以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図6は、本発明の第1実施形態による内燃機関の制御装置1を、図1は、この制御装置1を適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3を、それぞれ示している。このエンジン3は、4つの気筒3a(1つのみ図示)を備えた直列4気筒タイプの車両(図示せず)用の4サイクルガソリンエンジンである。
また、エンジン3は、各気筒3aの吸気ポートおよび排気ポートをそれぞれ開閉する吸気弁4および排気弁5と、吸気弁4を駆動するための可変動弁機構11と、排気弁5を駆動するための排気動弁機構(図示せず)を備えている。さらに、気筒3aやシリンダヘッド3bの壁部には、ウォータージャケットWJが設けられており、このウォータージャケットWJ内には、エンジン3を冷却するための冷却水(以下「エンジン冷却水」という)が流れている。
吸気弁4のステム4aは、ガイド4bに摺動自在に嵌合しており、このガイド4bは、エンジン3のシリンダヘッド3bに固定されている。また、吸気弁4には、上下のスプリングシート4c,4dと、これらの間に配置されたバルブスプリング4eが設けられており、吸気弁4は、このバルブスプリング4eによって、閉弁方向に付勢されている。なお、図2〜図5では、便宜上、スプリングシート4c,4dおよびバルブスプリング4eを省略している。
可変動弁機構11は、吸気弁4のリフト量(以下「吸気リフト量」という)を無段階に変更可能に構成されている。なお、本実施形態では、「吸気リフト量」は、吸気弁4の最大揚程を表すものとする。この可変動弁機構11は、本出願人によって出願された特願2008−259460号に開示されたものと同じであるので、以下、その構成および動作について簡単に説明する。
図1および図2に示すように、可変動弁機構11は、吸気カムシャフト12、コントロールアーム13、ロッカアーム14、サブカム15、およびコントロールシャフト16を有している。可変動弁機構11は、吸気カムシャフト12、コントロールアーム13およびコントロールシャフト16を回動自在に支持するホルダ41を介して、シリンダヘッド3bに取り付けられるとともに、シリンダヘッドカバー3c内に配置されている。
吸気カムシャフト12は、気筒3aの並び方向(以下「気筒並び方向」という)に延びており、ホルダ41を介して、シリンダヘッド3bに回転自在に取り付けられている。また、吸気カムシャフト12の一端部には、吸気スプロケット(図示せず)が同軸状に取り付けられており、この吸気スプロケットは、タイミングベルト(図示せず)を介して、エンジン3のクランクシャフト(図示せず)に連結されている。これにより、吸気カムシャフト12は、クランクシャフトが2回転するごとに1回転する。
さらに、吸気カムシャフト12には、吸気カム12aが、気筒3aごとに、同軸状に一体に設けられている。吸気カム12aの外周面は、非駆動カム面12bおよび駆動カム面12cで構成されており、この非駆動カム面12bは、吸気カムシャフト12を中心とする円弧状に形成され、駆動カム面12cは、非駆動カム面12bに連続するとともに、これよりも径方向の外方に凸に湾曲している。
コントロールアーム13、ロッカアーム14およびサブカム15は、気筒3aごとに設けられている。このコントロールアーム13は、気筒並び方向に互いに間隔を隔てた状態で連結された一対の側壁(一方のみ図示)を有するケース状のものであり、これらの側壁の吸気弁4側の部位にはそれぞれ、気筒並び方向に延びる支持部13aが一体に設けられている(図1に一方のみ図示)。支持部13aは、シリンダヘッド3bに設けられたホルダ41に挿入されており、それにより、コントロールアーム13は、ホルダ41に回動自在に支持されている。また、コントロールアーム13の吸気弁4と反対側の端部には、リターン機構21が設けられており、このリターン機構21によって、コントロールアーム13は図1の時計回りに付勢されている。
ロッカアーム14およびサブカム15は、互いに連動することによって、吸気カムシャフト12の駆動力を吸気弁4に伝達するためのものである。このロッカアーム14は、吸気弁4と反対側の端部が、気筒並び方向に延びるロッカシャフト14aを介して、コントロールアーム13に回動自在に取り付けられており、コントロールアーム13の一対の側壁の間に配置されている。このロッカシャフト14aには、コントロールアームローラ14bが回転自在に設けられている。さらに、ロッカアーム15の吸気弁4側の端部には、油圧タペット14cが取り付けられており、この油圧タペット14cは、吸気弁4のステム4aに当接している。また、ロッカアーム14の吸気弁4側の部位には、ロッカアームローラ14dが、気筒並び方向に延びるピン14eを介して、回転自在に設けられている。
サブカム15は、気筒並び方向に延びるサブカムシャフト15aを介して、コントロールアーム13に回動自在に取り付けられており、コントロールアーム13の一対の側壁の間に配置されている。また、サブカム15の気筒3a側の面は、上述したロッカアームローラ14dに当接可能なカム面になっており、このカム面は、非駆動カム面15bおよび駆動カム面15cで構成されている。非駆動カム面15bは、サブカムシャフト15aを中心とする円弧状に形成されており、駆動カム面15cは、非駆動カム面15bに連続するとともに、サブカムシャフト15aの径方向の外方に延びている。
さらに、サブカム15の吸気カムシャフト12側の端部には、吸気カム12aに当接可能なサブカムローラ15dが、気筒並び方向に延びるピン15eを介して、回転自在に設けられている。また、ピン15eとコントロールアーム13の間には、ロストモーションスプリング22が設けられており、サブカム15は、このロストモーションスプリング22によって、吸気カム12aに当接するように、図1の反時計回りに付勢されている。
コントロールシャフト16は、吸気リフト量を変更するために駆動されるものであり、気筒並び方向に延びている。コントロールシャフト16には、コントロールアーム13に対応する位置に、前述したコントロールアームローラ14bに当接可能な制御カム16aが一体に設けられている。また、コントロールシャフト16の端部には、電動モータ17が連結されている。図6に示すように、この電動モータ17は、制御装置1の後述するECU2に接続されており、ECU2から電動モータ17に制御信号が入力されることによって、コントロールシャフト16の回動角度位置が制御される。
次に、図1〜図5を参照しながら、可変動弁機構11の動作について説明する。図1および図2に示す吸気弁4の全閉状態から、吸気カムシャフト12が吸気カム12aとともに回転すると、吸気カム12aの駆動カム面12cがサブカムローラ15dに当接するとともに、吸気カム12aが、サブカムローラ15dを介して、サブカム15を気筒3a側に押圧する。これにより、サブカム15が、ロストモーションスプリング22の付勢力に抗して、サブカムシャフト15aを中心として図2の時計回りに回動する。これに伴い、サブカム15の駆動カム面15cがロッカアームローラ14dに当接するとともに、サブカム15が、ロッカアームローラ14dを介して、ロッカアーム14を気筒3a側に押圧する。これにより、ロッカアーム14が、ロッカシャフト14aを中心として図2の時計回りに回動するとともに、油圧タペット14cを介して、吸気弁4のステム4aを気筒3a側に押圧する。以上の結果、図3に示すように、吸気弁4が、バルブスプリング4eの付勢力に抗して開く。
そして、吸気カム12aがさらに回転し、吸気カム12aの非駆動カム面12bがサブカムローラ15dに当接すると、サブカム15が、ロストモーションスプリング22の付勢力によって、もとの位置に戻り、バルブスプリング4eの付勢力によって、吸気弁4が閉じるとともに、ロッカアーム14がもとの位置に戻る。
また、可変動弁機構11では、吸気リフト量は、コントロールシャフト16が図3に示す第1角度位置にあるときには、所定の最小リフト量になり、図5に示す所定の第2角度位置にあるときには、最小リフト量よりも大きな所定の最大リフト量になる。さらに、電動モータ17への制御信号の入力により、コントロールシャフト16の回動角度位置(以下「コントロールシャフト角度位置」という)を、これらの第1角度位置と第2角度位置の間で変更することによって、吸気リフト量は、最小リフト量と最大リフト量の間で無段階に変更される。以下、この点について説明する。
すなわち、上述したように、可変動弁機構11では、吸気カムシャフト12の駆動力は、サブカム15およびロッカアーム14を介して、吸気弁4に伝達される。この場合、サブカム15の非駆動カム面15bが前述したようにサブカム15の回動中心を中心とした円弧状に形成されているため、この非駆動カム面15bがロッカアームローラ14dに当接しているときには、吸気カムシャフト12からの駆動力の伝達によって、サブカム15が回動しても、ロッカアーム14がサブカム15に押圧されず、その結果、吸気カムシャフト12の駆動力は、吸気弁4には伝達されない。
一方、サブカム15の駆動カム面15cが、非駆動カム面15bからサブカム15の回動中心の径方向の外方に延びているため、サブカム15がさらに回動し、この駆動カム面15cがロッカアームローラ14dに当接すると、ロッカアーム14がサブカム15に押圧され、その結果、吸気カムシャフト12の駆動力は、サブカム15およびロッカアーム14を介して吸気弁4に伝達される。
また、可変動弁機構11では、コントロールシャフト16を制御カム16aとともに、上記の第1角度位置から第2角度位置に回動させると、制御カム16aが、コントロールアームローラ14bに当接するとともに、コントロールアームローラ14bを介してコントロールアーム13を押圧することにより、コントロールアーム13は、リターン機構21の付勢力に抗して、支持部13aを中心として図1の反時計回りに回動する。これにより、ロッカアームローラ14dに対するサブカム15の当接位置(以下「サブカム当接位置」という)SPは、吸気弁4が全閉状態にあるときに、非駆動カム面15bのうちの駆動カム面15c側の部位に位置するため(図4参照)、吸気カム12aのカムノーズ(駆動カム面12cの先端)がサブカムローラ15dに当接した状態では、駆動カム面15cのうちの非駆動カム面15bと反対側の端部に位置する(図5参照)。その結果、ロッカアーム14を押圧するサブカム15の実質的な腕の長さが長くなること、すなわち、サブカムレバー比が大きくなることによって、サブカム15の押圧によるロッカアーム14の回動角度が大きくなり、ひいては、吸気リフト量が大きくなり、最大リフト量になる。
上記とは逆に、コントロールシャフト16を第2角度位置から第1角度位置に回動させると、コントロールアーム13は、リターン機構21の付勢力によって、もとの位置に戻る。この場合、サブカム当接位置SPは、吸気弁4が全閉状態にあるときに、非駆動カム面15bのうちの駆動カム面15cと反対側の部位に位置するため(図2参照)、吸気カム12aのカムノーズがサブカムローラ15dに当接した状態では、駆動カム面15cのうちの非駆動カム面15b側の部位に位置する(図3参照)。その結果、上記のサブカムレバー比が小さくなり、ひいては、吸気リフト量が小さくなり、最小リフト量になる。
以上のように、可変動弁機構11では、電動モータ17でコントロールシャフト16を回動させることにより、サブカム当接位置SPを変更し、サブカムレバー比を変更することによって、吸気カムシャフト12から吸気弁4に伝達される駆動力が変化し、その結果、吸気リフト量が無段階に変更される。
また、コントロールシャフト16には、角度位置センサ31が設けられており、この角度位置センサ31は、コントロールシャフト角度位置(コントロールシャフト16の回動角度位置)θC/Sを検出し、その検出信号をECU2に出力する(図6参照)。上述したように、コントロールシャフト角度位置θC/Sの変更により吸気リフト量が変更されるため、ECU2は、検出されたコントロールシャフト角度位置θC/Sに基づき、吸気リフト量を算出する。以下、このように算出された吸気リフト量を「検出吸気リフト量LIFTDET」という。
具体的には、図7のステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、検出吸気リフト量LIFTDETは、コントロールシャフト角度位置θC/Sに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することにより、算出される。このマップは、可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系の温度(以下「機構温度」という)が所定の基準温度TC/AB(例えば80℃)である場合におけるコントロールシャフト角度位置θC/Sと吸気リフト量の関係を実験により求め、定めたものである。なお、この検出吸気リフト量LIFTDETを算出する処理は、所定の第1制御周期(例えば200msec)で実行される。
なお、前述した排気弁5は、吸気弁4と同様に構成されており、また、排気動弁機構は、カムシャフトやロッカアームを有する一般的なタイプのものであるので、その詳細な説明については省略する。
また、エンジン3には、クランク角センサ32、油温センサ33および水温センサ34が設けられている。図6に示すように、このクランク角センサ32は、クランクシャフトの回転に伴い、パルス信号であるクランク信号CRKを出力する。ECU2は、このクランク信号CRKに基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。
上記の油温センサ33は、可変動弁機構11や、排気動弁機構、クランクシャフトなどを潤滑するためのエンジン3の潤滑油の温度(以下「エンジン油温」という)TOILを検出し、その検出信号をECU2に出力する。エンジン3の潤滑油(以下「エンジンオイル」という)は、エンジン3の運転中に、エンジン3を駆動源とするオイルポンプによって、可変動弁機構11やホルダ41などに供給される。また、水温センサ34は、前述したエンジン冷却水の温度(以下「エンジン水温」という)TWを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
さらに、ECU2には、外気温センサ35から、外気の温度(以下「外気温」という)TAを表す検出信号が、アクセル開度センサ36から、車両のアクセルペダルの操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、それぞれ出力される。また、ECU2には、エンジン3を始動するためのイグニッションスイッチ(以下「IG・SW」という)37から、そのON信号およびOFF信号がイグニッション信号IGとして出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、このROMに記憶された制御プログラムに従い、上述した各種のセンサ31〜36からの検出信号およびIG・SW37からのイグニッション信号IGに応じて、各種の処理を実行する。
具体的には、検出吸気リフト量補正処理を実行する。この検出吸気リフト量補正処理は、次の趣旨に基づくものである。すなわち、可変動弁機構11およびホルダ41の熱膨張により、可変動弁機構11における各種の構成部品の相互の位置関係がずれることによって、実際の吸気リフト量が変動する結果、前述したようにコントロールシャフト角度位置θC/Sに基づいて算出された検出吸気リフト量LIFTDETが、実際の吸気リフト量に対してずれる。このため、検出吸気リフト量補正処理は、この熱膨張による可変動弁機構11における各種の構成部品の相互の位置関係のずれに応じて、実際の吸気リフト量を精度良く算出するために、実行される。
また、検出吸気リフト量補正処理では、機構温度(可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系の温度)が算出されるとともに、算出された機構温度TC/Aに応じて、検出吸気リフト量LIFTDETが補正される。この場合、エンジン3の始動時には、この補正のためのパラメータとして、エンジン3の停止中に算出された機構温度TC/Aが用いられる。このため、検出吸気リフト量補正処理を説明する前に、図8を参照しながら、エンジン3の停止中に機構温度TC/Aを算出する処理(以下「停止中機構温度算出処理」という)について説明する。本処理は、ECU2によって、所定の第2制御周期(例えば1sec)で実行される。なお、ECU2は、停止中機構温度算出処理を実行するために、エンジン3の停止中にも電力が供給され、ON状態に保持される。
まず、図8のステップ11では、イグニッション信号IGがOFFであるか否かを判別する。この答がNOで、エンジン3の運転中には、アップカウント式の停止後タイマのタイマ値tESTOPを値0にリセットし(ステップ12)、本処理を終了する。一方、上記ステップ11の答がYESで、エンジン3の停止中には、そのときに得られている機構温度TC/Aを、その前回値TC/AZとして設定する(ステップ13)。次いで、上記ステップ12でリセットされた停止後タイマのタイマ値tESTOPが第1所定時間TIMREF1以上であるか否かを判別する(ステップ14)。
このステップ14の答がNOで、tESTOP<TIMREF1のとき、すなわち、エンジン3の停止中における停止時からの経過時間(以下「エンジン停止時間」という)が第1所定時間TIMREF1に達していないときには、検出されたエンジン水温TWから、上記ステップ13で設定された機構温度の前回値TC/AZを減算することによって、第1温度偏差DTE1を算出する(ステップ15)。次いで、このステップ15で算出された第1温度偏差DTE1と、機構温度の前回値TC/AZを用い、次式(1)によって、機構温度TC/Aを算出し(ステップ16)、本処理を終了する。
TC/A=K1・DTE1+TC/AZ ……(1)
この式(1)におけるK1は、エンジン冷却水とホルダ41との間の伝熱係数を表す所定の第1伝熱係数パラメータである。具体的には、この第1伝熱係数パラメータK1は、第1温度偏差DTE1に乗算することによってエンジン冷却水とホルダ41との間の熱移動による機構温度TC/Aの変化分を算出できるような値に、あらかじめ設定されており、例えば値0.0055である。このことから明らかなように、式(1)の右辺の第1項は、エンジン冷却水とホルダ41との間の熱移動に伴って変化した機構温度TC/Aの変化分に相当する。以上のように、エンジン3の停止中には、この変化分に、機構温度の前回値TC/AZを加算することによって、機構温度の今回値TC/Aが算出される。これは次の理由による。
すなわち、エンジン3の停止中には、前述したオイルポンプが駆動されないことによって、エンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されないことから、機構温度TC/Aが、エンジン冷却水とホルダ41との間の熱移動に伴って変化するためである。なお、エンジン3の停止直後には、上述した機構温度TC/Aの算出に、前回値TC/AZとして、エンジン3の停止直前の運転中に後述するように算出された機構温度TC/Aが用いられる。
一方、前記ステップ14の答がYESのとき、すなわち、エンジン停止時間が第1所定時間TIMREF1に達したときには、機構温度TC/Aを、検出されたエンジン水温TWに設定し(ステップ17)、本処理を終了する。これは、エンジン停止時間が長いために、機構温度TC/Aがエンジン水温TWに収束するためである。
次に、図9を参照しながら、前述した検出吸気リフト量補正処理について説明する。本処理は、前述した第1制御周期で実行される。まず、図9のステップ21では、イグニッション信号IGがONであるか否かを判別する。この答がNOで、エンジン3の停止中には、アップカウント式の始動後タイマのタイマ値tSTARTを値0にリセットし(ステップ22)、本処理を終了する。
一方、上記ステップ21の答がYESで、エンジン3の運転中には、そのときに得られている機構温度TC/Aを、前回値TC/AZとして設定する(ステップ23)。次いで、上記ステップ22でリセットされた始動後タイマのタイマ値tSTARTが第2所定時間TIMREF2(例えば5〜10sec)以上であるか否かを判別する(ステップ24)。
このステップ24の答がNOのとき、すなわち、エンジン3の始動の開始時から、第2所定時間TIMREF2が経過していないときには、エンジン3の始動後、間もないため、エンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないとみなす。そして、上記ステップ23で設定された機構温度の前回値TC/AZを、今回値TC/Aとして設定する(ステップ25)。これは、エンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときには、機構温度TC/Aが油温TOILに応じて変化しないため、機構温度TC/Aを、エンジン3の始動直前の停止中に図8の前記ステップ16または17で算出(設定)された機構温度TC/Aに保持するためである。
一方、上記ステップ24の答がYESになったとき、すなわち、エンジン3の始動の開始時から、第2所定時間TIMREF2が経過したときには、エンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されたとして、検出された油温TOILから、機構温度の前回値TC/AZを減算することによって、第2温度偏差DTE2を算出する(ステップ26)。次いで、このステップ26で算出された第2温度偏差DTE2と、機構温度の前回値TC/AZを用い、次式(2)によって、機構温度TC/Aを算出する(ステップ27)。
TC/A=K2・DTE2+TC/AZ ……(2)
この式(2)におけるK2は、エンジンオイルとホルダ41との間の伝熱係数を表す所定の第2伝熱係数パラメータである。具体的には、この第2伝熱係数パラメータK2は、第2温度偏差DTE2に乗算することによってエンジンオイルとホルダ41との間の熱移動による機構温度TC/Aの変化分を算出できるような値に、あらかじめ設定されている。このため、第2伝熱係数パラメータK2は、前述した第1伝熱係数パラメータK1と異なる値、例えば値0.003に設定されている。このことから明らかなように、式(2)の右辺の第1項は、エンジンオイルとホルダ41との間の熱移動に伴って変化した機構温度TC/Aの変化分に相当する。
以上のように、エンジン3の運転中で、かつ、エンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されているときには、上記の機構温度TC/Aの変化分に、機構温度の前回値TC/AZを加算することによって、機構温度の今回値TC/Aが算出される。これは、エンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されているときには、機構温度TC/Aが、エンジンオイルとホルダ41との間の熱移動に伴って変化するためである。
上記ステップ25または27に続くステップ28では、これらのステップ25または27で求められた機構温度TC/Aから前述した基準温度TC/ABを減算することによって、第3温度偏差DTE3を算出する。次いで、補正割合KCORを、図7のステップ1で算出された検出吸気リフト量LIFTDETに応じ、図10に示すマップを検索することによって算出する(ステップ29)。
この補正割合KCORは、上記の基準温度TC/ABを基準とした、機構温度TC/Aの単位温度(1℃)当たりの吸気リフト量の変動量に相当し、その次元は、μm(マイクロメータ)/℃である。また、補正割合KCORは、検出吸気リフト量LIFTDETを補正するための後述するリフト量補正量CORDETの算出に、係数として用いられる。上記のマップでは、補正割合KCORは、全体として正値に設定されており、検出吸気リフト量LIFTDETが大きいほど、すなわち吸気リフト量が大きいほど、より大きな値に設定されている。これは次の理由による。
すなわち、前述したように、可変動弁機構11では、吸気カムシャフト12から吸気弁4に伝達される駆動力が変更されることによって、吸気リフト量が変更される。この場合において、吸気カム12aのカムリフト量(吸気カムシャフト12の中心から吸気カム12aのカムノーズまでの距離と、非駆動カム面12bの半径との差、すなわちカムプロフィールの高さ)のうち、吸気弁4の駆動に用いられる分を「有効カムリフト量」とする。また、この有効カムリフト量に対する実際の吸気リフト量の比を「駆動力伝達率」とすると、これらのパラメータの関係は、「実際の吸気リフト量=有効カムリフト量・駆動力伝達率」で表される。また、可変動弁機構11では、吸気カムシャフト12から吸気弁4に伝達される駆動力の変更が、サブカムレバー比(ロッカアーム14を押圧するサブカム15の腕の長さ)の変更によって行われるため、この駆動力伝達率は、吸気リフト量が大きいほど、より大きくなる。
また、可変動弁機構11では、コントロールシャフト角度位置が同じで、かつ、サブカムレバー比が同じ場合でも、機構温度TC/Aが高いほど、可変動弁機構11およびホルダ41の熱膨張により、可変動弁機構11における各種の構成部品の位置関係が相互にずれることで、有効カムリフト量が減少する結果、吸気リフト量が減少することが、実験により明らかになった。
この場合、上述したように、「実際の吸気リフト量=有効カムリフト量・駆動力伝達率」が成立することと、吸気リフト量が大きいほど、駆動力伝達率がより大きくなることから、上記の熱膨張に起因する有効カムリフト量の減少による吸気リフト量の減少量は、機構温度TC/Aが同じ場合でも、吸気リフト量が大きいほど、より大きくなる。このため、吸気リフト量が大きいほど、上記の補正割合KCORをより大きな値に設定することにより、リフト量補正量CORDETをより大きな値に設定することによって、検出吸気リフト量LIFTDETを適切に補正するためである。
前記ステップ29に続くステップ30では、ステップ28で算出された第3温度偏差DTE3に、ステップ29で算出された補正割合KCORを乗算することによって、リフト量補正量CORDETを算出する。前述したように、補正割合KCORが基準温度TC/ABを基準とした機構温度TC/Aの単位温度当たりの吸気リフト量の変動量に相当することから、以上のようにして算出されたリフト量補正量CORDETは、基準温度TC/ABを基準とした、可変動弁機構11およびホルダ41の熱膨張による吸気リフト量の変動量(以下「吸気リフト量変動量」という)を表す。
次いで、ステップ30で算出されたリフト量補正量CORDETを検出吸気リフト量LIFTDETから減算した値を、検出吸気リフト量LIFTDETとして設定する(ステップ31)ことによって、検出吸気リフト量LIFTDETを補正し、本処理を終了する。
以上のように補正された検出吸気リフト量LIFTDETは、エンジン3の制御に次のように用いられる。すなわち、補正された検出吸気リフト量LIFTDETが目標吸気リフト量LIFTCMDになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズム、例えばPID制御アルゴリズムによって、前述した電動モータ17への制御信号を算出する。これにより、検出吸気リフト量LIFTDETが、目標吸気リフト量LIFTCMDになるようにフィードバック制御される結果、エンジン3に吸入される吸入空気量が制御される。
この目標吸気リフト量LIFTCMDは、図11のステップ41において、算出されたエンジン回転数NEと、検出されたアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。このマップでは、エンジン回転数NEが高いほど、また、アクセル開度APが大きいほど、エンジン3のより大きな出力を得るべく、吸入空気量をより大きな値に制御するために、目標吸気リフト量LIFTCMDが、より大きな値に設定されている。なお、図11に示す目標吸気リフト量算出処理は、上述した検出吸気リフト量補正処理と同様、第1制御周期で実行される。
なお、本実施形態は、特許請求の範囲に記載された請求項2、4および5〜7に係る発明(以下、総称して「第1発明」という)に対応するものであり、本実施形態における各種の要素と、この第1発明の各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、本実施形態におけるECU2が、第1発明におけるリフト量算出手段、機構温度推定手段、変化度合パラメータ算出手段、リフト量補正手段、第1乖離度合パラメータ算出手段、運転状態判定手段、第2乖離度合パラメータ算出手段、第1伝熱係数パラメータ記憶手段、第3乖離度合パラメータ算出手段、および第2伝熱係数パラメータ記憶手段に相当する。
また、本実施形態におけるホルダ41および吸気弁4が、第1発明における支持部材および機関弁に、それぞれ相当するとともに、本実施形態における角度位置センサ31、油温センサ33、水温センサ34およびIG・SW37が、第1発明における動作状態検出手段、油温検出手段、冷却水温検出手段および運転状態判定手段に、それぞれ相当する。さらに、本実施形態における検出吸気リフト量LIFTDETおよびコントロールシャフト角度位置θC/Sが、第1発明における機関弁のリフト量、および検出された可変動弁機構の動作状態に、それぞれ相当する。
また、本実施形態におけるリフト量補正量CORDET、第3温度偏差DTE3およびエンジン水温TWが、第1発明における変化度合パラメータ、第1乖離度合パラメータおよび冷却水温に、それぞれ相当し、本実施形態における第1温度偏差DTE1および第2温度偏差DTE2が、第1発明における第2乖離度合パラメータおよび第3乖離度合パラメータに、それぞれ相当する。
以上のように、本実施形態によれば、検出されたコントロールシャフト角度位置θC/Sに基づいて、検出吸気リフト量LIFTDETが算出される。また、エンジン3の運転中、検出された油温TOILから、機構温度の前回値TC/AZを減算することによって、第2温度偏差DTE2が算出されるとともに、機構温度TC/Aが、この第2温度偏差DTE2、エンジンオイルとホルダ41との間の伝熱係数を表す第2伝熱係数パラメータK2、および、機構温度の前回値TC/AZに応じて、算出される。したがって、エンジン3の運転中、機構温度TC/Aを適切に算出することができる。
さらに、上記のように算出された機構温度TC/Aに応じて、吸気リフト量変動量(可変動弁機構11およびホルダ41の熱膨張による吸気リフト量の変動量)を表すリフト量補正量CORDETを算出するので、リフト量補正量CORDETを、吸気リフト量変動量を良好に表すように適切に算出することができる。また、そのように算出されたリフト量補正量CORDETに基づいて、検出吸気リフト量LIFTDETを補正するので、検出吸気リフト量LIFTDETを精度良く算出することができる。さらに、補正された検出吸気リフト量LIFTDETを、目標吸気リフト量LIFTCMDになるようにフィードバック制御されることによって、エンジン3に吸入される吸入空気量を制御するので、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
また、機構温度TC/Aに加え、検出吸気リフト量LIFTDETにさらに応じて、リフト量補正量CORDETが算出される。これにより、前述したようにサブカムレバー比の変更によって吸気リフト量を変更する可変動弁機構11を備えたエンジン3において、リフト量補正量CORDETを、吸気リフト量変動量を良好に表すように適切に算出することができ、ひいては、上述した効果を有効に得ることができる。
さらに、機構温度TC/Aと基準温度TC/ABとの偏差が第3温度偏差DTE3として算出されるとともに、算出された第3温度偏差DTE3に応じて、リフト量補正量CORDETが算出される。これにより、リフト量補正量CORDETを、基準温度TC/ABを基準とした吸気リフト量変動量を良好に表すように適切に算出することができ、ひいては、可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系の温度が基準温度TC/ABにある状態を基準として、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
また、エンジン3の停止中に、エンジン水温TWから機構温度の前回値TC/AZを減算することによって第1温度偏差DTE1が算出されるとともに、機構温度TC/Aが、この第1温度偏差DTE1、エンジン冷却水とホルダ41との間の伝熱係数を表す、第2伝熱係数パラメータK2と値が異なる第1伝熱係数パラメータK1、および、機構温度の前回値TC/AZに応じて、算出される。したがって、エンジン3の停止中に、機構温度TC/Aを適切に算出することができる。また、エンジン3の始動時で、かつ、まだエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときに、その直前の停止中に上記のように算出された機構温度TC/Aを、機構温度の今回値TC/Aとして用いるので、この機構温度TC/Aに応じて、リフト量補正量CORDETを適切に算出でき、ひいては、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
なお、第1実施形態では、リフト量補正量CORDETを、吸気リフト量変動量(可変動弁機構11およびホルダ41の双方の熱膨張による吸気リフト量の変動量)を表すように算出しているが、可変動弁機構11およびホルダ41の少なくとも一方の熱膨張による吸気リフト量の変化度合、すなわち、この少なくとも一方の温度に応じて変化する吸気リフト量の変化度合を表す他の適当なパラメータを表すように算出してもよい。例えば、リフト量補正量CORDETを、可変動弁機構11およびホルダ41の一方の温度に応じて変化する吸気リフト量の変動量を表すように算出してもよい。あるいは、リフト量補正量CORDETを、機構温度TC/Aが基準温度TC/ABであるときの実際の吸気リフト量に対する吸気リフト量変動量の比を表すように算出してもよい。この場合において、リフト量補正量CORDETを、実際の吸気リフト量に対する、可変動弁機構11およびホルダ41の一方の温度に応じて変化する吸気リフト量の変動量の比を表すように算出してもよい。
また、第1実施形態では、リフト量補正量CORDETを算出するための補正割合KCORを、検出吸気リフト量LIFTDETに応じて算出しているが、目標吸気リフト量LIFTCMDに応じて算出してもよい。その場合には、ECU2が、請求項4に係る発明における目標リフト量算出手段に相当する。
さらに、第1実施形態では、リフト量補正量CORDETを、機構温度TC/Aと基準温度TC/ABとの偏差である第3温度偏差DTE3に応じて算出しているが、基準温度TC/ABに対する機構温度TC/Aの乖離度合を表す他の適当なパラメータ、例えば、前者TC/ABに対する後者TC/Aの比に応じて算出してもよい。あるいは、リフト量補正量CORDETを、第3温度偏差DTE3を用いずに、機構温度TC/Aをそのまま用いて算出してもよい。
また、第1実施形態では、補正された検出吸気リフト量LIFTDETを、吸入空気量の制御に用いているが、エンジン3における燃料噴射量や、噴射時期、点火時期などの制御に用いてもよい。
次に、本発明の第2実施形態による制御装置について説明する。この第2実施形態は、第1実施形態と比較して、検出吸気リフト量LIFTDETではなく、図11のステップ41で算出された目標吸気リフト量LIFTCMDを補正することと、補正された目標吸気リフト量LIFTCMDを吸入空気量の制御に用いることが、主に異なっている。図12は、目標吸気リフト量LIFTCMDを補正する処理を示しており、本処理は、前述した図9の検出吸気リフト量補正処理と同様、第1制御周期で実行される。また、図12において、この検出吸気リフト量補正処理と同じ実行内容の部分については、同じステップ番号を付している。図12に示すように、本処理は、検出吸気リフト量補正処理と比較して、ステップ29〜31に代えて、ステップ51〜53を実行する点のみが異なっている。このため、以下、これらのステップ51〜53についてのみ説明する。
このステップ51では、前述した補正割合KCORを、図11のステップ41で算出された目標吸気リフト量LIFTCMDに応じ、図13に示すマップを検索することによって算出する。このマップでは、補正割合KCORは、前記ステップ29で述べたのと同じ理由から、目標吸気リフト量LIFTCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。
続くステップ52では、前記ステップ28で算出された第3温度偏差DTE3に、上記ステップ51で算出された補正割合KCORを乗算することによって、目標リフト量補正量CORCMDを算出する。次いで、ステップ53において、このステップ52で算出された目標リフト量補正量CORCMDを目標吸気リフト量LIFTCMDに加算した値を、目標吸気リフト量LIFTCMDとして設定することによって、目標吸気リフト量LIFTCMDを補正し、本処理を終了する。
このように目標リフト量補正量CORCMDを加算することによって目標吸気リフト量LIFTCMDを補正するのは、次の理由による。すなわち、目標リフト量補正量CORCMDは、上述した算出手法から、第1実施形態のリフト量補正量CORDETと同様、基準温度TC/ABを基準とした、可変動弁機構11およびホルダ41の熱膨張による吸気リフト量の変動量(減少量)を表す。このため、この目標リフト量補正量CORCMD分、大きな値に、目標吸気リフト量LIFTCMDを補正するとともに、補正された目標吸気リフト量LIFTCMDになるように、検出吸気リフト量LIFTDETをフィードバック制御することによって、検出吸気リフト量LIFTDETよりも目標リフト量補正量CORCMD分、小さな実際の吸気リフト量を、補正前の目標吸気リフト量LIFTCMDになるように、フィードバック制御するためである。
なお、本実施形態は、特許請求の範囲に記載された請求項1、3および5〜7に係る発明(以下、総称して「第2発明」という)に対応するものであり、本実施形態における各種の要素と、この第2発明の各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、本実施形態におけるECU2が、第2発明における目標リフト量算出手段、機構温度推定手段、変化度合パラメータ算出手段、目標リフト量補正手段、第1乖離度合パラメータ算出手段、運転状態判定手段、第2乖離度合パラメータ算出手段、第1伝熱係数パラメータ記憶手段、第3乖離度合パラメータ算出手段、および第2伝熱係数パラメータ記憶手段に相当する。
また、本実施形態におけるホルダ41および吸気弁4が、第2発明における支持部材および機関弁に、それぞれ相当するとともに、本実施形態における油温センサ33、水温センサ34およびIG・SW37が、第2発明における油温検出手段、冷却水温検出手段および運転状態判定手段に、それぞれ相当する。さらに、本実施形態における目標吸気リフト量LIFTCMDが、第2発明における目標リフト量に相当する。
また、本実施形態における目標リフト量補正量CORCMD、第3温度偏差DTE3およびエンジン水温TWが、第2発明における変化度合パラメータ、第1乖離度合パラメータおよび冷却水温に、それぞれ相当し、本実施形態における第1温度偏差DTE1および第2温度偏差DTE2が、第2発明における第2乖離度合パラメータおよび第3乖離度合パラメータに、それぞれ相当する。
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様、エンジン3の運転中、検出された油温TOILから、機構温度の前回値TC/AZを減算することによって、第2温度偏差DTE2が算出されるとともに、機構温度TC/Aが、この第2温度偏差DTE2と、エンジンオイルとホルダ41との間の伝熱係数を表す第2伝熱係数パラメータK2と、機構温度の前回値TC/AZに応じて、算出される。したがって、エンジン3の運転中、機構温度TC/Aを適切に算出することができる。また、そのように算出された機構温度TC/Aに応じて、吸気リフト量変動量を表す目標リフト量補正量CORCMDを算出するので、目標リフト量補正量CORCMDを、吸気リフト量変動量を良好に表すように適切に算出することができる。
さらに、上記のように算出された目標リフト量補正量CORCMDに基づいて、算出された目標吸気リフト量LIFTCMDが補正されるとともに、補正された目標吸気リフト量LIFTCMDに、検出吸気リフト量LIFTDETがなるように、フィードバック制御されることによって、吸入空気量が制御される。したがって、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
また、機構温度TC/Aに加え、目標吸気リフト量LIFTCMDにさらに応じて、目標リフト量補正量CORCMDが算出される。これにより、前述したようにサブカムレバー比の変更によって吸気リフト量を変更する可変動弁機構11を備えたエンジン3において、目標リフト量補正量CORCMDを、吸気リフト量変動量を良好に表すように適切に算出することができ、ひいては、上述した効果を有効に得ることができる。
この場合、目標リフト量補正量CORCMDの算出に補正前の目標吸気リフト量LIFTCMDを用いることによって、エンジン3の過渡運転時で目標吸気リフト量LIFTCMDが大きく変化するようなときに、目標リフト量補正量CORCMDを、その時点での実際の吸気リフト量ではなく、その後の実際の吸気リフト量が目標吸気リフト量LIFTCMDに制御された状態における吸気リフト量変動量を良好に表すように、適切に算出することができる。
さらに、機構温度TC/Aと基準温度TC/ABとの偏差が第3温度偏差DTE3として算出されるとともに、算出された第3温度偏差DTE3に応じて、目標リフト量補正量CORCMDが算出される。これにより、目標リフト量補正量CORCMDを、基準温度TC/ABを基準とした吸気リフト量変動量を良好に表すように適切に算出することができ、ひいては、可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系の温度が基準温度TC/ABにある状態を基準として、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
また、第1実施形態と同様、エンジン3の停止中に、エンジン水温TWから機構温度の前回値TC/AZを減算することによって第1温度偏差DTE1が算出されるとともに、機構温度TC/Aが、この第1温度偏差DTE1、エンジン冷却水とホルダ41との間の伝熱係数を表す、第2伝熱係数パラメータK2と値が異なる第1伝熱係数パラメータK1、および、機構温度の前回値TC/AZに応じて、算出される。したがって、エンジン3の停止中に、機構温度TC/Aを適切に算出することができる。また、エンジン3の始動時で、かつ、まだエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときに、その直前の停止中に上記のように算出された機構温度TC/Aを、機構温度の今回値TC/Aとして用いるので、この機構温度TC/Aに応じて、目標リフト量補正量CORCMDを適切に算出でき、ひいては、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
なお、第2実施形態では、目標リフト量補正量CORCMDを、吸気リフト量変動量(可変動弁機構11およびホルダ41の双方の熱膨張による吸気リフト量の変動量)を表すように算出しているが、可変動弁機構11およびホルダ41の少なくとも一方の熱膨張による吸気リフト量の変化度合、すなわち、この少なくとも一方の温度に応じて変化する吸気リフト量の変化度合を表す他の適当なパラメータを表すように算出してもよい。例えば、目標リフト量補正量CORCMDを、可変動弁機構11およびホルダ41の一方の温度に応じて変化する吸気リフト量の変動量を表すように算出してもよい。あるいは、目標リフト量補正量CORCMDを、機構温度TC/Aが基準温度TC/ABであるときの実際の吸気リフト量に対する吸気リフト量変動量の比を表すように算出してもよい。この場合において、目標リフト量補正量CORCMDを、実際の吸気リフト量に対する、可変動弁機構11およびホルダ41の一方の温度に応じて変化する吸気リフト量の変動量の比を表すように算出してもよい。
また、第2実施形態では、目標リフト量補正量CORCMDを算出するための補正割合KCORを、目標吸気リフト量LIFTCMDに応じて算出しているが、検出吸気リフト量LIFTDETに応じて算出してもよい。その場合には、ECU2が、請求項3に係る発明におけるリフト量取得手段に相当する。さらに、この場合、吸気リフト量としての検出吸気リフト量LIFTDETを、前述したステップ1による演算ではなく、センサによる検出によって求めてもよい。このセンサとして、例えば、吸気弁4の付近に設けられた近接センサを用いてもよい。
さらに、第2実施形態では、目標リフト量補正量CORCMDを、機構温度TC/Aと基準温度TC/ABとの偏差である第3温度偏差DTE3に応じて算出しているが、基準温度TC/ABに対する機構温度TC/Aの乖離度合を表す他の適当なパラメータ、例えば、前者TC/ABに対する後者TC/Aの比に応じて算出してもよい。あるいは、目標リフト量補正量CORCMDを、第3温度偏差DTE3を用いずに、機構温度TC/Aをそのまま用いて算出してもよい。
また、第2実施形態では、補正された目標吸気リフト量LIFTCMDを、吸入空気量の制御に用いているが、エンジン3における燃料噴射量や、噴射時期、点火時期などの制御に用いてもよい。
さらに、第1および第2実施形態では、エンジン3の停止中、機構温度TC/Aを、エンジン水温TWと機構温度の前回値TC/AZとの偏差である第1温度偏差DTE1に応じて算出しているが、エンジン水温TWと機構温度の前回値TC/AZとの乖離度合を表す他の適当なパラメータ、例えば、前者TWと後者TC/AZとの比に応じて算出してもよい。
また、第1および第2実施形態では、第1伝熱係数パラメータK1は、第1温度偏差DTE1に乗算することによって、エンジン冷却水とホルダ41との間の熱移動による機構温度TC/Aの変化分を算出できるような値に、設定されているが、エンジン冷却水と可変動弁機構11との間、または、エンジン冷却水と可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系との間の熱移動による機構温度TC/Aの変化分を算出できるような値に、設定してもよい。あるいは、エンジン冷却水と可変動弁機構11およびホルダ41の少なくとも一方との間の伝熱係数そのもの(次元=W/m2 ・K)に、設定してもよい。この場合、前記式(1)におけるK1・DTE1は、エンジン冷却水と可変動弁機構11およびホルダ41の少なくとも一方との間での熱の移動量に相当するので、この熱の移動量を機構温度TC/Aの変化分に換算する係数がさらに乗算される。
次に、本発明の第3実施形態による制御装置について説明する。この第3実施形態は、第1および第2実施形態と比較して、前述した図8に示す停止中機構温度算出処理が実行されず、エンジン3の停止中における機構温度TC/Aの算出手法のみが異なっているので、以下、この点を中心に説明する。まず、第3実施形態における機構温度TC/Aの算出手法の技術的観点について説明する。図14は、エンジン3の停止中における各種の温度の推移を示している。同図において、TC/AACTは、センサなどで検出された可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系の実際の温度(以下「実機構温度」という)を、TCHは、シリンダヘッド3bの温度(以下「シリンダヘッド温度」という)を、それぞれ表している。
図14に示すように、エンジン3の停止時(時点t0)、それまでのエンジン3の運転中にエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていたことと、シリンダヘッド3bがエンジン冷却水によって冷却されていたことから、実機構温度TC/AACTは油温TOILに、シリンダヘッド温度TCHはエンジン水温TWに、それぞれ応じた値になり、実機構温度TC/AACTは、シリンダヘッド温度TCHよりも高くなる。
その後、時間tが経過するのに伴い、可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系とシリンダヘッド3bとの間の熱移動に伴って、実機構温度TC/AACTが大きく低下する一方、シリンダヘッド温度TCHが大きく上昇し、その結果、両者TC/AACTおよびTCHは互いにほぼ等しくなる(時点t1)。それに伴い、エンジン水温TWは若干上昇する。
そして、さらなる時間tの経過に伴い、エンジン水温TWは緩やかに低下し、実機構温度TC/AACTは、可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系と外気との間の熱移動に伴って、緩やかに低下し、シリンダヘッド温度TCHは、シリンダヘッド3bとエンジン冷却水との間の熱移動に伴って、実機構温度TC/AACTよりも低い状態で、緩やかに低下する。
第3実施形態では、以上のような各種の温度の推移に着目し、機構温度TC/Aを次のように算出する。すなわち、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなるときの温度を「サチレート温度TSATI」とすると、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなる直前までの間(t0≦t<t1)は、エンジン3の停止時の機構温度TC/A、サチレート温度TSATI、および、停止時からの経過時間に応じて、機構温度TC/Aが算出される。また、この停止時の機構温度TC/Aは、エンジン3の停止直前の運転中に前記ステップ27の実行により油温TOILに応じて算出された値に設定される。一方、機構温度TC/Aは、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなった以降(t≧t1)、両者TC/AACT,TCHが互いにほぼ等しくなった時点からの経過時間、サチレート温度TSATI、および外気温TAに応じて、算出される。
図15および図16は、第3実施形態による、エンジン3の停止中に機構温度TC/Aを算出する処理を示している。本処理は、図8に示す停止中機構温度算出処理と同様、第2制御周期で実行される。まず、図15のステップ61では、イグニッション信号IGがOFFであるか否かを判別する。この答がNOで、エンジン3の運転中には、アップカウント式の停止後タイマのタイマ値tESTOPを値0にリセットする(ステップ62)とともに、後述するサチレートフラグF_SATIを「0」にリセットし(図16のステップ63)、本処理を終了する。一方、上記ステップ61の答がYESで、エンジン3の停止中には、後述するサチレートフラグF_SATIが「1」であるか否かを判別する(ステップ64)。
このステップ64の答がNOのときには、イグニッション信号IGがONからOFFに切り換わったか否かを判別する(ステップ65)。この答がYESのとき、すなわち、エンジン3の停止直後には、そのときに得られている機構温度TC/Aを、すなわち、エンジン3の停止直前の運転中に前記ステップ27の実行により油温TOILに応じて算出された機構温度TC/Aを、停止時機構温度TC/AIGOFFとして設定する(ステップ69)。この停止時機構温度TC/AIGOFFは、エンジン3の停止時における機構温度TC/Aである。
次に、エンジン水温TWに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、シリンダヘッド温度TCH(シリンダヘッド3bの温度)を算出する(ステップ70)とともに、算出されたシリンダヘッド温度TCHを、停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFとして設定する(ステップ71)。この停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFは、エンジン3の停止時におけるシリンダヘッド温度TCHである。
次いで、ステップ69および71でそれぞれ設定された停止時機構温度TC/AIGOFFおよび停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFを用い、次式(3)によって、サチレート温度TSATIを算出する(ステップ72)。
TSATI=(TC/AIGOFF・CC/A+TCHIGOFF・CHEAD)
/(CC/A+CHEAD) ……(3)
ここで、CC/AおよびCHEADはそれぞれ、実験により設定された所定の第1および第2の重み係数である。この式(3)から明らかなように、サチレート温度TSATIは、停止時機構温度TC/AIGOFFおよび停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFの加重平均によって算出される。
次に、ステップ69で設定された停止時機構温度TC/AIGOFFから、ステップ72で算出されたサチレート温度TSATIを減算することによって、第4温度偏差DTE4を算出する(ステップ73)。次いで、このステップ73で算出された第4温度偏差DTE4に応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、サチレート時間TIMSATIを算出し(ステップ74)、図16のステップ75に進む。このサチレート時間TIMSATIは、エンジン3の停止時から、実機構温度TC/AACTとサチレート温度TSATIとの偏差が非常に小さな所定値(例えば値0.1)以下になるまでの時間、すなわち、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなるまでの時間に相当し、上記のマップでは、第4温度偏差DTE4が大きいほど、より長い時間に設定されている。
一方、前記ステップ65の答がNOで、エンジン3の停止中で、かつ、停止直後でないときには、前記ステップ69〜74をスキップし、ステップ75に進む。このステップ75では、停止後タイマのタイマ値tESTOPが、ステップ74で算出されたサチレート時間TIMSATI以上であるか否かを判別する。
ステップ75の答がNOのとき、すなわち、エンジン停止時間(エンジン3の停止中における停止時からの経過時間)がサチレート時間TIMSATIに達していないときには、まだ実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなってないとして、停止時機構温度TC/AIGOFF、サチレート温度TSATI、およびタイマ値tESTOPを用い、次式(4)によって、機構温度TC/Aを算出し(ステップ76)、本処理を終了する。
TC/A=(TC/AIGOFF−TSATI)exp(−K1・tESTOP)
+TSATI ……(4)
ここで、K1は、前述した第1伝熱係数パラメータである。この式(4)は、図14を用いて説明した実機構温度TC/AACTと、停止時機構温度TC/AIGOFF、サチレート温度TSATIおよびタイマ値tESTOPとの関係をモデル化したモデル式である。
一方、ステップ75の答がYESになり、tESTOP≧TIMSATIになったとき、すなわち、エンジン停止時間がサチレート時間TIMSATIに達したときには、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなったとして、そのことを表すために、サチレートフラグF_SATIを「1」にセットし(ステップ77)、ステップ78に進む。このステップ77の実行によって、図15の前記ステップ64の答がYESになり、その場合には、ステップ78に進む。
このステップ78では、停止後タイマのタイマ値tESTOPからサチレート時間TIMSATIを減算することによって、サチレート後経過時間TASを算出する。このサチレート後経過時間TASは、その算出手法から明らかなように、エンジン3の停止中における実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなった時点からの経過時間に相当する。次いで、ステップ78で算出されたサチレート後経過時間TAS、外気温TAおよびサチレート温度TSATIを用い、次式(5)によって、機構温度TC/Aを算出し(ステップ79)、本処理を終了する。
TC/A=(TSATI−TA)exp(−K1・TAS)+TA ……(5)
この式(5)は、図14を用いて説明した実機構温度TC/AACTと、サチレート温度TSATI、外気温TAおよびタイマ値tESTOPとの関係をモデル化したモデル式である。
図14に示すように、以上のように算出された機構温度TC/Aは、実機構温度TC/AACTとほぼ等しくなっており、本処理によって機構温度TC/Aを精度良く算出できることが分かる。
なお、以上のようにエンジン3の停止中に算出された機構温度TC/Aは、その直後のエンジン3の始動時で、かつ、まだエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときに、前記ステップ24および25の実行によって、機構温度の今回値TC/Aとして用いられる。また、本実施形態によるエンジン3の停止中の機構温度TC/Aの算出手法は、第1実施形態のように検出吸気リフト量LIFTDETを補正する場合、および、第2実施形態のように目標吸気リフト量LIFTCMDを補正する場合のいずれにも、適用可能である。
以上のように、本実施形態によれば、エンジン3の停止直前の運転中に油温TOILに応じて算出された機構温度TC/Aが、エンジン3の停止時における機構温度TC/Aである停止時機構温度TC/AIGOFFとして設定されるとともに、エンジン水温TWに基づき、エンジン3の停止時におけるシリンダヘッド温度TCHが、停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFとして算出される。また、停止時機構温度TC/AIGOFFおよび停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFに応じて、エンジン3の停止中に実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなるときの温度が、サチレート温度TSATIとして算出される。以上により、停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFおよびサチレート温度TSATIを、適切に算出することができる。
さらに、停止時機構温度TC/AIGOFFおよびサチレート温度TSATIに応じて、エンジン3の停止時から、機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなるまでに要する時間を、サチレート時間TIMSATIとして算出するので、このサチレート時間TIMSATIを適切に算出することができる。また、エンジン3の停止中、エンジン停止時間がサチレート時間TIMSATIに達する直前まで、すなわち、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなる直前まで、図14を用いて説明したように変化する実機構温度TC/AACTを機構温度TC/Aとして算出するためのパラメータに、上記のように算出された停止時機構温度TC/AIGOFFおよびサチレート温度TSATIと、エンジン停止時間を表すタイマ値tESTOPを用いるので、機構温度TC/Aを適切に算出することができる。
また、エンジン停止時間がサチレート時間TIMSATIに達する直前までにエンジン3が始動された場合、当該始動時で、かつ、まだエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときに、機構温度TC/Aとして、この始動の直前の停止中に上記のように算出された機構温度TC/Aが用いられるので、この機構温度TC/Aに応じて、リフト量補正量CORDET(または目標リフト量補正量CORCMD)を適切に算出でき、ひいては、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
さらに、エンジン停止時間がサチレート時間TIMSATIに達した以降に、すなわち、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなった以降に、図14を用いて説明したように変化する実機構温度TC/AACTを機構温度TC/Aとして算出するためのパラメータに、サチレート温度TSATI、外気温TA、およびサチレート時間TIMSATIの経過時からの経過時間を表すサチレート後経過時間TASを用いるので、機構温度TC/Aを適切に算出することができる。
また、エンジン停止時間がサチレート時間TIMSATIに達した以降にエンジン3が始動された場合、当該始動時で、かつ、まだエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときに、機構温度TC/Aとして、この始動の直前の停止中に上記のように算出された機構温度TC/Aが用いられるので、この機構温度TC/Aに応じて、リフト量補正量CORDET(または目標リフト量補正量CORCMD)を適切に算出でき、ひいては、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
なお、第3実施形態では、サチレート時間TIMSATIを、第4温度偏差DTE4に応じて、すなわち、停止時機構温度TC/AIGOFFとサチレート温度TSATIとの偏差に応じて、算出しているが、前者TC/AIGOFFと後者TSATIとの比に応じて算出してもよい。
次に、本発明の第4実施形態による制御装置について説明する。この第4実施形態は、エンジン3の停止中における機構温度TC/Aを、上述した第3実施形態と同様にして算出するものであり、第3実施形態と比較して、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなったか否かを判定する手法が、主に異なっている。図17および図18は、第4実施形態による、エンジン3の停止中に機構温度TC/Aを算出する処理を示している。同図において、図15および図16と同じ実行内容の部分については、同じステップ番号を付している。以下、図17および図18の処理について、第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
図18の前記ステップ63に続くステップ80では、設定済みフラグF_DONEを「0」にリセットし、本処理を終了する。また、本処理では、図17の前記ステップ65の答がYESのときには、前記ステップ69を実行せずに、前記ステップ70を実行する。さらに、ステップ70の実行によってシリンダヘッド温度TCHを算出した後には、前記ステップ71を実行せずに、ステップ81を実行することによってサチレート温度TSATIを算出するとともに、図18のステップ82を実行する。
このステップ81では、図15の前記ステップ72と異なり、サチレート温度TSATIは、そのときに得られている機構温度TC/A、すなわち、エンジン3の停止直前の運転中に前記ステップ27の実行により油温TOILに応じて算出された機構温度TC/Aと、エンジン3の停止直後にステップ70で算出されたシリンダヘッド温度TCHを用い、次式(6)によって算出される。
TSATI=(TC/A・CC/A+TCH・CHEAD)
/(CC/A+CHEAD) ……(6)
また、前記ステップ65の答がNOで、エンジン3の停止中で、かつ、停止直後でないときには、前記ステップ70および81をスキップし、図18のステップ82を実行する。
このステップ82では、そのときに得られている機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しいか否かを判別する。この判別では、具体的には、機構温度TC/Aとシリンダヘッド温度TCHとの偏差が、前述したサチレート時間TIMSATIの設定に用いられる所定値以下であるときに、機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しいとみなす。このステップ82の答がNOのときには、まだ実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなっていないとして、アップカウント式のサチレートタイマのタイマ値tASを値0にリセットする(ステップ83)とともに、設定済みフラグF_DONEが「1」であるか否かを判別する(ステップ84)。
このステップ84の答がNOのとき、すなわち、エンジン3の停止直後であり、停止時機構温度TC/AIGOFFおよび停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFの設定が完了していないときには、そのときに得られている機構温度TC/Aを、すなわち、エンジン3の停止直前の運転中に算出された構温度TC/Aを、停止時機構温度TC/AIGOFFとして設定する(ステップ85)。次いで、そのときに得られているシリンダヘッド温度TCHを、すなわち、エンジン3の停止直後にステップ70で算出されたシリンダヘッド温度TCHを、停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFとして設定する(ステップ86)。次に、停止時機構温度TC/AIGOFFおよび停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFの設定が完了したとして、そのことを表すために、設定済みフラグF_DONEを「1」にセットし(ステップ87)、前記ステップ76に進み、機構温度TC/Aを前述したように算出する。
このステップ87の実行によって、上記ステップ84の答がYESになり、その場合には、ステップ85〜87をスキップし、ステップ76に進む。ステップ76に続くステップ88では、停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFF、サチレート温度TSATI、およびタイマ値tESTOPを用い、次式(7)によって、機構温度TC/Aを算出し、本処理を終了する。
TCH=(TCHIGOFF−TSATI)exp(−K1・tESTOP)
+TSATI ……(7)
一方、上記ステップ82の答がYESになり、機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなったときには、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなったとして、前記ステップ77を実行するとともに、ステップ89を実行し、本処理を終了する。このステップ77の実行により、図17の前記ステップ64がYESになったときには、ステップ89を実行し、本処理を終了する。
このステップ89では、機構温度TC/Aが算出され、この場合、図16の前記ステップ79と異なり、サチレート後経過時間TASに代えて、前記ステップ83でリセットされたサチレートタイマのタイマ値tASが用いられる。このタイマ値tASは、ステップ82の答がYESになった直後に、アップアカウントが開始されることから明らかなように、前述したサチレート後経過時間TASと同様、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなった時点からの経過時間に相当する。具体的には、機構温度TC/Aは次式(8)によって算出される。
TC/A=(TSATI−TA)exp(−K1・tAS)+TA ……(8)
なお、第3実施形態と同様、以上のようにエンジン3の停止中に算出された機構温度TC/Aは、その直後のエンジン3の始動時で、かつ、まだエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときに、前記ステップ24および25の実行によって、機構温度の今回値TC/Aとして用いられる。また、本実施形態によるエンジン3の停止中の機構温度TC/Aの算出手法は、第1実施形態のように検出吸気リフト量LIFTDETを補正する場合、および、第2実施形態のように目標吸気リフト量LIFTCMDを補正する場合のいずれにも、適用可能である。
以上のように、本実施形態によれば、第3実施形態と同様、エンジン3の停止直前の運転中に油温TOILに応じて算出された機構温度TC/Aが、エンジン3の停止時における機構温度TC/Aとして用いられるとともに、エンジン3の停止時におけるシリンダヘッド温度TCHが、エンジン水温TWに基づいて算出される。また、これらのエンジン3の停止時における機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHに応じて、エンジン3の停止中に実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなるときの温度が、サチレート温度TSATIとして算出される。以上により、サチレート温度TSATIを、適切に算出することができる。
また、エンジン3の停止直前の運転中に油温TOILに応じて算出された機構温度TC/Aが、エンジン3の停止時における機構温度TC/Aである停止時機構温度TC/AIGOFFとして設定される。これにより、停止時機構温度TC/AIGOFFを適切に設定することができる。さらに、エンジン3の停止中、機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなる直前まで、図14を用いて説明したように変化する実機構温度TC/AACTを機構温度TC/Aとして算出するためのパラメータに、上記のように求められた停止時機構温度TC/AIGOFFおよびサチレート温度TSATIと、エンジン停止時間を表すタイマ値tESTOPを用いるので、機構温度TC/Aを適切に算出することができる。
また、エンジン3の停止中、機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなる直前までにエンジン3が始動された場合、当該始動時で、かつ、まだエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときに、機構温度TC/Aとして、この始動の直前の停止中に上記のように適切に算出された機構温度TC/Aが用いられる。したがって、この機構温度TC/Aに応じて、リフト量補正量CORDET(または目標リフト量補正量CORCMD)を適切に算出でき、ひいては、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
さらに、エンジン3の停止中、機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなった以降に、図14を用いて説明したように変化する実機構温度TC/AACTを機構温度TC/Aとして算出するためのパラメータに、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなった時点からの経過時間を表すタイマ値tAS、サチレート温度TSATIおよび外気温TAを用いるので、機構温度TC/Aを適切に算出することができる。
また、エンジン3の停止中、機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなった以降に、エンジン3が始動された場合、当該始動時で、かつ、まだエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときに、機構温度TC/Aとして、この始動の直前の停止中に上記のように算出された機構温度TC/Aが用いられる。したがって、この機構温度TC/Aに応じて、リフト量補正量CORDET(または目標リフト量補正量CORCMD)を適切に算出でき、ひいては、エンジン3を吸気リフト量変動量に応じて適切に制御することができる。
なお、第4実施形態では、エンジン3の停止中、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなる直前まで、停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFF、サチレート温度TSATIおよびタイマ値tESTOPに応じ、前述したモデル式(7)に従って、シリンダヘッド温度TCHを算出しているが、その算出手法はこれに限定されないことはもちろんである。例えば、シリンダヘッド温度TCHを次のように算出してもよい。
すなわち、図14を用いて説明したように、実際のシリンダヘッド3bの温度が上記の3つのパラメータTCHIGOFF,TSATI,tESTOPに応じて変化することから、これらのパラメータTCHIGOFF,TSATI,tESTOPに応じ、他の算出式に従って、あるいは、マップ検索などによって、シリンダヘッド温度TCHを算出してもよい。また、式(7)において、停止時シリンダヘッド温度TCHIGOFFとサチレート温度TSATIとの偏差に代えて、前者TCHIGOFFと後者TSATIとの比を用いてもよい。あるいは、シリンダヘッド温度TCHを、エンジン水温TWのみに応じたマップ検索などによって算出してもよい。また、第4実施形態では、前記ステップ82の判別において、機構温度TC/Aをシリンダヘッド温度TCHと比較しているが、サチレート温度TSATIと比較してもよい。
さらに、第3および第4実施形態では、エンジン3の本体の温度として、シリンダヘッド温度TCHを用いているが、気筒3aの壁部の温度を用いてもよい。また、第3および第4実施形態では、可変動弁機構11の周囲の雰囲気の温度として、外気温TAを用いているが、シリンダヘッドカバー3c内の雰囲気の温度を用いてもよい。
さらに、第3および第4実施形態では、サチレート温度TSATIを、前記式(3)および(6)にそれぞれ従い、エンジン3の停止時における機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHを加重平均することによって算出しているが、この算出手法はこれに限らず、例えば、停止時における機構温度TC/Aおよびシリンダヘッド温度TCHに応じたマップ検索などによって算出してもよい。
また、第3および第4実施形態では、エンジン3の停止中、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなる直前まで、停止時機構温度TC/AIGOFF、サチレート温度TSATI、およびタイマ値tESTOPに応じ、前述したモデル式(4)に従って、機構温度TC/Aを算出しているが、その算出手法はこれに限定されないことはもちろんである。例えば、機構温度TC/Aを次のように算出してもよい。すなわち、図14を用いて説明したように、実機構温度TC/AACTが上記の3つのパラメータTC/AIGOFF,TSATI,tESTOPに応じて変化することから、これらのパラメータTC/AIGOFF,TSATI,tESTOPに応じ、他の算出式に従って、あるいは、マップ検索などによって、機構温度TC/Aを算出してもよい。また、式(4)において、停止時機構温度TC/AIGOFFとサチレート温度TSATIとの偏差に代えて、前者TC/AIGOFFと後者TSATIとの比を用いてもよい。
さらに、第3および第4実施形態では、エンジン3の停止中、実機構温度TC/AACTおよびシリンダヘッド温度TCHが互いにほぼ等しくなった以降には、サチレート温度TSATI、外気温TAおよびサチレート後経過時間TAS(タイマ値tAS)に応じ、前述したモデル式(5)および(8)にそれぞれ従って、機構温度TC/Aを算出しているが、その算出手法はこれに限定されないことはもちろんである。図14を用いて説明したように、実機構温度TC/AACTが上記の3つのパラメータTSATI,TA,TAS(tAS)に応じて変化することから、これらのパラメータTSATI,TA,TAS(tAS)に応じ、他の算出式に従って、あるいは、マップ検索などによって、機構温度TC/Aを算出してもよい。また、式(5)および(8)において、サチレート温度TSATIと外気温TAとの偏差に代えて、前者TSATIと後者TAとの比を用いてもよい。
また、第3および第4実施形態では、停止時機構温度TC/AIGOFF(エンジン3の停止時における機構温度TC/A)を、エンジン3の停止直前の運転中に油温TOILに応じて算出された機構温度TC/Aに設定しているが、油温TOILに応じて推定するのであれば、その推定(算出)手法は任意である。例えば、エンジン3の停止時に検出された油温TOILに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出してもよく、あるいは、前記ステップ27と同様に算出してもよい。
なお、特許請求の範囲に記載された各請求項に係る発明(以下「本発明」という)は、説明した第1〜第4実施形態(以下、総称して「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、可変動弁機構11の動作状態を表すパラメータとして、コントロールシャフト角度位置θC/Sを用いているが、可変動弁機構11の動作状態を表し、かつ、吸気リフト量を算出可能な他の適当なパラメータ、例えば、コントロールアーム13の回動角度位置や、電動モータ17に入力される制御信号などを用いてもよい。
また、実施形態では、エンジン3の始動時で、かつ、まだエンジンオイルが可変動弁機構11およびホルダ41に供給されていないときに、機構温度TC/Aを、始動直前の停止中に算出(設定)された値に保持しているが、始動直前の停止中に算出(設定)された値を用いて、例えば次のように算出してもよい。すなわち、このようなエンジン3の始動時、機構温度TC/Aは、停止中と同様、エンジン冷却水と可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系との間の熱移動に伴って変化するため、図8に示す停止中機構温度算出処理と同様、第1温度偏差DTE1、機構温度の前回値TC/AZおよび第1伝熱係数パラメータK1を用い、前記式(1)によって算出してもよい。
さらに、実施形態では、エンジン3の運転中や停止時に、機構温度TC/Aを、油温TOILと機構温度の前回値TC/AZとの偏差である第2温度偏差DTE2に応じて算出しているが、油温TOILと機構温度の前回値TC/AZとの乖離度合を表す他の適当なパラメータ、例えば、前者TOILと後者TC/AZとの比に応じて算出してもよい。あるいは、機構温度TC/Aを、油温TOILのみに応じたマップ検索などによって算出してもよい。
また、実施形態では、第2伝熱係数パラメータK2は、第2温度偏差DTE2に乗算することによって、エンジンオイルとホルダ41との間の熱移動による機構温度TC/Aの変化分を算出できるような値に、設定されているが、エンジンオイルと可変動弁機構11との間、または、エンジンオイルと可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系との間の熱移動による機構温度TC/Aの変化分を算出できるような値に、設定してもよい。あるいは、エンジンオイルと可変動弁機構11およびホルダ41の少なくとも一方との間の伝熱係数そのもの(次元=W/m2 ・K)に、設定してもよい。この場合、前記式(2)におけるK2・DTE2は、エンジンオイルと可変動弁機構11およびホルダ41の少なくとも一方との間での熱の移動量に相当するので、この熱の移動量を機構温度TC/Aの変化分に換算する係数がさらに乗算される。
さらに、実施形態では、可変動弁機構11およびホルダ41に供給されるエンジンオイルの温度として、油温TOILすなわち、潤滑するために可変動弁機構11およびホルダ41に供給されるエンジンオイルの温度を用いているが、油圧を駆動源とする可変動弁機構に本発明を適用した場合には、油温TOILに代えて、または、油温TOILとともに、駆動するために可変動弁機構に供給されるオイル、すなわち可変動弁機構の作動油の温度を用いてもよい。また、実施形態では、機構温度TC/Aとして、可変動弁機構11およびホルダ41から成る動弁系の温度を推定しているが、可変動弁機構11およびホルダ41の一方の温度を推定してもよい。さらに、実施形態では、本発明における可変動弁機構として、サブカムレバー比の変更によって吸気リフト量を変更する可変動弁機構11を用いているが、機関弁のリフト量を変更可能な他の適当なタイプの可変動弁機構を用いてもよい。
また、実施形態は、本発明による制御装置1を、吸気リフト量を変更可能な可変動弁機構11に適用した例であるが、これに代えて、または、これとともに、排気弁5のリフト量(最大揚程)を変更可能な可変動弁機構に適用してもよい。さらに、本発明による制御装置1は、実施形態で例示した車両用のガソリンエンジンであるエンジン3に限らず、ディーゼルエンジンや、LPGエンジン、クランク軸を鉛直方向に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジン、その他産業用の各種の内燃機関に、適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、各種のパラメータの算出手法や細部の構成を適宜、変更することが可能である。