JP2005290614A - 炭素繊維ストランド - Google Patents

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Abstract

【課題】 繊維軸方向の引張強度に優れ、繊維軸に対して垂直方向の層間破壊靭性に優れた炭素繊維強化樹脂複合材料が得られる炭素繊維ストランドを提供する。
【解決手段】 分子量50〜1000の低分子量エポキシ樹脂と、分子量3000〜10000の高分子量エポキシ樹脂とを質量比8.5:1.5〜6.5:3.5で混合してなる2成分系エポキシ樹脂を50質量%以上含有するサイズ剤を0.3〜5.0質量%付着してなる炭素繊維ストランド。低分子量エポキシ樹脂、高分子量エポキシ樹脂は共に、分子内に下記化学構造(a)又は(b)
【化1】
Figure 2005290614

を有するものが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂の強化材に好適な炭素繊維ストランドに関する。
炭素繊維は他の繊維と比較して強度や弾性率が高く、軽いという特徴を有するため、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の強化材として多用されている。この炭素繊維で強化した複合材料は、軽量で高強度であるので、航空宇宙産業を始めとし、各種の産業に広く利用されている。
熱硬化性樹脂系の複合材料を製造する方法としては、中間基材であるプリプレグを用いて賦形成型する方法がある。更に、炭素繊維ストランドを用いて引抜成形、レジントランスファーモールディング(RTM)法、フィラメント・ワインディング(FW)法、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)法、バルク・モールディング・コンパウンド(BMC)法、ハンドレイアップ法などによっても熱硬化性樹脂系の複合材料を製造できる。
熱硬化性樹脂系複合材料の製造に用いられる熱硬化性のマトリックス樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。特にエポキシ樹脂は、耐熱性に優れ、良好な物性を示す複合材料が得られるので好ましく使用される。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラグリシジルアミン、トリグリシジルアミン等の多官能エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂が接着性、物性等に優れ万能であるためマトリックス樹脂として広く使用されている。
炭素繊維ストランドを用いて複合材料を製造する際には、その製造工程において、炭素繊維ストランドはガイド等で擦れることにより毛羽が生じやすく、取扱い性が悪くなる。この問題を避けるため、通常、炭素繊維ストランドにサイズ剤を付与し、表面をサイズ剤でコートすることにより、ストランドの収束性を高め、耐擦過性や取扱い性を向上させる処理がなされている。
サイズ剤は一般的にマトリックス樹脂との接着性を考慮して選択される。例えば、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂の場合はエポキシ樹脂をサイズ剤に使用し(特許文献1、2)、マトリックス樹脂が不飽和マトリックス樹脂の場合はビニルエステル樹脂をサイズ剤に使用する。しかし、マトリックス樹脂をそのままサイズ剤として選択する場合、サイズ剤と炭素繊維との接着性は低く、複合材料の物性を十分に高めることは困難である。
一方、サイズ剤と炭素繊維との接着性を改善させることを目的として、炭素繊維の表面官能基と反応する可能性がある極性基を有するサイズ剤が提案されている(特許文献3、4、5、6)。これらのサイズ剤を使用した複合材料は、炭素繊維―マトリックス樹脂間の接着性指標の一つである層間剪断強度(ILSS)の測定値において優れた値を示している。しかし、これらのサイズ剤を用いて製造した複合材料は、繊維軸方向に張力がかかると、炭素繊維全体に張力が分散すること無く比較的少数の炭素繊維に応力が集中してその少数の炭素繊維が破断する。この破断は順次繰り返され、結果的に複合材料の炭素繊維全部を破壊することになり、繊維軸方向の引張強度は期待するほど大きくならないのが現状である。
特公昭62−56266号公報(第1欄27行〜第2欄第2行) 特開平7−197381号公報(段落番号(0038)) 特開昭56−167715号公報(第2頁右上欄第5〜12行) 特開昭63−50573号公報(第3頁第9〜19行) 特開平11−93078号公報(段落番号(0020)) 特開2001−20181号公報(請求項1)
本発明の目的は、繊維軸方向の引張強度に優れ、かつ層間のもろさの指標となる層間破壊靭性に優れた複合材料を製造することができる炭素繊維ストランドを提供することにある。
本発明は鋭意研究を行った結果、低分子量エポキシ樹脂と高分子量エポキシ樹脂からなる2成分系エポキシ樹脂を含有するサイズ剤を使用することにより、繊維軸方向の引張強度と繊維軸方向に対して垂直方向の層間破壊靭性に優れる複合材料が得られることを見出し本発明を完成するに到った。
上記課題を解決する本発明は、以下に記載するものである。
〔1〕 分子量50〜1000の低分子量エポキシ樹脂と、分子量3000〜10000の高分子量エポキシ樹脂とを質量比8.5:1.5〜6.5:3.5で混合してなる2成分系エポキシ樹脂を50質量%以上含有するサイズ剤を0.3〜5.0質量%付着してなる炭素繊維ストランド。
〔2〕 高分子量エポキシ樹脂が、分子内に下記化学構造(a)又は(b)
Figure 2005290614
を有する〔1〕に記載の炭素繊維ストランド。
〔3〕 サイズ剤が、乳化剤を10〜50質量%含有する〔1〕又は〔2〕に記載の炭素繊維ストランド。
〔4〕 ストランドを構成する炭素繊維の単繊維数が1000〜50000本である〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の炭素繊維ストランド。
〔5〕 風合い度が0.3〜1.5MPaである〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の炭素繊維ストランド。
〔6〕 ストランドを構成する炭素繊維のX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.05〜0.3である〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の炭素繊維ストランド。
本発明の炭素繊維ストランドは、サイズ剤の必須成分として、マトリックス樹脂との接着性が高い低分子量エポキシ樹脂と、複合材料に靭性を付与する高分子量エポキシ樹脂の2成分系からなるエポキシ樹脂を含有する。従って、本発明の炭素繊維ストランドを用いれば、繊維軸方向の引張強度と、層間のもろさの指標となる層間破壊靭性が高い複合材料を得ることができる。
本発明の炭素繊維ストランドは、分子量50〜1000の低分子量エポキシ樹脂と、分子量3000〜10000の高分子量エポキシ樹脂の2成分からなるエポキシ樹脂を必須成分とするサイズ剤を付着してなる。
低分子量エポキシ樹脂の構造としては、分子量が50〜1000のエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、サイズ剤とマトッリクス樹脂との相溶性を高めるため、分子内に下記化学構造(a)又は(b)を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
Figure 2005290614
低分子量エポキシ樹脂の好ましい分子量は300〜900である。
高分子量エポキシ樹脂の構造についても分子量が3000〜10000のエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、複合材料としたときに高い耐熱性を付与するため、低分子量エポキシ樹脂と同様に分子内に上記化学構造(a)又は(b)を有していることが好ましい。
高分子量エポキシ樹脂の好ましい分子量は3000〜8000である。
サイズ剤に含まれるエポキシ樹脂の含有量は、低分子量エポキシ樹脂と高分子量エポキシ樹脂を合わせた合計で50質量%以上とするが、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%である。低分子量エポキシ樹脂と高分子量エポキシ樹脂の配合比は、質量比で8.5:1.5〜6.5:3.5とするが、好ましくは8:2〜7:3である。高分子量エポキシ樹脂に対する低分子量エポキシ樹脂の含有量が前記範囲より少ないと、サイズ剤とマトリックス樹脂との接着性が低減する。また、低分子量エポキシ樹脂に対する高分子量エポキシ樹脂の含有量が少ないと、本発明の炭素繊維ストランドを使用して得られる複合材料に十分な靭性や耐衝撃性を付与することができない。
低分子量エポキシ樹脂は、炭素繊維を強化材とする複合材料のマトリックス樹脂として汎用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂との濡れ性が良好である。このため、低分子量エポキシ樹脂を含有するサイズ剤を使用した炭素繊維ストランドは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料とした場合に、とりわけマトリックス樹脂との高い接着性を示す。また、サイズ剤に高分子量エポキシ樹脂を配合した炭素繊維ストランドを使用した複合材料は、優れた耐衝撃性を示す。これは、サイズ剤に高分子量エポキシ樹脂を配合することにより、炭素繊維ストランドとマトリックス樹脂との間に高分子量エポキシ樹脂が存在することとなるため、複合材料の靭性が向上するためであると思われる。これらの異なる性質を有する二つの成分をサイズ剤に配合することにより、マトリックス樹脂と炭素繊維ストランドとの接着性と、耐衝撃性に優れた複合材料を得ることができるものと本発明者は考えている。
サイズ剤には、上記エポキシ樹脂の他、乳化剤を配合することが好ましい。乳化剤としては公知のものが使用できるが、ノニオン系乳化剤を用いることが好ましい。ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、単一鎖長ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのエーテル型;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油及び硬化ひまし油などのエーテルエステル型;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどのエステル型等の乳化剤を挙げることができる。これらの乳化剤は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
サイズ剤における乳化剤の含有量は、50質量%以下であるが、50〜5質量%とすることが好ましく、30〜10質量%とすることがより好ましい。
サイズ剤には、炭素繊維の集束性をより向上させるため、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド樹脂等のエポキシ樹脂以外の樹脂を本発明の効果を損なわない範囲内で加えても良い。これらの樹脂の含有量は、通常30質量%以下である。
さらに、炭素繊維の取扱い性や、耐擦過性、耐毛羽性を高め、マトリックス樹脂の含浸性を向上させるため、サイズ剤には公知の添加剤や補助成分が含まれていても良い。添加剤や補助成分としては、分散剤、界面活性剤、平滑剤、安定剤等を挙げることができる。
本発明の炭素繊維ストランドは、炭素繊維フィラメントを上記サイズ剤を付着させて束ねたものである。そのフィラメント数は1束当たり1000〜50000本が好ましい。
本発明の炭素繊維ストランドは、サイズ剤の付着量を炭素繊維ストランド全質量に対して0.3〜5.0質量%とする。サイズ剤の付着量が0.3質量%未満の場合は、本発明の効果が得られないばかりでなく、炭素繊維の集束性も劣るものとなる。一方、サイズ剤の付着量が5.0質量%を超える場合は、炭素繊維ストランドの開繊性が劣るものとなり、炭素繊維ストランドに対するマトリックス樹脂の含浸性が低下するので、マトリックス樹脂との良好な接着性が得られない。
炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維の原料としては特に限定するものではなく、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等が例示できる。これらの炭素繊維のうち、取り扱い性能、製造工程通過性能に適したPAN系炭素繊維が特に好ましい。ここで、PAN系炭素繊維は、アクリロニトリル構造単位を主成分とし、イタコン酸、アクリル酸、アクリルエステル等のビニル単量体単位を10モル%以内で含有する共重合体を炭素繊維化したものである。
本発明の炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維は、X線光電子分光法(XPS)により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.05〜0.3であることが好ましい。表面酸素濃度O/Cが0.05未満の場合はマトリックス樹脂との接着性が劣り、複合材料の物性が低下する原因となりやすい。一方、表面酸素濃度O/Cが0.3を超える場合は炭素繊維自体の強度が低下する傾向がある。
炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cは、炭素繊維に表面処理を施すことにより上記の好ましい範囲とすることができる。
表面処理としては、液相処理、気相処理等を挙げることができる。本発明においては、生産性、処理の均一性、安定性等の観点から、液相電解表面処理が好ましい。
表面処理を経た炭素繊維は、充分に洗浄し電解質を除去した後、前述したサイズ剤を施す。サイズ剤の付与は、スプレー法、液浸法、転写法等、既知の方法を採択し得るが、汎用性、効率性、付与の均一性に優れるので、液浸法が好ましい。
炭素繊維束をサイズ剤液に浸漬する際には、サイズ剤液中に設けられた液没ローラ又は液浸ローラを介して、開繊と絞りを繰り返し、ストランドの芯までサイズ剤を含浸させることが好ましい。
サイズ剤付与処理は、アセトン等の溶剤にサイズ剤成分を溶解させた溶液中に炭素繊維を浸漬する溶剤法や、乳化剤を含有するサイズ剤を水系エマルジョンとし、炭素繊維を浸漬するエマルジョン法が可能である。人体への安全性及び自然環境の汚染を防止する観点からエマルジョン法が好ましい。
サイズ剤付与処理後、炭素繊維束は通常乾燥工程により、サイズ剤付与時の分散媒であった水の乾燥や脱溶剤を行う。乾燥工程は乾燥炉を通過させる方法、加熱したローラに接触させる方法等、既知の方法が採択し得る。汎用的な水系エマルジョンに浸漬した場合、いずれの方法を用いる場合も乾燥温度は通常80℃〜200℃に設定する。また、乾燥工程の後、200℃以上の熱処理を行ってもよい。
本発明の炭素繊維ストランドは、後述する実施例記載の方法により測定する風合い度の値を、0.3〜1.5MPaとすることが好ましく、0.6〜1.3MPaとすることがより好ましい。風合い度が0.3MPa未満では炭素繊維ストランドにまとまりが無く、加工の際にローラーなどで擦れて単糸切れなどが生じやすくなる。1.5MPaを超えると、集束性が高くなりすぎて樹脂の含浸性が悪くなる傾向がある。炭素繊維ストランドの風合い度は、低分子量エポキシ樹脂と高分子量エポキシ樹脂の分子量や混合比を調整することにより上記範囲とすることが可能である。
本発明の炭素繊維ストランドは、樹脂の強化材として好適であり、複合材料の物性を高めるものである。複合材料に用いるマトリックス樹脂は特に制限されるものではないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラグリシジルアミン、トリグリシジルアミン等の多官能エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いた場合には本発明の効果がより発揮でき好ましい。
複合材料における本発明の炭素繊維ストランドの含有量としては、複合材料全質量中40〜80質量%とすることが好ましい。
各物性値は、以下の方法により測定した。
<表面酸素濃度比O/C>
日本電子社製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXを用いて測定を行った。予めサイズ剤を除去した炭素繊維を10-6Paに減圧した測定室中に入れ、Mgを対極として電子線加速電圧10kV、10mAの条件で発生させたX線を照射した。炭素原子、酸素原子より発生する光電子のスペクトルからその面積比を算出した。
<風合い度測定>
大栄科学精器製作所社製ハイドロメーター HOM−2を用いて以下の条件で測定した。
測定サンプル:20cm長の炭素繊維ストランド
スリット幅:10mm
測定方法:サンプルをサンプル中央部がスリット上になるように試料台に載せた。このとき、スリットの幅方向がサンプルの長さ方向になるようにした。次に厚さ2mm、長さ200mmの金属プレートでこのサンプルをスリット間に深さ10mmまで10mm/secの速さで垂直に押し込み、このときの金属プレートに負荷する最大荷重を測定した。測定は異なるサンプルについて5回行い、その平均値を測定値(F)とした。
ここで風合い度は下記式(1)で定義される。
Figure 2005290614
F:ハイドロメーターの測定値[gf]
S:炭素繊維ストランド断面積[mm2
*S:炭素繊維フィラメントの断面積(s)×フィラメント数
*s:断面顕微鏡写真(1万倍)により、50本のフィラメントの平均半径を(r)とし、πr2より求めた。
<0°引張試験>
チバガイギー社製EPN1138(商品名:フェノールノボラック型エポキシ樹脂)70質量部、ジャパンエポキシレジン社製エピコート834(商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂)12質量部、同社製エピコート1002(商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂)18質量部を混合した樹脂組成物に、更に硬化剤としてジャパンエポキシレジン社製DICY(ジシアンジアミド)5質量部、硬化促進剤として保土ヶ谷化学社製DCMU(3−〔3,4−ジクロロフェニル〕−1,1−ジメチルウレア)10質量部を加え、プリプレグ用樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物をフィルムコーターを用いて離型紙上に塗布し、樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルム上にサイズ処理した炭素繊維ストランドを等間隔に引き揃え並べた後、加熱して樹脂を該炭素繊維ストランドに含浸させ、炭素繊維目付150g/m2、樹脂含浸率37質量%の一方向プリプレグを作製した。
作製した一方向プリプレグを成形後の厚みが1mmとなるように積層し、金型に入れ、180℃で2時間、686kPaの圧力で成形し一方向の炭素繊維強化成形板(CFRP板)を作製した。このCFRP板の0°(繊維軸方向)引張試験をASTM−D−3039に準拠し、室温で行った。
<層間破壊靭性試験>
ジャパンエポキシレジン社製EP604(商品名:テトラグリシジルアミノジフェニルメタン樹脂)40質量部、住友化学社製ELM−120(商品名:m−アミノフェノル系エポキシ樹脂)40質量部、を混合した樹脂組成物に、更に硬化剤として住友化学社製3,3’−DDS(商品名:3,3’−ジアミノジフェニルスルホン)20質量部を加え、プリプレグ用樹脂組成物を作製した。
この樹脂組成物をフィルムコーターにより離型紙の上に塗布し、樹脂フィルムとした。この樹脂フィルム上にサイズ処理した炭素繊維ストランドを等間隔に引き揃え並べた後、加熱して樹脂を該炭素繊維ストランドに含浸させ、炭素繊維目付150g/m2、樹脂含浸率37質量%の一方向プリプレグを作製した。
作製した一方向プリプレグを成形後の厚みが3mmとなるように積層し、金型に入れ、180℃で2時間、686kPaの圧力で成形し一方向の炭素繊維強化成形板(CFRP板)を作製した。このCFRP板のGIc(層間破壊靭性)をK−7086に準拠して室温にて測定を行った。
実施例1〜9、比較例1〜10
X線光電子分光法により測定した炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cが0.2である未サイジングの炭素繊維束(東邦テナックス社製ベスファイト、24000フィラメント)をサイズ浴に連続的に浸漬させた。サイズ浴はエポキシ樹脂100質量部をPO/EOポリエーテル(レオコンED274R、ライオン社製)20質量部で乳化した水エマルジョンを用いて行った。
サイズ浴を行った炭素繊維束を150℃中で3分間熱処理し、水分を乾燥除去して炭素繊維ストランドを得た。各炭素繊維ストランドにおけるサイズ剤の付着量と、炭素繊維に付着したサイズ剤に含まれる各成分の割合を表1に示す。更に、得られた炭素繊維ストランドを用いて測定した風合い度、0°引張強度、層間破壊靭性試験の結果を表1に示す。なお、実施例1〜9、比較例1〜10で用いた炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維フィラメントの平均半径は全て0.0070mmであった。
サイズ剤に配合したエポキシ樹脂EP828、EP807、EP191P、EP1001、EP1002、EP4004P、EP4007(いずれもジャパンエポキシレジン社製)の構造は、以下の通りである。
Figure 2005290614
Figure 2005290614
Figure 2005290614
Figure 2005290614
Figure 2005290614
表1に示すように、実施例における組み合わせはCFRP板の引張強度・GIcが高いものであった。逆に、表2に示すように、比較例1、3、5、6はGIcが高いものの引張強度が低いものであった。比較例2、7は、CFRP板のGIc・引張強度が共に劣り、比較例4に関しては引張強度は高いものの、GIcが低かった。また表3において、低分子量単一成分では比較例8、9に示すようにGIcは良いものの引張強度は低く、また比較例10に示すように高分子量成分単体ではGIc・引張強度共に低いものであった。

Claims (6)

  1. 分子量50〜1000の低分子量エポキシ樹脂と、分子量3000〜10000の高分子量エポキシ樹脂とを質量比8.5:1.5〜6.5:3.5で混合してなる2成分系エポキシ樹脂を50質量%以上含有するサイズ剤を0.3〜5.0質量%付着してなる炭素繊維ストランド。
  2. 高分子量エポキシ樹脂が、分子内に下記化学構造(a)又は(b)
    Figure 2005290614
    を有する請求項1に記載の炭素繊維ストランド。
  3. サイズ剤が、乳化剤を10〜50質量%含有する請求項1又は2に記載の炭素繊維ストランド。
  4. ストランドを構成する炭素繊維の単繊維数が1000〜50000本である請求項1乃至3のいずれかに記載の炭素繊維ストランド。
  5. 風合い度が0.3〜1.5MPaである請求項1乃至4のいずれかに記載の炭素繊維ストランド。
  6. ストランドを構成する炭素繊維のX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.05〜0.3である請求項1乃至5のいずれかに記載の炭素繊維ストランド。
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