JP5272759B2 - 厚鋼板の製造方法 - Google Patents
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工程(a):スラブをAc 3 点以上1050℃未満の温度に加熱する。
工程(b):Ar 3 点以上の温度域で累積圧下量30%以上の圧延を行う。
工程(c):Ar 3 点〜640℃で圧延を完了する。
工程(d):Ar 3 点以下630℃以上である温度から2℃/s以上の冷却速度で冷却する。
DI=(9.238×C0.5)×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+0.27×Cu)×(1+0.5×Ni)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)・・・(1)
ただし、上記(1)式中の、C、Si、Mn、Cu、Ni、CrおよびMoは、それぞれの元素の質量%での含有量を表す。
〔(圧延前のスラブの厚さ−Ar3点以上の温度域での圧延による被圧延材の最終の厚さ)/圧延前のスラブの厚さ〕×100
で表した値を指す。
910−273×C+25×Si−74×Mn−56×Ni−16×Cr−9×Mo−5×Cu−1620×Nb
の式によって求めた値を指す。
C:0.01〜0.12%
Cは、強度確保に必要な元素である。0.01%以上を含有させなければ実用的な強度を有する厚鋼板を生産することはできない。一方、その含有量が0.12%を超えると、ベイナイト変態領域の靱性劣化が顕著化するとともに、溶接熱影響部の靱性も損ねる。したがって、Cの含有量は0.01〜0.12%とする。強度と靱性のバランスの点からのC含有量の好ましい範囲は、0.03〜0.10%である。
Siは、精錬段階での脱酸に必要な元素であるとともに強度上昇に寄与する元素である。しかしながら、Siの含有量が0.50%を超えると、溶接熱影響部における島状マルテンサイトの生成を助長して靱性に悪影響を及ぼす。したがって、Siの含有量は0.50%以下とする。好ましいSiの含有量は、0.30%以下である。
Mnは、強度確保のための必要な元素である。しかしながら、その含有量が0.4%未満ではこれらの効果を得ることができない。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、溶接熱影響部の靱性が大幅に劣化する。したがって、Mnの含有量は0.4〜2.0%とする。Mn含有量の好ましい範囲は0.6〜1.6%である。
Pは、不純物として鋼中に存在し、溶接熱影響部における粒界割れの原因となる。Pの含有量が多くなり、特に、0.05%を超えると、溶接熱影響部における粒界割れの発生が著しくなる。したがって、Pの含有量は0.05%以下とする。なお、その混入量はできるだけ低くするのが好ましく、Pの含有量は0.03%以下とすることが好ましい。
Sは、不純物として鋼中に存在し、脆性破壊の起点となるMnSを形成する元素である。このため、Sの含有量は0.008%以下とする。なお、その混入量はできるだけ低くするのが好ましく、Sの含有量は0.003%未満とすることが好ましい。
Nbは、組織の微細化、靱性の向上、焼入性の向上および析出硬化による強度上昇に有効な元素であり、特に、未再結晶域の拡大効果が大きいことから、熱加工制御法(TMCP法)を適用する鋼材には必要な元素である。前記の効果はNbの含有量が0.003%以上で発揮される。しかしながら、Nbの含有量が0.10%を超えると、析出物の増加により却って靱性の劣化をもたらす。したがって、Nbの含有量を0.003〜0.10%とする。Nb含有量の好ましい範囲は0.003〜0.04%である。
Alは、鋼の脱酸に必要な元素であり、本発明に係る鋼の場合には、0.002%以上の含有量が必要である。しかしながら、Alを0.05%を超えて含有させても、脱酸の効果が飽和する。さらに、溶接性の低下と溶接継手の靱性劣化も生じる。したがって、Alの含有量は0.002〜0.05%とする。好ましいAl含有量の範囲は0.002〜0.04%である。
Nは、不純物として鋼中に存在し、析出物を形成することで靱性劣化をもたらす元素である。このため、低温靱性確保のためにNの含有量は低い方がよい。したがって、Nの含有量は0.010%以下とする。好ましいNの含有量は0.006%以下である。
Cuを含有させると、靱性を劣化させずに強度を向上させることができる。しかしながら、その含有量が0.2%を超えると、溶接性が悪化し、さらに、熱間での加工の際、表面に微小な割れを発生させる。したがって、含有させる場合のCuの含有量は0.2%以下とする。含有させる場合のCu含有量の好ましい上限は0.17%である。なお、Cuによる強度向上の効果を確実に発現させるためには、Cuを0.03%以上含有させることが好ましい。
Crを含有させると、強度を上昇させることができる。しかしながら、その含有量が0.3%を超えると、靱性の劣化をきたし、さらに、溶接熱影響部に硬化した組織を形成し靱性を劣化させるので、含有させる場合のCrの含有量は0.3%以下とする。含有させる場合のCr含有量の好ましい上限は0.2%である。なお、Crによる強度向上の効果を確実に発現させるためには、Crを0.05%以上含有させることが好ましい。
Niを含有させると、靱性を向上させることができる。したがって、この効果を得るためにNiを含有させてもよい。しかしながら、Niの含有はコストアップ要因となる。このため、含有させる場合のNiの含有量を0.2%以下とする。含有させる場合のNiの好ましい含有量は0.1%以下である。なお、Niによる靱性向上効果を確実に発現させるためには、Niを0.03%以上含有させることが好ましい。
Moを含有させると、焼入性を高め、強度を向上させることができる。しかしながら、Moの含有はコストアップ要因となり、また、その含有量が0.2%を超えると、溶接熱影響部の靱性を劣化させるので、含有させる場合のMoの含有量は0.2%以下とする。含有させる場合のMo含有量の好ましい上限は0.1%である。なお、Moによる焼入性と強度の向上効果を確実に発現させるためには、Moを0.02%以上含有させることが好ましい。
Vを含有させると、焼入性の向上および析出硬化による強度の向上に有効となる。しかしながら、Vの含有量が0.1%を超えると、靱性の著しい劣化をもたらすので、含有させる場合のVの含有量は0.1%以下とする。含有させる場合のV含有量の好ましい上限は0.06%である。なお、Vによる焼入性と強度の向上効果を確実に発現させるためには、Vを0.003%以上含有させることが好ましい。
Bを含有させると、オーステナイト粒界からのフェライト変態を抑制して焼入性を向上させ、強度を高めることができる。しかしながら、Bの含有量が0.005%を超えると靱性が劣化するので、含有させる場合のBの含有量は0.005%以下とする。含有させる場合のB含有量の好ましい上限は0.0015%である。なお、Bによる焼入性および強度の向上効果を確実に発現させるためには、Bを0.0003%以上含有させることが好ましい。
Tiを含有させると、酸化物粒子の構成元素となるため組織が微細化され、また、高温延性を高めて連続鋳造で製造される鋼塊のひび割れを防止するのに有効となる。したがって、この効果を得るためにTiを含有させてもよい。しかしながら、Tiの含有量が0.1%を超えると、TiCを生成し、靱性を劣化させるので、含有させる場合のTi含有量は0.1%以下とする。含有させる場合のTi含有量の好ましい上限は0.04%である。なお、Tiによる上述の効果を確実に発現させるためには、Tiを0.003%以上含有させることが好ましい。
前記の(1)式、つまり、
DI=(9.238×C0.5)×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+0.27×Cu)×(1+0.5×Ni)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)・・・(1)
で表されるDIの値が25を超えると、ミクロ組織に占めるフェライトの割合が80%を下回ってしまうので、本発明の厚鋼板に490MPa級の引張強さを確保させた場合には、靱性が低下してしまう。したがって、前記(1)式で示されるDIの値は25以下を満たす必要がある。なお、上記DIの値は24以下とすることが好ましい。また、490MPa級の引張強さを安定して得るために、DIの値は14以上とすることが好ましい。
本発明に係る厚鋼板に、490MPa級の引張強さを確保させたうえで、良好な靱性も具備させるためには、ミクロ組織に占めるフェライトの割合を80%以上とする必要がある。上記ミクロ組織に占めるフェライトの割合は、より好ましくは90%以上であり、100%、すなわち、フェライトの単相組織であってもよい。
ミクロ組織に占めるフェライトの割合が80%以上であっても、フェライトの平均結晶粒径が20μmを超えると、本発明に係る厚鋼板に490MPa級の引張強さを確保させた場合には、靱性が低下してしまう。一方、フェライトの平均結晶粒径が3μm以下となるような組織を得ようとした場合、特殊な製造工程が必要となり、生産性が悪化するほか、そのようにして得られた厚鋼板は集合組織の発達が著しく、圧延面の靱性が低下する。したがって、フェライトの平均結晶粒径を3μmを超えて20μm以下とする。フェライトの平均結晶粒径の下限は5μmであることが好ましく、また、上限は17μmであることが好ましい。
ミクロ組織に占めるフェライトの割合が80%以上で、しかも、フェライトの平均結晶粒径が3μmを超えて20μm以下であっても、フェライトの平均アスペクト比が4を超えると、本発明に係る厚鋼板に490MPa級の引張強さを確保させた場合には、Z方向の靱性が低下してしまう。したがって、フェライトの平均アスペクト比を4以下とする。フェライトの平均アスペクト比は、好ましくは、3以下である。
以下に詳述する本発明の製造条件は、工業的な規模で本発明の厚鋼板を経済的に要領よく実現するための方法の一つである。
加熱工程としての工程(a)では、本発明の厚鋼板製造のための圧延素材としてのスラブをAc3点以上1050℃未満の温度に加熱する。
工程(a)で加熱したスラブを、Ar3点以上の温度域で累積圧下量30%以上の圧延(工程(b))を行い、Ar3点〜640℃で圧延を完了する(工程(c))。
圧延工程としての工程(b)および(c)の後は、Ar3点以下630℃以上である温度から2℃/s以上の冷却速度で冷却する(工程(d))。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.50%以下、Mn:0.4〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、Nb:0.003〜0.10%、Al:0.002〜0.05%およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、下記の(1)式で示されるDIの値が25以下を満たすスラブを、下記の工程(a)〜(d)で順次処理することを特徴とする、板厚50mm以上の厚鋼板の製造方法。
工程(a):スラブをAc 3 点以上1050℃未満の温度に加熱する。
工程(b):Ar 3 点以上の温度域で累積圧下量30%以上の圧延を行う。
工程(c):Ar 3 点〜640℃で圧延を完了する。
工程(d):Ar 3 点以下630℃以上である温度から2℃/s以上の冷却速度で冷却する。
DI=(9.238×C0.5)×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+0.27×Cu)×(1+0.5×Ni)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)・・・(1)
ただし、上記(1)式中の、C、Si、Mn、Cu、Ni、CrおよびMoは、それぞれの元素の質量%での含有量を表す。 - 質量%で、さらに、Cu:0.2%以下およびCr:0.3%以下の元素のうち1種または2種を含有するスラブを用いることを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板の製造方法。
- 質量%で、さらに、Ni:0.2%以下を含有するスラブを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の厚鋼板の製造方法。
- 質量%で、さらに、Mo:0.2%以下、V:0.1%以下およびB:0.005%以下の元素のうち1種または2種以上を含有するスラブを用いることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の厚鋼板の製造方法。
- 質量%で、さらに、Ti:0.1%以下を含有するスラブを用いることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の厚鋼板の製造方法。
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