本発明は、複数の原画からの光束を1つの観察領域における互いに異なる視野領域に導いて合成画像を表示するヘッドマウントディスプレイ(HMD)等の画像表示装置に関する。
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等の画像表示装置に用いる観察光学系としては、小型であることが望まれている。特に、観察者の視軸方向において薄型であることが望まれている。また、画像観察における臨場感を増すために、広画角で画像を提示することが望まれている。
一方、人間の視野の領域分類として、以下のようなものがある。
弁別視野:視力等の視機能が優れている領域…画像中心に対して数度の領域
有効視野:眼球運動だけで情報を探索可能な領域…水平±15°,垂直+8°〜−12°
誘導視野:視覚情報の存在とそれが大まかにどのような情報かの判別ができる程度の識別能力しかないが、空間座標系に影響を与える領域…水平±50°,垂直+35°〜−50°。
観察光学系として望ましい画角としては、非特許文献1には、誘導視野において大画面画像の臨場感を感じるのに必要な画角であると述べられている。したがって、HMDの視野角としては、誘導視野の全域をカバーするような広画角であることが望ましい。
ただし、誘導視野の全域をカバーしつつ小型で軽量の観察光学系を構成することは困難であり、有効視野を超えて、なるべく誘導視野の画角に近い視野を確保することが現実的である。
薄型の観察光学系を実現するために好適な光学系が、特許文献1にて開示されている。特許文献1にて開示された光学系では、原画からの光束をプリズムに入射させ、該プリズムに形成された複数の偏心反射曲面で光路を折り畳み、該プリズムから射出した光束を瞳に導く。また、この光学系では、アジムス角度により光学的パワーが異なる面を用いて偏心収差を補正する。
ただし、特許文献1にて開示された光学系は、原画からの光束を中間結像させることなく瞳に導くため、小型ではあるものの、液晶パネル等の画像形成素子に表示される原画のサイズに対して達成できる画角の限界が小さい。このため、広画角を達成するためには、原画の形成領域が広い大型の画像形成素子を用いることが必要となる。
画像形成素子が大型であると、観察光学系を広画角で画像を提示可能とすることは容易である。しかし、提示画角のスペックに対して適切な原画形成領域のサイズを有する画像形成素子を常に入手することが困難である。
画角スペックに対して小さい原画形成領域のサイズを有する画像形成素子を用いつつ、広画角での画像提示が可能な観察光学系として、特許文献2,3,4にて開示されたものがある。これらの観察光学系では、互いに異なる視野領域に対応する複数の原画からの光束によって形成される複数の画像を合成して1つの観察視野内に提示する。
特許文献2にて開示された観察光学系は、光学系内にV字型のミラーを設け、1つの画像形成素子に形成された一方の原画からの光束をV字型ミラーの一方のミラー面で反射して瞳に向かわせる。また、他の画像形成素子に形成された他方の原画からの光束をV字型ミラーの他方のミラー面で瞳に向かわせる。また、特許文献2には、一方の原画からの光束をV字型ハーフミラーにおける一方のハーフミラーで反射させた後、凹面鏡で反射させ、V字型ハーフミラーの上記一方のハーフミラーを透過させて瞳に導く観察光学系も開示されている。この観察光学系では、他方の原画からの光束も同様にしてV字型ハーフミラーの他方のハーフミラー面と凹面鏡とによって光路を折り畳むようにしている。
特許文献2において、観察光学系の瞳の中心と、合成された画像が提示される観察視野の中心とを結ぶ軸上の光線を中心画角主光線と定義するとき、該中心画角主光線はV字型ハーフミラーの頂点部分を通る。さらに、中心画角主光線は、V字型ハーフミラーと凹面鏡とで光路が折り畳まれる断面が、2つの原画に対して共通である。
また、特許文献3にて開示された観察光学系は、1つの原画からの光束を瞳に導くプリズムの2つを一体化したように形成されるプリズムを用いて、2つの原画からの光束によって形成される2つの画像を1つの観察視野内に提示する。該観察光学系を構成する2つの原画に対応する2つの光学系はそれぞれ、複数の偏心反射曲面によって折り畳まれる中心画角主光線の光路(折り畳み光路)を含む断面が互いに一致するように構成されている。また、2つの原画に対応する2つの光学系が、中心画角主光線を含み、該中心画角主光線の折り畳み光路を含む断面に垂直な断面に対して対称な形に配置された構成を有する。
さらに、特許文献4にて開示された観察光学系では、2つの原画からの光路が観察光学系内で重複しており、2つの画像形成素子に対向配置されたプリズムの入射面が他方の画像形成素子からの光束を反射して瞳に向かわせる反射面としても機能する。つまり、2つの原画に対応する2つの光学系のそれぞれに含まれる光学面が、2つの原画からの光束に対して共用されている。該2つの光学系は、中心画角主光線を含み、該中心画角主光線の折り畳み光路を含む断面に垂直な断面に対して対称な形に配置されている。
このように、特許文献2,3,4ではいずれも、隣接配置又は重複配置された2つの光学系によって2つの原画からの光束により形成される画像を1つの観察視野内で合成している。
特開平07−333551号公報
特開平07−274097号公報
特開平11−326820号公報
特開平10−246865号公報
OplusE 1986年1月号 p.123〜124 生理光学16
観察光学系全体のサイズ(視軸方向の厚み)を小さくするには、1つの光学系の担う画角が小さい方が好ましい。一方、1つの光学系の担う画角が小さいと、観察光学系全体としての画角をあまり広画角化することができない。
特許文献2〜4にて開示された観察光学系では、2つの画像形成素子と2つの光学系のみを用いているため、1つの光学系の担う画角が大きい。このため、観察光学系の厚みが大きくなり、画像表示装置としての小型化及び薄型化が困難である。
また、特許文献2〜4にて開示された観察光学系では、2つの光学系を隣接配置しているため、一方の画像形成素子からの光束が他方の画像形成素子に到達する確率が高い。該一方の画像形成素子からの光束が他方の画像形成素子の表面で反射されると、この反射光によってゴーストやフレアが発生する可能性がある。
さらに、特許文献2〜4にて開示された観察光学系では、2つの画像形成素子と2つの光学系を用いて水平方向での広画角化を図っている。
誘導視野は、有効視野や人間が感知可能な全体の視野に対して、垂直方向視野に対する水平方向視野の比率が高い。有効視野も、水平方向の方が垂直方向よりも広い。このため、水平方向を優先して広視野化することは合理的である。しかしながら、誘導視野全体をなるべくカバーするような表示を行って臨場感を向上させるには、垂直方向にもある程度の広画角化を達成することが望ましい。
また、特許文献2〜4にて開示された観察光学系では、2つの光学系で視野を等分しているため、視野中心に2つの光学系の継ぎ目が存在することになる。このため、観察者が最も注目することが多い視野中心において、画像が不連続になったり、輝度が低下したり、継ぎ目で発生する不要光によるフレアが発生したりして、提示される画像の品位を低下させる可能性がある。
本発明は、複数の画像形成素子と複数の光学系を含む観察光学系とを用いて、薄型でありながらも、広画角で品位の高い画像の提示が可能な画像表示装置を提供する。
本発明の一側面としての画像表示装置は、それぞれ原画を形成する複数の画像形成素子と、該複数の画像形成素子からの光束を共通の射出瞳に導いて、複数の原画のそれぞれに対応する画像を観察視野における互いに異なる視野領域の画像として提示する観察光学系とを有する。観察光学系は、複数の画像形成素子のうち、第1の画像形成素子からの光束を複数の反射面により第1の断面内で折り畳んで射出瞳に導く第1の光学系と、第2の画像形成素子からの光束を複数の反射面により第2の断面内で折り畳んで射出瞳に導く第2の光学系とを少なくとも含む。そして、第1の断面と第2の断面とが、射出瞳内の1点から観察視野内の1点に向かう軸上で交差していることを特徴とする。
本発明の構成によれば、複数の画像形成素子と複数の光学系を含む観察光学系と有し、薄型で、広画角かつ高品位の画像を提示できる画像表示装置を実現することができる。
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の実施例1であるHMD(画像表示装置)の観察光学系100の構成を示している。
HMDは観察者の頭部に装着され、観察光学系100の射出瞳の位置に観察者の片眼(瞳孔)が配置されることで、良好な画像観察を行わせることができる。
図1中の断面A(xz断面:第2の断面)は、観察者の頭部に装着された状態において、観察光学系100を上方から見た場合の断面を示し、断面B(yz断面:第1の断面)は、観察光学系100を側方から見た場合の断面を示す。また、断面C(xy断面に平行な面)は、観察光学系100を背面(射出瞳とは反対側)から見たときの図である。なお、図1には、片眼用の観察光学系100を示すが、実際のHMDには、右眼用と左眼用に観察光学系100がそれぞれ設けられる。
11は第1の光学系、12は第2の光学系、13は第3の光学系である。21は第1の原画を表示する第1の画像形成素子、22は第2の原画を形成する第2の画像形成素子、23は第3の原画を表示する第3の画像形成素子である。
第1〜第3の画像形成素子21〜23は、液晶パネルや有機EL等の光変調素子により構成されている。第1〜第3の画像形成素子21〜23には、HMD内に設けられた駆動回路500が接続されている。駆動回路500は、画像供給装置(パーソナルコンピュータ、DVDプレーヤ、ビデオデッキ、テレビチューナ等)501から入力された画像信号に応じて第1〜第3の画像形成素子21〜23に第1〜第3の原画を形成させる。本実施例の画像表示装置(HMD)と画像供給装置501とにより画像表示システムが構成される。このことは、後述する他の実施例でも同じである。
図2Aには、第2の画像形成素子22に形成される第2の原画を示している。また、図2Bには、第1の画像形成素子21に形成される第1の原画を示している。さらに、図2Cには、第3の画像形成素子23に形成される第3の原画を示している。
第1〜第3の光学系11〜13は、第1〜第3の画像形成素子21〜23からの光束を共通の射出瞳Sに導いて、第1〜第3の原画のそれぞれに対応する画像を観察視野における互いに異なる視野領域(第1〜第3の視野領域θ1〜θ3)の画像として提示する。これにより、提示される画像は、図2Dに示すように、互いに異なる3つの視野領域(つまりは画角)の3つの画像が全体として1つの広画角画像を構成するように合成された(繋がった)合成画像となる。
図1において、断面Aは、第2及び第3の光学系12,13の偏心断面である。また、断面Bは、第1の光学系11の偏心断面である。Sは観察光学系100の射出瞳である。偏心断面Aと偏心断面Bは、射出瞳Sの中心(1点)から観察視野、つまりは合成画像の中心(1点)に向かう軸であるz軸上で直角に交差している。なお、x軸方向が観察視野の水平方向を、y軸方向が観察視野の垂直方向を示している。
第1の光学系11は、面(反射面兼射出透過面)S11、面(反射面)S12及び面(入射透過面)S13を有する。第2の光学系12は、面(反射面兼射出透過面)S21、面(反射面)S22及び面(入射透過面)S23を有する。第3の光学系13は、面(反射面兼射出透過面)S31、面(反射面)S32及び面(入射透過面)S33を有する。
第1〜第3の光学系11〜13(つまりは観察光学系100)は、1より大きい屈折率を有する媒質で満たされた単一の光学素子1上に面S11〜S33が形成されることによって構成されている。なお、光学素子1は、一体成型された素子であってもよいし、第1〜第3の光学系11〜13を構成する3つの素子が互いに接着されて一体化されたものであってもよい。このことは、後述する他の実施例でも同じである。また、面S11,S12,S21,S22,S31,S32は、偏心反射面である。
第1の画像形成素子21に形成された第1の原画からの光束は、第1の光学系11の面S13から光学素子1に入射して、反射面S11で反射され、反射面S12で反射された後、面S11を透過して射出瞳Sに導かれる。
面S11〜S13のうち少なくとも1つが曲面形状、すなわち光学的パワーを有することで、射出瞳Sの位置に眼(瞳孔)を置いた観察者は、第1の原画の拡大された虚像(画像)を第1の視野領域θ1にて観察することができる。特に、反射面としてのみ用いられる面S12を凹面鏡形状として、該面S12に原画の拡大虚像を形成するためのパワーを持たせることが望ましい。これは、面S12での反射は屈折率が1より大きい媒質内での反射であるため、屈折面に比べて少ない曲率で強いパワーを得ることができ、また色収差の発生も少なくすることができるためである。
また、面S12を曲面とすることにより発生する非回転対称な収差(偏心収差)に対しては、面S12を非回転対称形状とすることでこれを抑制することが望ましい。これにより、第1の光学系11を偏心光学系としたことによる画質の劣化が抑えられた良好な画像を提示することが可能になる。
面S11〜S13の全てを曲面形状とし、拡大虚像を形成するパワーをこれらの面S11〜S13で分担することにより、各面での収差の発生を抑制することがより好ましい。また、面S11〜S13の全てを非回転対称形状することで、面S12を非回転対称形状とするだけでは抑制できない偏心収差をより良好に補正することができる。
また、射出瞳Sを形成する有効光束が、面S11での反射時には該面S11に臨界角より大きい角度で入射して内部全反射し、面S11での透過時には該面S11に臨界角より小さい角度で入射して透過するようにすることが望ましい。これにより、第1の光学系11での光量損失を少なくして、明るい画像を提示することが可能となる。
このように、第1の光学系11は、複数の反射面S11,S12を用いて第1の原画(第1の画像形成素子21)からの光束の光路を折り畳み、かつ反射面S12を小さい曲率で強いパワーが得られるように形成している。これにより、第1の光学系11を、視軸方向(z軸方向)において薄型の光学系としている。
また、面S11,S21,S31は、それぞれの原画に対応した虚像間の境界が観察されないように、連続した面であることが好ましい。例えば、面S11,S21,S31が、面S11における有効光束の通過領域上に面を定義するための原点が設定された1つの曲面式で表されることが好ましい。これにより、観察者の瞳孔の中心が観察光学系の射出瞳Sの中心に対してずれたときに、合成画像を構成する画像間の繋ぎ目が欠落して見えたり、3つの視野領域の画像が不連続に歪んで見えたりするといった画質の劣化を低減することができる。
上述した好ましい又は望ましい構成は、本実施例の第2及び第3の光学系12,13や他の実施例における各光学系についても同様に適用される。
第2の画像形成素子22に形成された第2の原画からの光束は、第2の光学系12の面S23から光学素子1に入射し、反射面S21で反射され、反射面S22で反射された後、面S21を透過して射出瞳Sに導かれる。この光路中の光学面のパワーによって射出瞳Sの位置に瞳孔を置いた観察者は、第2の原画の拡大虚像(画像)を第2の視野領域θ2にて観察することができる。
第3の画像形成素子23に形成された第3の原画からの光束は、第3の光学系13の面S33から光学素子1に入射し、反射面S31で反射され、反射面S32で反射され後、面S31を透過して射出瞳Sに導かれる。この光路中の光学面のパワーによって射出瞳Sの位置に瞳孔を置いた観察者は、第3の原画の拡大虚像(画像)を第3の視野領域θ3にて観察することができる。第2及び第3の光学系12,13は、第1の光学系11が画像を提示する第1の視野領域θ1を挟んだ互いに反対側の2つの視野領域θ2,θ3に画像を提示する。
このように3つの原画からの光束がそれぞれ対応する光学系を通って射出瞳Sに導かれることにより、観察者はそれらの原画の拡大虚像が1つに合成された合成画像を第1〜第3の視野領域θ1〜θ3により構成される観察視野内で観察することができる。第1の視野領域θ1は、水平方向においてz軸を中心とした視野領域であり、第2及び第3の視野領域θ2,θ3のそれぞれ(及びそれらの合計)よりも広い。
本実施例においては、第2の光学系12と第3の光学系13は、それぞれが光束(光路)を折り畳む断面である偏心断面(xz断面)が同じ光学系である。偏心断面は、別の言い方をすれば、原画の中心と観察光学系の射出瞳Sの中心とを通る光線が偏心反射面によって反射される断面である。
本実施例では、前述したように、第1の光学系11の偏心断面Bと、第2及び第3の光学系12,13の偏心断面Aとがそれぞれ、射出瞳Sの中心から観察視野(以下、合成視野ともいう)の中心に向かうz軸上で直角に交差している。
そして、同一の偏心断面Aを有する第2及び第3の光学系12,13は、該偏心断面Aに直交する偏心断面Bを有する第1の光学系11を挟んで互いに反対側に配置されている。
第2及び第3の画像形成素子22,23のうち、一方の画像形成素子からの光束が他方の画像形成素子に到達するためには、該光束は、第2の光学系12と第1の光学系11との境界及び第1の光学系11と第3の光学系13との境界を通過しなければならない。このため、同一の偏心断面を有する2つの光学系を隣接配置した従来の観察光学系に比べて、一方の画像形成素子から他方の画像形成素子に到達する光束の量が減少する。
また、第2及び第3の光学系12,13は、偏心断面が異なる第1の光学系11を間に挟んでいる。このため、第2及び第3の画像形成素子22,23のうち一方の画像形成素子から偏心断面A上を進む光束は、第1の光学系11を構成する面に当たると、偏心断面Aとは異なる偏心断面上を進む光束となり、他方の画像形成素子に対して外れた方向に向かう。
これらの2つの作用によって、同一の偏心断面Aを有する第2及び第3の光学系12,13に対応する一方の画像形成素子からの光束が他方の画像形成素子に入射する光束の量を減少させることができる。この結果、不要光としてのゴーストやフレアの発生を抑制することができる。
図1の断面Aに現れているように、光学素子1の背面側における第1の光学系11と第2及び第3の光学系12,13との境界には、段差部101,102が形成されている。そして、段差部101,102の側面は、観察光学系の射出瞳Sの中心に向かう方向に延びる形状を有することが好ましい。これにより、原画の繋ぎ目での画像の欠けや輝度低下が生じないように画像合成を行うことが可能となる。
また、段差部101,102や第1の光学系11と第2及び第3の光学系12,13との境界のエッジ部には遮光膜を形成して、エッジ散乱や迷光による不要光の発生を抑制することが好ましい。
ここで、第1〜第3の光学系11〜13をそれぞれ構成する3つの素子を同じ形状(寸法)に形成し、これらを接合して光学素子1を製作すると、面S11,S21,S31を3つの原画に対応した虚像間の境界が観察されないような連続面とすることが難しい。このため、第1の光学系11を構成する素子と第2及び第3の光学系12,13を構成する2つの素子の形状を異ならせ、これらを接合して光学素子1を製作するのが好ましい。
そして、このためには、第1の画像形成素子21と第2及び第3の画像形成素子22,23として、原画の有効形成領域のサイズ(有効サイズ)が異なるものを用いることが好ましい。具体的には、第1の画像形成素子21に比べて、第2及び第3の画像形成素子22,23の有効サイズを小さくするとよい。
これにより、面S11,S21,S31を3つの原画に対応した虚像間の境界が観察されないような連続面とすることが容易になる。また、第2及び第3の画像形成素子22,23として、HMDの全画角のうち第1の画像形成素子21に対応する画角部分以外の画角部分に応じて適切な有効サイズを有するものを選択することができる。したがって、3つの画像形成素子21〜23及び3つの光学系11〜13を含むHMDの小型化を図ることができる。
また、第1の光学系21と第2及び第3の光学系22,23が形成する第1〜第3の視野領域は、図2A〜図2Cに示すものに限られない。図3A〜図3Cには、第1〜第3の視野領域の他の例を示している。なお、第1の視野領域θ1が、水平方向においてz軸を中心とした視野領域であり、第2及び第3の視野領域θ2,θ3のそれぞれよりも広い点では、図2A〜図2Cに示した例と同じである。
図3Aは、第1の視野領域の垂直方向画角が、第2及び第3の視野領域の垂直方向画角に比べて大きい場合の例である。この場合、第1の視野領域が水平方向で30°以上、垂直方向で20°以上であると、観察者が合成視野(合成画像)の中心を注視した場合に、第1の視野領域と第2及び第3の視野領域との境界が観察者の有効視野から外れる。このため、合成画像を構成する画像間の繋ぎ目で仮に画像の不連続や輝度低下等が生じた場合でも、合成画像の中心を注視する場合が多い一般的な観察状態においては、有効視野やその周辺における情報の瞬時把握が可能な視野に含まれる画像は影響を受けない。このため、画質劣化が認識されにくい観察光学系を構築することができる。
図3Bは、第1の視野領域の垂直方向画角が第2及び第3の視野領域の垂直方向画角に比べて小さい場合の図である。この場合、第1の視野領域と第2及び第3の視野領域との境界が観察者の有効視野内に入る可能性があるが、光学系の厚みをより薄くすることができる。
図3Aでは、第2及び第3の視野領域の垂直方向での中心が、第1の視野領域の垂直方向での中心と同じ高さ位置にある例を示した。しかし、図3Cに示すように、第2及び第3の視野領域の垂直方向での中心を第1の視野領域の垂直方向での中心よりも上方にずらしてもよい。この例は、第1の視野領域が観察者の有効視野に対して十分に広く、かつ合成視野が誘導視野に対して不足する場合に、合成視野と誘導視野との差異が上下左右で均一に近づき、臨場感を高めるのに好ましい例である。この場合、第1の光学系11の偏心断面と第2及び第3の光学系12,13の偏心断面とが交差することで形成される直線(軸)は、射出瞳Sの中心から合成視野の中心に向かうz軸に平行な軸である。言い換えれば、射出瞳Sの中心から合成視野の中心に向かうz軸と同様に、射出瞳内の1点から合成視野内(観察視野内)の1点に向かう軸である。
以上の視野領域のバリエーションは、偏心断面が互いに異なる第1の光学系と第2及び第3の光学系との間で、画像形成素子の形状や有効サイズを異ならせたり、光学系の形状、サイズ、焦点距離等を含む光学系の仕様を異ならせたりすることで実現される。
さらに、図2A〜図2C及び図3A〜図3Cでは、第1〜第3の視野領域が互いにオーバーラップすることなく形成される場合について説明した。しかし、図4A〜図4Cに示すように、第1〜第3の視野領域を互いにオーバーラップさせてもよい。この場合、同図に示すように、第1〜第3の原画も互いに重複する部分を含むように形成される。図4Dには、この場合の合成画像を示している。この例によれば、観察者の瞳孔が観察光学系の射出瞳Sからずれた場合に、合成画像を構成する画像間の繋ぎ目が欠落して見えてしまうことを防止できる。
本実施例では、偏心断面Bを有する第1の光学系11の両側に配置された第2及び第3の光学系12,13の偏心断面Aにおいて、3つ(奇数個)の画像を3つ(奇数個)の光学系11〜13によって1つの画像に合成している。この場合、第1の光学系11の偏心断面Bに対して面対称となるように3つの光学系11〜13を構成するとよい。つまり、前述したように、第1の視野領域を水平方向においてz軸を中心とした視野領域とし、その両側に互いに同一の画角に相当する第2及び第3の視野領域を形成するとよい。これは、水平方向では有効視野も誘導視野も左右対称な視野となっており、弁別視野に(より望ましくは有効視野)に合成画像を構成する画像の繋ぎ目が入らない構成にし易いためである。
本実施例の観察光学系100は、3つの原画からの光束の光路を3つの偏心光学系11〜13によって偏心断面内で折り畳み、該3つの原画に対応する3つの画像を合成して1つの合成画像として観察させる。このため、各光学系の厚みに対して観察光学系の全体により提示できる画角がきわめて広い。
図5には、本発明の実施例2であるHMD(画像表示装置)の観察光学系100L,100Rの構成を示している。
HMDは観察者の頭部に装着され、観察光学系100L,100Rの射出瞳の位置に観察者の両眼(瞳孔)が配置されることで、良好な画像観察を行わせることができる。
図5中の断面A(xz断面:第2の断面)は、観察者の頭部に装着された状態において、観察光学系100L,100Rを上方から見た場合の断面を示し、断面B(yz断面:第1の断面)は、観察光学系100Rを側方から見た場合の断面を示す。また、断面C(xy断面)は、観察光学系100L,100Rを背面(射出瞳とは反対側)から見たときの図である。
右眼用の観察光学系100Rにおいて、11Rは第1の光学系、12Rは第2の光学系である。また、左眼用の観察光学系100Lにおいて、11Lは第1の光学系、13Lは第2の光学系である。
21R,22Rはそれぞれ、右眼用の第1の原画及び第2の原画を形成する第1の画像形成素子及び第2の画像形成素子である。21L,23Lはそれぞれ、左眼用の第1の原画及び第2の原画を形成する第3の画像形成素子及び第4の画像形成素子である。
図6Aには、第4の画像形成素子23Lに形成される左眼用の第2の原画を示している。また、図6Bには、第3の画像形成素子21Lに形成される左眼用の第1の原画を示している。また、図6Cには、第1の画像形成素子21Rに形成される右眼用の第1の原画を示している。さらに、図6Dには、第2の画像形成素子22Rに形成される右眼用の第2の原画を示している。
右眼用の第1及び第2の光学系11R,12Rは、第1及び第2の画像形成素子21R,22Rからの光束を右眼用の共通の射出瞳SRに導く。これにより、右眼用の第1及び第2の原画のそれぞれに対応する画像を右眼観察視野における互いに異なる視野領域(第1及び第2の視野領域θ1R,θ2R)の画像として提示する。一方、左眼用の第1及び第2の光学系11L,13Lは、第3及び第4の画像形成素子21L,23Lからの光束を左眼用の共通の射出瞳SLに導く。これにより、左眼用の第1及び第2の原画のそれぞれに対応する画像を左眼観察視野における互いに異なる視野領域(第3及び第4の視野領域θ1L,θ3L)の画像として提示する。
こうして両眼に対して提示される画像は、図6Eに示すように、互いに異なる4つの視野領域(つまりは画角)の4つの画像が全体として1つの広画角画像を構成するように合成された(繋がった)合成画像となる。
図5において、断面Aは、右眼用及び左眼用の第2の光学系12R,13Lの偏心断面である。また、断面Bは、右眼用及び左眼用の第1の光学系11R,11Lの偏心断面である。右眼用の観察光学系100Rにおいて、偏心断面Aと偏心断面Bは、射出瞳SRの中心(1点)から観察視野、つまりは合成画像の中心(1点)に向かう軸であるz軸(視軸)上で直角に交差している。また、左眼用の観察光学系100Lにおいて、偏心断面Aと偏心断面Bは、射出瞳SLの中心(1点)から観察視野、つまりは合成画像の中心(1点)に向かう軸(視軸)上で直角に交差している。左眼用の観察光学系100Lにおいて、射出瞳SLの中心から合成画像の中心に向かう軸は、z軸に平行な軸である。
右眼用の第1の光学系11Rは、面(反射面兼射出透過面)S11R、面(反射面)S12R及び面(入射透過面)S13Rを有する。また、右眼用の第2の光学系12Rは、面(反射面兼射出透過面)S21R、面(反射面)S22R及び面(入射透過面)S23Rを有する。
右眼用の第1及び第2の光学系11R,12R(つまりは観察光学系100R)は、1より大きい屈折率を有する媒質で満たされた単一の光学素子1R上に面S11R〜S23Rが形成されることによって構成されている。
左眼用の第1の光学系11Lは、面(反射面兼射出透過面)S11L、面(反射面)S12L及び面(入射透過面)S13Lを有する。また、左眼用の第2の光学系13Lは、面(反射面兼射出透過面)S31L、面(反射面)S32L及び面(入射透過面)S33Lを有する。
左眼用の第1及び第2の光学系11L,13L(つまりは観察光学系100L)は、1より大きい屈折率を有する媒質で満たされた単一の光学素子1L上に面S11L〜S33Lが形成されることによって構成されている。
面S11R,S12R,S21R,S22R,S11L,S12L,S31L,S32Lは、偏心反射面である。
右眼用の第1の画像形成素子21Rに形成された右眼用の第1の原画からの光束は、面S13Rから光学素子1Rに入射し、反射面S11Rで反射され、反射面S12Rで反射された後、面S11Rを透過して右眼用観察光学系100Rの射出瞳SRに導かれる。面S11R,S12R,S13Rのうち少なくとも1つ面(望ましくは全ての面)は、曲面形状、すなわち光学的パワーを有する。これにより、射出瞳SRの位置に右眼(瞳孔)を置いた観察者は、右眼用の第1の原画の拡大虚像を第1の視野領域θ1Rにて観察することができる。
右眼用の第2の画像形成素子22Rに形成された右眼用の第2の原画からの光束は、面S23Rから光学素子1Rに入射し、反射面S21Rで反射され、反射面S22Rで反射された後、面S21Rを透過して右眼用観察光学系100Rの射出瞳SRに導かれる。面S21R,S22R,S23Rのうち少なくとも1つ面(望ましくは全ての面)の光学的パワーによって、射出瞳SRの位置に右眼を置いた観察者は、右眼用の第2の原画の拡大虚像を第2の視野領域θ2Rにて観察することができる。こうして右眼に対して提示される画像は、第1及び第2の視野領域θ1R,θ2Rの2つの画像が繋がった合成画像となる。
左眼用の第3の画像形成素子21Lに形成された左眼用の第1の原画からの光束は、面S13Lから光学素子1Lに入射し、反射面S11Lで反射され、反射面S12Lで反射された後、面S11Lを透過して左眼用観察光学系100Lの射出瞳SLに導かれる。面S11L,S12L,S13Lのうち少なくとも1つ面(望ましくは全ての面)の光学的パワーによって、射出瞳SLの位置に左眼(瞳孔)を置いた観察者は、左眼用の第1の原画の拡大虚像を第3の視野領域θ1Lにて観察することができる。
左眼用の第4の画像形成素子23Lに形成された左眼用の第2の原画からの光束は、面S33Lから光学素子1Lに入射し、反射面S31Lで反射され、反射面S32Lで反射された後、面S31Lを透過して左眼用観察光学系100Lの射出瞳SLに導かれる。面S31L,S32L,S33Lのうち少なくとも1つ面(望ましくは全ての面)の光学的パワーによって、射出瞳SLの位置に左眼を置いた観察者は、左眼用の第2の原画の拡大虚像を第4の視野領域θ3Lにて観察することができる。こうして左眼に対して提示される画像は、第3及び第4の視野領域θ1L,θ3Lの2つの画像が繋がった合成画像となる。
ここで、右眼用の第1の原画と左眼用の第1の原画は、互いに両眼の視差分だけ異なる画像を第1の視野領域θ1R及び第3の視野領域θ1Lに提示する。また、右眼用の第2の原画は、右眼用の第1の原画により提示される画像の右側に隣接する画像を第2の視野領域θ2Rに提示する。さらに、左眼用の第2の原画は、左眼用の第1の原画により提示される画像の左側に隣接する画像を第4の視野領域θ3Lに提示する。これらの4つの画像が両眼視による観察者の脳内で合成されることにより、観察者は、第1及び第3の視野領域θ1R,θ1Lに相当する中心視野で画像を立体観察することができ、左右の周辺視野で画像を2D観察する。
本実施例では、右眼用及び左眼用の観察光学系100R,100Lのそれぞれでは、同一の偏心断面を有する光学系は存在しない、しかも、右眼用及び左眼用の観察光学系100R,100Lは互いに独立して構成されている。このため、右眼用及び左眼用の観察光学系100R,100Lのそれぞれ、及び両観察光学系100R,100L間において、1つの画像形成素子からの光束が他の画像形成素子に入射する可能性は低く、フレア等の不要光による画質の劣化は生じにくい。
図5の断面Aに現れているように、光学素子1R,1Lの背面側における右眼用の第1の光学系11Rと第2の光学系12Rとの境界及び左眼用の第1の光学系11Lと第2の光学系13Lとの境界には、段差部102R,102Lが形成されている。段差部102R,102Lの側面はそれぞれ、観察光学系100R,100Lの射出瞳SR,SLの中心に向かう方向に延びる形状を有することが好ましい。これにより、原画の繋ぎ目での画像の欠けや輝度低下が生じないように画像合成を行うことが可能となる。
また、段差部102R,102Lや第1の光学系11R,11Lのエッジ部101R,101Lには遮光膜を形成して、エッジ散乱や迷光による不要光の発生を抑制することが好ましい。
本実施例では、右眼用及び左眼用の観察光学系100R,100Lがそれぞれ、偏心断面Bを有する第1の光学系に隣接配置された第2の光学系の偏心断面Aにおいて、2つ(偶数個)の画像を2つ(偶数個)の光学系によって1つの画像に合成する。右眼用及び左眼用の観察光学系100R,100Lは、互いにずれた視軸(z軸及びこれに平行な軸)を有する。
そして、右眼用及び左眼用の観察光学系100R,100Lはそれぞれ、2つの画像形成素子と2つの光学系によって合成視野を形成する水平方向において、視軸に対して非対称となるように構成されている。つまり、右眼側の第1の視野領域と左眼側の第3の視野領域とをそれぞれ、水平方向においてz軸及びこれに平行な軸を中心とした視野領域とし、それらの一方の外側に第2及び第4の視野領域を形成している。さらに、第1及び第3の視野領域は、水平方向において第3及び第4の視野領域よりも広い。
これにより、観察者が右眼及び左眼の合成画像のそれぞれの中心を注視した場合において、第1の原画に対応する視野領域と第2の原画に対応する視野領域との境界が右眼及び左眼の弁別視野(より望ましくは有効視野)から外れる。このため、合成画像を構成する画像間の繋ぎ目で生じた画像の不連続や輝度低下あるいは不要光による画質劣化が認識されにくい両眼用の観察光学系を構築することができる。
本実施例の観察光学系100R,100Lはそれぞれ、2つの原画からの光束の光路を2つの偏心光学系(11R,12Rと11L,13L)によって偏心断面内で折り畳む。そして、該2つの原画に対応する2つの画像を合成して1つの合成画像として左右の眼に観察させる。このため、各光学系の厚みに対して観察光学系の全体により提示できる画角がきわめて広い。
また、本実施例によれば、右眼用観察光学系100Rの中心(右眼用合成画像の中心)と左眼用観察光学系100Lの中心(左眼用合成画像の中心)とが互いに異なり、両観察光学系100R,100Lが形成する観察視野に互いに重ならない視野領域を設けている。これにより、観察者の眼幅による光学配置の制限を受けにくい構成を実現することができる。
図7には、本発明の実施例3であるHMD(画像表示装置)の観察光学系200の構成を示している。
HMDは観察者の頭部に装着され、観察光学系200の射出瞳の位置に観察者の片眼(瞳孔)が配置されることで、良好な画像観察を行わせることができる。
図7中の断面A(xz断面:第2の断面)は、観察者の頭部に装着された状態において、観察光学系200を上方から見た場合の断面を示し、断面B(yz断面:第1の断面)は、観察光学系200を側方から見た場合の断面を示す。また、断面C(xy断面)は、観察光学系200を背面(射出瞳とは反対側)から見たときの図である。なお、図7には、片眼用の観察光学系200を示すが、実際のHMDには、右眼用と左眼用に観察光学系200がそれぞれ設けられる。
11は第1の光学系、12は第2の光学系、13は第3の光学系、14は第4の光学系である。21は第1の原画を表示する第1の画像形成素子、22は第2の原画を形成する第2の画像形成素子、23は第3の原画を表示する第3の画像形成素子、24は第4の原画を形成する第4の画像形成素子である。
図8Aには、第3の画像形成素子23に形成される第3の原画を示している。また、図8Bには、第1の画像形成素子21に形成される第1の原画を示している。図8Cには、第4の画像形成素子24に形成される第4の原画を示している。さらに、図8Dには、第2の画像形成素子22に形成される第2の原画を示している。
第1〜第4の光学系11〜14は、第1〜第4の画像形成素子21〜24からの光束を共通の射出瞳Sに導いて、第1〜第4の原画のそれぞれに対応する画像を観察視野における互いに異なる視野領域(第1〜第4の視野領域θ1〜θ4)の画像として提示する。これにより、提示される画像は、図8Eに示すように、互いに異なる4つの視野領域(つまりは画角)の4つの画像が全体として1つの広画角画像を構成するように合成された(繋がった)合成画像となる。
図7において、断面Aは、第2及び第3の光学系12,13の偏心断面である。また、断面Bは、第1及び第4の光学系11,14の偏心断面である。Sは観察光学系200の射出瞳である。偏心断面Aと偏心断面Bは、射出瞳Sの中心(1点)から観察視野、つまりは合成画像の中心(1点)に向かう軸であるz軸上で直角に交差している。なお、x軸方向が観察視野の水平方向を、y軸方向が観察視野の垂直方向を示している。
第1の光学系11は、面(反射面兼射出透過面)S11と面(反射面)S12と面(入射透過面)S13とを有する。第2の光学系12は、面(反射面兼射出透過面)S21、面(反射面)S22及び面(入射透過面)S23を有する。第3の光学系13は、面(反射面兼射出透過面)S31、面(反射面)S32及び面(入射透過面)S33を有する。第4の光学系14は、面(反射面兼射出透過面)S41、面(反射面)S42及び面(入射透過面)S43を有する。
第1〜第4の光学系11〜14(つまりは観察光学系200)は、1より大きい屈折率を有する媒質で満たされた単一の光学素子201上に面S11〜S43が形成されることによって構成されている。
面S11,S12,S21,S22,S31,S32,S41,S42は、偏心反射面である。
第1の画像形成素子21に形成された第1の原画からの光束は、第1の光学系11の面S13から光学素子201に入射して、反射面S11で反射され、反射面S12で反射された後、面S11を透過して射出瞳Sに導かれる。面S11〜S13のうち少なくとも1つ(望ましくは全ての面)が曲面形状、すなわち光学的パワーを有することで、射出瞳Sの位置に眼(瞳孔)を置いた観察者は、第1の原画の拡大された虚像(画像)を第1の視野領域θ1にて観察することができる。
第2の画像形成素子22に形成された第2の原画からの光束は、第2の光学系12の面S23から光学素子201に入射して、反射面S21で反射され、反射面S22で反射された後、面S21を透過して射出瞳Sに導かれる。面S21〜S23のうち少なくとも1つ(望ましくは全ての面)の光学的パワーによって、射出瞳Sの位置に眼を置いた観察者は、第2の原画の拡大された虚像(画像)を第2の視野領域θ2にて観察することができる。
第3の画像形成素子23に形成された第3の原画からの光束は、第3の光学系13の面S33から光学素子201に入射して、反射面S31で反射され、反射面S32で反射された後、面S31を透過して射出瞳Sに導かれる。面S31〜S33のうち少なくとも1つ(望ましくは全ての面)の光学的パワーによって、射出瞳Sの位置に眼を置いた観察者は、第3の原画の拡大された虚像(画像)を第3の視野領域θ4にて観察することができる。
第4の画像形成素子24に形成された第4の原画からの光束は、第4の光学系14の面S43から光学素子201に入射して、反射面S41で反射され、反射面S42で反射された後、面S41を透過して射出瞳Sに導かれる。面S41〜S43のうち少なくとも1つ(望ましくは全ての面)の光学的パワーによって、射出瞳Sの位置に眼を置いた観察者は、第4の原画の拡大された虚像(画像)を第4の視野領域θ4にて観察することができる。
このように4つの原画からの光束がそれぞれ対応する光学系を通って射出瞳Sに導かれることにより、観察者はそれらの原画の拡大虚像が1つに合成された合成画像を第1〜第4の視野領域θ1〜θ4により構成される観察視野内で観察することができる。第1及び第4の視野領域θ1,θ4の合成視野は、水平方向においてz軸を中心とした視野領域であり、第2及び第3の視野領域θ2,θ3のそれぞれよりも広い。
本実施例の観察光学系200は、同一の偏心断面を有する光学系を2組有している。同一の偏心断面Bを有する第1及び第4の光学系11,14は垂直方向にて隣接配置されているため、一方の画像形成素子からの光束が他方の画像形成素子に入射し反射されて射出瞳Sに導かれ、不要光が発生するおそれがある。これに対し、同一の偏心断面Aを有する第2及び第3の光学系12,13は、第1及び第4の光学系11,14を挟んだ互いに反対側に配置されている。このため、一方の画像形成素子からの光束が他方の画像形成素子に入射し反射されて射出瞳Sに導かれる不要光は発生しにくい。したがって、フレア等による画質劣化は生じにくい。
図7の断面Aに現れているように、光学素子201の背面側における第1及び第4の光学系11,14と第2及び第3の光学系12,13との境界には、段差部101,102が形成されている。段差部101,102の側面はそれぞれ、観察光学系200の射出瞳Sの中心に向かう方向に延びる形状を有することが好ましい。これにより、原画の繋ぎ目での画像の欠けや輝度低下が生じないように画像合成を行うことが可能となる。
また、段差部101,102には遮光膜を形成して、エッジ散乱や迷光による不要光の発生を抑制することが好ましい。
本実施例の観察光学系200では、図7に示す断面Bの方向に2つの光学系11,14が設けられている。これら2つの光学系11,14によって形成される合成画像の中心は、視軸であるz軸に対して数度ずれていることが好ましい。これにより、第1の原画に対応する第1の視野領域と第4の原画に対応する第4の視野領域との境界は、観察者の有効視野には含まれるが、弁別視野からは外れる。このため、一般的な観察状態において最も高い解像力が要求される合成画像の中心付近で、合成画像を構成する画像間の繋ぎ目で生じた画像の不連続や輝度低下あるいは不要光による画質劣化が認識されにくい観察光学系を構築することができる。また、このような構成によれば、誘導視野に対する上下視野の不足量を均一化し、臨場感をより高めることができる。
本実施例の観察光学系200は、4つの原画からの光束の光路を4つの偏心光学系11〜14によって偏心断面内で折り畳み、該4つの原画に対応する4つの画像を合成して1つの合成画像として観察させる。このため、各光学系の厚みに対して観察光学系200の全体により提示できる画角がきわめて広い。
図9には、本発明の実施例4であるHMD(画像表示装置)の観察光学系300の構成を示している。
HMDは観察者の頭部に装着され、観察光学系300の射出瞳の位置に観察者の片眼(瞳孔)が配置されることで、良好な画像観察を行わせることができる。
図9中の断面A(xz断面:第2の断面)は、観察者の頭部に装着された状態において、観察光学系300を上方から見た場合の断面を示し、断面B(yz断面:第1の断面)は、観察光学系300を側方から見た場合の断面を示す。また、断面C(xy断面)は、観察光学系300を背面(射出瞳とは反対側)から見たときの図である。なお、図9には、片眼用の観察光学系300を示すが、実際のHMDには、右眼用と左眼用に観察光学系200がそれぞれ設けられる。
11は第1の光学系、12は第2の光学系、13は第3の光学系、14は第4の光学系、15は第5の光学系である。21は第1の原画を表示する第1の画像形成素子、22は第2の原画を形成する第2の画像形成素子、23は第3の原画を表示する第3の画像形成素子である。24は第4の原画を形成する第4の画像形成素子、25は第5の原画を形成する第5の画像形成素子である。
図10Aには、第3の画像形成素子23に形成される第3の原画を示している。また、図10Bには、第1の画像形成素子21に形成される第1の原画を示している。図10Cには、第4の画像形成素子24に形成される第4の原画を示している。図10Dには、第2の画像形成素子22に形成される第2の原画を示している。さらに、図10Eには、第5の画像形成素子25に形成される第5の原画を示している。
第1〜第5の光学系11〜15は、第1〜第5の画像形成素子21〜25からの光束を共通の射出瞳Sに導いて、第1〜第5の原画のそれぞれに対応する画像を観察視野における互いに異なる視野領域(第1〜第5の視野領域θ1〜θ5)の画像として提示する。これにより、提示される画像は、図10Fに示すように、互いに異なる5つの視野領域(つまりは画角)の5つの画像が全体として1つの広画角画像を構成するように合成された(繋がった)合成画像となる。
観察光学系300は、屈折率が1より大きい媒質で満たされた光学素子152により構成された第5の光学系15の上下左右に、中空構造の第1〜第4の光学系11〜14が配置されて構成されている。
図9において、断面Aは、第2及び第3の光学系12,13の偏心断面である。また、断面Bは、第1及び第4の光学系11,14の偏心断面である。第5の光学系15は回転対称形状を有し、偏心断面は有していない。Sは観察光学系300の射出瞳である。偏心断面Aと偏心断面Bは、射出瞳Sの中心(1点)から観察視野、つまりは合成画像の中心(1点)に向かう軸であるz軸上で直角に交差している。なお、x軸方向が観察視野の水平方向を、y軸方向が観察視野の垂直方向を示している。
第1の光学系11は、面(反射面兼透過面)S11及び面(透過面)S14を有する素子111と、面(反射面)S12を有する素子112と、面(入射透過面)S13及び面(透過面)S15を有する素子113とにより構成されている。
第2の光学系12は、面(反射面兼透過面)S21及び面(透過面)S24を有する素子121と、面(反射面)S22を有する素子122と、面(入射透過面)S23及び面(透過面)S25を有する素子123とにより構成されている。
第3の光学系13は、面(反射面兼透過面)S31及び面(透過面)S34を有する素子131と、面(反射面)S32を有する素子132と、面(入射透過面)S33及び面(透過面)S35を有する素子133とにより構成されている。
第4の光学系14は、面(反射面兼透過面)S41及び面(透過面)S44を有する素子141と、面(反射面)S42を有する素子142と、面(入射透過面)S43及び面(透過面)S45を有する素子143とにより構成されている。
第5の光学系15は、面(透過面)S51及び面(射出透過面)S54を有する素子151と、面(入射透過面)S52及び面(透過面)S53を有する素子152とにより構成されている。
面S11,S12,S21,S22,S31,S32,S41,S42は、偏心反射面である。
第1の画像形成素子21に形成された第1の原画からの光束は、面S13及び面S15を通過することで素子113のレンズ作用を受けた後、半透過反射膜が形成された反射面S11で反射されて素子112に向かう。素子112の面S12上には反射膜が形成されている。反射面S12で反射された光束は、面S11及び面S14を有する素子111を透過して観察光学系300の射出瞳Sに導かれる。これら面のうち少なくとも1つ(望ましくは全ての面)が曲面形状、すなわち光学的パワーを有することにより、射出瞳Sの位置に眼(瞳孔)を置いた観察者は、第1の原画の拡大虚像(画像)を第1の視野領域θ1にて観察することができる。
第2の画像形成素子22に形成された第2の原画からの光束は、面S23及び面S25を通過することで素子123のレンズ作用を受けた後、半透過反射膜が形成された反射面S21で反射されて素子122に向かう。素子122の面S22上には反射膜が形成されている。反射面S22で反射された光束は、面S21及び面S24を有する素子121を透過して観察光学系300の射出瞳Sに導かれる。これら面のうち少なくとも1つ(望ましくは全ての面)の光学的パワーにより、射出瞳Sの位置に眼(瞳孔)を置いた観察者は、第2の原画の拡大虚像(画像)を第2の視野領域θ2にて観察することができる。
第3の画像形成素子23に形成された第3の原画からの光束は、面S33及び面S35を通過することで素子133のレンズ作用を受けた後、半透過反射膜が形成された反射面S31で反射されて素子132に向かう。素子132の面S32上には反射膜が形成されている。反射面S32で反射された光束は、面S31及び面S34を有する素子131を透過して観察光学系300の射出瞳Sに導かれる。これら面のうち少なくとも1つ(望ましくは全ての面)の光学的パワーにより、射出瞳Sの位置に眼(瞳孔)を置いた観察者は、第3の原画の拡大虚像(画像)を第3の視野領域θ3にて観察することができる。
第4の画像形成素子24に形成された第4の原画からの光束は、面S43及び面S45を通過することで素子143のレンズ作用を受けた後、半透過反射膜が形成された反射面S41で反射されて素子142に向かう。素子142の面S42上には反射膜が形成されている。反射面S42で反射された光束は、面S41及び面S44を有する素子141を透過して観察光学系300の射出瞳Sに導かれる。これら面のうち少なくとも1つ(望ましくは全ての面)の光学的パワーにより、射出瞳Sの位置に眼(瞳孔)を置いた観察者は、第4の原画の拡大虚像(画像)を第4の視野領域θ4にて観察することができる。
第5の画像形成素子25に形成された第5の原画からの光束は、面S52及び面S53を通過してハーフミラー反射面S51で反射される。さらに、該反射光束は、面S53を通過してハーフミラー反射面S52で反射され、面S53,面S51及び面S54を透過して観察光学系300の射出瞳Sに導かれる。これら面のうち少なくとも1つ(望ましくは全ての面)の屈折力により、射出瞳Sの位置に眼(瞳孔)を置いた観察者は、第5の原画の拡大虚像(画像)を第5の視野領域θ5にて観察することができる。
このように5つの原画からの光束がそれぞれ対応する光学系を通って射出瞳Sに導かれることにより、観察者はそれらの原画の拡大虚像が1つに合成された合成画像を第1〜第5の視野領域θ1〜θ5により構成される観察視野内で観察することができる。第1、第4及び第5の視野領域θ1,θ4,θ5の合成視野は、水平方向においてz軸を中心とした視野領域であり、第2及び第3の視野領域θ2,θ3のそれぞれよりも広い。
本実施例の観察光学系300は、同一の偏心断面を有する光学系を2組有している。同一の偏心断面Bを有する第1及び第4の光学系11,14は、垂直方向において第5の光学系15を挟んだ互いに反対側に配置されている。また、同一の偏心断面Aを有する第2及び第3の光学系12,13は、水平方向において第5の光学系15を挟んだ互いに反対側に配置されている。このため、第1及び第4の光学系11,14間と第2及び第3の光学系12,13間において、一方の画像形成素子からの光束が他方の画像形成素子に入射し反射されて射出瞳Sに導かれる不要光は発生しにくい。したがって、フレア等による画質劣化は生じにくい。
図9の断面A,Bに現れているように、観察光学系300の背面側における第5の光学系15(素子152)と第1〜第4の光学系11〜14との境界には、段差部101〜104が形成されている。段差部101〜104の面(素子152の上下左右の面)はそれぞれ、観察光学系300の射出瞳Sの中心に向かう方向に延びる形状を有することが好ましい。これにより、原画の繋ぎ目での画像の欠けや輝度低下が生じないように画像合成を行うことが可能となる。
また、段差部101〜104には遮光膜を形成して、エッジ散乱や迷光による不要光の発生を抑制することが好ましい。
本実施例の観察光学系300では、図9に示す断面Bの方向において3つの光学系11,14,15が設けられている。これら3つの光学系11,14,15によって形成される合成画像の中心は、視軸であるz軸に対して一致していることが好ましい。これにより、第5の原画に対応する第5の視野領域と第1及び第4の原画に対応する第1及び第4の視野領域との境界が観察者の弁別視野から外れる。このため、このため、一般的な観察状態において最も高い解像力が要求される合成画像の中心付近で、合成画像を構成する画像間の繋ぎ目で生じた画像の不連続や輝度低下あるいは不要光による画質劣化が認識されにくい観察光学系を構築することができる。また、第5の光学系により形成される第5の視野領域は、観察者の有効視野を超えているとより好ましい。
本実施例の観察光学系300は、4つの原画からの光束の光路を4つの偏心光学系11〜14によって偏心断面内で折り畳む。そして、該4つの原画に対応する4つの画像と、共軸光学系15を介した1つの原画に対応する1つの画像とを合成して1つの合成画像として観察させる。このため、各光学系の厚みに対して観察光学系の全体により提示できる画角がきわめて広い。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
例えば、実施例1〜4では、観察光学系が直角に交差する2つの偏心断面を有する場合について説明したが、偏心断面の交差する角度は直角でなくてもよい。ただし、直角に交差させることで、観察光学系の製作が容易であるとともに、画像供給装置501から入力された画像データを複数の視野領域に対応する複数の原画に分割する処理が容易となる等の観点から、好ましい。
本発明の実施例1であるHMDの観察光学系の上面断面図、側面断面図及び背面図。
実施例1における第2の原画の例を示す図。
実施例1における第1の原画の例を示す図。
実施例1における第3の原画の例を示す図。
図2A〜図2Cに示す原画の合成画像の例を示す図。
実施例1における合成画像の他の例を示す図。
実施例1における合成画像の他の例を示す図。
実施例1における合成画像の他の例を示す図。
実施例1における第2の原画の別の例を示す図。
実施例1における第1の原画の別の例を示す図。
実施例1における第3の原画の別の例を示す図。
図4A〜図4Cに示す原画の合成画像の例を示す図。
本発明の実施例2であるHMDの観察光学系の上面断面図、側面断面図及び背面図。
実施例2における左眼用の第2の原画の例を示す図。
実施例2における左眼用の第1の原画の例を示す図。
実施例2における右眼用の第1の原画の例を示す図。
実施例2における右眼用の第2の原画の例を示す図。
図6A〜図6Dに示す原画の合成画像の例を示す図。
本発明の実施例3であるHMDの観察光学系の上面断面図、側面断面図及び背面図。
実施例3における第3の原画の例を示す図。
実施例3における第1の原画の例を示す図。
実施例3における第4の原画の例を示す図。
実施例3における第2の原画の例を示す図。
図8A〜図8Dに示す原画の合成画像の例を示す図。
本発明の実施例4であるHMDの観察光学系の上面断面図、側面断面図及び背面図。
実施例4における第3の原画の例を示す図。
実施例4における第1の原画の例を示す図。
実施例4における第4の原画の例を示す図。
実施例4における第4の原画の例を示す図。
実施例4における第5の原画の例を示す図。
図10A〜図10Eに示す原画の合成画像の例を示す図。
符号の説明
11,12,13,14 偏心光学系
15 共軸光学系
21,22,23,24,25 画像形成素子