JP4013097B2 - 制振高架橋 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路橋や鉄道橋等の高架橋に係わり、特に制振装置を備えて耐震性を向上せしめた制振高架橋に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来一般の高架橋の構造は変形量を可及的に小さくすることが主眼とされ、必然的に橋脚を高剛性とする必要があり、通常は大断面の鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨造の橋脚が採用されている。つまり、従来一般の高架橋は、とにかく頑強な構造として地震時においても変形し難いものとするという耐力構造とされるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、そのような耐力構造の高架橋では地震時に入力される地震力が益々大きなものとなり、したがって部材の所要断面がさらに大きくなるという悪循環となる。
【0004】
なお、近年においては、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の橋脚に代えて、比較的小断面で高軸剛性が得られる充填鋼管コンクリート造の柱(CFT柱)を橋脚として採用することも検討されている。しかし、充填鋼管コンクリート造の柱では曲げ剛性が低下して弾性変形量が大きくなるので、高架橋全体の変形を抑制するうえでは不利となり、そのため許容変形量が小さい高架橋の橋脚としてCFT柱を採用する場合には大断面として曲げ剛性を高めて変形を抑制する必要があり、結局のところCFT柱の利点を生かせないので不合理であり、広く普及するに至っていない。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は変形を十分に抑制できるとともに、橋脚に充填鋼管コンクリート造の柱を合理的に採用し得る構造の高架橋を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、橋脚とそれにより支持される橋桁とを単位構造体として、それら単位構造体の橋桁どうしを連結して該連結部に制振装置を介装するとともに、互いに連結される各単位構造体の固有周期に差をもたせるように各単位構造体における橋脚の曲げ剛性を設定してなるものであって、特に充填鋼管コンクリート造の橋脚を有する単位構造体と、鉄筋コンクリート造の橋脚を有する単位構造体とを交互に連結し、前記充填鋼管コンクリート造の橋脚の曲げ剛性を前記鉄筋コンクリート造の橋脚の曲げ剛性よりも低く設定してなることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、前記制振装置として、双方の単位構造体の橋桁にそれぞれ固定されて互いに相対変位可能な鋼板の間に粘弾性体を接着状態で挟み込んだ構成の粘弾性ダンパーを用いるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明の制振高架橋の一実施形態を示す概要図である。本実施形態の制振高架橋は、基本的に2種の単位構造体A,Bを交互に連結した構造とされているものである。
【0010】
単位構造体Aは複数本(図示例のものは6本)の橋脚1により橋桁2を支持してなるもので、それら橋脚1としては鋼管内にコンクリートを充填した充填鋼管コンクリート造の柱が採用されている。また、単位構造体Bは同じく複数本(同、6本)の橋脚3により橋桁4を支持してなるもので、橋脚3としては通常の鉄筋コンクリート造の柱が採用されている。
【0011】
それら単位構造体A,Bにおけるそれぞれの橋脚1,3の軸剛性は同等に設定されているが、単位構造体Aの橋脚1は充填鋼管コンクリート造であることからその断面が比較的小さい円形断面の細柱とされて、その曲げ剛性は単位構造体Bにおける鉄筋コンクリート造の橋脚3に比較して相対的に低剛性、つまり弾性的に曲がりやすいものとなるように設定されている。そのような橋脚1,3の曲げ剛性の差により、双方の単位構造体A,Bの固有周期には自ずと差がつき、単位構造体Aの固有周期は単位構造体Bのそれよりも長いものとなっている。
【0012】
そして、それら各単位構造体A,Bの橋桁2,4どうしが連結されて一連の高架橋が構成されているが、それら橋桁2,4どうしの連結部には振動を減衰させ変形を抑制するための制振装置としての粘弾性ダンパー5が組み込まれている。
【0013】
本実施形態における粘弾性ダンパー5は、図2に示すように、一方の橋桁4に固定された櫛歯状の鋼板6、それに噛合する他の櫛歯状の鋼板7、それら双方の鋼板6,7間に接着状態で挟み込まれた粘弾性体8、他方の橋桁2に固定された平板状の鋼板9、その鋼板9と上記鋼板7との間に接着状態で挟み込まれた粘弾性体10により構成されている。粘弾性体8,10としてはアスファルトが好適に採用可能であり、この粘弾性ダンパー5は、地震時にこの高架橋が振動して双方の橋桁2,4が長さ方向および幅方向に相対変位した際に、鋼板6,9の間で鋼板7が各方向に変位して粘弾性体8,10が変形し、その粘性抵抗力により振動エネルギーを吸収して振動を速やかに減衰させるものである。
【0014】
以上のように、上記構造の高架橋は地震時における振動が粘弾性ダンパー5により速やかに減衰させられ、その変形を十分に抑制することができるものである。特に、互いに連結している単位構造体A,Bの固有周期に差をもたせているので、地震時における双方の単位構造体A,Bの振動モードが自ずと異なり、したがって互いに連結されている双方の橋桁2,4は自ずと相対変位することになり、それらの間に介在している粘弾性ダンパー5が確実に作動して振動減衰効果を確実に得られるものとなる。換言すれば、単位構造体A,Bの固有周期が同一であるとそれらが同位相、同振幅で振動してしまうことが想定され、その場合には粘弾性ダンパー5が作動し得ないので減衰効果を得ることができない。
【0015】
なお、本発明においては、互いに連結される単位構造体A,Bの固有周期に差をもたせるために上記実施形態のようにそれらの橋脚1,3を異種の構造として、一方の橋脚1として高軸剛性で低曲げ剛性の充填鋼管コンクリート造の比較的細い柱を採用し、他方の橋脚3としてそれよりも相対的に高剛性の鉄筋コンクリート造の柱を採用するのであるが、その限りにおいて橋脚1,3の形態や本数は任意に変更可能であり、要は双方の単位構造体A,Bに相対変位が生じて制振装置が確実に作動するように橋脚1,3の曲げ剛性を設定すれば良い。
【0016】
また、制振装置として、上記の粘弾性ダンパー5に代えて、あるいはそれに加えて、図3および図4に示すような粘弾性ダンパー11を橋桁2,4の側面に設置することも好適である。その粘弾性ダンパー11は、鋼板12、13の基端部を双方の橋桁2,4の側面にスペーサ14,15を介して固定してそれら鋼板12,13の先端部どうしを相対変位可能に積層し、それら鋼板12,13の間、および鋼板13と橋桁2側面との間に、アスファルト等の粘弾性体16を接着状態で挟み込んだ構成のものであり、双方の橋桁2,4が相対変位した際には鋼板12、13を介して粘弾性体16が変形してその粘性抵抗力による振動減衰効果が得られるものである。なお、図5に示すように上記の粘弾性ダンパー11を橋桁2,4の下面側に設けても同様である。
【0017】
さらに、本発明の制振装置としては上記のような粘弾性ダンパー5,11に限らず、オイルダンパー、鋼材ダンパー、摩擦ダンパー等、他の形式のダンパーも採用可能である。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明は、橋脚とそれにより支持される橋桁とを単位構造体として、それら単位構造体の橋桁どうしを連結して該連結部に制振装置を介装するので、制振装置により高架橋の振動を速やかに減衰させ、変形を十分に抑制することができることはもとより、各単位構造体の固有周期に差をもたせるように各単位構造体における橋脚の曲げ剛性を設定したので、制振装置が確実に作動して振動減衰効果、変形抑制効果を確実に得ることができる。
【0019】
特に請求項1の発明によれば、充填鋼管コンクリート造の橋脚を有する単位構造体と、鉄筋コンクリート造の橋脚を有する単位構造体とを交互に連結し、前記充填鋼管コンクリート造の橋脚の曲げ剛性を前記鉄筋コンクリート造の橋脚の曲げ剛性よりも低く設定するので、双方の単位構造体の振動モードを確実に異なるものとして制振装置を確実に作動せしめることができる。これにより、本来的に高軸剛性で低曲げ剛性の充填鋼管コンクリート造の比較的小断面の柱を橋脚として合理的に採用可能となり、工費削減に寄与し得る。
【0020】
請求項2の発明は、制振装置として、双方の単位構造体の橋桁にそれぞれ固定されて互いに相対変位可能な鋼板の間に粘弾性体を接着状態で挟み込んだ構成の粘弾性ダンパーを用いるので、粘弾性体の粘性抵抗により微小振動にも優れた振動減衰効果が得られることはもとより、構成が簡便で保守も殆ど不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の制振高架橋の一実施形態を示す概要図である。
【図2】 同、粘弾性ダンパーを示す図である。
【図3】 本発明の制振高架橋の他の実施形態を示す図である。
【図4】 同、粘弾性ダンパーを示す図である。
【図5】 本発明の制振高架橋のさらに他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
A,B 単位構造体
1 橋脚
2 橋桁
3 橋脚
4 橋桁
5 粘弾性ダンパー(制振装置)
6,7,9 鋼板
8,10 粘弾性体
11 粘弾性ダンパー(制振装置)
12,13 鋼板
16 粘弾性体

Claims (2)

  1. 橋脚とそれにより支持される橋桁とを単位構造体として、それら単位構造体の橋桁どうしを連結して該連結部に制振装置を介装するとともに、互いに連結される各単位構造体の固有周期に差をもたせるように各単位構造体における橋脚の曲げ剛性を設定してなる制振高架橋であって、
    充填鋼管コンクリート造の橋脚を有する単位構造体と、鉄筋コンクリート造の橋脚を有する単位構造体とを交互に連結し、前記充填鋼管コンクリート造の橋脚の曲げ剛性を前記鉄筋コンクリート造の橋脚の曲げ剛性よりも低く設定してなることを特徴とする制振高架橋。
  2. 前記制振装置として、双方の単位構造体の橋桁にそれぞれ固定されて互いに相対変位可能な鋼板の間に、粘弾性体を接着状態で挟み込んだ構成の粘弾性ダンパーを用いることを特徴とする請求項1記載の制振高架橋。
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