JP5271057B2 - ボールペンチップ - Google Patents

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本発明は、中芯と呼ばれるリフィールの先端に設けられる金属(例えばステンレス)製のボールペンチップに関するものである。
従来、このような分野の技術として、特開2004−160986号公報がある。この公報に記載されたボールペンチップでは、金属からなるチップ部の先端にボールが保持されている。金属材料(例えばステンレス鋼)からなるチップ部の前端部には、切削加工によりボール抱持孔とボール受け座が形成され、このボール受け座には、インクの通過を可能にするために、中心孔と、中心孔に連通する放射状のインキ流通間隙とが形成されている。また、リフィールの構成としては、チップ部の後側が樹脂製のホルダーに圧入固定され、ホルダーの後側がインク収容部の先端に圧入固定されている。さらに、チップ部内には、ボールの閉弁機能を達成させるためのスプリングが収容され、このスプリングには、ボールを押圧するためのロッド部が設けられ、このロッド部は、チップ部内で中心孔を通過してボールまで達している。
特開2004−160986号公報(図6) 特許第3333059号公報
前述した従来のボールペンチップにあっては、チップ部の略全長に渡ってスプリングが延在し、チップ部のほぼ後半部分に弾性部が延在し、チップ部のほぼ前半部分にロッド部が延在している。このように、ボールに付勢力を与えている弾性部がボールからかなり離れた位置にあるので、ボールを押圧する力が安定し難く、ボールを閉弁する機能を不確実にする虞があった。特に、インクの流動性を阻害しないために線径の小さいスプリングを採用すると、弾性力を安定させ難くなり、これに伴って、ボールの閉弁機能も安定し難くなる。
本発明は、線径の小さな螺旋バネを利用してもボールに対する付勢力を安定させることができるようにしたボールペンチップを提供することを目的とする。
本発明は、チップ部の先端にボールが設けられたボールペンチップにおいて、
チップ部は、先端にボールが配置されると共に、チップ部の軸線方向に延在する第1のインク流動孔と、第1のインク流動孔より大きな径で軸線方向に延在する第2のインク流動孔とを有し、
第1のインク流動孔内には、ボールを付勢する螺旋バネが配置され、螺旋バネの後端は、第1のインク流動孔内で支持され
第1のインク流動孔を有する直状のニードル部にカシメ部が形成され、このカシメ部によって、螺旋バネの後端が支持されていることを特徴とする。
このボールペンチップにおいては、大径側の第2のインク流動孔内に螺旋バネを配置させていなので、第2のインク流動孔内でのインクの流動性を良好にしている。このことは、第2のインク流動孔の径を、必要に応じて小さくする場合に効果的である。また、小径側の第1のインク流動孔内に螺旋バネを配置させているので、ボールに非常に近い位置でバネ力を発生させることができ、これによって、ボールを押圧する力が安定し、ボールを閉弁する機能の確実さを向上させることができる。特に、ボール受け座面側に形成された中心孔は狭くなっているので、この部分でのインクの流動性を阻害しないために、線径の小さいロッド部をもった螺旋バネを採用した場合でも、弾性力を安定させ易く、これに伴って、ボールの閉弁機能も安定させ易い。
更に、第1のインク流動孔を有する直状のニードル部にカシメ部が形成され、このカシメ部によって、螺旋バネの後端が支持されている。
このような構成を採用すると、カシメ作業によって螺旋バネを第1のインク流動孔内に簡単に配置させることでき、しかも、ニードル部を外側からカシメるので、カシメ位置がズレ難く、カシメ作業を確実に行うことができる。
また、螺旋バネの後端は、第2のインク流動孔の内壁面に固定されたバネ支持部材によって支持され、バネ支持部材の先端側には、螺旋バネの後端内に嵌入される突起部が設けられ、バネ支持部材の後端側には、第2のインク流動孔の内壁面に圧着される固定部が設けられていると好適である。
螺旋バネの後端内にバネ支持部材の突起部を嵌入させた状態で、チップ部内に螺旋バネと一緒にバネ支持部材を挿入させることができるので、小さな螺旋バネであってもボールペンチップの組立て作業性が良好になる。しかも、バネ支持部材の押込み量を管理するだけで、螺旋バネの弾性力の管理を行うことができるので、螺旋バネの弾性力の変更を容易に行うことができる。
また、バネ支持部材は、チップ部の軸線方向及び径方向に延在する羽根部を有すると好適である。
バネ支持部材は、第1及び第2のインク流動孔を閉鎖することなく、インクを羽根部に沿って軸線方向に流動させることができ、インクの流動性を阻害し難い形状である。
本発明によれば、線径の小さな螺旋バネを利用してもボールに対する付勢力を安定させることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明に係るボールペンチップの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、ペン先側を「前方側」として以下説明する。
(第1の実施形態)
図1及び図2に示すように、中芯と呼ばれるリフィールの先端に設けられるボールペンチップ1は、全長が約11.3mm、大径部直径が2.3mm以下で、通称、ニードルタイプと呼ばれ、金属(例えばステンレス鋼)製のチップ部2と、チップ部2の先端に設けられた金属(例えば超硬)製のボール3と、ボール3を押圧する螺旋バネ4とからなる。
チップ部2は、途中に段部2aが設けられた直状のチップ本体6と、チップ本体6の先端から軸線Lに沿って直状に延在するニードル部7とからなる。このニードル部7には、先端にボール3が配置されて軸線L方向に延在する第1のインク流動孔8が形成され、チップ本体6内には、第1のインク流動孔8より大きな径で軸線L方向に延在する第2のインク流動孔9が形成され、第1のインク流動孔8と第2のインク流動孔9によってチップ部2のインク流動孔10を構成している。
この第1のインク流動孔8の後端は、第2のインク流動孔9の先端に設けられた円錐台形状のテーパ面9aに連結されている。このテーパ面9aにより、小径側の第1のインク流動孔8と大径側の第2のインク流動孔9との間での径の変化に伴って残留するインク中の気泡の溜まりを抑制することができる。
第1のインク流動孔8の先端には、ボール3を抱持するためのボールハウスSが形成され、このボールハウスSの壁面の一部は、ボール受け座面8aとして形成されている。さらに、このボール受け座面8a側には、ボールハウスSと連通する中心孔8bと、中心孔8bに連通して放射状に延在するスリット部(図示せず)とが形成されている。
また、第1のインク流動孔8は、中心孔8bより大径の主孔8cと中心孔8bとの間で円錐台形状のテーパ面8dを有している。このテーパ面8dによってインクを流れ易くしている。
このような形状のチップ部2では、その外形が切削加工により形成され、インク流動孔10及びボール収容空間部Sは、ドリル加工により形成されている。そして、このように成形されたチップ部2内には、ボール3を押圧する螺旋バネ4が収容されている。
この螺旋バネ4は、第1のインク流動孔8内に配置され、螺旋バネ4の後端は、第1のインク流動孔8内で支持されている。
このような構成のボールペンチップ1においては、大径側の第2のインク流動孔9内に螺旋バネを配置させていないので、第2のインク流動孔9内でのインクの流動性を良好にしている。このことは、第2のインク流動孔9の径を、必要に応じて小さくする場合に効果的である。また、小径側の第1のインク流動孔8内に螺旋バネ4を配置させているので、ボール3に非常に近い位置でバネ力を発生させることができ、これによって、ボール3を押圧する力が安定し、ボール3を閉弁する機能の確実さを向上させることができ、しかも後述するロッド部4aを短くすることができるので、ボール3の押圧力を安定させることができる。
特に、ボール3の径が小さくなればなる程、ボール受け座面8a及び中心孔8bが小さくなり、例えば、直径0.3mmのボール3では、中心孔8bの直径が0.2mm未満であり、中心孔8bは、非常に狭くなっているので、この部分でのインクの流動性を阻害しないために、中心孔8b内に挿入される小さな線径(例えば0.1mm未満)のロッド部4aをもった螺旋バネ4を採用した場合でも、弾性力を安定させ易く、これに伴って、ボール3の閉弁機能も安定させ易い。
特に、剪断減粘性インクや低粘度油性インクの場合、ボール3の周辺から意図しないインク流出が生じ易くなるので、本発明のように安定した弾性力を呈する構造が望まれる。
また、螺旋バネ4には、中心孔8b内に挿入されてボール3を押圧するロッド部4aが先端に設けられた弾性部4bと、弾性部4bより巻き径の大きな着座部4cと、が設けられている。
図3に示すように、螺旋バネ4をチップ部2内に装着するための棒状の治具12を利用するにあたって、棒状の治具12を螺旋バネ4の後端から差し込んだ場合、着座部4cによって棒状の治具12に螺旋バネ4を安定して装着させることができ、これによって、小さな螺旋バネ4であってもボールペンチップ1の組立て作業性が良好になる。
さらに、着座部4cの外径は主孔8cの内径と略同径に形成される。そして、弾性部4bは着座部4cの外径よりも(換言すると、主孔8cの内径よりも)小径に形成される。よって、弾性部4bは、その弾性変形を阻害されることが無いので、螺旋バネ4を第1のインク流動孔8内で安定させることができる。
さらに、ボール受け座面8a側に形成された中心孔8b内でのインクの流動性を良くするために、ロッド部4aの線径を小さくする場合、螺旋バネ4を一本のバネ材で製造すると、ロッド部4aの線径と弾性部4bの線径と着座部4cの線径が全て同じになるが、線径が小さくなった場合であっても、着座安定性の高い螺旋バネ4の採用は効果的である。
また、第1のインク流動孔8を有する直状のニードル部7には、周方向において120度毎に3点のカシメ部13が形成され、このカシメ部13によって、螺旋バネ4の後端が支持されている。このような構成を採用すると、カシメ作業によって螺旋バネ4を第1のインク流動孔8内に簡単に配置させることでき、しかも、ニードル部7を外側からカシメるので、カシメ位置がズレ難く、カシメ作業を確実に行うことができる。カシメ作業後、棒状の治具12がチップ部2の後端から抜かれる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るボールペンチップ20について説明する。第1の実施形態と同一又は同等な構成部分すなわち、チップ部2及びボール3については、同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図4に示すように、螺旋バネ21には、ボール3を押圧するロッド部21aが先端に設けられた弾性部21bと、バネ支持部材22の先端が嵌入される着座部21cと、が設けられている。そして、螺旋バネ21の後端を支持するバネ支持部材22は、第2のインク流動孔9の内壁面に固定されている。
バネ支持部材22の先端側には、螺旋バネ21の後端内に嵌入される突起部22aが設けられ、バネ支持部材22の後端側には、第2のインク流動孔9の内壁面に圧着される固定部22bが設けられている。
螺旋バネ21の後端の着座部21c内にバネ支持部材22の突起部22aを嵌入させた状態で、治具により第2のインク流動孔9の後端から螺旋バネ21と一緒にバネ支持部材22を挿入させることができるので、小さな螺旋バネ21であってもボールペンチップ20の組立て作業性が良好になる。しかも、バネ支持部材22の押込み量を管理するだけで、螺旋バネ21の弾性力の管理を行うことができるので、螺旋バネ21の弾性力の変更を容易に行うことができる。
また、図5に示すように、十字状の横断面をなす樹脂製のバネ支持部材22は、チップ部2の軸線L方向及び径方向に延在する4枚の羽根部22cを有する。羽根部22cの後部側は、径方向に大きく張り出した拡大部として形成され、この拡大部が第2のインク流動孔9の壁面に圧着されて固定部22bとして機能する。バネ支持部材22は、第1及び第2のインク流動孔8,9を閉鎖することなく、インクを羽根部22cに沿って軸線L方向に流動させることができ、インクの流動性を阻害し難い形状である。なお、バネ支持部材22は、横断面がI字状、Y字状などであってもよい。
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、先端が鏃のようなアロー型ボールペンチップでも適用可能である。この場合、先端の円錐部分内に螺旋バネ4,21が収容される。
本発明に係るボールペンチップの第1の実施形態を示す斜視図である。 図1の縦断面図である。 螺旋バネの拡大図である。 本発明に係るボールペンチップの第2の実施形態を示す縦断面図である。 バネ支持部材を示す斜視図である。
符号の説明
1,20…ボールペンチップ、2…チップ部、3…ボール、4,21…螺旋バネ、4a…ロッド部、4b…弾性部、4c…着座部、7…ニードル部、8…第1のインク流動孔、9…第2のインク流動孔、13…カシメ部、22…バネ支持部材、22a…突起部、22b…固定部、22c…羽根部、L…軸線。

Claims (3)

  1. チップ部の先端にボールが設けられたボールペンチップにおいて、
    前記チップ部は、先端に前記ボールが配置されると共に、前記チップ部の軸線方向に延在する第1のインク流動孔と、前記第1のインク流動孔より大きな径で前記軸線方向に延在する第2のインク流動孔とを有し、
    前記第1のインク流動孔内には、前記ボールを付勢する螺旋バネが配置され、前記螺旋バネの後端は、前記第1のインク流動孔内で支持され
    前記第1のインク流動孔を有する直状のニードル部にカシメ部が形成され、このカシメ部によって、前記螺旋バネの後端が支持されていることを特徴とするボールペンチップ。
  2. 前記螺旋バネの後端は、前記第2のインク流動孔の内壁面に固定されたバネ支持部材によって支持され、前記バネ支持部材の先端側には、前記螺旋バネの後端内に嵌入される突起部が設けられ、前記バネ支持部材の後端側には、前記第2のインク流動孔の前記内壁面に圧着される固定部が設けられていることを特徴とする請求項記載のボールペンチップ。
  3. 前記バネ支持部材は、前記チップ部の軸線方向及び径方向に延在する羽根部を有することを特徴とする請求項記載のボールペンチップ。
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