前者の場合、軌道上を走行する列車の荷重は、同一の上部工本体を介して橋脚や橋台に作用するため、列車の走行荷重は、橋軸直交方向に沿って概ね均等に橋台や橋脚の頂部に作用し、あるいは均等とは言えずとも、大きな偏心がない状態で橋台や橋脚の頂部に作用する。
しかしながら、後者の場合、すなわち、複数の上部工本体が並列に架け渡されている場合、列車の走行荷重は、上部工本体の架設位置に応じて橋台や橋脚に作用し、橋台や橋脚は、列車からの走行荷重を偏心鉛直荷重として受けることとなる。
そのため、橋台や橋脚が橋軸廻りにロッキング振動を起こするとともに、該ロッキング振動による地盤振動が周辺に伝播し、不測の環境被害を招く懸念があった。
また、新幹線等の鉄道車両が桁橋を通過する際、列車周辺の空気の乱れによる空力音、列車の駆動音、軌道の振動による転動音といった様々な音が発生するが、かかる音は、近隣に伝播して騒音被害を招く原因となる。
これらのうち、桁橋を構成する構造部材に伝達した振動に起因する音は構造物音と呼ばれており、鋼製の鉄道桁橋については従来からさまざまな騒音対策がとられてきたが、昨今の新幹線の速度向上に伴い、鋼製の桁橋よりも構造物音が小さいとされてきた鉄筋コンクリート製(以下、RC)の桁橋についても、騒音被害の拡大が懸念されるようになってきた。
かかる状況下、本出願人の研究により、RC桁橋においては、中間スラブや張出スラブあるいは主桁が構造物音の主たる発生源であり、かかる構造部材の板振動が騒音の原因となることがわかってきたが、どのような対策を施せばよいのか、有効かつ合理的な対策が未だ提案されていないのが現状であり、周辺への騒音低減を含めた環境対策として、RC桁橋の構造物音対策が急務となっていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、複数の上部工本体が並列に架設されていることに起因する橋台や橋脚のロッキング振動を防止することが可能な桁橋の連結構造を提供することを目的とする。
また、本発明は、RC桁橋から発生する構造物音を低減可能な桁橋の連結構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る桁橋の連結構造は請求項1に記載したように、互いに平行に配置された複数の主桁、該複数の主桁をそれらの直交方向に沿って相互連結する横桁及び前記複数の主桁及び前記横桁で支持されたスラブを備えたRC上部工本体を橋脚又は橋台の頂部に複数組並列に架け渡してなる桁橋の連結構造において、
前記各RC上部工本体のうち、互いに隣り合う2つのRC上部工本体を所定の連結材を介して相互に連結することにより、該2つのRC上部工本体を一体化したものである。
また、本発明に係る桁橋の連結構造は、前記2つのRC上部工本体の一方に属する主桁と他方に属し該主桁に対向する主桁の間に前記連結材を配置し、該連結材の各端を前記2つの主桁のウェブにそれぞれ固着するとともに、前記2つのRC上部工本体の一方に属するスラブと他方に属し該スラブに隣り合うスラブに前記連結材の上面をそれぞれ固着したものである。
また、本発明に係る桁橋の連結構造は、前記2つのRC上部工本体の一方に属するスラブと他方に属し該スラブに隣り合うスラブとに跨設されるように前記連結材を配置し、該連結材の下面を前記各スラブの上面にそれぞれに固着するとともに、前記連結材の各端を前記各スラブの上面に設けられた路盤コンクリートの側面にそれぞれ固着したものである。
また、本発明に係る桁橋の連結構造は、前記各RC上部工本体のうち、同一のRC上部工本体に属する2つの主桁の間に補剛材をそれぞれ配置し、該各補剛材の上面を前記スラブの下面に固着することで前記スラブの面外曲げ剛性を補剛するとともに、各端を前記主桁のウェブにそれぞれ固着することで該ウェブの面外曲げ剛性を補剛したものである。
また、本発明に係る桁橋の連結構造は、前記各RC上部工本体のうち、同一のRC上部工本体に属するスラブの上面であって前記路盤コンクリートと高欄下方に設けられたダクトとの間に補剛材をそれぞれ配置し、該各補剛材の下面を前記スラブの上面にそれぞれ固着するとともに、該補剛材の一端を前記路盤コンクリートの反対側側面に、他端を前記ダクトの側面にそれぞれ固着することで前記スラブの面外曲げ剛性を補剛したものである。
また、本発明に係る桁橋の連結構造は、前記連結材及び前記各補剛材を橋軸直交方向に沿った共通軸線上にそれぞれ配置し、該連結材及び各補剛材と前記各ウェブに貫通ボルトを挿通して締め付けることにより、前記連結材及び前記各補剛材を相互に連結したものである。
また、本発明に係る桁橋の連結構造は、前記横桁の配置スパン長をL1、前記主桁の長さをL2としたとき、
L1=L2/N
N;1,2,3・・・
の場合に、前記主桁の端部から、
n・(L 1 /2)
n;1,3,5・・・
の位置に前記連結材及び前記補剛材を配置したものである。
本発明においては、橋脚又は橋台の頂部に複数組並列に架け渡されたRC上部工本体のうち、互いに隣り合う2つのRC上部工本体を所定の連結材を介して相互に連結することにより、2つのRC上部工本体を一体化する。
このようにすると、一方のRC上部工本体のスラブ上を走行する車両の荷重は、該RC上部工本体直下の橋脚や橋台に作用するのみならず、連結材を介して他方のRC上部工本体にも伝達され、該他方のRC上部工本体直下の橋脚や橋台に作用する。
そのため、荷重伝達は、単一のRC上部工本体に複数の軌道を敷設した場合と概ね同等となり、かくして偏心鉛直荷重に起因する橋軸廻りの橋台や橋脚のロッキング振動を未然に防止することが可能となる。
また、連結材を介した各RC上部工本体の一体化作用により、車両走行に伴う荷重は、特定の主桁に集中することなく分散伝達することとなり、かくしてRC上部工本体の鉛直下方へのたわみを抑えることも可能となる。
連結材は、互いに隣り合う2つのRC上部工本体での車両走行で生じる鉛直荷重が橋脚や橋台に実質的にロッキング振動を生じないように該2つのRC上部工本体が一体化されるのであれば、その構成は任意であって、例えばH形鋼、I形鋼、鋼板等で構成することが可能である。
また、連結材をどのように配置するかも任意であり、例えば、2つのRC上部工本体の一方に属する主桁と他方に属し該主桁に対向する主桁の間に連結材を配置し、該連結材の各端を2つの主桁のウェブにそれぞれ固着するとともに、2つのRC上部工本体の一方に属するスラブと他方に属し該スラブに隣り合うスラブに連結材の上面をそれぞれ固着して構成し、又は2つのRC上部工本体の一方に属するスラブと他方に属し該スラブに隣り合うスラブとに跨設されるように連結材を配置し、該連結材の下面を各スラブの上面にそれぞれに固着するとともに、連結材の各端を各スラブの上面に設けられた路盤コンクリートの側面にそれぞれ固着して構成することができる。
このようにすると、連結材は、スラブやウェブの面外曲げ剛性を補剛する役割をも果たすこととなり、かくして車両通過時に起こるスラブや主桁のウェブの板振動が抑制され、該スラブやウェブに起因する構造物音を低減することができる。
本発明でいう桁橋は、主桁、横桁及びそれらに支持されたスラブを備えたRC上部工本体が橋脚又は橋台の頂部に複数組並列に架け渡されたものをいうが、RC上部工本体は2組に限定されるものではなく、3組以上でもかまわないし、各RC上部工本体の主桁についても2以上であればよい。
また、本発明の桁橋は、大型トラック等の自動車が走行する道路用のRC桁橋にも適用が可能であるが、列車、特に新幹線等の高速列車が走行する鉄道用RC桁橋に適用したならば、列車走行に伴う橋脚や橋台のロッキング振動を未然に防止することが可能になる。
本発明は、隣り合う2つのRC上部工本体を連結材を介して相互に連結して一体化させることを特徴とするものであるが、これに加えて、各RC上部工本体のうち、同一のRC上部工本体に属する2つの主桁の間に補剛材をそれぞれ配置し、該各補剛材の上面をスラブの下面に固着することでスラブの面外曲げ剛性を補剛するとともに、各端を主桁のウェブにそれぞれ固着することで該ウェブの面外曲げ剛性を補剛したならば、各RC上部工本体の全体の面外曲げ剛性が増大するため、連結材のみの場合に比べて、より確実な一体化が可能となる。
また、前記各RC上部工本体のうち、同一のRC上部工本体に属するスラブの上面であって前記路盤コンクリートと高欄下方に設けられたダクトとの間に補剛材をそれぞれ配置し、該各補剛材の下面を前記スラブの上面にそれぞれ固着するとともに、該補剛材の一端を前記路盤コンクリートの反対側側面に、他端を前記ダクトの側面にそれぞれ固着することで前記スラブの面外曲げ剛性を補剛したならば、上述の構成と同様、各RC上部工本体の全体の面外曲げ剛性が増大するため、連結材のみの場合に比べて、より確実な一体化が可能となる。
また、補剛材は上述した連結材とともに、車両通過時に起こるスラブや主桁のウェブの板振動を抑制し、スラブやウェブに起因する構造物音を低減する役目を果たす。
ここで、連結材及び各補剛材を橋軸直交方向に沿った共通軸線上にそれぞれ配置し、該連結材及び各補剛材と各ウェブに貫通ボルトを挿通して締め付けることにより、連結材及び各補剛材を相互に連結したならば、一体化の程度がさらに高まり、橋脚や橋台のロッキング振動をより確実に低減することが可能となる。
また、横桁の配置スパン長をL1、主桁の長さをL2としたとき、
L1=L2/N
N;1,2,3・・・
の場合に、前記主桁の端部から、
n・(L2/2・N)
n;1,3,5・・・
の位置に連結材及び補剛材を配置する構成を採用することができる。
このようにすれば、スラブや主桁ウェブの板振動が取り得る振動モードのうち、比較的低次モードで腹となる箇所を重点的に抑えることができるので、RC上部工本体の一体化によるロッキング振動の防止に加えて、より合理的な防音対策となる可能性が高い。
以下、本発明に係る桁橋の連結構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る桁橋の連結構造を示した図、図2はその適用対象となる鉄道用桁橋13を示した図である。鉄道用桁橋13は図2でわかるように、橋軸方向に沿って立設された橋脚2の頂部に2本のRC上部工本体6,6を並列に架け渡してなる。
RC上部工本体6は、橋軸方向に沿って互いに平行に配置された2本の主桁3と、該主桁をそれらの直交方向に沿って相互連結する横桁4と、主桁3及び横桁4で支持されたスラブ5とを備え、スラブ5上には路盤コンクリート(図示せず)が設けられているとともに、該路盤コンクリート上には列車軌道(図示せず)を敷設してある。
本実施形態に係る桁橋の連結構造1は、かかる鉄道用桁橋13に適用されたものであって、図1に示すように、鉄道用桁橋13のRC上部工本体6,6を連結材12を介して相互に連結してある。
連結材12は、2つのRC上部工本体6,6の一方に属する主桁3と他方に属し該主桁に対向する主桁3の間に橋軸直交方向に沿って配置してあり、該連結材の各端を、2つの主桁3,3のウェブにそれぞれ固着するとともに、該連結材の上面を、2つのRC上部工本体6,6の一方に属するスラブ5と他方に属し該スラブに隣り合うスラブ5にそれぞれ固着してある。
ここで、スラブ5は、主桁3,3に挟まれた中間スラブ7とその両側方に延びる張出スラブ8,8とからなり、連結材12は、一方のスラブ5に属する張出スラブ8と他方のスラブ5に属する張出スラブ8にそれぞれ固着してある。
一方、各RC上部工本体6のうち、同一のRC上部工本体6に属する2つの主桁3,3の間には、補剛材11をそれぞれ橋軸直交方向に沿ってかつ連結材12と同じ軸線上となるように配置し、該各補剛材の上面を中間スラブ7の下面にそれぞれ固着することで、各スラブ5の面外曲げ剛性を補剛するとともに、補剛材11の各端を主桁3,3のウェブにそれぞれ固着することで、該ウェブの面外曲げ剛性を補剛してある。
さらに、最外位置の主桁3の外側には、補剛材10をそれぞれ橋軸直交方向に沿ってかつ連結材12と同じ軸線上となるように配置するとともに、該補剛材の上面を張出スラブ8の下面にそれぞれ固着することで、各スラブ5の面外曲げ剛性を補剛するとともに、補剛材10の一端を主桁3のウェブにそれぞれ固着することで、該ウェブの面外曲げ剛性を補剛してある。
横桁4は図1(b)に示すように、その材軸が主桁3に直交する方向(橋軸直交方向)に沿うように、かつ橋軸方向に沿ってスパン長L1ごとに配置してあるが、連結材12は、橋軸方向に沿った横桁4,4の中心位置、すなわち横桁4の材軸からL1/2の位置に配置してあり、補剛材10,11も連結材12と同様、横桁4の材軸からL1/2の位置に配置してある。
なお、本実施形態では、主桁3はL2の桁長を有し、横桁4は、主桁3の各端と、主桁3の桁方向(橋軸方向)に沿ってL1ごとに等間隔で配置されるものとする。すなわち、横桁4が主桁3の両端のみに設けられる場合には、L1=L2であって、横桁4の数は2となり、桁方向に沿った中央位置にも横桁4が設置される場合には、L1=L2/2であって、横桁4の数は3となる。
図3(a)は、連結材12を示した全体斜視図である。同図でわかるように、連結材12は、エンドプレート22a,22aをH形鋼21aの各端部にそれぞれ溶着するとともに、該H形鋼の中間位置と端部位置の計3箇所でスチフナ23をH形鋼21aのウェブ両側に溶着してあり、エンドプレート22aは、主桁3と張出スラブ8との取合い箇所に形成されているハンチとその隣接部位にぴったりと当接されるよう、折曲げ形成してある。
ここで、スチフナ23は、H形鋼21aのウェブの板振動を抑えることで、連結材12自体が構造物音の発生源となるのを防止する役目を果たす。
H形鋼21aのフランジ上面には、連結材12による連結工事の際、張出スラブ8の下面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー24を突設してあるとともに、張出スラブ8との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該フランジ上面に目荒らし処理を施してある。
同様に、エンドプレート22aの折曲げ状側面には、連結工事の際に主桁3の対向側面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー24を突設してあるとともに、主桁3との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該側面に目荒らし処理を施してある。
図3(b)は、補剛材11を示した全体斜視図である。同図でわかるように、補剛材11は、エンドプレート22b,22bをH形鋼21bの各端部にそれぞれ溶着するとともに、該H形鋼の端部位置でスチフナ23をH形鋼21bのウェブ両側に溶着してあり、エンドプレート22bは、主桁3と中間スラブ7との取合い箇所に形成されているハンチとその隣接部位にぴったりと当接されるよう、折曲げ形成してある。
ここで、スチフナ23は、H形鋼21bのウェブの板振動を抑えることで、補剛材11自体が構造物音の発生源となるのを防止する役目を果たす。
H形鋼21bのフランジ上面には、連結工事の際、中間スラブ7の下面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー24を突設してあるとともに、中間スラブ7との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該フランジ上面に目荒らし処理を施してある。
同様に、エンドプレート22bの折曲げ状側面には、主桁3の対向側面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー24を突設してあるとともに、主桁3との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該側面に目荒らし処理を施してある。
図3(c)は、補剛材10を示した全体斜視図である。同図でわかるように、補剛材10は、H形鋼31の一端にエンドプレート26を斜めに溶着するとともに、他端にエンドプレート29を溶着し、該他端位置でスチフナ30をH形鋼31のウェブ両側に溶着してあり、エンドプレート29は、主桁3と張出スラブ8との取合い箇所に形成されているハンチとその隣接部位にぴったりと当接されるよう、折曲げ形成してある。
ここで、スチフナ30は、H形鋼31のウェブの板振動を抑えることで、補剛材10自体が構造物音の発生源となるのを防止する役目を果たす。
H形鋼31のフランジ上面には、連結工事の際、張出スラブ8の下面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー32を突設してあるとともに、張出スラブ8との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該フランジ上面に目荒らし処理を施してある。
同様に、エンドプレート29の折曲げ状側面には、連結工事の際、主桁3の外側側面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー32を突設してあるとともに、主桁3との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該側面に目荒らし処理を施してある。
なお、図3(c)に示した補剛材10は、図1で言えば右側に配置される状態で示したものであるが、左側に配置される状態については、図3(c)と左右対称に現れるため、図面及びその説明を省略する。
図2に示した既設の鉄道用RC桁橋13に対して本実施形態に係る桁橋の連結構造1を適用するには、補剛材10,11及び連結材12を工場等で適宜製作して施工現場に搬入する一方、連結材12のアンカー24が挿入される穴を張出スラブ8の下面及び主桁3,3の対向側面に穿孔し、補剛材11のアンカー24が挿入される穴を中間スラブ7の下面及び主桁3,3の対向側面に穿孔し、補剛材10のアンカー32が挿入される穴を張出スラブ8の下面及び主桁3の外側側面に穿孔する。
次に、連結材12のアンカー24を張出スラブ8の下面及び主桁3,3の対向側面に穿孔された穴に挿入し、かかる状態で連結材12と張出スラブ8及び主桁3,3との隙間に無収縮モルタル、極早強モルタル等の固化材を充填する。アンカー24のうち、側方に突出したものについては、着脱自在に構成しておくのがよい。
同様に、補剛材11のアンカー24を中間スラブ7の下面及び主桁3,3の対向側面に穿孔された穴に挿入し、かかる状態で補剛材11と中間スラブ7及び主桁3,3との隙間に無収縮モルタル、極早強モルタル等の固化材を充填する。アンカー24のうち、側方に突出したものについては、着脱自在に構成しておくのがよい。
また、補剛材10のアンカー32を張出スラブ8の下面及び主桁3の外側側面に穿孔された穴に挿入し、かかる状態で補剛材10と張出スラブ8及び主桁3との隙間に上述した固化材を充填する。アンカー32のうち、側方に突出したものについては、着脱自在に構成しておくのがよい。
充填された固化材が強度を発現するまでは、必要に応じて適宜支保工を用いればよい。
以上説明したように、本実施形態に係る桁橋の連結構造1によれば、2つのRC上部工本体6,6を連結材12を介して相互に連結することで該RC上部工本体を一体化するようにしたので、一方のRC上部工本体6のスラブ5に作用する列車の走行荷重は、連結材12を介して他方のRC上部工本体6にも伝達される。
すなわち、並列配置された2本のRC上部工本体6,6を相互に連結しない従来の場合においては、図4(a)に示すように列車41が走行するRC上部工本体6(同図右側)の直下に位置する橋脚2の頂部位置にのみ、列車41の走行荷重が作用し、該橋脚に作用する鉛直荷重が偏心するため、橋脚2には橋軸廻りのロッキング振動が発生する。
それに対し、本実施形態においては、連結材12による荷重伝達作用により、一方のRC上部工本体6(同図右側)のスラブ5上を走行する列車の荷重は図4(b)に示すように、該RC上部工本体直下に位置する橋脚2の頂部位置のみならず、他方のRC上部工本体6(同図左側)の直下にも伝達される。また、連結材12による荷重伝達作用に加えて、補剛材10及び補剛材11による各RC上部工本体6の剛性増大作用もRC上部工本体6,6の一体化に寄与する。
そのため、橋脚2に作用する鉛直荷重の偏心状況が大幅に緩和され、かくして橋脚2に発生する橋軸廻りのロッキング振動を格段に低減することが可能となる。
また、本実施形態に係る桁橋の連結構造1によれば、連結材12及び補剛材10,11によるRC上部工本体6,6の一体化作用により、車両走行に伴う荷重は、特定の主桁3に集中することなく、多数の主桁3に分散伝達することとなり、かくして橋脚2,2間におけるRC上部工本体6,6の鉛直方向たわみを抑えることも可能となる。
また、本実施形態に係る桁橋の連結構造1によれば、補剛材11は、中間スラブ7の面外曲げ剛性を、補剛材10及び連結材12は、張出スラブ8の面外曲げ剛性をそれぞれ高めるとともに、補剛材10,11及び連結材12の端部が主桁3を構成するウェブの面外曲げ剛性をそれぞれ高めるため、列車通過時に起こる中間スラブ7や張出スラブ8あるいは主桁3を構成するウェブの板振動が抑制されることとなり、かくしてスラブ5や主桁3に起因する構造物音の発生を未然に防止することも可能となる。
また、本実施形態に係る桁橋の連結構造1によれば、連結材12及び補剛材10,11を、橋軸方向に沿った横桁4,4の中心位置、すなわち横桁4の材軸からL1/2の位置に配置するようにしたので、中間スラブ7や主桁3のウェブの板振動が取り得る振動モードのうち、比較的低次モードで腹となる箇所を重点的に抑えることが可能となり、構造物音対策をより合理的に行うことができる。
本実施形態では、補剛材10及び補剛材11を配置することにより、各RC上部工本体6の全体曲げ剛性を高めてRC上部工本体6,6の一体化に寄与させるとともに、構造物音対策も同時に兼ねさせたが、連結材12のみでRC上部工本体6,6の一体化が可能であってかつスラブ5や主桁3の構造物音対策が必要ないのであれば、補剛材10及び補剛材11のうち、いずれかの設置を省略し、又は両方の設置を省略してもかまわない。
また、本実施形態では、補剛材10,11及び連結材12を同一の共通軸線上に配置するようにしたが、RC上部工本体6,6の一体化が可能である限り、互いに軸線がずれた位置に配置するようにしてもかまわない。
一方、補剛材10,11及び連結材12を単に共通軸線上に配置しただけでは一体化の程度が不足する場合、補剛材10,11及び連結材12と主桁3のウェブに貫通ボルトを挿通して締め付けることにより、補剛材10,11及び連結材12を強固に連結して一体化の程度を向上させるようにすることが可能である。
図5に示す変形例においては、貫通ボルト42を、同図で言えば右側の補剛材10のエンドプレート29に形成されたボルト孔(図示せず)に挿通してから、右側に位置するRC上部工本体6の右側の主桁3に通し、次いで、補剛材11のエンドプレート22b,22b及びスチフナ23に形成されたボルト孔(図示せず)に挿通し、次いで、左側の主桁3に挿通してから連結材12のエンドプレート22a,22a及びスチフナ23に形成されたボルト孔(図示せず)に挿通し、次いで、左側に位置するRC上部工本体6の右側の主桁3に挿通してから同様にして補剛材11に挿通し、最後に左側の主桁3に挿通して補剛材10に挿通する。
このようにして貫通ボルト42を挿通した後、挿通前に予め螺合されあるいは挿通後に螺合されたナット43を締め付けることで、各主桁3が挟み込まれる形で補剛材10,11及び連結材12を貫通ボルト42を介して相互に連結する。
かかる変形例によれば、補剛材10,11及び連結材12が一体となって、RC上部工本体6,6を強固に一体化させることができる。また、中間スラブ7、張出スラブ8及び各主桁3を構成するウェブの板振動の抑制作用が格段に向上するとともに、補剛材10,11及び連結材12の落下防止事故を未然に防止することも可能となる。さらに、橋軸廻りの主桁3のねじれ剛性が高くなるため、該主桁のねじり振動モードを抑制し、該モードに起因する構造物音を低減することも可能となる。
なお、最も外側の補剛材10,10については適宜省略することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図6は、第2実施形態に係る桁橋の連結構造を示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係る桁橋の連結構造51は第1実施形態と同様、鉄道用桁橋13に適用されたものであって、RC上部工本体6,6を連結材59を介して相互に連結してある。
連結材59は、2つのRC上部工本体6,6の一方に属するスラブ5と他方に属し該スラブに隣り合うスラブ5とに跨設され、かかる状態でその下面を各スラブ5,5の上面にそれぞれに固着するとともに、その各端をスラブ5,5の上面にそれぞれ設けられた路盤コンクリート52,52の側面にそれぞれ固着してなる。
一方、各RC上部工本体6において、路盤コンクリート52と高欄下方に設けられたダクト53との間には補剛材60をそれぞれ配置してあるとともに、該補剛材の一端を路盤コンクリート52の反対側側面に、他端をダクト53の側面にそれぞれ固着してあり、かかる構成によってスラブ5の面外曲げ剛性を補剛し、RC上部工本体6全体の曲げ剛性を高めてRC上部工本体6,6の一体化に寄与させることができるとともに、スラブ5の板振動を抑えることにより、構造物音の発生も低減可能な構成となっている。
図7(a)は、連結材59を示した全体斜視図である。同図でわかるように、連結材59は、エンドプレート72,72をH形鋼71の各端部にそれぞれ溶着するとともに、該H形鋼の中間位置と端部位置の計3箇所でスチフナ73をウェブ両側に溶着してあり、H形鋼71は、曲げ剛性を大きくするために十分な高さを確保するとともに、エンドプレート72は、列車設計側から要求される建築限界に支障がないよう、折曲げ形成してある。
ここで、スチフナ73は、H形鋼71のウェブの板振動を抑えることで、連結材59自体が構造物音の発生源となるのを防止する役目を果たす。
H形鋼71のフランジ下面には、連結材59による連結工事の際、スラブ5の上面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー74を突設してあるとともに、スラブ5との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該フランジ下面に目荒らし処理を施してある。
同様に、エンドプレート72の折曲げ状側面には、連結工事の際、路盤コンクリート52の側面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー74を突設してあるとともに、路盤コンクリート52との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該折曲げ状側面に目荒らし処理を施してある。
図7(b)は、補剛材60を示した全体斜視図である。同図でわかるように、補剛材60は、H形鋼75の各端部にエンドプレート77,77をそれぞれ溶着するとともに、該H形鋼の中間位置でスチフナ80をウェブ両側に溶着してある。
ここで、スチフナ80は、H形鋼75のウェブの板振動を抑えることで、補剛材60自体が構造物音の発生源となるのを防止する役目を果たす。
H形鋼75のフランジ下面には、スラブ5の上面のうち、路盤コンクリート52とダクト53の間に拡がっていて部分に穿孔される穴に挿入可能なアンカー79を突設してあるとともに、該部分との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該フランジ下面に目荒らし処理を施してある。
同様に、エンドプレート77の側面には、連結工事の際、路盤コンクリート52の外側側面やダクト53の側面に穿孔される穴に挿入可能なアンカー79を突設してあるとともに、路盤コンクリート52やダクト53との隙間に充填される固化材との接着性を高めるべく、該側面に目荒らし処理を施してある。
図2に示した既設のRC桁橋13に対して本実施形態に係る桁橋の連結構造51を適用するには、連結材59及び補剛材60を工場等で適宜製作して施工現場に搬入する一方、連結材59のアンカー74が挿入される穴をスラブ5,5の上面及び路盤コンクリート52,52の側面にそれぞれ穿孔するとともに、補剛材60のアンカー79が挿入される穴をスラブ5の上面、路盤コンクリート52の側面及びダクト53の側面に穿孔する。
次に、連結材59のアンカー74をスラブ5の上面及び路盤コンクリート52,52の対向側面に穿孔された穴に挿入し、かかる状態で連結材59とスラブ5及び路盤コンクリート52,52との隙間に無収縮モルタル、極早強モルタル等の固化材を充填する。アンカー74のうち、側方に突出したものについては、着脱自在に構成しておくのがよい。
同様に、補剛材60のアンカー79をスラブ5の上面、路盤コンクリート52の外側側面及びダクト53の側面に穿孔された穴に挿入し、かかる状態で補剛材60とスラブ5との隙間、路盤コンクリート52及びダクト53との隙間に上述した固化材をそれぞれ充填する。アンカー79のうち、側方に突出したものについては、着脱自在に構成しておくのがよい。
以上説明したように、本実施形態に係る桁橋の連結構造51によれば、2つのRC上部工本体6,6を連結材59を介して相互に連結することで該RC上部工本体を一体化するようにしたので、図4を用いて説明した第1実施形態と同様、一方のRC上部工本体6のスラブ5に作用する列車の走行荷重は、連結材59を介して他方のRC上部工本体6にも伝達される。
そのため、橋脚2に作用する鉛直荷重の偏心状況が大幅に緩和され、かくして橋脚2に発生する橋軸廻りのロッキング振動を格段に低減することが可能となる。
また、本実施形態に係る桁橋の連結構造51によれば、連結材59及び補剛材60,60によるRC上部工本体6,6の一体化作用により、車両走行に伴う荷重は、特定の主桁3に集中することなく、多数の主桁3に分散伝達することとなり、かくして橋脚2,2間におけるRC上部工本体6,6の鉛直たわみを抑えることも可能となる。
また、本実施形態に係る桁橋の連結構造51によれば、連結材59及び補剛材60,60は、路盤コンクリート52,52と相俟って、スラブ5,5の面外曲げ剛性を高めるため、列車通過時に起こるスラブ5の板振動が抑制されることとなり、かくしてスラブ5に起因する構造物音の発生を未然に防止することも可能となる。
本実施形態では、補剛材60を配置することにより、各RC上部工本体6の全体曲げ剛性を高めてRC上部工本体6,6の一体化に寄与させるとともに、構造物音対策も同時に兼ねさせたが、連結材59のみでRC上部工本体6,6の一体化が可能であってかつスラブ5の構造物音対策が必要ないのであれば、補剛材60を省略してもかまわない。
また、本実施形態では、連結材59及び補剛材60を同一の共通軸線上に配置するようにしたが、RC上部工本体6,6の一体化が可能である限り、互いに軸線がずれた位置に配置するようにしてもかまわない。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、連結材59を第1実施形態で説明した連結材12と併用することが可能であり、かかる変形例によれば、RC上部工本体6,6をさらに確実に一体化することが可能となる。
また、補剛材60を第1実施形態で説明した補剛材10,11と併用することが可能であり、かかる変形例によれば、RC上部工本体6,6の一体化の程度をさらに高めるとともに、スラブ5や主桁3のウェブの板振動をさらに確実に抑制することができる。