以下、本発明を適用した第一の実施形態の画像形成装置として、カラー画像形成装置であるカラープリンタ(以下、単にプリンタ100という)について説明する。
図1は、第一の実施形態のプリンタ100の画像形成部の構成を示す概略断面図である。プリンタ100は、像担持体ベルトとしてのベルト状の感光体(以下、感光体ベルト2という)上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を、感光体ベルト2の1回転中に順次重ね合わせてカラー画像を形成するものである。
感光体ベルト2は、駆動ローラ3、テンションローラ4、転写対向ローラ5、4つの現像対向ローラ(6d、7a、8d、9d)等によって張架され、縦長に略垂直配置されている。駆動ローラ3と連結された図示しない駆動モータを駆動することによって、駆動ローラ3が図1中反時計回り方向に回転し、感光体ベルト2は反時計周回り方向に無端移動する。縦長に配置された感光体ベルト2の図1中の左側の外周面には、上からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成する4つの作像部としての第一作像部6、第二作像部7、第三作像部8、及び、第四作像部9が積み重なるようにして感光体ベルト2の表面移動方向に沿って一定の間隔を置いて順次配置されている。また、第四作像部9の下部にテンションローラ4に対向するように転写前除電器10が配置されている。
第一作像部6、第二作像部7、第三作像部8、及び、第四作像部9は、それぞれ、帯電手段としての帯電器(6b、7b、8b、9b)と、現像手段として現像装置(6a、7a、8a、9a)とを備えている。各現像装置(6a、7a、8a、9a)は横置きに配置され、感光体ベルト2を挟んで現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)と対向するよう配置される。このとき、各現像装置(6a、7a、8a、9a)の現像ローラ(6e、7e、8e、9e)は、図示しないギャップコロやスペーサなどの部材により感光体ベルト2に対して現像ギャップと言われる所定の間隔を維持するよう配置されている。現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)は、現像ローラ(6e、7e、8e、9e)との対向部で感光体ベルト2を張架して、感光体ベルト2の変位を防止して、安定した現像ギャップを維持する機能を有している。このように各現像装置(6a、7a、8a、9a)の各現像ローラ(6e、7e、8e、9e)が感光体ベルト2と現像ギャップを維持して対向する位置が有効現像領域である。また、縦長に配置された感光体ベルト2の図1中の右側の外周面には、クリーニング手段としてのクリーニング部11、除電手段としての除電ランプ12が配置されている。
また、感光体ベルト2の右側外周面の下部側に感光体ベルト2を挟んで転写対向ローラ5と対向し、転写部14を形成する転写ローラ15が配置されている。感光体ベルト2の下方には、転写部14に対して用紙搬送方向が斜めになるよう、搬入側に給紙ローラ19やレジストローラ対18などから成る給紙搬送部17と、搬出側に定着装置20が配置されている。
また、作像部(6、7、8、9)の図1中左側には、各作像部(6、7、8、9)に対応して感光体ベルト2上に潜像を形成する書込みユニット21が配置されている。各作像部(6、7、8、9)の各帯電器(6b、7b、8b、9b)と各現像装置(6a、7a、8a、9a)との間には、書込みユニット21から射出されるレーザ光による露光位置である露光部(6c、7c、8c、9c)が設けられている。
本実施形態の帯電器(6b、7b、8b、9b)はコロナ帯電器である。解りやすくするため具体的な数値の例を示して説明すると、コロナ電極に印加する交流電圧をピーク間電圧12[kV]、周波数2[kHz]、感光体ベルト2の表面移動方向の上流側のシールドに印加する直流電圧を−800[V]、下流側のシールドに印加する直流電圧を−400[V]とし、帯電の目標電位を−400[V]とする。感光体ベルト2の表面移動方向の上流側では目標電位の−400[V]よりも大きい−800[V]をシールドに印加するので帯電速度が大きく、一時的に−400[V]より大きく感光体ベルト2は帯電される。そして、感光体ベルト2の表面移動方向の下流側のシールドに−400[V]の電圧を印加するので、−400[V]まで除電されて収束することになる。このように、一度電位を上げてから下げる経路を経ると、感光体ベルト2上にトナー層が形成されている時に、トナーが持つ電荷を除電(または、帯電量の増加を抑えること)することが可能となる。
本実施形態の書込みユニット21は一般的なレーザ走査光学系の書込み手段であり、画像情報毎に変調されたレーザ光を射出する。一般的にレーザ光は、コリメートレンズを通過して走査手段としてのポリゴンミラーによりその偏向反射面で偏向され、ポリゴンミラーの回転により主走査方向に走査する。ポリゴンミラーにより走査されるレーザ光は結像レンズにより集光されて感光体ベルト2上の各露光部(6c、7c、8c、9c)に結像され、感光体ベルト2の副走査方向の動きと同期して画像全体の潜像を形成する。
次に、本実施形態の現像装置(6a、7a、8a、9a)は、クラウド現像方式の現像装置であり、このような現像装置としては、例えば、特開2007−133387号公報に記載の現像装置を用いることができる。クラウド現像方式については後で詳しく説明するが、現像装置(6a、7a、8a、9a)は同構成であるので第一現像装置6aを用いてここでは簡単に説明する。
第一現像装置6aは、現像速度や現像画質の観点から感光体ベルト2と第一現像ローラ6eを非当接状態にして現像を行う非接触の現像装置である。第一現像装置6aは、第一現像ローラ6e、第一マグローラ6f、2本の第一攪拌スクリュ6gと、第一現像ローラ6e上のトナーを薄層化する第一ブレード6i、そしてそれらを収納する第一ケース6hなどで構成され、例えばイエローの二成分現像剤が格納されている。磁性キャリアにトナーを混合させた二成分現像剤は永久磁石が内包された第一マグローラ6fに担持され、第一マグローラ6fの表面移動によって第一現像ローラ6eとの対向部まで搬送される。そこでトナーの一部が第一マグローラ6fと第一現像ローラ6eとの間のバイアス電位によって第一現像ローラ6eの表面に転移する。第一現像ローラ6eに転移されたトナーは、クラウド状態となり、第一現像ローラ6eの回転によって第一現像ローラ6eと感光体ベルト2とが対向する現像位置へと運ばれる。そして、感光体ベルト2表面から0.2〜0.5[mm]程度の現像ギャップが設けられた第一現像ローラ6e表面の平均電位と感光体ベルト2の表面電位との差によって現像が行われる(トナー像が形成される)。現像位置で、現像に用いられなかったトナーは第一現像ローラ6eの回転によって第一現像ローラ6eと第一マグローラ6fとの対向部に戻ってくるようになっている。クラウドはトナーの付着力が非常に低い状態なので、現像されず戻ってきたトナーは、第一マグローラ6fの回転に追随した二成分現像剤の穂によって容易に掻き取られたり均されたりする。これを繰り返すことによって、第一現像ローラ6e上には常にほぼ一定量のトナーがクラウド状態として担持される。他の現像装置(7a、8a、9a)についても同様である。
次に、プリンタ100における画像形成動作について説明する。
駆動ローラ3が回転することにより所定の線速で無端移動する感光体ベルト2を、先ず、第一作像部6において第一帯電器6bにより例えば−400[V]で一様に帯電させる。そして、画像のイエロー情報により変調された書込みユニット21のレーザ光が露光位置である第一露光部6cで感光体ベルト2を露光すると、露光部分の電位が低下しイエローの静電潜像を形成する。その静電潜像は、例えば−300[V]の現像バイアスの第一現像装置6aによってイエロートナー像として感光体ベルト2上に形成する。
さらに、感光体ベルト2の無端移動により、イエロートナー像が形成された感光体ベルト2表面は第二作像部7まで移動する。そして、第二帯電器7bにより再帯電され、露光位置である第二露光部7cでの露光後、第二現像装置7aでマゼンタトナー像をイエロートナー像の上に重なり合わせるように現像する。
続けて、感光体ベルト2の無端移動により、現像されたイエローとマゼンタとの二色重ねトナー像が形成された感光体ベルト2表面は、第三作像部8まで移動する。そして、第三帯電器8bにより再再帯電され、露光位置である第三露光部8cでの露光後、第三現像装置8aでシアントナー像をイエローとマゼンタとの二色重ねトナー像の上に重なり合わせるように現像する。
最後に、感光体ベルト2の回動により、現像されたイエロー、マゼンタ及びシアンの三色重ねトナー像が形成された感光体ベルト2表面は第四作像部9まで移動する。そして、第四帯電器9bにより四度目の帯電が行われ、露光位置である第四露光部9cでの露光後、第四現像装置9aでブラックトナー像をイエロー、マゼンタ及びシアンの三色重ねトナー像の上に重なり合わせるように現像する。
感光体ベルト2上に形成された四色の重ねトナー像は、用紙への転写効率が最適となるよう転写前除電器10で電荷が調整され、転写部14まで進む。そして、上述した作像動作に同期して給紙搬送部17で用紙搬送シーケンスが動作し、給紙ローラ19やレジストローラ対18などにより用紙が搬送され、感光体ベルト2の表面に沿うように接触する。そして転写部14でトナー像と用紙が合わさり、転写ローラ15のバイアス印加により感光体ベルト2上の4色のトナー像が一括して用紙に転写される。転写後の用紙は、図示しない除電針などにより感光体ベルト2から剥離され、定着装置20に送られ定着される。一方、転写後の残トナーおよび感光体ベルト2は、除電ランプ12で帯電状態が調整され、残トナーはクリーニング部11でクリーニングされ、感光体ベルト2は次の画像形成に備える。
上述した動作によってプリンタ100での4色の画像形成動作が完了する。このようなカラー画像形成装置によれば、中間転写体を用いることなく感光体ベルト2上に4色を重ね合わせ、感光体ベルト2の1回転でカラー画像を出力するので、高品位なカラー画像を高速で出力することができ、しかも装置の小型化が可能となる。
次に、本実施形態の各現像装置(6a、7a、8a、9a)に適用可能なクラウド現像方式の現像装置についてさらに詳しく説明する。
図2は、本実施形態の各現像装置に適用可能なクラウド現像方式の現像装置56の概略説明図である。
図2に示すように、現像装置56は、現像ローラ31、ケース60、マグローラ57、及び、2本の攪拌スクリュ61等から構成される。
図3は、マグローラ57から供給されたトナーを現像位置まで担持するトナー担持体としての現像ローラ31の斜視説明図である。トナー担持体としての現像ローラ31は、トナー搬送基板を回転ローラ形状に形成したものであり、現像ローラ31の表面移動に所定(数[μm]程度)のピッチで配列されて空間周期的に配置された複数の電極41、42、43・・・を備える。複数の電極41、42、43・・・からなる電極バターンにおける、ある電極から現像ローラ31の表面移動方向に数えて奇数番目の電極の集合体である奇数番目電極群におけるそれぞれの電極に接続された第一共通電極としての第一電極軸40Aを有している。また、偶数番目の電極の集合体である偶数番目電極群におけるそれぞれの電極に接続された第二共通電極としての第二電極軸40Bも有している。
第一電極軸40Aは、現像ローラ31の回転軸線方向の一端側に位置する金属製の回転軸部材が第一共通電極として兼用されたものである。また、第二電極軸40Bは、現像ローラ31の回転軸線方向の他端側に位置する金属製の回転軸部材が第二共通電極として兼用されたものである。これら第一電極軸40A及び第二電極軸40Bは、互いに絶縁状態を維持するように配設されており、それぞれ図示しない軸受けに回転自在に支持されている。そして、現像ローラ31の表面移動方向である回転方向の全周に渡って導電性表面を露出させている。
第一電極軸40A及び第二電極軸40Bには、図示しない電極ブラシ等の摺擦接点部材によって交流電源からバイアス電位として交流電圧が印加される。この交流電圧は、図4に示されるように、上述の奇数番目電極群を束ねた第一電極軸40Aに印加される矩形波状のA相パルス電圧と、偶数番目電極群を束ねた第二電極軸40Bに印加される矩形波状のB相パルス電圧とからなる。これらA相パルス電圧、B相パルス電圧は、図示のように互いに逆位相になっており、単位時間あたりにおける平均電位は互いに同じである。なお、図5に示すように、一方の電極軸に周波数fの矩形波状のパルス電圧を印加する一方で、もう一方の電極軸には、前記パルス電圧の平均電位となる直流電圧を印加しても、逆位相のパルス電圧を採用する場合と同様に、フレア現象を生起せしめることが可能である。
現像ローラ31は、図6(a)に示すように、絶縁体であるアクリル樹脂の円筒51に軸穴52を設け、図6(b)に示すようにステンレス製の第一電極軸40A及び第二電極軸40Bを円筒51の軸穴52に圧入して第一電極軸40Aを奇数番目電極群41、43・・・に、第二電極軸40Bを偶数番目電極群42・・・にそれぞれ接続する。
次に、図7(a)〜(e)に示す各工程でパターン電極を形成する。図7は現像ローラ31の表面を回転軸に沿った方向に見た図である。図7(a)に示す工程では、図6に示す工程よって得られた円筒51の表面を外周旋削によって平滑に仕上げる。図7(b)に示す工程では、溝のピッチが100[μm]、溝幅が50[μm]となるように溝53の切削を行う。図7(c)に示す工程では、溝切削を行った円筒51に無電解ニッケル54のメッキを施し、図7(d)に示す工程では、無電解ニッケル54のメッキを施した円筒51の外周を旋削して不要な導体膜を取り除く。この時点で電極41、42、43・・・が溝53の部分に互いに絶縁して形成される。その後、円筒51にシリコーン系樹脂をコーティングすることで円筒51の表面を平滑にし、同時に表面保護層55(厚み約5[μm]、体積抵抗率約1010[Ω・cm])を形成して現像ローラ31を製作した。
図8は、現像ローラ31を平面状に展開した状態を示す平面図である。この現像ローラ31は、表面保護層55上に薄いトナー層が形成される。そして、第一電極軸40A及び第二電極軸40Bに対して図4に示した交流電圧がバイアス電位として図示しない交流電源から電極ブラシ等を介して印加される。この印加は、次のようにして行われる。即ち、図9に示すように、現像ローラ31の第一電極軸40Aの周面には、現像装置56本体側に固定された金属等の導電性材料からなる第一摺擦接点部材91Aが接触しており、回転する第一電極軸40Aと摺擦する。上述の奇数番目電極群におけるそれぞれの電極に対しては、A相交流電源59Aから出力される上述のA相パルス電圧(図4参照)が、この第一摺擦接点部材91Aと第一電極軸40Aとを介して印加される。また、現像ローラ31の第二電極軸40Bの周面には、現像装置56本体側に固定された金属等の導電性材料からなる第二摺擦接点部材91Bが接触しており、回転する第二電極軸40Bと摺擦する。上述の偶数番目電極群におけるそれぞれの電極に対しては、B相交流電源59Bから出力される上述のB相パルス電圧(図4参照)が、この第二摺擦接点部材91Bと第二電極軸40Bとを介して印加される。このようにして各電極にパルス電圧が印加されると、トナーは奇数番目電極群41、43・・・と偶数番目電極群42・・・を往復するような運動(フレア)を行う。
かかる構成において、現像ローラ31の複数の電極における同一群の電極に対して共通した電圧を導くための第一電極軸40A及び第二電極軸40Bについては、トナーの粒径やホッピング性を考慮して幅を決定する必要がないため、図示のようにかなり広幅のものを用いることが可能となる。更には、これら電極軸に摺擦せしめる図示しない電極ブラシ等の摺擦接点部材についても、電極軸(40A、40B)の幅にあわせて、広幅のものを用いることが可能になる。これらの結果、電極軸と摺擦接点部材との摩耗による接触不良の発生時期を従来よりも遅らせて、従来よりも現像装置の長寿命化を図ることができる。
第一電極軸40Aと第二電極軸40Bとは、現像ローラ31において互いに回転軸線方向にずらして配設されている。かかる構成では、第一電極軸40Aと第二電極軸40Bとを互いに回転軸線方向にずらしていることで、回転する電極軸40A、電極軸40Bに対して、それぞれ摺擦接点部材を独立させて摺擦せしめることができる。
また、本実施形態に適用可能な現像装置56においては、現像ローラ31の回転軸線方向における一端側に位置する金属製の第一電極軸40Aを第一共通電極として兼用するとともに、他端側に位置する金属製の第二電極軸40Bを第二共通電極として兼用し、それら電極軸を互いに絶縁状態にしている。かかる構成では、現像ローラ31に新たな共通電極を設けることなく、それぞれの電極群に独立してパルス電圧を印加することができる。
ここで現像装置56において、交流電源から電極41、42、43・・・間に印加する交流電圧のプラス側ピーク値とマイナス側ピーク値との差分の絶対値がVmax[V]とし、電極41、42、43・・・のうち、隣り合う電極間の距離をp[μm]とする。この場合、特開2007−133387号公報に記載されているように、Vmax[V]/p[μm]>1である時にフレアが活性化し始めて、Vmax[V]/p[μm]>3はフレアが完全に活性化する。また、現像ローラ31は、表面保護層55の体積抵抗率が109〜1012[Ω・cm]の範囲にあることが適正であり、表面保護層55がシリコーン系樹脂である。表面保護層55の材料は、上述のように、トナーとの摩擦でトナーに正規の電荷を与えられる材質であることが好ましく、例えばガラス系のものや、二成分現像剤のキャリアコートに使用されている材料を用いることが好ましい。pは現像ギャップG1より小さいこと、すなわちp<G1に設定される。
プリンタ100では、トナーとして、母材樹脂(トナーの主成分)がポリエステル又はスチレンアクリルからなり、且つ正規帯電極性がマイナス極性(負極性)であるものを用いている。そして、潜像担持体である感光体ベルト2の一様帯電部(地肌部)と潜像部とを共にトナーの正規帯電極性と同極性(本例ではマイナス極性)にし、且つ地肌部よりも電位を減衰せしめた潜像部に対してトナーを選択的に付着させるいわゆる反転現像を行うようになっている。
図8における現像ローラ31は、図7を用いて説明した基板となる円筒51と、複数の電極(41、42・・・)と、これら電極を覆う表面保護層55とを有している。この表面保護層55としては、トナー担持体たる現像ローラ31の表面上でホッピングするトナーとの摺擦に伴ってトナーの正規帯電極性側(本例ではマイナス側)への摩擦帯電を促す材料からなるもの、を用いている。即ち、トナーの方が表面保護層55よりも摩擦帯電系列上でマイナス側に位置しているのである。このような関係を実現し得る表面保護層55の材料としては、シリコーン、ナイロン、メラミン樹脂、アクリル樹脂、PVA、ウレタンなどの有機材料を例示することができる。また、第四級アンモニウム塩やニグシロン系染料などでもよい。更には、これまでに例示した材料の2つ以上を混合した材料でもよい。これらの材料は、トナーの正規帯電極性側への摩擦帯電を促すことに加えて、自らの絶縁性によってトナー電荷の電極へのリークを回避することが可能である。
このような表面保護層55を具備する現像ローラ31では、表面保護層55がホッピングするトナーとの摺擦に伴ってトナーの正規帯電極性側への摩擦帯電を促す。そして、表面保護層55との摺擦に伴うトナーの正規帯電極性とは逆極性側への摩擦帯電を回避する。これにより、ホッピングに伴うトナーの帯電量(正規帯電極性)の低下を抑えることで、トナーのホッピング不良による現像不良の発生を抑えることができる。
なお、トナーとして、正規帯電極性がプラス極性(正極性)であるものを用いてもよい。この場合には、表面保護層55として、トナーとの摺擦に伴ってトナーのプラス極性側への摩擦帯電を促す材料からなるものを用いればよい。
また、トナーの帯電系列とは、トナー母材樹脂(粒子)にシリカ、酸化チタンなどの外添剤を添加したトナー全体としての帯電系列を意味する。帯電系列における序列については、次のようにして調べることが可能である。即ち、トナーを表面保護層上で所定時間だけ表面保護層に摺擦せしめた後、そのトナーを吸引して採取する。そして、採取したトナーの帯電量をエレクトロメータで測定する。この測定結果がトナーの負極性への帯電量増加を示すものであれば、トナーの方が表面保護層よりもマイナス側の帯電系列となる。また、測定結果がトナーの正極性への帯電量増加を示すものであれば、トナーの方が表面保護層よりもプラス側の帯電系列となる。
また、表面保護層55と電極との間に中間層を設けてもよい。この場合、中間層として、Ti、Sn、Fe、Cu、Cr、Ni、Zn、Mg、Al、TiO2、SnO2、Fe2O3、Fe3O4、CuO、Cr2O3、NiO、ZnO、MgO、Al2O3等の導電性の材料からなるものを用いることも可能である。
図2に示す現像装置56は上述した現像ローラ31を備える現像装置である。ケース60とマグローラ57とからなる構成は、通常の二成分現像装置と同様の構成であり、マグローラ57上に形成された二成分現像剤の穂が現像ローラ31の表面に当接されている。具体的には、粒径50[μm]の磁性キャリア粉と粒径約6[μm]のポリエステルトナーを重量比で7〜8[wt%]混合させた二成分現像剤をケース60内に収容し、永久磁石を内包するマグローラ57によって二成分現像剤を現像ローラ31と対向する位置まで搬送する。そして、この対向する位置でトナーの一部がマグローラ57と現像ローラ31との間に印加される直流バイアス電位によって現像ローラ31に転移する。
現像ローラ31に転移したトナーは、現像ローラ31上でフレアを形成しながら、現像ローラ31が図示しない駆動部により回転駆動されることで感光体ベルト2との対向部である現像位置に搬送される。そして、現像ローラ31表面の平均電位と感光体ベルト2の表面電位との差によって現像ローラ31表面上のトナーが感光体ベルト2上の静電潜像に付着することで静電潜像を現像してトナー像を形成する。なお、第一電極軸40A及び第二電極40B間には交流電源59から電極ブラシ等によってバイアス電位として交流電圧が印加され、奇数番目電極群41、43・・・と偶数番目電極群42・・・との間に時間周期的な電位差が形成される。
現像位置で現像に寄与しなかったトナーは現像位置から再びマグローラ57との対向部に戻ってくる。フレアが形成されているので、現像ローラ31に対するトナーの付着力は非常に低く、現像ローラ31の表面移動によって現像位置からマグローラ57との対向部に戻ってきたトナーは、マグローラ57の回転に追随した二成分現像剤の穂によって容易に掻き取られたり馴らされたりする。これを繰り返すことによって、現像ローラ31上には常にほぼ一定量のトナーフレアが形成されることになる。現像装置56では、ケース60内の二成分現像剤63を2本の攪拌スクリュ61で攪拌しながら搬送して循環させ、マグローラ57がその二成分現像剤の一部を現像ローラ31まで搬送すると共に現像位置から現像に寄与しなかった不要なトナーケース60内を戻す。
本実施形態のプリンタ100の各現像装置(6a、7a、8a、9a)には、このような構成のクラウド現像方式の現像装置56が適用可能であるが、クラウド現像方式の現像装置としてはこの一例の構成に限るものではない。
ところで、上記クラウド現像方式の現像装置56のように、感光体と現像ローラとが非当接の構成は、両者が互いにメカ的ストレスや負荷変動を与え合うことがなく、どちらかを弾性体にする必要もないというメリットがある。しかし、所定間隔を高精度に保持管理し、現像ギャップが最適となるようにする必要がある。また、感光体と現像ローラとが非当接の構成では上述のように現像チリが問題となる。特に、クラウド現像方式では、トナーの付着力が非常に低い状態にあるので、現像チリの原因となる浮遊トナーの発生が必至であり、その量が他の現像方式に比べて多くなることが確認されている。
さらに、本出願人が行った現像チリの観察実験によれば、現像チリの原因となる浮遊トナーの数(量)を感光体の表面移動方向について有効現像領域の上流側と下流側とで比較してみたところ、上流側に比べて下流側の方が多いことが確認された。簡単に言うと、感光体表面が有効現像領域に進入する直前である入り口付近よりも有効現像領域を通過した直後の出口付近の方が、現像チリが多く発生しているということである。これは現像ポテンシャルや、感光体及びトナー像担持体の表面移動で生じる気流などが影響していると考えられる。もっとも感光体表面が有効現像領域に進入する直前となる上流側で浮遊トナーが感光体の潜像以外の箇所に付着してしまっても、感光体表面はそのまま有効現像領域に入り、通常の現像が行われる。このため、感光体表面の潜像以外の箇所に付着したトナーは、有効現像領域での現像ポテンシャルによってトナー担持体側へ移動するため、有効現像領域に対して感光体の表面移動方向上流側で感光体表面上に付着したトナーの影響はほとんど無く、有効現像領域の上流側での浮遊トナーはあまり問題とならない。すなわち、画像劣化の大きな原因となる現像チリは、有効現像領域の下流側での浮遊トナーが要因であり、有効現像領域の下流側での浮遊トナーを抑制することにより、現像チリに起因する画像劣化を抑制することができる。
ここで、本実施形態のプリンタ100のように、感光体ベルト2を用いたものでは、感光体ドラムに比べて、感光体ベルト2の撓みや浮きによる変位により、現像ギャップの管理維持が難しい。そこで、上述のような感光体ベルト2の張架の一部を担う現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)を設けて、対向部での変位を防止して現像ギャップを良好に管理維持している。現像影響領域の幅を狭くするには、この現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)を小径化すると共に、感光体ベルト2が現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)に巻きつく幅が広くなるよう架張して、感光体ベルト2が現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)の径に倣って曲率の小さい対向面を形成することが有効である。しかし、プリンタ100のように、複数の現像装置(6a、7a、8a、9a)が感光体ベルト2に沿って上述のように配置された装置では、現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)に広い幅で巻きつき曲率の小さい対向面を形成することは難しく、感光体ベルトの現像ローラとの対向面は平面または、ほぼ平面に近い面となってしまう。このため、現像影響領域の幅が広くなってしまう。
そこで、本実施形態のプリンタ100では、現像装置(6a、7a、8a、9a)を感光体ベルト2に対向配置する際、感光体ベルト2裏面が現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)に接触する接触幅のうち半分より上流側の位置の感光体ベルト2表面に現像ローラ(6b、7b、8b、9b)が最近接するように配置することにより、浮遊トナーが発生する現像影響領域の幅を狭くして、現像チリを抑制するものである。以下、詳細に説明する。
感光体ベルト2の、現像対向ローラ32への巻きつき状態は大まかに、以下の(1)〜(3)の3つに分けることができる。
(1)現像位置を基準に上流側にのみ巻きつき、下流側は巻きつかない状態。言い換えると、現像ローラ31と現像対向ローラ32との最近接位置に対して、感光体表面移動方向上流側は感光体ベルト2の張架面が最近接位置における現像対向ローラ32の接線よりも現像対向ローラ32側となり、最近接位置に対して感光体表面移動方向下流側は感光体ベルト2の張架面が最近接位置における現像対向ローラ32の接線と実質的に重なる状態(図10参照)。
(2)現像位置を基準に下流側にのみ巻きつき、上流側は巻きつかない状態。言い換えると、現像ローラ31と現像対向ローラ32との最近接位置に対して、感光体表面移動方向下流側は感光体ベルト2の張架面が最近接位置における現像対向ローラ32の接線よりも現像対向ローラ32側となり、最近接位置に対して感光体表面移動方向上流側は感光体ベルト2の張架面が最近接位置における現像対向ローラ32の接線と実質的に重なる状態(図12参照)。
(3)現像位置を基準に上流側、下流側の両方ともに巻きつく状態。言い換えると、現像ローラ31と現像対向ローラ32との最近接位置に対して、感光体表面移動方向下流側と感光体表面移動方向上流側との両側とも、感光体ベルト2の張架面が最近接位置における現像対向ローラ32の接線よりも現像対向ローラ32側となる状態(図14参照)。
図1に示すプリンタ100では、感光体ベルト2が各現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)に張架され、各作像部(6、7、8、9)がそれぞれ上記(1)、上記(2)、または上記(3)の何れかの状態をとる。よって、本実施形態では、これらの状態について説明する。なお、従来のカラー画像形成装置では、現像ローラ31と現像対向ローラ32との関係は設計のし易さ、位置設定の容易性などから現像ローラ31の回転中心と現像対向ローラ32の回転中心とを結ぶ直線が水平方向や鉛直方向に平行になるように、または、水平方向や鉛直方向に対して5[°]や20[°]などと判りやすい位置や角度に設定することが多い。
先ず、上記(1)の状態について説明する。図10は、上記(1)の状態における現像動作時の現像位置周辺の拡大図である。感光体ベルト2が現像対向ローラ32に、現像位置を基準に上流側にのみ巻きつき、下流側は巻きついていない状態となっている。
ここで、図20を用いて説明したように感光体がドラム状の場合、現像位置の感光体ドラム50と現像ローラ31の中心を結ぶ一点鎖線L1(この場合は水平線)を基準に、有効現像領域A1、上流側現像影響領域A2及び下流側現像影響領域A3を比較すると、同じ幅、すなわち、一点鎖線L1を挟んで上下対象であることが分かる。一方、図10では、一点鎖線L1を挟んで有効現像領域A1の幅は上下対象ではなく、さらに、上流側現像影響領域A2の幅w2と下流側現像影響領域A3の幅w3とも違いが出ていることは明らかである。
有効現像領域A1は全体ではw1という幅であるが、有効現像領域A1を現像ローラ31と現像対向ローラ32の中心を結ぶ一点鎖線L1(この場合は水平線)を基準に感光体表面移動方向について上流側と下流側とで分けると、上流側の幅は狭く、下流側の幅は広くなっていることが分かる。また現像影響領域については、上流側現像影響領域A2の幅w2と下流側現像影響領域A3の幅w3との関係が、w2<w3となり、現像影響領域も下流側の幅が広くなっていることが分かる。これらは感光体ベルト2が現像対向ローラ32に巻きついているか否かによるものである。
現像ギャップG1及び現像影響ギャップG2は予備実験等により設定される値であり、一点鎖線L1を挟んで上流側または下流側に関係無く、等しい値である。そして、プリンタ100では、現像ギャップG1は0.4[mm]であり、現像影響ギャップG2は0.7[mm]である。
しかし、現像ギャップG1、及び、現像影響ギャップG2の間隔が等しくても上流側と下流側では感光体ベルト2の巻きつき方が違うので、現像ローラ32と感光体ベルト2との間隔が、現像ギャップG1以下となる領域、及び現像影響ギャップG2以下となる領域の位置に違いが出る。
これは、一点鎖線L1を挟んで下流側では感光体ベルト2が現像対向ローラ32に巻きついていない分、現像ギャップG1及び現像影響ギャップG2となる領域が現像ローラ31側(図の左側)にシフトしてしまうことにより違いが生じるためである。結果として図10の状態(現像位置を基準に上流側にのみ巻きつき、下流側は巻きついていない状態)では、上流側に比べて下流側の有効現像領域および現像影響領域の方が広くなってしまうのである。よって、図10の現像対向ローラ32に対する感光体ベルト2の巻きつき方、及びそのときの現像対向ローラ32に対する現像ローラ31の位置においては、有効現像領域の幅w1が広くなる。さらに、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域である下流側現像影響領域A3の幅w3も広くなってしまうので、現像チリの発生をかえって増進させてしまっている。ここで、有効現像領域の幅w1が広いと、所謂、狭間現像が難しくなり、凝集した密な現像を行うことができず、現像画質を劣化させてしまう。また有効現像領域A1の下流側と下流側現像影響領域A3との感光体ベルト2が、現像対向ローラ32に巻きついていない状態にあるため、その領域では感光体ベルト2の振動や撓みの影響を受けやすく、ギャップ変動による現像不良も危惧される。
そこで、図10のような現像下流側で現像チリやギャップ変動が危惧される構成においては、現像ギャップを維持しつつ、現像対向ローラ32を中心に図10の現像ローラ31の位置を感光体ベルト2が巻きついている上流側に移動させ、感光体ベルト2が巻きついていないことで生じる上記下流側の問題点を解決できる範囲を検討する。図11は、図10と感光体ベルト2の張架状態は変えることなく、現像装置56の配置を変えた場合の説明図である。以下、図11(a)〜(d)に基づき、現像チリに有効な現像ローラ31の配置について説明する。
図11(a)は、図10と同じ状態で、現像ローラ31は、下流側であって感光体ベルト2が現像対向ローラ32から離れる位置、つまり感光体ベルト2が巻きつき終わる下流側接点位置(巻きつき角度θの位置)に位置している状態である。このとき、図10で説明したように下流側で有効現像領域と現像影響領域の幅が広くなってしまう。
図11(b)は、感光体ベルト2が現像対向ローラ32に巻きつき始める上流側接点位置(巻きつき角度0°の位置)まで、現像ローラ31を移動させたものである。このように、現像ローラ31を上流側に移動させることで、下流側の有効現像領域と現像影響領域の幅を狭くすることができる。なお、図11(b)では、上流側の有効現像領域が広くなり、さらに上流側現像影響領域A2の幅w2も広くなってしまうが、浮遊トナー(現像チリ)に関しては上流側なのであまり問題にならない。このように、現像ローラ31を上流側接点位置に配置することにより、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域である下流側現像影響領域A3の幅w3を狭くして、現像チリを抑制することができる。しかし、有効現像領域の幅w1は広いままであり、狭間現像は難しい。
図11(c)は、図11(a)と図11(b)の中間である巻きつき角度θの1/2の中央位置に現像ローラ31を移動させたものである。中央位置(θ/2位置)であれば巻きつき角度θによる感光体ベルト2の曲率を有効に利用でき、有効現像領域と現像影響領域の幅をほどほど狭く、しかも上流側と下流側で幅を同じにすることができる。これは、下流側現像影響領域A3の幅w3も狭くできるので、図11(a)の位置に比べ、現像チリを抑制することができる。しかし、この状態は図20で説明した感光体ドラムの場合と同様な状態であり、上流側に比べ、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域を特に狭くするものではない。
そこで、最も効果が期待できる位置は、図11(d)であり、図11(b)よりも下流側で図11(c)より上流側、すなわち、現像ローラ31を感光体ベルト2が巻きつき始める上流側接点位置(巻きつき角度0°の位置)からθ/2の中央位置の範囲に配置したものである。この範囲であれば、感光体ベルト2の曲率を有効に利用し、下流側の有効現像領域と現像影響領域の幅w3を、図11(c)よりさらに狭くすることができるので、下流側の現像チリ発生を抑制することができる。また、上流側の有効現像領域と現像影響領域w2は、図11(c)より多少広くなってしまうが、有効現像領域は図11(c)とほとんど変わらない幅なので狭間現像は十分可能である。また、上流側の浮遊トナーはあまり問題にならないので現像影響領域w2が多少広くなっても構わない。
以上のことから、現像ローラ31を接触幅の半分より上流に配置することにより、現像チリと狭間現像との両立が可能となる。なお、上述のように、図11(b)のように上流側接点位置は、狭間現像は難しく、且つ、感光体ベルト2の振動や撓みの影響を受けやすい位置なので、現像画質を問題にするならば上流側接点位置は避けた方が好ましい。また、図11(c)のように、接触幅の半分の位置(θ/2位置)は、上流側に比べ、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域を特に狭くするものではないので、より効果的に下流側の浮遊トナーの発生領域を狭くするならば接触幅の半分の位置は避けた方が好ましい。
次に、上記(2)の状態について説明する。図12は、上記(2)の状態における現像動作時の現像位置周辺の拡大図である。感光体ベルト2が現像対向ローラ32に現像位置を基準に下流側にのみ巻きつき、上流側は巻きついていない状態となっている。
図12では、現像対向ローラ32に対する感光体ベルト2の巻きつき方が図10と上下逆さな関係となっている。図10の場合と同様に、一点鎖線L1を挟んで有効現像領域A1の幅は上下対象ではなく、さらに、上流側現像影響領域A2の幅w2と下流側現像影響領域A3の幅w3とも違いが出ている。有効現像領域A1は全体では幅w1であるが、図10とは逆に下流側の幅は狭く、上流側の幅は広くなっている。また現像影響領域については、上流側現像影響領域A2の幅w2と下流側現像影響領域A3の幅w3との関係が、w2>w3となり、現像影響領域も上流側の幅が広くなっていることが分かる。これらは感光体ベルト2が現像対向ローラ32に巻きついているか否かによるものである。
また、現像ギャップG1、及び、現像影響ギャップG2の間隔が等しくとも、上流側と下流側では感光体ベルト2の巻きつき方が違うので、現像ローラ32と感光体ベルト2との間隔が、現像ギャップG1以下となる領域、及び現像影響ギャップG2以下となる領域の位置に違いが出る。
これは、一点鎖線L1を挟んで上流側では感光体ベルト2が現像対向ローラ32に巻きついていない分、現像ギャップG1及び現像影響ギャップG2となる領域が現像ローラ31側(図の左側)にシフトしてしまうことにより違いが生じるためである。結果として図12の状態(現像位置を基準に下流側にのみ巻きつき、上流側は巻きついていない状態)では、図10とは逆に下流側に比べて上流側の有効有効現像領域および現像影響領域の方が広くなってしまうのである。言い換えれば、図12の現像対向ローラ32に対する感光体ベルト2の巻きつき方、及びその時の現像対向ローラ32に対する現像ローラ31の位置においては、図10の場合とは異なり、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域である現像影響領域の幅w3を狭くすることできるので、現像チリ発生の抑制することができる。しかし、有効現像領域の幅w1が広くなり狭間現像が難しいという問題は残されている。また、上流側の有効現像領域と現像影響領域は感光体ベルト2が現像対向ローラ32に巻きついていない状態にあるので、その領域では感光体ベルト2の振動や撓みの影響を受けやすく、現像ギャップ変動による現像不良も危惧される。
そこで、図12のように現像下流側の現像チリが抑制できる構成において、現像ギャップを維持しつつ、現像対向ローラ32を中心に図12の現像ローラ31の位置を感光体ベルト2が巻きついている移動させ時、現像チリを抑制の効果を維持しつつ、狭間現像との両立が可能な範囲を検討する。図13は、図12と感光体ベルト2の張架状態は変えることなく、現像装置56の配置を変えた場合の説明図である。以下、図13に基づき、現像チリと狭間現像に有効な現像ローラ31の配置について説明する。
図13(a)は、図12と同じ状態で、現像ローラ31は、上流側であって感光体ベルト2が現像対向ローラ32に巻きつき始める上流側接点位置(巻きつき角度0°の位置)に位置している状態である。このとき、図12で説明したように下流側の有効現像領域と現像影響領域の幅w3を狭くすることができるが、上流側において有効現像領域が広くなってしまい、狭間現像が難しい。
図13(b)は、感光体ベルト2が現像対向ローラ32から離れる位置、つまり感光体ベルト2が巻きつき終わる下流側接点位置(巻きつき角度θの位置)に位置まで、現像ローラ31を移動させたものである。しかし、この位置では、下流側の有効現像領域と現像影響領域の幅w3とが広くなってしまい、現像チリを抑制することが難しい。
図13(c)は、図13(a)と図13(b)の中間である巻きつき角度θの1/2の中央位置に現像ローラ31を移動させたものである。中央位置(θ/2位置)であれば巻きつき角度θによる感光体ベルト2の曲率を有効に利用でき、有効現像領域と現像影響領域の幅をほどほど狭く、しかも上流側と下流側で幅を同じにすることができる。これは、下流側現像影響領域A3の幅w3も狭くできるので、図13(a)の位置に比べ、現像チリを抑制することができる。しかし、この状態は図20で説明した感光体ドラムの場合と同様な状態であり、上流側に比べ、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域を特に狭くするものではない。
そこで、最も効果が期待できる位置は、図13(d)であり、図13(a)よりも下流側で図13(b)より上流側、すなわち、現像ローラ31を感光体ベルト2が巻きつき始める上流側接点位置(巻きつき角度0°の位置)からθ/2の中央位置の範囲に配置したものである。この範囲であれば、感光体ベルト2の曲率を有効に利用し、下流側の有効現像領域と現像影響領域の幅w3を、図13(c)よりさらに狭くすることができるので、下流側の現像チリ発生を抑制することができる。また、上流側の有効現像領域と現像影響領域w2は、図13(c)より多少広くなってしまうが、有効現像領域は図13(c)とほとんど変わらない幅なので狭間現像は十分可能である。また、上流側の浮遊トナーはあまり問題にならないので現像影響領域w2が多少広くなっても構わない。このような範囲に現像ローラ31を配置することにより、現像チリと狭間現像との両立が可能となる。
以上のことから、現像ローラ31を接触幅の半分より上流に配置することにより、現像チリと狭間現像との両立が可能となる。なお、上述のように、図13(a)のように上流側接点位置は、狭間現像は難しく、且つ、感光体ベルト2の振動や撓みの影響を受けやすい位置なので、現像画質を問題にするならば上流側接点位置は避けた方が好ましい。また、図13(c)のように、接触幅の半分の位置(θ/2位置)は、上流側に比べ、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域を特に狭くするものではないので、より効果的に下流側の浮遊トナーの発生領域を狭くするならば接触幅の半分の位置は避けた方が好ましい。
次に、上記(3)の状態について説明する。図14は、上記(3)の状態における現像動作時の現像位置周辺の拡大図である。感光体ベルト2が現像対向ローラ32に現像位置を基準に上流側、下流側共に巻きつく状態となっており、一般的に多く採用されている構成である。
図14では、図20の感光体ドラムを用いた場合と同様であり、一点鎖線L1を挟んで有効現像領域A1の幅は上下対象で等しく、さらに、上流側現像影響領域A2の幅w2と下流側現像影響領域A3の幅w3も等しい。このため、下流側現像影響領域A3で発生する浮遊トナーにより現像チリが問題となる。そこで、図14のような現像下流側で現像チリやギャップ変動が危惧される構成において、現像ギャップを維持しつつ、現像対向ローラ32を中心に図14の現像ローラ31の位置を感光体ベルト2が巻きついている上流側に移動させ、上記下流側の問題点を解決できる範囲を検討する。図15は、図14と感光体ベルト2の張架状態は変えることなく、現像装置56の配置を変えた場合の説明図である。以下、図15に基づき、現像チリに有効な現像ローラ31の配置について説明する。
図15(a)は、図14と同じ状態で、現像ローラ31は、感光体ベルト2が巻きつき始める上流側接点位置(巻きつき角度0°の位置)と巻きつき終わる下流側接点位置(巻きつき角度θの位置)の1/2の位置に現像ローラeが位置している状態である。中央位置(θ/2位置)であれば、巻きつき角度θによる感光体ベルト2の曲率を有効に利用でき、有効現像領域と現像影響領域の幅をほどほど狭く、しかも上流側と下流側で同じにすることができる。しかし、この位置では図14で説明したように下流側の現像チリ問題を解決するものではない。
図15(b)は、感光体ベルト2が現像対向ローラ32に巻きつき始める上流側接点位置(巻きつき角度0°の位置)まで、現像ローラ31を移動させたものである。このように、現像ローラ31を上流側に移動させることで、下流側の有効現像領域と現像影響領域を狭くすることができる。このように、現像ローラ31を上流側接点位置に配置することにより、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域である下流側現像影響領域A3の幅w3を狭くして、現像チリを抑制することができる。しかし、上流側において有効現像領域の幅w1が広くなってしまうので、狭間現像は難しい。
図15(c)は、参考として、感光体ベルト2が現像対向ローラ32から離れる位置、つまり感光体ベルト2が巻きつき終わる下流側接点位置(巻きつき角度θの位置)に、現像ローラ31を移動させたものである。この位置では、下流側で有効現像領域と現像影響領域の幅w3が広くなってしまうので、反って下流側の浮遊トナーの発生を増進させてしまい、現像チリは悪化する。このようなに下流側に現像ローラ31を移動させるような事はしない。
そこで、最も効果が期待できる位置は、図15(d)であり、図15(b)よりも下流側で図15(a)より上流側、すなわち、現像ローラ31を感光体ベルト2が巻きつき始める上流側接点位置(巻きつき角度0°の位置)からθ/2の中央位置の範囲に配置したものである。この範囲であれば、感光体ベルト2の曲率を有効に利用し、下流側の有効現像領域と現像影響領域の幅w3を、図15(a)よりさらに狭くすることができるので、下流側の現像チリ発生を抑制することができる。また、上流側の有効現像領域と現像影響領域w2は、図15(a)より多少広くなってしまうが、有効現像領域は図15(a)とほとんど変わらない幅なので狭間現像は十分可能である。また、上流側の浮遊トナーはあまり問題にならないので現像影響領域w2が多少広くなっても構わない。
以上のことから、現像ローラ31を接触幅の半分より上流に配置することにより、現像チリと狭間現像との両立が可能となる。なお、上述のように、図15(b)のように上流側接点位置は、狭間現像は難しく、且つ、感光体ベルト2の振動や撓みの影響を受けやすい位置なので、現像画質を問題にするならば上流側接点位置は避けた方が好ましい。また、図15(a)のように、接触幅の半分の位置(θ/2位置)は、上流側に比べ、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域を特に狭くするものではないので、より効果的に下流側の浮遊トナーの発生領域を狭くするならば接触幅の半分の位置は避けた方が好ましい。
以上、現像対向ローラに対する感光体ベルト2の巻きつき状態(1)、(2)、及び(3)を用いて説明したが、本実施形態のプリンタ100では、図1で示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)すべての現像装置(6a、7a、8a、9a)において、現像ローラ(6e、7e、8e、9e)を現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)の接触幅の半分より上流に配置するように配置している。さらに詳しくは、図16(a),(b),(c),(d)は、は、感光体ベルト2に対する各現像ローラ(6e、7e、8e、9e)の対向部の拡大図である。各現像ローラ(6e、7e、8e、9e)はそれぞれ上流側接点位置からθ/4の位置に配置されている。このように配置することで、第一作像部6、第二作像部7、第三作像部8、及び、第四作像部9の4つが積み重なるようにして感光体ベルト2の表面移動方向に沿って一定の間隔を置いて順次配置したカラープリンタにおいて、効果的に現像チリを抑制することができる。また、このようにして現像チリを抑制しても、上記レイアウトを大きく制限されることはない。
しかしながら、浮遊トナーによる現像チリや現像ギャップ変動による現像不良が危惧されると分かっていても、装置の小型化、コスト等を最優先させる装置においては、レイアウト上の制約や部品形状の大きさなどから、本発明の構成を全ての現像装置に採用できない場合もある。さらに、上記クラウド現像方式を採用するものでは、現像ローラに対するトナーの付着力が非常に低いため、現像チリは発生しやすく、画像品質の劣化が目立ってしまう。特に、ブラックでは、微小なトナーの粒や僅かな位置ずれ(色ずれ)であっても容易に認識されてしまうため、現像チリや画像劣化は特に目に付きやすく、カラー画像形成装置として非常に厳しいものとなってしまう。
そこで、ブラックの現像装置については、必ず、上述のように現像ローラ31を現像対向ローラ32の接触幅の半分より上流に配置するようにする。そして、他の制約により、現像ローラ31を接触幅の半分より上流に配置できない現像装置は、ブラックではない他の色の現像装置とする。このようにすることにより、特にテキスト等の黒文字を多く含む画像において良好な画像形成を行うことができる。また、上記現像ローラ31を現像対向ローラ32の接触幅の半分より上流に配できない現像装置を、イエローの現像装置とする。これは、イエローのような淡色のトナーは目視で認識され難いため、多少の現像チリや現像不良は気にならなくなり、特にイエローを多く含む画像においては良好な画像形成を行うことができる。
また、カラー画像形成装置において一般的に、色の重ね合せ時の画質やモノクロ画像のプリントスピードの観点から、感光体ベルト2の最下流に設置して最後に現像動作を行う現像装置をブラックとしている。しかしその箇所が、現像ローラ31を現像対向ローラ32の接触幅の半分より上流に配置してない構成であっては、現像チリや現像不良による画像劣化が危惧され、特にブラックでは目立ってしまう。従って、感光体ベルト2の最下流に設置する現像装置では、現像ローラ31を現像対向ローラ32の接触幅の半分より上流に配置するようにする。
このように、感光体ベルト2を用いたカラープリンタにおいて、現像対向ローラ9dにより張架される感光体ベルト2に対する現像ローラ9eの配置を規定することのみで、レイアウトを大きく制限されることなく、効果的に現像チリを抑制することができる。
以上、第一の本実施形態では、感光体ベルト上で色毎に重ね合わせてカラー画像を形成するタイプのカラー画像形成装置に本発明を適用した例を挙げて説明したが、本発明の構成はそれに限定されることはなく、転写紙上で色を重ね合わせるタイプでも、中間転写媒体上で色を重ね合わせるタイプでも適用可能である。
次に、本発明を適用した第二の実施形態の画像形成装置として、カラー画像形成装置であるカラープリンタ(以下、単にプリンタ200という)について説明する。
第二の実施形態のプリンタ200の全体構成は、概ね上記第一の実施形態のプリンタと同じであるが、現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)を感光体ベルト2の表面移動方向に対してそれぞれ移動可能とする現像対向ローラ移動手段としての現像対向ローラの位置調整手段を設けた点が異なる。以下、この点について詳しく説明する。
図17は、第二の実施形態のプリンタ200の画像形成部の構成を示す概略断面図である。プリンタ200の全体構成および動作は図1の第一の実施形態のプリンタ100と同様であるので、説明を省略する。図17のプリンタ200では、各現像装置(6a、7d、8a、9a)に感光体ベルト2を挟んで対向する現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)に、感光体ベルト2の表面移動方向の現像位置を最適に設定できるように、偏芯ローラ61とレバー62からなる位置調整手段60を設けている。
上述のように、現像ローラ(6e、7e、8e、9e)を感光体ベルト2に現像ギャップを維持して対向するよう配置した現像装置(6a、7a、8a、9a)では、画質向上のため現像ギャップの高精度な維持管理はもちろんのこと、現像チリの抑制のため、現像ローラを感光体ベルトが現像対向ローラに巻きつく所定の位置に配置し、有効現像領域および現像影響領域を高精度に維持管理することが重要である。そこで、位置調整手段60により、現像ギャップを維持した状態で現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)を感光体ベルト表面移動方向に移動させてその位置を調整、設定し、浮遊トナーの発生を抑制するようにした。図18は、現像対向ローラ6dの位置調整手段60よる位置を調整の説明図である。
まず、位置調整手段60の構成について説明する。
図18(a)〜(e)では、画像形成部の側板または感光体ベルト2などをユニット化する側板(いずれも不図示)に感光体ベルト表面移動方向の長穴63が開けられており、その長穴63に現像対向ローラ6dの同軸端部に設けた軸受け6Dが感光体ベルト表面移動方向に沿って摺動できるように取付けられている。なお、図18では長穴63は、垂直方向の長穴だが、感光体ベルト表面移動方向に沿った斜め方向や湾曲した形状の長穴でも良い。このとき、現像ギャップは長穴63と軸受け6Dの寸法形状によりガタのない状態であり、また現像ローラ6eに設けたギャップコロにより現像ギャップは維持された状態にある。この軸受け6Dの外周面に一端が当接しながらレバー62が回転軸64を中心に回動可能になっており、現像対向ローラ6dは感光体ベルト表面移動方向に可動する。レバー62の他端には、図示しないモータ等に連結され、レバー62を自在に動作させる偏芯ローラ61と、レバー62を挟んで偏芯ローラ61と対向する位置にバネ65が設けられている。このようにして構成された現像対向ローラ6dの位置調整手段60により、感光体ベルト表面移動方向の現像位置を調整設定する。なお、図17では、感光体ベルト2の表面移動方向が下向きで、現像対向ローラ6dを下方に押し下げる力が掛かるので、現像対向ローラ6dを下方に押圧するバネを設けなかったが、必要に応じて設けても良い。
図18(a)〜(e)に基づき、現像チリに有効な現像対向ローラ31の位置調整について説明する。
図18(a)は、第一の実施形態の図11(a)と同じであり、現像ローラ6eと現像対向ローラ6dの中心を結ぶ中心線が水平となっており、感光体ベルト2が現像対向ローラ6dに現像位置を基準に上流側にのみ巻きつき、下流側は巻きついていない状態である。画像形成部の組立て当初の調整、設定前においては、図18(a)のような状態にある。図18(a)では、下流側であって感光体ベルト2が現像対向ローラ6dから離れる位置、つまり感光体ベルト2が巻きつき終わる下流側接点位置(巻きつき角度θの位置)に現像ローラ6eが位置している状態である。このときは上述したように下流側で有効現像領域と現像影響領域の幅が広くなってしまい、このまま画像形成動作を行うと、現像チリが発生する。そこで位置調整手段60を用いて、図18(a)の状態から、現像対向ローラ6dを感光体ベルト表面移動方向に微調整して、現像ローラ6eに対する現像対向ローラ6dの感光体ベルト表面移動方向位置を最適化して問題発生を抑制する。
図18(b)は、図18(a)の状態から偏芯ローラ61を回動させ、レバー62により軸受け6Dを下げて、現像対向ローラ6dの位置を感光体ベルト搬送方向の下方に調整、設定した状態である。この位置調整、設定により、現像ローラ6eの水平対向位置における感光体ベルト2の面形状、つまり巻きつき方が変わる。巻きつき方は、感光体ベルト2と現像対向ローラ6dだけに注目すれば、現像対向ローラ6dの中心水平線を基準に、上流側はほんの僅か巻きつき幅が減り、下流側は巻きつかない状態のままで、図18(a)の巻きつき状態とほぼ変わらないと言ってもいい。しかし現像ローラ6eの水平対向位置における感光体ベルト2の状態は、現像対向ローラ6dの位置が下方に下がった分、現像ローラ6eの中心水平線を基準に見ると、下流側も巻きつき状態となっている。このことにより、下流側の有効現像領域と現像影響領域を図11(a)より狭くすることができるので、狭間現像が可能となり、問題になっていた下流側の浮遊トナーの発生を低減し、現像チリの発生を抑えることができる。また、下流側の感光体ベルト2の振動や撓みによるギャップ変動の問題も小さくすることができる。
なお、図18(b)では現像対向ローラ6dを下げた位置に調整、設定しているが、現像ローラ6eの位置や浮遊トナーの発生状態などにより、臨機応変に感光体ベルト表面移動方向の上下の微調整を行う。また、図18(b)では下流側の浮遊トナーの発生などの対策のために現像ローラ6eを基準に現像対向ローラ6dの位置を調整、設定したが、逆に、現像対向ローラ6dを基準に見れば、現像ローラ6eの位置を感光体ベルト2が巻きついている上流側に移動させたと考えることもできる。
図18(b)の状態でも下流側の浮遊トナーの抑制効果は期待できる。しかし、さらにその効果をさらに上げることのできる状態は、図18(c)のように、上流側の感光体ベルト2が現像対向ローラ6dに巻きつき始める接点位置に現像ローラ6eを位置するものである。そこで、現像対向ローラ6dの位置調整手段60により微調整して現像対向ローラ6dを図18(c)の位置に設定する。これにより、下流側の有効現像領域と現像影響領域の幅を狭くすることができる。しかし、図11(b)と同様、有効現像領域の幅は広いままであり、狭間現像は難しい。
図18(d)は、図18(a)と図18(c)の中間である巻きつき角度θの1/2の中央位置に現像ローラ6eが位置するものである。そこで、現像対向ローラ6dの位置調整手段60により微調整して現像対向ローラ6dを図18(d)の位置に設定する。これにより、巻きつき角度θによる感光体ベルト2の曲率を有効に利用でき、有効現像領域と現像影響領域の幅をほどほど狭く、しかも上流側と下流側で幅を同じにすることができる。これは、下流側現像影響領域の幅も狭くできるので、図18(a)の位置に比べ、現像チリを抑制することができる。しかし、この状態は感光体ドラムの場合と同様な状態であり、上流側に比べ、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域を特に狭くするものではない。
そこで、最も効果が期待できる位置は、図18(e)であり、図18(c)よりも下流側で図18(d)より上流側、すなわち、現像ローラ6eを感光体ベルト2が巻きつき始める上流側接点位置(巻きつき角度0°の位置)からθ/2の中央位置の範囲に配置したものである。そこで、現像対向ローラ6dの位置調整手段60により微調整して現像対向ローラ6dを図18(e)の位置に設定する。これにより、感光体ベルト2の曲率を有効に利用し、下流側の有効現像領域と現像影響領域の幅を、図18(d)よりさらに狭くすることができるので、下流側の現像チリ発生を抑制することができる。また、上流側の有効現像領域と現像影響領域は、図18(d)より多少広くなってしまうが、有効現像領域は図18(d)とほとんど変わらない幅なので狭間現像は十分可能である。また、上流側の浮遊トナーはあまり問題にならないので上流側現像影響領域が多少広くなっても構わない。
以上のことから、位置調整手段60により、現像ローラ6eを接触幅の半分より上流に調整して配置することにより、現像チリと狭間現像との両立が可能となる。なお、上述のように、図18(c)のように上流側接点位置は、狭間現像は難しく、且つ、感光体ベルト2の振動や撓みの影響を受けやすい位置なので、現像画質を問題にするならば上流側接点位置は避けた方が好ましい。また、図18(d)のように、接触幅の半分の位置(θ/2位置)は、上流側に比べ、問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域を特に狭くするものではないので、より効果的に下流側の浮遊トナーの発生領域を狭くするならば接触幅の半分の位置は避けた方が好ましい。
同様に他の現像ローラ(7e、8e、9e)も、位置調整手段60により、接触幅の半分より上流に配置することにより、現像チリと狭間現像との両立が可能となる。
また、浮遊トナーによる現像チリや現像ギャップ変動による現像不良が危惧されると分かっていても、装置の小型化、コスト等を最優先させる装置においては、レイアウト上の制約や部品形状の大きさなどから、本発明の構成を全ての現像装置に採用できない場合がある。さらに、上記クラウド現像方式を採用するものでは、現像ローラに対するトナーの付着力が非常に低いため、現像チリは発生しやすく、画像品質の劣化が目立ってしまう。特に、ブラックでは、微小なトナーの粒や僅かな位置ずれ(色ずれ)であっても容易に認識されてしまうため、現像チリや画像劣化は特に目に付きやすく、カラー画像形成装置として非常に厳しいものとなってしまう。
そこで、ブラックの現像装置については、必ず、上述のように、現像ローラ31を現像対向ローラ32の接触幅の半分より上流に配置するよう調整する。また、上記現像ローラ31を現像対向ローラ32の接触幅の半分より上流に配できない現像装置を、イエローの現像装置とする。これは、イエローのような淡色のトナーは目視で認識され難いため、多少の現像チリや現像不良は気にならなくなり、特にイエローを多く含む画像においては良好な画像形成を行うことができる。また、カラー画像形成装置において一般的に、色の重ね合せ時の画質やモノクロ画像のプリントスピードの観点から、感光体ベルト2の最下流に設置して最後に現像動作を行う現像装置をブラックとしている。しかしその箇所が、現像ローラ31を現像対向ローラ32の接触幅の半分より上流に配置してない構成であっては、現像チリや現像不良による画像劣化が危惧され、特にブラックでは目立ってしまう。従って、感光体ベルト2の最下流に設置する現像装置では、現像ローラ31を現像対向ローラ32の接触幅の半分より上流に配置するようにする。
このように、感光体ベルト2を用いたカラープリンタにおいて、現像対向ローラ9dにより張架される感光体ベルト2に対する現像ローラ9eの配置を規定した位置になるよう、位置調整手段60により現像対向ローラ9dの位置を調整することのみで、レイアウトの自由度が大きく制限されることなく、効果的に現像チリを抑制することができる。
次に、本発明を適用した第三の実施形態の画像形成装置として、モノクロ画像形成装置としてのモノクロプリンタ(以下、単にプリンタ300という)について説明する。
図19は、第三の実施形態のプリンタ300の画像形成部の構成を示す概略断面図である。プリンタ300は、像担持体ベルトとしてのベルト状の感光体(以下、感光体ベルト2という)上にブラック(K)のトナー像を現像して、画像を形成するものである。
感光体ベルト2は、駆動ローラ3、テンションローラ4、転写対向ローラ5、現像対向ローラ9d等によって張架されている。駆動ローラ3と連結された図示しない駆動モータを駆動することによって、駆動ローラ3が図19中反時計回り方向に回転し、感光体ベルト2は反時計周回り方向に無端移動する。感光体ベルト2の図19中の左側の外周面には、ブラック(K)のトナー像を形成する現像手段としての現像装置9aが横置きに配置される。また、感光体ベルト2を挟んで現像装置9aの現像ローラ9eに対向するように現像対向ローラ9dが配置される。このとき、現像装置9aの現像ローラ9eは、後述するように、感光体ベルト2に対して現像ギャップと言われる所定の間隔を維持するよう配置されている。このように現像装置9aの現像ローラ9eが感光体ベルト2と現像ギャップを維持して対向する位置が、有効現像領域である。また、感光体ベルト2の現像装置9eより上方には、帯電手段としての帯電器9bが、感光体ベルト2の反対側である図19中の右側の外周面には、クリーニング手段としてのクリーニング部11、除電手段としての除電ランプ12が配置されている。また、感光体ベルト2の右側外周面の下部側に感光体ベルト2を挟んで転写対向ローラ5と対向し、転写部14を形成する転写ローラ15が配置されている。感光体ベルト2の下方には、転写部14に対して用紙搬送方向が斜めになるよう、搬入側に給紙ローラ19やレジストローラ対18などから成る給紙搬送部17と、搬出側に定着装置20が配置されている。また、現像装置9aの図19左側には、感光体ベルト2上に潜像を形成する書込みユニット21が配置され、帯電器9bと現像装置9aとの間には、書込みユニット21から射出されるレーザ光による露光位置である露光部9cが設けられている。
ここで、現像装置9aは上記第一の実施形態と同様に、クラウド現像方式の現像装置である。このように現像ローラ9eを感光体ベルト2に現像ギャップを維持して対向するよう配置した現像装置では、画質向上のため現像ギャップの高精度な維持管理はもちろんのこと、現像チリの抑制のため、現像ローラを感光体ベルトが現像対向ローラに巻きつく所定の位置に配置し、有効現像領域および現像影響領域を高精度に維持管理することが重要である。そこで、そして、現像対向ローラ9dを感光体ベルト2の表面移動方向に対してそれぞれ移動可能とする現像対向ローラ移動手段としての現像対向ローラ位置調整手段60を設けている。この位置調整手段60により、現像ギャップを維持した状態で現像対向ローラ9dを感光体ベルト表面移動方向に移動させてその位置を調整、設定し、浮遊トナーの発生を抑制するようにした。
位置調整手段60の構成および位置調整の仕方は、第二の実施形態の図18(a)〜(e)と同様である。このように、位置調整手段60により、現像ローラ9eを接触幅の半分より上流に配置することにより、現像チリと狭間現像との両立が可能となる。このように、感光体ベルト2を用いたモノクロプリンタにおいても、現像対向ローラ9dにより張架される感光体ベルト2に対する現像ローラ9eの配置を規定することのみで、余分なスペースを必要とすることなく、設計自由度も大きく制限されることなく、効果的に現像チリを抑制することができる。
なお、上記第一、第二、および第三の実施形態では、現像方式として非接触のクラウド現像方式を用いて説明したが、本発明の構成はそれに限定されることはなく、感光体ベルトと現像ローラが非当接の他の非当接現像方式であっても適用可能である。詳しくは、感光体ベルト2と現像ローラ31とを非当接とし、現像ローラ31上に担持した一成分トナーを感光体ベルト表面に飛翔させて現像する非接触現像装置に適用可能である。また、感光体ベルトと現像ローラ31とを非当接とし、現像ローラ31上に担持する二成分磁気ブラシで感光体ベルト2表面を摺擦して現像する磁気ブラシ現像装置に適用可能である。さらに、磁気ブラシが感光体ベルト2表面と非当接として、二成分非接触現像装置に適用可能である。さらに、感光体ベルト2と現像ローラ31とが当接する当接現像方式であっても、現像ローラ31、現像対向ローラ32それぞれの回転中心を結ぶ位置を最近接位置とすることで、本発明の特徴部を適用可能である。
以上、第一の実施形態のプリンタ100は、静電潜像を担持し、複数の張架ローラによって張架され回転する像担持体ベルトとしての感光体ベルト2を備える。また、表面にトナーを担持して無端移動するトナー担持体である現像ローラ(6e、7e、8e、9e)のトナーを、感光体ベルト2に供給してトナー像化するように感光体ベルト2上の表面に所定の間隔で対向配置され、異なる色のトナーを用いる複数の現像手段としての現像装置(6a、7a、8a、9a)を備える。また、複数の現像装置(6a、7a、8a、9a)の各現像ローラ(6e、7e、8e、9e)に対して感光体ベルト2を挟んで対向し、感光体ベルト2の裏面に接触しながら複数の張架ローラの一部を担う複数の現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)を備える。そして、現像装置(6a、7a、8a、9a)を感光体ベルト2に対向配置する際、感光体ベルト2裏面が現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)に接触する接触幅のうち半分より上流側の位置の感光体ベルト2表面に各現像ローラ(6e、7e、8e、9e)が最近接するように配置することにより、有効現像領域は上流側に移動する。これにより、有効現像領域隣接する下流側では、感光体ベルト2は現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)に接触して、現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)の径に倣った曲率を有する対向面となる。よって、下流側現像影響領域の幅w3は狭くなる。このように、現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)により張架される感光体ベルト2に対する現像装置(6a、7a、8a、9a)の配置を規定することのみで、レイアウトの自由度も大きく制限されることなく、効果的に現像チリを抑制することができる。
また、現像ローラ31を、接触幅の半分の位置、θ/2位置を除いた範囲に位置させることで、より効果的に問題にしていた下流側の浮遊トナーの発生領域を狭くすることができる。
また、現像ローラ31を、感光体ベルト2が現像対向ローラ32に巻きつき始める上流側接点位置(巻きつき角度0°の位置)を除いた範囲に位置させることで、有効現像領域を狭くし、狭間現像を可能とする。
また、上記θ/2位置、および、上記上流側接点位置を除いた範囲に位置させることで、現像チリ抑制と、狭間現像とを両立可能とする。
また、装置の小型化、コスト等を最優先させる装置においては、レイアウト上の制約や部品形状の大きさなどから、本発明の構成を全ての現像装置に採用できない場合ブラック用の現像装置9aを上記範囲に配置する。これにより、特に目立つブラックの現像チリによる現像不良の問題を抑制することができる。よって、テキスト等の黒文字を多く含む画像などで高品質化が可能となる。
また、コスト等を最優先させる装置においては、レイアウト上の制約や部品形状の大きさなどから、本発明の構成を全ての現像装置に採用できない場合、イエローイエロー用の現像装置6aを上記範囲外に配置する。これにより、特に目視で認識し難いイエローを範囲外として、実質的に目視で認識される現像チリを抑制する。
また、感光体ベルト2の最下流に設置する現像装置では、現像ローラ31を現像対向ローラ32の接触幅の半分より上流に配置するようにし、特に目立つ現像チリを抑制する。
また、第二および第三の実施形態のプリンタ200,300では、現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)を感光体ベルト2の表面移動方向に対してそれぞれ移動可能とする現像対向ローラ移動手段としての位置調整手段60を設け、上記範囲になるよう現像対向ローラ(6d、7d、8d、9d)を調整する。これにより、現像チリを抑制する。
また、現像装置(6a、7a、8a、9a)は、現像ローラ(6e、7e、8e、9e)上でトナーが浮遊している状態を形成して現像を行う非接触現像方式であるクラウド現像方式である。そして、プリンタでは、トナーの付着力が非常に低く、浮遊トナーが発生し易いクラウド現像方式にて、現像チリや色ずれ、現像ギャップ変動による現像不良を軽減した高品質の画像を提供することができる。