JP5259256B2 - バナジウム回収装置 - Google Patents

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Description

本発明は、石油系燃料の燃焼によって生じるバナジウム含有の焼却灰からバナジウムを回収するバナジウム回収装置に関する。
ボイラ燃料として、石炭に替わる燃料として多種多様の燃料の適用が求められており、特に、品位の低い石油コークスの燃料としての適用が求められている。石油コークス中に含まれるバナジウムやアルカリ金属等は、低融点化合物生成によって伝熱管へのデポ付着や腐蝕という問題を引き起こす可能性がある。また、バナジウムは工具鋼等に添加されて使用される希少金属の一種でもある。そこで、ボイラから排出される焼却灰からバナジウムを回収する取り組みが従来からなされている。
例えば、特許文献1には、石油系燃料焼却灰を水などに浸して強酸の水性スラリーとし、この水性スラリーを固液分離した溶液を希釈し、アンモニアを添加して中性ないし弱アルカリ性に調整してバナジウムを析出させ、析出したバナジウムを固液分離するという各工程を経てバナジウムを回収する方法及び装置が記載されている。
特開2002−166244号公報
しかしながら、従来の装置では、ボイラ等の燃焼炉の安全運転のために湿式処理によりバナジウムを回収しており、プロセスの複雑化に伴ってバナジウムの効率的な回収は困難であった。
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、焼却灰からバナジウムを効率的に回収するバナジウム回収装置を提供することを目的とする。
本発明は、石油系燃料の燃焼によって生じるバナジウム含有の焼却灰からバナジウムを回収するバナジウム回収装置において、焼却灰と鉄化合物との供給部と、供給部から供給された焼却灰と鉄化合物とを加熱して、バナジウムフェライトを生成する加熱炉と、加熱炉から排出された排出物のうち、バナジウムフェライトを含む磁性物を磁力選別によって非磁性物から分離する磁選手段と、を備えることを特徴とする
焼却灰及び鉄化合物を、加熱炉で例えば600℃〜800℃程度にまで加熱すると、焼却灰中のバナジウムは、加熱された鉄化合物の表面に接触することでバナジウムフェライトに変換される。バナジウムフェライトは磁性を帯びており、加熱炉から排出された排出物のうち、バナジウムフェライトを含む磁性物は、磁選手段に磁力選別されて非磁性物から分離される。その結果として、焼却灰中のバナジウムは、バナジウムフェライトとして効率よく回収でき、資源の有効利用が可能になる。さらに、焼却灰中のバナジウムは伝熱管などのデポ付着や腐食を引き起こす虞があるが、焼却灰から効率良くバナジウムを回収することで、バナジウム除去後の非磁性物を再利用してもデポ付着や腐食という問題は生じ難くなり、非磁性物を再利用できる適用範囲が広がる。
さらに、加熱炉は、筒状で軸線回りに回転する焙焼炉と、焙焼炉から排出された飛灰を二次燃焼させる二次燃焼室とを備えたキルン回転炉であると好適である。焼却灰と鉄化合物とを焙焼炉で加熱することで、焼却灰と鉄化合物との攪拌混合は促進され、焼却灰と鉄化合物との接触効率は高まるため、バナジウムフェライトの生成が促進されて回収効率を向上させることができる。
さらに、供給部は、焼却灰と鉄化合物との混合物を加熱炉に供給すると好適である。焼却灰と鉄化合物とは、加熱炉で加熱される前に混合物として加熱炉に供給されるため、加熱炉内で高温になった鉄化合物が効率良く焼却灰中のバナジウムに接触し、バナジウムフェライトの生成を促進できてバナジウムの回収効率は向上する。
本発明によれば、焼却灰からバナジウムを効率的に回収できる。
以下、本発明に係るバナジウム回収装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るバナジウム回収装置の断面を概略的に示す図であり、図2は磁力選別器を概略的に示す図である。
図1に示されるように、バナジウム回収装置2は、比較的小規模の焼却炉等(以下、「ボイラ設備」という)1に適応する。バナジウム回収装置2は、ボイラ設備1での石油系燃料の燃焼によって生じる焼却灰As、すなわちフライアッシュ(「FA」ともいう)やボトムアッシュ(「BA」ともいう)とFe等の鉄化合物Feとを加熱してバナジウムフェライトVfを生成するキルン回転炉3(「ロータリーキルン」ともいう)と、焼却灰Asと鉄化合物Feとの混合物Bを定量ずつキルン回転炉3に供給する定量供給装置(供給部)4と、キルン回転炉3から排出されたバナジウムフェライトVf含有の焙焼鉱Rsのうち、バナジウムフェライトVfを含む磁性物を磁力選別によって非磁性物Nmから分離する磁力選別器(磁選手段)5と、を備えている。なお、焙焼鉱Rsは本発明の排出物に相当する。
キルン回転炉(加熱炉)3は、縦型キルンもあるが、本実施形態では横型キルンを採用している。キルン回転炉3は、焼却灰Asと鉄化合物Feとを焙焼する円筒形状の焙焼炉7と、焙焼炉7から排出される飛灰含有の排ガスを二次燃焼する二次燃焼室(「二次燃焼塔」ともいう)9とを備えている。
焙焼炉7の外周には歯車10が設けられ、焙焼炉7は図示しないモータによって軸線L回りに回転する。焙焼炉7は、焼却灰Asと鉄化合物Feとの混合物Bを受入れ側Usから排出側Dsへ移動させることができるように、受入れ側Usから排出側Dsに向けて下方に傾斜されている。焙焼炉7と二次燃焼室9とは、焙焼炉7が回転可能に且つ接合部の気密が保持されるように接合されている。混合物Bを酸化焙焼した後の焙焼鉱Rsと排ガスとは、焙焼炉7の排出口から二次燃焼室9に導入され、焙焼鉱Rsは落下し、排ガスは上昇する。排ガスは、二次燃焼室9で二次燃焼された後、図示しない例えば、廃熱回収設備、排ガス冷却設備、排ガス処理設備、集塵設備を経て無害化されて排出される。
焙焼炉7の受入れ側Usの端面であるフロントウォール11には、定量供給装置4に連結される受入口が形成されている。また、フロントウォール11には、加熱手段であるバーナ13が貫通して配置されている。バーナ13は、フロントウォール11から焙焼炉7の排出側Dsに向かって火炎を放射する。バーナ13には、図示しない燃料ポンプによって燃料タンクから重油等の燃料が供給される。バーナ13には、図示しないブロアを介して燃焼用空気が供給される。
定量供給装置4は、フロントウォール11の受入口に接続されたシリンダ部4aと、シリンダ部4a内を往復動する押出部4bと、押出部4bの往復動を駆動制御する供給器4cと、シリンダ部4a内に連通するホッパ4dとを備えている。ホッパ4dには、ボイラ設備1からの焼却灰Asと鉄化合物Feとが投入される。ホッパ4d内に堆積する焼却灰Asと鉄化合物Feとは、シリンダ部4a内に落下する際に混合され、その混合物Bは、押出部4bの往復動によって定量ずつが焙焼炉7内に供給される。定量供給装置4は、スクリューコンベヤなどによって焼却灰Asと鉄化合物Feとを攪拌混合しながら焙焼炉7内に供給する装置であってもよい。なお、焼却灰Asと鉄化合物Feとを焙焼炉7へ供給する供給部は、別々の独立した装置であってもよい。
焙焼炉7内へ供給された焼却灰Asと鉄化合物Feとの混合物Bは、供給当初からバーナ13によって加熱される。その混合物Bは、焙焼炉7内において、攪拌されながら600℃〜800℃程度まで加熱され、受入れ側Usから排出側Dsに移動する。焙焼炉7の受入れ側Usには、図示しない空気供給ラインが接続されており、焙焼炉7内で混合物Bが移動する方向と焙焼炉7に導入される空気とが並行になる。このようなガス流れを持つキルン回転炉3は並流式と呼ばれる。なお、本実施形態は並流式であるが、混合物Bの移動方向と焙焼炉7に導入される空気とが対向する向流式のキルン回転炉であってもよい。
焙焼炉7内の焼却灰As中に含まれるバナジウムは、600℃〜800℃程度まで加熱された鉄化合物Fe(Fe3)の表面に接触することでバナジウムフェライトVfに変換される。なお、バナジウムVがバナジウムフェライトVfに変換される化学変化は、xの範囲を0≦x≦1としたとき、以下の式(1)及び式(2)によって説明される。
(式1)
xV2++(3−x)Fe2++6OH-→VxFe3−x(OH)
(式2)
Fe3−x(OH)+O→VFe3−x
焙焼炉7での酸化焙焼が終了した焙焼鉱Rsには、バナジウムから変換されたバナジウムフェライトVfが含まれている。焙焼鉱Rsは焙焼炉7から二次燃焼室9に排出される。二次燃焼室9には、焙焼鉱Rsと飛翔ダストとを分離するための二股式の第1排出口9a及び第2排出口9bが設けられている。焙焼鉱Rsの出口となる第1排出口9aは、焙焼炉7側に設けられ、飛翔ダストの出口となる第2排出口9bは、二次燃焼室9の傾斜した側面側に設けられている。焙焼鉱Rsは、第1排出口9aに達し、第1排出口9aから排出される。一方、飛翔ダストは、二次燃焼室9で流速が落ちて落下し、第2排出口9bから排出される。飛翔ダストには、未燃焼分が多く含まれており、二股式の第1,第2排出口9a,9bを設けることで、飛翔ダストのみを回収でき、その飛翔ダストを再度焙焼炉7に投入するようにすることもできる。
第1排出口9aには、磁力選別器5に接続されたスクリューコンベヤ15(粉体移送部)が接続されている。スクリューコンベヤ15の入口は、第1排出口9aに接続されており、出口は磁力選別器5の磁選用ホッパ(図2参照)17に接続されている。
図2に示されるように、磁力選別器5は、焙焼鉱Rsが投入され、且つバイブレータにより振動が付与される磁選用ホッパ17と、この磁選用ホッパ17から流下する粉状のバナジウムフェライトVfを含む磁性物を吸着する左右一対の磁気ドラム19と、この磁気ドラム19の周面に摺接することで磁気ドラム19の周面に吸着された粉状のバナジウムフェライトVf(磁性物)を回収する左右一対のスクレーパ21と、磁気ドラム19の間から流下する灰分などの非磁性物Nmを回収する非磁性物回収槽23とを備えている。なお、スクレーパ21によって掻き取られたバナジウムフェライトVfは、コンベヤなどの移送手段によってバナジウムフェライト回収槽25(図1参照)に移送される。磁力選別器5では、バナジウムVをF―V原料として回収できる。一方で、非磁性物回収槽23に回収された灰分などの非磁性物Nmはセメント原料として再利用でき、また、バナジウムVの濃度が極めて少ないため、低融点化合物生成によるデポ付着や腐蝕などの問題も発生し難く、循環流動層焼却炉(CFB)などの流動媒体として再利用できる。
次に、バナジウム回収装置2を利用したバナジウム回収方法について説明する。ボイラ設備1からの焼却灰Asと鉄化合物Feとを定量供給装置4のホッパ4dに投入し、焼却灰Asと鉄化合物Feとの混合物Bを定量ずつ焙焼炉7に送り込む。焙焼炉7では、バーナ13によって混合物Bを600℃〜800℃の範囲で加熱し、焙焼炉7内でバナジウムフェライトVf含有の焙焼鉱Rsを生成する。次に、焙焼炉7内で生成された焙焼鉱Rsを二次燃焼室9に投入し、焙焼鉱Rsを飛翔ダストから分離させて磁力選別器5の磁選用ホッパ17に投入する。次に、磁力選別器5による磁気選別によってバナジウムフェライトVfを含む磁性物と非磁性物Nmとを分離し、バナジウムフェライトVfを含む磁性物を回収する。
以上のバナジウム回収装置2によれば、PH調整を伴う湿式処理でバナジウムVを回収するような装置に比べて工程も少なくて済み、バナジムウムVの効率的な回収が可能になる。特に、焼却灰Asと鉄化合物Feとの混合物Bが定量供給装置4によって焙焼炉7に供給されるため、加熱された鉄化合物FeとバナジウムVとの接触効率は向上し、バナジウムフェライトNfの生成を促進できてバナジウムVの回収効率は向上する。
特に、焼却灰Asと鉄化合物Feとは、焙焼炉7で加熱される前に混合物Bとしてキルン回転炉3の焙焼炉7に供給されているため、焙焼炉7内で高温になった鉄化合物Feが効率良く焼却灰中のバナジウムVに接触し、バナジウムフェライトVfの生成を促進できてバナジウムVの回収効率は向上する。
さらに、焼却灰As中のバナジウムVは伝熱管などへの付着や腐食を引き起こす虞があるが、焼却灰Asから効率良くバナジウムVを回収することで、バナジウムV除去後の非磁性物Nmによって伝熱管などへの付着や腐食という問題は生じ難くなり、非磁性物Nmを再利用できる適用範囲が広がる。
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、加熱炉は、バーナによって加熱するキルン回転炉に限定されず、例えば、ボイラ設備の廃熱を、スチームなどを介して対流伝熱及び熱伝導よって伝熱したり、電気ヒータなどによって加熱したりする加熱手段を備えた炉であってもよい。
本発明の第1実施形態に係るバナジウム回収装置の断面を概略的に示す図である。 本実施形態に係る磁力選別器を概略的に示す図である。
符号の説明
2…バナジウム回収装置、3…キルン回転炉(加熱炉)、7…焙焼炉、9…二次燃焼室、5…磁力選別器(磁選手段)、4…定量供給装置、As…焼却灰、Fe…鉄化合物、L…焙焼炉の軸線、Nm…非磁性物、Rs…焙焼鉱(排出物)、V…バナジウム、Vf…バナジウムフェライト。

Claims (3)

  1. 石油系燃料の燃焼によって生じるバナジウム含有の焼却灰からバナジウムを回収するバナジウム回収装置において、
    焼却灰と鉄化合物との供給部と、
    前記供給部から供給された前記焼却灰と前記鉄化合物とを加熱して、バナジウムフェライトを生成する加熱炉と、
    前記加熱炉から排出された排出物のうち、前記バナジウムフェライトを含む磁性物を磁力選別によって非磁性物から分離する磁選手段と、を備えることを特徴とするバナジウム回収装置。
  2. 前記加熱炉は、筒状で軸線回りに回転する焙焼炉と、前記焙焼炉から排出された飛灰を二次燃焼する二次燃焼室とを備えたキルン回転炉であることを特徴とする請求項1記載のバナジウム回収装置。
  3. 前記供給部は、前記焼却灰と前記鉄化合物との混合物を前記加熱炉に供給することを特徴とする請求項1または2記載のバナジウム回収装置。



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