JP5254074B2 - バナジウム回収装置及びバナジウム回収システム - Google Patents

バナジウム回収装置及びバナジウム回収システム Download PDF

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Description

本発明は、石油系燃料の燃焼によって生じる焼却灰からバナジウムを回収するバナジウム回収装置及びバナジウム回収システムに関する。
石炭に替わるボイラ燃料などとして多種多様の燃料の適用が求められており、特に、品位の低い石油コークスなどの石油系燃料の適用が求められている。また、石油系燃料の燃焼によって生じる焼却灰には、未燃のカーボンや鉄などの他に、バナジウムなどの重金属が含まれており、特に、バナジウムは工具鋼等に添加されて使用される希少金属の一種でもあるため、ボイラから排出される焼却灰からバナジウムを回収する取り組みが従来からなされている。
例えば、特許文献1には、石油系燃料焼却灰を水などに浸して強酸の水性スラリーとし、この水性スラリーを固液分離した溶液を希釈し、アンモニアを添加して中性ないし弱アルカリ性に調整してバナジウムを析出させ、析出したバナジウムを固液分離するという各工程を経てバナジウムを回収する方法及び装置が記載されている。
特開2002−166244号公報
しかしながら、従来の装置では、湿式処理によりバナジウムを回収しているため、大規模な処理施設が必要である。さらに、複雑且つ複数の工程が必要となるため、プロセスが複雑化してしまい、バナジウムの効率的な回収は困難であった。
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、石油系燃料の燃焼によって生じる焼却灰から効率よくバナジウムを回収するバナジウム回収装置及びバナジウム回収システムを提供することを目的とする。
石油系燃料には硫黄分が多く含まれており、石油系燃料の燃焼によって生じる焼却灰中にも硫黄分が多く含まれている。焼却灰中の硫黄分が硫酸マグネシウムや硫酸カルシウムなどの硫酸塩の状態で含まれている場合、焼却灰を加熱処理して硫酸塩を分解し、硫黄酸化物(SO)として除去することも可能である。しかしながら、硫酸塩の分解温度は五酸化バナジウムの融点よりも高いため、硫酸塩を分解しようとすると、焼却灰中の五酸化バナジウムが溶融してしまい、五酸化バナジウムとしての回収は困難である。発明者は、上記の逆説的な課題を克服するために鋭意検討した結果、五酸化バナジウムは炭素と反応することで四酸化バナジウムや三酸化バナジウムとなり、少なくとも、四酸化バナジウムや三酸化バナジウムの融点は、硫酸塩が分解される温度よりも高いことを見出し、本発明を想到するに至った。
すなわち、本発明は、石油系燃料の燃焼によって生じ、且つ五酸化バナジウムを含む焼却灰からバナジウムを回収するバナジウム回収装置において、焼却灰を受け入れ、焼却灰を加熱処理して四酸化バナジウム及び三酸化バナジウムの少なくとも一方を含む原料ダストを生成すると共に、焼却灰中の硫酸塩から硫黄酸化物を生成し、硫黄酸化物を含む排ガスを排出する加熱炉と、加熱炉から排出された前記原料ダストと前記排ガスとを分離して排出する排出部と、を備え、加熱炉の熱源としてプラズマトーチを用い、排出部には、原料ダストに酸素を接触させ、原料ダスト中の炭素を一酸化炭素または二酸化炭素として除去するための酸素供給部が設けられていることを特徴とする。
加熱炉の熱源としてプラズマトーチを用いると、通常の燃料燃焼バーナに比べて加熱炉内の酸素濃度を低く抑えることが可能になる。加熱炉内の酸素濃度を薄くすることで、焼却灰中の炭素が酸素と反応して一酸化炭素や二酸化炭素になる量を抑えることができ、結果として、五酸化バナジウムが炭素に反応して三酸化バナジウムや四酸化バナジウムになる量を増やすことができる。加熱炉内に三酸化バナジウムや四酸化バナジウムを生成できれば、三酸化バナジウムや四酸化バナジウムを溶融させることなく、焼却灰中の硫酸塩を分解して硫黄酸化物とすることができ、硫黄酸化物を排ガスとして排出することができるので、原料ダスト中の硫黄分を効果的に分離除去できる。さらに、固体状の三酸化バナジウムや四酸化バナジウムを含む原料ダストを回収できるようになるため、バナジウムの効率的な回収が可能になる。さらに、本発明の排出部には、原料ダストに酸素を接触させ、原料ダスト中の炭素を一酸化炭素または二酸化炭素として除去するための酸素供給部が設けられており、原料ダスト中の炭素を除去できるようになるため、原料ダストの品質を向上できる。
さらに、プラズマトーチへの供給ガスとして空気、窒素ガス、アルゴンガスの少なくとも一種類を用いると好適である。空気の約八割は窒素であり、酸素は約二割程度しか含まれていないため、プラズマトーチへの供給ガスとして利用しても加熱炉内の酸素の増減という点での影響は少なく、また、空気は確保し易く、また扱い易い点からも有利である。また、窒素ガスやアルゴンガスであれば、加熱炉内の酸素濃度を確実の低減できる。
さらに、加熱炉内で焼却灰を加熱処理する温度は、硫酸塩の分解温度以上で、且つ、四酸化バナジウム及び三酸化バナジウムの融点未満であると好適である。硫酸塩の分解を図りながら、固体状の四酸化バナジウムまたは三酸化バナジウムを含む原料ダストを回収することができる。
また、本発明に係るバナジウム回収システムは、上記の各バナジウム回収装置と、石油系燃料を燃焼させて得た熱を水に伝えて蒸気を生成すると共に、石油系燃料の燃焼後に生じた焼却灰をバナジウム回収装置の加熱炉に供給するボイラ本体と、ボイラ本体で生成された飽和蒸気を更に加熱して過熱蒸気とする蒸気過熱手段と、ボイラ本体での石油系燃料の燃焼によって生じた燃焼ガスを受け入れ、燃焼ガスに含まれる硫黄分を湿式にて除去する脱硫処理手段と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、ボイラ本体で生じた焼却灰中の硫酸塩を分解して硫黄酸化物とし、排ガスとして排出することで原料ダスト中の硫黄分を分離除去できる。さらに、固体状の三酸化バナジウムや四酸化バナジウムを含む原料ダストを回収できるようになるため、バナジウムの効率的な回収が可能になる。
さらに、加熱炉から排出される高温の排ガスを蒸気過熱手段に熱源として供給する排ガス返送ラインを備えると好適である。この構成によれば、加熱炉から排出された排ガスの熱エネルギーを有効利用できる。
また、加熱炉から排出される排ガスを脱硫処理手段に供給する排ガス移送ラインを更に備えると好適である。ボイラ本体から排出される燃焼ガス中の硫黄酸化物と、加熱炉から排出された排ガス中の硫黄酸化物とを脱硫処理手段で合わせて除去でき、燃焼ガスや排ガスを大気に放出する際の環境への影響を効率よく低減できる。
さらに、本発明は、過熱蒸気を利用して発電する発電手段を更に備え、発電手段で発電された電力の少なくとも一部は、プラズマトーチに供給されると好適である。発電手段で発電された電力の少なくとも一部を利用できるので、別の発電施設から電力の供給を受ける必要はなくなる。
本発明によれば、石油系燃料の燃焼によって生じる焼却灰から効率よくバナジウムを回収することができる。
本発明の実施形態に係るバナジウム回収システムを模式的に示す説明図である。 本発明の実施形態に係るキルン回転炉の断面を概略的に示す図である。
以下、本発明に係るバナジウム回収システムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るバナジウム回収システムを概略的に示す説明図であり、図2は、キルン回転炉の断面を概略的に示す図である。
図1に示されるように、バナジウム回収システム1は、発電用のボイラ設備3と、ボイラ設備3から排出された焼却灰Aからバナジウムを含む原料ダストDを回収するためのキルン回転炉5と、を備えている。キルン回転炉5は、バナジウム回収装置に相当する。
ボイラ設備3は、石油コークス、アスファルト及びタールピッチなどの重油質残渣(「減圧蒸留残油」ともいう)または重油などの石油系燃料を燃焼し、密閉容器内の水を加熱して蒸気を生成する燃焼塔(ボイラ本体)7と、燃焼塔7で生じた燃焼ガス(以下、「煙道ガス」という)から固形物を分離するサイクロン分離器9と、燃焼塔7で生成された飽和蒸気を、煙道ガスからの熱によって更に加熱して過熱蒸気を生成する蒸気過熱器(蒸気過熱手段)11と、蒸気過熱器11から排出される煙道ガス中の煤塵を除去するバグフィルタ13と、バグフィルタ13を通過した煙道ガス中の硫黄酸化物(SO)を、湿式にて除去する脱硫処理設備(脱硫処理手段)15と、を備えている。この種のボイラ設備3はCFBボイラとも呼ばれる。
燃焼塔7内には、石油系燃料に含まれる硫黄(S)を除去する吸着材料としての石灰石が投入される。燃焼塔7には、下部から空気が供給され、石油系燃料及び石灰石を含む固形物は流動化され、可燃性材料からなる流動床が形成される。流動床の形成により、石油系燃料の燃焼が促進される。燃焼の結果として生じる煙道ガスは、固形物の一部を随伴しながら燃焼塔7内を上昇する。
サイクロン分離器9は、燃焼塔7に隣接して配置されており、燃焼塔7から排出された煙道ガス及び煙道ガスに随伴された粒状固形物を受け入れ、遠心分離作用によって煙道ガスと粒状固形物とを分離し、粒状固形物は燃焼塔7に戻し、煙道ガスは蒸気過熱器11に送り込む。
蒸気過熱器11では、煙道ガスからの熱を燃焼塔7で生成された蒸気で回収し、過熱蒸気を生成する。また、バグフィルタ13は、蒸気過熱器11から排出された煙道ガス中の煤塵を捕捉し、バグフィルタ13を通過した煙道ガスは、脱硫処理設備15に送り込まれる。
脱硫処理設備15は、煙道ガスを受け入れ、煙道ガス中の硫黄酸化物(硫黄分)を湿式にて除去する設備である。例えば、脱硫処理設備15は、煙道ガスを、アルカリ金属を含む水溶液と接触させて硫黄酸化物を液相中に溶解させ、液相内中和反応によって脱硫を行う設備である。湿式の脱硫処理設備15とすることで、乾式の脱硫処理設備15に比べて、高脱硫率が得られる。脱硫処理設備15から排出された煙道ガスは、周囲環境に与える影響を抑えるために無害化された後に、大気に放出される。
キルン回転炉(バナジウム回収装置)5は、ボイラ設備3に併設されている。ボイラ設備3の燃焼塔7から排出された焼却灰Aは、キルン回転炉5に供給される。焼却灰A中には、鉄の他にバナジウム(V)やニッケル(Ni)などの重金属が含まれ、特に、バナジウムは五酸化バナジウム(V)の状態で含まれている。また、燃焼塔7内には、脱硫のための石灰石が投入されているため、焼却灰A中には、硫酸塩として硫酸カルシウム(CaSO)が含まれている。なお、本実施形態では、焼却灰Aとは別途に酸化マグネシウム(MgO)をキルン回転炉5に供給している。なお、燃焼塔7からキルン回転炉5までの焼却灰Aの搬送は、コンベヤその他の搬送手段によって適宜に実行される。
キルン回転炉5は、縦型キルンもあるが、本実施形態では横型キルンを採用している。図2に示されるように、キルン回転炉5は、焼却灰Aと酸化マグネシウム(MgO)とを加熱処理する円筒形状の炉本体(加熱炉)17と、焼却灰A及び酸化マグネシウムを受け入れ、定量ずつを炉本体17に供給する定量供給装置19と、炉本体17から排出される硫黄酸化物(SO)を含む排ガスを二次燃焼する二次燃焼室(「二次燃焼塔」ともいう)21とを備えている。
炉本体17の外周には歯車が設けられ、炉本体17は図示しないモータによって軸線L回りに回転する。炉本体17は、焼却灰Aと酸化マグネシウムとの混合物を受入れ側Usから排出側Dsへ移動させることができるように、受入れ側Usから排出側Dsに向けて下方に傾斜されている。炉本体17と二次燃焼室21とは、炉本体17が回転可能に且つ接合部の気密が保持されるように接合されている。
炉本体17の受入れ側Usの端面であるフロントウォール17aには、定量供給装置19に連結される受入口が形成されている。また、フロントウォール17aには、加熱源としてのプラズマトーチ23が貫通して取り付けられている。
定量供給装置19は、フロントウォール17aの受入口に接続されたシリンダ部19aと、シリンダ部19a内を往復動する押出部19bと、押出部19bの往復動を駆動制御する供給器19cと、シリンダ部19a内に連通するホッパ19dとを備えている。ホッパ19dには、燃焼塔7から排出された焼却灰Aと酸化マグネシウムの粉末とが投入される。ホッパ19d内に堆積する焼却灰Aと酸化マグネシウムとは、シリンダ部19a内に落下し、押出部19bの往復動によって定量ずつが炉本体17内に供給される。定量供給装置19は、スクリューコンベヤなどによって焼却灰Aと酸化マグネシウムとを攪拌混合しながら炉本体17内に供給する装置であってもよい。なお、焼却灰Aと酸化マグネシウムとを炉本体17へ供給する供給部は、別々の独立した装置であってもよい。
プラズマトーチ23は、例えば、非移行型の直流プラズマトーチ23であり、筒状の筐体(シュラウド)の内部には中空円筒状の陽極部と陰極部とが配置されており、陽極部と陰極部との間でアークが発生する。陽極部と陰極部との間には、空気、アルゴンまたは窒素などのプラズマガスが供給され、プラズマジェットを発生させて炉本体17内を加熱する。プラズマトーチ23には、プラズマガスをプラズマトーチ23に供給するガス供給装置25と、所定の電位をプラズマトーチ23にかける発電装置27とが接続されている。
炉本体17内へ供給された焼却灰Aと酸化マグネシウムとは、供給当初からプラズマトーチ23によって加熱される。焼却灰Aは、炉本体17内において、攪拌されながら900℃〜1000℃程度まで加熱され、受入れ側Usから排出側Dsに移動する。プラズマトーチ23を加熱源として利用することで、燃料燃焼バーナに比べて炉本体17内の酸素濃度を低く抑えることが可能になる。加熱炉内の酸素濃度を薄くすることで、焼却灰A中の未燃カーボン(炭素)が酸素と反応して一酸化炭素や二酸化炭素になる量を抑えることができ、結果として、焼却灰A中の五酸化バナジウムが炭素に反応して三酸化バナジウムや四酸化バナジウムになる量を増やすことができる。なお、五酸化バナジウムと炭素との反応式は、以下の式(1)及び式(2)によって表される。
+C→V+CO ・・(1)
+C→V+CO ・・(2)
また、焼却灰A中に含まれる硫酸塩、例えば、硫酸マグネシウム(MgSO)は、900℃〜1000℃程度まで加熱されると以下の反応式(9)に示されるように分解され、硫黄分は硫黄酸化物(SO)となって排ガスGと一緒に炉本体17から排出される。
MgSO→MgO+SO ・・(3)
また、三酸化バナジウムや四酸化バナジウムにならずに、炉本体17内に残留する五酸化マグネシウムは、焼却灰A中の硫酸塩、例えば、硫酸マグネシウム(MgSO)と接触してマグネシウムバナジウム(MgO・V)となる。五酸化マグネシウムと硫酸マグネシウムとが反応してマグネシウムバナジウムが生成される反応式は、以下の式(4)〜(6)によって表される。なお、式(4)〜(6)の反応の起こりやすさは、(4)>(5)>(6)の順で起こりやすくなる。
MgSO+V→MgO・V+SO ・・(4)
2MgSO+V→2MgO・V+2SO ・・(5)
3MgSO+V→3MgO・V+2SO ・・(6)
なお、炉本体17内には焼却灰Aの他に酸化マグネシウムが供給されており、この酸化マグネシウムと、反応式(3)で生成された酸化マグネシウムとが余剰の五酸化バナジウムと反応してマグネシウムバナジウム(MgO・V)が生成されるという反応も起こり得る。酸化マグネシウムと五酸化バナジウムとが反応してマグネシウムバナジウムが生成される反応は、以下の反応式(7)〜(9)によって表される。
MgO+V→MgO・V ・・(7)
2MgO+V→2MgO・V ・・(8)
3MgO+V→3MgO・V ・・(9)
以上の反応式(1)または(2)で生成される三酸化バナジウムや四酸化バナジウムまたは反応式(4)〜(9)で生成されるマグネシウムバナジウムの融点は、反応式(3)で示される硫酸塩、例えば、硫酸マグネシウムの分解温度よりも高い。例えば、三酸化バナジウムや四酸化バナジウムの融点は1600℃程度であり、硫酸マグネシウムの分解温度である1200℃程度よりも高い。五酸化バナジウムの状態のままだと、融点は700℃程度であるため、硫酸マグネシウムを分解させて硫黄分を除去しようとすると、五酸化バナジウムが溶融し、炉本体17内に付着してしまう。しかしながら、三酸化バナジウムや四酸化バナジウムまたはマグネシウムバナジウムを生成することで、溶融の心配をすることなく、硫酸塩の分解を促進して硫黄分の除去が可能になる。三酸化バナジウムや四酸化バナジウムを含有し、硫黄分が除去された後の残渣は原料ダストDとなる。
炉本体17の排出側には、二次燃焼室21が併設されている。二次燃焼室21は鉛直方向に沿って立設された縦長の塔であり、上下方向の中央付近には、排ガスを二次燃焼させるためのプラズマトーチ29が取り付けられている。プラズマトーチ29の構成は、炉本体17に取り付けられた前述のプラズマトーチ29と同様であるため、詳細説明は省略する。二次燃焼室21は、排出部に相当する。
炉本体17で生成された原料ダストDと排ガスGとは、炉本体17の排出口から二次燃焼室21に導入され、原料ダストDは落下する。一方で、排ガスGは上昇することで原料ダストDから分離され、二次燃焼室21で二次燃焼される。
二次燃焼室21には、原料ダストDに酸素を吹き付けて接触させる酸素供給装置(酸素供給部)31が設けられている。炉本体17の加熱源としてプラズマトーチ23を用いているため、原料ダストD中には、未燃カーボン(炭素)が残留しやすい。この未燃カーボンを一酸化炭素または二酸化炭素として除去するために、酸素供給装置31が設けられている。
二次燃焼室21の底部には、落下した煤塵と、炉本体17から排出された原料ダストDとを分離するための二股式の第1排出口21a及び第2排出口21bが設けられている。原料ダストDの出口となる第1排出口21aは、炉本体17側に設けられ、煤塵の出口となる第2排出口21bは、二次燃焼室21の傾斜した側面側に設けられている。原料ダストDは、第1排出口21aを落下し、原料ダスト回収装置33によって回収される。一方、煤塵は、第2排出口21bから排出される。二股式の第1,第2排出口21a,21bを設けることで、原料ダストDと煤塵とを、それぞれ分けて回収できる。
また、図1に示されるように、バナジウム回収システム1は、二次燃焼室21から排出された高温の排ガスGの一部を蒸気過熱器11に熱源として供給し、また、残りを脱硫処理設備15に供給する配管が敷設されている。二次燃焼室21から蒸気過熱器11まで繋がる管路は、排ガス返送ライン35を構成し、二次燃焼室21から脱硫処理施設15まで繋がる管路は、排ガス移送ライン37に相当する。
排ガス返送ライン35を設けることで、炉本体17から排出された排ガスの熱エネルギーを有効利用できる。また、排ガス移送ライン37を設けることで、燃焼塔7から排出される煙道ガス中の硫黄酸化物と、炉本体17から排出された排ガス中の硫黄酸化物とを脱硫処理設備15で合わせて除去でき、煙道ガスや排ガスを大気に放出する際の環境への影響を効率よく低減できる。なお、本実施形態では、二次燃焼室21に繋がる管路が途中で二股に分かれ、一方が蒸気過熱器11に接続され、他方が脱硫処理設備15に繋がる態様を例示したが、それぞれ独立した管路によって二次燃焼室21と蒸気過熱器11とが接続され、また、二次燃焼室21と脱硫処理設備15とが接続された態様であっても良い。また、本実施形態では、排ガス返送ライン35と排ガス移送ライン37との両方が設けられた態様を例示しているが、どちらか一方のみが設けられた態様であっても良い。
また、バナジウム回収システム1は、蒸気過熱器11で生成された過熱蒸気を受け入れることで回転するタービンを備え、そのタービンの回転によって発電する発電装置(発電手段)27を備えている。発電装置27は、プラズマトーチ23,29に電力を供給可能に接続されており、発電した電力のうち、すくなくとも一部をプラズマトーチ23,29に供給する。その結果、このバナジウム回収システム1では、プラズマトーチ23,29を駆動するために、別の発電施設から電力の供給を受ける必要はなく、経済的である。
以上、本実施形態に係るキルン回転炉5(バナジウム回収装置)では、炉本体17(加熱炉)の熱源としてプラズマトーチ23を用いている。プラズマトーチ23は、通常の燃料燃焼バーナに比べて炉本体17内の酸素濃度を低く抑えることが可能になり、酸素濃度を薄くすることで、焼却灰A中の炭素が酸素と反応して一酸化炭素や二酸化炭素になる量を抑えることができる。その結果として、焼却灰A中の五酸化バナジウムが炭素に反応して三酸化バナジウムや四酸化バナジウムになる量を増やすことができる。炉本体17内で五酸化バナジウムに代えて三酸化バナジウムや四酸化バナジウムを生成できれば、三酸化バナジウムや四酸化バナジウムを溶融させることなく焼却灰A中の硫酸塩を分解して硫黄酸化物を生成でき、排ガスGとして排出することで原料ダストD中の硫黄分を効果的に分離除去できる。さらに、固体状の三酸化バナジウムや四酸化バナジウムを含む原料ダストDを回収できるようになり、バナジウムの効率的な回収が可能になる。
また、プラズマトーチ23への供給ガスとしては、酸素ガスそのものではなく、空気、窒素ガス、アルゴンガスなどを用いている。空気は、約八割が窒素であり、酸素は約二割程度しか含まれていないため、プラズマトーチ23への供給ガスとして利用しても炉本体17内の酸素の増減という点での影響は少ない。また、空気は確保し易く、また扱い易い点からも有利である。また、窒素ガスやアルゴンガスであれば、炉本体17内の酸素濃度を確実の低減できて有効である。
また、炉本体17内で焼却灰Aを加熱処理する温度は、硫酸塩の分解温度以上で、且つ、四酸化バナジウム及び三酸化バナジウムの融点未満にしている。その結果として、硫酸塩の分解を図りながら、固体状の四酸化バナジウムまたは三酸化バナジウムを含む原料ダストを回収することができる。
また、キルン回転炉5は、炉本体17から排出された原料ダストDと排ガスGとを分離して排出する二次燃焼室21(排出部)を更に備えており、二次燃焼室21には、原料ダストDに酸素を接触させ、原料ダストD中の炭素を一酸化炭素または二酸化炭素として除去するための酸素供給装置(酸素供給部)31が設けられている。原料ダストD中の炭素を除去することで、原料ダストDの品質を向上できる。
また、本実施形態に係るバナジウム回収システム1は、上述のキルン回転炉5を備えているため、原料ダスト中の硫黄分の分離除去と固体状の三酸化バナジウムや四酸化バナジウムを含む原料ダストDの回収とを両立でき、バナジウムの効率的な回収が可能になる。
さらに、バナジウム回収システム1は、炉本体17から排出される高温の排ガスGを蒸気過熱器11に熱源として供給する排ガス返送ライン35を備えるので、加熱炉から排出された排ガスの熱エネルギーを有効利用できる。
さらに、バナジウム回収システム1は、炉本体17から排出される排ガスGを脱硫処理設備15に供給する排ガス移送ライン37を備えるため、燃焼塔7から排出される煙道ガス中の硫黄酸化物と、炉本体17から排出された排ガスG中の硫黄酸化物とを脱硫処理設備15で合わせて除去でき、煙道ガスや排ガスを大気に放出する際の環境への影響を効率よく低減できる。
さらに、バナジウム回収システム1は、過熱蒸気を利用して発電する発電装置27を更に備え、発電装置27で発電された電力の少なくとも一部は、プラズマトーチ23,29に供給されるため、別の発電施設から電力の供給を受ける必要はなくなり、経済的である。
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、キルン回転炉の炉本体にプラズマトーチを取り付ける態様を説明したが、炉本体とは別のチャンバを設け、そのチャンバにプラズマトーチを取り付け、そのプラズマトーチによってチャンバ内で加熱された高温ガスをキルン回転炉の炉本体内に供給して炉本体内を加熱する態様であってもよい。この態様も、炉本体(加熱炉)の熱源としてプラズマトーチを用いていることになる。
1…バナジウム回収システム、5…キルン回転炉(バナジウム回収装置)、7…燃焼塔(ボイラ本体)、11…蒸気過熱器(蒸気過熱手段)、15…脱硫処理設備(脱硫処理手段)、17…炉本体(加熱炉)、21…二次燃焼室(排出部)、23…プラズマトーチ、27…発電装置(発電手段)、31…酸素供給装置(酸素供給部)、35…排ガス返送ライン、37…排ガス移送ライン、A…焼却灰、D…原料ダスト、G…排ガス。

Claims (7)

  1. 石油系燃料の燃焼によって生じ、且つ五酸化バナジウムを含む焼却灰からバナジウムを回収するバナジウム回収装置において、
    前記焼却灰を受け入れ、前記焼却灰を加熱処理して四酸化バナジウム及び三酸化バナジウムの少なくとも一方を含む原料ダストを生成すると共に、前記焼却灰中の硫酸塩から硫黄酸化物を生成し、前記硫黄酸化物を含む排ガスを排出する加熱炉と、
    前記加熱炉から排出された前記原料ダストと前記排ガスとを分離して排出する排出部と、を備え、
    前記加熱炉の熱源としてプラズマトーチを用い、
    前記排出部には、前記原料ダストに酸素を接触させ、前記原料ダスト中の炭素を一酸化炭素または二酸化炭素として除去するための酸素供給部が設けられていることを特徴とするバナジウム回収装置。
  2. 前記プラズマトーチへの供給ガスとして空気、窒素ガス、アルゴンガスの少なくとも一種類を用いることを特徴とする請求項1記載のバナジウム回収装置。
  3. 前記加熱炉内で前記焼却灰を加熱処理する温度は、前記硫酸塩の分解温度以上で、且つ、四酸化バナジウム及び三酸化バナジウムの融点未満であることを特徴とする請求項1または2記載のバナジウム回収装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項記載のバナジウム回収装置と、
    石油系燃料を燃焼させて得た熱を水に伝えて蒸気を生成すると共に、前記石油系燃料の燃焼後に生じた前記焼却灰を前記バナジウム回収装置の前記加熱炉に供給するボイラ本体と、
    前記ボイラ本体で生成された飽和蒸気を更に加熱して過熱蒸気とする蒸気過熱手段と、
    前記ボイラ本体での前記石油系燃料の燃焼によって生じた燃焼ガスを受け入れ、前記燃焼ガスに含まれる硫黄分を湿式にて除去する脱硫処理手段と、を備えることを特徴とするバナジウム回収システム。
  5. 前記加熱炉から排出される高温の前記排ガスを前記蒸気過熱手段に熱源として供給する排ガス返送ラインを更に備えることを特徴とする請求項記載のバナジウム回収システム。
  6. 前記加熱炉から排出される前記排ガスを前記脱硫処理手段に供給する排ガス移送ラインを更に備えることを特徴とする請求項4または5記載のバナジウム回収システム。
  7. 前記過熱蒸気を利用して発電する発電手段を更に備え、
    前記発電手段で発電された電力の少なくとも一部は、前記プラズマトーチに供給されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項記載のバナジウム回収システム。
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