JP2006306938A - 低摩擦摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定の潤滑油組成物との組み合わせによって、極めて優れた低摩擦特性を示し、従来の鋼材料とポリアルキルメタクリレートとの組合せよりもさらに優れた省燃費効果を発揮し得る低摩擦摺動部材を提供する。
【解決手段】硬質炭素薄膜を被覆した摺動部材と、例えば鉄基材料から成る相手部材との摺動面に、アルキル基に窒素系の極性基及び酸素系の極性基の少なくとも一方、望ましくは両方を有するポリアルキルメタクリレートを粘度指数向上剤として含有する潤滑油組成物を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、硬質炭素被膜を備えた摺動部材と潤滑油の組み合わせに係わり、特に、自動車用エンジンに代表される内燃機関等での使用に適し、潤滑油の存在下において極めて優れた低摩擦性を示す摺動部材に関するものである。
地球全体の温暖化、オゾン層の破壊など地球規模での環境問題が大きくクローズアップされ、とりわけ地球全体の温暖化に大きな影響があるといわれているCOの削減については、各国でその規制値の決め方をめぐって大きな関心を呼んでいる。
CO削減については、自動車の燃費の削減を図ることが大きな課題の1つであり、摺動材料と潤滑油が果たす役割は大きい。
摺動材料の役割は、エンジンの摺動部位の中で摩擦摩耗環境が苛酷な部位に対して耐摩耗性に優れ且つ低い摩擦係数を発現することであり、最近では、種々の硬質薄膜材料の適用が進んできている。
一般にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)材料は、潤滑油が存在しない空気中における摩擦係数が、TiNやCrNといった耐磨耗性の硬質被膜材料と比べて低いことから低摩擦摺動材料として期待されている。
また、潤滑油における省燃費対策としては、低粘度化による流体潤滑領域における粘性抵抗及びエンジン内の攪拌抵抗の低減と共に、最適な摩擦調整剤と各種添加剤の配合による混合及び境界潤滑領域下での摩擦損失の低減が提言されており、摩擦調整剤としては、MoDTCやMoDTPといった有機モリブデン化合物を中心に多くの研究がなされており、従来の鋼材料から成る摺動面においては、使用開始初期に優れた低摩擦係数を示す有機Mo化合物を配合した潤滑油が適用され、効果を上げていた。
しかしながら、空気中において低摩擦性に優れる一般のDLC材料は、潤滑油存在下においては、その摩擦低減効果が小さいことが報告されており(例えば、非特許文献1参照)、また、この摺動材料に有機モリブデン化合物を含有する潤滑油組成物を適用したとしても摩擦低減効果が十分発揮されていないことがわかってきた(非特許文献2参照)。
日本トライボロジー学会予稿集・東京 1999.5,p11〜12,加納 他 World Tribology Congress 2001.9,Vienna,Proceeding p342,Kano et.al.
本発明は、このような従来技術の有する課題、すなわちDLCに代表される硬質炭素材料は、潤滑油存在下においては、また潤滑油に有機モリブデン化合物を添加したとしても、必ずしも十分な摩擦低減効果が得られないという課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、耐摩耗性に優れ、極めて優れた低摩擦特性を安定的に発揮することができ、しかも従来の鋼材料と有機モリブデン化合物を含有する潤滑油との組合せよりもさらに優れた省燃費効果を発揮し得る低摩擦摺動部材とこれに用いる潤滑油組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、硬質炭素被膜の組成と共に、潤滑油の基油成分や各種の添加剤などについて鋭意検討を重ねた結果、硬質炭素部材と鉄基又はアルミ基部材とを所定の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物の存在下で摺動させた場合に、優れた低摩擦特性が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の低摩擦摺動部材は、基材の少なくとも相手部材との摺動面に硬質炭素薄膜を被覆して成るものであって、例えば鉄基材料から成る相手部材との摺動面に、ポリアルキルメタクリレートのアルキル基に窒素系の極性基及び/又は酸素系の極性基を有する粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物を用いることを特徴としている。
本発明によれば、硬質炭素薄膜を被覆して成る部材と相手部材とをポリアルキルメタクリレートのアルキル基に窒素系の極性基及び酸素系の極性基の一方又は両方を持つ粘度指数向上剤が金属表面に吸着することにより、トライボフィルムを形成し、混合潤滑の領域において弾性流体域の比率を高めることから、極めて優れた低摩擦特性を示し、従来の鋼材料とポリアルキルメタクリレートとの組合せよりもさらに優れた省燃費効果を発揮することができる。
以下、本発明の低摩擦摺動部材について、さらに詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り質量百分率を示すものとする。
本発明の低摩擦摺動部材においては、例えば鉄基又はアルミ基部材に対して、硬質炭素薄膜の被覆部材を摺動させる際に、両部材間の摺動面にポリアルキルメタクリレートのアルキル基に窒素系の極性基又は酸素系の極性基をもつ粘度指数向上剤が金属表面に吸着することにより、トライボフィルムを形成し、混合潤滑の領域において弾性流体域の比率を高めることによって両部材が従来に較べて極めて低摩擦で摺動し得る。特に、ポリアルキルメタクリレートのアルキル基に窒素系の極性基と酸素系の極性基とを同時に含有させることによって、より優れた摺動特性を発揮することができる。
ここで、上記硬質炭素薄膜材料としては、DLC材料を用いることができる。
このDLC材料は、炭素元素を主として構成される非晶質材料であり、炭素同士の結合形態がダイヤモンド構造(SP結合)とグラファイト結合(SP結合)の両方から成る。具体的には、炭素元素だけから成るa−C(アモルファスカーボン)、水素を含有するa−C:H(水素アモルファスカーボン)、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含むMeCが挙げられるが、本発明においては、大幅な摩擦低減効果の発揮の面から、水素を含まないa−C系材料から成るものを好適に用いることができる。
一方、硬質炭素薄膜を被覆して成る本発明の摺動部材に対して、相対的に摺動する相手部材が鉄基又はアルミ基部材の場合、その構成材料としては、具体的には浸炭鋼SCM420やSCr420(JIS G 4053)などを挙げることができる。
また、本発明の摺動部材及び相手部材のそれぞれの表面粗さは、算術平均粗さRaで、0.1μm以下であることが摺動の安定性の面から好適である。すなわち、Raが0.1μmを超えると、局部的にスカッフィングを形成し、摩擦係数の大幅向上となることがある。
さらに、上記摺動部材の表面に被覆された硬質炭素薄膜は、表面硬さについては、ヌープ硬さで1500kg/mm以上、厚さについては、0.3〜2.0μmであることが好ましく、相手部材が鉄基又はアルミ基部材の場合、表面硬さが、ロックウェル硬さ(Cスケール)でHRC45〜60であることが好ましい。
この場合には、カムフォロワー部材のように700MPa程度の高面圧下の摺動条件においても、膜の耐久性を維持できることから有効である。
上記硬質炭素薄膜の表面硬さ及び厚さが上記範囲から外れた場合、ヌープ硬さ1500kg/mm未満、厚さ0.3μm未満では薄膜が摩滅し、逆にヌープ硬さ4500kg/mm、厚さ2.0μmを超えると硬質炭素薄膜が剥離し易くなる。
一方、鉄基又はアルミ基部材の表面硬さが上記から外れた場合、HRC45未満では高面圧下で座屈し硬質炭素薄膜が剥離し易くなることがある。
また、上記硬質炭素薄膜においては、後述するような潤滑油中において低い摩擦係数を得るために、その水素含有量を減らすことが好ましく、その具体的範囲としては10原子%以下、さらに5%いか、さらには1原子%以下とすることが望ましい。
このような水素含有量の低い硬質炭素薄膜は、例えばアーク式イオンプレーティング法やスパッタリング法のように、実質的に水素や水素含有化合物を使用しないPVD法(物理気相堆積法)によって成膜することによって得ることができ、このような成膜法を採用することが望ましいる。
本発明の低摩擦摺動部材は、潤滑油を介在させた状態で、相手部材に接触して相対的に摺動する部材であれば、何ら限定なく使用することができるが、代表的には、自動車用エンジンなどの内燃機関における摺動部材として使用することができる。この場合は、従来に比べて極めて優れた低摩擦特性が得られるので有効である。
例えば、硬質炭素薄膜を被覆して成る本発明の摺動部材としては、鉄鋼材料から成る基材表面に、上記のようなDLCをコーティングしたピストンリングやリフターなどが挙げられ、これらに対する相手部材としては、低合金チルド鋳鉄、浸炭鋼又は調質炭素鋼、あるいはこれらの任意の組合せに係る材料を用いたカムロブなどが挙げられる。
なお、本発明の低摩擦摺動部材における基材としては、上記した鉄鋼材料以外には、アルミニウム合金等を用いることができる。
次に、本発明の低摩擦摺動部材に用いる潤滑油組成物について詳細に説明する。
かかる潤滑油組成物は、潤滑油基油にポリアルキルメタクリレートのアルキル基に窒素系の極性基及び/ポリアルキルメタクリレートのアルキル基に窒素系及び/又は酸素系の極性基をもつ粘度指数向上剤を含有して成り、上述した低摩擦摺動材料に用いられる。
アルキル基に、上記のような極性基を持つポリアルキルメタクリレートから成る粘度指数向上剤における数平均分子量としては、例えば分散型ポリメタクリレートでは5000〜1000000、好ましくは100000〜800000がよい。
また、かかる粘度指数向上剤は、単独で、あるいは複数種を任意に組合せて含有させることができるが、その含有量は、通常潤滑油組成物基準で0.1〜30.0%であることが望ましい。
ここで、上記潤滑油の基油としては、特に限定されるものではなく、潤滑油組成物の基油として通常用いられるものであれば、鉱油系基油、合成系基油を問わず使用することができる。
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、ワックス異性化等の処理を1つ以上行って精製したもの等が挙げられ、特に水素化分解処理や水素化精製処理あるいはワックス異性化処理が施されたもの等、各種の基油を用いることができる。
合成系基油としては、具体的には、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジオクチルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンぺラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールぺラルゴネート等のポリオールエステルやこれらの混合物等が例示できる。
本発明の潤滑油組成物における基油は、鉱油系基油又は合成系基油を単独あるいは混合して用いる以外に、2種類以上の鉱油系基油、あるいは2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えない。また、上記混合物における2種類以上の基油の混合比も特に限定されず任意に選ぶことができる。
潤滑油基油の全芳香族含有量には特に制限はないが、15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%である。潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣るため好ましくない。
潤滑油基油の動粘度は、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として使用する場合には、100℃における動粘度は、2mm/s以上であることが好ましく、より好ましくは3mm/s以上である一方、20mm/s以下であることが好ましく、さらには10mm/s以下、特に8mm/s以下であることがより好ましい。
潤滑油基油の100℃における動粘度を2mm/s以上とすることによって油膜形成が十分であり、潤滑性に優れ、また、高条件下での基油の蒸発損失がより小さい組成物を得ることができる。一方、100℃における動粘度を20mm/s以下とすることによって、流体抵抗が小さくなるため潤滑個所での摩擦抵抗のより小さい潤滑油組成物を得ることができる。
また、潤滑油基油の粘度指数は、特に制限はないが、100以上であることが好ましく、内燃機関用潤滑油組成物として使用する場合には、120以上であることが好ましく、140以上であることが特に好ましい。
潤滑油基油の粘度指数が高いものを選択することによって、低温粘度特性に優れるだけでなく、摩擦低減効果に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
ポリアルキルメタクリレートのアルキル基に窒素系の極性基及び/又は酸素系の極性基を持つ粘度指数向上剤の具体的な好適例としては、ポリアルキルジメチルアミノアクリレート、ポリアルキルテトラヒドロ−1,4−オキサジンアクリレートなどを挙げることができる。
本発明の場合、次の一般式(1)
Figure 2006306938
(式中のR1はアルキルテトラヒドロ−1,4−オキサジン基、またはジメチルアミノエチル基、R2及びR3は無関係に水素又は式−COOR′の基を表し、その際R′は水素又は1〜40個の炭素原子を有する線状鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す)で表される1種又は数種のエチレン性不飽和エステル化合物を、エチレン性不飽和モノマーの全質量に対して50〜100質量%、好ましくは60〜100質量%有するエチレン性不飽和モノマーが特に有利である。この場合、アルキル基は線状、環状又は分枝状であることができる。
一般式(1)による上記化合物には、1〜40個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコール基をそれぞれ有する(メタ)アクリレート、マレエート、フマレートが属する。
上述のように、本発明の低摩擦摺動部材に用いる潤滑油組成物は、硬質炭素被膜を備えた摺動部材と鉄基部材との摺動面に用いる場合に、極めて優れた低摩擦特性を示すものであるが、特に内燃機関の摺動部に用いるときは、金属系清浄剤、酸化防止剤、他の粘度指数向上剤、摩擦調整剤、分散剤、摩耗防止剤若しくは極圧剤、防錆剤、非イオン系界面活性剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、及び消泡剤等を単独で又は複数種を組合せて配合し、必要な性能を高めることができる。
金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレート、ナフテネート等を単独で又は複数種を組合せて使用できる。
ここで、アルカリ金属としてはナトリウム(Na)やカリウム(K)等、アルカリ土類金属としてはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等が例示できる。また、具体的な好適例としては、Ca又はMgのスルフォネート、フェネート及びサリシレートが挙げられる。なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択できる。通常は、過塩素酸法で0〜500mgKOH/g、望ましくは150〜400mgKOH/gであり、その添加量は組成物全量基準で、通常0.1〜10%である。
また、酸化防止剤としては、潤滑油用の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物を使用できる。例えば、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤、並びにこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。また、かかる酸化防止剤の添加量は、組成物全量基準で、通常0.01〜5%である。
また、摩擦調整剤としては、ホウ酸エステル、高級アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、二硫化モリブデン等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。また、無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、数平均分子量が900未満のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド等と共に、これらの誘導体等が挙げられる。
さらに、摩耗防止剤又は極圧剤としては、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、炭素数2〜20の炭化水素基を1〜3個含有するリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
さらにまた、防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
また、非イオン系界面活性剤及び抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
更に、金属不活性化剤としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等が挙げられる。 さらに、消泡剤としては、シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
なお、これら添加剤を本発明に用いる潤滑油組成物に含有する場合は、組成物全量基準で、摩擦調整剤、無灰分散剤、磨耗防止剤、極圧剤、防錆剤及び抗乳化剤については0.01〜5%、金属不活性剤については0.0005〜1%の範囲からその含有量を適宜選択することができる。
以下、本発明を実施例により更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(摺動部材)
実施例の評価として、縦型の往復摺動試験機を用いて、摩擦摩耗試験を実施した。この摺動試験機は、1つのリング試験片と1つの円筒状試験片を用い、円筒状試験片の内面を、リング試験片の外周面が摺動する構造となっている。試験片の仕様は以下の通りである。
〈リング試験片〉
形状:φ91×1.5mm、材質:SWOSC材(ばね用オイルテンパー線)+DLC処理
〈円筒状試験片〉
形状:φ91×90mm、材質:FCA材(オーステナイト鋳鉄)
上記で得られた摺動材料(リング試験片)の性状を表1に示す。
Figure 2006306938
(潤滑油組成物の調製)
(1)オイル1
潤 滑油基油として水素化分解鉱油グループIIIを用い、これに粘度指数向上剤としてのポリアルキルジメチルアミノアクリレートを4.0%、オレフィン共重合体(OCP)を2.5%、その他添加剤として分散剤、金属系清浄剤、酸化防止剤、防錆剤、抗乳化剤、非イオン系界面活性剤、金属不活性化剤、消泡剤等を合計量で10.25%配合することによって調製した。
(2)オイル2
粘度指数向上剤を3.0%のポリアルキルテトラヒドロ−1,4−オキサジンアクリレートに変更したこと以外は、オイル1と同様に調製した。
(3)オイル3
粘度指数向上剤を添加することなく、オレフィン共重合体(OCP)の配合量を7.2%に変更したこと以外は、オイル1と同様に調製した。
これら潤滑油組成物のオイル性状を表2に示す。
Figure 2006306938
(摩擦摩耗試験)
縦型往復摺動試験機を使用して、上記で得られた摺動材料と潤滑油とを組み合わせて摩擦摩耗試験を実施した。試験条件を表3に示す。
また、試験結果を表4に示す。なお、同表中の摩擦摩耗試験結果は、比較例1を基準とし、摩擦係数の低下率を表したものである。
Figure 2006306938
Figure 2006306938
表4に示した結果から明らかなように、実施例1から実施例5は、いずれも優れた低摩擦係数を示すことが判明した。特に、実施例2の組み合わせが最も優れた低摩擦係数を示すことが確認された。
これより、分子構造に含まれる極性基が金属表面に吸着することにより、高分子皮膜を形成し、混合潤滑の領域においてEHL(流体弾性潤滑)の比率を高めているためと推定される。
実施例1と実施例2の差については、実施例1が窒素系の極性基のみを使用しているのに対して、実施例2では、窒素系に加えて、酸素系の分散基を併用していることによる。これは、酸素系の極性基は、その構造から金属および金属の酸化皮膜に対する吸着性が窒素系よりも高いことから、より大きな摩擦係数低減効果が得られたものと推定される。
さらに、水素量の少ないDLC薄膜を被覆した摺動部材と組に合せることによって、より効果的となることが確認された。
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨内であれば種々の変形が可能である。例えば、産業機械に使われている歯車摺動部材等に用いることも可能である。

Claims (8)

  1. 潤滑油の存在下で摺動し、基材の少なくとも相手部材との摺動面に硬質炭素薄膜を被覆して成る摺動部材であって、上記潤滑油が粘度指数向上剤として、ポリアルキルメタクリレートを含有し、該ポリアルキルメタクリレートのアルキル基に窒素系の極性基及び/又は酸素系の極性基を含有することを特徴とする低摩擦摺動部材。
  2. 上記硬質炭素薄膜の表面硬さがヌープ硬さで1500kg/mm以上であると共に、膜厚が0.5〜2.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の低摩擦摺動部材。
  3. 上記硬質炭素薄膜がアーク式イオンプレーティング法により成膜されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の低摩擦摺動部材。
  4. 上記硬質炭素薄膜の水素濃度が10原子%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の低摩擦摺動部材。
  5. 上記硬質炭素薄膜の水素濃度が5原子%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の低摩擦摺動部材。
  6. 上記硬質炭素薄膜の水素濃度が1原子%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の低摩擦摺動部材。
  7. 潤滑油中における上記粘度指数向上剤の含有量が質量比で0.1〜30%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の低摩擦摺動部材。
  8. 自動車用エンジンのピストンリングであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の低摩擦摺動部材。
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