JP2014025091A - 鋼材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%でC:0.050〜0.40%、Si:0.50〜3.0%、Mn:3.0〜8.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001〜3.0%、N:0.01%以下を含有する化学組成と、10〜40面積%のオーステナイトを含有し、オーステナイトの平均C濃度が0.30〜0.60質量%である鋼組織とを有する。この鋼材は、旧オーステナイトの平均粒径が20μm以下のマルテンサイト単相組織を有する鋼材に、670℃以上780℃未満かつAc3点未満の温度域に5〜120秒間保持した後、この温度域から150℃までを5〜500℃/秒の平均冷却速度で冷却する熱処理を施すことにより製造される。
【選択図】 なし
Description
本発明はその知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
1.化学組成
本発明に係る鋼材の化学組成は次の通りである。上述したように、各元素の含有量を表す「%」は質量%である。
Cは強度上昇および延性向上に寄与する元素であり、鋼材の引張強度を900MPa以上、さらに、鋼材の引張強度と伸びの積の値を24000MPa・%以上にするために、0.050%以上含有させる。C含有量を0.080%以上にすると、引張強度が1000MPa以上になる。したがって、C含有量は0.080%以上とすることが好ましい。しかし、0.40%を超えてCを含有させると、衝撃特性が劣化する。このため、C含有量は0.40%以下とする。好ましくは、0.25%以下である。
Siは延性向上に寄与する元素であり、鋼材の引張強度と全伸びとの積の値を24000MPa・%以上にするために、0.50%以上含有させる。Si含有量を1.0%以上にすると、溶接性が向上する。したがって、Si含有量は1.0%以上とすることが好ましい。しかし、3.0%を超えてSiを含有させると、衝撃特性が劣化する。このため、Si含有量は3.0%以下とする。
Mnは強度上昇および延性向上に寄与する元素であり、鋼材の引張強度を900MPa以上、さらに、鋼材の引張強度と全伸びとの積の値を24000MPa・%以上にするために、3.0%以上含有させる。なお、C含有量が0.40%以下の場合において、Mn含有量を4.0%以上にすると、引張強度が1000MPa以上になる。したがって、Mn含有量は4.0%以上とすることが好ましい。しかし、8.0%を超えてMnを含有させると、転炉における精錬、鋳造が著しく困難になる。このため、Mn含有量は8.0%以下とする。好ましくは、6.5%以下である。
Pは不純物として含有される元素であるが、強度上昇に寄与する元素でもあるので、積極的に含有させてもよい。しかし、0.05%を超えてPを含有させると、鋳造が著しく困難になる。このため、P含有量は0.05%以下とする。好ましくは、0.02%以下である。
Sは不純物として不可避的に含有され、衝撃特性を著しく劣化させる元素である。このため、S含有量は0.01%以下とする。好ましくは、0.005%以下である。さらに好ましくは、0.0015%以下である。
Alは鋼を脱酸する作用を有する元素であり、鋼材を健全化するために、sol.Alは0.001%以上含有させる。好ましくは、0.010%以上である。一方、sol.Al含有量が3.0%を超えると、鋳造が著しく困難になる。このため、sol.Al含有量は3.0%以下とする。好ましくは1.2%以下である。
Nは不純物として不可避的に含有され、耐時効性を著しく劣化させる元素である。このため、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは、0.006%以下である。さらに好ましくは、0.003%以下である。
これらの元素は鋼材の強度を安定して確保するために効果のある元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、いずれも1.0%を超えて含有させると、熱間加工が困難になる。このため、含有させる場合の各元素の含有量はそれぞれ前記のとおりとする。なお、前記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.003%以上、Nb:0.003%以上、V:0.003%以上、Cr:0.01%以上、Mo:0.01%以上、Cu:0.01%以上およびNi:0.01%以上の少なくとも一つを満足させることが好ましい。
これらの元素は低温靭性を高める作用を有する元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、いずれも0.01%を超えて含有させると、表面性状が劣化する。このため、含有させる場合の各元素の含有量はそれぞれ前記のとおりとする。なお、前記作用による効果をより確実に得るには、これらの元素の少なくとも一つの含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、前記REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。
Biは、Mnの偏析を低減し、機械特性の異方性を緩和する元素である。したがって、Biを含有させてもよい。しかし、0.01%を超える量でBiを含有させると、熱間加工が困難になる。このため、含有させる場合のBi含有量は0.01%以下とする。なお、前記作用による効果をより確実に得るには、Bi含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
本発明に係る鋼材は、前記化学組成に加えて、面積%で10%以上40%以下のオーステナイトを含有し、前記オーステナイトの平均C濃度が質量%で0.30%以上0.60%以下である鋼組織を有する。この鋼組織は、前述した化学組成の鋼材に後述する製造方法を適用することにより得ることができる。
前記化学組成を有する鋼材のオーステナイト面積率が10%以上であると、900MPa以上の引張強度を有しながら、鋼材の延性は著しく向上する。オーステナイト面積率が10%未満では延性向上が不十分である。したがって、オーステナイト面積率は10%以上とする。一方、オーステナイトの面積率が40%を超えると、耐遅れ破壊特性が劣化する。このため、オーステナイトの面積率は40%以下とする。
前記化学組成を有する鋼材のオーステナイト中の平均C濃度が0.30質量%以上であると、鋼材の衝撃特性が向上する。この平均C濃度が0.30質量%未満では、衝撃特性の向上は不十分となる。したがって、オーステナイトの平均C濃度は0.30質量%以上とする。一方、このC濃度が0.60質量%超でも、TRIP現象に伴い生成するマルテンサイトが硬質になり、マイクロクラックがその近傍に発生しやすくなるので、衝撃特性が劣化する。このため、オーステナイトの平均C濃度は0.60質量%以下とする。
本発明に係る鋼材の好ましい製造方法について次に説明する。
熱処理に供する鋼材には、上述した鋼材の化学組成を有し、旧オーステナイトの平均粒径が20μm以下であるとともにマルテンサイト単相である鋼組織を有する鋼材を用いる。そのような鋼組織を有する鋼材を、後述する条件で熱処理することにより、引張強度が900MPa以上の高強度を維持しながら、延性と衝撃特性に優れる、所望の超高強度鋼材が得られる。
前記鋼組織を有する鋼材の加熱は、670℃以上780℃未満、かつ下記実験式(i)により規定されるオーステナイト単相になるAc3点(℃)未満の温度域に、5秒間以上120秒間以下保持することにより行う。
11×Cr−20×Cu+700×P+400×Al+50×Ti ・・・ (i)
前記式中における各元素記号は、鋼材の化学組成におけるその元素の含有量(単位:質量%)を示す。
上述した加熱保持の後、次いで、加熱時の保持温度域から150℃までを5℃/秒以上500℃/秒以下の平均冷却速度で冷却する。前記平均冷却速度が5℃/秒未満では、軟質なフェライトやパーライトが過度に生成し、熱処理後の強度で900MPa以上の引張強度を確保することが困難となる。したがって、前記平均冷却速度は5℃/秒以上とする。一方、前記平均冷却速度が500℃/秒超では、焼割れが発生しやすくなる。したがって、前記平均冷却速度は500℃/秒以下とする。
熱処理に供する鋼材の断面を電子顕微鏡で観察、撮影し、合計0.04mm2の領域を解析することによって、鋼組織を同定するとともに、旧オーステナイト粒径を測定した。
熱処理した各鋼材から幅25mm、長さ25mmの試験片を切り出し、この試験片に化学研磨を施して0.3mm減厚し、化学研磨後の試験片の表面に対してX線回折を3回実施し、得られたプロファイルを解析し、それぞれを平均してオーステナイトの面積率を算出した。
X線回折で得られた前記プロファイルを解析し、オーステナイトの格子定数(a:単位はÅ)を算出し、下記(ii)式に基づき、オーステナイトの平均C濃度(c:単位は質量%)を決定した。
(引張試験)
熱処理した各鋼材から、厚さ2.0mmのJIS5号引張試験片を採取し、TS(引張強度)およびEL(全伸び)を測定した。
熱処理した鋼材の厚みが1.2mmとなるように機械加工し、Vノッチ試験片を作製した。その試験片を4枚積層してねじ止めした後、シャルピー衝撃試験に供した。衝撃特性は、0℃での衝撃値が20J/cm2以上となる場合を良好、それ未満である場合を不良とした。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.050%以上0.40%以下、Si:0.50%以上3.0%以下、Mn:3.0%以上8.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上3.0%以下、およびN:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成と、面積%で10%以上40%以下のオーステナイトを含有し、前記オーステナイトの平均C濃度が質量%で0.30%以上0.60%以下である鋼組織と、引張強度が900MPa以上である機械特性と、を有することを特徴とする鋼材。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:1.0%以下、Nb:1.0%以下、V:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の鋼材。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下、Zr:0.01%以下およびB:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項1または請求項2に記載の鋼材。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Bi:0.01%以下を含有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼材。
- 請求項1から請求項4のいずれかに記載の化学組成と、旧オーステナイトの平均粒径が20μm以下であるとともにマルテンサイト単相である鋼組織とを有する鋼材に、670℃以上780℃未満かつAc3点未満の温度域に5秒間以上120秒間以下保持し、次いで、前記温度域から150℃までを5℃/秒以上500℃/秒以下の平均冷却速度で冷却する熱処理を施すことを特徴とする鋼材の製造方法。
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