JP5276257B2 - ヒトミトコンドリアdnaに関する遺伝子検出法 - Google Patents
ヒトミトコンドリアdnaに関する遺伝子検出法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5276257B2 JP5276257B2 JP2006165296A JP2006165296A JP5276257B2 JP 5276257 B2 JP5276257 B2 JP 5276257B2 JP 2006165296 A JP2006165296 A JP 2006165296A JP 2006165296 A JP2006165296 A JP 2006165296A JP 5276257 B2 JP5276257 B2 JP 5276257B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- seq
- haplogroup
- detect
- haplogroups
- nucleic acid
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
Description
これらの調査結果から、我々は、ヒトのミトコンドリアゲノム多型データベース(http://www.giib.or.jp/mtsnp/index_e.shtml)を構築した。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、mtDNAの多型(mtSNP)を効果的に検出するための遺伝子検出法等を提供することにある。
この遺伝子検出方法を利用することにより、上記各ハプログループと、4種類の疾患(すなわち、メタボリックシンドローム(MS)、2型糖尿病、心筋梗塞、及びアテローム血栓性脳梗塞)との関係を大規模に解析した。その結果、次のことがわかった。
2型糖尿病においては、ハプログループFを持つ者は罹患する危険性が高いこと、ハプログループN9aを持つ者は疾患に対する抵抗性を有すること(特に、女性の場合)、および女性の場合にはハプログループAを持つ者は罹患する危険性が高いことがわかった。
心筋梗塞においては、ハプログループN9bを持つ者が疾患に対する抵抗性を有すること、及びハプログループG1を持つ者は罹患する危険性が高いこと(特に、男性の場合)がわかった。
アテローム血栓性脳梗塞においては、ハプログループAを持つ者は、罹患する危険性が高いこと(特に、女性の場合)がわかった。
第一の発明においては、次のmtSNPによってグループ分けされる少なくとも10個のハプログループ、すなわち3970T、13928A、10310Aを有するハプログループFと、8272の9bp欠失を有するハプログループBと、663G、8794Tを有するハプログループAと、5231A、12358G、12372Aを有するハプログループN9aと、2772T、4386Cを有するハプログループM7aと、4071T、4048A、6680C、12811Cを有するハプログループM7bと、709A、4833G、5108C、8200C、15497Aを有するハプログループG1と、709A、4833G、5108C、13563Gを有するハプログループG2と、4883T、5178A、3010Aを有するハプログループD4と、4883T、5178A、10397Gを有するハプログループD5とを検出することが好ましい。
また、これら10個のハプログループに加えて、4071T、4850Tを有するハプログループM7cを合わせた少なくとも11個のハプログループ、或いは、更に11016A、14893Gを有するハプログループN9bを合わせた少なくとも12個のハプログループを検出することもできる。
第一の発明においては、ヒトミトコンドリアDNAを含む試料から前記10個或いは12個のハプログループが有するmtSNPを含む塩基配列をDNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するPCR工程、このPCR工程によって増幅されたDNAフラグメントと前記mtSNPのいずれか一つを認識する核酸プローブとをハイブリッドさせるハイブリッド工程、前記核酸プローブによって認識されたmtSNPを検出する検出工程とを含むことが好ましい。
DNAプライマーについては、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号11〜配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号25〜配列番号28、配列番号33〜配列番号44、配列番号49〜配列番号52に記載のものを用いることにより、17種類のDNAフラグメントを合成することが好ましい。
また、核酸プローブをDNAフラグメントとハイブリッドさせる際には、複数の核酸プローブを用いる場合に同じ温度設定で実施できることが操作上の簡易性の観点から見て好ましい。そのため、全ての核酸プローブのTmを適当な範囲に収まるように設計することが好ましい。例えば、ハイブリッド工程における温度から20℃(好ましくは15℃)程度までの範囲に収めることが好ましい。例えば、ハイブリッド工程が52℃で行われる場合には、Tmを50℃(好ましくは52℃)〜70℃(好ましくは67℃)の範囲に設定することが好ましい。
1.10個のハプログループへの分類
本発明者らが作製したヒトミトコンドリアゲノム多型データベース (http://www.giib.or.jp/mtsnp/index_e.shtml) 及び日本人の系統樹(非特許文献13)を使用して、ミトコンドリアハプログループの分類に有用である166個の多型部位を選択した。更に、本発明者らの鋭意検討に基づき、日本人集団において発見された10個の主要なハプログループ(F,B,A,N9b,M7a,M7b,G1,G2,D4,及びD5)を定義するmtSNPsを選択した。これらのmtSNPsを表1に示した。
2.11個または12個のハプログループへの分類
更に、上記10個に加えて、M7cを加えた11個のハプログループを定義するmtSNPs、及び更にN9bを加えた12個のハプログループを定義するmtSNPsを選択した。これらのmtSNPsを表2及び表3に示した。
<多型の遺伝子タイピング>
被験者である日本人から50mmol/L EDTA(ジナトリウム塩)を含む試験管に、7mLの静脈血を採取し、市販のキット(Genomix, Talent, Trieste, Italy)を用いてDNA(ヒトmtDNAを含む試料)を分離した。
DNAをPCR法によって増幅するPCR工程を実施した。このとき使用したDNAプライマーを表4及び表5に示した。表4中のDNA配列は、配列番号1〜配列番号28として、配列表に示した。また、表5中のDNA配列は、配列番号29〜配列番号56として、配列表に示した。これらの配列番号のうち、10個〜12個のハプログループを同定するために必要なDNAフラグメントを合成するためのDNAプライマーは、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号11〜配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号25〜配列番号28、配列番号33〜配列番号44、配列番号49〜配列番号52に記載の34個のものである。これら34個のDNAプライマーを利用することにより、17種類のDNAフラグメントが合成される。本実施形態においては、更に11種類の別のDNAフラグメントを合成するためのDNAプライマーの塩基配列が用いられた。
ミトコンドリアの多型は懸濁液アレイ技術(Luminex 100; Luminex, Austin, TX)を用い、シーケンス特異性オリゴヌクレオチド試験法(G&Gサイエンス株式会社、日本)で決定した。詳細な方法については、既報のもの(非特許文献20)を基本として、適宜に増幅条件を変えて行った。なお、条件については、後に詳述する。
本実施形態においては、186種類の核酸プローブを用いるために、全体を100種類のセット(プローブセットA)と86種類のセット(プローブセットB)とに分けて、タイピングを行った。表6〜表8にはプローブセットAの詳細を、表9〜表11にはプローブセットBの詳細を示した。
方法の基本的な考え方は、非特許文献20に記載の通りである。以下には、この方法をmtSNPに応用した本実施形態の方法について説明する。
図1には、Luminex100フローサイトメトリーで検出するマイクロビーズ(本発明における固相に該当する)の微細構造と特徴を示した。マイクロビーズ(図中の符号(A))は、直径が約5.5μm程度であり、ポリスチレン製である。ビーズ表面にはカルボキシル基が存在している。このカルボキシル基と、アミノ修飾された核酸プローブとを結合することにより、ビーズ表面に核酸プローブが結合されている(本発明における核酸プローブの固相化に該当する)。各ビーズには、一種類の核酸プローブが結合されている。このマイクロビーズには、赤色色素と赤外色素との二種類の色素が割合を変化させつつ配されている(Multi-Analyte Microsphere Carboxylated: Luminex, オースチン社(Austin)、米国テキサス州)。こうして、図中の符号(B)に示すように、最大で100種類のものを混合した状態で、各ビーズの同定が行えるようになっている。
本実施例においては、表6〜表8に記載の100種類のプローブを第1セット(セットA)とし、表9〜表11に記載の86種類のプローブを第2セット(セットB)として、2セットを用いることで、合計186種類の多型を検出可能な検出系とした。これら186種類のプローブを用いることにより、ヒトミトコンドリアDNAを少なくとも12種類のハプログループ(F,B,A,N9a,N9b,M7a,M7b,M7c,G1,G2,D4及びD5)に分類することができる。
<PCR工程(Amplification)>
目的とするDNAフラグメントを増幅するPCR反応には、5’末端をビオチン化したプライマーを用いた。mtDNAフラグメントを増幅するために28−plex PCRを行った。2mM塩化マグネシウムを含む1xPCR溶液(30mM KCl、20mM Tris−HCl、pH8.3)、2.5%DMSO、0.2mM dNTPs、0.1μMずつのプライマーセットを混合し、Taq DNAポリメラーゼ(0.625U)と1ngのゲノムDNAを加えて25μLとした。PCR反応は、95℃で10分間処理の後、94℃で20秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を1サイクルとし、これを50サイクル繰り返した。最後に、72℃で7分間の伸長反応を行った。機器としてGeneAmp9700サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
増幅したDNAを変性した後、ビーズミックスとハイブリダイズさせた。96ウエルプレートの各ウエルに、5μLの増幅反応後のPCR増幅液、5μLのビーズミックス、及び40μLのハイブリダイズ用緩衝液(1.5M TMAC、62.5mM TB(pH8.0)、0.5mM EDTA、0.125% N−ラウロイルザルコシン)を添加し、全量50μLとした。この混合液を添加した96ウエルプレートについて、95℃で2分間の変性、及び52℃で30分間のハイブリダイゼーションを行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、増幅したDNAを認識するプローブを有するビーズ(1)のみが、DNAと結合する様子が示されている。
次に、上記ビーズミックス−DNAをSA−PEと反応させた。ハイブリッド工程の後、各ウエルに75μLのPBS−Tween(1xPBS(pH7.5)、0.01% Tween−20)を添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去った後、再度100μLのPBS−Tweenを添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去ることで、マイクロビーズを洗浄した。各ウエルに残ったマイクロビーズに、それぞれ70μLのSA−PE溶液(PBS−Tweenにより、市販品(G&Gサイエンス株式会社製)を100倍希釈したもの)を添加し混合した後、52℃で15分間の反応を行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、ビーズ(1)のプローブにのみビオチン化DNAが結合しているので、そのビオチンにSA−PEが結合する様子が示されている。
次に、反応後のサンプルはLuminex100を用いて、ビーズ種類の同定と、そのビーズにPEが結合しているか否かを検出した。検出には、2種類のレーザを使用して行った。ビーズの種類については、635nmレーザにより同定し、PE蛍光については、532nmレーザを用いて定量した。オリゴビーズに結合したDNAは1測定あたり各々のビーズを最低50個ずつ測定し、定量されたPEの蛍光強度の中央値(MFI)を使用した。
図2中には、各ビーズ(1)〜(3)が同定され、かつビーズ(1)にのみPEが測定されたことから、ビーズ(1)に結合させたプローブが認識するDNAが増幅された様子が示されている。
研究対象は、互いに血縁関係の無い40歳以上の日本人1337名(男性883名、女性454名)であった。対象者は、2002年10月から2005年3月の間に、3つの研究参加病院(岐阜県立岐阜病院、多治見病院及び下呂温泉病院)の1つを外来した受診者、或いは入院者である。診断は、成人治療パネルIII(非特許文献16)により提唱されたメタボリックシンドローム(MS)に関する修正定義に基づいて行った。この修正版は、スコットランド西部冠動脈疾患予防研究(非特許文献17)及び女性の健康に関する研究(非特許文献18)においても使用されたものである。但し、それらの研究では、ウエストサイズの代わりに体重指標(BMI)が採用されている。日本人及び他のアジア人集団においては、肥満指標のためのBMI基準を改訂する必要性が最近認識されている(非特許文献19)。このため、我々はこの改定基準を基にして、BMI値が25kg/m2以上の者を肥満者とした。
上記対象者について、10個のハプログループへの分類を行うため、PCR−SSOP−Luminex法を実施した。
量的な臨床データは、MS罹患群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定を用いて比較した。質的なデータは、カイ二乗検定によって比較した。
MSと関連する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:0=女性、1=男性)、喫煙状態(smoker:0=非喫煙、1=喫煙)、及び各mtSNPの遺伝子型を独立変数とし、MSを従属変数とした。P値、オッズ比(OR)、及び95%信頼区間(CI)を計算した。特に説明しない限り、0.05未満のP値は統計上有意であると考えた。
1337名の被験者に関する基礎的データを表12に示した。
年齢、性別、喫煙状態を補正して多項ロジスティック回帰分析を行った結果、P値が0.05未満で、ハプログループN9aがMSに対する抵抗性に関連した。また、ハプログループN9a,G1,D5の3グループの女性は、MSに対する抵抗性に関連することが明らかとなった(表13)。
我々は、ハプログループの多重比較について、0.005未満のP値が得られた場合に、その関連が有意であると考えた。この基準に基づくと、ハプログループN9aは、女性ではMSに対する抵抗性に有意に関係していた。ステップワイズ前向き選択法の結果、女性については、ハプログループN9aがMSに対する保護因子であることが明らかになった(表14)。しかしながら、男性については、これらのハプログループのうちのいずれもMSとの関連は示されなかった。
表15には、mtSNPsのうち、MSに対する保護因子或いは危険因子として関連するものを示した。
年齢、性別及び喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析によれば、ハプログループD4aを代表するmtSNPである15314G>A(Cytb:A190T)が、全対象者でMSへの抵抗性に関連することが明らかとなった(P<0.05)。
更に、ハプログループN9aを代表する3個のmtSNPsである5231G>A、12372G>A、及び12358A>G、ハプログループN9a2a1を代表するmtSNPである15067T>C、及びサブハプログループG5b1bを代表するmtSNPである3759A>Gは、MSに対する抵抗性と関連があった。これと対照的に、3個のmtSNPs、すなわちサブハプログループF1を代表する12406G>A、サブハプログループD4b2bを代表する9296C>T、及びサブハプログループB4cを代表する15346G>Aは、MSへの感受性に関連があった(P<0.05)。
ハプログループG1を代表する2個のmtSNPsである8200T>C及び15497G>A、サブハプログループG1aを代表するmtSNPである15860A>G、サブハプログループG5b1bを代表するmtSNPである3759A>Gは、MSに対する抵抗と関係があった。
男性の場合は、ハプログループN9b1を代表するmtSNPである5147G>AがMSへの感受性に関係があった(P<0.05)。
我々は166個の異なるmtSNPsに対して修正ボンフェローニ法を適用したが、これらのP値のうちのいずれも有意レベルが0.0003以下を示さなかった。
4個のmtSNPs、すなわち5231G>A、8200T>C、3759A>G、及び15314G>AのMSへの保護作用の全体としての貢献度は、0.0552であった。これは、女性の場合には、これらのmtSNPsがMSへの感受性に影響する重要な遺伝因子であることを示唆している。
我々は1337名に基づく大規模な関連解析を行い、10種類の主要なミトコンドリアハプログループのそれぞれとMSとの間の関係を調査した。これらのハプログループのうち、N9a、G1、及びD5の3つは、女性の場合には、MSに対する抵抗性と有意に関係していた。ハプログループN9aに特有なmtSNPsの大部分は、5231G>A及び12372G>Aを含む同義変異であるが、これらは本研究の遺伝子タイピングを行うのに使用した。
このハプログループにおいて、機能的な多型としては、150C>T及び338C>Tが候補として挙げられる。これらはミトコンドリアゲノムの非コード領域にある。150C>T置換はイタリアの百寿者で最初に報告された(非特許文献21)。また、以前に我々は、この置換がフィンランド人と日本人共に健康な長寿と関連していることを報告した(非特許文献22)。このように、150C>Tは、女性ではMSに対する抵抗性を付与する可能性がある。
ND5はmtDNAにコードされたサブユニットの7個の内の一つであるが、これらのサブユニットは呼吸鎖複合体I(NADH:ユビキノン酸化還元酵素、EC1.6.5.3)の約41個のポリペプチドに含まれる。複合体Iは、NADHから電子を受け取り、それをユビキノン(補酵素Q10)に転送する。その際に得られたエネルギーを用いて、ミトコンドリア内膜を通してプロトンを輸送する。ND5は、おそらく疎水性蛋白質断片の構成成分である。このサブユニットは、複合体Iの機能には欠かすことができない。ND5遺伝子における各種のミスセンス変異(例えば、12706T>C(F24L)、12770A>G(E145G)、13045A>C(M237L)、13084A>T(S250C)、13513G>A(D393N)、13042G>A(A236T)、13730A(E465G))が、レーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON)(非特許文献23)、リー症候群(非特許文献24)、或いはミトコンドリア性ミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス及び脳卒中様症状を呈する症候群(MELAS)(非特許文献25)の患者において報告されている。従って、12358A>Gによって惹き起こされたThr8Ala置換がND5サブユニット及び複合体Iの機能に影響を及ぼす可能性がある。12358A>Gがミトコンドリアの機能に対して与える影響については、このハプログループを持つmtDNAを導入した細胞を用いた実験により調査されるべきである。
ハプログループG1に特有のmtSNPsのなかでは、15323G>A(Cytb:A193T)または15497G>A(Cytb:G251S)のいずれかは、機能的多型のようである。
国立長寿医療研究センターの加齢に関する縦断的研究(NILS−LSA)の一部としての我々の以前の調査によれば、15497G>A(Cytb:G251S)が、日本人集団の中年及び年配者層における肥満と関係していることが明らかとなった(非特許文献26)。
女性の場合、ハプログループN9a、G1及びD5は、MSに対する抵抗性と関連していた。一方、男性の場合には、このような関係は見出されなかった。遺伝的変異が肥満に関係する度合いが、男性に比して女性ではより高いとの考えを支持する他の証拠がある(非特許文献28、29)。クマジーらは、性相互作用により遺伝子型を導入し、脂肪重量をメンデル混合モデルにて分析したところ、男性では脂肪重量の分散値全体の37%を主な遺伝子が担い、一方女性では43%が担っていた(非特許文献)。しかしながら、我々の知る限りでは、mtDNA多型とMSとの関係における性別の影響に関してほとんど報告がない。以前の関連解析には、核遺伝子多型とMSとの関係について調査がされている。
このように、本実施形態によれば、日本人のmtDNAを10個のハプログループに分類することにより、ハプログループとMSとの関係が示された。
研究対象は、互いに血縁関係の無い40歳以上の日本人2906名(男性1938名、女性968名)であった。対象者は、2002年10月から2005年3月の間に、3つの研究参加病院(岐阜県立岐阜病院、多治見病院および下呂温泉病院)の1つを外来した受診者、或いは入院患者であった。2型糖尿病患者は、絶食時血漿グルコースレベルが6.99mmol/L(126mg/dL)以上、またはヘモグロビンAlc(Glycosylated hemoglobin)濃度が6.5%以上を示す者、或いは糖尿病に対する薬物治療下にあった。2型糖尿病は、世界保健機構により承認された基準に従って定義した。これらの基準に基づいて、研究対象集団中の1289名の被験者(男性890名、女性399名)が、2型糖尿病患者であると診断された。残りの1617名(男性1048名、女性569名)は対照群とした。対照群は、研究参加病院に例年の健康チェックのために外来受診した者である。対照群は、絶食時血漿グルコースレベルが6.11mmol/L(110mg/dL)未満であり、ヘモグロビンAlcが5.6%未満を示し、かつ2型糖尿病の既往歴ならびに2型糖尿病に対する薬物治療を受けた経験が無い者であった。
研究プロトコルは、岐阜県国際バイオ研究所のヒト研究に関する倫理委員会により承認され、また各参加者からは個別に書面によるインフォームドコンセントを得た。
上記対象者について、10個のハプログループへの分類を行うため、PCR−SSOP−Luminex法を実施した。
数量的な臨床データは、2型糖尿病患者群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定を用いて比較した。質的なデータは、カイ二乗検定によって比較した。
2型糖尿病と関連する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:0=女性、1=男性)、喫煙状態(smoker:0=非喫煙、1=喫煙)、および各mtSNPの遺伝子型を独立変数とし、2型糖尿病を従属変数とした。P値、オッズ比(OR)、および95%信頼区間(CI)を計算した。特に説明しない限り、0.05未満のP値は統計上有意であると考えた。
2906名の被験者に関する基礎的データを表17に示した。
年齢とHDLコレステロールは、対照群に比して2型糖尿病患者者の方が有意に低かった(P<0.05)。喫煙率、高血圧症、高コレステロール血症は、対照群に比較して2型糖尿病患者群では有意に高かった(P<0.05)。女性/男性の比率は、対照群に比して2型糖尿病患者群の方が有意に低かった(P<0.05)。
年齢、性別、喫煙状態を補正して多項ロジスティック回帰分析を行った結果を表18に示した。
我々は、ハプログループの多重比較について、0.005未満のP値が得られた場合に、その関連が有意であると考えた。この基準に基づくと、ハプログループFは、全ての被験者について2型糖尿病に対する感受性に有意に関与していた(P = 0.0028)。一方、女性について、ハプログループN9aは、2型糖尿病に対する抵抗性に有意に関与していた( P = 0.0042)。
表19には、ステップワイズ前向き選択法による解析結果を示した。
女性の場合には、ハプログループN9aは2型糖尿病に対する防御因子であり(P = 0.0013)、ハプログループFとAは2型糖尿病に対して独立な危険因子である可能性が示された(Fについて、P = 0.0227;Aについて、P = 0.0374)。しかし男性の場合には、これらのハプログループのいずれも、2型糖尿病との関連性を示さなかった。
女性の場合、ハプログループN9a、F、およびAの2型糖尿病への抵抗性に対する総合的な寄与は0.0152(3つのハプログループの寄与率(R2)の和)であった。これはミトコンドリアゲノム多型が、特に女性においては、2型糖尿病への感受性に影響する重要な遺伝要因であることを示唆している。
表20には、mtSNPsのうち、2型糖尿病に対する保護因子或いは危険因子として関連するものを示した。
年齢および喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループFを代表する3個のmtSNPである3970C>T、10310G>Aおよび13928G>C、ハプログループF1を代表するmtSNPである12406G>A(配列番号223の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)、ハプログループF1b1aを代表するmtSNPである13928G>Cが、全ての被験者に関して、糖尿病と関連性を持つことが明らかになった(P = 0.0014 [10310G>A] , P = 0.0025 [12406G>A], P = 0.0028 [3970C>T], P=0.0028 [13928G>C]。これらは149 個のmtSNP の比較に対しての無修正値(ボンフェローニの補正を行っていない値)である)。個々のmtSNPについては、各ハプロタイプに対応していることから、ハプロタイプに適用した有意水準(P<0.005)で判断を行った。
対照的に、サブハプログループN9a2a1を代表するmtSNPである15067T>C(配列番号143の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)、サブハプログループN9aを代表する2個のmtSNPである5231G>Aおよび12372G>A、並びにサブハプログループD4aを代表するmtSNPである15314G>A(配列番号237の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)を保持する被験者は、0.05未満のP値で2型糖尿病に抵抗性を示した。
男性の場合には、年齢および喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループFを代表するmtSNPである10310G>Aを持つと、0.05未満のP値で2型糖尿病に対するリスクが高いことがわかった。
表21に示すように、ステップワイズ前向き選択法によれば、ハプログループFを代表するmtSNPである10310G>Aが全被験者で2型糖尿病に対する危険因子であることが明らかになった(P = 0.0018)。
女性の場合には、ハプログループN9aを代表するmtSNPである5231G>Aが、2型糖尿病に対する防御因子であることが明らかになった(P = 0.0006)。他方、サブハプログループA1a1aを代表するmtSNPである14944C>Tは、2型糖尿病に対する危険因子であった(P = 0.0036)。7個のmtSNPs、すなわち5231G>A、14944C>T、12406G>A、8762T>C、8856G>A、12358A>G、および8383T>Cの糖尿病に対する感受性ならびに/若しくは防御性への総合的な寄与は0.0364(7個のmtSNPsの寄与率(R2)の和)であった。
これらの結果は、上記のmtSNPsが、特に女性の場合には2型糖尿病に対する感受性に影響する重要な遺伝因子であることを示している。
我々は、2906名の被験者に基づく大規模な関連解析を行い、2型糖尿病と10個の主要なミトコンドリアハプログループとの間の関係を調査した。これらのハプログループのうち、ハプログループFは全ての被験者で2型糖尿病のリスクに有意に関係していた。女性の場合には、ハプログループN9aは、2型糖尿病に対する抵抗性に有意に関係していた。一方、ハプログループFおよびハプログループAは、2型糖尿病に対するリスクに関係していた。男性の場合には、ハプログループFは、2型糖尿病のリスクと関係していた。
しかしながら、ミトコンドリアDNA多型と2型糖尿病との関係に対する性別の果たす影響に関しては、今までのところほとんど報告が見られない。本明細書が、初めての報告である。
このように、本実施形態によれば、日本人のmtDNAを10個のハプログループに分類することにより、ハプログループと2型糖尿病との関係が示された。このことにより、2型糖尿病の予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
研究対象は、互いに血縁関係の無い40歳以上の日本人2137名(男性1442名、女性695名)であった。対象者は、2002年10月から2005年3月までに3つの参加病院(岐阜県立岐阜病院、岐阜県立多治見病院、岐阜県立下呂温泉病院)の一つを外来した受診者、或いは入院患者であった。心筋梗塞を伴う1181名(男性920名、女性261名)の対象者は、全てが冠動脈造影と左室造影検査によって、病態が確認された。残りの956名(男性522名、女性434名)は、対照群とした。対照群は、研究参加病院に例年の健康チェックのために外来受診した者であった。対照群は、うっ血性心不全、末梢性動脈閉塞性疾患、動脈硬化性疾患、梗塞性・出血性脳卒中、他の脳疾患、および他の血栓・塞栓・出血性疾患の既往歴が無い者であった。
研究プロトコールは、ヘルシンキ宣言に従っており、三重大学医学部、岐阜県国際バイオ研究所、各参加病院の倫理委員会によって承認され、また各参加者からは個別に書面によるインフォームドコンセントを得た。
上記対象者について、12個のハプログループへの分類を行うため、PCR−SSOP−Luminex法を実施した。
数量的な臨床データは、心筋梗塞患者群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定、またはマン・ホイットニーU検定(the Mann−Whitney U test)を用いて比較した。質的なデータは、カイ二乗検定によって比較した。
心筋梗塞と関連する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:0=女性、1=男性)、BMI、喫煙状態(smoker:0=非喫煙、1=喫煙)、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、高尿酸血症および各mtSNPの遺伝子型を独立変数とし、心筋梗塞を従属変数とした。P値、オッズ比(OR)、および95%信頼区間(CI)を計算した。特に説明しない限り、0.05未満のP値は統計上有意であると考えた。
<結果>
2137名の被験者に関する基礎的データを表22に示した。
年齢、性別、喫煙歴、BMI、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症の有無を補正して多項ロジスティック回帰分析を行った結果を表23に示した。
表24には、ステップワイズ前向き選択法による解析結果を示した。
男性の場合には、高コレステロール血症、糖尿病とともに、ハプログループN9bは、心筋梗塞に対して独立した抵抗性の因子であった(P = 0.0005)。また、女性の場合には、心筋梗塞に関連したハプログループは認められなかった。
表25には、mtSNPsのうち、心筋梗塞に対する保護因子或いは危険因子として関連するものを示した。
年齢、性別、喫煙状態、BMI、2型糖尿病、高血圧、高コレステロール血症を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループN9bを代表する2個のmtSNPである11016G>A(ND4:Ser86Asn)、14893A>G(Cytb:syn)、およびハプログループB4bを代表する4820G>A(ND2:syn)の3個のmtSNPsが、心筋梗塞に抵抗性を示すことがわかった(P < 0.005)。一方、ハプログループMを代表するmtSNPである10398A>G(ND3:Thr114Ala)と8701A>G(ATP6:Thr59Ala)の2個のmtSNPsが、心筋梗塞に感受性が有ることがわかった(P < 0.005)。
表26に示すように、ステップワイズ前向き選択法による解析結果を示した。
2個のmtSNP(11016G>A (N9a)、4820G>A (B4b))は、全対照者にとって心筋梗塞に抵抗性を示した(それぞれP = 0.0009, P = 0.0019)。10個のmtSNP(11016G>A, 4820G>A, 8793T>C, 856A>G,4850C>T, 9833T>C, 8200T>C, 10410T>C, 9296C>T and 15508C>T)の総合的な寄与は0.0197(上記10個の寄与率(R2)の総和)であった。
女性の場合には、ハプログループD4aを代表するmtSNPである10410T>Cは、心筋梗塞に対する危険因子であった(P = 0.0012)。5個のmtSNP(10410T>C, 9296C>T, 10398A>G, 856A>G, 9833T>C)の総合的な寄与は0.0320(上記5個の寄与率(R2)の総和)であった。
我々は、12種類の主要なミトコンドリアハプログループと心筋梗塞との関係に付いて、2137名の日本人を対象とした大規模な関連解析を行った。年齢、性別、喫煙履歴、BMI、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症の有無で補正したところ、全対象者について、ハプログループN9bを持つ者は心筋梗塞の罹患率は有意に低値であった(P=0.0019)。特に、男性の場合には、ハプログループN9bは、心筋梗塞の罹患率は有意に低値であった(P=0.0007)。ハプログループN9bは、4カ所の多型(10607, 11016, 13183, 14893)で特徴付けられる。このハプログループは、東アジア全体で見ると、大変まれであり中国南部と韓国にはほとんど認められない。一方、土着の琉球人とアイヌ人を含めた日本人には最もよく認められる(非特許文献13)。
一般的に、女性が冠動脈疾患や心筋梗塞に罹患する危険性は男性の危険性に比べると10歳程度の遅れがあることから考えると、同世代の男性と女性が心臓疾患に罹患する理由は異なっているのかも知れない。性ホルモンであるエストロゲンは、血管壁や血管運動神経系に対して、NOやPGI2の生産、血管内皮細胞からのエンドセリン1の放出抑制などの好ましい影響を及ぼす(非特許文献48)。このため、エストロゲンなどの性ホルモン量が男女で異なることにより、心筋梗塞に関与するmtSNPが男性と女性とで異なるのかも知れない。
このように、本実施形態によれば、日本人のmtDNAを12個のハプログループに分類することにより、心筋梗塞の遺伝的危険度を予測することができた。このことにより、心筋梗塞の予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
研究対象は、互いに血縁関係の無い40歳以上の日本人1081名(男性641名、女性440名)であった。対象者は、2002年10月から2005年3月までに3つの参加病院(岐阜県立岐阜病院、岐阜県立多治見病院、岐阜県立下呂温泉病院)の一つを外来した受診者、或いは入院患者であった。アテローム血栓性脳梗塞を伴う患者群は、346名(男性234名、女性112名)であった。患者群について虚血性や出血性脳卒中の鑑別は、新たに突然発症した神経学的な巣症状や徴候が24時間以上持続すること、および脳CT或いは脳MRI(または、その両者の検査)により確認された。脳卒中の分類は、Classification of Cerebrovascular Diseases III (非特許文献58)を用いて決定した。心原性塞栓症とラクナ梗塞、一過性脳虚血発作、脳血管奇形、脳腫瘍、外傷性脳血管障害、心臓弁膜症を伴うか心房細動、心臓弁膜症を伴わない心房細動に関する患者は除外した。735名(男性407名、女性328名)の健常者である対照群は、健康診断のために参加病院を受診した者であった。対照群には、虚血性あるいは出血性脳卒中、冠動脈疾患、末梢性動脈閉塞性疾患、他の動脈硬化性疾患、他の血栓、塞栓、出血性疾患の既往歴は無かった。
研究プロトコールは、ヘルシンキ宣言に従っており、三重大学医学部、岐阜県国際バイオ研究所、各参加病院の倫理委員会によって承認され、また各参加者からは個別に書面によるインフォームドコンセントを得た。
上記対象者について、11個のハプログループへの分類を行うため、PCR−SSOP−Luminex法を実施した。
数量的な臨床データは、アテローム血栓性脳梗塞患者群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定、またはマン・ホイットニーU検定(the Mann−Whitney U test)を用いて比較した。質的なデータは、カイ二乗検定によって比較した。
アテローム血栓性脳梗塞と関連する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:0=女性、1=男性)、BMI(body mass index)、喫煙状態(smoker:0=非喫煙、1=喫煙)、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、高尿酸血症および各mtSNPの遺伝子型を独立変数とし、アテローム血栓性脳梗塞を従属変数とした。P値、オッズ比(OR)、および95%信頼区間(CI)を計算した。特に説明しない限り、0.05未満のP値は統計上有意であると考えた。
ハプログループを多重比較するために、ボンフェローニ(Bonferroni)の補正を適用した。我々は、11個のハプログループを調べたので、0.05を11で除して、0.0045とした。こうして、0.0045未満のP値を統計上有意であると見なした。
1081名の被験者に関する基礎的データを表27に示した。
表28には、カイ二乗検定により、ミトコンドリアハプログループの分布を評価した結果を示した。
年齢、性別、喫煙歴、BMI、2型糖尿病、高血圧、高コレステロール血症の有無を補正して多項ロジスティック回帰分析を行った結果を表29に示した。
表30には、mtSNPsのうち、アテローム血栓性脳梗塞に対する保護因子或いは危険因子として関連するものを示した。
女性の場合には、年齢、喫煙歴、BMI、2型糖尿病、高血圧、高コレステロール血症で補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループA1a1aを代表するmtSNPである14944C>Tが、アテローム血栓性脳梗塞に罹りやすいことがわかった(P < 0.05)。男性の場合には、ハプログループD5a2(ハプログループD5のサブハプログループ)を代表するmtSNPである1310C>Tが、アテローム血栓性脳梗塞に罹患しやすいことがわかった(P < 0.05)。
表31には、ステップワイズ前向き選択法による解析結果を示した。
全対照群において、3個のmtSNP(すなわち、ハプログループD5b1bを代表する3759A>G、ハプログループM7cを代表する4850C>T、およびハプログループD4b2aを代表する14287T>C)がアテローム血栓性脳梗塞に抵抗性があることがわかった(P < 0.05)。また、2個のmtSNP(すなわち、ハプログループD5a2を代表する1310C>T、およびハプログループA1a1aを代表する14944C>T)が、アテローム血栓性脳梗塞に感受性があることがわかった(P < 0.05)。これら5個のmtSNPの総合的な寄与(各mtSNPの寄与率(R2)の総和)は、0.121であった。
女性の場合には、ハプログループN9aを代表するmtSNPである5231G>Aは、アテローム血栓性脳梗塞に対して抵抗性が認められた(P = 0.0214)。男性の場合には、ハプログループD5a2を代表するmtSNPである1310C>Tは、アテローム血栓性脳梗塞に対する感受性が認められた(P = 0.0235)。
我々は1081名の日本人に基づく大規模な関連解析を行い、11個の主要なミトコンドリアハプログループのそれぞれとアテローム血栓性脳梗塞との間の関係を調査した。カイ二乗検定によって、患者群と対照群との間の定性的な比較を行ったところ、ミトコンドリアハプログループN9aとM7cについては、有意に(P<0.05)疾患の罹患率が低いことがわかった。また、女性の場合には、ハプログループN9aは、アテローム血栓性脳梗塞の罹患率が低くなる傾向が認められた(P = 0.0073)。
多項ロジスティック回帰分析法によれば、女性の場合には、ハプログループAは、アテローム血栓性脳梗塞に有意に(P<0.05)関係していた。ハプログループN9a及びM7cと、アテローム血栓性脳梗塞との関係は、2型糖尿病についての補正を行うと、消失するようにも見える。ハプログループM7cについての理由は明確ではないものの、前記応用例に示すように、ハプログループN9aは、メタボリック症候群と2型糖尿病に対して抵抗性があることがわかった。
これは、ミトコンドリアハプログループとアテローム血栓性脳梗塞との関係を調べた最初の報告である。
このように本実施形態によれば、mtDNAのハプログループを検出することにより、アテローム血栓性脳梗塞の遺伝的危険度を予測することができる。このことにより、アテローム血栓性脳梗塞の予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
Claims (4)
- (a)ヒトミトコンドリアDNAにおいて、配列番号57〜配列番号242に記載の塩基配列を備えた186個の核酸プローブが認識する多型部位のうち、次のmtSNPによってグループ分けされる少なくとも10個のハプログループ、すなわち3970T、13928A、10310Aを有するハプログループFと、8272の9bp欠失を有するハプログループBと、663G、8794Tを有するハプログループAと、5231A、12358G、12372Aを有するハプログループN9aと、2772T、4386Cを有するハプログループM7aと、4071T、4048A、6680C、12811Cを有するハプログループM7bと、709A、4833G、5108C、8200C、15497Aを有するハプログループG1と、709A、4833G、5108C、13563Gを有するハプログループG2と、4883T、5178A、3010Aを有するハプログループD4と、4883T、5178A、10397Gを有するハプログループD5とを検出するヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法において、
ハプログループFを検出するために、3970T、13928A及び10310Aを限定して指標とし、ハプログループBを検出するために、8272の9bp欠失を限定して指標とし、ハプログループAを検出するために、663G及び8794Tを限定して指標とし、ハプログループN9aを検出するために、5231A、12358G及び12372Aを限定して指標とし、ハプログループM7aを検出するために、2772T及び4386Cを限定して指標とし、ハプログループM7bを検出するために、4071T、4048A、6680C及び12811Cを限定して指標とし、ハプログループG1を検出するために、709A、4833G、5108C、8200C及び15497Aを限定して指標とし、ハプログループG2を検出するために、709A、4833G、5108C及び13563Gを限定して指標とし、ハプログループD4を検出するために、4883T、5178A及び3010Aを限定して指標とし、ハプログループD5を検出するために、4883T、5178A及び10397Gを限定して指標とし、
(b)ヒトミトコンドリアDNAを含む試料から前記10個のハプログループが有するmtSNPを含む塩基配列をDNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するPCR工程、このPCR工程によって増幅されたDNAフラグメントと前記mtSNPのいずれか一つを認識する核酸プローブとをハイブリッドさせるハイブリッド工程、前記核酸プローブによって認識されたmtSNPを検出する検出工程とを含み、
(c)前記核酸プローブは、全長が15塩基〜40塩基であり、かつ検出すべき前記mtSNPの位置が5’末端または3’末端から5塩基以上内側に位置し、
(d)前記DNAフラグメントの全長は、190塩基対〜520塩基対であり、
(e)前記DNAプライマーは、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号11〜配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号25〜配列番号28、配列番号33〜配列番号44、配列番号49〜配列番号52に記載のものであり、前記PCR工程においては、少なくとも17種類のDNAフラグメントを合成し、前記検出工程においては、配列番号66、配列番号74、配列番号75、配列番号78、配列番号83、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号99、配列番号107、配列番号115、配列番号116、配列番号128、配列番号133、配列番号134、配列番号147、配列番号157、配列番号158、配列番号163、配列番号174、配列番号181、配列番号188、配列番号193、配列番号221、配列番号222に記載の核酸プローブを用いると共に、
(f)前記DNAプライマーはビオチン化されており、前記核酸プローブは固相化されていると共に、前記検出工程においては、ストレプトアビジンに結合した蛍光色素を用いるPCR−SSOP−Luminex法であることを特徴とするヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。 - (g)前記10個のハプログループに加えて、11016A、14893Gを有するハプログループN9bと、4071T、4850Tを有するハプログループM7cを合わせた少なくとも12個のハプログループを検出するヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法であって、
ハプログループN9bを検出するために、11016A及び14893Gを限定して指標とし、ハプログループM7cを検出するために、4071T及び4850Tを限定して指標とし、
(h)前記検出工程においては、更に配列番号138、配列番号180、配列番号213に記載の核酸プローブを用いることを特徴とする請求項1に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。 - ヒトミトコンドリアDNAにおいて、配列番号57〜配列番号242に記載の塩基配列を備えた186個の核酸プローブが認識する多型部位のうち、次のmtSNPによってグループ分けされる少なくとも10個のハプログループ、すなわち3970T、13928A、10310Aを有するハプログループFと、8272の9bp欠失を有するハプログループBと、663G、8794Tを有するハプログループAと、5231A、12358G、12372Aを有するハプログループN9aと、2772T、4386Cを有するハプログループM7aと、4071T、4048A、6680C、12811Cを有するハプログループM7bと、709A、4833G、5108C、8200C、15497Aを有するハプログループG1と、709A、4833G、5108C、13563Gを有するハプログループG2と、4883T、5178A、3010Aを有するハプログループD4と、4883T、5178A、10397Gを有するハプログループD5とを検出するための核酸プローブを備えたヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キットであって、
ハプログループFを検出するために、3970T、13928A及び10310Aを限定して指標とし、ハプログループBを検出するために、8272の9bp欠失を限定して指標とし、ハプログループAを検出するために、663G及び8794Tを限定して指標とし、ハプログループN9aを検出するために、5231A、12358G及び12372Aを限定して指標とし、ハプログループM7aを検出するために、2772T及び4386Cを限定して指標とし、ハプログループM7bを検出するために、4071T、4048A、6680C及び12811Cを限定して指標とし、ハプログループG1を検出するために、709A、4833G、5108C、8200C及び15497Aを限定して指標とし、ハプログループG2を検出するために、709A、4833G、5108C及び13563Gを限定して指標とし、ハプログループD4を検出するために、4883T、5178A及び3010Aを限定して指標とし、ハプログループD5を検出するために、4883T、5178A及び10397Gを限定して指標とし、
前記ハプログループが有するmtSNPを含む塩基配列をPCR法によって増幅可能なビオチン化されたDNAプライマーセットと、前記ハプログループが有するmtSNPを検出するための核酸プローブが固相化された担体と、ストレプトアビジンに結合した蛍光色素とを備え、
前記DNAプライマーセットは、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号11〜配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号25〜配列番号28、配列番号33〜配列番号44、配列番号49〜配列番号52に記載のものであり、前記核酸プローブは、配列番号66、配列番号74、配列番号75、配列番号78、配列番号83、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号99、配列番号107、配列番号115、配列番号116、配列番号128、配列番号133、配列番号134、配列番号147、配列番号157、配列番号158、配列番号163、配列番号174、配列番号181、配列番号188、配列番号193、配列番号221、配列番号222に記載のものであることを特徴とするヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キット。 - 前記10個のハプログループに加えて、11016A、14893Gを有するハプログループN9bと、4071T、4850Tを有するハプログループM7cを合わせた少なくとも12個のハプログループを検出するヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キットであって、
ハプログループN9bを検出するために、11016A及び14893Gを限定して指標とし、ハプログループM7cを検出するために、4071T及び4850Tを限定して指標とし、
前記核酸プローブとして、更に配列番号138、配列番号180、配列番号213に記載の核酸プローブを備えることを特徴とする請求項3に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006165296A JP5276257B2 (ja) | 2006-06-14 | 2006-06-14 | ヒトミトコンドリアdnaに関する遺伝子検出法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006165296A JP5276257B2 (ja) | 2006-06-14 | 2006-06-14 | ヒトミトコンドリアdnaに関する遺伝子検出法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007330151A JP2007330151A (ja) | 2007-12-27 |
JP5276257B2 true JP5276257B2 (ja) | 2013-08-28 |
Family
ID=38930219
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006165296A Expired - Fee Related JP5276257B2 (ja) | 2006-06-14 | 2006-06-14 | ヒトミトコンドリアdnaに関する遺伝子検出法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5276257B2 (ja) |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003018775A2 (en) * | 2001-08-30 | 2003-03-06 | Emory University | Human mitochondrial dna polymorphisms, haplogroups, associations with physiological conditions, and genotyping arrays |
JP2003274947A (ja) * | 2002-03-22 | 2003-09-30 | Masatsugu Tanaka | ヒトミトコンドリアdnaの多型を用いた個人識別方法 |
-
2006
- 2006-06-14 JP JP2006165296A patent/JP5276257B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2007330151A (ja) | 2007-12-27 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Kulkarni et al. | Novel epigenetic determinants of type 2 diabetes in Mexican-American families | |
JP6628226B2 (ja) | 痛風発症素因の評価方法 | |
Kitsios et al. | Genetic variation associated with ischemic heart failure: a HuGE review and meta-analysis | |
JP2012511895A (ja) | ヒト認知の原因となる遺伝子変異体及び診断標的及び治療標的としてのそれらを使用する方法 | |
JPWO2015108180A6 (ja) | 痛風発症関連分子、並びに、尿酸関連疾患素因及び炎症関連疾患素因の評価方法及び評価キット、検査体及び薬 | |
KR101598262B1 (ko) | 고혈압 감수성 유전자군의 동정 | |
JP2004024036A (ja) | 心筋梗塞のリスク診断方法 | |
JP6095889B2 (ja) | 染色体21q、6q、および15qの遺伝子変異およびこれらを使用して1型糖尿病を診断および治療する方法 | |
Oh et al. | Association between kinase insert domain-containing receptor gene polymorphism and haplotypes and ischemic stroke | |
JP5427352B2 (ja) | ヒト体脂肪量と関連する遺伝子多型に基づく肥満発症リスクの判定方法 | |
Sun et al. | Novel SNPs of WNK1 and AKR1C3 are associated with preeclampsia | |
JP5276257B2 (ja) | ヒトミトコンドリアdnaに関する遺伝子検出法 | |
Ogimoto et al. | Impact of synergistic polymorphisms in adrenergic receptor-related genes and cardiovascular events in patients with dilated cardiomyopathy | |
JP5033392B2 (ja) | 2型糖尿病の遺伝的リスク検出法 | |
JP5360853B2 (ja) | メタボリック症候群に関する遺伝子検出方法 | |
JP5360854B2 (ja) | 2型糖尿病に関する遺伝子検出方法 | |
JP5360855B2 (ja) | 心筋梗塞に関する遺伝子検出方法 | |
JP2008000096A (ja) | 尿路結石症の発症リスク判定方法、及び発症リスク判定用キット | |
JP4956565B2 (ja) | Edg5遺伝子多形v286aと二型糖尿病および静脈血栓症/肺塞栓症との関連性、並びに、その利用 | |
JP5396586B2 (ja) | アテローム血栓性脳梗塞に関する遺伝子検出方法 | |
WO2006078404A2 (en) | Notch1 variants associated with cardiovascular disease | |
NL2014136B1 (en) | Annexin A2 SNP and von Willebrand Disease. | |
KR101304535B1 (ko) | Klotho 유전자의 단일염기다형을 이용한 심혈관계 질환 예측 방법 | |
JP4998874B2 (ja) | 炎症性疾患の判定方法 | |
Rashad et al. | Association of apolipoprotein A1 gene polymorphism and coronary heart diseases in patients with type 2 diabetes mellitus |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20090601 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20111025 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20111226 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20120104 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120126 |
|
A072 | Dismissal of procedure [no reply to invitation to correct request for examination] |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A072 Effective date: 20120626 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20120918 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20121214 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20121218 |
|
A911 | Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20130314 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20130514 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20130517 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Ref document number: 5276257 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R360 | Written notification for declining of transfer of rights |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360 |
|
R360 | Written notification for declining of transfer of rights |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360 |
|
R371 | Transfer withdrawn |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |