JP5360853B2 - メタボリック症候群に関する遺伝子検出方法 - Google Patents

メタボリック症候群に関する遺伝子検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、メタボリック症候群に関する遺伝子検出方法に関し、特にヒトミトコンドリアDNAのハプログループを分類することによりメタボリック症候群に関する遺伝子検出を行うものに関する。
メタボリックシンドローム(以下、「MS」と省略する)は、複雑な多因子性の疾患である。この疾患では、様々な遺伝及び環境の影響の相互作用が重要な役割を果たしている。MSは、内臓性肥満、高脂血症、高血圧症及び高血糖を特徴とし、病理生理学的にはインスリン抵抗性に関係している。これらのMSの特徴が維持されると、やがてアテローム性動脈硬化症及び2型糖尿病が発症し、最終的には心不全や致死性の心臓血管或いは脳血管障害を惹き起こす。ミトコンドリアの機能障害は、骨格筋におけるインスリン抵抗性並びに膵臓のベータ細胞からのインスリン分泌障害の両者に関連していると考えられている(非特許文献1。なお、本案件については、文献は末尾にまとめて記載する。)。
ミトコンドリアゲノムにおける母系遺伝的な変異は、過去20万年の間にホモサピエンスがアフリカからアジアへそしてヨーロッパへと拡散する間に、新らたな突然変異がそれに順次追加されて来た結果である(非特許文献2)。ミトコンドリアゲノムの突然変異の発生率は、核ゲノムの突然変異の発生率よりも約10倍高いので、ホモサピエンスの比較的短い歴史の間に蓄積されて来た古代のミトコンドリア多型は、現代人の代謝特性の解明に貢献する可能性がある(非特許文献3)。世界の様々な地域で発見されたミトコンドリアのハプログループは、人類が寒冷な気候とその下での栄養条件に適応的に選択されて来た結果であると推測することができる(非特許文献3〜非特許文献5)。
ミトコンドリアハプログループ間で機能的な差が存在する事を示す証拠が、精子運動性(非特許文献6)、敗血症後の生存率(非特許文献7)、及びパーキンソン病に対する感受性(非特許文献8)の研究によって与えられている。初期の研究では、我々は、肥満(非特許文献12)、るい痩(非特許文献13)、2型糖尿病(非特許文献12)、或いはアテローム性動脈硬化症といったエネルギー代謝に関与するものと同じく、例えば寿命(非特許文献9)、パーキンソン病(非特許文献10、11)及びアルツハイマー病といった年齢関連疾患に関与するミトコンドリア単一ヌクレオチド多型(mtSNPs)を同定することを目標としていた。
この目的のために、我々は7つの異なる集団に属する672名分の完全ミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定した。各集団はおのおの96名から構成され、百寿者、パーキンソン病罹患者、アルツハイマー病罹患者、肥満者、非肥満者、重度の血管性病変を持つ2型糖尿病、血管性病変を持たない2型糖尿病罹患者の7群であった。
これらの調査結果から、我々は、ヒトのミトコンドリアゲノム多型データベース (http://www.giib.or.jp/mtsnp/index_e.shtml) を構築した。これらのmtSNPデータに基づいて、我々は、蛍光ビーズ法を用いて包括的なmtSNP分析システムを開発した。
Wengらは、中国人成人においてはミトコンドリアDNAの非コード領域における変異の一つである16189位の変異(T>Cトランジション)がメタボリックシンドロームに関連すると報告している(非特許文献15)。
しかし、ヨーロッパ人に関する研究のメタアナリシスの結果によれば、同様に非コード領域における変異の一つである16184−16193のpoly(C)tractの遺伝変異は、2型糖尿病発症においては主要な役割を有していないことが示されている(非特許文献16)。従って、非コード領域のみにおける多型分析は、個々人の代謝特性とミトコンドリアゲノムにおける機能的多型との間の相互関係については、直接的な証拠とはならないと考えられる。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、mtDNAのハプログループに基づき、MSの遺伝的危険度を予測する遺伝子検出方法等を提供すること、及びそれによってMSの発症を予防することにある。
本発明者らは、長年に亘ってヒトミトコンドリアゲノムに関する研究を行っている者である。ヒトミトコンドリアDNAは、強固に連鎖した複数のmtSNPを有するハプログループに分類することができる。図3〜図5には、mtSNPとハプログループ(及びサブハプログループ)との関係を示した。このハプログループの分布は、人種間において、かなり大きな隔たりがある。個々の日本人は、主要な10個のハプログループによって、そのほとんど(約90パーセント以上)を分類することができる。各ハプログループは、数個〜20個程度のmtSNPによって特徴付けられる。例えば、ハプログループFは、8701、9540、10398、10873、15301、16519、12705、16223、16183、16519、3970、13928、16304、248、6392、10310等の位置にmtSNPを有している(その他のハプログループについても、同様の状況が存在する)。ハプログループ分類をするために、これら全てのmtSNPを調べようとするのは、大変な労力が掛かるため大規模な研究には向きにくい。しかしながら、これらのうちのいずれのmtSNPを選択・検出すれば、適切にハプログループを分類することが可能であるかについては明確には知られていなかったことに加え、選択したmtSNPを迅速かつ的確に検出する方法については開発が十分に進んでいなかった。
そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、新たなmtSNPの検出法を開発し、日本人における主要な10個のハプログループ(F,B,A,N9a,M7a,M7b,G1,G2,D4及びD5)を迅速かつ的確に分類する検出法を開発した。
つまり、各ハプログループが持っている数個〜二十個程度のmtSNPのうち、適当に1個〜5個のmtSNPを選択することにより、表1に記載のmtSNPsを検出すれば、10個のハプログループへの分類が可能であることを見出した。更に、この方法を用いて、本発明者らは、ミトコンドリアゲノムのコード領域における包括的な多型分析を基にして、日本人におけるMSと主要な10個のハプログループ(F,B,A,N9a,M7a,M7b,G1,G2,D5及びD4)との関係を調べるために、1337名を対象とした大規模な関連解析を行った。その結果、特に女性の場合には、ハプログループN9a、G1及びD5において、MSに対する抵抗性を有することを明らかとし、基本的には本発明を完成するに至った。
こうして、上記課題を解決するために、第一の発明に係るメタボリック症候群に関する遺伝子検出法は、ヒトミトコンドリアDNAにおいて、5231A、12358G、12372Aを有するハプログループN9aと、709A、4833G、5108C、8200C、15497Aを有するハプログループG1と、4883T、5178A、10397Gを有するハプログループD5と、15346Aを有するサブハプログループB4cと、13879Cを有するサブハプログループB4c1b1と、15314Aを有するサブハプログループD4aと、9296Tを有するサブハプログループD4b2bと、8383Cを有するサブハプログループD4d2と、12406Aを有するサブハプログループF1と、15860Gを有するサブハプログループG1aと、3759Gを有するサブハプログループG5b1bと、15067Cを有するサブハプログループN9a2a1と、5147Aを有するサブハプログループN9b1とを検出することを特徴とする。
本明細書中において、多型の記載方法は、次の通りである。原則として、各遺伝子について、「多型が生じている位置、データベースに登録されている塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)>多型塩基」の順で記載する。例えば、「5231G>A」は、5231位のGがAとなっている多型を意味している。また、その多型が生じている遺伝子(rRNAまたはmRNA)の位置について、カッコ書きで情報を示すことがある。例えば、「5231G>A(ND2:syn)」とは、上記多型について、ND2遺伝子において、アミノ酸の変異を伴わない多型(synonymous mutation)であることを意味している。但し、挿入あるいは欠失多型については、「多型が生じている位置(欠失または挿入に関する塩基情報)」の順で記載する。例えば、「8272(9-bp deletion in non-coding region)」とは、8272位の非コード領域における9個の塩基の欠失多型であることを意味している。また、順方向(forward strand)に読んでA/G多型としてデータベースに記録されている場合であっても、逆方向(reverse strand)で読むとT/C多型となる。多くの文献について、「T/C」多型として記載されている場合には、データベース中の記録であるA/G多型と異なることがある。
一般にミトコンドリアDNA多型(mtSNPs)或いはミトコンドリアDNAハプログループは、対象となる集団(例えば、日本人・中国人・韓国人を含む東アジア人集団、西洋人集団など)が異なると、その種類・頻度が異なる。このため、日本人以外の集団において、MSとの関係が指摘されているハプログループであっても、必ずしも日本人集団においてそのような関連が認められるわけではない。このため、従来の報告については、集団または疾患が異なる場合には、必ずしも日本人におけるハプログループおよびMSとの関連が裏付けられるわけではない。
本発明において、mtDNAのハプログループを検出する方法としては、従来公知の方法、例えばDNAシークエンス、DNAチップ(或いはDNAマイクロアレイ)、RFLP、PCR−SSOP−Luminex法などの方法を用いることができる。これらの中でも、PCR−SSOP−Luminex法を用いることが好ましい。PCR−SSOP−Luminex法を用いることにより、数百個程度の多型であれば迅速に測定することができる。なお、同方法の詳細については後に詳述する。
本発明によれば、mtDNAのハプログループを検出することにより、MSの遺伝的危険度を予測することができる。この発明を用いることにより、MSに対する予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
<研究対象>
研究対象は、互いに血縁関係の無い40歳以上の日本人1337名(男性883名、女性454名)であった。対象者は、2002年10月から2005年3月の間に、3つの研究参加病院(岐阜県立岐阜病院、多治見病院及び下呂温泉病院)の1つを外来した受診者、或いは入院者である。診断は、成人治療パネルIII(非特許文献17)により提唱されたメタボリックシンドローム(MS)に関する修正定義に基づいて行った。この修正版は、スコットランド西部冠動脈疾患予防研究(非特許文献18)及び女性の健康に関する研究(非特許文献19)においても使用されたものである。但し、それらの研究では、ウエストサイズの代わりに体重指標(BMI)が採用されている。日本人及び他のアジア人集団においては、肥満指標のためのBMI基準を改訂する必要性が最近認識されている(非特許文献20)。このため、我々はこの改定基準を基にして、BMI値が25kg/m以上の者を肥満者とした。
対象者が次の5つの因子の内の3つ以上を持っている場合にMSであると診断した。5つの因子とは、(1)25kg/m以上のBMI、(2)トリグリセリド血清濃度が1.65mmol/L(150mg/dL)以上、(3)HDLコレステロール血清濃度が、男性では1.04mmol/L(40mg/dL)未満、女性では1.30mmol/L(50mg/dL)未満、(4)収縮期血圧が130mmHg以上、かつ拡張期血圧が85mmHg以上、及び(5)絶食時血漿グルコース濃度が6.05mmol/L(110mg/dL)以上の5個である。
これらの基準に基づき、871名(男性584名、女性287名)がMS患者であると診断された。対照群は、総数466名(男性299名、女性167名)である。対照群者は、参加病院に年に一度の健康チェックのために外来受診した者達である。これらの者は、MSの5つの基準のうちのいずれも有していなかった。また、肥満、高脂血症、異常脂血症、高血圧症、或いは糖尿病の既往歴も何ら有していなかった。代謝性もしくは内分泌性疾患の患者、或いは二次性の糖尿病を引き起こす薬剤を服用する者は、本研究の対象からは除外した。研究プロトコルは、岐阜県国際バイオ研究所のヒト研究に関する倫理委員会により承認され、また各参加者からは個別に書面によるインフォームドコンセントを得た。
<ハプログループ分類のためのミトコンドリア多型の選択>
本発明者らが作製したヒトミトコンドリアゲノム多型データベース (http://www.giib.or.jp/mtsnp/index_e.shtml) 及び日本人の系統樹(非特許文献14)を使用して、ミトコンドリアハプログループの分類に有用である166個の多型部位を選択した。更に、本発明者らの鋭意検討に基づき、日本人集団において発見された10個の主要なハプログループ(F,B,A,N9b,M7a,M7b,G1,G2,D4,及びD5)を定義するmtSNPsを選択した。これらのmtSNPsを表1に示した。
表中、左欄より順に、ハプログループ(Haplogroup)、及び各ハプログループを代表する多型(Polymorphism)を示している。また表中、「*」はアミノ酸の変異を伴わない多型(synonymous mutation)であることを示している。
本発明者らは、上記1337名の参加者について、これらハプログループとMSとの間の関係について研究を行った。
<多型の遺伝子タイピング>
各参加者から50mmol/L EDTA(ジナトリウム塩)を含む試験管に、7mLの静脈血を採取し、市販のキット(Genomix, Talent, Trieste, Italy)を用いてDNAを分離した。
DNAをPCRにかけ、特定のDNAを増幅した。その際に使用したプライマーを表2及び表3に示した。ミトコンドリアの多型は懸濁液アレイ技術(Luminex 100; Luminex, Austin, TX)を用い、シーケンス特異性オリゴヌクレオチド試験法(G&Gサイエンス株式会社、日本)で決定した。詳細な方法については、既報のもの(非特許文献21)を基本として、適宜に増幅条件を変えて行った。なお、条件については、後に詳述する。
また、ハプロタイピングのために使用したプライマーは、表4〜表9に示した。今回のタイピングには、最大で100種類の多型の判定が行えるものを用いた。186種類のプローブを用いるために、全体を100種類のセット(プローブセットA)と86種類のセット(プローブセットB)とに分けて、タイピングを行った。表4〜表6にはプローブセットAの詳細を、表7〜表9にはプローブセットBの詳細を示した。
表2及び表3については、左欄よりPCR法によって合成されるフラグメント番号(Fragment)、フォワードプライマー(Forward primer)のmtDNAにおける位置(Position)と塩基配列(Sequence)、リバースプライマー(Reverse primer)のmtDNAにおける位置(Position)と塩基配列、及び合成されるDNAフラグメント長(Product)を示している。
表4〜表6については、第1のセット(プローブセットA)について、mtDNAにおける位置(Position)、目的(Purpose)、プローブの塩基配列(Sequence)を示している。また、目的の欄については、「a」が多型チェック用、「b」が野生型チェック用、「p」がPCR産物チェック用、「m」及び「n」がマクロハプログループチェック用のものであることを示している。表7〜表9については、第2のセット(プローブセットB)について、上記と同じ意味である。
表4〜表9に示したプローブセットは、前述の10個のハプログループを分類するmtSNPに加えて、更に細かいサブハプログループを検出するためのプローブを含んでいる。
PCR−SSOP−Luminex法
方法の基本的な考え方は、非特許文献21に記載の通りである。以下には、この方法をmtSNPに応用した本実施形態の方法について説明する。
図1には、Luminex100フローサイトメトリーで検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示した。マイクロビーズ(図中の符号(A))は、直径が約5.5μm程度であり、ポリスチレン製である。ビーズ表面にはカルボキシル基が存在している。このカルボキシル基と、アミノ修飾された核酸プローブとを結合することにより、ビーズ表面に核酸プローブが結合されている。各ビーズには、一種類の核酸プローブが結合されている。このマイクロビーズには、赤色色素と赤外色素との二種類の色素が割合を変化させつつ配されている(Multi-Analyte Microsphere Carboxylated: Luminex, オースチン社(Austin)、米国テキサス州)。こうして、図中の符号(B)に示すように、最大で100種類のものを混合した状態で、各ビーズの同定が行えるようになっている。
複数種類のプローブを備えたマイクロビーズ(但し、各マイクロビーズには一種類のプローブのみ)を適当な割合で混合し、100ビーズ/μLとなるようにしたビーズミックスを調製した(図中の符号(C))。
本実施例においては、表4〜表6に記載の100種類のプローブを第1セット(セットA)とし、表7〜表9に記載の86種類のプローブを第2セット(セットB)として、2セットを用いることで、合計186種類の多型を検出可能な検出系とした。これら186種類のプローブを用いることにより、ヒトミトコンドリアDNAを少なくとも10種類のハプログループ(F,B,A,N9a,M7a,M7b,G1,G2,D5及びD4)に分類することができる。
図2には、PCR−SSOP−Luminex法の手順を示した。
<増幅反応(Amplification)>
目的とするDNAフラグメントを増幅するPCR反応には、5’末端をビオチン化したプライマーを用いた。mtDNAフラグメントを増幅するために28−plex PCRを行った。2mM塩化マグネシウムを含む1xPCR溶液(30mM KCl、20mM Tris−HCl、pH8.3)、2.5%DMSO、0.2mM dNTPs、0.1μMずつのプライマーセットを混合し、Taq DNAポリメラーゼ(0.625U)と1ngのゲノムDNAを加えて25μLとした。PCR反応は、95℃で10分間処理の後、94℃で20秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を1サイクルとし、これを50サイクル繰り返した。最後に、72℃で7分間の伸長反応を行った。機器としてGeneAmp9700サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
<ハイブリダイゼーション(Hybridization)>
増幅したDNAを変性した後、ビーズミックスとハイブリダイズさせた。96ウエルプレートの各ウエルに、5μLの増幅反応後のPCR増幅液、5μLのビーズミックス、及び40μLのハイブリダイズ用緩衝液(1.5M TMAC、62.5mM TB(pH8.0)、0.5mM EDTA、0.125% N−ラウロイルザルコシン)を添加し、全量50μLとした。この混合液を添加した96ウエルプレートについて、95℃で2分間の変性、及び52℃で30分間のハイブリダイゼーションを行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、増幅したDNAを認識するプローブを有するビーズ(1)のみが、DNAと結合する様子が示されている。
<ストレプトアビジン−フィコエリトリン反応(SA−PE Reaction)>
次に、上記ビーズミックス−DNAをSA−PEと反応させた。ハイブリッド工程の後、各ウエルに75μLのPBS−Tween(1xPBS(pH7.5)、0.01% Tween−20)を添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去った後、再度100μLのPBS−Tweenを添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去ることで、マイクロビーズを洗浄した。各ウエルに残ったマイクロビーズに、それぞれ70μLのSA−PE溶液(PBS−Tweenにより、市販品(G&Gサイエンス株式会社製)を100倍希釈したもの)を添加し混合した後、52℃で15分間の反応を行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、ビーズ(1)のプローブにのみビオチン化DNAが結合しているので、そのビオチンにSA−PEが結合する様子が示されている。
<測定(Measurement)>
次に、反応後のサンプルはLuminex100を用いて、ビーズ種類の同定と、そのビーズにPEが結合しているか否かを判定した。測定は2種類のレーザを使用して行い、ビーズの種類は635nmレーザにより同定し、PE蛍光は532nmレーザを用いて定量した。オリゴビーズに結合したDNAは1測定あたり各々のビーズを最低50個ずつ測定し、定量されたPEの蛍光強度の中央値(MFI)を使用した。
図2中には、各ビーズ(1)〜(3)が同定され、かつビーズ(1)にのみPEが測定されたことから、ビーズ(1)に結合させたプローブが認識するDNAが増幅された様子が示されている。
この方法に拠る遺伝子タイピングの精度を確かめるために、91個のDNAサンプルを材料に使用した。これらのDNAサンプルは、ミトコンドリアゲノムの全塩基配列が直接シーケンスによって既に決定されているものである。各例において、ルミネックスシーケンス特異性オリゴヌクレオチドハイブリッドアッセイシステム(PCR−SSOP−Luminex法)によって決定された遺伝子型は、直接シーケンスによって決定されたものと一致した。
<統計的分析>
量的な臨床データは、MS罹患群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定を用いて比較した。質的なデータは、カイ二乗検定によって比較した。
MSと関連する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:0=女性、1=男性)、喫煙状態(smoker:0=非喫煙、1=喫煙)、及び各mtSNPの遺伝子型を独立変数とし、MSを従属変数とした。P値、オッズ比(OR)、及び95%信頼区間(CI)を計算した。特に説明しない限り、0.05未満のP値は統計上有意であると考えた。
ハプログループを多重比較するために、ボンフェローニ(Bonferroni)の補正を適用した。我々は、10個のハプログループを調べたので、0.05を10で除して、0.005とした。こうして、0.005未満のP値を統計上有意であると見なした。
<結果>
1337名の被験者に関する基礎的データを表10に示した。
表中において、最左欄は上段から順に、年齢(Age)、性別(女性/男性)(Gender)、BMI(Body mass index)、喫煙率(Smoker)、高血圧(Hypertension)、収縮期血圧(Systolic blood pressure)、拡張期血圧(Diastolic blood pressure)、高脂血症(Hypercholesterolemia)、全コレステロール(Total cholesterol)、中性脂肪(Triglycerides)、HDL−コレステロール(HDL-cholesterol)、糖尿病(Diabetes mellitus)、空腹時血糖値(Fasting blood glucose)、ヘモグロビンAlc(Glycosylated hemoglobin)を意味している。また、最上段は左から順に、被験者全員(All subjects)におけるMS群(MS)の値と対照群(Controls)の値とP値(P value)、女性(Women)におけるMS群の値と対照群の値とP値、男性(Men)におけるMS群の値と対照群の値とP値とをそれぞれ示している。また、各値において、「±」が付してあるものは、平均値±SDで示した。喫煙率については、1日あたり10本以上の喫煙数がある者を喫煙者とした。高血圧については、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上、或いは両基準を満たす者、または高血圧薬を服用している者とした。糖尿病については、絶食時血漿グルコース濃度が126mg/dL(6.93mmol/L)以上、またはヘモグロビンAlcが6.5%以上、或いは両基準を満たす者、または抗糖尿病薬を服用している者とした。高脂血症については、全コレステロール値が220mg/dL(5.72mmol/L)以上、または高脂血症剤を服用している者とした。
年齢及び性別(女/男比率)については、いずれもMS罹患群と対照群との間で統計的な差異は認められなかった。BMI、トリグリセリド、絶食時血糖濃度、及びヘモグロビンAlc(HbA1c)比率は、対照群に比べるとMS罹患群においては有意に高かった。HDLコレステロールはMS罹患群では対照群に比べて有意に低かった。喫煙率、高血圧症、高コレステロール血症及び真性糖尿病は、対照群に比較してMS罹患群では有意に高かった。
年齢、性別、喫煙状態を補正して多項ロジスティック回帰分析を行った結果、P値が0.05未満で、ハプログループN9aがMSに対する抵抗性に関連した。また、ハプログループN9a,G1,D5の3グループの女性は、MSに対する抵抗性に関連することが明らかとなった(表11)。
表中において、左欄より順に、変数(Variable)、P値(P value)、オッズ比(OR)、95%信頼区間(95%CI)を示している。また、上段より被験者全員(All subjects)における従来の危険因子(Conventional risk factors)である年齢(Age)・性別(Gender)・喫煙率(Smoking)と遺伝的危険因子(Genetic risk factors)であるハプログループN9aを、女性における従来の危険因子である年齢・喫煙率と遺伝的危険因子であるハプログループN9a、G1、D5を、男性における従来の危険因子である年齢・喫煙率と遺伝的危険因子(該当するハプログループなし)をそれぞれ意味している。
我々は、ハプログループの多重比較について、0.005未満のP値が得られた場合に、その関連が有意であると考えた。この基準に基づくと、ハプログループN9aは、女性ではMSに対する抵抗性に有意に関係していた。ステップワイズ前向き選択法の結果、女性については、ハプログループN9aがMSに対する保護因子であることが明らかになった(表12)。しかしながら、男性については、これらのハプログループのうちのいずれもMSとの関連は示されなかった。
女性の場合は、ステップワイズ前向き選択法の結果、年齢、ハプログループN9a,G1及びD5が、MSに対して独立的な危険因子、或いは保護因子であることが明らかとなった。ハプログループN9a,G1及びD5のMSからの保護作用についての全体としての貢献度は、0.0361であった。これは女性の場合には、ミトコンドリアゲノム多型がMSに対する感受性に影響する重要な遺伝因子であることを示している。
表13には、mtSNPsのうち、MSに対する保護因子或いは危険因子として関連するものを示した。なお、表中「*」は、各ハプログループを示すマーカーとして使われたmtSNPsであることを示している。
表中、「*」は表1において示すように、10個のハプログループを代表させるために用いた多型マーカであることを示している。また、表中の太字で示したP値は、0.005未満であることを示している。
年齢、性別及び喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析によれば、ハプログループD4aを代表するmtSNPである15314G>A(Cytb:A190T)が、全対象者でMSへの抵抗性に関連することが明らかとなった(P<0.05)。
更に、ハプログループN9aを代表する3個のmtSNPsである5231G>A、12372G>A、及び12358A>G、ハプログループN9a2a1を代表するmtSNPである15067T>C、及びサブハプログループG5b1bを代表するmtSNPである3759A>Gは、MSに対する抵抗性と関連があった。これと対照的に、3個のmtSNPs、すなわちサブハプログループF1を代表する12406G>A、サブハプログループD4b2bを代表する9296C>T、及びサブハプログループB4cを代表する15346G>Aは、MSへの感受性に関連があった(P<0.05)。
女性の場合には、年齢及び喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループN9aを代表する3個のmtSNPsである5231G>A、12372G>A、及び12358A>Gが、それぞれ危険率(P)が0.0009、0.0042、及び0.0042で、MSに対する抵抗性と関係することが明らかになった。更に、サブハプログループN9a2a1を代表するmtSNPである15067T>Cも、MSへの抵抗性と関係していた。
ハプログループG1を代表する2個のmtSNPsである8200T>C及び15497G>A、サブハプログループG1aを代表するmtSNPである15860A>G、サブハプログループG5b1bを代表するmtSNPである3759A>Gは、MSに対する抵抗と関係があった。
対照的に、2つのmtSNPs、即ちサブハプログループF1を代表する12406G>A、及びサブハプログループD5を代表する10397A>Gは、MSへの感受性と関係があった(P<0.05)。
男性の場合は、ハプログループN9b1を代表するmtSNPである5147G>AがMSへの感受性に関係があった(P<0.05)。
我々は166個の異なるmtSNPsに対して修正ボンフェローニ法を適用したが、これらのP値のうちのいずれも有意レベルが0.0003以下を示さなかった。
表14に示すように、ステップワイズ前向き選択法によれば、ハプログループN9aを代表するmtSNPである5231G>Aが、女性の場合にはMSに対する保護因子であることが明らかとなった(P=0.0003)。
4個のmtSNPs、すなわち5231G>A、8200T>C、3759A>G、及び15314G>AのMSへの保護作用の全体としての貢献度は、0.0552であった。これは、女性の場合には、これらのmtSNPsがMSへの感受性に影響する重要な遺伝因子であることを示唆している。
<考察>
我々は1337名に基づく大規模な関連解析を行い、10種類の主要なミトコンドリアハプログループのそれぞれとMSとの間の関係を調査した。これらのハプログループのうち、N9a、G1、及びD5の3つは、女性の場合には、MSに対する抵抗性と有意に関係していた。ハプログループN9aに特有なmtSNPsの大部分は、5231G>A及び12372G>Aを含む同義変異であるが、これらは本研究の遺伝子タイピングを行うのに使用した。
このハプログループにおいて、機能的な多型としては、150C>T及び338C>Tが候補として挙げられる。これらはミトコンドリアゲノムの非コード領域にある。150C>T置換はイタリアの百寿者で最初に報告された(非特許文献22)。また、以前に我々は、この置換がフィンランド人と日本人共に健康な長寿と関連していることを報告した(非特許文献23)。このように、150C>Tは、女性ではMSに対する抵抗性を付与する可能性がある。
ハプログループM9aに特異的なmtSNPsのうちで、NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5遺伝子産物(ND5)において、Thr8Ala置換を惹き起こす12358A>Gは、機能的な多型の一つであるかも知れない。
ND5はmtDNAにコードされたサブユニットの7個の内の一つであるが、これらのサブユニットは呼吸鎖複合体I(NADH:ユビキノン酸化還元酵素、EC1.6.5.3)の約41個のポリペプチドに含まれる。複合体Iは、NADHから電子を受け取り、それをユビキノン(補酵素Q10)に転送する。その際に得られたエネルギーを用いて、ミトコンドリア内膜を通してプロトンを輸送する。ND5は、おそらく疎水性蛋白質断片の構成成分である。このサブユニットは、複合体Iの機能には欠かすことができない。ND5遺伝子における各種のミスセンス変異(例えば、12706T>C(F24L)、12770A>G(E145G)、13045A>C(M237L)、13084A>T(S250C)、13513G>A(D393N)、13042G>A(A236T)、13730A(E465G))が、レーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON)(非特許文献24)、リー症候群(非特許文献25)、或いはミトコンドリア性ミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス及び脳卒中様症状を呈する症候群(MELAS)(非特許文献26)の患者において報告されている。従って、12358A>Gによって惹き起こされたThr8Ala置換がND5サブユニット及び複合体Iの機能に影響を及ぼす可能性がある。12358A>Gがミトコンドリアの機能に対して与える影響については、このハプログループを持つmtDNAを導入した細胞を用いた実験により調査されるべきである。
150C>Tと12358A>Gの両SNPsを持つハプログループN9aを有する女性の代謝的特徴は、内臓肥満、インスリン抵抗性及び脂質代謝に影響を与え、それによってMSに対する抵抗性が与えられるものと考えられる。
ハプログループG1に特有のmtSNPsのなかでは、15323G>A(Cytb:A193T)または15497G>A(Cytb:G251S)のいずれかは、機能的多型のようである。
国立長寿医療研究センターの加齢に関する縦断的研究(NILS−LSA)の一部としての我々の以前の調査によれば、15497G>A(Cytb:G251S)が、日本人集団の中年及び年配者層における肥満と関係していることが明らかとなった(非特許文献27)。
年齢及び喫煙状態を補正した統計解析によれば、15497Gを持つ女性に比較すると、15497Aを持つ女性では、体重、BMI、ウエスト及びヒップ廻りのサイズ、脂肪量、脂肪以外の質量、腹腔内脂肪、及びトリグリセリドが有意に大きい事が分かった。また、血漿インスリン濃度は、15497Gを持つ女性に比べると、15497Aを持つ女性の方が20%高かった。ところが、絶食時血漿グルコース及びヘモグロビンAlcは、2つの集団の間で有意差は見られなかった。これらの結果は、15497Aが、高血圧症、高血糖或いは高コレステロール血症(これらはMSを構成する因子である)を伴わない単純肥満に関係することを示唆している。こうして、15497Aを伴うハプログループG1がMSに対する抵抗性を獲得しているとの本研究の結果は、グルコース及びコレステロール代謝が15497A対立遺伝子を持つ女性では比較的正常であるとの我々の既報と一致するものである。ミトコンドリアの酸化的リン酸化系は、細胞活動のために必要な主要なエネルギー源である。上記の結果は、チトクロームbc1複合体におけるミトコンドリアのエネルギー保存効率の上昇によって、結果としてエネルギー消費の減少を惹き起こしたということかも知れない(非特許文献11)。別の可能性として、複合体IIIのユビキノン結合部位の一つであるQ0部位でユビキノンの還元を抑制することが、結果として脂肪酸のベータ酸化を減少させ、脂肪を蓄積させるのかも知れない。アンドリューらは、251位のグリシンがアスパラギン酸に置換された場合に、Qp部位にある271位のグルタミン残基との間の電荷反撥を惹き起こすので、Mt15498G>A突然変異に起因するG251D置換が病因であると主張している(非特許文献28)。この置換は、Qp部位の構造を変え、ヒドロキノン結合を損なう可能性がある。251位のグリシンをセリンに置換しても、271位のグルタミン酸との間に電荷反発を惹き起こさないと考えられるが、この置換がQp部位に対するユビキノンの親和性に影響を及ぼすことは推測し得る。
我々は、ハプログループD5に関しても、同様にmtSNPデータベース(http://www.giib.or.jp/mtsnp/search_mtSNP_e.html)を用いて、ミトコンドリアゲノムにおける機能的なmtSNPsを探索した。ハプログループD5に属するサブハプログループの間で、サブハプログループD5a1、D5a2、及びD5b2は、日本人集団においては高頻度に観察される。我々の以前の研究によれば、3名の日本人の百寿者(個体番号TCsq0012(女性、100歳)、個体番号GCsq0022(男性、102歳)、個体番号TCsq0030(女性、100歳))は、各々ハプログループD5a1、D5a2、及びD5b2を持っていた(非特許文献14、図1B)。また、我々は、5178C>A多型(ND2:L237M)を特徴とするハプログループDが長寿に関係していること、及びこの多型が加齢に関連する疾患に対する抵抗性を与えるということを報告している(非特許文献9)。5178C>Aに加え、更にハプログループD5を持つ者は、ミトコンドリアゲノムの非コード領域に150C>T塩基多型を持っている。150C>T変異が、日本人百寿者とフィンランドの90歳以上の高齢者の両者において、各々の対照群に比較してより頻繁に検出されることを我々は最近報告した(非特許文献23)。今回の研究で明らかとなったように、ハプログループD5がMSに対して防御的効果を示すという結果は、150C>Tが長寿と関係しているという以前の我々の報告に一致するものである。
ミトコンドリアには組換え機構が存在しないので、各ハプログループ或いはサブハプログループにおけるmtSNPsの全ては、相互に強固にリンクしている。従って、今回の研究において調査されたmtSNPsのあるものが、MSに対する抵抗性を担っている他のミトコンドリア遺伝子の機能的多型と、連鎖不平衡の関係にあるということがあり得る。
女性の場合、ハプログループN9a、G1及びD5は、MSに対する抵抗性と関連していた。一方、男性の場合には、このような関係は見出されなかった。遺伝的変異が肥満に関係する度合いが、男性に比して女性ではより高いとの考えを支持する他の証拠がある(非特許文献29、30)。クマジーらは、性相互作用により遺伝子型を導入し、脂肪重量をメンデル混合モデルにて分析したところ、男性では脂肪重量の分散値全体の37%を主な遺伝子が担い、一方女性では43%が担っていた(非特許文献)。しかしながら、我々の知る限りでは、mtDNA多型とMSとの関係における性別の影響に関してほとんど報告がない。以前の関連解析には、核遺伝子多型とMSとの関係について調査がされている。
山田らは、アポリポ蛋白A−V遺伝子プロモーター領域における単一ヌクレオチド多型がMSと関係することを示した(投稿中)。これらmtSNPs及び核SNPsの遺伝子タイピングは、MSの遺伝的危険度を予測するのに有益であり、かつMSの一次予防に貢献できる。
このように、本実施形態によれば、mtDNAのハプログループを検出することにより、MSの遺伝的危険度を予測することができる。このことにより、MSに対する予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
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Luminex100で検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示す図である。 PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示す図である。 mtSNPに基づくハプログループ分類を示す図(1)である。図の下端には、ハプログループ及びサブハプログループを示している(図4及び図4においても同じである)。 mtSNPに基づくハプログループ分類を示す図(2)である。 mtSNPに基づくハプログループ分類を示す図(3)である。

Claims (2)

  1. 日本人女性被験者のヒトミトコンドリアDNAにおいて、5231A、12358G、12372Aを有するハプログループN9aと、709A、4833G、5108C、8200C、15497Aを有するハプログループG1と、4883T、5178A、10397Gを有するハプログループD5と、15346Aを有するサブハプログループB4cと、13879Cを有するサブハプログループB4c1b1と、15314Aを有するサブハプログループD4aと、9296Tを有するサブハプログループD4b2bと、8383Cを有するサブハプログループD4d2と、12406Aを有するサブハプログループF1と、15860Gを有するサブハプログループG1aと、3759Gを有するサブハプログループG5b1bと、15067Cを有するサブハプログループN9a2a1または5147Aを有するサブハプログループN9b1であるかを調べ、前記ハプログループN9a、ハプログループG1又はハプログループD5を有する場合に、該日本人女性被験者がメタボリック症候群に抵抗性を備えることを評価するための判断材料の一つとすることを特徴とするメタボリック症候群に関する遺伝子検出法。
  2. 前記ハプログループの検出方法が、PCR−SSOP−Luminex法であり、この方法の実施に用いるためのオリゴヌクレオチドのうち、
    (1)ハプログループN9aの5231Aの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号17:cagctacgca aaatcttagc atacと配列番号18:ttgggcaaaa agccggttag cgであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号90:tccctaggag gcctacccccであり
    12358Gの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号39:aggataacag ctatccattg gtctと、配列番号40:gtggctcagt gtcagttcga gatであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号221:gcacactact atagccaccc tであり、
    12372Aの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号39:aggataacag ctatccattg gtctと、配列番号40:gtggctcagt gtcagttcga gatであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号222:agccacccta accctaactt ccであり、
    (2)ハプログループG1の709Aの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号1:acatcacccc ataaacaaat aggttと、配列番号2:gcttctattg acttgggtta atcgであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号158:gaactcactg gaatggggatであり、
    4833Gの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号15:tccacagaag ctgccatcaa gtaと、配列番号16:gagagtgagg agaaggctta cgtであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号83:aggttaccca aggcgcccctであり、
    5108Cの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号17:cagctacgca aaatcttagc atacと、配列番号18:ttgggcaaaa agccggttag cgであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号86:ttatcctaac taccaccgcaであり、
    8200Cの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号25:ggggtatact acggtcaatg ctcと、配列番号26:tcattttggt tctcagggtt tgttatであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号193:acgatgggca tgaagctgtgであり、
    15497Aの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号51:gacagtccca ccctcacacg atと、配列番号52:gggacggatc ggagaattgt gtであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号147:ccagacctcc taagcgacであり、
    (3)ハプログループD5の4883Tの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号15:tccacagaag ctgccatcaa gtaと、配列番号16:gagagtgagg agaaggctta cgtであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号181:aactagcccc tatctcaatであり、
    5178Aの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号17:cagctacgca aaatcttagc atacと、配列番号18:ttgggcaaaa agccggttag cgであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号88:tgaaacaaga taacatgacであり、
    10397Gの検出については、PCR用プライマー塩基配列が、配列番号33:acccctacca tgagccctac aaと、配列番号34:gtgagatggt aaatgctagt ataatatであり、多型チェック用のプローブの塩基配列が、配列番号116:taccaattca gcccagtcta atであることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子検出方法。
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