3、現像手段5、転写手段となる転写ローラ6、クリーニング手段4及び保護層形成装置2が配置されている。これら構成のうち、感光体ドラム1、保護層形成装置2、帯電ローラ3、クリーニング手段4、現像手段5は、ケーシング7内に収納されていてプロセスカートリッジ50として構成されている。本形態では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成すべく、4つのプロセスカートリッジ50を横一列に配置した構成としている。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに係る構成要素には、それぞれY,M,C,Kの符号を付して識別するものとする。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのプロセスカートリッジはそれぞれプロセスカートリッジ50Y,50M,50C,50Kと示す。
各プロセスカーカートリッジの構成は、使用するトナーの色が異なる以外は、基本的に同一構成を採る。このため、特にカラー画像形成に関する場合を除き、Y,M,C,Kの符号は省略する。
プロセスカートリッジ50Y,50M,50C,50Kがそれぞれ備える帯電ローラ3Y,3M,3C,3Kと現像手段5Y,5M,5C,5Kの間には、潜像形成手段となる光走査装置8から各色に対応した潜像を形成する、レーザー光11が照射されるように構成されている。
転写ローラ6Y,6M,6C,6Kの下方には、中間転写手段9と定着手段10と給紙装置200が配置されている。中間転写手段8は、複数のローラ部材に巻き掛けられたベルト状の中間転写媒体60を備えている。中間転写媒体60は、図3において時計回り方向に回転駆動するように構成されている。
次に、画像形成装置100による画像形成のための一連のプロセスについて、ネガ−ポジプロセスを例にして説明する。図1に示す有機光導電層を有する感光体(OPC)に代表される感光体ドラム1Y,1M,1C,1Kは、図示しない除電ランプ等で除電され、帯電ローラ3Y,3M,3C,3Kで均一にマイナスに帯電される。各帯電ローラ3による各感光体ドラム1の帯電が行われる際には、電圧印加手段65から各帯電ローラに、感光体ドラム1を所望の電位に帯電させるに適した、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した帯電電圧、すなわち、交流成分を有する電圧が印加される。
帯電された各感光体ドラム1は、潜像形成装置8から照射されるレーザー光11でそれぞれ潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行われる。レーザー光11は半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等により感光体ドラム1の表面(以下「ドラム表面1a」)を、感光体ドラム1の回転軸方向に走査する。
このようにして形成された潜像が、図2に示すように、各現像手段5が備えた現像剤担持体である各現像スリーブ51上に供給されたトナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。潜像の現像時には、図示しない電圧印加機構から現像スリーブ51に、感光体ドラム1の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。このようなトナー像が形成される工程は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応して行われる。
各色に対応した感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、各転写ローラ6にて順次中間転写媒体60上にそれぞれ転写される。このとき、各転写ローラには、転写バイアスとして、トナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。転写後の各感光体ドラム1上に残存するトナー粒子は、各クリーニング手段4を構成するクリーニングブレード41によって、クリーニング手段4内のトナー回収部へそれぞれ回収される。各クリーニングブレード41は、付勢手段となる圧縮コイルバネ42によってドラム表面1aに対してその先端がそれぞれ押圧されている。クリーニングブレード41は、その先端が所謂カウンタータイプ(リーディングタイプ)に類する角度でドラム表面1aに当接するようにそれぞれ配置されている。
中間転写媒体60上に転写されたトナー像は、定着手段10の手前において中間転写媒体60と対向配置され、2次転写バイアスが印加される2次転写ローラ61によって、給紙装置200から給送された紙などの転写媒体P上に一括して転写(2次転写)される。転写された転写媒体Pは、定着手段10によって定着され、排紙トレイへ排出される。
本形態に係る画像形成装置100は、中間転写方式として説明したが、複数の現像手段5によって順次作製された色が異なる複数のトナー像を順次記録媒体P上へ直接転転写する方式であっても良い。また、画像形成装置としては、カラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像を形成する画像形成装置であってよい。また、画像形勢装置としては、プリンター、複写機に限定されるものではなく、ファクシミリ単体、あるいはプリンター、複写機などの複数の機能を備えた複合機であってもよい。
本形態における像担持体保護剤21について説明する。
像担持体保護剤21は、無機潤滑剤(A)を含有している。無機潤滑剤(A)とは、自身が劈開して潤滑する、或いは内部滑りを起こす無機化合物のことを指す。具体的な物質例としては、タルク、マイカ、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、カオリン、スメクタイト、ハイドロタルサイト化合物、フッ化カルシウム、グラファイト、板状アルミナ、セリサイト、合成マイカなどがあるが、これらに限るものではない。無機潤滑剤(A)の中でも窒化ホウ素は、原子がしっかりと組み合った六角網面が広い間隔で重なり、層間に働く力は弱いファンデルワールス力のみであるため、容易に劈開、潤滑することから、本形態においては最も好ましく用いられる。
なお、これらの無機潤滑剤(A)は疎水性付与等の目的で、必要に応じて表面処理がなされていても良い。
本発明に係る感光体ドラム1の表面1は微粒子(B)を含有している。微粒子(B)としては、有機微粒子と無機微粒子のどちらを用いても良いが、無機微粒子が特に好ましく用いられる。
有機微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機微粒子としては、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム等のチタン酸金属塩が挙げられるがこの限りではない。本形態においては無機微粒子、中でもアルミナが特に好ましく用いられる。これらの微粒子は単独で用いても、或いは2種以上を混合して用いても良い。また、分散性を向上させるために、これらの微粒子は必要に応じて表面処理を行っても良い。
これらの微粒子はボールミル、サンドミル等公知の手段で感光体ドラム1の最表面塗工液中に分散させ、使用することができる。本形態においては、感光体ドラム1の静電特性の面から、含有量は全固形分に対して5〜40重量%が好ましく、更に好ましくは10〜30%である。
本発明においては、無機潤滑剤(A)の平均粒径をDa、微粒子(B)の平均粒径をDbとしたとき、両者の比Da/Dbを、0.2≦Da/Db≦20の範囲になるように設定している。つまり、像担持体保護剤21からみると、Da/Dbが0.2≦Da/Db≦20の範囲となる平均粒径Daの無機潤滑剤(A)を有することとなる。なお、平均粒径は公知の方法を用いて測定すれば良いが、対象となる粒径範囲及び測定精度面から、一般にはレーザー回折式の粒度分布測定器が好ましく用いられる。
前述のように、窒化ホウ素に代表される無機潤滑剤を像担持体保護剤21として用いた場合、感光体ドラム1の保護層1dは、材料自身の潤滑性の高さに加えて、帯電工程において帯電ローラ3からの電気的ストレスに対しても極めて安定な特性を有するため、クリーニング性に対して高い効果を得ることができる反面、前述のようにドラム表面1aへのフィルミングが問題となる。これは均一に成膜しにくいという無機潤滑剤の材料特性に依るところが大きい。
十分な潤滑効果を得るにはドラム表面全体を覆う必要があるが、そのためには必然的に厚く成膜された部分と薄く成膜された部分が生じ、厚く成膜した部分がフィルミングとなってしまう。本発明者らは、これらの無機潤滑剤を均一に成膜するために鋭意検討を重ね、像担持体(感光体ドラム1)側に成膜性の補助機能を加えることに解を見いだした。
具体的な手段としては、像担持体表面1a層に微粒子(B)を添加することによって適度な凹凸を形成し、この凹凸を利用して無機潤滑剤(A)を成膜させる。本発明者らの検討により、無機潤滑剤(A)は平滑な面に対しては不均一な膜を形成するが、本形態のように凹凸のある面に対しては必ずしも不均一な膜を形成する訳ではなく、微粒子(B)の粒径と無機潤滑剤(A)の粒径が適当な関係にある時には、ほぼ均一と見なされる膜を形成することがわかった。
以下に実験結果を示す。図4は、ポリカーボネート樹脂及び蛍光物質をテトラヒドロフラン中に溶解させた樹脂溶液中に、粒径を変化させたアルミナを全固形分に対して20%重量含有、分散させた液を、アルミナ板上に塗布して作製した疑似感光体上に、粒径を変化させた窒化ホウ素をクリーニングブレードにて十分に摺擦塗布し、成膜性を観察した結果である。なお、成膜性については得られたサンプル表面を蛍光顕微鏡にて観察することで判断した。窒化ホウ素が塗布されると疑似感光体からの蛍光が遮断されることから、観察画像が均一の暗さで表示されるほど、窒化ホウ素の塗布状態が均一であると判断できる。
図4において、縦軸は無機潤滑剤粒径Da(μm)、横軸は微粒子粒径Db(μm)を示す。図中、●、△、×は成膜状態を示すもので、●は全面均一、△は一部不均一な部分あり、×は全面不均一の状態をそれぞれ示す。この成膜状態●、△、×は、図5、図6でも同様に用いる。図4からわかるように、窒化ホウ素膜が均一になるにはある範囲の粒径の組み合わせが好ましいことが判る。グラフ中に示した点線はそれぞれDa/Db=0.2、及びDa/Db=20のラインであり、両ライン内の領域でのみ成膜性に優れることが示されている。なお、参考のため、図5には縦軸の表示範囲を変更したグラフを示した。
図6は、図7に示す無機潤滑剤(A)及び微粒子(B)を組み合わせ、図4と同様の実験を行った結果である。この結果より、無機潤滑剤(A)及び微粒子(B)の種類によらず、本発明の範囲が成膜性に優れていることが判る。
理由としては推測の域を出ないが、おそらく無機潤滑剤(A)が微粒子(B)に対して小さすぎる場合には、微粒子(B)のアンカー効果が良好に発揮されないため成膜性に劣り、無機潤滑剤(A)の像担持体上への存在量が少ない側で不均一になりやすい。逆に、無機潤滑剤(A)が微粒子(B)に対して大きすぎる場合には、無機潤滑剤(A)が過剰に堆積しやすくなり、像担持体上への存在量が多い側で不均一になりやすい。このため本発明においては、Da/Db<0.2の領域ではクリーニング性に対する効果が小さくなり、Da/Db>20の領域ではフィルミングが発生し易くなる傾向にある。
更に本形態においては、像担持体保護剤21として、無機潤滑剤(A)と脂肪酸金属塩(C)の混合物を使用することが更に好ましい。脂肪酸金属塩は均一成膜性に優れるため、無機潤滑剤と併用することで本発明の効果を更に高めることができる。
脂肪酸金属塩(C)の例としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレインサン銅、オレイン酸鉛、オレイン酸マンガン、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸コバルト、パルミチン酸鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、カプリル酸鉛、カプリン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸カドミウム及びそれらの混合物があるが、これに限るものではない。また、これらを混合して使用してもよい。本形態においては、中でもステアリン酸亜鉛が特に像担持体への成膜性に優れることから、最も好ましく用いられる。
すなわち、本形態においては、少なくとも無機潤滑剤(A)を含有した像担持体保護剤21を像担持体となる感光体ドラム1の表面や中間転写媒体60の表面に塗布又は付着させる工程を有している。
次に像担持体保護剤21の供給方法について説明する。
像担持体の保護のためには、図1、図2に示す保護剤供給部材22を用いて、像担持体用保護剤21の一定量を、十分に大きさが揃った状態で、ここでは感光体ドラム1のドラム表面1a上に供給する必要がある。また、像担持体保護剤21は粉末状のままで供給しても構わないが、取り扱いの簡便さから固形状に加工されている方が好ましい。
本形態にかかる像担持体保護剤21を、一定の形状、例えば角柱状や円柱状に成型するためには、粉末成型方法のひとつである、乾式成形法を用いる。乾式成型法の代表的な例として、一軸加圧成形法は、概ね以下の手順によって行うことができる。
1.予め、一定の粒子径となるように粉末化して分級した保護剤原材料粉末を、所定量計量する。
2.所定形状の型枠中に、計量した像担持体用保護剤原材料粉末を投入する。
3.押し型により投入した粉末を加圧し、特定の連続気泡率及び独立気泡率を持つ粉末圧密体を作成する。
この粉末圧密体を型枠から外し、像担持体用保護剤の多孔質成形体とする。
4.その後、切削加工などにより、像担持体用保護剤の形状を整えてもよい。
ただしこの時、発熱体を押圧して表面の平滑性を増すような加工を行うと、表面の保護剤粒子がお互いに融着し粗大化するため好ましくない。また、必要に応じ、粉末圧密体を、所定温度で一定時間養生後、放冷又は除冷により冷却して、原材料粉末界面の結合力を調節しても良い。
ただし、過剰な温度や長時間の養生は、粒子間の結合を強固にし、過度の焼結状態に移行してしまうため好ましくない。焼結が進み過ぎると、保護剤成形体内部では、連続気泡の周りが封鎖され、独立気泡へ変化する。よって、前述のように独立気泡の割合を規定することにより、粒子間結合力の程度を見積もることができ、過剰な焼結を防止し、保護剤のほぐれやすさを確実に維持した成形体を作成することができる。
前記型枠としては、寸法精度の良さ、熱伝導性の良さから鋼材、ステンレス、アルミニウム等の金属製型枠が好ましい。また、型枠内壁面には、離型性を良くするために、微量のフッ素樹脂、シリコーン樹脂などの離型剤をコーティングしても良い。
次に、各プロセスカートリッジ50に装着された保護層形成装置2の構成について図1を用いて説明する。各保護層形成装置2は、感光体ドラム1に対向して配設されている。各保護層形成装置2は、無機潤滑剤(A)と脂肪酸金属塩(C)の混合物からなる像担持体保護剤21、この保護剤21を感光体ドラム1へ供給する保護剤供給部材22、保護層形成手段24等からそれぞれ構成されている。
像担持体保護剤21は、圧縮コイルバネ23からの押圧力により、例えばブラシ状の保護剤供給部材22と圧接している。保護剤供給部材22は、感光体ドラム1と線速差をもって回転して摺擦し、その際に、保護剤供給部材22の表面に保持された像担持体保護剤21を、ドラム表面1aに供給する。このようにドラム表面1aに供給された像担持体保護剤21によりドラム表面1aには保護層1dが形成される。ドラム表面1aに供給されて保護層1dを形成する像担持体保護剤21は、保護層形成手段24により薄層化される。
本形態では、複数トナー像を一旦、中間転写媒体60に転写した後、2次転写ローラ61によって記録媒体Pに一括転写しているので、中間転写媒体60が転写媒体となるが、例えばドラム表面1aに形成された単色のトナーを単独で記録媒体Pに転写する方式の場合には、記録媒体Pが転写媒体となる。
保護層形成手段24は、層形成部材となるブレード241と、これを支持するブレード支持体242と、ブレード241をドラム表面1aに付勢する付勢手段としての圧縮コイルバネ243とを備えている。ブレード241は、ブレード支持体242に接着や融着等の任意の方法によって装着されていて、先端がドラム表面1aに接触するように配置されている。
ブレード241の材料は、特に制限されるものではなく、例えばクリーニングブレード用材料として一般に公知の、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体を、単独またはブレンドして使用することができる。また、これらのゴムブレードは、感光体ドラム1との接点部部分を低摩擦係数材料で、コーティングや含浸処理しても良い。また、弾性体の硬度を調整するために、他の有機フィラーや無機フィラーに代表される充填材を分散しても良い。
ブレード241の厚みについては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね0.5〜5mm程度であれば好ましく使用でき、1〜3mm程度であれば更に好ましく使用できる。
ブレード支持体242から突き出し、たわみを持たせることができるブレード241の長さL、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える、力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、概ね1〜15mm程度であれば好ましく使用でき、2〜10mm程度であれば更に好ましく使用できる。
層形成部材の他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレードの表面に、必要によりカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の弾性層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、更に必要であれば表面研摩等を施して用いても良い。弾性金属ブレードの厚みは、0.05〜3mm程度であれば好ましく使用でき、0.1〜1mm程度であればより好ましく使用できる。また、弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施しても良い。
ブレード241の表面を形成する材料としては、PFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂や、フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマー等を、必要により充填剤と共に、用いることができるが、これに限定されるものではない。
ブレード241で感光体ドラム1を押圧する力は、像担持体保護剤21が延展し保護層や保護膜の状態になる力で十分であり、線圧として5gf/cm以上80gf/cm以下であることが好ましく、10gf/cm以上60gf/cm以下であることがより好ましい。
ブラシ状の部材は保護剤供給部材22として好ましく用いられるが、この場合、ドラム表面1aへの機械的ストレスを抑制するためにはブラシ繊維は可撓性を持つことが好ましい。
可撓性のブラシ繊維の具体的な材料としては、一般的に公知の材料から1種乃至2種以上を選択して使用する事ができる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂);などの内、可撓性を持つ樹脂を使用することができる。
また、撓みの程度を調整するために、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合して用いても良い。
保護剤供給部材22の支持体22Aには、固定型と回動可能なロール状のものがある。ロール状の支持体22Aを有する保護剤供給部材22としては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものがある。ブラシ繊維は繊維径10〜500μm程度、ブラシの繊維の長さは1〜15mm、ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×107〜4.5×108本)のものが好ましく用いられる。
保護剤供給部材22は、供給の均一性やその安定性の面から、極力ブラシ密度の高い物を使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作ることも好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することも可能である。
ブラシ表面には必要に応じてブラシの表面形状や環境安定性などを安定化することなどを目的として、被覆層を設けても良い。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましく、これらは、可撓性を保持し得る材料であれば、何ら限定される事無く使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);パーフルオロアルキルエーテル,ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂等が挙げられる。
図3に示す画像形成装置100において、帯電手段には公知のいずれの構成を使用しても良いが、ドラム表面1aに接触または近接して配設された帯電手段であることがより好ましいため、本形態ではドラム表面1aに接触する帯電ローラ3を用いている。これにより、放電ワイヤを用いた、いわゆるコロトロンやスコロトロンと言われるコロナ放電器と比して、帯電時に発生するオゾン量を大幅に抑制することが可能となる。
このような帯電手段をドラム表面1aに接触または近接して帯電を行う帯電方式では、放電がドラム表面1a近傍の領域で行われるため、ドラム表面1aへの電気的ストレスが大きくなりがちである。
しかし、本形態のような、保護層形成装置2を用いて無機潤滑剤(A)と脂肪酸金属塩(C)の混合物からなる像担持体保護剤21をドラム表面1aに供給して保護層1dを形成することで、長期間に渡り感光体ドラム1を劣化させることなく維持できるため、経時的な画像の変動や使用環境による画像の変動を大幅に抑制でき、安定した画像品質の確保が可能となる。
以下、実施例を用いて更に本発明を詳細に説明するが、本発明の構成はこれに限られたものではない。なお、実施例中の「部」は全て重量部を表す。また、本実施例における無機潤滑剤(A)及び微粒子(B)の粒径は、島津製作所社製 レーザー回析式粒度分布測定装置 SALD−2200を用いて測定し、D50の値を平均粒径とした。
(保護剤製造例)
図8に示す構成例1〜16の無機潤滑剤(A)及び脂肪酸金属塩(C)の各組み合わせについて、重量比でA:C=2:8となるよう材料を混合した。混合は、ワンダーブレンダー(WB−1、販売元:大阪ケミカル株式会社)を用い、25000rpmの回転速度で10秒間の混合を2度行い、試料の混合物粉体とした。
次に、深さ20mm×幅8mm×長さ350mmのアルミニウム製の金型に、構成例1〜16の組成物を投入し、ヘラで表面を均した後、充填物の高さが8mmとなるように、押し型で加圧圧縮して、粉末圧密体を成形した。なお、このとき粉末圧密体の充填率が90%となるよう、金型に投入する粉体の重量を調整した。(即ち、投入する粉体の重量=金型の体積×粉体の真比重×0.9である。)また、構成例15においては、ステアリン酸亜鉛のみで上記処理を行い、保護剤を製作した。
成型後、固形物を型から外し、8mm×8mm×310mmに整形して、金属製支持体に両面テープで貼り付け、構成例1〜18における保護剤を作製した。
(感光体製造例)
外径40mmのアルミニウムシリンダー上に公知の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層を形成した。
更に、下記処方のオーバーコート層塗工液中に、表1に示す構成例1〜18の微粒子を3部混合分散して上記電荷輸送層上にスプレー塗布、乾燥し、膜厚5μmのオーバーコート層を形成して、各微粒子を表面中に含有した構成例1〜18における感光体を作製した。なお、構成例18は下記オーバーコート層塗工液に微粒子を混合せず、そのままスプレー塗布、乾燥を行った。
<オーバーコート層塗工液>
Z型ポリカーボネート 10部
トリフェニルアミン化合物 7部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
(実施例1)
図8に示す構成例1で作製した感光体の周りに、転写工程に引き続き、カウンタータイプのクリーニングブレード、ブラシ状の保護剤供給部材、カウンターブレードタイプの保護層形成機構を、上流からこの順で設け、構成例1で作製した保護剤を用いた保護層形成装置を有する、プロセスカートリッジを作成した。尚、帯電部材としては直径12mmの硬質樹脂ローラを用い、感光体とのギャップを50μmに調整した。
これを、上記プロセスカートリッジを搭載可能なように改造したリコー製カラーMFP imagio MP C3500に搭載し、A4版、画像面積率6%原稿8万枚の連続通紙試験を行った。帯電条件としては−600VのDC成分に、AC成分としてVpp=3kV、周波数=1.5kHzの正弦波を重畳した交番電界を印加した。試験後の像担持体について摩耗量の測定、及び感光体フィルミングの目視観察を行った。更に試験後の画像品質を、10℃/15%RHの低温低湿環境および32℃/80%RHの高温高湿環境にて確認し、低温低湿環境下でのクリーニング不良、及び高温高湿環境下での画像ボケが発生しないかどうか調べた。
(実施例2、実施例3)
実施例1において構成例1の保護剤及び感光体の代わりに、構成例2、3の保護剤及び感光体を用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
(実施例4)
無機微粒子(A)として窒化ホウ素を用いることによる効果を調べるため、実施例1において構成例1の保護剤及び感光体の代わりに、構成例4の保護剤及び感光体を用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
(実施例5)
微粒子(B)として無機微粒子を用いることによる効果を調べるため、実施例1において構成例1の保護剤及び感光体の代わりに、構成例5の保護剤及び感光体を用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
(実施例6〜実施例10)
微粒子(B)としてアルミナを用いることによる効果を調べるため、実施例1において構成例1の保護剤及び感光体の代わりに、構成例6〜10の保護剤及び感光体を用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
(実施例11)
実施例7において、保護剤作製時の窒化ホウ素とステアリン酸亜鉛の混合比を、2:8から4:6に変更した以外は、実施例7と同様の評価を行った。
(実施例12)
実施例7において、窒化ホウ素とステアリン酸亜鉛の混合比を、2:8から1:9に変更した以外は、実施例7と同様の評価を行った。
(実施例13)
脂肪酸金属塩(C)としてステアリン酸亜鉛を用いることの効果を調べるため、実施例7において、構成例7の保護剤及び感光体の代わりに、構成例11の保護剤及び感光体を用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
(実施例14)
無機潤滑剤(A)と脂肪酸金属塩(C)を混合することの効果を調べるため、実施例7において、構成例7の保護剤及び感光体の代わりに、構成例12の保護剤及び感光体を用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
(実施例15)
実施例7において、構成例7で作製した感光体の周りに、転写工程に引き続きブラシ状の保護剤供給部材、カウンタータイプのクリーニングブレード兼用となる保護層形成機構を、上流からこの順で設け、構成例7で作製した保護剤を用いた保護層形成装置を有するプロセスカートリッジを作成した。このプロセスカートリッジを用いた以外は、実施例7と同様の評価を行った。
(実施例16)
実施例7において感光体製造時に使用したアルミシリンダーの直径を30mmとした以外は、実施例7と同様に保護剤及び感光体を作製した。この保護剤及び感光体を、リコー製カラーMFP imagio Neo C385を改造した評価機に搭載し、実施例7と同様の評価を行った。なお、この評価機は転写工程に引き続きブラシ状の保護剤供給部材、カウンタータイプのクリーニングブレード兼用となる保護層形成機構を、上流からこの順で設けた構成となっている。また、帯電部材としては直径12mmのゴムローラを用い、感光体とのギャップを35μmに調整し、帯電条件としては−700VのDC成分に、AC成分としてVpp=2.0kV、周波数=0.9kHzの正弦波を重畳した交番電界を印加した。
比較例1〜4
実施例1において構成例1の保護剤及び感光体の代わりに、本発明の規定範囲外である構成例13〜16の保護剤及び感光体を用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
以上の結果を図9に示す。実施例1〜16に示すように、像担持体保護剤21中に含まれる無機潤滑剤(A)の平均一次粒径Daと、像担持体表面中に含まれる微粒子(B)の粒径Dbとの比Da/Dbを0.2≦Da/Db≦20とすることにより、長期にわたって画像ボケ、クリーニング不良等を抑制でき、安定した画像を得ることができる。
実施例3〜14に示すように、無機潤滑剤(A)を窒化ホウ素とすることで、特にLL環境下でのクリーニング性に対してより優れた効果が持続する。また、実施例6〜14に示すように、微粒子(B)を無機微粒子とし、中でもアルミナを選ぶことで、全ての特性をより良好に保つことができる。
実施例7と実施例13、14との比較から、無機潤滑剤(A)と脂肪酸金属塩(C)、中でもステアリン酸亜鉛を混合して用いることにより、特にフィルミングに対する効果が大きくなることがわかる。
更に、実施例7と実施例15、16との比較から、転写手段6より下流側かつ保護層形成装置2より上流側にクリーニング手段4を備えることによって、本発明の効果を更に良好に発揮することができている。
このような無機潤滑剤(A)と脂肪酸金属塩(C)の混合物からなる像担持体保護剤21をドラム表面1aに供給して保護層1dを形成する保護層形成装置2を、図2に示すようにプロセスカートリッジ50が備えることで、像担持体の表面に像担持体保護層1dが良好に形成されるため、良好な品質の画像を安定して得ることができるとともに、像担持体が極めて長期間、交換することなく使用し続けることができる。このため、プロセスカートリッジの交換間隔を極めて長く設定することが可能となるとともに交換間隔が長くなるので、ランニングコストの低減を図りながらも廃棄物量も大幅に削減することができる。また、特に小型の画像形成装置に対しても、長期間に渡り感光体ドラム1を劣化させることなく維持できるため、経時的な画像の変動や使用環境による画像の変動を大幅に抑制でき、安定した画像品質の確保が可能となる。