JP5273424B2 - 低摩擦摺動機構及びこれに用いる潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
CO2削減については、機械・装置等の摩擦損失によるエネルギー損失の低減、特に自動車の燃費の削減を図ることが大きな課題の1つであり、摺動材料と潤滑剤との果たす役割は大きい。
一般に、ダイヤモンドやダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜などの炭素系材料は、空気中、潤滑油不存在下における摩擦係数が、窒化チタン(TiN)や窒化クロム(CrN)といった耐摩耗性の硬質被膜材料と比べて低いことから低摩擦摺動材料として期待されている。
(1)低粘度化による、流体潤滑領域における粘性抵抗及びエンジン内の攪拌抵抗の低減、(2)最適な摩擦調整剤と各種添加剤の配合による、混合及び境界潤滑領域下での摩擦損失の低減、が提言されている。
例えば、摩擦調整剤としては、モリブデンジチオカルバメイト(MoDTC)やモリブデンジチオホスフェート(MoDTP)といった有機モリブデン化合物を中心に多くの研究がなされており、従来の鋼材料から成る摺動面においては、使用開始初期に優れた低摩擦係数を示す有機モリブデン化合物を配合した潤滑油組成物が適用され、効果を上げていた。
該ダイヤモンドを用いた摺動部材の算術平均表面粗さRaが0.005μm以上0.014μm以下であり、
摺動面に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物を介在させたことを特徴とする。
上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤が炭素数6〜30の炭化水素基を有し、組成物全量基準で0.05〜3.0%含まれて成ることを特徴とする。
少なくとも一方の摺動部材がダイヤモンドを用いた摺動面を有する低摩擦摺動機構において、該ダイヤモンドを用いた摺動部材の算術平均表面粗さRaが0.005μm以上0.014μm以下であり、摺動面に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物を介在させたことを特徴とする。
なお、ダイヤモンド摺動部材は、その表面の一部又は全部にダイヤモンドを被覆することなどにより上記表面粗さが達成されていればよい。また、上記表面粗さの下限は、技術的な観点からは、現時点ではRa0.005程度である。
例えば、4サイクルや2サイクルエンジン等の内燃機関の摺動部(例えば動弁系、ピストン、ピストンリング、ピストンスカート、シリンダライナ、コンロッド、クランクシャフト、ベアリング、軸受け、メタル、ギヤー、チェーン、ベルト、オイルポンプ等)を始め、駆動系伝達機構(例えばギヤー等)やハードディスクドライブの摺動部、その他摩擦条件が厳しく、低摩擦性が要求される様々な摺動面が対象となる。
一般的には、基材の温度を高温にし、熱CVD(Chemical Vapor Depodition)法という真空中でのプロセス法を採用して、ダイヤモンドの多結晶膜が形成されるが、この方法で得られるダイヤモンド膜は、結晶粒が比較的大きいために表面に結晶粒径に対応した凹凸が残存する。よって、本発明で規定する上記表面粗さRa0.05μm以下に平滑に仕上げるには多少の困難を伴うことがある。
このため、ダイヤモンド膜のコーティングはマイクロ波やプラズマを用いたCVDプロセスを採用することが好適である。この製法によれば、基材上に非常に結晶粒径の小さいナノ多結晶ダイヤモンド膜を形成でき、該多結晶膜より容易に平滑化が可能とできるため、本発明で規定する上記表面粗さに調整しやすい。
ダイヤモンド膜の厚さが0.3μm未満では摩滅し、厚さ5.0μmを超えると剥離し易くなる。
相手摺動部材の表面硬さが上記範囲から外れると、HRC45未満では相手部材が摩耗し易くなることがあり、HRC62超では剥離し易くなることがある。
このときは、極めて優れた低摩擦特性を示し、優れた省燃費効果を発揮し得る。
かかる潤滑油組成物は、潤滑油基油に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤を含有して成る。
炭素数が6〜30でないときは、上述の摩擦低減効果が十分得られない可能性がある。
中でも、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物が好ましい例として挙げられる。
潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣ることがある。
このように、潤滑油基油の粘度指数が高いものを選択することにより、低温粘度特性に優れるだけでなく、摩擦低減効果に優れた組成物を得ることができる。
なお、上記アルキル基及びアルケニル基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
具体的な好適例としては、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート及びソルビタンジオレートなどが挙げられる。
上記含有量が0.05%未満であると摩擦低減効果が小さくなり、3.0%を超えると摩擦低減効果に優れるものの潤滑油への溶解性や貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生する。
摺動部材の一例として、図1に示すようなピンオンディスク単体摩擦用の試験片を作製した。この単体試験片は、3つのピンと、ディスクからなり、以下の方法により得られた摺動部材を用いて作製したものである。これら摺動材料について表1に示す。
軸受け鋼(JIS SUJ2)から所定のピン形状に研磨加工後、ラッピングテープ又はバレル研磨によってピンを様々な表面粗さ(Ra0.2μm以下)に仕上げた。
炭化珪素から成るディスク形状素材にピンとの摺動表面を研磨によって、Ra0.02μm以下の表面粗さに仕上げ、ダイヤモンド膜の形成しやすい下地前処理を実施し、マイクロ波CVD処理によって表面に様々な膜厚となるようにコーティングした。
コーティングされた表面は、更にラッピングテープを用いた研磨によって様々な表面粗さをRa0.05μm以下に仕上げた。
・オイルA
潤滑油基油として水素化分解鉱油(100℃動粘度:5.0mm2/s、粘度指数:120、全芳香族含有量:5.5%)を用い、それにエステル系摩擦調整剤(グリセリンモノオレート)を1%、無灰系分散剤(ポリブテニルコハク酸イミド(窒素含有量:1.2%))を5.0%、金属系清浄剤としてカルシウムスルホネート(全塩基価:300mgKOH/g、カルシウム含有量:12.0%)を0.5%及びカルシウムフェネート(全塩基価:255mgKOH/g、カルシウム含有量:9.2%)を0.9%、その他添加剤として粘度指数向上剤、酸化防止剤、防錆剤、抗乳化剤、非イオン系界面活性剤、金属不活性化剤、消泡剤等を合計量で7.0%配合し調製した。
潤滑油基油として1−デセンオリゴマー水素化物(100℃動粘度:3.9mm2/s、粘度指数:124、全芳香族含有量:0.0%)を用いた以外は、オイルAと同様の操作を繰り返して調製した。
エステル系摩擦調整剤を添加せず、アミン系摩擦調整剤(N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン)を1.0%添加し、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(亜鉛含有量:9.3%、リン含有量:8.5%、アルキル基:第2級ブチル基又は第2級へキシル基)をリン元素換算量で0.047%添加した以外は、オイルAと同様の操作を繰り返して調製した。
アミン系摩擦調整剤を添加しない以外は、オイルCと同様の操作を繰り返して調製した。
これら潤滑油組成物(オイルA〜D)の組成とそのオイル性状を表2に示す。
表1の実施例1、実施例2、参考例3及び参考例4に示すように、ピン及びディスクを組合わせた単体試験片を作製し、表1の各実施例に併記した各潤滑油組成物(オイルA〜D)を用いて低摩擦摺動機構を構成し、以下の単体摩擦試験を実施した。この結果を表1に示す。
試験荷重(最大ヘルツ圧力) :50kgf(690MPa:スチール同士の面圧値)
ディスク回転速度 :30rpm
オイル供給方法 :油浴
供給オイル温度 :80℃
試験時間 :60min
同様に、表1の比較例1〜4に示すように、ピン及びディスクを組合わせた単体試験片を作製し、表1の各比較例に併記した各潤滑油組成物(オイルA、B又はD)を用いて低摩擦摺動機構を構成し、上記と同様の単体摩擦試験を実施した。この結果を表1に示す。
更に、実施例1、2及び参考例4で得られた低摩擦摺動機構の試験結果から、ジチオリン酸亜鉛の含有量が少ないほど摩擦低減効果に優れることがわかる。
なお、実施例1及び2で得られた低摩擦摺動機構に係る単体試験片の材料組合せは、試験後の表面形状に何ら問題はなく、耐磨耗性にも非常に優れ、安定した低摩擦特性を示していた。
また、比較例4で得られた低摩擦摺動機構は、ピンとディスクの表面粗さは実施例よりも小さいが、ディスクがダイヤモンド部材で無くDLC膜であるため、摩擦係数が0.07程度と高く摩擦特性に劣ることがわかる。
更に、比較例2で得られた低摩擦摺動機構は、ダイヤモンド摺動部材(ディスク)の表面粗さがRa0.054μmで、比較例1よりは摩擦が低下するものの、比較例4のDLC膜と同程度である。
更にまた、比較例3で得られた低摩擦摺動機構は、実施例1と同様のピンとディスクの構成であるが、オイル添加剤として本発明で用いる摩擦調整剤を含まない潤滑油組成物(オイルD)を用いており、摩擦係数が0.07程度と高く摩擦特性に劣ることがわかる。これは、摺動面に摩擦調整剤を主体とする反応皮膜が形成されていないためと推察できる。
このような顕著な摩擦低減効果は、工業的に極めて有益であり、エンジン摺動部品等の摩擦損失の大幅な低減、即ちエンジンの燃費改善に有効である。
例えば、本発明の低摩擦摺動機構は、産業機械に使われている歯車摺動部材等に用いることもできる。
2 ディスク
Claims (6)
- 少なくとも一方の摺動部材がダイヤモンドを用いた摺動面を有する低摩擦摺動機構において、
該ダイヤモンドを用いた摺動部材の算術平均表面粗さRaが0.005μm以上0.014μm以下であり、
摺動面に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物を介在させたことを特徴とする低摩擦摺動機構。 - 上記ダイヤモンド摺動部材が、基材表面に厚さ0.3〜5.0μmのダイヤモンド膜をコーティングして成ることを特徴とする請求項1に記載の低摩擦摺動機構。
- 上記ダイヤモンド摺動部材と摺動する相手摺動部材が、鉄基材料であり、表面硬さがロックウェル硬さ(Cスケール)でHRC45〜62であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低摩擦摺動機構。
- 内燃機関の摺動部に使用されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の低摩擦摺動機構。
- 上記ダイヤモンド摺動部材が、基材上にダイヤモンド膜をコーティングした円盤状のシム又はリフター冠面であり、
上記相手摺動部材が、低合金チルド鋳鉄、浸炭鋼及び調質炭素鋼から成る群より選ばれた少なくとも1種の材料を用いたカムロブであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の低摩擦摺動機構。 - 請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の低摩擦摺動機構に用いられる潤滑油組成物であって、
上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤が炭素数6〜30の炭化水素基を有し、組成物全量基準で0.05〜3.0%含まれて成ることを特徴とする潤滑油組成物。
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