JP5268982B2 - オラネキシジン水溶液およびその調製方法並びに消毒剤 - Google Patents

オラネキシジン水溶液およびその調製方法並びに消毒剤 Download PDF

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Description

本発明は、オラネキシジンを含有する水溶液、ならびに前記水溶液の調製方法および前記水溶液を含有する消毒剤に関する。
オラネキシジンは、化学名1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドという高い殺菌活性を有する化合物である。そして、その塩酸塩を有効成分とする殺菌剤について研究が進められている(非特許文献1ほか)。
オラネキシジンは、水に極めて難溶であり、またこれまで知られている塩も水に難溶である。例えば、塩酸塩の水への溶解度を測定したところ、0.05%(W/V)未満で、遊離体は更に1オーダー低かった。そのため、単にオラネキシジンを溶かしただけの水溶液では、十分な殺菌活性が望めなかったり、環境によっては析出するおそれがある。そこで、特に水性製剤とする場合には、オラネキシジンの濃度を有効な殺菌活性を示す濃度とするために、あるいは析出の可能性を低減するために、界面活性剤等の溶解補助剤を用いる必要があるとされる。
永井勲ら,環境感染,15(3),220(2000)
本発明は、有効な殺菌効果を示す濃度のオラネキシジンを含み、かつ、オラネキシジンが析出することのない安定な消毒にも用いることができる消毒剤を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、オラネキシジンを0.1%(W/V)以上の濃度で含有するオラネキシジン水溶液を得ることに成功した。より詳しくは、例えば、オラネキシジン酸付加塩の懸濁液をアルカリ水溶液で中和して遊離形態のオラネキシジンを得、これを十分水洗いしてオラネキシジン酸付加塩を形成していた酸やそのアルカリとの塩を除去し、次いでこれをグルコン酸水溶液に添加したところ、遊離形態や他の酸との塩を水に溶かした場合とは比較にならないほど高濃度のオラネキシジンを含む安定な水溶液を得ることができた。得られた水溶液は、界面活性剤の使用をもはや必須とはしない。本発明者らは、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
尚、特許第2662343号公報には、オラネキシジン類の酸付加塩を形成する酸として、種々の酸が列挙されており、その中にグルコン酸も記載されている。しかしながら、特許第2662343号公報ではオラネキシジンのグルコン酸塩は具体的に記載されておらず、単離もされておらず、その溶液についても開示はない。ましてや、その水への溶解性については、全く示唆もされていない。
すなわち、本発明は、
(1) オラネキシジンと、少なくとも等モルのグルコン酸とを含有し、グルコン酸以外の酸およびその塩を実質的に含有していないことを特徴とする水溶液、
(2) オラネキシジンの濃度が0.1〜20%(W/V)である上記(1)に記載の水溶液、
(3) オラネキシジン酸付加塩の水懸濁液をアルカリ水溶液で中和又は付加している酸に対し1〜10当量のアルカリを添加し、析出した固形物を水で洗浄した後、グルコン酸水溶液に溶解させることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の水溶液の調製方法、
(4) アルカリ水溶液での中和が、20〜30℃の温度で行われることを特徴とする上記(3)に記載の調整方法、
(5) 上記(1)または(2)に記載の水溶液を配合してなる消毒剤、
(6) 水性製剤である上記(5)に記載の消毒剤、
(7) オラネキシジンの濃度が0.001〜20%(W/V)である上記(6)に記載の消毒剤、
(8) アルコール製剤である上記(5)に記載の消毒剤、
(9) オラネキシジンの濃度が0.001〜6%(W/V)である上記(8)に記載の消毒剤、
(10) 更にポリアルキレングリコールを含有することを特徴とする上記(5)〜(9)のいずれかに記載の消毒剤、
(11) ポリアルキレングリコールの濃度が、0.5〜10%(W/V)である上記(10)に記載の消毒剤、
(12) ポリアルキレングリコールが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールである上記(10)または(11)に記載の消毒剤、
(13) オラネキシジンが0.1%(W/V)以上の濃度で含有されていることを特徴とする水溶液、および
(14) グルコン酸のオラネキシジン可溶化のための使用、
に関する。
本発明の水溶液は、広い殺菌スペクトルを有し、殺菌効果が短時間で現れ、さらにその活性が長時間持続する。さらに、本発明の水溶液は、安定性が高く、長期間保存でき、その上、刺激性や毒性が低く、安全性の面でも優れている。加えて、本発明の水溶液は、色、臭いおよび味に問題がないため、製剤化しやすい。
尚、本発明の水溶液は、腐食性を示さないという特長も有し、金属製医療器具の消毒などにも広く使用することができる。
本発明は、オラネキシジンが遊離体換算で約0.1%(W/V)以上の濃度で含有されている水溶液を提供する。約0.1%(W/V)以上のオラネキシジンを含有させることで、用時希釈剤など目的に応じた種々の剤形の消毒剤の製造に用いることができ、また比較的高濃度の消毒剤に調製した場合でも、析出のおそれがなくなる。なかでも、水溶液中のオラネキシジンの濃度は、約0.1〜20%(W/V)であることが好ましい。このように、水難溶性のオラネキシジンを可溶化することで、液剤や軟膏などの種々の剤形の薬剤に初めて応用しかつ安定化することができるという利点がある。
オラネキシジンとは、下記式(1)
Figure 0005268982
で示される、化学名1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドという化合物である。
水にオラネキシジンを約0.1%(W/V)以上の濃度で溶解させるための好ましい手段として、少なくとも等モルのグルコン酸、好ましくはオラネキシジン1モルに対しグルコン酸1〜微過剰モルを共存させることが挙げられる。オラネキシジンと少なくとも等モルのグルコン酸とを含有する水溶液中では、オラネキシジンとグルコン酸とが塩を形成してもよいし、それぞれが遊離体で存在していてもよいし、オラネキシジンのグルコン酸塩と遊離オラネキシジンと遊離グルコン酸とが共存していてもよい。
さらに、オラネキシジンとグルコン酸とを含有する上記水溶液には、グルコン酸以外の酸およびその塩を実質的に含有していないことが好ましい。より具体的には、水溶液中におけるグルコン酸以外の酸およびその塩の濃度が、約0.05%(W/V)以下であることが好ましい。ここで、酸とは、水溶液中で水素イオンを生じる物質をいう。その塩としては、例えばナトリウム塩もしくはカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩もしくはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩またはアンモニウム塩などの無機塩基との塩;例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミンもしくはN,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどの有機塩基との塩などの塩基付加塩などが挙げられる。
オラネキシジンとグルコン酸とを含有し、グルコン酸以外の酸およびその塩を実質的に含有していない水溶液の好ましい調製方法について以下に述べる。
オラネキシジンは、通常、塩酸塩等の酸付加塩の結晶として得られる場合が多い。そこで、まず、オラネキシジン塩酸塩等の酸付加塩を水中に懸濁させ、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を付加している酸に対し1当量以上、好ましくは約1〜10当量、より好ましくは約1〜8当量、さらに好ましくは約1〜5当量添加し、約0℃〜室温、好ましくは約20〜30℃で、より好適には、25℃前後の温度にて、1〜5時間程度攪拌する。なお、本発明においては、アルカリは上記した無機塩基または有機塩基であってもよい。
ついで、上記処理で生じた遊離オラネキシジンの固形物を濾取し、水洗してオラネキシジン酸付加塩を形成していた酸やそのアルカリとの塩を除去する。水洗後、再度水等の溶媒中に懸濁させ、再濾過、再水洗を1〜数回繰り返すのが好ましい。オラネキシジン酸付加塩を形成していた酸やそのアルカリとの塩が実質的に残存していると、本発明の水溶液中でオラネキシジンが元の難溶性塩に戻ってしまう場合があるからである。より具体的には、前記酸やそのアルカリとの塩の本発明の水溶液中における残存量が、約0.05%(W/V)以下であることが好ましい。例えばオラネキシジン塩酸塩を水酸化ナトリウム水溶液で中和処理した場合には、残存塩化ナトリウムが本発明の水溶液中に約0.05%(W/V)以下となるようにするのが好ましい。
ついで、上記で得られた洗浄体をグルコン酸水溶液中に加えるか、或いは該洗浄体にグルコン酸水溶液を加えて攪拌すれば、本発明の水溶液を得ることができる。この操作は、室温でも十分行うことができるが、必要に応じて加熱してもよい。用いるグルコン酸水溶液の濃度は、適宜決定できるが、少なくとも添加する遊離オラネキシジンと等モル以上のグルコン酸が含まれていることが必要である。
本工程で用いるグルコン酸水溶液は、グルコン酸そのものを溶解して調製できるし、例えばグルコノラクトンのような水溶液中でグルコン酸に変じ得るグルコン酸前駆体を用いて調製することもできる。また、前述したように、グルコン酸以外の他の酸やその塩が含まれていると、本発明の水溶液中においてオラネキシジンが難溶性の酸付加塩を形成するおそれがあるので、グルコン酸水溶液を調製する際には、グルコン酸以外の酸から生成し、塩を形成するおそれのある、例えば塩化物イオンや臭化物イオンなどの陰イオン、または前記陰イオンと水溶液中の陽イオンとが結合して形成される塩を、グルコン酸水溶液中に実質的に残存させないよう、除去しておくことが望ましい。除去の程度は、上述したように、グルコン酸以外の酸やその塩が、本発明の水溶液中に0.05%(W/V)以下程度の濃度でしか残存しないようにすることが好ましい。
以上のようにしてオラネキシジンとグルコン酸とを含有し、グルコン酸以外の酸およびその塩を実質的に含有していない水溶液を得ることができる。得られる水溶液は、オラネキシジンの濃度が遊離体換算で20%(W/V)程度でも長期間澄明状態を保っている。
上記した本発明のオラネキシジン水溶液は、約0.1%(W/V)以上のオラネキシジンを含み、有効な殺菌作用を示すことから、消毒剤として有用である。例えば、上記した本発明のオラネキシジン水溶液は、そのまま消毒剤として使用できる。また、これを精製水で希釈して水性製剤とすることもできるし、例えばエタノールまたはイソプロパノールなどの精製アルコールで希釈してアルコール製剤とすることもできる。また、増粘剤等で粘性を付与して粘性消毒剤とすることもできる。或いは消毒用エタノール等を配合し、即効的な殺菌効果と、オラネキシジンによる持続効果が期待できる速乾性消毒剤とすることもできる。更に、本発明のオラネキシジン水溶液は、前記のような液剤だけでなく、他の適当な剤形の消毒剤にも応用することができる。液剤以外の剤形としては、軟膏剤、クリーム剤、ゲル製剤、発泡製剤、エアロゾル製剤、スクラブ製剤等を例示できる。これらは、通常用いられている適当な担体を利用して実現できる。
本発明の消毒剤中のオラネキシジンの濃度は、遊離体換算で約0.001〜20%(W/V)とするのが好ましい。
本発明の消毒剤が、精製アルコールで希釈してアルコール製剤とされる場合には、エタノールの殺菌効果との併用効果も期待できるので、オラネキシジンの濃度を低くすることも可能である。アルコール製剤とする場合のオラネキシジンの濃度は、約0.001〜6%(W/V)が好ましい。本発明の消毒剤をアルコール製剤とする場合のアルコール濃度は、消毒用エタノールと同程度の濃度、約70〜85%(V/V)程度が好ましい。
本発明の消毒剤には、さらにポリアルキレングリコールを添加することができる。本発明の消毒剤にポリアルキレングリコールを添加すると、殺菌活性を低下させることなく皮膚刺激性をより低減させることができるという驚くべき効果が得られる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを具体例として挙げることができる。これらの種類(分子量、ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の割合など)は、剤形または用途等に応じて汎用のものから適宜選択できる。特に好ましいものは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである。ポリアルキレングリコールの添加量は、剤形、薬剤濃度または用途等に応じて適宜決定できるが、一般的には消毒剤中約0.01〜50%(W/V)程度、好ましくは約0.5〜20%(W/V)程度とするのがよい。
本発明の消毒剤には、オラネキシジンの水に対する溶解度に実用上の支障がない限り、通常の液剤や軟膏剤などのそれぞれの剤形において通常用いられている添加剤、例えば防腐剤、保湿剤、増粘剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、抗酸化剤、香料、着色剤等、または他の殺菌消毒剤もしくは他の薬剤等を適宜添加できる。但し、オラネキシジンと難溶性の酸付加塩を形成するおそれがあるもの、例えばグルコン酸以外の他の酸またはその塩、特にクエン酸塩やリン酸塩などは、添加を見合わせるよう配慮するのが望ましい。
前記防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどのパラオキシ安息香酸エステル、グルコン酸クロルヘキシジンなどが挙げられる。前記保湿剤としては、例えばプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの合成高分子化合物;ペクチン、キトサン、キチン、キタンサンガムなどの天然高分子化合物;ソルビトール、マンニトール、キシリトールなどの多糖類;トリイソオクタン酸グリセリン、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オリーブ油等の脂肪酸エステル類などが挙げられる。前記増粘剤としては、カルボキシビニルポリマーまたはセルロース系水溶性高分子化合物や、ポピドン、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子などが挙げられる。カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸等のカルボン酸類を重合した高分子化合物であり、通常100万〜300万程度の分子量のものを用いる。セルロース系水溶性高分子化合物の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
本発明の消毒剤に配合可能な他の殺菌消毒剤としては、例えば、界面活性剤系殺菌消毒剤またはフェノール系殺菌消毒剤などが挙げられる。
本発明の消毒剤に配合可能な他の薬剤としては、局所麻酔剤、血管収縮剤、副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤、収斂剤、鎮痒剤、鎮痛・消炎剤、抗白癬菌剤、サルファ剤、角質溶解剤、ビタミン剤などを挙げることができる。
本発明の消毒剤は、皮膚・手指消毒用、手術部位皮膚消毒用、皮膚創傷部位消毒用、医療器具消毒用、手術室・病室・家具・器具・物品等の消毒用などに好適に用いることができる。
また、本発明のオラネキシジン水溶液は、基布に含浸させて用いてもよい。基布としては、脱脂綿、ガーゼ、紙、不織布、タオル、布などが挙げられる。これらの基布は、水解性のものと非水解性のものがあるが、いずれも用いることができる。
以下に本発明において好ましい実施例、製剤例および試験例について述べるが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
なお、実施例等において、「%」は特に断りのない限り、「%(W/V)」を示す。
水溶液の調製
水溶液1
1Nの水酸化ナトリウム水溶液250mLに、オラネキシジン塩酸塩1/2水和物20.9g(50mmol)を加え、室温(25℃)で1.5時間懸濁攪拌した。固形物を濾取し、水洗した。さらに得られた固形物を精製水250mLに懸濁し、室温で5分間攪拌後、濾取、水洗した。この操作を2度行い、生成した塩化ナトリウムを除いた。得られた固形物(遊離オラネキシジン)を、グルコノラクトン8.9g(50mmol)を溶解した精製水の中に入れ、室温で溶けるまで攪拌し、全体を300mLとした。得られた水溶液中のオラネキシジンの量を高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、遊離体換算で6%であった。
この水溶液は、室温で数ヶ月間放置しても、無色澄明のままであった。
水溶液2
1Nの水酸化ナトリウム水溶液750mLに、オラネキシジン塩酸塩1/2水和物62.7g(150mmol)を加え、室温(25℃)で1.5時間懸濁攪拌した。固形物を濾取し、水洗した。さらに得られた固形物を精製水750mLに懸濁し、室温で5分間攪拌後、濾取、水洗した。この操作を2度行い、生成した塩化ナトリウムを除いた。得られた固形物(遊離オラネキシジン)を、グルコノラクトン26.7g(150mmol)を溶解した精製水の中に入れ、室温で溶けるまで攪拌し、全体を300mLとした。得られた水溶液中のオラネキシジンの量を高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、遊離体換算で18%であった。
この水溶液は、室温で数ヶ月間放置しても、無色澄明のままであった。
水溶液3
1Nの水酸化ナトリウム水溶液830mLに、オラネキシジン塩酸塩1/2水和物69.8g(167mmol)を加え、室温(25℃)で1.5時間懸濁攪拌した。固形物を濾取し、水洗した。さらに得られた固形物を精製水830mLに懸濁し、室温で5分間攪拌後、濾取、水洗した。この操作を2度行い、生成した塩化ナトリウムを除いた。得られた固形物(遊離オラネキシジン)を、グルコノラクトン29.7g(167mmol)を溶解した精製水の中に入れ、室温で溶けるまで攪拌し、全体を300mLとした。得られた水溶液中のオラネキシジンの量を高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、遊離体換算で20%であった。
この水溶液は、室温で数ヶ月間放置しても、無色澄明のままであった。
製剤例1
実施例1で得られた水溶液1の20mLに、精製水を加えて希釈し、全体を240mLとした。ポリエチレン製ボトルに分注充填後、高圧蒸気滅菌を行って、0.5%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例2
実施例1で得られた水溶液1の60mLに、精製エタノールを加えて均一に混合し、全体を240mLとした。ポリエチレン製ボトルに無菌分注充填して、1.5%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例3
実施例1で得られた水溶液1の10mLに、精製エタノール160mL及びヒドロキシプロピルセルロース2gを加えて均一に混合し、精製水を加えて全体を200mLとした。ポリエチレン製ボトルに無菌分注充填して、0.3%オラネキシジン含有粘性消毒剤を得た。
製剤例4
実施例1で得られた水溶液1の20mLに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長160;ポリオキシプロピレン鎖長30)4.8gを加え、精製水を加えて溶解し、全体を240mLとした。ポリエチレン製ボトルに分注充填後、高圧蒸気滅菌を行って、0.5%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例5
実施例1で得られた水溶液1の20mLに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長196;ポリオキシプロピレン鎖長67)2.4gを加え、精製水を加えて溶解し、全体を240mLとした。ポリエチレン製ボトルに分注充填後、高圧蒸気滅菌を行って、0.5%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例6
実施例1で得られた水溶液1の20mLに、ポリエチレングリコール4000を19.2g加え、精製水を加えて溶解し、全体を240mLとした。ポリエチレン製ボトルに分注充填後、高圧蒸気滅菌を行って、0.5%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例7
実施例1で得られた水溶液1の60mLに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長160;ポリオキシプロピレン鎖長30)4.8gを加え、精製エタノールを加えて均一に混合し、全体を240mLとした。ポリエチレン製ボトルに無菌分注充填して、1.5%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例8
実施例1で得られた水溶液1の10mLに、精製エタノール160mL、ヒドロキシプロピルセルロース2g及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長160;ポリオキシプロピレン鎖長30)4.0gを加えて均一に混合し、精製水を加えて全体を200mLとした。ポリエチレン製ボトルに無菌分注充填して、0.3%オラネキシジン含有粘性消毒剤を得た。
製剤例9
実施例2で得られた水溶液2の100mLに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長160;ポリオキシプロピレン鎖長30)9.0gを加え、精製水を加えて溶解し、全体を180mLとした。ポリエチレン製ボトルに分注充填後、高圧蒸気滅菌を行って、10%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例10
実施例1で得られた水溶液1の20mLに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長20;ポリオキシプロピレン鎖長20)1.2gを加え、精製水を加えて溶解し、全体を240mLとした。ポリエチレン製ボトルに分注充填後、高圧蒸気滅菌を行って、0.5%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例11
実施例1で得られた水溶液1の10mLに、精製エタノール240mL、グリセリン15.0g、トリイソオクタン酸グリセリン15.0gおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長20;ポリオキシプロピレン鎖長20)0.6gを加えて均一に混合し、精製水を加えて全体を300mLとした。ポリエチレン製ボトルに無菌充填して、0.2%オラネキシジン含有速乾性擦込式手指消毒剤を得た。
製剤例12
実施例2で得られた水溶液2の20mLに、ポリビニルアルコール(部分けん化物)6.3g、ラウリン酸ジエタノールアミド1.8gおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長20;ポリオキシプロピレン鎖長20)3.6gを加え加えて均一に混合し、グルコン酸を加えてpHを4〜7に調整した後、精製水を加えて全体を180mLとした。ポリエチレン製ボトルに分注充填後、高圧蒸気滅菌を行って、スクラブ剤形態の、2%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例13
実施例3で得られた水溶液3の160mLに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長20;ポリオキシプロピレン鎖長20)40gを加え、ポリエチレン製ボトルに分注充填後、高圧蒸気滅菌を行って、用時希釈用16%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
製剤例14
実施例2で得られた水溶液2の5mLに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレン鎖長20;ポリオキシプロピレン鎖長20)0.9gを加え加えて均一に混合し、精製水を加えて全体を90Lとした。ポリエチレン製ボトルに無菌充填して、0.001%オラネキシジン含有消毒剤を得た。
試験例
皮膚刺激性試験
ウサギの背部被毛を剪毛し、アイランドスキンもしくは傷を有さない動物を選択した。各試験物質を1日1回、4日間、開放塗布した。2回目以降の試験物質の塗布は、水を含ませたカット綿で塗布部位をふき取った後に行った。評価は、下記のDraizeの判定基準に従い、紅斑と浮腫について1日1回、判定しその合計点を評点とした。
Figure 0005268982
結果を、平均値(n=6)として表2に示す。
Figure 0005268982
結果から明らかなように、本発明の消毒剤は皮膚刺激性において問題なく、特に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを添加した製剤例4、5、10および14の消毒剤は、皮膚刺激性においても優れていることが判る。
尚、上記製剤例1〜14の消毒剤は、ポリアルキレングリコールの添加の有無に関わらず、オラネキシジンの濃度に応じた殺菌作用を示した。
参考例1
オラネキシジン遊離体の調製
オラネキシジン塩酸塩(40g)の水(360mL)懸濁液に4Nの水酸化ナトリウム水溶液(120mL)を加え、25℃で90分攪拌した。結晶を吸引ろ過後、水(500mL)で洗浄し、再び水(500mL)に懸濁した。室温(約25℃)で5分攪拌後、吸引ろ過し、水(500mL)で洗浄した。この操作(洗浄)を2回繰り返した。得られた結晶(湿重量:127g)をメタノール(200mL)で溶解させた後、水(60mL)を加えた。乳濁した混合物を室温で12時間放置し、析出した結晶を吸引ろ過した。結晶を室温で減圧乾燥し、オラネキシジン遊離体(32g)を得た。
参考例2
3%オラネキシジングルコン酸塩の重水溶液の調製
参考例1で得られたオラネキシジン遊離体(40mg)を重水(1mL)に懸濁させ、この懸濁液にグルコノラクトン(19.2mg)の重水(1mL)溶液を滴下し、室温で24時間攪拌し、オラネキシジングルコン酸塩の重水溶液を調製した。
H−NMR(DO):0.75(3H,t,J=7.1Hz),0.8−1.2(12H,m),2.6−2.8(2H,m),3.4−3.7(4H,m),3.9−4.0(2H.m),4.07(2H,brs),6.90(1H,d,J=7.9Hz),7.09(1H,d,J=7.9Hz),7.13(1H,s)
本発明の水溶液は、広い殺菌スペクトルを有し、殺菌効果が短時間で現れ、さらにその活性が長時間持続するので、医療用消毒剤として有用である。

Claims (9)

  1. オラネキシジンと、オラネキシジンに対し少なくとも等モルのグルコン酸とを含有し、グルコン酸以外の酸およびその塩を実質的に含有しておらず、オラネキシジンの濃度が0.001〜20%(W/V)であることを特徴とする水溶液。
  2. オラネキシジンの濃度が0.1〜20%(W/V)である請求項1に記載の水溶液。
  3. グルコン酸以外の酸およびその塩の濃度が0.05%(W/V)以下である請求項1又は2に記載の水溶液。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の水溶液を配合してなる消毒剤。
  5. 水性製剤である請求項4に記載の消毒剤。
  6. アルコール製剤である請求項に記載の消毒剤。
  7. オラネキシジンの濃度が0.001〜6%(W/V)である請求項に記載の消毒剤。
  8. オラネキシジン酸付加塩の水懸濁液付加している酸に対し1当量以上のアルカリ水溶液を添加し、析出した遊離オラネキシジンの固形物を水で洗浄した後、遊離オラネキシジンに対し少なくとも等モルのグルコン酸を含む水溶液に溶解させて、オラネキシジンの濃度が0.001〜20%(W/V)となるように調製することを特徴とするオラネキシジンのグルコン酸塩の水溶液の調製方法。
  9. アルカリ水溶液の添加が、20〜30℃の温度で行われることを特徴とする請求項に記載の調方法。
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