JP5260977B2 - 繊維強化複合材料の製造方法および繊維強化複合材料 - Google Patents
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Description
この製造方法では、ゲルコート層を繊維強化複合材料の表面に形成することによって、繊維強化複合材料の表面平滑性を向上させている。
このような繊維強化複合材料は、その強度および弾性率が高いことから自動車のフェンダ、ドア、トランク等の外板として使用されている。
また、成形時の材料の流動によって、炭素繊維が繊維強化複合材料の厚さ方向にうねることによって繊維強化複合材料の表面平滑性を損ねることとなる。
また、このような製造方法においては、前記収束剤は、エポキシ系樹脂またはビニルエステル系樹脂であることが望ましい。
そして、前記課題を解決する本発明の繊維強化複合材料は、予め開繊した炭素繊維に、質量平均分子量が1000〜10000の収束剤を3〜10質量%となるように塗布した炭素繊維と、硬化性樹脂とを含むプリプレグを所定の型内で型締めし、この型締め時の前記硬化性樹脂の流動により前記炭素繊維を分繊化し硬化させたことを特徴とする。
本発明に係る製造方法で得られる繊維強化複合材料は、予め開繊した炭素繊維に、質量平均分子量が1000〜10000の収束剤を含有率が3〜10質量%となるように塗布したことを主な特徴としている。以下に、本発明に係る製造方法を説明しつつ、この製造方法で得られる繊維強化複合材料について説明する。
この開繊工程では、炭素繊維の幅が広げられると共に、炭素繊維の厚さが低減される。炭素繊維に開繊を施す方法としては、例えば、炭素繊維にエアを吹き付ける方法が挙げられる。この開繊には、公知のエア開繊装置(例えば、特開平11−172562号公報参照)が使用されてもよい。
このような収束剤は、硬化性樹脂のモノマに可溶なものと比較して、炭素繊維が軟化するのを防止して型締め時に硬化性樹脂中で炭素繊維同士をほぐれやすくする。
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂が挙げられる。また、エポキシ系樹脂は、市販品を好適に使用することができ、市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のEP1001、DIC社製のEPICLON840、ADEKA社製のアデカレジンEP4500等が挙げられる。
ビニルエステル系樹脂としては、1分子中にアクリル基またはメタクリル基を有するエポキシアクリレート樹脂であって、ビスフェノールA型のビニルエステル樹脂、ノボラック型のビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
また、本実施形態での収束剤は、前記したエポキシ系樹脂やビニルエステル系樹脂のウレタン変性樹脂であってもよい。
そして、このような収束剤の質量平均分子量は、1000〜10000である。なお、質量平均分子量が1000以上の収束剤は、後記するように、炭素繊維を型締め工程での型締め圧力で効果的に分繊化することができる。また、質量平均分子量が10000以下の収束剤は、後記するプリプレグ作製工程で、樹脂中の炭素繊維が剛直になることを抑制することができる。
このような収束剤を開繊した炭素繊維に塗布する方法としては、特に制限はないが、ディッピング法が望ましい。具体的には、炭素繊維を送出しリール側から収束剤を貯留した槽を経由して巻取りリール側に巻き取る方法が挙げられる。
収束剤の塗布量は、収束剤を塗布し、乾燥した後の炭素繊維中の収束剤の含有率で、3〜10質量%、望ましくは5〜10質量%である。
硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
ちなみに、プリプレグを作製する際に、炭素繊維には、本発明の課題を阻害しないかぎり、前記した熱硬化性樹脂の他に、充填材、熱可塑性樹脂、その他の添加物等を含ませることができる。
型締め圧力は、炭素繊維がより効果的に分繊化する圧力であって、5MPa以上が望ましい。
本実施形態に係る製造方法では、前記した収束剤が、予め開繊された炭素繊維に前記した所定の量で塗布されるので、型締め時の樹脂流動で炭素繊維がプリプレグの厚さ方向にうねるように湾曲することが防止される。そして、型締め時の樹脂流動で炭素繊維がうねることが防止されてその直線性が確保されるので、プリプレグの表面近傍で樹脂のひけの原因となる樹脂リッチ部分の形成が抑制される。
その結果、この製造方法で得られる繊維強化複合材料は、前記したように、炭素繊維の湾曲が防止されると共に、樹脂のひけの原因となる樹脂リッチ部分の形成が抑制されるので、その表面平滑性に優れたものとなる。
これに対して、本実施形態に係る製造方法では、前記した収束剤が、予め開繊された炭素繊維(フィラメントの束)に前記した所定の量で塗布されるので、型締め時の樹脂流動で炭素繊維が分繊化する。つまり、炭素繊維のフィラメントが炭素繊維の端部側になるほど相互の間隔が広く分かれる。その結果、本実施形態に係る製造方法は、従来の製造方法と比較して、型締めされたプリプレグ内で樹脂リッチ部分が形成されることがより効果的に抑制される。したがって、本実施形態に係る製造方法で得られる繊維強化複合材料は、その表面平滑性に優れたものとなる。
(実施例1から実施例3)
実施例1から実施例3では、炭素繊維として、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(東邦テナックス社製、HTA−12K−E30、収束幅6mm、収束厚さ0.15mm)を使用した繊維強化複合材料を製造した。この炭素繊維には、予め開繊が施された。ちなみに、開繊は、特開平11−172562号公報に記載された開繊装置に準じた開繊装置を使用して行われた。開繊後の炭素繊維の幅は16mmであり、厚さは0.06mmであった。
なお、収束剤の塗布は、炭素繊維を送出しリール側から前記した開繊装置および前記した収束剤の水溶性エマルジョンを貯留した槽をそれぞれ経由して巻取りリール側に巻き取ることによって行われた。
実施例1から実施例3のそれぞれでは、収束剤の塗布量を表1に示すように設定した。なお、この塗布量は、収束剤の水溶性エマルジョンを塗布し乾燥させた後の炭素繊維(以下、単に「収束剤を含む炭素繊維」ということがある)中の収束剤の含有率(質量%)で示す。
この比較例1では、収束剤を含む炭素繊維に含浸させる樹脂液中の炭酸カルシウムの配合量を「実施例1から実施例3」での120質量部に代えて180質量部とした以外は、「実施例1から実施例3」と同様に収束剤を含む炭素繊維を作製するとともに、この炭素繊維を使用して繊維強化複合材料を得た。収束剤の塗布量を表1に示す。
この比較例2および比較例3では、収束剤の塗布量を表1に示すように変更した以外は、「実施例1から実施例3」と同様に収束剤を含む炭素繊維を作製するとともに、この炭素繊維を使用して繊維強化複合材料を得た。
表1に示すように、収束剤の塗布量が3質量%〜10質量%の炭素繊維を使用して作製された繊維強化複合材料(実施例1から実施例3)は、炭素繊維の湾曲がなく、硬化性樹脂の含浸状態も良好であった。また、プリプレグを作製するために含浸機に送出す炭素繊維には、毛羽立ちが認められなかった。これに対し、収束剤の塗布量が3質量%未満の炭素繊維(比較例1および比較例2)には、毛羽立ちが認められた。そして、収束剤の塗布量が最も少ない炭素繊維を使用して作製された繊維強化複合材料(比較例1)は、炭素繊維が湾曲していた。
また、収束剤の塗布量が10質量%を超える炭素繊維を使用して作製された繊維強化複 合材料(比較例3)は、炭素繊維に対する硬化性樹脂の含浸が不充分となって、繊維強化複合材料の表面に凹凸が生じた。
ここでの実施例および比較例では、表2に示す質量平均分子量の収束剤を使用し、収束剤の塗布量を表2に示すように設定した以外は、「実施例1から実施例3」と同様に収束剤を含む炭素繊維を作製するとともに、この炭素繊維を使用して自動車の外板を模擬した繊維強化複合材料を得た。
表2に示すように、質量平均分子量が1000以上、10000以下の収束剤を含む炭素繊維を使用した繊維強化複合材料(実施例4から実施例11)は、その表面の状態が良好で凹凸が認められず、表面粗さRaおよび表面のうねりが小さいことが確認された。
そして、質量平均分子量が1000以上、10000以下の収束剤を含む炭素繊維を使用した繊維強化複合材料(実施例4から実施例11)は、表面平滑性に優れることが確認された。
また、図5(a)に示すように、実施例5で得られた繊維強化複合材料の表面は、その凹凸高さが金型での対応した凹凸高さとほぼ同じであった。
これに対し、比較例4で得られた繊維強化複合材料の表面は、図5(b)に示すように、樹脂リッチ部分でひけを形成したと考えられる凹みが形成されていた。
以上のことから、実施例に係る繊維強化複合材料の表面平滑性は、比較例に係る繊維強化複合材料の表面平滑性よりも優れていることが確認された。
11 治具
Claims (3)
- 予め開繊した炭素繊維に、質量平均分子量が1000〜10000の収束剤を含有率が3〜10質量%となるように塗布する工程と、
前記収束剤を塗布した前記炭素繊維に硬化性樹脂を含ませてプリプレグを得る工程と、
前記プリプレグを所定の型内で型締めし、この型締め時の前記硬化性樹脂の流動により前記炭素繊維を分繊化し硬化する工程と、
を有することを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法。 - 前記収束剤は、エポキシ系樹脂またはビニルエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
- 予め開繊した炭素繊維に、質量平均分子量が1000〜10000の収束剤を3〜10質量%となるように塗布した炭素繊維と、硬化性樹脂とを含むプリプレグを所定の型内で型締めし、この型締め時の前記硬化性樹脂の流動により前記炭素繊維を分繊化し硬化させたことを特徴とする繊維強化複合材料。
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