本発明は、左右一対の表示装置を設けて両眼視による映像認識を可能とするものであって、画像表示を大きいものと感じさせつつ装置の小型化を図ることのできる頭部搭載型表示装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の頭部搭載型表示装置は、左右の眼にそれぞれ対応して視認させるべき画像表示をそれぞれ行う第1及び第2表示部を備え、第1及び第2表示部は、共通内容の画像表示を行う第1及び第2共通表示エリアをそれぞれ有し、第1及び第2表示部のうち少なくとも一方は、画像表示のエリアを拡張する拡張表示エリアを有する。ここで、共通表示エリアにおいて表示させる共通内容については、2Dの画像(平面視画像)や3Dの画像(立体視画像)による種々のコンテンツの映像が対象となり、具体例としては、映画等の動画画像や、各種アプリケーションの画面、各種UI画面等が考えられる。
上記頭部搭載型表示装置では、第1及び第2表示部において左右の眼に共通内容の画像表示を行う第1及び第2共通表示エリアをそれぞれ有していることで、両眼視による画像コンテンツの視認を可能とするものとなっている。すなわち、共通内容の表示態様によって例えば左右の眼の視差に応じて右側の画像と左側の画像とをずらすことで立体視画像(3Dの画像)の視認が可能となる。この上で、第1及び第2表示部のうち少なくとも一方において拡張表示エリアを有することで違和感なく表示エリアを拡張させて共通表示エリアの表示だけの場合よりも画像表示を大きいものに見せることができる。また、この場合、共通表示エリアの表示の分のみ光学系等を増大させればよいので、装置全体の大型化によって表示エリアを広げる場合に比べて装置の小型化を図ることができる。
本発明の具体的な側面では、第1表示部と第2表示部とは、拡張表示エリアとして、互いに他方における表示とは異なる内容の画像表示をそれぞれ行う第1拡張表示エリアと第2拡張表示エリアとをそれぞれ有する。この場合、第1拡張表示エリアにおいて、例えば各種情報の表示といった種々の態様の表示が可能になる。
本発明の別の側面では、第1及び第2表示部は、第1及び第2共通表示エリアでの画像表示において立体視画像を形成させる。この場合、立体視画像を視認させることができる。
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2表示部は、第1及び第2共通表示エリアによる視認範囲として、少なくとも弁別視野の範囲を含む画像表示を行う。この場合、視機能が優れた範囲において、両眼視による画像視認が可能となる。
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2表示部は、第1及び第2共通表示エリアによる視認範囲として、画角10°の範囲を含む画像表示を行う。この場合、例えば文字が認識可能な範囲において、両眼視による画像視認が可能となる。
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2表示部は、第1及び第2共通表示エリアによる視認範囲を、映像フォーマットに準ずる縦横比とする画像表示を行う。この場合、両眼視の範囲において、映像フォーマットに準ずる縦横比で視認させることができる。
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2表示部は、左右の眼の光軸の中心を基準として第1及び第2共通表示エリアを重ねて視認させる画像表示を行う。この場合、第1及び第2共通表示エリアの画像を1つの画像として認識させることができる。
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2表示部は、左右の眼にそれぞれ対応した映像光を生じさせるパネル型の第1及び第2画像表示素子をそれぞれ有する。この場合、パネル型の画像表示素子により、例えばパネルの表示領域における画像形成の調整により表示エリアの調整を行うことができる。
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2画像表示素子は、1つの表示パネル領域をそれぞれ有し、当該表示パネル領域を、第1及び第2共通表示エリアの映像光を生じさせる第1領域と拡張表示エリアの映像光を生じさせる第2領域とに応じて分割している。この場合、1つの表示パネル領域の領域分割によって拡張表示エリア共通表示エリアと拡張表示エリアとの調整が可能になる。
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2画像表示素子は、第1及び第2共通表示エリアと拡張表示エリアとに応じて個別の表示パネル領域をそれぞれ有している。この場合、個別の表示パネル領域の調整によって拡張表示エリア共通表示エリアと拡張表示エリアとの調整が可能になる。
本発明のさらに別の側面では第1及び第2表示部は、中心光軸から、第1及び第2画像表示素子の表示パネル領域の中心をずらしている。この場合、表示パネル領域の中心からずらすことで拡張表示が可能になる。
本発明のさらに別の側面では、拡張表示エリアは、第1共通表示エリア及び/又は第2共通表示エリアの外縁側に連続的に隣接している。この場合、領域の境界部分が違和感なく連続的に繋がっているように見せることができる。
以下、図1等を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る頭部搭載型表示装置について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の頭部搭載型表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この頭部搭載型表示装置100を装着した観察者又は使用者に対して虚像による画像光(映像光)を視認させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで視認又は観察させることができる虚像表示装置である。頭部搭載型表示装置100は、観察者の眼前を透視可能に覆う第1及び第2光学部材101a,101bと、両光学部材101a,101bを支持する枠部102と、枠部102の左右両端から後方のつる部分(テンプル)104にかけての部分に付加された第1及び第2像形成本体部105a,105bとを備える。ここで、図面上で左側の第1光学部材101aと第1像形成本体部105aとを組み合わせた第1表示装置100Aは、右眼用の虚像を形成する第1表示部である。また、図面上で右側の第2光学部材101bと第2像形成本体部105bとを組み合わせた第2表示装置100Bは、左眼用の虚像を形成する第2表示部である。なお、図1と図2(A)とを比較することで、例えば第1及び第2像形成本体部105a,105bは、鏡筒部(図示略)に収納される投射レンズ30や、画像表示装置80でそれぞれ構成されることが分かる。すなわち、図2(A)に示す投射レンズ30や画像表示装置80等が図1に示す第1及び第2像形成本体部105a,105bの内部にそれぞれ収納されている。例えば、第1像形成本体部105aは、画像表示装置80と投射レンズ30とで構成されているとも言える。
以下、図2(A)を参照して、頭部搭載型表示装置100のうち、光学系の各構成について説明する。なお、本実施形態では、光学系の各構成は、左右一対の対称的なものとなっており、同様の機能や作用をするものとなっている。
画像表示装置80(右眼用の画像表示装置80R及び左眼用の画像表示装置80L)は、例えば有機EL等の自発光型の素子構成される画像表示素子(映像素子)とすることができる。また、例えば透過型の空間光変調装置である画像表示素子(映像素子)のほか、画像表示素子へ照明光を射出するバックライトである照明装置(不図示)や動作を制御する駆動制御部(不図示)を有する構成としてもよい。
投射レンズ30は、構成要素として、例えば入射側光軸AXに沿って並ぶ複数(例えば3つ)の光学素子(レンズ)を備える投射光学系であり、これらの光学素子が既述のように、鏡筒部によって収納・支持されている。なお、当該光学素子は、例えば非軸対称な非球面(非軸対称非球面)と軸対称な非球面(軸対称非球面)との双方を含む非球面レンズで構成することで、導光部材10の一部と協働して導光部材10の内部に表示像に対応する中間像を形成するものとすることができる。投射レンズ30は、画像表示装置80で形成された映像光を導光装置20に向けて投射し入射させる。
導光装置20は、導光及び透視用の導光部材10と、透視用の光透過部材50とで構成されている。導光部材10は、プリズム型の導光装置20の一部であり、一体の部材であるが、光射出側の第1導光部分11と光入射側の第2導光部分12とに分けて捉えることができる。光透過部材50は、導光部材10の透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)であり、導光部材10と一体的に固定され1つの導光装置20となっている。導光装置20は、例えば投射レンズ30を収納する鏡筒部にネジ止めされることにより、投射レンズ30に対して精度よく位置決め固定されている。
導光部材10は、光学的な機能を有する側面として、第1〜第5面S11〜S15を有している。これらのうち、第1面S11と第4面S14とが連続的に隣接し、第3面S13と第5面S15とが連続的に隣接する。また、第1面S11と第3面S13との間に第2面S12が配置されている。第2面S12の表面には、ハーフミラー層15が付随して設けられている。このハーフミラー層15は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)であり、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成され映像光に対する反射率が適宜設定されている。
光透過部材50は、既述のように導光部材10と一体的に固定され1つの導光装置20となっており、導光部材10の透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)である。光透過部材50は、光学的な機能を有する側面として、第1透過面S51と、第2透過面S52と、第3透過面S53とを有する。第2透過面S52は、第1透過面S51と第3透過面S53との間に配置されている。第1透過面S51は、導光部材10の第1面S11を延長した面上にあり、第2透過面S52は、第2面S12に対して接合され一体化されている曲面であり、第3透過面S53は、導光部材10の第3面S13を延長した面上にある。
以下、導光装置20における外界像の観察について簡単に説明する。導光装置20は、導光部材10での映像光の導光により観察者に映像光を視認させるとともに、導光部材10と光透過部材50との協働により観察者に歪みの少ない外界像を観察させるものとなっている。すなわち、視認させるべき外界像を構成する成分光としての外界光のうち、導光部材10の第2面S12よりも導光部材10側に入射したものは、第1導光部分11の第3面S13と第1面S11とを通過するが、この際、第3面S13と第1面S11とが互いに略平行な平面(視度略0)となっていることで、収差等をほとんど生じない。また、外界光のうち、導光部材10の第2面S12よりも光透過部材50側に入射したものは、これに設けた第3透過面S53と第1透過面S51とを通過する際に、第3透過面S53と第1透過面S51とが互いに略平行な平面となっていることで、収差等を生じない。さらに、外界光のうち、導光部材10の第2面S12に対応する光透過部材50に入射するものは、第3透過面S53と第1面S11とを通過する際に、第3透過面S53と第1面S11とが互いに略平行な平面となっていることで、収差等をほとんど生じない。以上により、観察者は、光透過部材50越しに歪みのない外界像を観察することになる。
以下、図2(A)等を参照して映像光(ここでは映像光GLとする。)の光路について概略説明する。図2(A)は、映像光GLの光路について概念的に示しており、また、図2(B)及び2(C)は、映像光GLを射出させる左右一対の画像表示素子(映像素子)である画像表示装置80R,80Lの一例を概念的に示している。各画像表示装置80R,80Lは、図2(B)及び2(C)に示す表示パネル領域PR,PLを光射出面として、左右それぞれにおいて映像光GLを投射レンズ30に向けて射出させる。投射レンズ30は、導光部材10に向けて映像光GLを投射する。導光部材10は、投射レンズ30から映像光GLを入射させるとともに第1〜第5面S11〜S15での反射等により観察者の眼に向けて導光する。具体的には、投射レンズ30からの映像光GLは、まず、第4面S14に入射して第5面S15で反射され、第4面S14に内側から再度入射して全反射され、第3面S13に入射して全反射され、第1面S11に入射して全反射される。第1面S11で全反射された映像光GLは、第2面S12に入射し、第2面S12に設けたハーフミラー層15を部分的に透過しつつも部分的に反射されて第1面S11に再度入射して通過する。第1面S11を通過した映像光GLは、観察者の眼又はその等価位置に略平行光束として入射する。つまり、観察者は、虚像としての映像光により画像を観察することになる。また、映像光GLは、光軸AXを基準として観察者の眼EYにおいて中心と視認されるように映像光が射出されるものとなっている。
特に、本実施形態では、映像光GLは、両眼視のための中央側の主たる映像を形成するものとなる成分光GLpと、左右一方のそれぞれによる片眼視のための周辺側の従たる映像を形成するものとなる成分光GLa,GLbとで構成されている。成分光GLpは、視線の軸に対応して(すなわち真正面として視認される角度で射出される軸に対応して)設定される中心光軸AXを基準に対称性のある画像を形成すべく例えば中心光軸AXを中心として左右対称な光線束となって左右一対の画像表示装置80(80R,80L)から射出されている。これに対して、周辺側の画像を形成する成分光GLa,GLbは、偏ったものとなっている。例えば右眼用の画像表示装置80Rから射出される成分光GLaは、右眼の周辺側において片眼視のための画像を形成すべく、光軸AXに対して、画像表示装置80Rのパネル面が内側(観察者に近い左側)にシフトしている。言い換えると、第1及び第2表示装置100A,100Bは、中心光軸AXから、表示パネル領域PR,PLの中心をずらしている。なお、成分光GLaは、図中において光路をたどると明らかなように、成分光GLpが射出される範囲よりもさらに右側の領域から傾斜して射出される。同様に、左眼用の画像表示装置80Lから射出される成分光GLbは、中心光軸AX画像表示装置80Lのパネル面に対して内側(観察者に近い右側)にシフトしており、成分光GLpが射出される範囲よりもさらに左側の領域から傾斜して射出される。以上について見方を換えると、成分光GLpの射出範囲に対して(内側に)拡張させた範囲において成分光GLa,GLbを射出させており、全体として、中心光軸AXを基準とした場合に内側に拡張させた範囲で光線束全体が形成されるものとなっている。
ここで、図2(B)及び2(C)等を参照して、上述した映像光GLの各成分光GLp,GLa,GLbの射出位置等に関して説明する。まず、図2(B)及び2(C)に示すように、映像光GLの射出面である画像表示装置80R,80Lの表示パネル領域PR,PLにおいては、成分光GLpと成分光GLa,GLbとでは射出位置が異なっている。すなわち、各表示パネル領域PR,PLは、中心側を含む範囲に設けられる成分光GLpを射出させる第1領域PR1,PL1と、第1領域PR1,PL1の周辺側に設けられて成分光GLa,GLbを射出させる第2領域PR2,PL2とに分割されてそれぞれ構成されている。すなわち、第1領域PR1,PL1から両眼視のための成分光GLpが射出され、第2領域PR2,PL2から対応する片方の眼にだけ視認される映像を形成するための成分光GLa,GLbが射出される。また、以上のように1つの表示パネル領域PR,PLを分割して成分光GLpと成分光GLa,GLbとが形成される場合、領域の境界部分は、連続的に繋がって隣接していることになる。
また、導光装置20から取り出される際の映像光GLの各成分光GLp,GLa,GLbの射出位置について、例えば図2(D)及び2(E)に示すように画像取出しのための反射面であるハーフミラー層15(右眼用のハーフミラー層15R及び左眼用のハーフミラー層15L)について見ると、成分光GLpを反射する第1反射領域AR1,AL1と、成分光GLa,GLbを反射する第2反射領域AR2,AL2とは、一部重畳している。しかしながら、全体としては、第2反射領域AR2,AL2が第1反射領域AR1,AL1よりも外側(観察者から遠い側)にシフトしている。第2反射領域AR2,AL2から射出される成分光GLa,GLbは、成分光GLpよりも傾斜した角度で導光装置20から射出され観察者の眼EYに到達する結果、観察者は、成分光GLa,GLbに由来する画像(映像)を成分光GLpに由来する画像(映像)よりも外側にあるものとして視認する。
図3(A)、3(B)及び3(C)は、上記のようにして観察者の左右の眼EY(EYa,EYb)により視認される虚像に対応する仮想上の各映像領域を映像領域PAa,PAbとして示し、さらに、両眼EYa,EYbで視認した結果、観察者の脳内において認識される仮想上の全体映像領域を映像領域PAとする。ここでは、各映像領域PAa,PAbのうち、上述した成分光GLpに由来して視認される映像領域を第1映像領域Pa1,Pb1とし、成分光GLa,GLbに由来して視認される映像領域を第2映像領域Pa2,Pb2とする。この場合、図3(C)に示す映像領域PAについては、第1映像領域Pa1,Pb1が重畳して視認される第1映像領域PAcと、第2映像領域Pa2,Pb2とがつながって形成された1つの領域として視認される。
以下、上記のような映像領域の認識について説明する。前提として、観察者の眼EYa,EYbとして想定される基準位置(視線の光軸)に基づいて左右一対の成分光GLpを射出させる。これにより、両眼EYa,EYbに同等の画像を視認させると、観察者は、左右の眼EYa,EYbから入った当該画像を1つの画像として認識する。すなわち、各映像領域PAa,PAbのうち視線の光軸を基準に第1映像領域Pa1,Pb1で共通する内容の画像が形成されることで、図3(C)の中央部において1つの映像領域(第1映像領域PAc)として認識されることになる。この場合、さらに、観察者は、第1映像領域PAcを左右に拡張させた第2映像領域Pa2,Pb2についても第1映像領域PAcから連続した領域として違和感なく認識できることが知られている。結果的に、観察者は、第1映像領域PAc及び第2映像領域Pa2,Pb2を繋げた全体を1つの大きな映像領域として捉えるものとなる。
以上のように、本実施形態の頭部搭載型表示装置100は、共通内容の画像表示を行うためのエリアと、当該エリアを拡張させるために隣接するように設けられる拡張エリアとを形成させこれらを一体の画像表示エリアとして捉えさせる構成となっている。以下、共通内容の画像表示を行うエリアを共通表示エリアと呼ぶものとし、拡張エリアを拡張表示エリアと呼ぶものとする。共通表示エリアにおいて表示させる共通内容については、2Dの画像(平面視画像)や3Dの画像(立体視画像)による種々のコンテンツの映像が対象となり、具体例としては、映画等の動画画像や、各種アプリケーションの画面、各種UI画面等が考えられる。共通表示エリアや拡張表示エリアは、物理的な空間としては、図2(B)及び2(C)に示す各表示パネル領域PR,PLの第1領域PR1,PL1や第2領域PR2,PL2、あるいは、図2(D)及び2(E)に示す第1反射領域AR1,AL1や第2反射領域AR2,AL2で規定することができる。また、ここでは、これをさらに拡張させて、上記物理的な空間に対応して仮想的な範囲として認識される図3(A)〜3(C)の映像領域PAa,PAb,PAのような領域(仮想的な空間)として捉えることも可能であるものとする。なお、共通内容の画像表示を行う共通表示エリアのうち、右眼において視認させるための画像表示を行う共通表示エリアを第1共通表示エリアとし、左眼において視認させるための画像表示を行う共通表示エリアを第2共通表示エリアとする。さらに、拡張表示エリアのうち、右眼において視認させるための画像表示を行う拡張表示エリアを第1拡張表示エリアとし、左眼において視認させるための画像表示を行う拡張表示エリアを第2拡張表示エリアとする。上記の場合、中央の共通表示エリア(第1及び第2共通表示エリア)と左右にそれぞれ拡張される第1拡張表示エリア及び第2拡張表示エリアとを統合した表示エリアが視認される表示エリアの全体ということになる。なお、上記の場合、拡張表示エリアは、共通表示エリア(第1共通表示エリアや第2共通表示エリア)の外縁側に連続的に隣接しており、違和感なく連続した画像として認識させるものとなっている。
さらに、上記の例では、共通表示エリアすなわち両眼視される範囲である図3(C)の映像領域PAcでは、画素単位で完全に一致させた2Dの画像(平面画像)を表示させるだけでなく、共通した画像でありながら左右の視差に応じて画像をずらすことで、3Dの画像(立体視画像)を表示させることも可能である。一方、拡張表示エリアすなわち片眼にのみ視認される第2映像領域Pa2,Pb2については、2Dの画像表示のみが可能となる。
図4は、図3(C)に対応する図であり、両眼視と片眼視とにより認識される画像全体の様子の一例を示す図である。この場合、例えば、表示される画像オブジェクトOB1〜OB3のうち、例えば中央の映像領域PAcに表示される画像オブジェクトOB1(ロケットの画像オブジェクト)は、適宜画像処理を施すことで立体視画像が可能である。一方、周辺側の映像領域Pa2,Pb2に表示される画像オブジェクトOB2,OB3(惑星の画像や月の画像オブジェクト)は、片眼視のため、平面画像のみの表示が可能となっている。しかしながら、例えば中央の映像領域PAcを十分広くとるように画像形成させることで、あたかも表示エリアの画像全体において立体視画像を行っているかのように見せることが可能である。
以下、図5等を参照して、観察者の視野範囲の特性について説明する。まず、図5(A)〜5(C)は、観察者の視野について説明するための概念的な図であり、図5(A)は、水平視野の様子を示し、図5(B)は、鉛直(垂直)視野の様子を示し、図5(C)は、面に投影された視野(視線方向についての視野の広がり)の様子を示している。ここで、各図中において、弁別視野V1とは、視力などの視機能が優れている中心領域(画角約5°以内)であり、有効視野V2とは、眼球運動だけで瞬時に情報需要できる領域(水平約30°、垂直20°以内)であり、安定注視野V3とは、眼球・頭部運動で無理なく注視でき、効果的な情報需要ができる領域(水平60〜90°、垂直45〜70°以内)である。これらのうち、弁別視野V1を念頭において、例えば映像を眺めている観察者の視線方向は、通常ほぼ正面方向であると考えれば、弁別視野V1に対して画像の中心から十分な範囲に映像領域PAcを設けて立体視画像が形成可能な範囲が視機能が優れた範囲を含むようにすることで、あたかも表示エリアの画像全体において立体視画像を行っているかのように見せることができる。すなわち、例えば図6に示すように、映像領域PAcが、少なくとも弁別視野V1(画角5°程度)の範囲を視認範囲として含む、さらには、文字を識別できる範囲と考えられる画角10°の範囲である視野VX(有効視野V2よりは狭い範囲)を視認範囲として含むようにすることで、立体画像の視認や文字の多い画像の認識等種々の画像の視認を確保した上で画像表示エリアを拡張させることができる。
またここで、図4に戻って、別の観点として、拡張させた画像表示エリア(共通表示エリア及び拡張表示エリア)の全体すなわち映像領域の全体である映像領域PAについてのアスペクト比(縦横比)、すなわち図示における映像領域PAの短辺幅DYと長辺幅DXとの比率について説明する。アスペクト比については、種々の設定が可能であるが、例えば映像フォーマットに準ずる縦横比とすることもできる。さらに、図示における映像領域PAc(両眼視可能な領域)の短辺幅DY1と長辺幅DX1との比率について映像フォーマットに準ずる縦横比としてもよい。なお、映像フォーマットの縦横比としては、例えば3:4や9:16のほか、1:2.35のシネスコのサイズ等が考えられる。また、上記では、画像表示エリア(共通表示エリア及び拡張表示エリア)として仮想的な映像領域PA等により説明したが、同様のことを物理的空間において考察することができ、例えば本実施形態のようにパネル型の構造である場合、図2(B)及び2(C)に示す各表示パネル領域PR,PLの第1領域PR1,PL1や第2領域PR2,PL2の縦横比の設定によって視認される映像についてのアスペクト比を所望の映像フォーマットに準ずる縦横比となるようにできる。なお、パネル型の構造について、より具体的に一例をあげれば、右眼用及び左眼用の画像はそれぞれ縦720横1580とし、左の表示エリアの左から301列目と右表示エリアの1列目の画素を一致させ、左表示エリアの左から1580列目と右表示エリアの1280列目の画素を一致させるよう調整させるようにしておく、といった調整を行うことが考えられる。なお、もっと大雑把には、例えば、各表示装置100A,100Bにおいては、2.5m先に60インチ相当の画像があるように虚像による表示を行わせるものとした場合に、これらを上記のように適宜重畳させて視認させることで、80インチ相当の画像を認識させることができる。また、例えば、各表示装置100A,100Bが形成する映像領域の1/4〜半分以上が重畳して視認される(両眼視される)映像領域PAcとなっていることで、映像領域PAcのみにおいて画像として認識できるのに十分な範囲を確保できる。一方、片眼視のエリアについても種々の範囲とすることができるが、例えば、映画の字幕用の文字等を認識するのに必要最低限の画素数分の領域を確保するものとする。
以上のように、本実施形態に係る頭部搭載型表示装置100は、双方の眼に対して画像表示を行う両眼視タイプであり、表示画像の一部については左右で表示内容が異なる拡張した領域(エリア)を設けているが、両眼に共通した内容の画像を見せる共通する領域(エリア)も有している。これにより、観察者に、拡張した領域まで含めた映像全体を両眼視によって視認していると知覚させることができる。これに対して、片側の眼に対してのみ画像表示を行う片眼視タイプの場合、一方の眼で表示画像を見て他方の眼で外界を見ることで、視認される対象が左右で全く異なった状態となり得るので、例えば左右の眼の視線が混じらない状態が起き、斜視になってしまう可能性がある。両眼視タイプであり左右の眼に共通内容の画像を視認させる頭部搭載型表示装置100では、上記片眼視タイプの場合のような状態となることで斜視になる、という可能性が回避される。
以下、頭部搭載型表示装置100において映し出す画像コンテンツに関する一変形例について説明する。図4に示すような全体として1つの内容の映像を視認させる場合の他に、例えば図7(A)、7(B)及び7(C)に示すように、中央の映像領域PAc(両眼視可能な領域)にメイン画像(牛の部分)を映し出すとともに、右眼のみで見える映像領域Pa2には注意情報、天気予報等を映し出左眼のみで見える映像領域Pb2にはナビ情報等を映し出すといったサブ的な情報画像を周辺側に表示させるものとしてもよい。つまり、右眼側の映像領域Pa2と左眼側の映像領域Pb2とにおいて、異なるタイプの画像コンテンツを表示させるものにもできる。
また、上記では、図2(B)及び2(C)を参照して説明したように、1つの表示パネル領域PR,PLを分割して成分光GLpと成分光GLa,GLbとが形成されるものとしているが、これに限らず、例えば図8(A)及び8(B)に示すように、第1画像表示素子181RR(又は181LL)と第2画像表示素子182RR(又は182LL)との2つの画像表示素子で1つの画像表示装置180R(又は180L)を構成するものとしてもよい。すなわち、第1及び第2共通表示エリアと拡張表示エリアとに応じて個別の表示パネル領域(第1領域PR1,PL1や第2領域PR2,PL2)をそれぞれ有するようにしてもよい。
また、上記では、左右一対の各映像領域PAa,PAbについて、双方がともに拡張表示エリアをそれぞれ形成するものとしているが、例えば図9(A)、9(B)及び9(C)に示すように、どちらか一方のみが拡張表示エリアを形成するものとしてもよい。なお、図示の場合、右側の映像領域PAaのみが第1映像領域Pa1と第2映像領域Pa2との双方を有し、左側の映像領域PAbは、第1映像領域Pb1のみとなっている。
さらに、上記では、周辺側として右側又は左側に拡張表示エリアを形成させるものとしているが、これに限らず、例えば図9(D)、9(E)及び9(F)に示すように、右側や左側への拡張に加え、さらに、上下方向について、第3映像領域P3や、第4映像領域P4を有するものとしてもよい。
以上のように、本実施形態の頭部搭載型表示装置100では、第1及び第2表示部である第1及び第2表示装置100A,100Bにおいて、左右の眼に共通内容の画像表示を行う第1及び第2共通表示エリアをそれぞれ有していることで、両眼視による画像コンテンツの視認を可能とするものとなっている。すなわち、共通内容の表示態様によって例えば立体視画像の視認が可能となっている。この上で、第1及び第2表示装置100A,100Bのうち少なくとも一方において拡張表示エリアを有することで違和感なく表示エリアを拡張させて共通表示エリアの表示だけの場合よりも画像表示を大きいものに見せることができる。また、この場合、共通表示エリアの表示の分のみ光学系等を増大させればよいので、装置全体の大型化によって表示エリアを広げる場合に比べて装置の小型化を図ることができる。
以下、図10(A)及び10(B)を参照して、頭部搭載型表示装置の別の一例について説明する。図示の頭部搭載型表示装置200は、観察者の眼前を透視可能に覆う第1及び第2光学部材201a,201bと、両光学部材201a,201bを支持するフレーム107と、フレーム107の左右両端から後方にかけての部分に固定された第1及び第2駆動部205a,205bと、2次元的に走査される信号光を射出する第1及び第2映像素子206a,206bとを備える。図面上で左側の第1光学部材201aと第1駆動部205aと第1映像素子206aとを組み合わせた第1表示装置100Aは、右眼用の虚像を形成する部分である。また、図面上で右側の第2光学部材201bと第2駆動部205bと第2映像素子206bとを組み合わせた第2表示装置100Bは、左眼用の虚像を形成する部分であり、第1表示装置100Aの左右を反転させただけであり、第1表示装置100Aと同じ機能を有する。
第1表示装置100Aにおいて、第1映像素子206aは、強度変調された信号光を形成するとともに当該信号光を走査光TLとして射出する。第1光学部材201aは、第1映像素子206aからの走査光TLを反射することによって映像光GLを形成する被照射部材であるが、映像光GLを眼EYに導く機能を有する。第1駆動部205aは、第1映像素子206aに対して不図示の光ファイバー等を介して照明光を供給する光源、それらの動作の制御回路等を含む本体部分280を有する。
第1映像素子206aは、鼻当て部材108aに組み付けられており、フレーム107に対して間接的に固定されている。第1映像素子206aは、本体部分280からの制御信号に基づいて照明光を変調する信号光変調部281と、信号光変調部281を経た信号光を走査しつつ射出させる走査光学系282とを有する。ここで、走査光学系282は、MEMSミラー等で構成され、信号光変調部281による信号光の変調に同期させて姿勢を変化させることにより、信号光の光路を調整することで第1光学部材201aの内面への光線の射出角度を縦横に変化させる2次元走査を行う。
第1光学部材201aは、第1映像素子206aの前方又は光射出方向において観察者の眼EYの前方を覆うように配置されている。第1光学部材201aは、走査光の照射を受ける半透過膜である半透過反射膜285と、半透過反射膜285を支持固定する支持部材286とを有している。これにより、観察者の眼EYには、虚像のみならず、外界からの光も入ることになり、頭部搭載型表示装置200は、双方を重畳して観察可能にするシースルーの構成となっている。
上記のような構成の頭部搭載型表示装置200においても、走査光学系282による走査の範囲を調整することで所期の目的を達成することができる。
この発明は、上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
上記において、共通表示エリアと拡張表示エリアとについてのリサイズや位置変更を、例えば、表示する内容やユーザーによる設定等により行うことが考えられる。具体的には、図11(A)〜11(F)に例示するように、左右の眼により視認される虚像に対応する各映像領域PAa,PAbについて、映像領域PAaにおける第1映像領域Pa1と第2映像領域Pa2や、映像領域PAbを構成する第1映像領域Pb1と第2映像領域Pb2の大きさや形状、配置を変更可能としてもよい。すなわち、図11(A)、11(B)及び11(C)において1つの視認状態として示すように、第1映像領域Pa1,Pb1が重畳して視認される第1映像領域PAcの左右に拡張するように第2映像領域Pa2,Pb2を設けた表示とする第1の表示状態から、図11(D)、11(E)及び11(F)において別の1つの視認状態として示すように、第1映像領域PAcの上下に拡張するように第2映像領域Pa2,Pb2を設けた表示とする第2の表示状態に切り換え可能とする、といった態様とすることが考えらえる。また、この際、図11(C)及び11(F)に示すように、第1映像領域PAc(Pa1,Pb1)は、左右の映像領域PAa,PAbのうち、重なっている領域内に設定する一方、第2映像領域Pa2は映像領域PAaの範囲内でかつ映像領域PAbから外れた範囲を含み、第2映像領域Pb2は映像領域PAbの範囲内でかつ映像領域PAaから外れた範囲を含むように拡張させてもよい。
上記において、画像表示装置80としては、種々のものを利用可能であり、例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス等からなる映像表示素子に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。
上記の説明では、第2面S12のハーフミラー層を例えば金属反射膜や誘電体多層膜としたが、平面又は曲面のホログラム素子に置き換えることができる。
上記の説明では、導光部材10等が眼の並ぶ横方向に延びているが、導光部材10を縦方向に延びるように配置することもできる。この場合、導光部材10は、直列的ではなく並列的に平行配置された構造を有することになる。
上記の説明では、画像光と外界光とを重畳させる態様についてのみ説明しているが、例えば重畳させずに画像光のみにする態様と外界光のみにする態様とを切り替えて観察することができる虚像表示装置において適用してもよい。
また、本願発明の技術を、ディスプレイと撮像装置とで構成されるいわゆるビデオシースルーの製品に対応させるものとしてもよい。