JP5261280B2 - 自動車用樹脂成形部品の製造方法 - Google Patents
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Description
上記した本発明に係る「重縮合系ポリマー」としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルが挙げられる。これらのうちで、ポリアミドは、ポリカーボネート及びポリエステルに比べて融点が低く、その分、成形が容易である(成形性に優れている)。そして、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、インテークマニホールド等の自動車用樹脂成形部品が受ける熱に対しては、ポリアミドでも十分耐え得るので、本発明に係る「重縮合系ポリマー」としては、成形性に優れたポリアミドが好ましい。
本発明に係る「ガラス繊維」は、通常使用されるガラス繊維であって、例えば、E−ガラス、S−ガラス、G−ガラス、K−ガラス等のガラス繊維が挙げられる。また、ガラス繊維の平均繊維径が5〜50μm、平均繊維長が100〜600mmのものが好ましく、より好ましくは、平均繊維径が10〜15μm、平均繊維長が300〜400mmのものが好ましい。また、ガラス繊維には、上記した重縮合系ポリマーとの界面接着力を向上させるための表面処理が施されていることが好ましい。
本発明に係る「化学発泡剤」としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸エステル化合物、アゾジカルボン酸塩、テトラゾール系化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが例示され、これらについては単独でも混合しても用いてもよい。
本発明に係る「薄肉構造」は、全体に対して肉厚が薄い樹脂壁を所定形状に形成してなる構造であり、例えば、樹脂壁を薄皿形状、トレイ形状(お盆形状)、容器形状、筐体形状、ダクト形状等にした構造が、薄肉構造に含まれる。従って、「薄肉構造の自動車用樹脂成形部品」には、例えば、薄皿形状又はトレイ形状のエンジンカバー、シリンダーヘッドカバーや、容器形状のオイルパンや、ダクト形状のインテークマニホールド等が含まれる。
本発明に係る「コアバック動作」は、公知なコアバック発泡射出成形工法にて発泡成形品を成形する際に、溶融状態の樹脂をキャビティに充填してからそのキャビティを広げる動作をいう。
本発明における自動車用樹脂成形部品の製造方法では、化学発泡剤を2〜5質量%、タルクを5〜15質量%、ガラス繊維を5〜20質量%、重縮合系ポリマーを60〜88質量%の割合でドライブレンドした組成物をコアバック型射出発泡成形機にて混錬して溶融状態にしてもよいし、予め「化学発泡剤を2〜5質量%、タルクを5〜15質量%、ガラス繊維を5〜20質量%、重縮合系ポリマーを60〜88質量%の割合で含んでなる樹脂ペレット」を製造しておき、その樹脂ペレットをコアバック型射出発泡成形機に投入して溶融状態してもよい。
請求項1の発明によれば、化学発泡剤を2〜5質量%、タルクを5〜15質量%、ガラス繊維を5〜20質量%、重縮合系ポリマーを60〜88質量%の割合で含む樹脂組成物を使用することで、超微細発泡射出成形工法で使用されていた従来の重縮合系ポリマーの樹脂組成物より流動性が向上する。これにより、耐熱性に優れる重縮合系ポリマーを主成分とした、コアバック動作前の板厚2mm以下の薄肉構造の自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)を、比較的設備費がかからないコアバック発泡射出成形工法で安価に製造することが可能になる。ここで、化学発泡剤2〜5質量%と、タルク5〜15質量%と、ガラス繊維と重縮合系ポリマーとを含有した100質量%の樹脂組成物では、ガラス繊維の含有率を5質量%より小さくしても、20質量%より大きくしても、超微細発泡射出成形工法で使用されていた従来の重縮合系ポリマーの樹脂組成物より流動性が向上することが後に詳説する実験で確認できた。従って、流動性だけを問題にした場合には、ガラス繊維の含有率は5質量%より小さいか、20質量%より大きくしてもよいが、本発明では、ガラス繊維の含有率を5質量%以上にすることにより、薄肉構造の自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)の剛性を上げて振動を抑えることが可能になり、ガラス繊維の含有率を20質量%以下にすることにより薄肉による軽量化の効果が滅殺されることを防ぐことができる。なお、自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)の樹脂壁(11)は、1対の非発泡樹脂層(11A)の間に発泡樹脂層(11B)を挟んだ内部発泡構造になるので、中実の樹脂壁と同じ重さで強度を向上させることができると共に、表面が滑らかになり、自動車用樹脂成形部品(10)の見栄えもよくなるという効果も奏する。
化学発泡剤を2〜5質量%、タルクを5〜15質量%、ガラス繊維を5〜20質量%、重縮合系ポリマーを60〜88質量%の割合で含む樹脂組成物を使用することで、請求項2の発明のように、キャビティ(24)の最少隙間を1.0〜2.0mmにしても、樹脂組成物をキャビティ(24)内にスムーズに充填することが可能になる。そして、コアバック動作によりキャビティ(24)における1.0〜2.0mmの隙間を2.0〜5.0mmまで広げて内部のみが発泡した内部発泡構造の樹脂壁を成形することができる。即ち、肉厚2.0〜5.0mmの樹脂壁で構成された自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)を、肉厚1.0〜2.0mmの中実の樹脂壁で構成された自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)と同じ重さにして強度を向上させることができる。
請求項3の発明によれば、エンジンカバー(10)、オイルパン(40)、シリンダーヘッドカバー(41)又はインテークマニホールド(42)を軽量化することができ、これらエンジンカバー(10)等搭載した自動車の燃費を向上させることができる。
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、上記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、図4に示した容器構造のオイルパン40や、図5に示したトレイ構造のシリンダーヘッドカバー41、図6に示したダクト形状のインテークマニホールド42に本発明を適用してもよい。
上記各実験のそれぞれ6種類ずつ計36種類の樹脂組成物を、下記試験条件でキャビティ内に射出して流動長を測定した。
射出成形機:日精樹脂工業株式会社製P340E5ASE(型締め40ton)
スクリュー径 :26mm
シリンダー温度 :270℃
射出速度 :120mm/s
射出圧力 :50MPa
成形金型のキャビティ幅 : 15mm
成形金型のキャビティ厚さ: 1mm
成形金型のキャビティ長さ:350mm
実験1〜6の実験結果(即ち、樹脂組成物の流動長)は、表1と図7に示されている。この実験結果から、化学発泡剤3質量%と、タルク12質量%と、ガラス繊維5〜20質量%と重縮合系ポリマーとを含有した100質量%の樹脂組成物では、超微細発泡射出成形工法で使用されていた従来の重縮合系ポリマーの樹脂組成物(実験2,3)より流動性が高くなることを確認することができた。ここで、実験は行っていないが、実験5におけるタルクの含有率を12質量%から15質量%に変更した場合の推定のグラフ1は、図7に示すように、実験5と実験6のグラフの間を所定の比率倍した位置に描くことができ、実験5におけるタルクの含有率を12質量%から5質量%に変更した場合の推定のグラフ2も同様に、実験5と実験4のグラフの間を所定の比率倍した位置に描くことができると思われる。また、上記実験結果のように化学発泡剤を含有させると流動性が向上する理由は、化学発泡剤が樹脂組成物に対して可塑剤として作用すると共に、発泡剤の発泡ガスが樹脂組成物と金型の流動抵抗を緩和する役割を果たしているためであると推測される。そして、化学発泡剤が2質量%以上であれば、上記実験の化学発泡剤3質量%と同様に、本発明に係る樹脂組成物全体を発泡するので、従来の樹脂組成物より流動性が高くなり、また、化学発泡剤が5質量%以上であると成形品の表面品質が低下するので、化学発泡剤は2〜5質量%が好ましいと推測される。これらから、本発明も目的を達成するには、即ち、耐熱性に優れかつコアバック動作前の板厚2mm以下の薄肉構造の自動車用樹脂成形部品を安価に製造するためには、化学発泡剤を2〜5質量%、タルクを5〜15質量%、ガラス繊維を5〜20質量%、重縮合系ポリマーを60〜88質量%の割合で含む樹脂組成物を使用することが好ましいと推定される。
11 主板壁(内部発泡樹脂壁)
11A 各非発泡樹脂層
11B 発泡樹脂層
12 囲壁
13 補強壁
20 コアバック型射出発泡成形機
21 成形金型
24 キャビティ
40 オイルパン
41 シリンダーヘッドカバー
42 インテークマニホールド
Claims (3)
- 化学発泡剤を2〜5質量%、タルクを5〜15質量%、ガラス繊維を5〜20質量%、重縮合系ポリマーを60〜88質量%の割合で含む樹脂組成物を溶融状態にして成形金型(21)のキャビティ(24)に充填してからそのキャビティ(24)を広げるコアバック動作にて発泡させて、前記コアバック動作前の板厚2mm以下の薄肉構造の自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)を製造することを特徴とする自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)の製造方法。
- 前記自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)の前記コアバック動作前の板厚を1.0〜2.0mmとし、前記コアバック動作後の板厚を2.0〜5.0mmにすることを特徴とする請求項1に記載の自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)の製造方法。
- 前記自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)は、エンジンカバー(10)、オイルパン(40)、シリンダーヘッドカバー(41)又はインテークマニホールド(42)の何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用樹脂成形部品(10,40,41,42)の製造方法。
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