JP5275778B2 - 銅粉の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銅粉の製造方法に関する。
セラミックコンデンサの外部電極や回路基板の配線パターンに用いられる導電ペースト等の電子材料に使用される銅粉は、微粒子であること、粒子径が均一であること、単分散性に優れていること等が要求される。例えば、導電ペーストに使用される銅粉は、一般に、粒径が1〜10μm程度のものが使用されるが、最近ではコンデンササイズの小型化や電子回路の高密度化に伴って、1μm以下とする要求が高まっている。
従来、電子材料用の銅粉を製造する方法として、有機溶媒に懸濁させた銅の酸化物、亜酸化物、又は水酸化物を糖で還元することにより、銅粉を得るものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1の銅粉の製造方法によれば、例えば、有機溶媒としてのトリエチレングリコールに酸化銅の粉末とブドウ糖とを添加し、この懸濁液を200℃で120分間攪拌することで、酸化銅を銅に還元している。そして、懸濁液中の固形分を遠心分離、洗浄、乾燥することで銅粉を得ている(明細書第0023段落の実施例1を参照)。
特開平11−152506号公報
最終生成物である銅粉の特性は、銅原料のサイズや形状等に大きく影響されるため、いかに良質の銅原料を使用するかが高品質の銅微粒子を得るための大きな決め手となる。
この点に関し、特許文献1では、上述のように銅粉を製造するための銅原料として、銅の酸化物、亜酸化物、又は水酸化物を使用している。ところが、これらの銅原料を使用した場合では、当該銅原料の性状(例えば、粒子径、比表面積、形状等)を略一定に保つことは困難であり、また当該銅原料の製法も常に同じであるとは限らないので、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉を安定して得ることは困難であった。
また、特許文献1のように、銅の酸化物、亜酸化物、又は水酸化物にトリエチレングリコール等のポリオールを組み合わせると、ポリオールの分子量(すなわち、粘性)が高いため銅の酸化物、亜酸化物、又は水酸化物が懸濁液中で均一に分散し難く、その結果、得られた銅粉末の粒子径が不均一になり易いという欠点もあった。
さらに、特許文献1の銅原料である銅の酸化物、亜酸化物、又は水酸化物には、その製造時に洗浄しきれなかった不純物が表面に付着している場合がある。このような場合、最終製品である銅粉にも不純物がそのまま混入するおそれがある。従って、このような銅粉を、セラミックコンデンサの外部電極や回路基板の配線パターンに用いられる導電ペースト等の原料として利用することには問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、セラミックコンデンサの外部電極や回路基板の配線パターンに用いられる導電ペースト等の電子材料向けに最適な銅粉の製造方法を提供することにある
上記課題を解決するための本発明に係る銅粉の製造方法の特徴構成は、
水に炭酸ナトリウムを溶解させる溶解工程と、
炭酸ナトリウム水溶液に対して硫酸銅水溶液を添加する添加工程と、
生成したスラリーから固形分を回収する回収工程と、
回収した前記固形分を洗浄、脱水、及び乾燥して、複数の一次粒子が結合したカリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅を得る塩基性炭酸銅生成工程と、
前記塩基性炭酸銅を粉砕して微細な塩基性炭酸銅粉とする粉砕工程と、
ポリオールを含む液体中に、前記塩基性炭酸銅粉及び糖類を添加して、前記塩基性炭酸銅粉を銅粉に還元する還元工程と、
を包含する銅粉の製造方法であって、
前記添加工程は、添加後の混合液の温度を65〜75℃、且つpHを10以上に維持した状態で実行され、前記溶解工程において前記炭酸ナトリウムが前記水に完全に溶解していない白濁状態のときに開始されることにある。
本構成の銅粉の製造方法によれば、炭酸ナトリウム水溶液と硫酸銅水溶液との反応から生成した複数の一次粒子が結合したカリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅を銅原料としているので、銅原料の性状(粒子径、比表面積、形状等)を略一定に保つことができる。その結果、最終生成物である銅粉の性状(粒子径、比表面積、形状等)も略一定に保つことができる。
また、この塩基性炭酸銅はカリフラワー状構造を有しているため、結晶表面に付着しているナトリウムイオンや硫酸イオン等の不純物が洗浄され易く、脱水及び乾燥も容易である。その結果、最終生成物である銅粉中の不純物の含有量を電子材料として耐え得るレベルまで充分に低減することができる。
さらに、カリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅を粉砕して一旦微細な塩基性炭酸銅粉とし、この塩基性炭酸銅粉をポリオールに懸濁させて糖類で還元しているので、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉を安定して得ることができる。
本発明に係る銅粉の製造方法において、
前記粉砕工程において、前記塩基性炭酸銅粉の平均粒子径が2μm以下となるまで前記塩基性炭酸銅の粉砕を実行することが好ましい。
本構成の銅粉の製造方法によれば、粉砕工程において、塩基性炭酸銅粉の平均粒子径が2μm以下となるまで塩基性炭酸銅を粉砕することにより、還元工程後の銅粉の平均粒子径を1μm以下にすることができる。このような平均粒子径が1μm以下の微細な銅粉は、セラミックコンデンサの外部電極や回路基板の配線パターンに用いられる導電ペースト等の電子材料として好適に利用することができる。
本発明に係る銅粉の製造方法において、
前記還元工程は、
前記ポリオールに前記塩基性炭酸銅粉及び前記糖類を添加した混合液を、105〜130℃で2〜4時間維持し、前記塩基性炭酸銅粉を亜酸化銅粉に還元する第1還元工程と、
前記混合液を、165〜190℃で1〜2時間維持し、前記亜酸化銅粉を前記銅粉に還元する第2還元工程と、
を包含することが好ましい。
本構成の銅粉の製造方法によれば、還元工程を、塩基性炭酸銅粉を亜酸化銅粉に還元する第1還元工程と、亜酸化銅粉を銅粉に還元する第2還元工程とに分けて実行することにより、第1還元工程において生成する亜酸化銅粉の粒子径が一旦揃うので、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉をより安定して得ることができる。
本発明に係る銅粉の製造方法において、
前記還元工程において、前記ポリオールは前記塩基性炭酸銅粉に対して重量ベースで5〜25倍の量が使用されることが好ましい。
本構成の銅粉の製造方法によれば、還元工程において、塩基性炭酸銅粉がポリオール中で適度に分散するので、塩基性炭酸銅の還元反応が均一に進行し、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉をより安定して得ることができる。
本発明に係る銅粉の製造方法において、
前記還元工程において、前記糖類は前記塩基性炭酸銅粉に対して重量ベースで1.2〜4倍の量が使用されることが好ましい。
本構成の銅粉の製造方法によれば、還元工程において、塩基性炭酸銅粉と糖類とが適切に反応するので、塩基性炭酸銅の還元反応が確実に進行し、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉をより安定して得ることができる。
本発明の銅粉の製造方法、及び当該方法によって製造される銅粉に関する実施形態を図面に基づいて説明する。
ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、それらと均等な構成も含む。
本発明の銅粉は、複数の一次粒子が結合したカリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅を銅原料とするものである。従って、先ず初めに、この塩基性炭酸銅について説明する。
〔塩基性炭酸銅の製造方法〕
本発明において銅原料となる塩基性炭酸銅は、化学式CuCO・Cu(OH)で示される複合塩である。この塩基性炭酸銅は、炭酸銅(CuCO)と水酸化銅(Cu(OH))との比率がわずかでも変化すると、複合塩の形状や色合いが変化する。そして、それと同時に、洗浄性、脱水性、乾燥性等の工業的に重要な特性も大きく変化する。従って、これらの特性が最適となるように制御するためには、前述の複合塩中の炭酸銅(CuCO)と水酸化銅(Cu(OH))との比率を最適化するように、塩基性炭酸銅の原料となる炭酸ナトリウム水溶液と硫酸銅水溶液との混合の仕方を工夫する必要がある。
図1は、本発明の銅粉の原料となる塩基性炭酸銅の製造方法を示したフローチャートである。この塩基性炭酸銅は、図1及び以下に説明するステップ1〜3により製造される。
<1>溶解工程(ステップ1)
初めに、塩基性炭酸銅の原料となる硫酸銅水溶液及び炭酸ナトリウム水溶液を夫々準備しておく。硫酸銅水溶液は、水に硫酸銅の結晶を溶解させることで得られる。硫酸銅水溶液の濃度は、例えば、15〜18重量%とするのが好ましい。また、硫酸銅水溶液の調製中は、液温を約40℃に加温しておくことが好ましい。このような加温により、硫酸銅の水への溶解を促進することができる。また、加温により後述する添加工程で行う温度制御の負荷を低減することができる。炭酸ナトリウム水溶液は、水に炭酸ナトリウムの結晶を溶解させることで得られる(S1;溶解工程)。炭酸ナトリウム水溶液の濃度は、例えば、18〜24重量%とするのが好ましい。また、炭酸ナトリウム水溶液の調製中は、液温を約70℃に加温しておくことが好ましい。
<2>添加工程(ステップ2)
ところで、炭酸ナトリウム水溶液を調製する場合、炭酸ナトリウムが水に完全に溶解していない不完全溶解状態では水溶液は白濁している。そして、炭酸ナトリウムの溶解が進行すると、徐々に液の白濁は薄くなり、最終的には透明感のある溶液となる。本発明では、炭酸ナトリウムが水に完全に溶解していない状態、すなわち、液が完全に透明ではなく若干でも白濁を呈している状態のところに、先に準備しておいた硫酸銅水溶液を添加することが好ましい。炭酸ナトリウム水溶液に対して硫酸銅水溶液の添加を開始すると(S2;添加工程)、深緑色を呈した塩基性炭酸銅が生成されて液中に析出することが肉眼で確認できる。ここで、上記添加工程は、添加後の混合液の温度を65〜75℃、且つpHを10以上に維持した状態で実行されることが好ましい。また、炭酸ナトリウム水溶液に対する硫酸銅水溶液の添加速度は、2〜6L/分とすることが好ましい。なお、上記添加工程が終了した後も、炭酸ナトリウムと硫酸銅との反応を完全に進行させるために、混合液(ここでは、スラリー状態となっている)を攪拌し、温度を65〜75℃に維持したまま、約1時間熟成させておくことが好ましい。
<3>回収工程(ステップ3)
混合液(スラリー)の熟成が終了したら、スラリーから固形分(塩基性炭酸銅の結晶)を回収する(S3;回収工程)。この回収工程は、任意の方法によって実行できるが、例えば、遠心分離処理、濾過処理、又は振動濾過処理によって実行することが好ましい。これらの処理を行えば、塩基性炭酸銅を効率よく回収することができる。
〔塩基性炭酸銅〕
上述した塩基性炭酸銅の製造方法によって得られた塩基性炭酸銅を図2に示す。図2(a)は、結晶表面を洗浄し、さらに脱水及び乾燥させた塩基性炭酸銅の電子顕微鏡写真である。図2(b)は、その塩基性炭酸銅の粒子径分布である。
図2に見られるように、本発明によって得られた塩基性炭酸銅の結晶は、複数の一次粒子が結合したカリフラワーのような特異な構造(以後、カリフラワー状構造と称する)を有していることが確認された。なお、本明細書において使用する用語「カリフラワー状構造」とは、野菜のカリフラワーの形状を例に挙げて命名したものであり、これに類似する他の物体(例えば、ブロッコリー、一部の胞子など)の名称としても構わない。このカリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅の平均粒子径は、粒子径分布のグラフより約34μmと算出された。
このカリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅は、塩基性炭酸銅の微粒子が単に凝集しただけのものではなく、複数の塩基性炭酸銅の一次粒子が化学的に結合した比較的強固な構造体である。従って、このカリフラワー状構造は容易に崩壊することはなく、その形状を維持している。
ところで、このようなカリフラワー状構造が発現したひとつの理由は、炭酸ナトリウムと硫酸銅とを反応させて塩基性炭酸銅を合成するに際し、白濁状態が残っている炭酸ナトリウム水溶液に対して硫酸銅水溶液を添加したことによるものと考えられる。そして、炭酸ナトリウム水溶液の白濁度が大きいときに硫酸銅水溶液を添加すると、カリフラワー状構造がより明確に発現することも確認された。
硫酸銅水溶液の添加タイミングによって、生成する塩基性炭酸銅の結晶構造が変化する理由は明確には判明していないが、一つの推測として、塩基性炭酸銅中の炭酸銅(CuCO)と水酸化銅(Cu(OH))との比率は、混合液中の銅イオン、炭酸イオン、及び水酸化物イオンの溶存状態(濃度)に支配されており、炭酸ナトリウム水溶液に硫酸銅水溶液を添加した直後の各イオン種の溶存状態によって、生成される塩基性炭酸銅の性状がすべて決定されるためと考えられる。
本発明の銅粉の原料となる塩基性炭酸銅は、その特異なカリフラワー状構造のために、回収工程後に行う洗浄工程及び乾燥工程を容易且つ良好に行うことができる。従って、塩基性炭酸銅の表面に付着しているナトリウムイオンや硫酸イオン等の不純物を少ない量の水で洗浄することができ、電子材料として耐え得るレベルまで充分に低減することができる。その結果、本発明の塩基性炭酸銅は、セラミックコンデンサの外部電極や導電ペースト等の電子材料に使用する銅粉の原材料として好適に利用することができる。
〔銅粉の製造方法〕
次に、上述の塩基性炭酸銅を銅原料として得られる銅粉の製造方法について説明する。図3は、本発明の銅粉の製造方法を示したフローチャートである。この銅粉は、図3に示したステップ1〜6により製造される。ここで、各ステップの詳細な説明を以下に示す。ただし、ステップ1〜3については、先に説明した「塩基性炭酸銅の製造方法」におけるステップ1〜3と同一であるため、説明を省略する。
<塩基性炭酸銅生成工程(ステップ4)>
先に説明したステップ1〜3を実行後、回収した塩基性炭酸銅の結晶表面に付着しているナトリウムイオンや硫酸イオン等の不純物を除去するために清澄な水で適宜洗浄する。さらに、引き続いて、脱水工程及び乾燥工程を適切に実行する。これらの結果、深緑色を呈した塩基性炭酸銅の結晶(先の図2に示したカリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅)が得られる(S4;塩基性炭酸銅生成工程)。
<粉砕工程(ステップ5)>
次に、カリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅を粉砕して微細な塩基性炭酸銅粉とする(S5;粉砕工程)。この粉砕工程は、例えば、ボールミル等の粉砕装置を用いて湿式又は乾式で実行することができる。また、粉砕工程は、塩基性炭酸銅粉の平均粒子径が2μm以下となるまで実行することが好ましい。これにより、後述する還元工程後の銅粉の平均粒子径を1μm以下にすることができる。一例として、図4(a)に粉砕工程後に得られた塩基性炭酸銅粉の電子顕微鏡写真を示す。また、図4(b)に塩基性炭酸銅粉の粒子径分布のグラフを示す。このように、粉砕工程後に得られた塩基性炭酸銅粉は、平均粒子径が2μm以下となっていることが分かる。
<還元工程(ステップ6)>
粉砕工程によって得られた塩基性炭酸銅粉を、ポリオールを含む液体(溶媒)中に攪拌しながら添加して懸濁させ、さらに、還元剤としての糖類を添加する(S6:還元工程)。このとき、第1還元工程として、ポリオールに塩基性炭酸銅粉及び糖類を添加した混合液を、105〜130℃で2〜4時間維持する。これにより、塩基性炭酸銅粉は一旦亜酸化銅粉に還元される。このときの亜酸化銅粉の平均粒子径は、既に1μm以下になっていると推測される。次いで、第2還元工程として、混合液を、165〜190℃で1〜2時間維持する。これにより、第1還元工程で生成した亜酸化銅粉は平均粒子径が1μm以下の銅粉に還元される。このように、還元工程を、塩基性炭酸銅粉を亜酸化銅粉に還元する第1還元工程と、亜酸化銅粉を銅粉に還元する第2還元工程とに分けて実行することにより、第1還元工程において生成する亜酸化銅粉の粒子径が一旦揃うので、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉をより安定して得ることができる。
還元工程で溶媒として使用するポリオールには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、グリセロールが挙げられる。これらの溶媒は、単独で、又は混合溶媒として使用することができる。また、これらの溶媒を水やアルコール等の相溶性のある液体で適宜希釈したものであっても構わない。これらの溶媒のうち特に好ましいのは、エチレングリコール又はジエチレングリコールである。とりわけ、エチレングリコール又はジエチレングリコールを使用した場合では、還元工程後に得られる銅粉の均一性が非常に優れたものとなる。
ポリオールは塩基性炭酸銅粉に対して重量ベースで5〜25倍の量が使用されることが好ましい。このような使用量とすれば、塩基性炭酸銅粉がポリオール中で適度に分散するので、塩基性炭酸銅の還元反応が均一に進行し、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉をより安定して得ることができる。ポリオールの使用量が塩基性炭酸銅粉に対して5倍未満になると、懸濁液の粘性が大きくなるため、攪拌が困難になるとともに銅粉の均一な分散性が得られ難くなる。また、ポリオールの使用量が塩基性炭酸銅粉に対して25倍を超えた場合は、還元工程後に発生する廃液の量が増加するため、コスト面及び環境面で好ましくない。
還元工程で還元剤として使用する糖類には、例えば、フルクトース(果糖)やグルコース(ブドウ糖)等の単糖類、スクロース(ショ糖)やマルトース(麦芽糖)等の二糖類、可溶性デンプン等の水溶性多糖類が挙げられる。これらの糖類は、単独で、又は混合物として使用することができる。また、これらの糖類を水等の可溶性液体で適宜溶解させたものであっても構わない。これらの糖類のうち特に好ましいのは、単糖類又は二糖類である。とりわけ、単糖類又は二糖類を使用した場合では、還元工程後に得られる銅粉の均一性が非常に優れたものとなる。また、単糖類又は二糖類はコスト面でも有利である。
ところで、フルクトースやスクロースは、それらの構造中に還元基を有していないが、フルクトースは弱アルカリ性環境下ではエピメル化変異を起こすことによって還元性を示すアルデヒド基を有するようになり、還元剤として利用することができる。また、スクロースは加水分解によってグルコースとフルクトースとの等量混合物である転化糖となり、還元性を示すようになる。特にこれらの糖類による還元反応は緩やかに進行し、このことが銅粉の優れた均一性に寄与していると考えられる。
なお、先に説明した溶媒として使用するポリオールも還元性を示す。ポリオールの還元力は、糖類と比較すると緩やかである。ただし、ポリオール類は還元反応中に水を生成する。この水はスクロースの加水分解に寄与すると考えられる。従って、塩基性炭酸銅粉を銅粉に還元するに際して、本発明のようにポリオールと糖類とを組み合わせることには合理性がある。
糖類は塩基性炭酸銅粉に対して重量ベースで1.2〜4倍の量が使用されることが好ましい。このような使用量とすれば、塩基性炭酸銅粉と糖類とが適切に反応するので、塩基性炭酸銅の還元反応が確実に進行し、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉をより安定して得ることができる。糖類の使用量が塩基性炭酸銅粉に対して1.2倍未満になると、塩基性炭酸銅粉の未反応物が残存するようになり、さらには微粒子の均一性が低下する。また、糖類の使用量が塩基性炭酸銅粉に対して4倍を超えた場合は、還元工程後に発生する廃棄物の量が増加するため、コスト面及び環境面で好ましくない。
上述の方法によって得られた本発明の銅粉は、炭酸ナトリウム水溶液と硫酸銅水溶液との反応から生成した、複数の一次粒子が結合したカリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅を銅原料としているので、銅原料の性状(粒子径、比表面積、形状等)を略一定に保つことができ、その結果、最終生成物である銅粉の性状(粒子径、比表面積、形状等)も略一定に保つことができる。
また、この塩基性炭酸銅はカリフラワー状構造を有しているため、結晶表面に付着しているナトリウムイオンや硫酸イオン等の不純物が洗浄され易く、脱水及び乾燥も容易である。その結果、最終生成物である銅粉中の不純物の含有量を電子材料として耐え得るレベルまで充分に低減することができる。
さらに、カリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅を粉砕して一旦微細な塩基性炭酸銅粉とし、この塩基性炭酸銅粉をポリオールに懸濁させて糖類で還元しているので、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉を安定して得ることができる。
次に、本発明に関する具体的な実施例について説明する。初めに、本発明の銅粉の原料である塩基性炭酸銅の合成方法について説明し、次いで、本発明の銅粉の製造例を実施例1〜3として説明する。
反応槽(以下、第1反応槽とする)に70℃に調整した純水を125L投入し、ここにソーダ灰(炭酸ナトリウム)34.5kgを投入して溶解させた。このとき、炭酸ナトリウムが水に完全に溶解していない白濁状態とした。また、別の反応槽(以下、第2反応槽とする)に40℃に調整した純水を160L投入し、ここに高純度硫酸銅5水和物65.4kgを投入して完全に溶解させた。第1反応槽の白濁状態の炭酸ナトリウム水溶液に第2反応槽の硫酸銅水溶液を3L/分の添加速度で添加した。このとき、混合液の液温を70℃、pHを10以上に維持した。硫酸銅水溶液の添加後、混合液(スラリー)の攪拌を約2時間継続し、炭酸ナトリウムと硫酸銅との反応によって析出した塩基性炭酸銅を熟成させた。熟成後、スラリーから固形分を回収し、これを純水で洗浄及び脱水し、乾燥させた。ちなみに、この塩基性炭酸銅は、先に説明した複数の一次粒子が結合したカリフラワー状構造を有しているため、洗浄性及び脱水性は非常に良好であった。乾燥後の塩基性炭酸銅の平均粒子径は34μmであった。その後、この塩基性炭酸銅を平均粒子径が2μm以下となるまでイソプロピルアルコールとともにボールミルで湿式粉砕し、塩基性炭酸銅粉を得た。
〔実施例1〕
電気加熱式の反応槽にエチレングリコール16.4kgとジエチレングリコール3.6kgとの混合溶媒を投入し、ここに塩基性炭酸銅粉1.0kg及びフルクトース3.4kgを添加した。混合液(スラリー)を攪拌しながら加熱し、液温110℃で3時間反応させた(第1還元工程)。次いで、混合液をさらに加熱し、液温170℃で1時間反応させた(第2還元工程)。その後、混合液を冷却し、上澄み液を除去して残った固形分を洗浄及び乾燥して銅粉を得た。図5に、この実施例1における銅粉の(a)電子顕微鏡写真、及び(b)粒子径分布を示す。図5より、この銅粉は略均一な微粒子であり、平均粒子径が0.82μmであることが判明した。
〔実施例2〕
電気加熱式の反応槽にエチレングリコール10.0kgとジエチレングリコール10.0kgとの混合溶媒を投入し、ここに塩基性炭酸銅粉1.0kg及びフルクトース3.4kgを添加した。混合液(スラリー)を攪拌しながら加熱し、液温110℃で3時間反応させた(第1還元工程)。次いで、混合液をさらに加熱し、液温170℃で1時間反応させた(第2還元工程)。その後、混合液を冷却し、上澄み液を除去して残った固形分を洗浄及び乾燥して銅粉を得た。図6に、この実施例2における銅粉の(a)電子顕微鏡写真、及び(b)粒子径分布を示す。図6より、この銅粉は略均一な微粒子であり、平均粒子径が0.79μmであることが判明した。
〔実施例3〕
電気加熱式の反応槽にエチレングリコール70.0kgとジエチレングリコール20.0kgとの混合溶媒を投入し、ここに塩基性炭酸銅粉4.0kg及びフルクトース9.0kgを添加した。混合液(スラリー)を攪拌しながら加熱し、液温110℃で3時間反応させた(第1還元工程)。次いで、混合液をさらに加熱し、液温170℃で1時間反応させた(第2還元工程)。その後、混合液を冷却し、上澄み液を除去して残った固形分を洗浄及び乾燥して銅粉を得た。図7に、この実施例3における銅粉の(a)電子顕微鏡写真、及び(b)粒子径分布を示す。図7より、この銅粉は略均一な微粒子であり、平均粒子径が0.75μmであることが判明した。
〔別実施形態〕
上記実施形態では、銅粉の原材料としてカリフラワー状構造を有する炭酸銅を使用したが、他の銅塩を使用することも可能である。例えば、銅塩として、水酸化銅、酸化銅等を使用し、これらの銅塩を粉砕及び還元することで、粒子径が均一で且つ分散性の良好な銅粉を製造することができる。
本発明の銅粉の製造方法、及び当該方法によって製造される銅粉は、セラミックコンデンサの外部電極や導電ペースト等の電子材料に使用される銅粉として好適に利用することができる。
本発明の銅粉の原料となる塩基性炭酸銅の製造方法を示したフローチャート 本発明の塩基性炭酸銅の製造方法によって得られたカリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅の(a)電子顕微鏡写真、及び(b)粒子径分布 本発明の銅粉の製造方法を示したフローチャート カリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅を粉砕して得られた塩基性炭酸銅粉の(a)電子顕微鏡写真、及び(b)粒子径分布 実施例1における銅粉の(a)電子顕微鏡写真、及び(b)粒子径分布 実施例2における銅粉の(a)電子顕微鏡写真、及び(b)粒子径分布 実施例3における銅粉の(a)電子顕微鏡写真、及び(b)粒子径分布

Claims (5)

  1. 水に炭酸ナトリウムを溶解させる溶解工程と、
    炭酸ナトリウム水溶液に対して硫酸銅水溶液を添加する添加工程と、
    生成したスラリーから固形分を回収する回収工程と、
    回収した前記固形分を洗浄、脱水、及び乾燥して、複数の一次粒子が結合したカリフラワー状構造を有する塩基性炭酸銅を得る塩基性炭酸銅生成工程と、
    前記塩基性炭酸銅を粉砕して微細な塩基性炭酸銅粉とする粉砕工程と、
    ポリオールを含む液体中に、前記塩基性炭酸銅粉及び糖類を添加して、前記塩基性炭酸銅粉を銅粉に還元する還元工程と、
    を包含する銅粉の製造方法であって、
    前記添加工程は、添加後の混合液の温度を65〜75℃、且つpHを10以上に維持した状態で実行され、前記溶解工程において前記炭酸ナトリウムが前記水に完全に溶解していない白濁状態のときに開始される銅粉の製造方法。
  2. 前記粉砕工程において、前記塩基性炭酸銅粉の平均粒子径が2μm以下となるまで前記塩基性炭酸銅の粉砕を実行する請求項1に記載の銅粉の製造方法。
  3. 前記還元工程は、
    前記ポリオールに前記塩基性炭酸銅粉及び前記糖類を添加した混合液を、105〜130℃で2〜4時間維持し、前記塩基性炭酸銅粉を亜酸化銅粉に還元する第1還元工程と、
    前記混合液を、165〜190℃で1〜2時間維持し、前記亜酸化銅粉を前記銅粉に還元する第2還元工程と、
    を包含する請求項1又は2に記載の銅粉の製造方法。
  4. 前記還元工程において、前記ポリオールは前記塩基性炭酸銅粉に対して重量ベースで5〜25倍の量が使用される請求項1〜3の何れか一項に記載の銅粉の製造方法。
  5. 前記還元工程において、前記糖類は前記塩基性炭酸銅粉に対して重量ベースで1.2〜4倍の量が使用される請求項1〜4の何れか一項に記載の銅粉の製造方法。
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