JP5261302B2 - 高架橋用角折れ防止装置 - Google Patents

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本発明は、主として鉄道用高架橋に用いる高架橋用角折れ防止装置に関する。
高架橋においては、道路用か鉄道用かにかかわらず、地震時における安全性の確保が重要となるが、鉄道用の高架橋においては、橋軸方向に沿って敷設された軌道上を走行する列車の走行安全性についての十分な検討が不可欠である。
一方、鉄道用の高架橋は、支持地盤の違いや地上の交通状況等に応じて、ラーメン高架橋、調整桁、架道橋といったさまざまな種類の高架橋構造物から適宜選択使用されており、全体としては、相異なる複数の高架橋構造物が橋軸方向に沿って配列されたものとなる。
そのため、鉄道用高架橋は、場所によって異なる地震時挙動を呈することになり、例えば橋軸方向に沿って隣接する2つのラーメン高架橋が互いに異なる固有周期で橋軸直交方向に振動し、これら2つのラーメン高架橋がそれらの端部において相対的な変位を生じる場合がある。
特開昭55−148805号公報 特開平9−13319号公報
かかる相対的な変位のうち、鉛直軸線廻りの角度ずれである角折れは、大規模地震動による構造物の塑性化が進むにつれて、列車走行性に及ぼす影響が大きくなることがわかってきた。
しかしながら、角折れについての調査やその防止策については必ずしも十分ではなく、地震時の列車走行性を改善する余地が残されていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、高架橋構造物の対向端部における角折れを防止することによって地震時における列車走行性を向上させることが可能な高架橋用角折れ防止装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は請求項1に記載したように、橋軸方向に沿って隣接配置された高架橋構造物の対向端部を跨ぐように該対向端部に配置される高架橋用角折れ防止装置において、
前記対向端部のそれぞれの床版コンクリートに載置される鋼製ボックス体と、該各鋼製ボックス体を相互に連結する速度比例型ダンパーと、前記各鋼製ボックス体の底部に形成されたボルト孔にそれぞれ挿通されるアンカーボルトとからなり、前記各鋼製ボックス体は、それらの内側に固化材を充填することにより該固化材に前記アンカーボルトの基端側を定着できるようになっているものである。
また、本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は、前記アンカーボルトの基端近傍に定着板を設けたものである。
本発明に係る高架橋用角折れ防止装置においては、高架橋構造物の対向端部が鉛直軸線廻りに相対回転したとき、橋軸方向に沿った相対変位が該対向端部に生じ、それに伴って対向端部の床版コンクリートに取り付けられた鋼製ボックス体同士が互いに離間しようとするが、該鋼製ボックス体の間には速度比例型ダンパーを介在させてあり、かかる速度比例型ダンパーが速度に比例した抵抗力を発揮して鋼製ボックス体同士の離間を抑制する。
そのため、地震時において各高架橋構造物がそれぞれ異なる固有周期で橋軸直交方向に振動したとしても、高架橋構造物の対向端部に生じる角折れが未然に防止されることとなり、かくして地震時における列車の走行安全性が格段に向上する。
また、本発明においては、対向端部のそれぞれの床版コンクリートにアンカーボルトの先端側を定着するとともに、これらのアンカーボルトが鋼製ボックス体の底部に形成されたボルト孔に挿通されるように、鋼製ボックス体を各床版コンクリートにそれぞれ載置し、次いで、各鋼製ボックス体の内側に固化材を充填することで、該固化材にアンカーボルトの基端側を定着するようにしたので、全体を鋼材で形成する場合に比べ、装置全体の軽量化や製造コストの低減を図ることが可能となる。
本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は、速度比例型ダンパーの抵抗力で対向端部に生じる相対変位を抑制するものであって、速度が小さな相対変位、例えば季節変動等に起因した桁の伸縮については抑制の対象とはならないため、可動支承を介して連結された高架橋構造物の対向端部への採用に適しているが、固定支承についても採用は可能である。
高架橋構造物としては、少なくともラーメン高架橋、調整桁又は架道橋(桁橋)に本発明を適用することができるとともに、それらから橋軸方向に沿った隣接配置の組み合わせを任意に選択することが可能であり、例えばラーメン高架橋と調整桁との組み合わせをはじめ、ラーメン高架橋同士の組み合わせが可能である。
本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は、床版コンクリートの上面であって軌道スラブとダクト部の間に設置される場合をはじめ、水平設置面を有する任意の部位に設置することができる。
アンカーボルトは、建築土木用に広く使用されているものから適宜選択使用することが可能であって、鋼製ボックス体のボルト孔に挿通した後、ナットで締め付けるようにすれば、固化材の定着作用と相俟って、鋼製ボックス体を床版コンクリートに強固に固定することができる。
ここで、アンカーボルトの基端近傍に定着板を設けるようにしたならば、アンカーボルトに引抜き方向の力が作用した場合、定着板と鋼製ボックス体の底部との間に拡がる固化材に円錐台状の圧縮ストラットが形成され、かかる圧縮ストラットが引抜き方向の力に抵抗するため、ナットを用いることなく、ナットと同等かそれ以上の力で鋼製ボックス体を床版コンクリートに固定することができる。加えて、上述した圧縮ストラットは、定着板の下面から斜め下方に向けて形成されるため、鋼製ボックス体の底部に作用する圧縮応力の面積が拡がり、かくして、ボルト孔の径を大きくしてアンカーボルトの挿通可能範囲を拡げることが可能となり、床版コンクリートに埋設された鉄筋とアンカーボルトとの干渉を未然に回避することができる。
速度比例型ダンパーは、鋼製ボックス体を介して入力する対向端部の相対変位に対して十分な抵抗力を持つよう、その仕様を適宜決定すればよい。かかる速度比例型ダンパーとしては、例えばオイルダンパーを採用することができる。
本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置の設置状況を示した側面図。 図1のA−A線に沿う断面図。 本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置の設置状況を示した平面図。 本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置を示した全体斜視図。 同じく高架橋用角折れ防止装置の図であり、(a)は平面図、(b)はB−B線方向から見た矢視図、(c)はC−C線に沿う断面図。 本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置の設置状況を示した図であり、(a)は平面図、(b)はE−E線に沿う断面図。 高架橋用角折れ防止装置4の作用を説明した平面図。 変形例に係る高架橋用角折れ防止装置を示した全体斜視図。 変形例に係る高架橋用角折れ防止装置の作用を説明した断面図。
以下、本発明に係る高架橋用角折れ防止装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図1乃至図3は、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置の設置状況を示した図であり、図1は橋軸直交方向から見た側面図、図2は図1のA−A線方向に沿った断面図、図3は平面図である。
これらの図でわかるように、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置4は、橋軸方向に沿って順次配置されたラーメン高架橋2a、調整桁3及びラーメン高架橋2bのうち、可動支承(図示せず)を介して連結された調整桁3とラーメン高架橋2bとの連結箇所に適用されたものであり、ラーメン高架橋2bと対向する調整桁3の端部を対向端部5、調整桁3と対向するラーメン高架橋2bの端部を対向端部6とし、これらの対向端部5,6を跨ぐように該対向端部に配置してある。
高架橋用角折れ防止装置4は、床版コンクリート9の上面であって軌道スラブ7とダクト8の間に2ヶ所設けてあり、図4及び図5でわかるように、装置本体41、該装置本体に付属するアンカーボルト42及び該アンカーボルトに螺合されるナット47で構成してある。
装置本体41は、対向端部5,6の床版コンクリート9,9に載置される鋼製ボックス体44,44と、該鋼製ボックス体に各端がそれぞれヒンジ接合された速度比例型ダンパーであるオイルダンパー43とを備えるとともに、鋼製ボックス体44の底部に形成されたボルト孔45にアンカーボルト42を挿通できるようになっている。
オイルダンパー43は、鋼製ボックス体44,44から対向端部5,6の相対変位が入力したとき、該相対変位に対して十分に抵抗できるよう、その仕様を適宜設定する。
各鋼製ボックス体44は、その内部を2枚の仕切壁で3等分してあるとともに、該3等分された区画ごとに3ヶ所、計9ヶ所のボルト孔45を底部に形成してあり、該ボルト孔にアンカーボルト42を1本ずつ、計9本のアンカーボルト42を挿通することができるようになっている。
また、鋼製ボックス体44は、上述した各区画に固化材としての無収縮モルタルを充填できるようになっているとともに、該無収縮モルタルにアンカーボルト42の基端側を定着できるようになっている。
図6は、高架橋用角折れ防止装置4を対向端部5,6の床版コンクリート9,9に設置した様子を示した図である。
同図に示すように、高架橋用角折れ防止装置4を対向端部5,6に跨設するには、まず、対向端部5,6のそれぞれの床版コンクリート9,9にアンカーボルト42の先端側を定着する。
ここで、床版コンクリート9,9には、対向端部5,6の隙間δから雨水が滴り落ちるのを防止するため、構造物境界に向けて上向き勾配となる水止めコンクリート62,62を形成してある。そのため、オイルダンパー43を鋼製ボックス体44,44の間に連結するにあたっては、該オイルダンパーが水止めコンクリート62,62と干渉することがないよう、その取付け高さを適宜定める。
アンカーボルト42は、いわゆる、あと施工アンカー工事で床版コンクリート9に固定することが可能であり、例えば床版コンクリート9,9に挿入穴を9本ずつ計18本を穿孔形成し、挿入穴の内部をブロアやブラシで清掃した後、接着系アンカー工法で用いるカプセルを挿入し、次いで、先端を斜めにカットした状態でアンカーボルト42を挿入して硬化させればよい。
次に、鋼製ボックス体44,44の底部に形成されたボルト孔45にアンカーボルト42を挿通させながら、鋼製ボックス体44,44を床版コンクリート9,9にそれぞれ載置する。
次に、ナット47をアンカーボルト42に螺合して締め付けることで、装置本体41を床版コンクリート9,9に固定し、かかる状態で鋼製ボックス体44,44の内側に無収縮モルタル61を充填することで、該無収縮モルタルにアンカーボルト42の基端側を定着する。
高架橋用角折れ防止装置4が設置された高架橋構造物に地震動が作用したとき、高架橋構造物である調整桁3とラーメン高架橋3bは、図7(a)に示すように鉛直軸線廻りに相対回転し、それらの対向端部5,6には橋軸方向に沿った相対変位が生じる。なお、同図では、反時計廻りの相対回転を想定したため、橋軸方向に沿った相対変位は、同図右側が支配的となる。
かかる橋軸方向に沿った相対変位に伴い、対向端部5,6の床版コンクリート9,9に取り付けられた鋼製ボックス体44,44同士は同図(b)に示すように、互いに離間しようとするが、鋼製ボックス体44,44の間にはオイルダンパー43を介在させてあり、かかるオイルダンパー43がその減衰力を発揮して鋼製ボックス体44,44同士の離間を抑制する。
以上説明したように、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置4によれば、オイルダンパー43が速度に比例した抵抗力を発揮して鋼製ボックス体44,44同士の離間を抑制するので、地震時において各高架橋構造物がそれぞれ異なる固有周期で橋軸直交方向に振動したとしても、高架橋構造物の対向端部5,6に生じる角折れが未然に防止されることとなり、かくして地震時における列車の走行安全性が格段に向上する。
また、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置4によれば、対向端部5,6のそれぞれの床版コンクリート9,9にアンカーボルト42の先端側を定着するとともに、これらのアンカーボルト42が鋼製ボックス体44の底部に形成されたボルト孔45に挿通されるように、鋼製ボックス体44,44を各床版コンクリート9,9にそれぞれ載置し、次いで、各鋼製ボックス体44の内側に無収縮モルタル61を充填することで該無収縮モルタルにアンカーボルト42の基端側を定着するようにしたので、全体を鋼材で形成する場合に比べ、装置全体の軽量化や製造コストの低減を図ることが可能となる。
図8は、変形例に係る高架橋用角折れ防止装置94を示したものであり、装置本体41及び該装置本体に付属するアンカーボルト92からなる。
ここで、アンカーボルト92は、通常のアンカーボルトとは異なり、その基端に円形の定着板93を設けてあり、該定着板は、鋼製ボックス体44の底部との間に拡がる無収縮モルタルに圧縮ストラットを形成することで、ナットに代わって引抜き力に抵抗するようになっている。
高架橋用角折れ防止装置94を対向端部5,6に跨設するには、鋼製ボックス体44,44の底部に形成されたボルト孔45にアンカーボルト92を先行して挿通し、次いで、上述の実施形態と同様の手順に従い、その先端側を対向端部5,6のそれぞれの床版コンクリート9,9に定着する。
次に、鋼製ボックス体44,44の内側に無収縮モルタル61を充填することで、該無収縮モルタルにアンカーボルト92の基端側を定着する。
本変形例においては、アンカーボルト92に引抜き方向の力が作用した場合、図9に示すように、定着板93と鋼製ボックス体44の底部との間の無収縮モルタル61に円錐台状の圧縮ストラットが形成され、かかる圧縮ストラットが引抜き方向の力に抵抗する。
そのため、ナットを用いることなく、ナットと同等かそれ以上の力で鋼製ボックス体44を床版コンクリート9に固定することができる。加えて、上述した圧縮ストラットは、定着板93の下面から斜め下方に向けて形成されるため、鋼製ボックス体44の底部に作用する圧縮応力の面積が拡がる。
したがって、ボルト孔45の径を大きくしてアンカーボルト92の挿通可能範囲を拡げることが可能となり、床版コンクリート9に埋設された鉄筋とアンカーボルト92との干渉を未然に回避することができる。
2b ラーメン高架橋(高架橋構造物)
3 調整桁(高架橋構造物)
4,64 高架橋用角折れ防止装置
5,6 対向端部
9 床版コンクリート
42,92 アンカーボルト
43 オイルダンパー(速度比例型ダンパー)
44 鋼製ボックス体
45 ボルト孔
61 無収縮モルタル(固化材)
93 定着板

Claims (2)

  1. 橋軸方向に沿って隣接配置された高架橋構造物の対向端部を跨ぐように該対向端部に配置される高架橋用角折れ防止装置において、
    前記対向端部のそれぞれの床版コンクリートに載置される鋼製ボックス体と、該各鋼製ボックス体を相互に連結する速度比例型ダンパーと、前記各鋼製ボックス体の底部に形成されたボルト孔にそれぞれ挿通されるアンカーボルトとからなり、前記各鋼製ボックス体は、それらの内側に固化材を充填することにより該固化材に前記アンカーボルトの基端側を定着できるようになっていることを特徴とする高架橋用角折れ防止装置。
  2. 前記アンカーボルトの基端近傍に定着板を設けた請求項1記載の高架橋用角折れ防止装置。
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