〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1ないし図7に基づいて説明すると以下の通りである。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
まずは、本実施形態における、電子写真方式の画像形成装置100の全体構成について、図2を用いて説明する。画像形成装置100は、いわゆるタンデム式で、かつ、中間転写方式のプリンタであり、フルカラー画像を形成することができる。
図2に示すように、画像形成装置100は、4色(C・M・Y・K)分の可視像形成ユニット50a〜50d、転写ユニット40、及び定着装置14を備えている。
転写ユニット40は、中間転写ベルト15(像担持体)と、この中間転写ベルト15の周囲に配置された4つの一次転写装置12a〜12d、二次転写前帯電装置3、二次転写装置16、及び転写用クリーニング装置17とを備えている。
中間転写ベルト15は、可視像形成ユニット50a〜50dによって可視化された各色のトナー像が重ね合わせて転写されるとともに、転写されたトナー像を記録紙に再転写するためのものである。具体的には、中間転写ベルト15は無端状のベルトであり、一対の駆動ローラ及びアイドリングローラによって張架されているとともに、画像形成の際には所定の周速度に制御されて搬送駆動される。
一次転写装置12a〜12dは、可視像形成ユニット50a〜50dごとに設けられており、それぞれの一次転写装置12a〜12dは、対応する可視像形成ユニット50a〜50dと中間転写ベルト15を挟んで反対側に配置されている。
二次転写前帯電装置3は、中間転写ベルト15に重ね合わせて転写されたトナー像を再帯電させるためのものである。
二次転写装置16は、中間転写ベルト15上に転写されたトナー像を、記録紙に対して再転写するためのものであり、中間転写ベルト15に接して設けられている。転写用クリーニング装置17は、トナー像の再転写が行われた後の中間転写ベルト15の表面をクリーニングするためのものである。
なお、転写ユニット40の中間転写ベルト15の周囲には、中間転写ベルト15の搬送方向上流から一次転写装置12a〜12d、二次転写前帯電装置3、二次転写装置16、転写用クリーニング装置17の順で各装置が配置されている。
二次転写装置16の記録紙搬送方向下流側には、定着装置14が設けられている。定着装置14は、二次転写装置16によって記録紙上に転写されたトナー像を記録紙に定着させるためのものである。
また、中間転写ベルト15には、4つの可視像形成ユニット50a〜50dがベルトの搬送方向に沿って接して設けられている。4つの可視像形成ユニット50a〜50dは、用いるトナーの色が異なっている点以外は同一であり、それぞれ、イエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)・ブラック(K)のトナーが用いられている。以下では、可視像形成ユニット50aのみについて説明し、その他の可視像形成ユニット50b〜50dについては説明を省略する。
可視像形成ユニット50aは、感光体ドラム(像担持体)7と、この感光体ドラム7の周りに配置された潜像用帯電装置4、レーザ書き込みユニット(図示せず)、現像装置11、一次転写前帯電装置2、クリーニング装置13などを備えている。
潜像用帯電装置4は、感光体ドラム7の表面を所定の電位に帯電させるためのものである。
レーザ書き込みユニットは、外部装置から受信した画像データに基づいて、感光体ドラム7にレーザ光を照射(露光)し、均一に帯電された感光体ドラム7上に光像を走査して静電潜像を書き込むものである。
現像装置11は、感光体ドラム7の表面に形成された静電潜像にトナーを供給し、静電潜像を顕像化してトナー像を形成するものである。
一次転写前帯電装置2は、感光体ドラム7の表面に形成されたトナー像を転写前に再帯電させるためのものである。
クリーニング装置13は、中間転写ベルトにトナー像を転写した後の感光体ドラム7上に残留したトナーを除去・回収して感光体ドラム7上に新たな静電潜像およびトナー像を記録することを可能にするものである。
なお、可視像形成ユニット50aの感光体ドラム7の周囲には、感光体ドラム7の回転方向上流から、潜像用帯電装置4、レーザ書き込みユニット、現像装置11、一次転写前帯電装置2、一次転写装置12a、クリーニング装置13の順で各装置が配置されている。
本実施形態の画像形成装置100では、一次転写前帯電装置2、二次転写前帯電装置3、及び潜像用帯電装置4に、後述するイオン発生装置1を用いている。
次に、画像形成装置100の画像形成動作について説明する。
まず、画像形成装置100は、外部装置から画像データを取得する。また、画像形成装置100の図示しない駆動ユニットが、感光体ドラム7を図2に示した矢印の方向に所定の速度で回転させるとともに、潜像用帯電装置4が感光体ドラム7の表面を所定の電位に帯電させる。
次いで、取得した画像データに応じてレーザ書き込みユニットが感光体ドラム7の表面を露光し、感光体ドラム7の表面に上記画像データに応じた静電潜像の書き込みを行う。続いて、感光体ドラム7の表面に形成された静電潜像に対して、現像装置11がトナーを供給する。これにより、静電潜像にトナーを付着させてトナー像が形成される。
このようにして感光体ドラム7の表面に形成されたトナー像を、一次転写前帯電装置2が再帯電させ、再帯電されたトナー像を、一次転写装置12aが、感光体ドラム7の表面に形成されたトナー像とは逆極性のバイアス電圧を印加して、中間転写ベルト15へ転写する(一次転写)。
可視像形成ユニット50a〜50dがこの動作を順に行うことにより、中間転写ベルト15には、Y,M,C,Kの4色のトナー像が順に重ねあわされていく。
重ねあわされたトナー像は、中間転写ベルト15によって二次転写前帯電装置3まで搬送され、搬送されたトナー像に対して、二次転写前帯電装置3が再帯電を行う。そして、再帯電が行われたトナー像を担持する中間転写ベルト15を、二次転写装置16が図示しない給紙ユニットから給紙された記録紙に対して圧接することにより、記録紙にトナー像が転写される(二次転写)。
その後、定着装置14がトナー像を記録紙に定着させ、画像の記録された記録紙が排紙ユニット(図示せず)に排出される。なお、上記の転写後に感光体ドラム7上の残存したトナーはクリーニング装置13によって、また、中間転写ベルト15上の残存したトナーは転写用クリーニング装置17によって除去・回収される。以上の動作により、記録紙に適切な印刷を行うことができる。
次に、上記3つの帯電装置2,3,4に使用されているイオン発生装置1の構成について詳細に説明する。
図3に、二次転写前帯電装置3として中間転写ベルト15近傍に配置されているイオン発生装置1の構成を示す。
図3に示すように、二次転写前帯電装置3は、沿面放電素子20、交番電圧印加部23、直流バイアス電圧印加部22、及び対向電極24を備えている。
沿面放電素子20は、誘電体26と、誘電体26の一方の面に配された誘導電極25と、誘電体26の他方の面に配された放電電極27とを備えている。
誘導電極25は、誘電体26の一方の面に形成された、例えばストライプ状の電極層よりなる。このような電極層の加工には、フォトリソ技術等が用いられる。そして、誘導電極25は、放電電極27の側でのみ放電が生じるように、誘電体26の外周部を除く全域に形成されている。誘導電極25の材料としては、タングステンワイヤや、モリブデン、ステンレス等を挙げることができる。
放電電極27は、誘電体26の他方の面に接触するように配されたワイヤ状の電極部材よりなる。そして、詳細については後述するが、上記放電電極27は、誘電体26をその長手方向に横切るように、両端部側で固定されているだけであり、誘電体26に対して移動自在に構成されている。このような放電電極27の材料としては、タングステンや、モリブデン、ステンレス等を用いることができる。
また、その径として、Φ20μm〜100μmの範囲が好ましい。20μmより小さいと、放電効率は高くなるものの機械的強度が不足するため、寿命的に短くなる。また100μmを超えると、放電効率が低下するとともにそれ自体を固定させるための部材強度が必要となるため、装置が大掛かりになってしまう。
そして、機械的強度を考慮した下限のより好ましい範囲はΦ30μm以上である。また、放電効率等及び固定させるための部材強度等を考慮した上限のより好ましい範囲は70μm以下である。
これら誘導電極25及び放電電極27は、銅、金、ニッケル等にてメッキされていることが望ましい。メッキすることで、電極としてのライフが延びると共に強度を高めることができる。中でも金メッキが最も好ましい。
これら誘導電極25と放電電極27との間に介在する上記誘電体26は、長尺状の板状の部材であり、マイカ材や、セラミック、樹脂フィルム等を用いることができる。中でも、マイカの鱗片を樹脂で固めて集成した集成マイカは、価格、絶縁性能、及び加工のし易さの点から好適である。
集成マイカとしては、例えば、株式会社岡部マイカ工業所製のミカタイトMCT−BSを用いることができる。ミカタイトMCT−BSにおけるマイカ燐片のサイズは、通常、厚み1〜10μm、平均径100〜200μmである。
集成マイカよりなる誘電体26の厚みは、放電電極27と誘導電極25との間の絶縁破壊電圧を考えると、最低1mmは必要である。
対向電極24は、放電電極27と対向して配され、アース接続されている。このような対向電極24は、放電電極27からの放電を生じ易くするために配されるものでり、必ず必要なものではなく、省略することもできる。
直流バイアス電圧印加部22は、放電電極27に直流バイアス電圧を印加するものである。交番電圧印加部23は、誘導電極25と放電電極27との間に交番電圧(交流電圧)を印加するものである。
このような構成のイオン発生装置1において、放電電極27と誘導電極25との間に周波数が数百Hz〜数百kHz、波高値1k〜5kボルトの交番電圧が印加されると、放電電極27から放電が起こる。
放電電極27から放電が起こると、放電領域において電極間の空気がイオン化されてこの付近に正と負のコロナイオンが発生する。発生したコロナイオンは放電電極27に直流バイアス電圧が印加されることにより取り出される。
ここで、直流バイアス電圧に負の電圧が印加されている場合には、イオン発生装置1からは負イオンのみが取り出される。一方、直流バイアス電圧に正の電圧が印加されている場合は、イオン発生装置1からは正のイオンのみが取り出される。
次いで、誘電体26に対して放電電極27が移動自在に構成されている点について詳細に説明する。
図1に、上記イオン発生装置1における沿面放電素子20を、放電電極27が配されている側より見た平面図を示す。また、図4に、沿面放電素子20における誘電体26の長手方向一端部側の斜視図を示す。
図1に示すように、放電電極27は、一端部は直接、他端部は弾性部材32を介してそれぞれ止め部材(支持部材)33・33にて固定されている。弾性部材32が介されることで、放電電極27は軸方向に伸縮性を有するようになる。
そして、放電電極27の端部は、止め部材33・33にて、誘電体26の接触面よりも低い位置にて固定されている。伸縮性を有する放電電極27は、このように端部が誘電体26の接触面よりも低い位置に固定されることで、誘電体26に当該誘電体26の長手方向全域において密接する。
ところで、上述したように、誘電体26は非常に薄い板状部材であるため、変形を生じる虞がある。誘電体26に、放電電極27との接触面が長手方向中央部にかけて凹をなすような反りを生じると、誘電体26の長手方向全域にて、誘電体26と放電電極27とを接触することができなくなる。
そこで、誘電体26の形状としては、平板状に形成するよりも、放電電極27との接触面が、長手方向中央部にかけて凸をなすような反り(弓反り)を最初から持たせておくことが好ましい。このような反りを予め与えておくことで、放電電極27を誘電体26に確実に密接させることができる。
誘電体26における長手方向端部と、止め部材33・33との間には、位置決め部材30・30が配置されている。位置決め部材30は、放電電極27の誘電体26に対する位置を決定するためのものである。置決め部材30には、放電電極27を引っ掛けて保持する溝状のフック部(保持部)31が複数個(図では4個)併設されている。複数のフック部31…は、誘電体26における放電電極27との接触面において、その長手方向が直交する方向である矢印Xにて示す方向に沿って併設されている。
このような構成では、放電電極27を引っ掛けるフック部31を切り換えることで、誘電体26に対する放電電極27の位置を矢印Xにて示す方向に変化させて、放電電極27が接触する誘電体26の部位を切り換えることができる。係合させるフック部31の切り換えは、弾性部材32による伸縮性を利用して、容易に行うことができる。
図4においては、誘電体26における、放電電極27がフック部31a・31aに保持されている状態で接触する部位と、フック部31b・31bに保持されている状態で接触する部位とが、既に劣化している状態にある。このような状態となると、放電電極27が、誘電体26の非劣化部と接触するように、放電電極27を、隣のフック部31c・31cに掛け変えればよい。
図5に、放電電極27を保持させるフック部31を、フック部31b・31bから隣のフック部31c・31cへと切り換える状態を示す。なお、図5は、図4におけるA−A線断面図である。
単純計算ではあるが、図4の構成では4個のフック部31が設けられているので、従来構成のイオン発生装置に比して、寿命が4倍長い構成となっている。
次に、放電電極27の位置を切り換えるタイミングを決定するために、誘電体26の劣化特性、及び劣化と画像品質との関係を調べた結果について説明する。
誘電体26には、株式会社岡部マイカ工業所製のミカタイトMCT−BSを使用し、放電電極27には、Φ60μmのタングステンワイヤを使用した。放電電極27に印加する直流バイアス電圧は、−1.5kボルトとし、誘導電極25と放電電極27との間に印加する交番電圧は、波高値3.0kボルト、周波数500Hzとした。
そして、放電電極27と対向電極24との間に配した中間転写ベルト15に流れる電流量を、対向電極24とアースとの間に直流電圧計を挿入して放電を開始してから5時間経過するごとに測定した。同様に、5時間経過するごとに、中間転写ベルト15上のトナーを転写前帯電して画像を形成し、画質を目視にて検査した。
図6に、放電時間と放電電流及び画像品質との関係を調べた結果を示す。図6に示すように、放電電流は放電時間が長くなるほど放物線を描いて徐々に低下していく。これより、放電時間がながくなるにつれて、誘電体26が劣化していくことがわかる。
放電電流(μA)が低下しても、−5μAを超えている場合は、画質には問題がなかったが、放電時間が45時間となり、−5μA以下となると、画質に影響が出た(画像影響領域)。具体的には、ベタ画像濃度が薄く、ガサツクようになった。これは、放電電極27からの放電量の低下により、中間転写ベルト15上のトナーが十分に帯電されず、転写効率が低下したためである。
中間転写ベルト15上にあるトナーを高い転写効率にて用紙等に転写するには、トナーを必要な電荷量に帯電させておく必要がある。転写前帯電は、この帯電量を補うためのものである。中間転写ベルト15上にあるトナーを高い転写効率にて用紙等に転写するには−20μq以上のトナー帯電量が必要である。
したがって、二次転写前帯電装置3として配されるイオン発生装置1においては、−5μAを超える放電電流が必要であり、−5μA以下となった時点で、誘電体26における放電電極27の接触部位は、劣化したと判断することができる。但し、実際には、マージンをみて、放電時間40H程度で、放電電極27を移動させるようにすればよい。
そして、これからわかるように、誘電体26における接触部位の劣化の判断は、イオン発生装置1に求められる放電量によって変化するものである。また、イオン発生装置1に求められる放電量は、イオン発生装置1の使われ方によって決まるものである。したがって、イオン発生装置1の使われ方に応じて、接触部位の劣化の判断基準を変えることで、誘電体26をより一層長く使用することができる。
次に、放電電極27の移動量を決定するために、誘電体26における放電電極27と接触する周囲どの程度の部分が劣化するかを調べた結果について説明する。
ここでも、誘電体26には、株式会社岡部マイカ工業所製のミカタイトMCT−BSを使用し、放電電極27には、Φ60μmのタングステンワイヤを使用した。また、放電電極27に印加する直流バイアス電圧は、−1.5kボルトとし、誘導電極25と放電電極27との間に印加する交番電圧は、波高値3.0kボルトとした。
そして、目視にて誘電体の色が変色した領域を、劣化領域と判断した。
図7に、誘電体26に放電電極27を密接させ、放電電極27と接触する周囲どの程度の部分が劣化するかを調べた結果を示す。図7に示すように、放電電極27の軸方向両側の約300μmに及ぶ領域が劣化していた。Φ30μmのタングステンワイヤよりなる放電電極27についても、同様の結果を得た。
また、直流バイアス電圧値及び交番電圧を変化させて、劣化具合をみたところ、劣化領域となるまでの時間に違いはあるものの、放電電極27の軸方向両側に生じる劣化領域の大きさ自体は変化ないことも確認した。
さらに、ワイヤ状の放電電極27に限らず、ミカタイトMCT−BSよりなる誘電体の一方の面に、ストライプ状の放電電極が形成されている従来の沿面放電素子についても、劣化領域の発生具合を調べたところ、これにおいてもほぼ同様の結果であることを確認した。
そこで、本実施の形態では、放電電極27の太さも考慮したマージン300μmをとり、1mm移動させ得るように、フック部31を形成している。
次に、ワイヤ状の放電電極27を使用した沿面放電素子20を搭載したイオン発生装置1における放電特性を調べた結果について説明する。
先の試験と同様に、ここでも、誘電体26には、株式会社岡部マイカ工業所製のミカタイトMCT−BSを使用した。また、放電電極27には、Φ60μmのタングステンワイヤ(実施例1)と、Φ30μmのタングステンワイヤ(実施例2)とを使用した。放電電極27に印加する直流バイアス電圧は、−1.5kボルトとし、誘導電極25と放電電極27との間に印加する交番電圧は、波高値3.0kボルトとした。
そして、誘導電極25と放電電極27との間に印加する交番電圧の周波数を変化させ、放電電極27と対向電極24との間に配された被帯電物に流れる電流量を、対向電極24とアースとの間に直流電圧計を挿入して測定した。
また、比較として、同じミカタイトMCT−BSよりなる誘電体26の面に、放電電極として、タングステンよりなる幅0.3mmのストライプ状の電極を形成して、同じ条件で放電性能を調べた。
図8に、放電特性を調べた結果を示す。図8に示すように、放電電極27がΦ60μmのタングステンワイヤよりなる実施例1の沿面放電素子20においても、放電電極27がΦ30μmのタングステンワイヤよりなる実施例2の沿面放電素子20においても、さらには、放電電極が幅0.3mmのストライプ状のタングステンよりなる比較例の沿面放電素子においても、誘導電極25と放電電極27(比較例の場合はストライプ状の放電電極)との間に印加する交番電圧の周波数が高くなるほど、電流量が高くなる。
そして、実施例1、実施例2、比較例より、放電電極の形状を、ストライプ状とするよりもワイヤ状としたほうが、交番電圧の周波数が同じ場合における被帯電物に流れる電流量を高くできることがわかる。
これは、ストライプ状の放電電極の場合、沿面放電は主にエッジ部分にて行われるのに対し、Φ60μm、Φ30μmといった極細のワイヤ状の放電電極27の場合は、外周面全体に沿面放電が生じているためである。
このことより、ワイヤ状の放電電極とすることで、ストライプ状の放電電極よりも、放電量を大きくして、放電電極27と誘導電極25との間に印加する交番電圧値を下げることができることがわかる。
さらに、実施例1、実施例2より、放電電極をワイヤ状とした場合にも、その径が小さいほど、交番電圧の周波数が同じ場合における被帯電物に流れる電流量を高くできることがわかる。
これより、ワイヤの径を小さくするほど、つまり、曲率を小さくするほど、放電量を大きくでき、放電電極27と誘導電極25との間に印加する交番電圧値を下げることができることがわかる。
以上のように、本実施形態の画像形成装置100においては、一次転写前帯電装置2、二次転写前帯電装置3、潜像用帯電装置4として搭載されているイオン発生装置1は、放電電極27がワイヤ状の電極部材であり、誘電体26表面に直接形成されているのではなく、誘電体26に圧接するように取り付けられている構成である。
したがって、フォトリソ技術を用いて誘電体26の面に放電電極を直接形成していた従来の沿面放電素子及びイオン発生装置よりも、構成が容易になる。
さらに、ワイヤ状の放電電極とすることで、ストライプ状の放電電極よりも、放電量を大きくして、放電電極27と誘導電極25との間に印加する交番電圧を下げることができ、省電力化が図れ、誘電体26の劣化を抑制することができる。
また、誘電体26に放電電極27を直接形成していないので、上述したように、誘電体26との位置関係を相対的に変化させることが可能となり、誘電体26における接触部位を順次切り換えるなどして、誘電体26を有効利用して、イオン発生装置1或いは沿面放電素子20における寿命を延ばすことができる。
また、本実施形態の画像形成装置100においては、一次転写前帯電装置2、二次転写前帯電装置3、潜像用帯電装置4として搭載されているイオン発生装置1は、放電電極27が誘電体26に対して可動であり、放電電極27と誘電体26との相対位置を変化できる構成である。
これにより、たとえ、放電時間の累積時間が長くなり、放電電極27と接触する誘電体26の部位に、劣化が生じて放電不良が発生しても、放電電極27の誘電体26に対する位置を変化させて、放電電極27が接触する誘電体の部位を、劣化の生じていない新しい領域へと切り換えることで、沿面放電素子20やイオン発生装置1を交換することなく、継続して使うことができる。
したがって、従来、未劣化領域が残っている状態で無駄に廃棄されていた誘電体を有効に利用することが可能となり、同じ大きさの誘電体を使用しながら、沿面放電素子或いはイオン発生装置の寿命を延ばすことができ、ひいては、沿面放電素子20やイオン発生装置1の交換等に伴うメンテナンス費用を含め、トータルコストを下げることができる。
なお、上記実施の形態においては、誘電体26との間に相対移動可能に設けられた放電電極27として、ワイヤ状の電極部材よりなる構成を例示した。しかしながら、放電電極27を誘電体26に固定することなく、誘電体26と放電電極27とが相対的に移動可能であればよく、放電電極の形状としては、従来あるようなストライプ状等にパターニングされた幅のある放電電極であってもよい。
但し、誘電体26に対して相対的に移動する放電電極を、このようなワイヤ状とした場合、放電電極27の下方から両側に及ぶ誘電体26の劣化領域を、従来あるような放電電極自体が幅広のものに比べて小さくできる。したがって、同じ面積の誘電体を使用した場合、放電電極の位置の切換回数を多くすることができ、沿面放電素子或いはイオン発生装置の寿命をより長くできるといった効果がある。
また、ここでは、誘電体26を固定しておき、誘電体26に対して放電電極27を移動させる構成としたが、放電電極27を固定し、誘電体26を放電電極27に対して移動させる構成としてもよい。
さらに、上記イオン発生装置1においては、誘電体26の長手方向両側に位置決め部材30をそれぞれ配置したが、少なくとも一方側に配置することで、誘電体26に対する放電電極27の位置を換えることができる。
但し、位置決め部材30が一方側にのみ配置されている構成では、放電電極27は平行移動ではなく、位置決め部材30が設けられていない側の止め部材33を中心に回転するように移動する。そのため、位置決め部材30を何れか一方に配置する構成においては、弾性部材32が設けられた分、誘電体26から止め部材33までの距離が長くなっている側とは逆側に、位置決め部材30を配置することが好ましい。
また、本実施形態の画像形成装置100においては、一次転写前帯電装置2、二次転写前帯電装置3、潜像用帯電装置4として、本発明のイオン発生装置1を搭載した構成としたが、例えば、潜像用帯電装置4をスコロトロン型のコロナ帯電装置としたり、ローラ型接触帯電装置としたりすることももちろん可能である。帯電装置2〜4のうちの少なくとも1つに、イオン発生装置1が搭載されていればよい。
さらには、上記したイオン発生装置1を、画像形成装置の除電装置や転写装置に用いることも可能である。
また、イオン発生装置1の配置であるが、誘電体26に対して放電電極27は、鉛直方向下向きになっていることが好ましい。これにより、誘電体26における放電電極27との接触面の、トナーやダストによる汚染を少なくすることができる。
上述したように、イオン発生装置1では、放電電極27と誘電体26との相対位置を切り換えて、誘電体26の全領域を有効に利用するものである。このような構成において、誘電体26の表面がトナーやダストで汚染されることは好ましくなく、このような配置とすることで、誘電体26の面をクリンに保つことができる。
特に、イオンやオゾンは空気よりも重いため、下向きに流れやすい。そのため、このような構成とすることで、発生したイオンを効率よく、被帯電物などに到達させることができる。
〔実施の形態2〕
本発明のその他の実施の形態について、図9、図10に基づいて説明すると以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1で用いた部材と同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態における画像形成装置と実施の形態1の画像形成装置100との違いは、一次転写前帯電装置2、二次転写前帯電装置3、潜像用帯電装置4として使用されるイオン発生装置の違いにある。本実施形態の画像形成装置に搭載されるイオン発生装置28は、放電電極27の誘電体26に対する位置を、自動的に切り換えることが可能である。
以下、イオン発生装置1と異なる部分についてのみ説明する。図9に示すように、イオン発生装置28では、位置決め部材35に、1つのフック部31を有する。そして、位置決め部材35の下面には、ラックギア39が形成され、位置決め部材35の下方には、このラックギア39と噛合するピニオンギア36が配されている。
このような構成では、ピニオンギア36の回転にて、位置決め部材35が矢印Xにて示す方向にスライド移動し、フック部31に保持された放電電極27の誘電体26に対する位置が同方向に変化する。この矢印Xにて示す移動方向が、誘電体26における放電電極27との接触面においてその長手方向が直交する方向である。
さらに、本実施形態では、ピニオンギア36には、制御部38にてその駆動が制御されるモータ37の駆動力が伝達されるようになっており、誘電体26の劣化を考慮して適切なタイミングで、放電電極27の位置が切り換えられるようになっている。
図10に、制御部38による放電電極27の位置を自動に切り換える位置切り換え処理の手順を示す。
制御部38は、イオン発生装置28における放電時間を累積していく(S1)。次に、累積時間が限界時間に到達したかどうかを判断する(S2)。この限界時間とは、図6で示した、画像影響領域を考慮して設定された、誘電体26の使用限界を示す時間である。S2において、累積時間が限界時間に到達していない場合は、S1にもどり、放電時間の累積処理を繰り返す。
一方、S2において、累積時間が限界時間に到達していた場合は、続いて、位置の切り換え回数が限界回数に到達したかどうかを判断する(S3)。この限界回数は、誘電体26の大きさに応じて決まり、放電電極27が誘電体26に対して取り得る位置の数に相当する。誘電体26の大きさが、フック部31が4つ設けられていたイオン発生装置1と同じであれば、切り換え回数は4となる。
S3において、切り換え回数が限界回数に到達していない場合は、モータ37を所定時間駆動する(S4)。これにより、所定距離、位置決め部材35が移動して、放電電極27の位置が切り換わる(S4)。その後、切り換え回数をカウントしているカウンタを1UPすると共に(S5)、累積時間をカウントしているカウンタをクリアした後(S6)、S1に戻る。
一方、S3において、切り換え回数が既に限界回数に到達している場合は、処理を終了する。このとき、イオン発生装置28の交換、或いはその沿面放電素子の交換を促すようなメッセージ等を、画像形成装置の図示しない表示部に表示させるようにしてもよい。
以上のように、本実施形態の画像形成装置に搭載されたイオン発生装置28では、誘電体26に対する放電電極27の位置を自動的に切り換えることができる。これにより、誘電体26に対する放電電極27の位置の切り換えを、人の手によらず自動化することが可能となるので、メンテナンス性の優れた装置とできる。
〔実施の形態3〕
本発明のその他の実施の形態について、図11〜図13に基づいて説明すると以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1、2で用いた部材と同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態における画像形成装置と実施の形態1の画像形成装置100との違いは、一次転写前帯電装置2、二次転写前帯電装置3、潜像用帯電装置4として使用されるイオン発生装置の違いにある。本実施形態の画像形成装置に搭載されるイオン発生装置42は、実施の形態2で説明したイオン発生装置28と同様に、放電電極27の誘電体26に対する位置を、自動的に切り換えることが可能である。
以下、イオン発生装置28と異なる部分についてのみ説明する。図11に示すように、イオン発生装置42では、誘電体41は円筒形状をなし、その外周面に密接するように放電電極27が配設されている。円筒形状をなす誘電体41の内周面には、誘導電極43が備えられており、これら誘電体41及び誘導電極43は、回転軸44にて回転自在に構成されている。
このような構成では、回転軸44の回転にて、誘電体41が回転し、放電電極27に対する誘電体41の位置が切り換わる。本実施形態でも、回転軸44には、制御部38にてその駆動が制御されるモータ37の駆動力が伝達されるようになっており、誘電体41の劣化を考慮して適切なタイミングで、放電電極27に対する位置が切り換えられるようになっている。
このような構成では、誘電体41を少し回転させるだけで、放電電極27に対し、劣化のない新しい領域を対面させることができ、切換回数を多く確保できる。したがって、安価ではあるもののマイカ材やセラミックに比べて絶縁破壊が起こり易かった樹脂フィルムを誘電体41に利用しても、イオン発生装置42或いは面放電素子の寿命を長くすることができる。
また、このように、円筒形状をなす誘電体41の外周面に放電電極27を配する構成では、図12に示すように、放電電極27を誘電体41の中心線に対して少し斜めになるように、スキューさせて配することが好ましい。このように、スキューさせて配することで、放電電極27を円筒形状をなす誘電体41の外周面に、軸方向全域にて密接させることができる。
このような円筒形状をなす誘電体41とその内周面に形成された誘導電極43とは、例えば、図13(a)に示すように、アルミニュウム、ステンレス等からなる金属製の円筒45に絶縁性の樹脂チューブ46を被せることで構成することができる。
また、図13(b)に示すように、アルミニュウム、ステンレス等からなる金属製の円筒45にセラミック47によるコーティングを施して構成したり、図13(c)に示すように、ガラス管48の内周面に銀、金等の金属49を用いてコーティングを施して構成したりすることができる。
〔実施の形態4〕
本発明のその他の実施の形態について、図14、図15に基づいて説明すると以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1〜3で用いた部材と同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態における画像形成装置101は、図14に示すように、可視像形成ユニット50を1つ備えた、モノクロの画像形成装置である。そして、中間転写ベルト15を備えず、感光体ドラム7上に形成されたトナー像を、給紙カセット装置53より搬送される用紙に対して直接転写する構成である。なお、図中、参照符号51は、自動原稿搬送装置である。
画像形成装置101における現像装置56の内部には、トナー予備帯電用帯電装置が備えられており、このトナー予備帯電用帯電装置として、前述したイオン発生装置1、28、40が用いられている。
図15に、現像装置56の詳細構成を示す。なお、図15では、トナー予備帯電用帯電装置として、イオン発生装置1を用いた構成を例示している。現像装置56は、トナーとキャリアからなる2成分現像剤に対応したもので、現像剤を収容する現像槽57を有している。現像槽57内部には、現像剤を担持して感光体ドラム7へと供給する、現像ローラ58を初めとして、搬送ローラ59、ミキシングローラ60、汲み上げローラ61が配設されている。
また、現像槽57内部は、流し板62にて上下に仕切られており、現像ローラ表面に担持され、層厚規制部材64にて規制された現像剤は、流し板62を伝って、再び、搬送ローラ59とミキシングローラ60との間に戻されるようになっている。
このような構成の現像装置56において、トナー予備帯電用帯電装置5は、層厚規制部材64の近傍に配設されている。トナー予備帯電用帯電装置5は、層厚規制部材64にて規制され、流し板62を伝って、搬送ローラ59とミキシングローラ60との間に戻される現像剤を帯電させる。これにより、搬送ローラ59、ミキシングローラ60、汲み上げローラ61等の搬送・攪拌作用に伴う摩擦帯電に不足があっても、その不足を補って、トナーの帯電量を上げることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書で示した数値範囲以外であっても、本発明の趣旨に反しない合理的な範囲であれば、本発明に含まれることはいうまでもない。